添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1は、本実施形態で用いられる被加工物11の斜視図である。被加工物11は、例えば、主としてシリコン等の材料で成る円盤状のウェーハである。
被加工物11の表面11a側は、格子状に設定された分割予定ライン(ストリート)13によって複数の領域に区画されており、各領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス15が設けられている。
なお、被加工物11は、シリコン以外の半導体又は絶縁体で構成されていてもよい。更に、被加工物11の形状、構造、大きさ等に制限はなく、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
図2は、本実施形態で用いられる樹脂シート21の斜視図である。樹脂シート21は、例えば、被加工物11よりも大きい径を有する円形のフィルムである。樹脂シート21は、基材層23及び糊層25の積層構造を有する。
本実施形態では、便宜上、糊層25とは反対側の基材層23の一面(表面)を樹脂シート21の表面21aと称し、基材層23とは反対側の糊層25の一面を樹脂シート21の裏面21bと称する。つまり、表面21aは、樹脂シート21の基材層23側の外面であり、裏面21bは、樹脂シート21の糊層25側の外面である。
基材層23は、円形に構成されたフィルム状の固体層である。基材層23は、例えば、100μmから200μmの所定の厚さを有し、ポリオレフィン(PO)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料で形成されている。
基材層23の他面(即ち、表面21aとは反対側の面)の全体には、糊層25が設けられている。なお、糊層25は、基材層23の他面の外周近傍に環状に設けられてもよい。糊層25は、糊剤(即ち、粘着剤)から成る層であり、例えば、シリコーンゴム、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の材料で形成されている。なお、糊層25は、紫外線又は熱等の外的刺激により粘着性を失い硬化する性質を有する。
次に、被加工物11の加工方法について説明する。加工方法においては、まず、樹脂シート21の裏面21bを支持基台29に貼り付けて、樹脂シート21と支持基台29とを一体化させる(貼り付けステップ(S10))。
図3は、貼り付けステップ(S10)を示す斜視図である。支持基台29は、基材層23と略同じ径で構成された両面が平坦な円盤状の基板であり、所定の厚さ(例えば、1mm程度)を有する。
支持基台29は、例えば、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等の各種ガラス材料で形成されているが、半導体材料、樹脂材料等の他の材料で形成されてもよい。なお、本実施形態では、便宜上、樹脂シート21が貼り付けられる側の支持基台29の一面を支持基台29の表面29aと称し、表面29aとは反対側の支持基台29の他面を支持基台29の裏面29bと称する。
貼り付けステップ(S10)では、例えば、貼付け装置(不図示)を用いて、樹脂シート21の裏面21bを支持基台29の表面29aに貼り付ける。貼付け装置は、支持基台29を支持する支持テーブル(不図示)を有する。
支持テーブルには、支持基台29の裏面29bが支持テーブルの表面に接するように、支持基台29が配置される。支持テーブルの裏面側には、ボールネジ等の移動機構(不図示)が設けられており、支持テーブルはこの移動機構により所定方向に沿って移動できる。
支持テーブルの上方には、樹脂シート21を支持テーブルに向けて押圧する円柱状の加圧ローラー(不図示)が配置されている。また、加圧ローラーの円柱の回転軸の方向は、支持テーブルの移動方向である上述の所定方向と直交している。
貼付け装置は、樹脂シート21の糊層25側に離型シートが貼り付けられたテープ体(不図示)を加圧ローラーに向けて送り出す送り出し機構(不図示)を有する。貼付け装置は、更に、樹脂シート21が加圧ローラーと支持基台29との間に供給されるときに、樹脂シート21を離型シートから剥離する剥離ユニット(不図示)を有する。
