本発明のブロック共重合体組成物は、少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとを有してなるブロック共重合体100重量部、脂肪酸モノアミド0.5〜10重量部、およびポリエチレンワックス0.5〜10重量部を含有してなるものである。
本発明のブロック共重合体組成物の重合体成分となるブロック共重合体は、芳香族ビニル単量体を重合して得られる芳香族ビニル単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである芳香族ビニル重合体ブロックと、共役ジエン単量体を重合して得られる共役ジエン単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである共役ジエン重合体ブロックと、をそれぞれ少なくとも1つ有してなるものである。
芳香族ビニル重合体ブロックの芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル単量体は、芳香族ビニル化合物であれば特に限定されないが、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、4−ブロモスチレン、2−メチル−4,6−ジクロロスチレン、2,4−ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどを例示することができる。これらのなかでも、スチレンを用いることが好ましい。これらの芳香族ビニル単量体は、各芳香族ビニル重合体ブロックにおいて、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ブロック共重合体が複数の芳香族ビニル重合体ブロックを有する場合において、各々の芳香族ビニル重合体ブロックは、同じ芳香族ビニル単量体単位により構成されていてもよいし、異なる芳香族ビニル単量体単位により構成されていてもよい。
また、芳香族ビニル重合体ブロックは、芳香族ビニル単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよい。芳香族ビニル重合体ブロックに含まれ得る芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)などの共役ジエン単量体、α,β−不飽和ニトリル単量体、不飽和カルボン酸または酸無水物単量体、不飽和カルボン酸エステル単量体、非共役ジエン単量体が例示される。芳香族ビニル重合体ブロックにおける芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位の含有量は、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、実質的に0重量%であることが特に好ましい。
共役ジエン重合体ブロックの共役ジエン単量体単位を構成するために用いられる共役ジエン単量体は、共役ジエン化合物であれば特に限定されないが、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどを例示することができる。これらのなかでも、1,3−ブタジエンおよび/またはイソプレンを用いることが好ましく、イソプレンを用いることが特に好ましい。共役ジエン重合体ブロックをイソプレン単位で構成することにより、柔軟性に優れ、小さい永久伸びを有するブロック共重合体を得ることができる。これらの共役ジエン単量体は、各共役ジエン重合体ブロックにおいて、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ブロック共重合体が複数の共役ジエン重合体ブロックを有する場合において、各々の共役ジエン重合体ブロックは、同じ共役ジエン単量体単位により構成されていてもよいし、異なる共役ジエン単量体単位により構成されていてもよい。
また、共役ジエン重合体ブロックは、共役ジエン単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよい。共役ジエン重合体ブロックに含まれ得る共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、α,β−不飽和ニトリル単量体、不飽和カルボン酸または酸無水物単量体、不飽和カルボン酸エステル単量体、非共役ジエン単量体が例示される。共役ジエン重合体ブロックにおける共役ジエン単量体単位以外の単量体単位の含有量は、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、実質的に0重量%であることが特に好ましい。
また、共役ジエン重合体ブロックのビニル結合含有量(共役ジエン重合体ブロック中の全共役ジエン単量体単位において、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合が占める割合)は、特に限定されないが、1〜20モル%であることが好ましく、2〜15モル%であることがより好ましく、3〜10モル%であることが特に好ましい。
本発明のブロック共重合体組成物の重合体成分となるブロック共重合体は、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとをそれぞれ少なくとも1つ有してなるものであれば、それぞれの重合体ブロックの数やそれらの結合形態は特に限定されない。本発明で用いられうるブロック共重合体の形態の具体例としては、Arが芳香族ビニル重合体ブロックを表し、Dが共役ジエン重合体ブロックを表し、Xがカップリング剤の残基を表し、nが2以上の整数を表すものとした場合において、Ar−Dとして表される芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体、Ar−D−Arまたは(Ar−D)n−Xとして表される芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体、D−Ar−Dまたは(D−Ar)n−Xとして表される共役ジエン−芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体、Ar−D−Ar−Dとして表される芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体、およびこれらの2種以上を任意の組み合わせで混合してなるブロック共重合体の混合物を挙げることができるがこれらに限定されない。本発明のブロック共重合体組成物において、特に好ましく用いられるブロック共重合体としては、Ar−D−Arまたは(Ar−D)n−Xとして表される芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体を挙げることできる。
本発明で用いられるブロック共重合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、通常60,000〜350,000の範囲で選択され、好ましくは80,000〜250,000の範囲で選択される。また、ブロック共重合体の個々の重合体ブロックの重量平均分子量も特に限定されず、芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量は、通常6,000〜400,000の範囲で選択され、好ましくは6,000〜370,000の範囲で選択され、また、共役ジエン重合体ブロックの重量平均分子量は、通常20,000〜400,000の範囲で選択され、好ましくは35,000〜350,000の範囲で選択される。
また、本発明で用いられるブロック共重合体、およびブロック共重合体を構成する各重合体ブロックの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布も、特に限定されないが、それぞれ、通常1.1以下であり、好ましくは1.05以下である。
