JP2018069613A - 積層フィルム、製造方法、偏光板、及び表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】構成要素である各層の間の密着性が高く、面内方向のレターデーションが小さく、且つ表面硬度が高く、それにより偏光子保護フィルムとして有用に用いうる積層フィルム等を提供する。【解決手段】熱可塑性樹脂AからなるA層、熱可塑性樹脂BからなるB層、及び熱可塑性樹脂CからなるC層を備える積層フィルムであって、樹脂Aは、環式炭化水素基含有化合物水素化物単位[I]を主成分とする2つ以上の重合体ブロックと、鎖状炭化水素化合物水素化物単位[II]、又は単位[I]及び単位[II]の組み合わせを主成分とする1つ以上の重合体ブロックを含む水素化ブロック共重合体を含み、樹脂Aの熱軟化温度、樹脂Bの熱軟化温度、樹脂Cの熱軟化温度、C層の押込み弾性率、A層の厚み、B層の厚み、C層の厚み、及び積層フィルムの面内方向のレターデーションが、特定の要件を満たす、積層フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、積層フィルム、その製造方法、偏光板及び表示装置に関する。
表示装置等の光学的な装置において、樹脂製のフィルムを用いることは広く行われており、そのようなフィルムとして、複数の層を備える積層フィルムが知られている(例えば特許文献1)。そのような積層フィルムは、積層フィルムを構成する層の材料、厚さ等の要素を適宜選択することにより、所望の物理的性質及び光学的性質等を容易に得ることができる。積層フィルムは、例えば、偏光子及び偏光子保護フィルムを備える偏光板において、偏光子保護フィルムとして用いられることがある。
特開2013−188945号公報
偏光子保護フィルムの用途に用いられる積層フィルムには、積層フィルムを構成する各層の間の密着性が高いことが求められる。加えて、偏光子保護フィルムの用途に用いられる積層フィルムは、多くの場合において、その面内方向のレターデーションが小さいことが求められる。
さらに、偏光板保護フィルムは、その表面が、表示装置の最外表面に位置する態様で用いられる場合がある。そのような用途に用いられる積層フィルムは、表面の硬度が高いものであることが求められる。例えば、表面にハードコート層を設けた状態において、鉛筆硬度でH以上といった硬度が求められる場合がある。
しかしながら、上に述べた全ての特性において優れた積層フィルムを得ることは困難であった。
したがって、本発明の目的は、構成要素である各層の間の密着性が高く、面内方向のレターデーションが小さく、且つ表面硬度が高く、それにより偏光子保護フィルムとして有用に用いうる積層フィルム;並びに耐久性が高く且つ表示装置に有用に用いうる光学特性を有する偏光板、及び耐久性が高く且つ表示品質が優れた表示装置を提供することにある。
本発明者は、前記の課題を解決するべく検討した。その結果、本発明者は、特定の材料を特定の層構成で組み合わせて採用することにより、低位相差、密着性及び表面硬度のいずれをも良好にしうることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のとおりである。
〔1〕 熱可塑性樹脂AからなるA層、前記A層の少なくとも一方の面上に設けられた熱可塑性樹脂BからなるB層、及び前記B層の、前記A層側の面とは反対側の面上に設けられた、熱可塑性樹脂CからなるC層を備える積層フィルムであって、
前記熱可塑性樹脂Aは、
環式炭化水素基含有化合物水素化物単位[I]を主成分とする、2つ以上の重合体ブロック[D]と、
鎖状炭化水素化合物水素化物単位[II]、又は前記単位[I]及び前記単位[II]の組み合わせを主成分とする1つ以上の重合体ブロック[E]
を含む水素化ブロック共重合体[G]を含み、
前記熱可塑性樹脂Bは、前記熱可塑性樹脂Aとは異なる樹脂であり、
前記熱可塑性樹脂Cは、前記熱可塑性樹脂Aとも前記熱可塑性樹脂Bとも異なる樹脂であり、
前記熱可塑性樹脂Aの熱軟化温度Ts[A]、前記熱可塑性樹脂Bの熱軟化温度Ts[B]、前記熱可塑性樹脂Cの熱軟化温度Ts[C]、前記C層の押込み弾性率E[C]、前記A層の厚みt[A]、前記B層の厚みt[B]、前記C層の厚みt[C]、及び前記積層フィルムの面内方向のレターデーションRe(total)が、下記式(1)〜(6)を満たす、積層フィルム。
(1)165℃>Ts[C]>Ts[A]>Ts[B]>120℃
(2)2500MPa≧E[C]≧2200MPa
(3)10μm≦t[A]≦30μm
(4)1μm≦t[B]≦6μm
(5)5μm≦t[C]≦20μm
(6)0nm≦Re(total)≦10nm
〔2〕 前記環式炭化水素基含有化合物が芳香族ビニル化合物であり、前記鎖状炭化水素化合物が鎖状共役ジエン系化合物である、〔1〕に記載の積層フィルム。
〔3〕 前記熱可塑性樹脂Bは脂環式構造を含有する重合体を含む樹脂である〔1〕又は〔2〕に記載の積層フィルム。
〔4〕 前記熱可塑性樹脂Cは脂環式構造を含有する重合体を含む樹脂である〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の積層フィルム。
〔5〕 〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂Aからなるa層、前記a層の少なくとも一方の面上に設けられた熱可塑性樹脂Bからなるb層、及び前記b層の、前記a層側の面とは反対側の面上に設けられた、熱可塑性樹脂Cからなるc層を備える延伸前フィルムを調製する工程、及び
前記延伸前フィルムを、少なくとも1の方向に延伸する延伸工程を含む、製造方法。
〔6〕 〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の積層フィルムと偏光子とを備える偏光板。
〔7〕 〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の積層フィルムを備える表示装置。
本発明の積層フィルムは、構成要素である各層の間の密着性が高く、面内方向のレターデーションが小さく、且つ表面硬度が高く、それにより偏光子保護フィルムとして有用に用いうる。本発明の製造方法によれば、そのような本発明の積層フィルムを容易に製造することができる。本発明の偏光板は、耐久性が高く且つ表示装置に有用に用いうる光学特性を有する。本発明の表示装置は、耐久性が高く且つ表示品質が優れた表示装置としうる。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、環式炭化水素基とは、芳香族環、シクロアルカン、シクロアルケン等の、環状の構造を含む炭化水素の基である。また、鎖状炭化水素化合物とは、かかる環式炭化水素基を含まない炭化水素化合物である。
以下の説明において、フィルムの面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx−ny)×dで表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、フィルムの前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzはフィルムの厚み方向の屈折率を表す。dは、フィルムの厚みを表す。レターデーションの測定波長は、別に断らない限り、532nmである。
以下の説明において、「偏光板」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。長尺のフィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
〔1.積層フィルムの概要〕
本発明の積層フィルムは、熱可塑性樹脂AからなるA層、A層の少なくとも一方の面上に設けられた熱可塑性樹脂BからなるB層、及びB層の、A層側の面とは反対側の面上に設けられた、熱可塑性樹脂CからなるC層を備える。
積層フィルムは、A層、B層及びC層のそれぞれを、1層のみ備えてもよく、2層以上備えてもよい。積層フィルムが、A層、B層及びC層のそれぞれを1層のみ備える場合、積層フィルムは、(A層)/(B層)/(C層)の層構成を有することとなる。積層フィルムの層構成の他の例としては、(B層)/(A層)/(B層)/(C層)の層構成、及び(C層)/(B層)/(A層)/(B層)/(C層)の層構成が挙げられる。本発明の効果を良好に得る観点からは、(C層)/(B層)/(A層)/(B層)/(C層)の層構成が好ましい。
〔2.熱可塑性樹脂A〕