剥離ユニットでテープ体から剥離された離型シートは、巻き取り機構(不図示)により巻き取られる。なお、巻き取り機構が離型シートを巻き取る速度と、送り出し機構がテープ体を送り出す速度とは、同じになるように調整される。
貼り付けステップ(S10)では、まず、支持基台29の表面29aが上になる様に、支持テーブル上に支持基台29を載置する。次に、基材層23側の面が加圧ローラーに接し、糊層25側の面が支持テーブルに対向する様に、加圧ローラーと支持基台29との間に樹脂シート21を配置する。
そして、樹脂シート21は、送り出し機構及び巻き取り機構により剥離ユニットへ送られ、剥離ユニットで離型シートから剥離される。その後、樹脂シート21は、加圧ローラーで下向きに加圧(押圧)されて、支持テーブル上の支持基台29の一部に貼り付けられる。
次に、送り出し機構及び巻き取り機構で樹脂シート21を剥離ユニットへ送り、且つ、加圧ローラーで樹脂シート21を下向きに加圧しながら、支持テーブルを上述の所定方向に移動させる。なお、樹脂シート21を支持テーブル上に送り出す速度と、支持テーブルの移動速度とは、同じとなる様に調整される。
加圧ローラーによって加圧される樹脂シート21の被加圧領域を支持テーブルに対して移動させながら、支持基台29の表面29aに樹脂シート21の裏面21bを密着させることで、支持基台29に樹脂シート21を貼り付ける。これにより、樹脂シート21及び支持基台29から成る樹脂シートユニット31を形成する。
フィルム状の樹脂シート21は、支持基台29に貼り付けられることで、固定されて撓まなくなる。それゆえ、後述する切削ステップ(S60)等の加工時に、被加工物11及び樹脂シート21が撓むことを防止できる。
なお、本実施形態の貼り付けステップ(S10)では、貼付け装置を用いるが、作業者が手作業で支持基台29に樹脂シート21を貼り付けてもよい。貼り付けステップ(S10)の後、バイト切削装置40を用いて、樹脂シート21の表面21a側に凹凸を形成する(凹凸形成ステップ(S20))。
図4は、凹凸形成ステップ(S20)を示す側面図であり、図5は、凹凸形成ステップ(S20)を示す斜視図である。また、図6は、凹凸形成ステップ(S20)後の樹脂シート21の表面21a側を示す斜視図である。
バイト切削装置40は、支持基台29の裏面29b側を吸引して保持するチャックテーブル50を有する。チャックテーブル50には、その下方にモータ等の回転駆動源(不図示)を有する回転機構が連結されており、チャックテーブル50は、Z軸方向(鉛直方向)に概ね平行な回転軸の周りに回転可能である。
更に、チャックテーブル50の下方には、ボールネジ等から成るテーブル移動機構(不図示)が設けられており、チャックテーブル50は、このテーブル移動機構によりZ軸方向に直交する水平方向(例えば、矢印52で示す加工送り方向)に移動できる。
チャックテーブル50の上面は、支持基台29の裏面29b側を吸引して保持する保持面50aとなっている。保持面50aは、多孔質材料で形成された円盤状のポーラス板の表面である。ポーラス板には流路(不図示)が接続されており、この流路にはエジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。
チャックテーブル50の上方には、バイト切削ユニット42が設けられている。バイト切削ユニット42は、筒状のスピンドルハウジング44aを有する。なお、スピンドルハウジング44aは、Z軸方向に移動可能なZ軸移動プレート(不図示)に固定されており、このZ軸移動プレートはZ軸移動機構(不図示)に支持されている。
スピンドルハウジング44a内には、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されたスピンドル44bが回転可能に収容されている。スピンドル44bの下端部は、スピンドルハウジング44aの外部に露出している。
スピンドル44bの下端部には、ホイールマウント44cが固定されており、このホイールマウント44cの下面には、ステンレス鋼やアルミニウム等の金属で形成された円盤状のバイトホイール46が装着されている。
バイトホイール46の下面側には、バイト工具48が装着されている。バイト工具48は、バイトホイール46に装着されている略角柱状の基部48aを有する。基部48aのバイトホイール46とは反対側の端部には、ダイヤモンド等で形成された切り刃48bが固定されている。