本発明で用いられるブロック共重合体の全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量も、特に限定されないが、10〜70重量%の範囲で選択され、好ましくは12〜60重量%の範囲で選択される。
本発明で用いられるブロック共重合体のメルトインデックスは、特に限定されないが、ASTM D−1238(G条件、200℃、5kg)に準拠して測定される値として、通常1〜1000g/10分であり、3〜700g/10分であることが好ましく、5〜500g/10分であることがより好ましい。この範囲であれば、得られる重合体組成物の成形性が特に良好となる。
以上述べたような、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとを有してなるブロック共重合体は、常法にしたがって製造することが可能であり、最も一般的な製造法としては、アニオンリビング重合法により、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とをそれぞれ逐次的に重合して重合体ブロックを形成し、必要に応じて、カップリング剤を反応させてカップリングを行う方法を挙げることができる。また、本発明では、市販のブロック共重合体を用いることも可能であり、例えば、「クインタック」(日本ゼオン社製)、「JSR−SIS」(JSR社製)、「Vector」(DEXCO polymers社製)、「アサプレン」・「タフプレン」・「タフテック」(旭化成ケミカルズ社製)、「セプトン」(クラレ社製)などを使用することができる。
本発明のブロック共重合体組成物は、以上述べたようなブロック共重合体に加えて、脂肪酸モノアミドおよびポリエチレンワックスを含有してなる。本発明のブロック共重合体組成物は、これらのワックスを含有することにより、例えばフィルム状に成形した後、ロールに巻き取って長期間保存しても、互着を殆ど生じさせない、耐ブロッキング性に極めて優れるブロック共重合体組成物となるものである。本発明で用いられる脂肪酸モノアミドは、炭化水素基と1個のアミド基(−NHCO)とが結合してなる化合物であれば特に限定されないが、炭素数12以上の高級飽和脂肪酸のモノアミド(すなわち、炭素数12以上の鎖状アルキル基と1個のアミド基(−NHCO)とが結合してなる化合物)が好ましく用いられる。本発明において、好ましく用いられる脂肪酸モノアミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミドを挙げることができ、これらのなかでも、ステアリン酸アミドが特に好ましく用いられる。なお、脂肪酸モノアミドは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明のブロック共重合体組成物は、脂肪酸モノアミドを含有してなることにより、特に、成形直後のブロック共重合体組成物のタックが、含有しない場合に比して低減される。
本発明のブロック共重合体組成物における脂肪酸モノアミドの含有量は、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとを有してなるブロック共重合体100重量部に対して、0.5〜10重量部であることが必要であり、1〜9重量部であることが好ましく、1〜7重量部であることがより好ましい。この含有量が小さすぎると、成形直後のブロック共重合体組成物のタックが大きくなって、耐ブロッキング性に劣るおそれがあり、大きすぎると、ブロック共重合体組成物の機械的強度が不十分となるおそれがある。
本発明で用いられるポリエチレンワックスは、エチレン単量体単位を主たる構成単位とするワックスである。本発明で用いられるポリエチレンワックスは、特に限定されるものではないが、140℃における粘度が20〜6,000mPa・sであるものが好ましく用いられる。ポリエチレンワックスは、一般的に、エチレンの重合またはポリエチレンの分解により製造されるが、本発明では、どちらのポリエチレンワックスを用いてもよい。また、ポリエチレンワックスは市販品を入手可能であり、その具体例としては、「A−C ポリエチレン」(Honeywell社製)、「三井ハイワックス」(三井化学社製)、「サンワックス」(三洋化成工業社製)、「エポレン」(Eastman Chemical社製)を挙げることができる。本発明のブロック共重合体組成物は、ポリエチレンワックスを含有してなることにより、特に、成形後数日経過後のブロック共重合体組成物のタックが、含有しない場合に比して低減される。
本発明のブロック共重合体組成物におけるポリエチレンワックスの含有量は、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとを有してなるブロック共重合体100重量部に対して、0.5〜10重量部であることが必要であり、1〜9重量部であることが好ましく、1〜7重量部であることがより好ましい。この含有量が小さすぎると、成形後数日経過後のブロック共重合体組成物のタックが大きくなって、耐ブロッキング性に劣るおそれがあり、大きすぎると、ブロック共重合体組成物の機械的強度が不十分となるおそれがある。
本発明のブロック共重合体組成物は、上述したような必須成分以外の重合体を含有していてもよい。このような重合体の例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどの共役ジエン単独重合体、(スチレン−ブタジエン)ランダム共重合体、(スチレン−イソプレン)ランダム共重合体などの芳香族ビニル−共役ジエンランダム共重合体、ポリスチレンなどの芳香族ビニル単独重合体、イソブチレン系重合体、アクリル系重合体、エステル系重合体、エーテル系重合体、ウレタン系重合体、ポリ塩化ビニルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明のブロック共重合体組成物において、これらの重合体の含有量は、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとを有してなるブロック共重合体の重量に対して、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
また、本発明のブロック共重合体組成物には、必要に応じ酸化防止剤を添加することができる。その種類は特に限定されず、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどのヒンダードフェノール系化合物;ジラウリルチオプロピオネートなどのチオジカルボキシレートエステル類;トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどの亜燐酸塩類;を使用することができる。酸化防止剤の使用量は、特に限定されないが、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとを有してなるブロック共重合体100重量部当り、通常10重量部以下であり、好ましくは0.5〜5重量部である。なお、酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本発明のブロック共重合体組成物には、さらに、必要に応じて、粘着付与樹脂、軟化剤、抗菌剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、脂肪酸モノアミドおよびポリエチレンワックス以外の滑剤などを添加することができる。
本発明のブロック共重合体組成物を得るにあたり、ブロック共重合体とその他の成分とを混合する方法は特に限定されず、例えば、それぞれの成分を溶剤に溶解し均一に混合した後、溶剤を加熱などにより除去する方法、各成分をスクリュー押出機やニーダーなどで溶融混合する方法を挙げることができる。混合をより効率的に行う観点からは、これらの方法のなかでも溶融混合が好適である。なお、溶融混合を行う際の温度は、特に限定されるものではないが、通常100〜200℃の範囲である。