熱可塑性樹脂Aは、環式炭化水素基含有化合物水素化物単位[I]を有する、2つ以上の重合体ブロック[D]と、鎖状炭化水素化合物水素化物単位[II]、又は単位[I]及び単位[II]の組み合わせを有する1つ以上の重合体ブロック[E]を含む水素化ブロック共重合体[G]を含む。
〔2.1.環式炭化水素基含有化合物水素化物単位[I]〕
環式炭化水素基含有化合物水素化物単位[I]は、環式炭化水素基含有化合物を重合し、さらに、かかる重合により得られた単位が不飽和結合を有していればその不飽和結合を水素化して得られる構造を有する構造単位である。ただし、環式炭化水素基含有化合物水素化物単位[I]は、当該構造を有する限りにおいて、どのような製造方法で得られた単位をも含む。
環式炭化水素基含有化合物水素化物単位[I]は、好ましくは、芳香族ビニル化合物を重合し、その不飽和結合を水素化して得られる構造を有する構造単位(芳香族ビニル化合物水素化物単位[I])である。ただし、芳香族ビニル化合物水素化物単位[I]は、当該構造を有する限りにおいて、どのような製造方法で得られた単位をも含む。
同様に、本願においては、例えばスチレンを重合し、その不飽和結合を水素化して得られる構造を有する構造単位を、スチレン水素化物単位と呼ぶことがある。スチレン水素化物単位も、当該構造を有する限りにおいて、どのような製造方法で得られた単位をも含む。
芳香族ビニル化合物水素化物単位[I]の例としては、以下の構造式(1)で表される構造単位が挙げられる。
Figure 2018069613
構造式(1)において、Rは脂環式炭化水素基を表す。Rの例を挙げると、シクロヘキシル基等のシクロヘキシル基類;デカヒドロナフチル基類等が挙げられる。
構造式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、又は、極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基を表す。中でもR、R及びRとしては、耐熱性、低複屈折性及び機械強度等の観点から水素原子及び炭素原子数1〜6個の鎖状炭化水素基であることが好ましい。鎖状炭化水素基としては飽和炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
芳香族ビニル化合物水素化物単位[I]の好ましい具体例としては、下記式(1−1)で表される構造単位が挙げられる。式(1−1)で表される構造単位は、スチレン水素化物単位である。
Figure 2018069613
環式炭化水素基含有化合物水素化物単位[I]の例示物において立体異性体を有するものは、そのいずれの立体異性体も使用することができる。環式炭化水素基含有化合物水素化物単位[I]は、1種類だけ用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
〔2.2.鎖状炭化水素化合物水素化物単位[II]〕
鎖状炭化水素化合物水素化物単位[II]は、鎖状炭化水素化合物を重合し、さらに、かかる重合により得られた単位が不飽和結合を有していればその不飽和結合を水素化して得られる構造を有する構造単位である。ただし、鎖状炭化水素化合物水素化物単位[II]は、当該構造を有する限りにおいて、どのような製造方法で得られた単位をも含む。
鎖状炭化水素化合物水素化物単位[II]は、好ましくは、ジエン化合物を重合し、さらに、かかる重合により得られた単位が不飽和結合を有していればその不飽和結合を水素化して得られる構造を有する構造単位(ジエン化合物水素化物単位[II])である。但し、ジエン化合物水素化物単位[II]は、当該構造を有する限りにおいて、どのような製造方法で得られた単位をも含む。
同様に、本願においては、例えばイソプレンを重合し、その不飽和結合を水素化して得られる構造を有する構造単位を、イソプレン水素化物単位と呼ぶことがある。イソプレン水素化物単位も、当該構造を有する限りにおいて、どのような製造方法で得られた単位をも含む。
ジエン化合物水素化物単位[II]は、鎖状共役ジエン化合物等の共役ジエン化合物を重合し、その不飽和結合を水素化して得られる構造を有することが好ましい。その例としては、以下の構造式(2)で表される構造単位、及び構造式(3)で表される構造単位が挙げられる。
Figure 2018069613
構造式(2)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、又は、極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基を表す。中でもR〜Rとしては、耐熱性、低複屈折性及び機械強度等の観点から水素原子及び炭素原子数1〜6個の鎖状炭化水素基であることが好ましい。鎖状炭化水素基としては飽和炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
Figure 2018069613
構造式(3)において、R10〜R15は、それぞれ独立に、水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、又は、極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基を表す。中でもR10〜R15としては、耐熱性、低複屈折性及び機械強度等の観点から水素原子及び炭素原子数1〜6個の鎖状炭化水素基であることが好ましい。鎖状炭化水素基としては飽和炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
ジエン化合物水素化物単位[II]の好ましい具体例としては、下記式(2−1)〜(2−3)で表される構造単位が挙げられる。式(2−1)〜(2−3)で表される構造単位は、イソプレン水素化物単位である。
Figure 2018069613
鎖状炭化水素化合物水素化物単位[II]の例示物において立体異性体を有するものは、そのいずれの立体異性体も使用することができる。鎖状炭化水素化合物水素化物単位[II]は、1種類だけ用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
〔2.3.水素化ブロック共重合体[G]〕
水素化ブロック共重合体[G]は、1分子あたり1つのブロック[E]と、その両端に連結された1分子当たり2つのブロック[D]とを有するトリブロック分子構造を有することが好ましい。すなわち、水素化ブロック共重合体[G]は、1分子あたり1つのブロック[E]と;ブロック[E]の一端に連結され、環式炭化水素基含有化合物水素化物単位[I]を有する、1分子あたり1つのブロック[D1]と;ブロック[E]の他端に連結され、環式炭化水素基含有化合物水素化物単位[I]を有する、1分子あたり1つのブロック[D2]と;を含むトリブロック共重合体であることが好ましい。
上述したトリブロック共重合体としての水素化ブロック共重合体[G]においては、好ましい特性を有する積層フィルムを容易に得る観点から、ブロック[D1]及びブロック[D2]の合計と、ブロック[E]との重量比(D1+D2)/Eが、特定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、重量比(D1+D2)/Eは、好ましくは70/30以上、より好ましくは82/18以上であり、好ましくは90/10以下、より好ましくは87/13以下である。
また、上述したトリブロック共重合体としての水素化ブロック共重合体[G]においては、上記特性を有する積層フィルムを容易に得る観点から、ブロック[D1]とブロック[D2]との重量比D1/D2が、特定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、重量比D1/D2は、好ましくは5以上、より好ましくは5.2以上、特に好ましくは5.5以上であり、好ましくは8以下、より好ましくは7.8以下、特に好ましくは7.5以下である。
水素化ブロック共重合体[G]の重量平均分子量Mwは、好ましくは50000以上、より好ましくは55000以上、特に好ましくは60000以上であり、好ましくは80000以下、より好ましくは75000以下、特に好ましくは70000以下である。重量平均分子量Mwが前記範囲にあることにより、上記特性を有する積層フィルムを容易に得ることができる。特に、重量平均分子量を小さくすることにより、レターデーションの発現性を効果的に小さくできる。
水素化ブロック共重合体[G]の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.7以下、特に好ましくは1.5以下であり、好ましくは1.0以上である。重量平均分子量Mwが前記範囲にあることにより、重合体粘度を低めて成形性を高めることができる。また、レターデーションの発現性を効果的に小さくできる。