凹凸形成ステップ(S20)では、まず、支持基台29の裏面29b側が保持面50aに接する様に、樹脂シートユニット31をチャックテーブル50上に載置する。その後、吸引源が生じる負圧を保持面50aに作用させ、支持基台29の裏面29bをチャックテーブル50で吸引保持する。
次いで、Z軸移動機構で、バイト切削ユニット42のZ軸方向の高さ位置を調整して、樹脂シート21の表面21a側と接触する高さに切り刃48bの底部を位置付ける。そして、回転駆動源によりバイトホイール46を回転させる。この状態で、テーブル移動機構によりチャックテーブル50をバイト切削ユニット42の下方に移動させれば、樹脂シート21の表面21a側はバイト工具48で切削される。
特に、樹脂シートユニット31が、バイトホイール46の径方向の一端側から、スピンドル44bの直下を通り、バイトホイール46の径方向の他端側に抜けるように、チャックテーブル50を加工送り方向に沿って直線状に移動させる。
これにより、樹脂シート21の表面21aの略全体がバイト切削される。より具体的には、バイト工具48の軌跡に沿って、樹脂シート21の表面21aに複数の円弧状の切削痕が形成される。バイト工具48は、柔軟性のある樹脂シート21の表面21a側に引っ掛かりながら表面21a側に傷をつける。それゆえ、円弧状の各切削痕は、円弧の円周方向に沿って離散的に形成された複数の微小な溝27から成る。
複数の溝27の各々は、表面21aから0.1μmから0.3μm程度の深さを有するが、数μm以下(例えば、2μmから3μm程度)の深さを有してもよく、樹脂シート21の厚さの3%以下の深さを有してもよい。溝27は表面21aに対する凹部となり、表面21aは溝27に対する凸部となるので、樹脂シート21の表面21a側には凹凸が形成される。
なお、本実施形態では、バイト切削により表面21a側に凹凸を形成したが、圧縮空気に研磨材を混ぜて表面21aに吹き付けるサンドブラストにより表面21aに傷を形成することで、表面21a側に凹凸を形成してもよい。また、プラズマエッチングにより、表面21aをエッチングすることにより、表面21a側に凹凸を形成してもよい。
更に、スピンドルの下方に連結された円盤状の研削ホイールをスピンドルを回転軸として回転させつつ、研削ホイールの底部に設けられた研削砥石を表面21aに接触させる表面21a側の研削により表面21aに傷を形成することで、表面21a側に凹凸を形成してもよい。
ところで、凹凸形成ステップ(S20)で凹凸を形成する領域は、樹脂シート21の表面21a側全体ではなく、表面21a側の一部であってもよい。例えば、後述する被加工物固定ステップ(S40)で被加工物11が配置される領域にだけ、凹凸を形成してもよい。
凹凸形成ステップ(S20)の後に、不図示の液体供給装置により、凹凸が形成された樹脂シート21の表面21a側に液体を供給する(液体供給ステップ(S30))。図7は、液体供給ステップを示す斜視図である。
液体供給装置は、例えば、スピンナテーブル(不図示)を有する。スピンナテーブルには、その下方に回転機構(不図示)が連結されており、スピンナテーブルは、Z軸方向(鉛直方向)に概ね平行な回転軸の周りに回転できる。
また、スピンナテーブルは、表面側にポーラス板(不図示)を有する。ポーラス板には、流路(不図示)が接続され、更に、この流路にはエジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。吸引源が生じる負圧をポーラス板に作用させることにより、ポーラス板の表面は樹脂シートユニット31を吸引して保持する保持面として機能する。
液体供給装置は、純水56等の液体を噴出する液体噴射ユニット(不図示)を更に有する。液体噴射ユニットは、例えば、スピンナテーブルの保持面に保持された樹脂シートユニット31の樹脂シート21の表面21a側に純水56を噴射する。
液体噴射ユニットは、概略L形状のアーム(不図示)を有し、このアームの一端には、液体を噴射するノズル54が設けられている。ノズル54は、スピンナテーブルに対向する様に配置されており、アーム等を介して液体供給源(不図示)に接続されている。
アームの他端には、アームを揺動する電動モータが設けられている。電動モータは、例えば、スピンナテーブルの回転中心を横切るように円弧状にノズル54を揺動させることができる。
液体供給ステップ(S30)では、まず、樹脂シートユニット31の裏面29b側をスピンナテーブルの保持面で吸引保持する。次いで、回転機構を駆動してスピンナテーブルを回転させる。