例えば以上のようにして得られる、本発明のブロック共重合体組成物の用途は特に限定されず、例えば、フィルム、手袋、エラスティックバンド、コンドーム、OA機器、事務用などの各種ロール、電気電子機器用防振シート、防振ゴム、衝撃吸収シート、衝撃緩衝フィルム・シート、住宅用制振シート、制振ダンパー材などに用いられる成形材料用途、粘着テープ、粘着シート、粘着ラベル、ゴミ取りローラーなどに用いられる粘着剤用途、衛生用品や製本に用いられる接着剤用途、衣料、スポーツ用品などに用いられる弾性繊維用途などの用途に用いることができる。本発明のブロック共重合体組成物は耐ブロッキング性に極めて優れるものであるので、特に高度な耐ブロッキング性が求められる用途に好適であり、その代表例としては、ブロック共重合体組成物をフィルムに成形する場合が挙げられる。すなわち、本発明のフィルムは、本発明のブロック共重合体組成物を成形してなるフィルムである。
本発明のブロック共重合体組成物をフィルム状に成形する方法は、特に限定されないが、T−ダイを用いた溶融押出成形が特に好適である。T−ダイを用いた溶融押出成形の具体例としては、単軸押出機や二軸押出機などのスクリュー押出機に装着したT−ダイから、温度150〜250℃で溶融したブロック共重合体組成物を押出し、引き取りロールで冷却しながら、巻き取る方法が挙げられる。なお、引き取りロールで冷却する際に、フィルムを延伸しても良い。本発明のブロック共重合体組成物は、フィルムに成形した直後のタックおよび成形後数日経過した後のタックの両方が十分に低減されたものであるので、引き取りロール巻き取った直後に生じうるフィルムの互着が高度に防止され、また、その巻き取ったフィルムの長期保存時に生じうるフィルムの互着も高度に防止される。
本発明のフィルムの厚さは、特に限定されず、用途に応じて調整されるが、紙おむつや生理用品などの衛生用品用のフィルムとする場合には、通常0.01〜5mm、好ましくは0.01〜1mm、より好ましくは0.02〜0.2mmである。
本発明のフィルムは、その用途に応じて、単層のまま用いることもできるし、他の部材と積層して多層体として使用することもできる。単層のまま用いる場合の具体例としては、紙おむつや生理用品などの衛生用品に用いられる伸縮性フィルム、光学フィルムなどを保護するための保護フィルム、容器の収縮包装や熱収縮ラベルとして用いられる熱収縮性フィルムとしての利用を挙げることができる。多層体とする場合の具体例としては、本発明のフィルムをスリット加工した後、これにホットメルト接着剤などを塗布してテープとし、このテープを縮めた状態で不織布、織布、プラスチックフィルム、またはこれらの積層体に接着し、テープの縮みを緩和することにより、伸縮性のギャザー部材を形成する場合を挙げることができる。さらに、その他用途に応じ、公知の方法に従って適宜加工し、例えば、伸縮性シップ用基材、手袋、手術用手袋、指サック、止血バンド、避妊具、ヘッドバンド、ゴーグルバンド、輪ゴムなどの伸縮性部材として用いることもできる。
既に述べたように、本発明のブロック共重合体組成物では、少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとを有してなるものであるブロック共重合体も必須の重合体成分として用いることができる。ただし、例えば、紙おむつや生理用品などの衛生用品などに適用されるフィルムの材料とする場合など、ブロック共重合体組成物に、高い弾性率と小さい永久伸びとを付与する必要がある場合には、次に述べるブロック共重合体混合物をブロック共重合体として用いることが好ましい。
本発明のブロック共重合体組成物において、ブロック共重合体として好ましく用いられるブロック共重合体混合物は、下記の式(A)で表されるブロック共重合体Aおよび下記の式(B)で表されるブロック共重合体Bからなるものである。
Ar1a−Da−Ar2a (A)
(Arb−Db)n−X (B)
式(A)および(B)において、Ar1aおよびArbは、それぞれ、重量平均分子量が6000〜20,000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Ar2aは、重量平均分子量が40,000〜400,000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、DaおよびDbは、それぞれ、共役ジエン重合体ブロックであり、Xは単結合またはカップリング剤の残基であり、nは2以上の整数である。
ブロック共重合体混合物を構成するブロック共重合体Aは、上記式(A)で表されるように、比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1a)、共役ジエン重合体ブロック(Da)および比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2a)が、この順で直鎖状に連なって構成される直鎖状で非対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体である。比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1a)の重量平均分子量(Mw(Ar1a))は、6000〜20,000であり、7000〜18,000であることが好ましく、8000〜15,000であることがより好ましい。Mw(Ar1a)がこの範囲を外れると、最終的に得られるブロック共重合体組成物の永久伸びが大きすぎるものとなるおそれがある。また、比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2a)の重量平均分子量(Mw(Ar2a))は、40,000〜400,000であり、42,000〜370,000であることが好ましく、45,000〜350,000であることがより好ましい。Mw(Ar2a)が小さすぎると、ブロック共重合体組成物の永久伸びが大きすぎるものとなるおそれがあり、Mw(Ar2a)が大きすぎるブロック共重合体Aは、製造が困難である場合がある。
ブロック共重合体Aにおいて、比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2a)の重量平均分子量(Mw(Ar2a))と、比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1a)の重量平均分子量(Mw(Ar1a))との比(Mw(Ar2a)/Mw(Ar1a))は、特に限定されないが、通常2〜67であり、4〜40であることが好ましく、4.5〜35であることがより好ましい。ブロック共重合体Aをこのように構成することによって、より小さい永久伸びとより高い弾性率とを有し、弾性に富んだブロック共重合体組成物を得ることができる。
ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(Da)のビニル結合含有量(全共役ジエン単量体単位において、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合が占める割合)は、特に限定されないが、通常1〜20モル%であり、2〜15モル%であることが好ましく、3〜10モル%であることがより好ましい。このビニル結合含有量が高すぎると、得られるブロック共重合体組成物の永久伸びが大きくなるおそれがある。
ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(Da)の重量平均分子量(Mw(Da))は、特に限定されないが、通常20,000〜200,000であり、35,000〜150,000であることが好ましく、45,000〜100,000であることがより好ましい。
ブロック共重合体Aの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量は、特に限定されないが、通常40〜90重量%であり、45〜87重量%であることが好ましく、50〜85重量%であることがより好ましい。また、ブロック共重合体A全体としての重量平均分子量も、特に限定されないが、通常50,000〜500,000であり、80,000〜470,000であることが好ましく、90,000〜450,000であることがより好ましい。
