JP2020132697A - 光学フィルム及び光学フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、本発明は、以下を提供する。
前記引張応力緩和試験が、前記光学フィルムに引張力を与えて、0.5%の引張ひずみを印加し、前記0.5%の引張ひずみを印加した時から300秒後まで前記引張ひずみを保持する試験であり、
前記応力緩和率Rは、下記式(1):
R(%)=(σ0−σ300)/σ0×100 (1)
から算出され、ここで、σ0は、前記光学フィルムに前記0.5%の引張ひずみが印加された時における前記光学フィルムの引張応力を表し、σ300は、前記光学フィルムに前記0.5%の引張ひずみが印加された時から300秒後における前記光学フィルムの引張応力を表す、光学フィルム。
[2] 厚みが60μm以下である、[1]に記載の光学フィルム。
[3] 前記引張方向Dにおける引張弾性率が4000MPa以下である、[1]又は[2]に記載の光学フィルム。
[4] フィルムに引張力を与えて、0.5%以上の引張ひずみを印加し、1分間以上前記引張ひずみを保持する工程(1)、及び
前記フィルムから、前記引張力を除く工程(2)をこの順で含む、光学フィルムの製造方法。
本発明の一実施形態である光学フィルムは、引張応力緩和試験において、応力緩和率Rが、少なくとも一の引張方向Dにおいて1.5%以下である。
応力緩和率Rを測定するための引張応力緩和試験とは、光学フィルムに引張力を与えて、0.5%の引張ひずみを印加し、前記0.5%の引張ひずみを印加した時から300秒後まで前記引張ひずみを保持する試験である。
試験片を打ち抜く際に、試験片の長手方向は、光学フィルムの任意の方向と平行な方向とすることができ、例えば、後述する引張処理における引張方向と平行な方向、後述する引張処理が行われていない場合は、フィルム製造時の搬送方向と平行な方向とすることができる。複数の試験片を、長手方向が光学フィルムにおける種々の方向と平行となるように光学フィルムから打ち抜き、これらの複数の試験片について引張応力緩和試験を行ってもよい。
R(%)=(σ0−σ300)/σ0×100 (1)
応力緩和率Rが、前記範囲に収まることにより、長時間折り曲げられた状態に置かれた後、折り曲げ前の形態に戻された場合における、光学フィルムの変形が抑制されうる。
光学フィルムは、引張方向Dにおける引張弾性率が、好ましくは4000MPa以下、より好ましくは3500MPa以下、更に好ましくは3000MPa以下であり、通常0MPa以上であり、500MPa以上であってもよい。
引張弾性率は、前記引張応力緩和試験において応力緩和率Rが1.5%以下である光学フィルムの方向(引張方向D)を引張方向とした、引張方向Dにおける引張弾性率である。また、引張弾性率は、例えば、温度23℃、湿度40%RH、引張速度20mm/min(ひずみ速度13%/min)の測定条件で得られうる。
光学フィルムは、通常熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂は、通常熱可塑性の重合体を含む。熱可塑性の重合体は、単独重合体であっても共重合体であってもよい。
熱可塑性の重合体の例としては、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン);脂環式構造含有重合体(例、ノルボルネン系重合体);セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース);ポリ塩化ビニル;ポリビニルアルコール;ポリスチレン;ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート);ポリアミド;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;変性ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンスルフィド;ポリアリレート;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;(メタ)アクリル重合体;及び、スチレン/アクリロニトリル共重合体が挙げられる。熱可塑性樹脂は、熱可塑性の重合体を1種単独で含んでいてもよく、2種以上の任意の比率の組み合わせで含んでいてもよい。
また、脂環式構造含有重合体において、脂環式構造を有する構造単位以外の残部は、特に限定されず、使用目的に応じて適宜選択しうる。