水素化ブロック共重合体[G]の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、テトラヒドロフランを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによって、ポリスチレン換算の値として測定しうる。
ブロック[D1]及びブロック[D2]は、それぞれ独立に、環式炭化水素基含有化合物水素化物単位[I]のみからなることが好ましいが、環式炭化水素基含有化合物水素化物単位[I]以外に任意の単位を含みうる。任意の構造単位の例としては、環式炭化水素基含有化合物水素化物単位[I]以外のビニル化合物に基づく構造単位が挙げられる。ブロック[D]における任意の構造単位の含有率は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
ブロック[E]は、鎖状炭化水素化合物水素化物単位[II]のみからなることが好ましいが、鎖状炭化水素化合物水素化物単位[II]以外に任意の単位を含みうる。任意の構造単位の例としては、鎖状炭化水素化合物水素化物単位[II]以外のビニル化合物に基づく構造単位が挙げられる。ブロック[E]における任意の構造単位の含有率は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
上述したトリブロック共重合体としての水素化ブロック共重合体[G]は、レターデーションの発現性が小さい。したがって、樹脂AからなるA層を含む本発明の積層フィルムは、所望の特性を容易に得ることができる。
〔2.4.水素化ブロック共重合体[G]の製造方法〕
水素化ブロック共重合体[G]の製造方法は、特に限定されず任意の製造方法を採用しうる。水素化ブロック共重合体[G]は、例えば、環式炭化水素基含有化合物水素化物単位[I]及び鎖状炭化水素化合物水素化物単位[II]に対応する単量体を用意し、これらを重合させ、得られた重合体[F]を水素化することにより製造しうる。
環式炭化水素基含有化合物水素化物単位[I]に対応する単量体としては、芳香族ビニル化合物を用いうる。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−プロピルスチレン、α−イソプロピルスチレン、α−t−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレン、及び4−フェニルスチレン等のスチレン類;ビニルシクロヘキサン、及び3−メチルイソプロペニルシクロヘキサン等のビニルシクロヘキサン類;並びに4−ビニルシクロヘキセン、4−イソプロペニルシクロヘキセン、1−メチル−4−ビニルシクロヘキセン、1−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセン、2−メチル−4−ビニルシクロヘキセン、及び2−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセン等のビニルシクロヘキセン類が挙げられる。これらの単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
鎖状炭化水素化合物水素化物単位[II]に対応する単量体の例としては、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、及び1,3−ヘキサジエン等の鎖状共役ジエン類挙げられる。これらの単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合の反応様式としては、通常、アニオン重合を採用しうる。また、重合は、塊状重合や、溶液重合等のいずれで行ってもよい。中でも、重合反応と水素化反応とを連続して行うためには、溶液重合が好ましい。
重合反応に際し用いる溶媒の例としては、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、及びイソオクタン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、及びデカリン等の脂環式炭化水素溶媒;並びにベンゼン及びトルエン等の芳香族炭化水素溶媒;が挙げられる。中でも脂肪族炭化水素溶媒及び脂環式炭化水素溶媒を用いると、水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用することができ、好ましい。
溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
溶媒は、通常、全単量体100重量部に対して200〜10,000重量部となるような割合で用いられる。
重合の際、通常は重合開始剤を使用する。重合開始剤の例としては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、及びフェニルリチウム等のモノ有機リチウム;並びにジリチオメタン、1,4−ジオブタン、及び1,4−ジリチオー2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウム化合物が挙げられる。重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
水素化ブロック共重合体[G]として、ブロック[D1]、ブロック[D2]及びブロック[E]を含むトリブロック共重合体を製造する場合における、水素化前の重合体[F]の製造方法の例としては、下記の第一工程〜第三工程を含む製造方法が挙げられる。ここで、「モノマー組成物」と称する材料は、2種類以上の物質の混合物のみならず、単一の物質からなる材料をも包含する。
第一工程:環式炭化水素基含有化合物を含有するモノマー組成物(d1)を重合させて、ブロック[D1]に対応するブロック[d1]を形成する工程。
第二工程:かかるブロック[d1]の一端において、鎖状炭化水素化合物を含有するモノマー組成物(e)を重合させて、ブロック[E]に対応するブロック[e]を形成し、ジブロックの重合体を形成する工程。
第三工程:かかるジブロックの重合体の、ブロック[e]側の末端において、環式炭化水素基含有化合物を含有するモノマー組成物(d2)を重合させて、トリブロック共重合体[F]を得る工程。ただし、モノマー組成物(d1)とモノマー組成物(d2)とは、同一でも異なっていてもよい。
それぞれの重合体ブロックを重合する際には、各ブロック内で、ある1成分の連鎖が過度に長くなることを防止するために、重合促進剤及びランダマイザーを使用しうる。例えば重合をアニオン重合により行う場合には、ルイス塩基化合物をランダマイザーとして使用しうる。ルイス塩基化合物の具体例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、及びエチレングリコールメチルフェニルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、及びピリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、及びカリウム−t−ブチルオキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;並びにトリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合温度は重合が進行する限り制限は無いが、通常0℃以上、好ましくは20℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下である。
重合後は、必要であれば任意の方法により反応混合物から重合体[F]を回収しうる。回収方法の例としては、スチームストリッピング法、直接脱溶媒法、及びアルコール凝固法が挙げられる。また、重合時に水素化反応に不活性な媒体を溶媒として用いた場合は、重合溶液から重合体を回収せず、そのまま水素化工程に供することができる。
重合体[F]を水素化し重合体[G]とする方法に制限は無く、任意の方法を採用しうる。水素化は、例えば、適切な水素化触媒を用いて行いうる。より具体的には、有機溶媒中で、ニッケル、コバルト、鉄、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、及びレニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属を含む水素化触媒を用いて、水素化を行いうる。水素化触媒は、不均一系触媒であってもよく、均一系触媒であってもよい。水素化触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