ブロック共重合体混合物を構成するブロック共重合体Bは、上記式(B)で表されるように、特定の重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Arb)と特定のビニル結合含有量を有する共役ジエン重合体ブロック(Db)とが結合してなるジブロック体(Arb−Db)が、2個以上、芳香族ビニル重合体ブロック(Arb)側が末端となるように、直接単結合でもしくはカップリング剤(X)の残基を介して結合することにより構成されるブロック共重合体である。なお、カップリング剤の残基を構成するカップリング剤の例としては、後述するものが挙げられる。ジブロック体(Arb−Db)が結合する数(すなわち、式(B)におけるn)は、2以上であれば特に限定されず、異なる数でジブロック体が結合したブロック共重合体Bが混在していても良い。式(B)におけるnは、2以上の整数であれば特に限定されないが、通常2〜8の整数であり、好ましくは2〜4の整数である。
ブロック共重合体Bが1分子中に2個以上有する芳香族ビニル重合体ブロック(Arb)の重量平均分子量(Mw(Arb))は、それぞれ、6000〜20,000であり、7000〜18,000であることが好ましく、8000〜15,000であることがより好ましい。Mw(Arb)がこの範囲を外れると、得られるブロック共重合体組成物の永久伸びが大きすぎるものとなるおそれがある。ブロック共重合体Bの1分子中に2個以上存在する芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量(Mw(Arb))は、上記の範囲内であれば、等しくても、互いに異なるものであっても良いが、実質的に等しいことが好ましい。また、これらの芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量(Mw(Arb))は、ブロック共重合体Aの比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1a)の重量平均分子量(Mw(Ar1a))と、実質的に等しいことがより好ましい。
ブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(Db)のビニル結合含有量は、1〜20モル%であり、2〜15モル%であることが好ましく、3〜10モル%であることがより好ましい。このビニル結合含有量が高すぎると、得られるブロック共重合体組成物の永久伸びが大きくなるおそれがある。また、ブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(Db)のビニル結合含有量は、ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(Da)のビニル結合含有量と実質的に等しいことが好ましい。
ブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(Db)の重量平均分子量(Mw(Db))は、特に限定されないが、通常20,000〜200,000であり、35,000〜150,000であることが好ましく、45,000〜100,000であることがより好ましい。ブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(Db)の重量平均分子量(Mw(Db))の重量平均分子量がこの範囲であることにより、より小さい永久伸びとより高い弾性率とを有し、弾性に富んだブロック共重合体組成物を得ることができる。また、ブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(Db)の重量平均分子量(Mw(Db))は、ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(Da)の重量平均分子量(Mw(Da))と実質的に等しいことが好ましい。これらの重量平均分子量が実質的に等しいことにより、得られるブロック共重合体組成物が、より高い弾性率を有し、弾性に富んだものとなる。なお、ブロック共重合体Bとして、カップリング剤を使用せずに製造した芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体を用いる場合、それに含まれる共役ジエン重合体ブロックは全ての単量体単位が直接結合したものとなり、実体上、2つの共役ジエン重合体ブロック(Db)からなるものではない。但し、ブロック共重合体Bにおける共役ジエン重合体ブロック(Db)については、そのような共役ジエン重合体ブロックであっても、概念上、実質的に等しい重量平均分子量を有する2つの共役ジエン重合体ブロック(Db)が単結合で結合されたものであるとして、取扱うものとする。したがって、例えば、カップリング剤を使用せずに製造した芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体であるブロック共重合体Bにおいて、共役ジエン重合体ブロックが全体として100,000の重量平均分子量を有する場合、そのMw(Db)は、50,000であるとして取扱うものとする。
ブロック共重合体Bの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量は、特に限定されないが、通常10〜35重量%であり、12〜32重量%であることが好ましく、15〜30重量%であることがより好ましい。また、ブロック共重合体B全体としての重量平均分子量も、特に限定されないが、通常60,000〜800,000であり、80,000〜600,000であることが好ましく、100,000〜400,000であることがより好ましい。
ブロック共重合体混合物を構成するブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B、ならびにこれらを構成する各重合体ブロックの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、特に限定されないが、それぞれ、通常1.1以下であり、好ましくは1.05以下である。
ブロック共重合体混合物におけるブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの重量比(A/B)は、特に限定されないが、10/90〜90/10であることが好ましく、36/64〜80/20であることがより好ましく、38/62〜80/20であることがさらに好ましく、40/60〜75/25であることが最も好ましい。このような比で各ブロック共重合体が含有されることにより、得られるブロック共重合体組成物における高い弾性率と小さい永久伸びとのバランスが特に優れたものとなる。一方、この比が小さすぎると、ブロック共重合体組成物の弾性率が不十分となるおそれがあり、この比が大きすぎると、ブロック共重合体組成物の永久伸びが大きくなりすぎるおそれがある。
ブロック共重合体混合物において、含まれる重合体成分全体(すなわち、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bの両方)の全繰返し単位において、芳香族ビニル単量体単位が占める割合は特に制限されるものではないが、その割合は、20〜70重量%であることが好ましく、30〜60重量%であることがより好ましく、40〜50重量%であることがさらに好ましい。この割合がこの範囲であることにより、ブロック共重合体組成物における高い弾性率と小さい永久伸びとのバランスが特に優れたものとなる。この全体の芳香族ビニル単量体単位含有量は、ブロック共重合体混合物を構成するブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bそれぞれの芳香族ビニル単量体単位の含有量を勘案し、それらの配合量を調節することにより、容易に調節することが可能である。なお、Rubber Chem. Technol.,45,1295(1972)に記載された方法に従って、ブロック共重合体混合物をオゾン分解し、次いで水素化リチウムアルミニウムにより還元すれば、それぞれのブロック共重合体の共役ジエン単量体単位部分が分解され、芳香族ビニル単量体単位部分のみを取り出せるので、容易に芳香族ビニル単量体単位が占める割合を測定することができる。