光学フィルムは、単層構造を有していてもよく、複層構造を有していてもよい。好ましくは、光学フィルムは、単層構造を有する。光学フィルムには、コロナ処理などの表面処理、延伸処理などの、任意の処理が施されていてもよい。
前記光学フィルムの製造方法は、特に限定されないが、好ましくは、光学フィルムは、フィルムに引張力を与えて、0.5%以上の引張ひずみを印加し、1分間以上前記引張ひずみを保持する工程(1)、及び前記フィルムから、前記引張力を除く工程(2)をこの順で含む方法により製造される。
工程(1)では、フィルムに引張力を与えて0.5%以上の引張ひずみを印加する。
引張力を与える引張処理を施すフィルム(引張処理前フィルム)は、通常熱可塑性樹脂を含む。フィルムに含まれうる熱可塑性樹脂としては、光学フィルムの材料として前記した熱可塑性樹脂から選択してよい。
工程(1)を行う湿度は、例えば20%RH以上60%RH以下としうる。
工程(2)は、通常工程(1)に連続して行われる。工程(2)では、フィルムから引張力を除く。フィルムから引張力を除くことにより、引張ひずみの少なくとも一部が解放される。引張力の除去は、例えば、フィルムを挟持する治具からフィルムを解放することによって行われる。フィルムから引張力を除くことにより、前記光学フィルムが得られる。
本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法は、前記工程(1)及び(2)以外に、任意の工程を含んでいてもよい。任意の工程の例としては、得られた光学フィルムを巻き取る工程、光学フィルムを切断する工程、光学フィルムにコロナ処理などの表面処理を施す工程、及び光学フィルムに粘着剤を塗布する工程が挙げられる。
光学フィルムは、長時間折り曲げられた状態に置かれた後、折り曲げ前の形態に戻された場合における、変形が抑制されている。したがって、光学フィルムを、折り曲げ可能な装置(例えば、折り曲げ可能なディスプレイ)に好適に用いうる。具体的には、折り曲げ可能なディスプレイの保護フィルム、折り曲げ可能なディスプレイに搭載される偏光板の保護フィルム、折り曲げ可能なタッチパネルの基材フィルムなどとして好適に用いうる。
(応力緩和率R)
測定対象のフィルムから、JIS K7127に従ったタイプ1Bのダンベル形状である試験片を打ち抜いた。測定対象のフィルムが、引張処理がされているフィルムである場合、試験片の長手方向が引張処理の方向と平行となるように打ち抜いた。測定対象のフィルムが、引張処理がされていないフィルムである場合、試験片の長手方向がフィルム製造時の搬送方向と平行となるように試験片を打ち抜いた。測定装置として、恒温恒湿槽付の引張試験機(インストロン社製「5564型」)を用い、23℃、40%RHの条件で測定を行った。試験片の長手方向の両端部をそれぞれチャックで固定し、長手方向を引張方向として、引張力を加えた。引張速度は20mm/min(ひずみ速度13%/min)とした。引張方向におけるひずみ(引張ひずみ)が0.5%に達したときのチャックの間隔を保持して、試験片に0.5%の引張ひずみを印加した。ひずみが0.5%に達した時の応力値をσ0とした。ひずみが0.5%に達した時から300秒後まで、0.5%のひずみを保持し、その間の応力値を測定し、300秒後における応力値をσ300として、応力緩和率R(%)を、下記式(1)から算出した。
R(%)=(σ0−σ300)/σ0×100 (1)
JIS K7127に準拠して、23℃40%RHにおける測定対象のフィルムの引張弾性率を測定した。測定対象のフィルムから、長手方向が、フィルムの搬送方向(MD)と平行となるように、5片の試験片を打ち抜いた。測定装置として、恒温恒湿槽付の引張試験機(インストロン社製「5564型」)を用いた。引張速度は、20mm/min(ひずみ速度13%/min)とし、MDに沿って打ち抜かれた試験片(N=5)の引張弾性率の平均値を、フィルムの引張弾性率とした。
測定対象のフィルムを、卓上型耐久試験器(ユアサシステム機器株式会社製「DLDMLH−FS」)を用いて、下記に従い静的屈曲試験を行った。
測定対象のフィルムを折り曲げ、2枚の板の間に挟んだ。測定対象のフィルムが引張処理されているフィルムである場合、引張処理における引張方向と直交する方向が折山の方向となるように折り曲げた。測定対象のフィルムが引張処理されていないフィルムである場合、TDの方向が折山の方向となるように折り曲げた。2枚の板の隙間は、4mmとし、フィルムの曲げ半径が2mmとなるようにした。
