JP7182076B2 - 滑り抑制剤及び該滑り抑制剤を用いた舗装コンクリートの製造方法 - Google Patents
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Description
上記箒目仕上げでは、硬化体となる前のコンクリート組成物の表面を箒で掃いて、硬化体となる前のコンクリート表面に箒目を付けることにより、舗装コンクリート表面に滑り抑制機能を付与している。
また、上記真空コンクリート工法では、複数個のリング状の型を所定の間隔を空けて硬化体となる前のコンクリート組成物の表面側から埋め込み、余剰水分を硬化体となる前のコンクリート組成物から減圧下にて除去し、埋め込まれた複数個のリング状の型を硬化体となる前のコンクリート組成物の表面側から抜き取って、硬化体となる前のコンクリート組成物の表面側に窪みを形成することにより、舗装コンクリート表面に滑り抑制機能を付与している。
また、箒目仕上げにおいて、硬化体となる前のコンクリート表面に箒目を入れる適切なタイミングを判断することは難しく、このような適切なタイミングの判断には作業者の熟練度を要する。
さらに、真空コンクリート工法において、複数個のリング状の型を硬化体となる前のコンクリート組成物の表面側から埋め込む作業は、作業者にとって煩わしいものであり、また、埋め込まれた複数個のリング状の型を硬化体となる前のコンクリート組成物の表面側から抜き取る適切なタイミングを判断するには作業者の熟練度を要する。
急結成分を含み、且つ、粉末状である。
また、前記滑り抑制剤は急結成分を含んでいるため、打設後のコンクリート組成物が硬化する前に、該コンクリート組成物の表面に前記滑り抑制剤を散布すると、硬化後のコンクリート表面、すなわち、得られる舗装コンクリート表面は、降雨などで濡れた場合でも比較的高い滑り抑制機能を発揮するものとなる。
粒子径が0.6mm以下であってもよい。
水とセメントと骨材とを有するコンクリート組成物を打設する打設工程と、
打設したコンクリート組成物が硬化体となる前に、該コンクリート組成物の表面に前記滑り抑制剤を散布する散布工程と、を備える。
前記散布工程において、硬化体となる前の前記コンクリート組成物の表面に前記滑り抑制剤を100g/m2以上散布してもよい。
本実施形態に係る滑り抑制剤は、急結成分を含み、かつ、粉末状である。急結成分とは、上記滑り抑制剤を散布するコンクリート組成物中のセメントよりも水和反応が速い成分を意味する。滑り抑制剤は、急結成分を含むことにより、打設後のコンクリート組成物の表面に散布した場合に、コンクリート組成物に含まれる表面のセメントの水和反応を促進させる。滑り抑制剤としては、例えば、鉱物系の急結成分を含み、かつ、粉末状である無機材を用いることができる。このような無機材としては、鉱物系の急結成分としてカルシウムアルミネート成分(以下、CA成分ともいう)を含み、かつ、粉末状であるカルシウムアルミネート材(以下、CA材ともいう)を用いることができる。
なお、CA材中のCA成分の含有割合は、例えば、X線回折/リートベルト法(X線回折パターンをリートベルト法により解析する方法)によって求めることができる。X線回折/リートベルト法の詳細については、後述する実施例の項にて説明する。
なお、実質的にアーウィンを含んでいないとは、上記のX線回折/リートベルト法によって、C12A7系CA材の鉱物組成を求めたときに、C12A7系CA材中のアーウィンの含有割合が1.0質量%未満であることを意味する。
なお、上記滑り抑制剤の粒子径は、ステンレス篩(JIS Z 8801)により分級することにより測定された値を意味する。すなわち、上記滑り抑制剤の粒子径が0.6mm以下とは、上記滑り抑制剤が目開き0.6mmの篩を通過することを意味し、上記滑り抑制剤の粒子径が0.3mmを上回るとは、上記滑り抑制剤が目開き0.3mmの篩を通過しないことを意味する。
次に、上記滑り抑制剤を用いて舗装コンクリートを製造する方法について説明する。
図1に示したように、本実施形態に係る舗装コンクリートの製造方法は、水とセメントと骨材とを有するコンクリート組成物を打設する打設工程(S1)と、
打設後のコンクリート組成物が硬化体となる前に、該コンクリート組成物の表面に上記滑り抑制剤を散布する散布工程(S2)と、を備える。
打設工程S1は、上記コンクリート組成物を型枠内に打ち込むことによって行う。