不均一系触媒は、金属または金属化合物のままで用いてもよく、適切な担体に担持させて用いてもよい。担体の例としては、活性炭、シリカ、アルミナ、炭化カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、及び炭化珪素が挙げられる。担体における触媒の担持量は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上であり、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下である。
均一系触媒の例としては、ニッケル、コバルト、又は鉄の化合物と有機金属化合物(例えば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒;並びにロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、及びレニウム等の有機金属錯体触媒が挙げられる。ニッケル、コバルト、又は鉄の化合物の例としては、これらの金属のアセチルアセトン塩、ナフテン酸塩、シクロペンタジエニル化合物、及びシクロペンタジエニルジクロロ化合物が挙げられる。有機アルミニウム化合物の例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のハロゲン化アルミニウム;並びにジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素化アルキルアルミニウムが挙げられる。
有機金属錯体触媒の例としては、例えば、上記各金属のγ−ジクロロ−π−ベンゼン錯体、ジクロロ−トリス(トリフェニルホスフィン)錯体、ヒドリド−クロロ−トリフェニルホスフィン)錯体等の金属錯体が挙げられる。
水素化触媒の使用量は、重合体100重量部に対して、通常0.01重量部以上、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上であり、通常100重量部以下、好ましくは50重量部以下、より好ましくは30重量部以下である。
水素化反応の際の反応温度は、通常10℃〜250℃であるが、水素化率を高くでき、且つ、重合体鎖切断反応を小さくできるという理由から、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。また、反応時の圧力は、通常0.1MPa〜30MPaであるが、上記理由に加え、操作性の観点から、好ましくは1MPa以上、より好ましくは2MPa以上であり、好ましくは20MPa以下、より好ましくは10MPa以下である。
水素化率は、通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上である。水素化率を高くすることにより、水素化ブロック共重合体[G]の低複屈折性及び熱安定性等を高めることができる。水素化率はH−NMRにより測定できる。
〔2.5.水素化ブロック共重合体[G]以外の任意の成分〕
熱可塑性樹脂Aは、水素化ブロック共重合体[G]のみからなってもよいが、水素化ブロック共重合体[G]以外に任意の成分を含んでいてもよい。
任意の成分としては、例えば、無機微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;染料や顔料等の着色剤;及び帯電防止剤が挙げられる。これらの任意の成分としては、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。ただし、本発明の効果を顕著に発揮させる観点からは、任意の成分の含有割合は少ないことが好ましい。例えば、任意の成分の合計の割合は、水素化ブロック共重合体[G]の100重量部に対して、10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、3重量部以下が更に好ましい。
〔3.熱可塑性樹脂B及び熱可塑性樹脂C〕
熱可塑性樹脂Bは、熱可塑性樹脂Aとは異なる樹脂であり、熱可塑性樹脂Cは、熱可塑性樹脂Aとも熱可塑性樹脂Bとも異なる樹脂である。熱可塑性樹脂A〜Cは、少なくとも熱軟化温度が異なる点において互いに相違する。熱可塑性樹脂B及び熱可塑性樹脂Cとしては、本発明の要件を満たす積層フィルムを与えうる任意の樹脂を採用しうる。特に、脂環式構造を含有する重合体を含む樹脂のうち、所望の特性を有するものを適宜選択して用いうる。
脂環式構造含有重合体は、繰り返し単位中に脂環式構造を有する重合体であり、主鎖中に脂環式構造を含有する重合体及び側鎖に脂環式構造を含有する重合体のいずれも用いることができる。脂環式構造含有重合体は、結晶性の樹脂及び非晶性の樹脂を含むが、本発明の所望の効果を得る観点及び製造コストの観点からは、非晶性の樹脂が好ましい。
脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造等が挙げられるが、熱安定性等の観点からシクロアルカン構造が好ましい。
1つの脂環式構造の繰り返し単位を構成する炭素数に特に制限はないが、通常4個〜30個、好ましくは5個〜20個、より好ましくは6個〜15個である。
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は使用目的に応じて適宜選択されるが、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を有する繰り返し単位をこのように多くすることで、基材フィルムの耐熱性を高めることができる。
脂環式構造含有重合体は、具体的には、(1)ノルボルネン重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物などが挙げられる。これらの中でも、透明性及び成形性の観点から、ノルボルネン重合体及びこれらの水素化物がより好ましい。
ノルボルネン重合体としては、例えば、ノルボルネンモノマーの開環重合体、ノルボルネンモノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素化物;ノルボルネンモノマーの付加重合体、ノルボルネンモノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から、ノルボルネンモノマーの開環重合体水素化物が特に好ましい。
上記の脂環式構造含有重合体は、例えば特開2002−321302号公報に開示されている重合体から選ばれる。
脂環式構造含有重合体は、そのガラス転移温度が、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃〜250℃である。ガラス転移温度がこのような範囲にある脂環式構造含有重合体は、高温下での使用における変形及び応力が生じ難く、耐久性に優れる。
脂環式構造含有重合体の分子量は、溶媒としてシクロヘキサン(樹脂が溶解しない場合にはトルエン)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)で測定したポリイソプレン換算(溶媒がトルエンのときは、ポリスチレン換算)の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000〜100,000、好ましくは25,000〜80,000、より好ましくは25,000〜50,000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、基材フィルムの機械的強度及び成形加工性が高度にバランスされる。
脂環式構造含有重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、通常1〜10、好ましくは1〜4、より好ましくは1.2〜3.5である。
脂環式構造含有重合体を含む樹脂は、脂環式構造含有重合体のみからなってもよいが、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の配合剤を含んでもよい。脂環式構造含有重合体を含む樹脂中の、脂環式構造含有重合体の割合は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
脂環式構造含有重合体を含む樹脂としては、様々な商品が市販されているので、それらのうち、所望の特性を有するものを適宜選択し、樹脂B及びCとして使用しうる。かかる市販品の例としては、商品名「ZEONOR」(日本ゼオン株式会社製)の製品群が挙げられる。
〔4.積層フィルムの寸法及び特性〕