2枚の板の間にフィルムを挟んだ状態で24時間、23℃40%RHに調整された試験器中に静置した後に、フィルムを試験器から取り出して折り曲げられたフィルムを広げ、目視にて、フィルムに変形があるか否かについて、1回目の判定をした。更に、フィルムを広げてから水平な台に12時間静置した後に、目視にて、フィルムに変形があるか否かについて、2回目の判定をした。
下記の基準により、静的屈曲試験における耐屈曲性を評価した。
不良:1回目の判定においてフィルムに変形があるが、2回目の判定においてフィルムに変形がない。
悪い:1回目及び2回目の両方の判定において、フィルムに変形がある。
重合体の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(東ソー社製「HLC−8320」)を用いて、ポリスチレン換算値として測定した。測定の際、カラムとしてはHタイプカラム(東ソー社製)を用い、溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた。また、測定時の温度は、40℃であった。
窒素雰囲気下で300℃に加熱した試料を液体窒素で急冷し、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温して試料のガラス転移温度Tgおよび融点Mpをそれぞれ求めた。
重合体の水素添加率は、オルトジクロロベンゼン−d4を溶媒として、145℃で、1H−NMR測定により測定した。
オルトジクロロベンゼン−d4を溶媒として、200℃で、inverse−gated decoupling法を適用して、重合体の13C−NMR測定を行った。この13C−NMR測定の結果から、オルトジクロロベンゼン−d4の127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルとを同定した。これらのシグナルの強度比に基づいて、重合体のラセモ・ダイアッドの割合を求めた。
金属製の耐圧反応器を、充分に乾燥した後、窒素置換した。この金属製耐圧反応器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の濃度70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、及び1−ヘキセン1.9部を加え、53℃に加温した。
この触媒溶液を耐圧反応器に加えて、開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら4時間反応させて、ジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液を得た。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8,750および28,100であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
(トリブロック共重合体水素化物のアルコキシシリル変性物(樹脂D)の製造)
国際公開2014/077267号に記載された方法を参考にして、芳香族ビニル化合物としてのスチレン25部、鎖状共役ジエン化合物としてのイソプレン50部、及びスチレン25部をこの順に重合して、[A]−[B]−[A]のブロック構成を有するトリブロック共重合体水素化物(h1)(重量平均分子量Mw=48,200;分子量分布Mw/Mn=1.04;主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに、芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率ほぼ100%)を製造した。ここで、重合体ブロック[A]は芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]を主成分とする重合体ブロックである。重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする重合体ブロックである。さらに、前記国際公開2014/077267号に記載された方法を参考にして、前記のトリブロック共重合体水素化物(h1)100部に、ビニルトリメトキシシラン2部を結合させて、トリブロック共重合体水素化物(h1)のアルコキシシリル変性物(樹脂D ガラス転移温度Tg=120℃)のペレットを製造した。
(引張処理前フィルムの製造)