ブロック共重合体混合物全体の重量平均分子量は、特に限定されないが、300,000未満であることが好ましく、50,000〜250,000であることがより好ましく、100,000〜200,000であることが特に好ましい。また、ブロック共重合体混合物全体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布も、特に限定されないが、通常1.01〜10であり、1.03〜5であることが好ましく、1.05〜3であることがより好ましい。
ブロック共重合体混合物を得る方法は特に限定されない。例えば、従来のブロック共重合体の製法に従って、ブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとをそれぞれ別個に製造し、それらを混練や溶液混合などの常法に従って混合することにより、製造することができる。ただし、特に望ましい構成を有するブロック共重合体混合物をより生産性よく得る観点からは、次に述べる製造方法が好適である。
すなわち、本発明で用いられるブロック共重合体混合物は、下記の(1)〜(5)の工程からなる製造方法を用いて製造することが好ましい。
(1):溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合する工程
(2):上記(1)の工程で得られる活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液に、共役ジエン単量体を添加する工程
(3):上記(2)の工程で得られる活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液に、その活性末端に対して官能基が1モル当量未満となる量で、カップリング剤を添加し、ブロック共重合体Bを形成する工程
(4):上記(3)の工程で得られる溶液に、芳香族ビニル単量体を添加し、ブロック共重合体Aを形成する工程
(5):上記(4)の工程で得られる溶液から、ブロック共重合体混合物を回収する工程
上記のブロック共重合体混合物の製造方法では、まず、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合する。用いられる重合開始剤としては、一般的に芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とに対し、アニオン重合活性があることが知られている有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、有機ランタノイド系列希土類金属化合物などを用いることができる。有機アルカリ金属化合物としては、分子中に1個以上のリチウム原子を有する有機リチウム化合物が特に好適に用いられ、その具体例としては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、ジアルキルアミノリチウム、ジフェニルアミノリチウム、ジトリメチルシリルアミノリチウムなどの有機モノリチウム化合物や、メチレンジリチウム、テトラメチレンジリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、イソプレニルジリチウム、1,4−ジリチオ−エチルシクロヘキサンなどの有機ジリチウム化合物、さらには、1,3,5−トリリチオベンゼンなどの有機トリリチウム化合物などが挙げられる。これらのなかでも、有機モノリチウム化合物が特に好適に用いられる。
重合開始剤として用いる有機アルカリ土類金属化合物としては、例えば、n−ブチルマグネシウムブロミド、n−ヘキシルマグネシウムブロミド、エトキシカルシウム、ステアリン酸カルシウム、t−ブトキシストロンチウム、エトキシバリウム、イソプロポキシバリウム、エチルメルカプトバリウム、t−ブトキシバリウム、フェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ステアリン酸バリウム、エチルバリウムなどが挙げられる。また、他の重合開始剤の具体例としては、ネオジム、サマリニウム、ガドリニウムなどを含むランタノイド系列希土類金属化合物/アルキルアルミニウム/アルキルアルミニウムハライド/アルキルアルミニウムハイドライドからなる複合触媒や、チタン、バナジウム、サマリニウム、ガドリニウムなどを含むメタロセン型触媒などの有機溶媒中で均一系となり、リビング重合性を有するものなどが挙げられる。なお、これらの重合開始剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
重合開始剤の使用量は、目的とする各ブロック共重合体の分子量に応じて決定すればよく、特に限定されないが、使用する全単量体100gあたり、通常、0.01〜20ミリモル、好ましくは、0.05〜15ミリモル、より好ましくは、0.1〜10ミリモルである。
重合に用いる溶媒は、重合開始剤に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、鎖状炭化水素溶媒、環式炭化水素溶媒またはこれらの混合溶媒が使用される。鎖状炭化水素溶媒としてはn−ブタン、イソブタン、1−ブテン、イソブチレン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、トランス−2−ペンテン、シス−2−ペンテン、n−ペンタン、イソペンタン、neo−ペンタン、n−ヘキサンなどの、炭素数4〜6の鎖状アルカンおよびアルケンを例示することができる。また、環式炭化水素溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物;を挙げることができる。これらの溶媒は、1種類を単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
重合に用いる溶媒の量は、特に限定されないが、重合反応後の溶液における全ブロック共重合体の濃度が、通常、5〜60重量%、好ましくは10〜55重量%、より好ましくは20〜50重量%になるように設定する。
ブロック共重合体混合物を得る際に、各ブロック共重合体の各重合体ブロックの構造を制御するために、重合に用いる反応器にルイス塩基化合物を添加してもよい。このルイス塩基化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジンなどの第三級アミン類;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類;トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;などが挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられ、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
また、重合反応時にルイス塩基化合物を添加する時期は特に限定されず、目的とする各ブロック共重合体の構造に応じて適宜決定すれば良い。例えば、重合を開始する前に予め添加しても良いし、一部の重合体ブロックを重合してから添加しても良く、さらには、重合を開始する前に予め添加した上で一部の重合体ブロックを重合した後さらに添加しても良い。
重合反応温度は、通常10〜150℃、好ましくは30〜130℃、より好ましくは40〜90℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常、48時間以内、好ましくは0.5〜10時間である。重合圧力は、上記重合温度範囲で単量体および溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されない。