本発明の積層フィルムは、その熱可塑性樹脂Aの熱軟化温度Ts[A]、熱可塑性樹脂Bの熱軟化温度Ts[B]、熱可塑性樹脂Cの熱軟化温度Ts[C]、C層の押込み弾性率E[C]、A層の厚みt[A]、B層の厚みt[B]、C層の厚みt[C]、及び積層フィルムの面内方向のレターデーションRe(total)が、下記式(1)〜(6)を満たす。
(1)165℃>Ts[C]>Ts[A]>Ts[B]>120℃
(2)2500MPa≧E[C]≧2200MPa
(3)8μm≦t[A]≦30μm
(4)1μm≦t[B]≦6μm
(5)5μm≦t[C]≦20μm
(6)0nm≦Re(total)≦10nm
熱軟化温度Ts[A]、Ts[B]及びTs[C]に関し、Ts[C]は、165℃未満、好ましくは163℃以下であり、120℃超、好ましくは148℃超、より好ましくは155℃以上である。Ts[A]は、165℃未満、好ましくは148℃以下、より好ましくは143℃以下であり、120℃超、好ましくは137℃超である。Ts[B]は、165℃未満、好ましくは137℃以下であり、120℃超、好ましくは122℃超である。Ts[C]−Ts[A]の値は、0℃超、好ましくは5℃以上、より好ましくは8℃以上であり、45℃未満、好ましくは25℃以下である。Ts[A]−Ts[B]の値は、0℃超、好ましくは1℃以上であり、45℃未満、好ましくは7℃以下である。
C層の押込み弾性率E[C]は、2200MPa以上、好ましくは2250MPa以上であり、一方2500MPa以下、好ましくは2450MPa以下である。
A層の厚みt[A]は、8μm以上、好ましくは10μm以上であり、30μm以下、好ましくは20μm以下である。B層の厚みt[B]は、1μm以上、好ましくは1.4μm以上であり、6μm以下、好ましくは4μm以下である。C層の厚みt[C]は、5μm以上、好ましくは5.5μm以上であり、20μm以下、好ましくは15μm以下である。
積層フィルムが、2層以上のA層を含む場合、上に述べた厚みの範囲は、それぞれ1層のA層の厚みの範囲である。同様に、積層フィルムが、2層以上のB層を含む場合、上に述べた厚みの範囲は、それぞれ1層のB層の厚みの範囲であり、積層フィルムが、2層以上のC層を含む場合、上に述べた厚みの範囲は、それぞれ1層のC層の厚みの範囲である。
積層フィルムの面内方向のレターデーションRe(total)は、10nm以下、好ましくは9nm以下である。Re(total)の下限は、理想的には0nmである。
本発明の積層フィルムは、A層〜C層を構成する材料として上に述べた特定の材料を採用し、且つ式(1)〜(6)を満たすことにより、偏光子保護フィルムとして有用に用いうる積層フィルムとすることができる。具体的には、A層を構成する材料として上に述べた特定の熱可塑性樹脂Aを有するものを採用し、C層を構成する材料として上に述べた特定の範囲の押込み弾性率を与えるものを採用し、樹脂A〜Cとして熱軟化温度Ts[A]〜Ts[C]が上に述べた特定の範囲となるものを採用し、且つA層〜C層の厚みを(3)〜(5)の範囲とすることにより、(6)に規定される低いRe(total)を有しながら、各層の間の密着性が高く、面内方向のレターデーションが小さく、且つ表面硬度が高い積層フィルムを得ることができる。特に、さらにB層及びC層を構成する樹脂B及び樹脂Cとして脂環式構造含有重合体を含む樹脂を採用した場合において、上に述べた条件を満たす積層フィルムを構成した場合において、各層の間の密着性の高さと、その他の特性とを良好に兼ね備えた積層フィルムを容易に得ることができる。
積層フィルムがA層、B層、及びC層のうちのいずれか1種以上を2層以上備える場合、隣り合うA層、B層、及びC層の組のうち、いずれか1以上が上に述べた要件を満たす場合、当該組においては少なくとも本発明の効果を得ることができる。但し、全ての組が上に述べた要件を満たすことがより好ましい。例えば、積層フィルムが(C層)/(B層)/(A層)/(B’層)/(C’層)の層構成を有する場合、(C層)/(B層)/(A層)の組、及び(A層)/(B’層)/(C’層)の組のいずれか一方が式(1)〜(6)を満たす場合、少なくとも当該組の層間においては高い密着性等の本発明の効果が得られる。但し、両方の組が式(1)〜(6)を満たすことがより好ましい。
各樹脂の熱軟化温度Tsは、TMA(熱機械的分析)測定により測定しうる。例えば、測定対象のフィルムを5mm×20mmの形状に切り出し試料とし、TMA/SS7100(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用いて、試料の長手方向に50mNの張力を加えた状態で、温度を変化させ、線膨張が3%変化した時の温度(℃)を、軟化温度として計測しうる。
C層の押込み弾性率は、押込弾性率試験機(例えばフィッシャーインスツルメンツ社製、商品名「ピコメーター Hm−500」)を用いて測定しうる。測定に際して、圧子としては対面角136°正四角錐ダイヤモンド圧子を用いうる。荷重速度は2.5mF/secで一定とし、dF/dtは一定の条件で測定を実施しうる。測定に際して、最大荷重は50mN、荷重時間は20sec、クリープ時間は60secとしうる。
各層の厚みは、顕微鏡観察により測定しうる。具体的には、積層フィルムを、ミクロトームを用いてスライスし、切断面を観察することにより各層の厚みを測定しうる。切断面の観察は、例えば偏光顕微鏡(例えばオリンパス社製「BX51」)により行いうる。
積層フィルムの位相差は、波長532nmで、位相差測定装置を用いて測定しうる。測定装置としては、例えば製品名「Axoscan」(Axometric社製)を用いうる。
本発明の積層フィルムは、その密着性が良好なものとすることができる。ここでいう密着性とは、積層フィルムを構成する各層の間の密着性である。密着性は、例えば、積層フィルムを手で引裂いた際、裂け目において、層間の剥離が生じない場合において良好と評価しうる。
本発明の積層フィルムは、高い表面硬度を有するものとしうる。具体的には、積層フィルムのC層の表面にハードコート層を形成したものが、H以上、好ましくは2H以上といった高い鉛筆硬度を呈しうる。鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4に準拠して測定しうる。測定に際し、鉛筆の傾きは45°とし、上から負荷する荷重は500g重としうる。
本発明の積層フィルムは、通常、透明な層であり可視光線を透過させる。具体的な光線透過率は積層フィルムの用途に応じて適宜選択しうる。例えば、波長420nm〜780nmにおける光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上である。このように高い光線透過率を有することにより、積層フィルムを液晶表示装置などの表示装置に実装した場合に、特に長期間使用時の輝度低下を抑制できる。
〔5.任意の層〕
本発明の積層フィルムは、A層〜C層に加えて、任意の層を備えうる。例えば、ハードコート層を備えうる。ハードコート層は、C層の、B層側の面とは反対側の面上に設け、積層フィルムの最外表面を構成する層としうる。ハードコート層を備えることによって、積層フィルムの表面の鉛筆硬度をH以上、好ましくは2H以上といった高い値とすることができ、それにより、液晶表示装置等の表示装置の最外表面の部材として有用に用いることができる。
ハードコート層は、ハードコート層用材料を、C層の表面に塗布し、硬化させることにより形成しうる。ハードコート層用材料としては、耐衝撃性ポリメタクリレート樹脂、ポリメタクリレート樹脂と無機粒子を混合した有機-無機粒子混合樹脂や無機骨格と光硬化性有機物を分子レベルで複合化した有機-無機ハイブリット樹脂等を用いうる。市販のハードコート層用材料の例としては、中井工業株式会社VHC−Z4が挙げられる。ハードコート層の厚みは、所望の表面の硬度を得られる範囲としうる。具体的には3μm〜15μmの範囲としうる。
任意の層の他の例としては、フィルムの滑り性を良くするマット層、反射防止層等が挙げられる。
〔6.積層フィルムの製造方法〕
本発明の積層フィルムの製造方法は、特に限定されず、任意の製造方法を採用しうる。例えば、樹脂A〜樹脂Cを調製し、これらを所望の形状に成形することにより、本発明の積層フィルムを製造しうる。樹脂A〜樹脂Cを成形するための成形方法の好ましい例としては、共押出による溶融押出成形が挙げられる。共押出成形を行うことにより、所望の各層厚みを有する積層フィルムを効率的に製造することができる。
共押出成形を行う際の樹脂の温度(以下、適宜「押出温度」ということがある。)は、特に限定されず、それぞれの樹脂を溶融させうる温度であって、成形に適した温度を適宜設定しうる。具体的には、Ts[C]を基準に設定しうる。より具体的には、好ましくは(Ts[C]+70)℃以上、より好ましくは(Ts[C]+80)℃以上であり、一方、好ましくは(Ts[C]+180)℃以下、より好ましくは(Ts[C]+130)℃以下である。