脂環式構造含有重合体を含む樹脂である、樹脂A(日本ゼオン社製「ZEONOR」、ガラス転移温度Tg=163℃)を用意した。
樹脂Aを、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機に供給した。このフィルム成形機を用いて、前記の樹脂からなる長尺のフィルム(厚み40μm、幅1300mm)を製造した。前記長尺のフィルムの任意の場所から、長手方向がフィルム製造時の搬送方向と平行である、長さ200mm×幅50mmの引張処理前フィルムを切り出した。
前記引張処理前フィルムの、長手方向における両端部を、引張試験機(インストロン社製「5564型」)の上下チャックに固定した。チャックの間隔は、150mmに設定した。23℃、40%RHの条件下で、引張速度20mm/min(ひずみ速度13%/min)で、引張方向におけるひずみ(引張ひずみ)が1%となるまでフィルムを引張り、ひずみが1%の状態を1分間保持した。
次いで、フィルムに加えられている引張力を除いて、フィルムのひずみを解放した。フィルムをチャックから取り外して、このフィルムを引張処理フィルムとして、前記方法により応力緩和率R、引張弾性率、及び静的屈曲試験による耐屈曲性を評価した。
下記事項を変更した以外は実施例1と同様にして、引張処理フィルムを得て、該フィルムについて評価した。
・樹脂Aの代わりに、脂環式構造含有重合体を含む樹脂である、樹脂B(日本ゼオン社製「ZEONOR」、ガラス転移温度Tg=126℃)を用いた。
下記事項を変更した以外は実施例1と同様にして、引張処理フィルムを得て、該フィルムについて評価した。
・樹脂Aの代わりに、脂環式構造含有重合体を含む樹脂である、前記製造例1に従い製造した樹脂Cを用いた。
実施例1の(引張処理前フィルムの製造)で得られた、引張処理前フィルムについて評価した。
下記事項を変更した以外は実施例1の(引張処理前フィルムの製造)と同様にして、引張処理前フィルムを得て、該フィルムについて評価した。
・樹脂Aの代わりに、前記樹脂Bを用いた。
下記事項を変更した以外は実施例1の(引張処理前フィルムの製造)と同様にして、引張処理前フィルムを得て、該フィルムについて評価した。
・樹脂Aの代わりに、前記樹脂Cを用いた。
下記事項を変更した以外は実施例1の(引張処理前フィルムの製造)と同様にして、引張処理前フィルムを得て、該フィルムについて評価した。
・樹脂Aの代わりに、前記製造例2に従い製造した樹脂Dを用いた。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学株式会社製「ダイアホイル(登録商標) MRV38」、厚み38μm)について、評価した。
応力緩和率Rが1.5%以下である、実施例1〜3に係るフィルムは、静的屈曲試験における耐屈曲性が良好である。
一方、応力緩和率Rが1.5%を超える比較例1〜5に係るフィルムは、静的屈曲試験における耐屈曲性の評価が不良であるか、又は悪い。
以上の結果は、応力緩和率Rが少なくとも一の引張方向において1.5%以下である、本発明の光学フィルムが、長時間折り曲げられた状態に置かれた後、折り曲げ前の形態に戻された場合に、変形が抑制されていることを示す。
Claims (4)
- 引張応力緩和試験において、応力緩和率Rが、少なくとも一の引張方向Dにおいて1.5%以下である光学フィルムであって、
前記引張応力緩和試験が、前記光学フィルムに引張力を与えて、0.5%の引張ひずみを印加し、前記0.5%の引張ひずみを印加した時から300秒後まで前記引張ひずみを保持する試験であり、
前記応力緩和率Rは、下記式(1):
R(%)=(σ0−σ300)/σ0×100 (1)
から算出され、ここで、σ0は、前記光学フィルムに前記0.5%の引張ひずみが印加された時における前記光学フィルムの引張応力を表し、σ300は、前記光学フィルムに前記0.5%の引張ひずみが印加された時から300秒後における前記光学フィルムの引張応力を表す、光学フィルム。 - 厚みが60μm以下である、請求項1に記載の光学フィルム。
- 前記引張方向Dにおける引張弾性率が4000MPa以下である、請求項1又は2に記載の光学フィルム。
- フィルムに引張力を与えて、0.5%以上の引張ひずみを印加し、1分間以上前記引張ひずみを保持する工程(1)、及び
前記フィルムから、前記引張力を除く工程(2)をこの順で含む、光学フィルムの製造方法。
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