以上のような条件で、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合することにより、活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液を得ることができる。この活性末端を有する芳香族ビニル重合体は、ブロック共重合体混合物を構成する、ブロック共重合体Aの比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1a)とブロック共重合体Bの芳香族ビニル重合体ブロック(Arb)を構成することとなるものである。したがって、この際用いる芳香族ビニル単量体の量は、これらの重合体ブロックの目的とする重量平均分子量に応じて決定される。
次の工程は、以上のようにして得られる活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液に、共役ジエン単量体を添加する工程である。この共役ジエン単量体の添加により、活性末端から共役ジエン重合体鎖が形成され、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)を含有する溶液が得られる。この際用いる共役ジエン単量体の量は、得られる共役ジエン重合体鎖が、目的とするブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(Db)の重量平均分子量を有するように決定される。
次の工程では、以上のようにして得られる活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)を含有する溶液に、その活性末端に対して官能基が1モル当量未満となる量で、カップリング剤を添加する。
添加されるカップリング剤は、特に限定されず、2官能以上の任意のカップリング剤を用いることができる。2官能のカップリング剤としては、例えば、ジクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシランなどの2官能性ハロゲン化シラン;ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどの2官能性アルコキシシラン;ジクロロエタン、ジブロモエタン、メチレンクロライド、ジブロモメタンなどの2官能性ハロゲン化アルカン;ジクロロスズ、モノメチルジクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、モノエチルジクロロスズ、ジエチルジクロロスズ、モノブチルジクロロスズ、ジブチルジクロロスズなどの2官能性ハロゲン化スズ;ジブロモベンゼン、安息香酸、CO、2―クロロプロペンなどが挙げられる。3官能のカップリング剤としては、例えば、トリクロロエタン、トリクロロプロパンなどの3官能性ハロゲン化アルカン;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシランなどの3官能性ハロゲン化シラン;メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどの3官能性アルコキシシラン;などが挙げられる。4官能のカップリング剤としては、例えば、四塩化炭素、四臭化炭素、テトラクロロエタンなどの4官能性ハロゲン化アルカン;テトラクロロシラン、テトラブロモシランなどの4官能性ハロゲン化シラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの4官能性アルコキシシラン;テトラクロロスズ、テトラブロモスズなどの4官能性ハロゲン化スズ;などが挙げられる。5官能以上のカップリング剤としては、例えば、1,1,1,2,2−ペンタクロロエタン,パークロロエタン、ペンタクロロベンゼン、パークロロベンゼン、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテルなどが挙げられる。これらのカップリング剤は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
添加されるカップリング剤の量は、ブロック共重合体混合物を構成するブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの比に応じて決定され、重合体の活性末端に対してカップリング剤の官能基が1モル当量未満となる量であれば特に限定されないが、通常、重合体の活性末端に対してカップリング剤の官能基が0.10〜0.90モル当量となる範囲であり、0.15〜0.70モル当量となる範囲であることが好ましい。
以上のように、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)を含有する溶液に、その活性末端に対して官能基が1モル当量未満となる量で、カップリング剤を添加すると、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)のうちの一部の共重合体において、共役ジエン重合体ブロック同士がカップリング剤の残基を介して結合され、その結果、ブロック共重合体混合物のブロック共重合体Bが形成される。そして、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)の残り一部は、未反応のまま溶液中に残ることとなる。
次の工程では、以上のようにして得られる溶液に、芳香族ビニル単量体を添加する。溶液に芳香族ビニル単量体を添加すると、カップリング剤と反応せずに残った活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)の末端から、芳香族ビニル重合体鎖が形成される。この芳香族ビニル重合体鎖は、ブロック共重合体混合物を構成する、ブロック共重合体Aの比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2a)を構成することとなるものである。したがって、この際用いる芳香族ビニル単量体の量は、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2a)の目的とする重量平均分子量に応じて決定される。この芳香族ビニル単量体を添加する工程により、ブロック共重合体Aを構成することとなる、非対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体が形成され、その結果、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bを含有する溶液が得られる。なお、この芳香族ビニル単量体を添加する工程の前に、カップリング剤と反応しなかった活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)を含む溶液に、共役ジエン単量体を添加しても良い。このように共役ジエン単量体を添加すると、添加しない場合に比べて、ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(Da)の重量平均分子量を大きくすることができる。また、カップリング剤と反応しなかった活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含む溶液に、活性末端の当量より少ない量で重合停止剤(水、メタノールなど)を添加してもよい。このように重合停止剤を添加すると、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)の活性末端が失活し、それにより得られる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)が、ブロック共重合体混合物に含有されることとなる。