溶融押出成形によれば、長尺の樹脂フィルムを得ることができる。この樹脂フィルムは、そのまま本発明の積層フィルムとしうる。又は、この樹脂フィルムを、さらに任意の処理に供し、それにより得られたものを本発明の積層フィルムとしうる。そのような延伸フィルムである積層フィルムは、具体的には:熱可塑性樹脂Aからなるa層、a層の少なくとも一方の面上に設けられた熱可塑性樹脂Bからなるb層、及びb層の、a層側の面とは反対側の面上に設けられた、熱可塑性樹脂Cからなるc層を備える延伸前フィルムを調製する工程;及び延伸前フィルムを、少なくとも1の方向に延伸する延伸工程を含む製造方法により製造しうる。水素化ブロック共重合体[G]が含む構造単位の割合を適切に調整することにより、延伸によりフィルムに発現するレターデーションを小さくすることが可能である。よって、前記の延伸処理により、厚みが薄く、面積が大きく、且つ品質が良好な積層フィルムを容易に製造することが可能となるので、製造の効率を向上させることができる。
積層フィルムとして延伸フィルムを製造する場合の延伸条件は、上述した積層フィルムが得られるよう適切に調整しうる。延伸処理において行う延伸は、一軸延伸、二軸延伸、又はその他の延伸としうる。延伸方向は、任意の方向に設定しうる。例えば、延伸前フィルムが長尺のフィルムである場合、延伸方向は、フィルムの長手方向、幅手方向、及びそれ以外の斜め方向のいずれであってもよい。二軸延伸を行う場合の2の延伸方向がなす角度は、通常は互いに直交する角度としうるが、それに限らず任意の角度としうる。二軸延伸は、逐次二軸延伸であってもよく、同時二軸延伸であってもよい。
延伸温度は、Ts[C]を基準に設定しうる。具体的には、好ましくはTs[C]℃以上、より好ましくは(Ts[C]+10)℃以上であり、一方、好ましくは(Ts[C]+40)℃以下、より好ましくは(Ts[C]+30)℃以下である。延伸温度が前記の温度範囲に収まることにより、上記特性を有する積層フィルムとしての延伸フィルムを容易に得ることができる。
延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.15倍以上、特に好ましくは1.2倍以上であり、好ましくは2.5倍以下、より好ましくは2.25倍以下、特に好ましくは2倍以下である。延伸倍率が前記の温度範囲に収まることにより、上記特性を有する積層フィルムとしての延伸フィルムを容易に得ることができる。二軸延伸の場合は、2の延伸方向それぞれの倍率をこの範囲内としうる。
〔7.積層フィルムの用途:偏光板〕
本発明の積層フィルムは、液晶表示装置などの表示装置において、他の層を保護する保護フィルムとして好適に用いうる。中でも、本発明の積層フィルムは、偏光子保護フィルムとして好適であり、表示装置の最外表面に位置する偏光子保護フィルムとして特に好適である。
本発明の偏光板は、偏光子と、上述した積層フィルムとを備える。本発明の偏光板において、積層フィルムは、偏光子保護フィルムとして機能しうる。本発明の偏光板はさらに、積層フィルムと偏光子との間に、これらを接着するための接着剤層を備えてもよい。
偏光子は、特に限定されず、任意の偏光子を用いうる。偏光子の例としては、ポリビニルアルコールフィルムに、ヨウ素、二色性染料等の材料を吸着させた後、延伸加工したものが挙げられる。接着剤層を構成する接着剤としては、各種の重合体をベースポリマーとしたものが挙げられる。かかるベースポリマーの例としては、例えば、アクリル重合体、シリコーン重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、及び合成ゴムが挙げられる。
偏光板が備える偏光子と保護フィルムの数は任意であるが、本発明の偏光板は、通常は、1層の偏光子と、その両面に設けられた2層の保護フィルムを備えうる。かかる2層の保護フィルムのうち、両方が本発明の積層フィルムであってもよく、どちらか一方のみが本発明の積層フィルムであってもよい。特に、光源及び液晶セルを備え、かかる液晶セルの光源側及び表示面側の両方に偏光板を有する液晶表示装置において、表示面側の偏光子よりも視認側の位置において用いる保護フィルムとして、本発明の積層フィルムを備えることが特に好ましい。かかる構成を有することにより、表示面の耐久性の高い液晶表示装置を容易に構成することができる。
本発明の偏光板を設けるのに適した液晶表示装置としては、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、バーチカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)モード、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モードなどの駆動方式の液晶セルを備える液晶表示装置が挙げられる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
以下の説明において、積層フィルムが2層のB層又は2層のC層を有する場合、区別のため一方の記号に「’」をつけて表現する場合がある。例えば積層フィルムが2層のB層を有する場合、区別するために、それらの一方をB’層と表現する場合がある。また積層フィルムが2層のC層を有する場合、区別するために、それらの一方をC’層と表現する場合がある。
〔評価方法〕
〔重量平均分子量及び数平均分子量の測定方法〕
重合体の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(東ソー社製「HLC−8320」)を用いて、ポリスチレン換算値として測定した。測定の際、カラムとしてはHタイプカラム(東ソー社製)を用い、溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた。また、測定時の温度は、40℃であった。
〔水素化ブロック共重合体[G]の水素化率の測定方法〕
重合体の水素化率は、オルトジクロロベンゼン−dを溶媒として、145℃で、H−NMR測定により測定した。
〔各層厚みの測定方法〕
各層の厚みは、次のようにして測定した。
測定対象のフィルムを、ミクロトーム(大和光機社製「RV−240」)を用いてスライスした。スライスしたフィルムの切断面を、偏光顕微鏡(オリンパス社製「BX51」)で観察し、その厚みを測定した。
〔熱軟化温度Tsの測定方法〕
測定対象のフィルムを5mm×20mmの形状に切り出し試料とした。測定装置として、TMA/SS7100(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用いた。TMA(熱機械的分析)測定において、試料の長手方向に50mNの張力を加えた状態で、温度を変化させた。線膨張が3%変化した時の温度(℃)を、軟化温度とした。
〔位相差の測定方法〕
波長532nmで位相差測定装置(Axometric社製 製品名「Axoscan」)を用いて、積層フィルム全体の位相差Re(total)を測定した。
〔各層の密着性〕
実施例及び比較例で得られた積層フィルムを20cm×20cmに裁断し、4辺をそれぞれ5cm手で引裂いた際、4辺全ての引裂きで、裂け目において層間の剥離が生じない場合を良好と判定した。
〔押込み弾性率〕
実施例及び比較例で得られた積層フィルムの表面のC層について、押込弾性率試験機(フィッシャーインスツルメンツ社製、商品名「ピコメーター Hm−500」)を用いて押込弾性率(単位:MPa)を測定した。測定に際して、圧子は対面角136°正四角錐ダイヤモンド圧子を用いた。荷重速度は2.5mF/secで一定とし、dF/dtは一定の条件で実施した。最大荷重は50mN、荷重時間は20sec、クリープ時間は60secとした。
〔鉛筆硬度〕
実施例及び比較例で得られたフィルムの表面にハードコート層を形成したものについて、鉛筆硬度を測定した。
ハードコート層用材料としては、中井工業株式会社VHC−Z4を用いた。ハードコート層用材料を、フィルムの表面に塗布し、UV照射により硬化させ、ハードコート層を形成した。ハードコート層の硬化後の厚さは7μmとした。
鉛筆硬度は、フィルムを、コロナ処理によりガラス上に密着させた状態で測定した。具体的な測定方法は、JIS K5600−5−4に準拠した。鉛筆の傾きは45°とし、上から負荷する荷重は500g重とした。
〔製造例1〕
(P1−1)ブロック共重合体[F1]の製造