打設するコンクリート組成物に含まれるセメントとしては、上記滑り抑制剤よりも水和反応が遅いものであれば、どのようなものでも用いることができる。例えば、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱などの各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメントなどの各種混合セメントなどのJISに規定されたセメント、白色ポルトランドセメントなどのJISに規定されていない特殊なセメントなどが挙げられる。これらのセメントは、単独で使用してもよいし、複数を選択して使用してもよい。
また、打設するコンクリート組成物は、骨材として、細骨材及び粗骨材の両方を含む。細骨材及び粗骨材としては、各種公知のものを用いることができる。
ここで、打設後のコンクリート組成物に締固め工程を行う前に散布工程S2を行うと、打設後のコンクリート組成物の表面側に散布された上記滑り抑制剤が、振動によって打設後のコンクリート組成物の内部に入り込む虞がある。このように、上記滑り抑制剤が打設後のコンクリート組成物の内部に入り込むことを抑制するために、締固め工程を行う場合には、散布工程S2は締固め工程後に行うことが好ましい。
散布工程S2は、各種公知の粉体散布装置を用いて、上記滑り抑制剤を散布することにより行うことができる。
散布工程S2においては、打設後のコンクリート組成物が硬化体となる前に、該コンクリート組成物の表面に上記滑り抑制剤を散布することが重要である。これにより、硬化後のコンクリート組成物、すなわち、舗装コンクリートにおいて、降雨などで表面(路面)が濡れた場合であっても、該舗装コンクリート表面での滑りを比較的抑制することができる。
降雨などで舗装コンクリート表面が濡れた場合であっても、該舗装コンクリート表面での滑りが比較的抑制される理由について、本発明者らは以下のように考えている。
このように、上記滑り抑制剤と接触しているコンクリート組成物が上記滑り抑制剤と接触していないコンクリート組成物よりも速く硬化される分だけ、硬化後のコンクリート組成物、すなわち、舗装コンクリートにおいては、上記滑り抑制剤と接触しているコンクリート組成物の組織構造の方が、上記滑り抑制剤と接触していないコンクリート組成物の組織構造よりも粗な構造になっていると考えられる。すなわち、舗装コンクリートの表面に、コンクリート組成物の組織構造が粗な部分と密な部分とが存在することにより、舗装コンクリート表面が粗面化されていると考えられる。
そして、上記滑り抑制剤は、コンクリート組成物の表面に散布されているので、舗装コンクリートの表面には、箒目仕上げで付けられた箒目間の間隔(図2(a)参照)や真空コンクリート工法で形成された窪み間の間隔(図2(b)参照)よりも狭い間隔で、上記滑り抑制剤によってコンクリート組成物の組織構造が粗になったことが原因となる空隙が形成されていると考えられる(図2(c)参照)。
このように、比較的狭い間隔で空隙が形成されていると考えらえるため、箒目仕上げされた舗装コンクリートや真空コンクリート工法を施された舗装コンクリートに比べて、降雨などで舗装コンクリート表面(路面)が濡れた場合に路面上の水がより多く空隙内に浸入すると考えられる。その結果、舗装コンクリート表面に残存する水が少なくなり、舗装コンクリート表面に水膜が形成され難くなると考えられる。これにより、降雨などで舗装コンクリート表面が濡れた場合でも、舗装コンクリート表面での滑りを比較的抑制できると考えられる。
なお、打設後のコンクリート組成物が硬化体となっているか否かは、使用するセメントの種類に応じて適宜判断することができる。
(コンクリート供試体の作製)
以下の表1に示した材料を用いて、以下の表2の配合にてコンクリート組成物を調製した。コンクリート組成物の調製は、二軸強制練りミキサを用いて行った。具体的には、セメント、細骨材、及び粗骨材を上記ミキサ内に投入して10秒間空練りを行った後、水及び減水剤を上記ミキサ内に投入して90秒間練り混ぜることにより調製した。
調製したコンクリート組成物を平板供試体用型枠(30cm×30cm×5cm)内に打設し、打設後のコンクリート組成物の表面に軽くコテ仕上げを施し、コテ仕上げを施した直後のコンクリート組成物の一方の半面の表面に、C12A7系CA材(総質量に対してC12A7系成分を70%以上含む)の目開き5mmの篩の篩上品を散布し(実施例1)、他方の半面の表面に、目開き2.5mmの篩と目開き5mmの篩を用いて分級することにより粒子径を、2.5mmを上回り5mm以下に調整したC12A7系CA材(総質量に対してC12A7系成分を70%以上含む)を散布し(実施例2)、さらに、打設後のコンクリート組成物の表面が型枠と水平となるようにコテ仕上げを施した。材齢28日まで気中養生して、実施例1及び2に係るコンクリート供試体を作製した。
C12A7系CA材中のC12A7系成分は、X線回折/リートベルト法によって求めた。X線回折/リートベルト法は、以下のようにして行った。