次の工程では、以上のようにして得られるブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bを含有する溶液から、目的とするブロック共重合体混合物を回収する。回収の方法は、常法に従えばよく、特に限定されない。例えば、反応終了後に、必要に応じて、水、メタノール、エタノール、プロパノール、塩酸、クエン酸などの重合停止剤を添加し、さらに必要に応じて、酸化防止剤などの添加剤を添加してから、溶液に直接乾燥法やスチームストリッピングなどの公知の方法を適用することにより、回収することができる。スチームストリッピングなどを適用して、ブロック共重合体混合物がスラリーとして回収される場合は、押出機型スクイザーなどの任意の脱水機を用いて脱水して、所定値以下の含水率を有するクラムとし、さらにそのクラムをバンドドライヤーあるいはエクスパンション押出乾燥機などの任意の乾燥機を用いて乾燥すればよい。以上のようにして得られるブロック共重合体混合物は、どのような形態で回収しても良いが、重合体溶融混合物との混合を容易にする観点からは、ペレット状のブロック共重合体混合物として回収することが好ましい。ペレット状のブロック共重合体混合物を得る方法としては、溶融状態のブロック共重合体混合物をストランド状に成形し、ペレタイザーを用いてペレット状に造粒する方法を例示することができる。
以上のようにブロック共重合体混合物を製造することにより、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bを同じ反応容器内で連続して得ることができるので、それぞれのブロック共重合体を個別に製造し混合する場合に比して、極めて優れた生産性で目的のブロック共重合体混合物を得ることができる。しかも、得られるブロック共重合体混合物は、各ブロック共重合体の各重合体ブロックの重量平均分子量が、本発明のブロック共重合体組成物を構成するためのブロック共重合体混合物として、特に望ましいバランスを有するので、高い弾性率と小さい永久伸びとが高度にバランスされたブロック共重合体組成物を得ることができる。
例えば以上のようにして得られるブロック共重合体混合物をブロック共重合体として用いて、本発明のブロック共重合体組成物を構成すると、耐ブロッキング性に極めて優れ、しかも、高い弾性率と小さい永久伸びとが高度にバランスされたブロック共重合体組成物が得られる。そのため、このブロック共重合体組成物を成形してなるフィルムは、特に高い弾性率と小さい永久伸びとが要求される用途に好適であり、例えば、紙おむつや生理用品などの衛生用品の構成要素として用いられる伸縮性のフィルムとして好適に用いられる。
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。
各種の測定については、以下の方法に従って行った。
〔ブロック共重合体およびブロック共重合体混合物の重量平均分子量および分子量分布〕
流速0.35ml/分のテトラヒドロフランをキャリアとする高速液体クロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として、数平均分子量および重量平均分子量を求め、分子量分布はこれらの値から計算して求めた。装置は、東ソー社製HLC8220、カラムは昭和電工社製Shodex KF−404HQを3本連結したもの(カラム温度40℃)、検出器は示差屈折計および紫外検出器を用い、分子量の較正はポリマーラボラトリー社製の標準ポリスチレン(500から300万)の12点で実施した。
〔ブロック共重合体混合物における各ブロック共重合体の重量比〕
上記の高速液体クロマトグラフィにより得られたチャートの各ブロック共重合体に対応するピークの面積比から求めた。
〔ブロック共重合体におけるスチレン重合体ブロックの重量平均分子量〕
Rubber Chem. Technol.,45,1295(1972)に記載された方法に従い、ブロック共重合体をオゾンと反応させ、水素化リチウムアルミニウムで還元することにより、ブロック共重合体のイソプレン重合体ブロックを分解した。具体的には、以下の手順で行なった。すなわち、モレキュラーシーブで処理したジクロロメタン100mlを入れた反応容器に、試料を300mg溶解した。この反応容器を冷却槽に入れ−25℃としてから、反応容器に170ml/minの流量で酸素を流しながら、オゾン発生器により発生させたオゾンを導入した。反応開始から30分経過後、反応容器から流出する気体をヨウ化カリウム水溶液に導入することにより、反応が完了したことを確認した。次いで、窒素置換した別の反応容器に、ジエチルエーテル50mlと水素化リチウムアルミニウム470mgを仕込み、氷水で反応容器を冷却しながら、この反応容器にオゾンと反応させた溶液をゆっくり滴下した。そして、反応容器を水浴に入れ、徐々に昇温して、40℃で30分間還流させた。その後、溶液を撹拌しながら、反応容器に希塩酸を少量ずつ滴下し、水素の発生がほとんど認められなくなるまで滴下を続けた。この反応の後、溶液に生じた固形の生成物をろ別し、固形の生成物は、100mlのジエチルエーテルで10分間抽出した。この抽出液と、ろ別した際のろ液とをあわせ、溶媒を留去することにより、固形の試料を得た。このようにして得られた試料につき、上記の重量平均分子量の測定法に従い、重量平均分子量を測定し、その値をスチレン重合体ブロックの重量平均分子量とした。
〔ブロック共重合体におけるイソプレン重合体ブロックの重量平均分子量〕
それぞれ上記のようにして求められた、ブロック共重合体の重量平均分子量から、対応するスチレン重合体ブロックの重量平均分子量を引き、その計算値に基づいてイソプレン重合体ブロックの重量平均分子量を求めた。
〔ブロック共重合体およびブロック共重合体混合物のスチレン単位含有量〕
プロトンNMRの測定に基づき求めた。
〔イソプレン重合体ブロックのビニル結合含有量〕
プロトンNMRの測定に基づき求めた。
〔ブロック共重合体およびブロック共重合体混合物のメルトインデックス〕
ASTM D−1238(G条件、200℃、5kg)に準拠して測定した。
〔フィルムのタック〕
試料となるフィルムについて、プローブタック試験機「Polyken Probe Tack PT−1000」(Chemsultants International社製)を用いて、荷重200g、プローブ速度24インチ/分の条件で、タックを測定し、その最大値を測定値とした。なお、この測定は、それぞれの例において、フィルムを成形した直後と、フィルムを温度23℃±1℃、相対湿度50%±5%の条件下で3日間保存した後との両方について行った。タックが小さいものほど耐ブロッキング性に優れる。
〔フィルムの引張弾性率〕
測定対象となるフィルムから、幅25mmのフィルムを2枚切り出し、これを試料として用いて、引っ張る方向を成形時の溶融流れ垂直方向にあわせて測定した。測定手順は以下の通りである。ORIENTEC社製のテンシロン万能試験機RTC−1210に試料を無張力でチャック間距離40mmとして固定した。そして、試料を300mm/分の速度で200%まで延伸し、次いで試料を300mm/分の速度で初期のチャック間距離まで戻した。さらに、その試料を同じ速度でもう一度200%まで伸張させた後、再び同じ速度で初期のチャック間距離まで戻した。2回目の初期のチャック間距離に戻す過程における100%伸張時の引張応力を測定し、100%伸張時におけるフィルムの引張弾性率を求めた。なお、引張弾性率が高いものほど高い弾性率を有するといえる。
〔フィルムの永久伸び〕
試料となるフィルムについて、ASTM 412に準拠して上記のテンシロン万能試験機を用いて、引っ張る方向を成形時の溶融流れ垂直方向にあわせて測定した。具体的には、サンプル形状はDieAを使用し、伸張前の標線間距離を40mmとしてフィルムを伸び率100%で伸張させ、そのままの状態で10分間保持した後、はね返させることなく急に収縮させて、10分間放置後、標線間距離を測定し、下式に基づいて永久伸びを求めた。
永久伸び(%)=(L1−L0)/L0×100
L0:伸張前の標線間距離(mm)