攪拌装置を備え、内部が十分に窒素置換された反応器に、脱水シクロヘキサン270部、脱水スチレン75部及びジブチルエーテル7.0部を入れた。全容を60℃で攪拌しながら、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)5.6部を加えて重合を開始させた。引続き全容を60℃で60分間攪拌した。反応温度は、反応停止まで60℃を維持した。この時点(重合第1段階)で反応液をガスクロマトグラフィー(以下、「GC」と記載することがある。)及びGPCにより分析した結果、重合転化率は99.4%であった。
次に、反応液に、脱水イソプレン15部を40分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま30分間攪拌を続けた。この時点(重合第2段階)で、反応液をGC及びGPCにより分析した結果、重合転化率は99.8%であった。
その後、更に、反応液に脱水スチレン10部を、30分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま30分攪拌した。この時点(重合第3段階)で、反応液をGC及びGPCにより分析した結果、重合転化率はほぼ100%であった。
ここで、イソプロピルアルコール1.0部を加えて反応を停止させることによって、[D1]−[E]−[D2]型のブロック共重合体[F1]を含む重合体溶液を得た。得られたブロック共重合体[F1]においては、Mw[F1]=82,400、Mw/Mnは1.32、wA:wB=85:15であった。
(P1−2)水素化ブロック共重合体[G1]の製造
(P1−1)で得た重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として、珪藻土担持型ニッケル触媒(製品名「E22U」、ニッケル担持量60%、日揮触媒化成社製)4.0部、及び脱水シクロヘキサン30部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。
水素化反応により得られた反応溶液には、水素化ブロック共重合体[G1]が含まれていた。水素化ブロック共重合体のMw[G1]は71,800、分子量分布Mw/Mnは1.30、水素化率はほぼ100%であった。
水素化反応終了後、反応溶液を濾過して水素化触媒を除去した後、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「AO60」、ADEKA社製)0.3部を溶解したキシレン溶液2.0部を添加して溶解し、溶液とした。
次いで、上記溶液を、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で処理し、溶液からシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去し、溶融した樹脂を得た。これをダイからストランド状に押出し、冷却し、ペレタイザーによりペレットに成形した。これにより、水素化ブロック共重合体[G1]を含む、樹脂[G1]のペレット95部を製造した。
得られた樹脂[G1]における水素化ブロック共重合体[G1]は、Mw[G1]=68,500、Mw/Mn=1.30、Ts=139℃であった。
〔製造例2〕
(P2−1)ブロック共重合体[F2]の製造
攪拌装置を備え、内部が十分に窒素置換された反応器に、脱水シクロヘキサン270部、脱水スチレン70部及びジブチルエーテル7.0部を入れた。全容を60℃で攪拌しながら、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)5.6部を加えて重合を開始させた。引続き全容を60℃で60分間攪拌した。反応温度は、反応停止まで60℃を維持した。この時点(重合第1段階)で反応液をガスクロマトグラフィー(以下、「GC」と記載することがある。)及びGPCにより分析した結果、重合転化率は99.4%であった。
次に、反応液に、脱水イソプレン20部を40分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま30分間攪拌を続けた。この時点(重合第2段階)で、反応液をGC及びGPCにより分析した結果、重合転化率は99.8%であった。
その後、更に、反応液に脱水スチレン10部を、30分間に亘って連続的に添加し、添加終了後そのまま30分攪拌した。この時点(重合第3段階)で、反応液をGC及びGPCにより分析した結果、重合転化率はほぼ100%であった。
ここで、イソプロピルアルコール1.0部を加えて反応を停止させることによって、[D1]−[E]−[D2]型のブロック共重合体[F2]を含む重合体溶液を得た。得られたブロック共重合体[F2]においては、Mw[F2]=83,400、Mw/Mnは1.32、wA:wB=80:20であった。
(P2−2)水素化ブロック共重合体[G2]の製造
(P2−1)で得た重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として、珪藻土担持型ニッケル触媒(製品名「E22U」、ニッケル担持量60%、日揮触媒化成社製)4.0部、及び脱水シクロヘキサン30部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。
水素化反応により得られた反応溶液には、水素化ブロック共重合体[G2]が含まれていた。水素化ブロック共重合体[G2]のMw[G2]は72,800、分子量分布Mw/Mnは1.30、水素化率はほぼ100%であった。
水素化反応終了後、反応溶液を濾過して水素化触媒を除去した後、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「AO60」、ADEKA社製)0.3部を溶解したキシレン溶液2.0部を添加して溶解し、溶液とした。
次いで、上記溶液を、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で処理し、溶液からシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去し、溶融した樹脂を得た。これをダイからストランド状に押出し、冷却し、ペレタイザーによりペレットに成形した。これにより、水素化ブロック共重合体[G2]を含む、樹脂[G2]のペレット95部を製造した。
得られた樹脂[G2]における水素化ブロック共重合体[G2]は、Mw[G2]=69,500、Mw/Mn=1.30、Ts=138℃であった。
〔実施例1〕
3種5層(3種類の樹脂により5層からなるフィルムを形成するタイプのもの)の共押出成形用のフィルム成形装置を準備した。成形装置は、一軸押出機3本と、リーフディスク形状のポリマーフィルターと、3種5層共押出成形用のフィードブロック及びダイを備えるものであり、一軸押出機のそれぞれはダブルフライト型のスクリューを備えたものであった。
1本の一軸押出機に、熱可塑性樹脂Aとして、前記樹脂[G1](熱軟化温度139℃)のペレットを投入して、溶融させた。
別の1本の一軸押出機に、熱可塑性樹脂Bとして、脂環式構造含有重合体を含む樹脂Z1(熱軟化温度136℃;日本ゼオン社製「ZEONOR」)のペレットを投入して、溶融させた。
さらに別の1本の一軸押出機に、熱可塑性樹脂Cとして、脂環式構造含有重合体を含む樹脂Z2(熱軟化温度160℃;日本ゼオン社製「ZEONOR」)のペレットを投入して、溶融させた。
溶融された樹脂A、樹脂B及び樹脂Cをそれぞれポリマーフィルターを通してフィードブロックに供給し、ダイから同時に、フィルム状に共押出しした。共押出しされた溶融樹脂を、冷却ロールにキャストし、5層構造の樹脂フィルムを、本実施例の積層フィルムとして得た。
得られた積層フィルムは、厚さ35.0μm、幅1300mmであり、(C層)/(B層)/(A層)/(B’層)/(C’層)の層構成を有する、3種5層のフィルムであった。各層の厚みは、8.0μm/2.0μm/15.0μm/2.0μm/8.0μmであった。積層フィルムの面内方向のレターデーションRe(total)は5.0nmであった。C層の押込み弾性率E[C]は、2300MPaであった。各層の密着性は良好であり、鉛筆硬度はHであった。
〔実施例2〕
下記の変更点以外は、実施例1と同じ操作により、積層フィルムを製造し評価した。
・製造例1で得たペレット状の樹脂[G1]に代えて、製造例2で得たペレット状の樹脂[G2]を用いた。
・樹脂A、樹脂B及び樹脂Cの押出の条件を変更し、それにより積層フィルムの総厚み38.0μm、(C層)/(B層)/(A層)/(B’層)/(C’層)の各層厚み12.0μm/2.0μm/10.0μm/2.0μm/12.0μmとした。
〔実施例3〕
下記の変更点以外は、実施例1と同じ操作により、積層フィルムを製造し評価した。