(1)まず、粉末状のC12A7系CA材をX線回折装置(X’Pert MPD、パナリティカル社製)を用いて分析し、X線回折パターンを得た。X線回折測定は、線源としてCuKαを用い、管電圧を45kV、管電流を40mAとし、測定角度範囲2θを10~140°とする条件で行った。
(2)次に、専用解析ソフト(HighScorePlus、パナリティカル社製)を用いて得られたX線回折パターンをリートベルト解析することにより、C12A7系成分の含有割合を求めた。なお、C12A7系成分の含有割合は、X線回折分析で検出できたC12A7系CA材中の全成分を100質量%としたときのC12A7系成分の質量割合として求めた。
また、各例において、C12A7系CA材の散布量は、200g/m2とした。
また、表2において、空気量は、JIS A 1128「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法-空気室圧力方法」に準拠して測定し、スランプは、JIS A 1101「コンクリートのスランプ試験方法」に準拠して測定した。
実施例1及び2に係るコンクリート供試体について、滑り抵抗を評価した。滑り抵抗の評価は、舗装調査・試験法便覧(平成19年6月版、日本道路協会編)のS021-2「振り子スキッドレジスタンステスタによるすべり抵抗測定方法」に準拠して、表面全域を水道水で濡らした各例に係るコンクリート供試体について、表面のBPN値(滑り抵抗値)を測定することにより行った。すべり抵抗試験は4回行い、1回目を除いた3回の目盛りの読みをBPN単位として記録し、その算術平均値を各例に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値とした。ただし、測定値が大きく変動する場合は、変動が小さくなるまで繰り返し測定を行い、変動が小さくなった後に3回の測定値の読みをBPN単位として記録し、その算術平均を各例に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値とした。実施例1及び2に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値を以下の表3に示した。
なお、上記方法は、株式会社高速道路総合技術研究所(NEXCO総研)で推奨されている、車道用の舗装コンクリート表面のすべり抵抗の評価方法である。
(コンクリート供試体の作製)
コンクリート組成物の一方の半面に散布するC12A7系CA材として、目開き0.3mmの篩と目開き0.6mmの篩を用いて分級することにより粒子径0.3mmを上回り0.6mm以下に調整したC12A7系CA材を用い(実施例3)、コンクリート組成物の他方の半面に散布するC12A7系CA材として、目開き0.075mmの篩と目開き0.15mmの篩を用いて分級することにより粒子径0.075mmを上回り0.15mm以下に調整したC12A7系CA材を用いた(実施例4)以外は、実施例1及び2と同様にして、実施例3及び4に係るコンクリート供試体を作製した。
実施例3及び4に係るコンクリート供試体について、実施例1及び2と同様にして、滑り抵抗を評価した。実施例3及び4に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を以下の表3に示した。
(コンクリート供試体の作製)
コンクリート組成物の一方の半面に散布するC12A7系CA材として、目開き0.075mmの篩の篩下品を用い(実施例5)、コンクリート組成物の他方の半面に、何らのCA材をも散布しなかった(比較例1)以外は、実施例1及び2と同様にして、実施例5及び比較例1に係るコンクリート供試体を作製した。
実施例5及び比較例1に係るコンクリート供試体について、実施例1及び2と同様にして、滑り抵抗を評価した。実施例5及び比較例1に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を以下の表3に示した。
また、実施例3~5に係るコンクリート供試体のBPN値は、実施例1及び2に係るコンクリート供試体のBPN値よりも高くなることが分かった。このことから、散布するC12A7系CA材の粒子径を0.6mm以下とすることにより、より滑り抵抗を高めることができることが分かった。
さらに、各実施例の中でも、実施例3に係るコンクリート供試体のBPN値は特に高い値を示していた。このことから、散布するC12A7系CA材の粒子径を、0.3mmを上回り0.6mm以下とすることにより、特に、滑り抵抗を高めることができることが分かった。
(コンクリート供試体の作製)