L1:収縮させて10分間放置後の標線間距離(mm)
〔製造例〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン2.5ミリモルおよびスチレン1.60kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム164.7ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン5.20kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、ジメチルジクロロシラン65.9ミリモルを添加して、2時間カップリング反応を行い、式(B)で表されるブロック共重合体Bに該当するスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。この後、50〜60℃を保つように温度制御しながら、スチレン3.20kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、式(A)で表されるブロック共重合体Aに該当するスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。スチレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール329.4ミリモルを添加してよく混合し反応を停止した。得られた反応液の一部を取り出し、これを試料として、各ブロック共重合体およびブロック共重合体混合物の重量平均分子量、各ブロック共重合体の重量比、各スチレン重合体ブロックの重量平均分子量、各イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量、ブロック共重合体混合物のスチレン単位含有量ならびにイソプレン重合体ブロックのビニル結合含有量を求めた。以上のようにして得られた反応液100部(重合体成分を30部含有)に、酸化防止剤として、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85〜95℃に加熱された温水中に滴下して溶媒を揮発させて析出物を得て、この析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥することにより、ブロック共重合体混合物を回収した。このブロック共重合体混合物については、メルトインデックスを測定した。なお、測定の結果、ブロック共重合体Aの、比較的小さい重量平均分子量を有するスチレン重合体ブロックの重量平均分子量(Mw(Ar1a))は10,000、比較的大きい重量平均分子量を有するスチレン重合体ブロックの重量平均分子量(Mw(Ar2a))は153,000、イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量(Mw(Da))は52,000、イソプレン重合体ブロックのビニル結合含有量は7モル%、ブロック共重合体A(全体)の重量平均分子量(MwA)は215,000、ブロック共重合体Bの、スチレン重合体ブロックの重量平均分子量(Mw(Arb))は10,000、イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量(Mw(Db))は48,500、イソプレン重合体ブロックのビニル結合含有量は7モル%、ブロック共重合体B(全体)の重量平均分子量(MwB)は117,000、ブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの重量比(A/B)は42/58、ブロック共重合体混合物の重量平均分子量は149,000、ブロック共重合体混合物のスチレン単位含有量は48重量%、ブロック共重合体混合物のメルトインデックスは17g/10分であった。
〔実施例1〕
製造例で得られたブロック共重合体混合物の粉砕物100部と、ステアリン酸アミド(日本化成社製「アマイドAP−1」)3部と、ポリエチレンワックス(Honeywell社製「A−C 8」,140℃における粘度450mPa・s)3部とをT−ダイを装着した二軸押出機に投入した。そして、この二軸押出機内において、これらを200℃で加熱溶融、混練することにより、ブロック共重合体組成物を構成し、これを20分間連続してPET製離型フィルムに挟み込みようにして押し出すことにより、平均厚さ0.05mmのフィルム状に成形した。このようにして得られた実施例1のフィルムについて、引張弾性率および永久伸びを測定し、また、成形直後と三日間保存後のタックの測定を行なった。これらの結果は、表1に示す。なお、フィルムの成形条件の詳細は、以下の通りである。
組成物処理速度 :5kg/hr
フィルム引き取り速度 :4m/min
押出機温度 :投入口100℃、T−ダイ200℃に調整
スクリュー :フルフライト
押出機L/D :30
T−ダイ :幅200mm、リップ0.5mm
〔実施例2〜6、比較例1〜7〕
二軸押出機に投入する成分の種類および量を表1に示す通りに変更したこと以外は、それぞれ、実施例1と同様にして、ブロック共重合体組成物を構成し、実施例2〜6および比較例1〜7のフィルムを得た。これらのフィルムについては、実施例1と同様の測定を行った。これらの結果は、表1に示す。なお、表1において、「Vector4411」は、DEXCO polymers社製のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体である「Vector4411」を指し、この「Vector4411」のスチレン重合体ブロックの重量平均分子量は14,000、イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量は62,000、イソプレン重合体ブロックのビニル結合含有量は7モル%、重量平均分子量は90,000、スチレン単位含有量は44重量%、メルトインデックスは14g/10分であった。また、「Vector4211」は、DEXCO polymers社製のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体である「Vector4211」を指し、この「Vector4211」のスチレン重合体ブロックの重量平均分子量は13,000、イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量は90,000、イソプレン重合体ブロックのビニル結合含有量は7モル%、重量平均分子量は116,000、スチレン単位含有量は30重量%、メルトインデックスは14g/10分であった。また、「エチレン・ビスステアリン酸アミド」は、花王社製のエチレン・ビスステアリン酸アミドである「カオーワックスEB−P」を指す。また、「パラフィンワックス」は、日本精鑞社製の140℃における粘度が2.4mPa・sのパラフィンワックスである「パラフィンワックス140」を指す。
表1から、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体に脂肪酸モノアミドおよびポリエチレンワックスを配合してなる本発明のブロック共重合体組成物(実施例1〜6)は、フィルム成形直後およびフィルム成形3日後の両方において、十分に小さいタックを示した。一方、脂肪酸モノアミドを配合していないブロック共重合体組成物(比較例1,2,4,6)では、フィルム成形直後のタックが大きくなる傾向が見られ、脂肪酸モノアミドに代えて脂肪酸ビスアミドを配合した場合(比較例4,6)であっても、その傾向は変わらなかった。また、ポリエチレンワックスを配合していないブロック共重合体組成物(比較例1,3,5,7)では、フィルム成形3日後のタックが大きくなる傾向が見られ、ポリエチレンワックスに代えてパラフィンワックスを配合した場合(比較例5,7)であっても、その傾向は変わらなかった。以上より、本発明のブロック共重合体組成物は、耐ブロッキング性に極めて優れるものであることがわかる。