・熱可塑性樹脂Bとして、樹脂Z1に代えて、脂環式構造含有重合体を含む樹脂Z3(熱軟化温度128℃;日本ゼオン社製「ZEONOR」)を用いた。
・樹脂A、樹脂B及び樹脂Cの押出の条件を変更し、それにより積層フィルムの総厚み41.0μm、(C層)/(B層)/(A層)/(B’層)/(C’層)の各層厚み10.0μm/3.0μm/15.0μm/3.0μm/10.0μmとした。
〔実施例4〕
下記の変更点以外は、実施例1と同じ操作により、積層フィルムを製造し評価した。
・製造例1で得たペレット状の樹脂[G1]に代えて、製造例2で得たペレット状の樹脂[G2]を用いた。
・熱可塑性樹脂Bとして、樹脂Z1に代えて、脂環式構造含有重合体を含む樹脂Z3(熱軟化温度128℃;日本ゼオン社製「ZEONOR」)を用いた。
・樹脂A、樹脂B及び樹脂Cの押出の条件を変更し、それにより積層フィルムの総厚み40.0μm、(C層)/(B層)/(A層)/(B’層)/(C’層)の各層厚み10.0μm/3.0μm/15.0μm/3.0μm/10.0μmとした。
〔実施例5〕
実施例1と同じ操作により、5層構造の樹脂フィルムを得た。
得られた樹脂フィルムを、フィルム幅方向に連続的に延伸した。延伸には、テンター式横延伸機を用いた。フィルムの両端部をクリップで把持し、クリップの幅方向の間隔を拡張することにより、フィルム幅方向への延伸を連続的に行った。延伸の条件は、温度180℃、延伸倍率1.3倍とした。延伸後、フィルムの両端をトリミングして、幅を1330mmとし、延伸された長尺の積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムは、(C層)/(B層)/(A層)/(B’層)/(C’層)の層構成を有する、3種5層のフィルムであった。各層の厚みは、6.2μm/1.5μm/11.5μm/1.5μm/6.2μmであった。積層フィルムの面内方向のレターデーションRe(total)は8.9nmであった。C層の押込み弾性率E[C]は、2300MPaであった。各層の密着性は良好であり、鉛筆硬度はHであった。
〔実施例6〕
下記の変更点以外は、実施例5と同じ操作により、積層フィルムを製造し評価した。
・熱可塑性樹脂Bとして、樹脂Z1に代えて、脂環式構造含有重合体を含む樹脂Z3(熱軟化温度128℃;日本ゼオン社製「ZEONOR」)を用いた。
・樹脂A、樹脂B及び樹脂Cの押出の条件を変更した。但し、その後の延伸等の操作は変更せず、実施例5と同じ操作とした。その結果、(C層)/(B層)/(A層)/(B’層)/(C’層)の各層厚み7.7μm/2.3μm/11.5μm/2.3μm/7.7μmとした。
〔比較例1〕
下記の変更点以外は、実施例5と同じ操作により、積層フィルムを製造し評価した。
・熱可塑性樹脂Bとして、樹脂Z1に代えて、脂環式構造含有重合体を含む樹脂Z2(熱軟化温度160℃;日本ゼオン社製「ZEONOR」)を用いた。
・樹脂A、樹脂B及び樹脂Cの押出の条件を変更した。但し、その後の延伸等の操作は変更せず、実施例5と同じ操作とした。その結果、(C層)+(B層)/(A層)/(B’層)+(C’層)の各層厚み9.2μm/23.1μm/9.2μmとした。
〔比較例2〕
下記の変更点以外は、実施例5と同じ操作により、積層フィルムを製造し評価した。
・製造例1で得たペレット状の樹脂[G1]に代えて、製造例2で得たペレット状の樹脂[G2]を用いた。
・熱可塑性樹脂Bとして、樹脂Z1に代えて、脂環式構造含有重合体を含む樹脂Z2(熱軟化温度160℃;日本ゼオン社製「ZEONOR」)を用いた。
・樹脂A、樹脂B及び樹脂Cの押出の条件を変更した。但し、その後の延伸等の操作は変更せず、実施例5と同じ操作とした。その結果、(C層)+(B層)/(A層)/(B’層)+(C’層)の各層厚み9.2μm/23.1μm/9.2μmとした。
〔比較例3〕
下記の変更点以外は、実施例5と同じ操作により、積層フィルムを製造し評価した。
・熱可塑性樹脂Bとして、樹脂Z1に代えて、脂環式構造含有重合体を含む樹脂Z3(熱軟化温度128℃;日本ゼオン社製「ZEONOR」)を用いた。
・熱可塑性樹脂Cとして、樹脂Z2に代えて、脂環式構造含有重合体を含む樹脂Z3(熱軟化温度128℃;日本ゼオン社製「ZEONOR」)を用いた。
・樹脂A、樹脂B及び樹脂Cの押出の条件を変更した。また、延伸の条件を、温度160℃、延伸倍率1.5倍に変更した。その結果、(C層)+(B層)/(A層)/(B’層)+(C’層)の各層厚み4.0μm/22.7μm/4.0μmとした。
実施例及び比較例の結果を、表1〜表2にまとめて示す。
Figure 2018069613
Figure 2018069613
表中における略号の意味は、下記の通りである。
環式wD:水素化ブロック共重合体[G]における、環式炭化水素基含有化合物水素化物単位[I]の割合(%)。
鎖状wE:水素化ブロック共重合体[G]における、鎖状炭化水素化合物水素化物単位[II]の割合(%)。
G1:製造例1で製造した、水素化ブロック共重合体[G1]。
G2:製造例2で製造した、水素化ブロック共重合体[G2]。
Z1:脂環式構造含有重合体を含む樹脂、熱軟化温度136℃、日本ゼオン社製「ZEONOR」の製品群の一つ。
Z2:脂環式構造含有重合体を含む樹脂、熱軟化温度160℃、日本ゼオン社製「ZEONOR」の製品群の一つ。
Z3:脂環式構造含有重合体を含む樹脂、熱軟化温度128℃、日本ゼオン社製「ZEONOR」の製品群の一つ。
実施例及び比較例の結果から明らかな通り、各層の熱軟化温度及び厚みを含む本発明の要件を満たす積層フィルムは、密着性及び表面硬度の両方に優れた積層フィルムとすることができる。

Claims (7)

  1. 熱可塑性樹脂AからなるA層、前記A層の少なくとも一方の面上に設けられた熱可塑性樹脂BからなるB層、及び前記B層の、前記A層側の面とは反対側の面上に設けられた、熱可塑性樹脂CからなるC層を備える積層フィルムであって、
    前記熱可塑性樹脂Aは、
    環式炭化水素基含有化合物水素化物単位[I]を主成分とする、2つ以上の重合体ブロック[D]と、
    鎖状炭化水素化合物水素化物単位[II]、又は前記単位[I]及び前記単位[II]の組み合わせを主成分とする1つ以上の重合体ブロック[E]
    を含む水素化ブロック共重合体[G]を含み、
    前記熱可塑性樹脂Bは、前記熱可塑性樹脂Aとは異なる樹脂であり、
    前記熱可塑性樹脂Cは、前記熱可塑性樹脂Aとも前記熱可塑性樹脂Bとも異なる樹脂であり、
    前記熱可塑性樹脂Aの熱軟化温度Ts[A]、前記熱可塑性樹脂Bの熱軟化温度Ts[B]、前記熱可塑性樹脂Cの熱軟化温度Ts[C]、前記C層の押込み弾性率E[C]、前記A層の厚みt[A]、前記B層の厚みt[B]、前記C層の厚みt[C]、及び前記積層フィルムの面内方向のレターデーションRe(total)が、下記式(1)〜(6)を満たす、積層フィルム。
    (1)165℃>Ts[C]>Ts[A]>Ts[B]>120℃
    (2)2500MPa≧E[C]≧2200MPa
    (3)8μm≦t[A]≦30μm
    (4)1μm≦t[B]≦6μm
    (5)5μm≦t[C]≦20μm
    (6)0nm≦Re(total)≦10nm
  2. 前記環式炭化水素基含有化合物が芳香族ビニル化合物であり、前記鎖状炭化水素化合物が鎖状共役ジエン系化合物である、請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記熱可塑性樹脂Bは脂環式構造を含有する重合体を含む樹脂である請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  4. 前記熱可塑性樹脂Cは脂環式構造を含有する重合体を含む樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層フィルムの製造方法であって、
    前記熱可塑性樹脂Aからなるa層、前記a層の少なくとも一方の面上に設けられた熱可塑性樹脂Bからなるb層、及び前記b層の、前記a層側の面とは反対側の面上に設けられた、熱可塑性樹脂Cからなるc層を備える延伸前フィルムを調製する工程、及び
    前記延伸前フィルムを、少なくとも1の方向に延伸する延伸工程を含む、製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層フィルムと偏光子とを備える偏光板。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層フィルムを備える表示装置。
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