C12A7系CA材の散布量を150g/m2とした以外は、実施例3と同様にして、打設後のコンクリート組成物の一方の半面側に実施例6に係るコンクリート供試体を作製した。
また、C12A7系CA材の散布量を100g/m2とした以外は、実施例3と同様にして、打設後のコンクリート組成物の他方の半面側に実施例7に係るコンクリート供試体を作製した。
実施例6及び7に係るコンクリート供試体について、実施例1及び2と同様にして、滑り抵抗を評価した。実施例6及び7に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を以下の表4に示した。
(コンクリート供試体の作製)
C12A7系CA材の散布量を50g/m2とした以外は、実施例3と同様にして、打設後のコンクリート組成物の一方の半面側に実施例8に係るコンクリート供試体を作製した。
実施例8に係るコンクリート供試体について、実施例1及び2と同様にして、滑り抵抗を評価した。実施例8に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を以下の表4に示した。なお、以下の表4にも、比較例1に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を示した。
また、C12A7系CA材の散布量を100g/m2以上とすることにより、何らのCA材をも散布しなかったコンクリート供試体と比べて滑り抵抗が大きく向上することが確認された。
さらに、C12A7系CA材の散布量を150g/m2とした場合には、旧日本道路公団の出来形基準値であるBPN値60以上を満足するようになり、特に優れた滑り抵抗性を示すことが確認された。
(コンクリート供試体の作製)
C12A7系CA材をアルミナセメント(JIS R 2511(1995)3種相当品)に代えた以外は、実施例3と同様にして、打設後のコンクリート組成物の他方の半面(実施例8の一方の半面と隣り合う半面)側に実施例9に係るコンクリート供試体を作製した。
実施例9に係るコンクリート供試体について、実施例1及び2と同様にして、滑り抵抗を評価した。実施例9に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を以下の表5に示した。
(コンクリート供試体の作製)
C12A7系CA材を珪砂(三久海運製)に代えた以外は、実施例3と同様にして、打設後のコンクリート組成物の一方の半面側に、比較例2に係るコンクリート供試体を作製した。
また、C12A7系CA材を早強ポルトランドセメント(JIS R5210に定める早強ポルトランドセメント)に代えた以外は、実施例3と同様にして、打設後のコンクリート組成物の他方の半面側に、比較例3に係るコンクリート供試体を作製した。
比較例2及び3に係るコンクリート供試体について、実施例1及び2と同様にして、滑り抵抗を評価した。比較例2及び3に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を以下の表5に示した。なお、以下の表5にも、比較例1に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を示した。
また、珪砂を散布して作製された比較例2に係るコンクリート供試体は、何らのCA材をも散布しなかった比較例1に係るコンクリート供試体と同程度の滑り抵抗を示すことが確認された。
さらに、早強ポルトランドセメントを散布して作製された比較例3に係るコンクリート供試体は、何らのCA材をも散布しなかった比較例1に係るコンクリート供試体と比べて、滑り抵抗が低下することが確認された。
S2 散布工程
Claims (4)
- 水とセメントと骨材とを有するコンクリート組成物を打設する打設工程と、
打設後のコンクリート組成物が硬化体となる前に、該コンクリート組成物の表面に滑り抑制剤を散布する散布工程と、を備え、
前記滑り抑制剤は、カルシウムアルミネートであって、12CaO・7Al 2 O 3 を70質量%以上含む急結成分を含み、かつ、粉末状である
舗装コンクリートの製造方法。 - 前記滑り抑制剤は、粒子径が0.6mm以下である
請求項1に記載の舗装コンクリートの製造方法。 - 前記滑り抑制剤は、粒子径が0.3mmを上回る
請求項2に記載の舗装コンクリートの製造方法。 - 前記散布工程において、硬化体となる前の前記コンクリート組成物の表面に前記滑り抑 制剤を100g/m2以上散布する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の舗装コンクリートの製造方法。
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