そして、ノズル54をスピンナテーブル上で円弧状に揺動させつつ、ノズル54から表面21a側に純水56を噴射させる。これにより、純水56は、遠心力により表面21a上に一様に広がる。なお、本実施形態の液体供給ステップ(S30)では、液体供給装置を用いるが、作業者が手作業で樹脂シート21の表面21a側に一様に純水56を供給してもよい。
純水56とは、例えば、0.1MΩ・cmから15MΩ・cm程度の電気抵抗率を有する水である。逆浸透膜を通して精製されたRO(Reverse Osmosis)水、イオン交換樹脂等により水中のイオンが除去された脱イオン水、蒸留器で蒸留することにより得られた蒸留水等は、純水56の例である。
液体供給ステップ(S30)の後、被加工物11の裏面11bと樹脂シート21の表面21aとを向き合わせて、純水56を介して被加工物11を樹脂シート21に押圧し、被加工物11を樹脂シート21に密着させて固定する(被加工物固定ステップ(S40))。
図8は、被加工物固定ステップ(S40)を示す側面図である。被加工物固定ステップ(S40)では、例えば、押圧装置60が用いられる。押圧装置60は、チャックテーブル62を有する。チャックテーブル62は、表面側にポーラス板(不図示)を有する。
ポーラス板には、流路(不図示)が接続され、更に、この流路にはエジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。吸引源が生じる負圧をポーラス板に作用させることにより、ポーラス板の表面は樹脂シートユニット31を吸引して保持する保持面として機能する。
チャックテーブル62と対向する位置には、金属等で形成され略円盤状の押圧プレート66が設けられている。押圧プレート66の径は、例えば、被加工物11の径よりも大きい。チャックテーブル62とは反対側に位置する押圧プレート66の一面には、Z軸方向に沿う円柱状のロッド64の一端が接続している。
押圧プレート66とは反対側のロッド64の他端には、モータ等を含む昇降機構(不図示)が連結されている。昇降機構でロッド64を昇降させることにより、押圧プレート66は、チャックテーブル62の保持面62aに対して昇降できる。
被加工物固定ステップ(S40)では、まず、樹脂シート21の表面21a側が上になる様に、樹脂シートユニット31をチャックテーブル62の保持面62aに載置する。そして、吸引源を作動させて樹脂シートユニット31の裏面29b側を保持面62aで吸引保持する。
次いで、被加工物11の裏面11b側が表面21a側に接する様に、表面21a上に被加工物11を載置する。そして、昇降機構により押圧プレート66を下降させて、押圧プレート66で被加工物11の表面11aを押圧する。なお、押圧する力は、例えば、数Nから数十N程度とする。なお、このとき、被加工物11及び樹脂シート21の少なくとも一方に熱を加えてもよい。
平坦な円盤状の押圧プレート66で被加工物11を、例えば、数秒から数十秒程度押圧することにより、被加工物11に対してZ軸方向に略均等に力をかけることができる。樹脂シート21の表面21a側の凹凸には純水56が設けられているので、押圧された被加工物11の裏面11b側は、純水56を介して樹脂シート21の表面21a側に密着する。
そして、押圧後、押圧プレート66を上昇させる。被加工物11の裏面11bと樹脂シート21の表面21aとの間では空気が排除されており純水56で充填されているか、又は、裏面11bと表面21aとは密着している。それゆえ、押圧プレート66を被加工物11から離した後も、被加工物11と樹脂シート21とは大気圧により互いに押し付けられた状態が維持される。
この様に、溝27は吸盤の様に機能するので、樹脂シート21を介して被加工物11が支持基台29に固定された被加工物ユニット33が形成される。樹脂シート21は、糊層を用いて被加工物11に貼り付けられるのではなく、樹脂シート21の基材層23の表面21a側に形成した凹凸に供給された純水56を介して、被加工物11に貼り付けられる。
仮に、被加工物11を樹脂シート21から剥離しても、被加工物11には糊剤が残存することはない。また、被加工物11を樹脂シート21から剥離した後に、被加工物11を乾燥させるだけで裏面11b側の液体を除去でき、被加工物11の裏面11b側には不純物が残らない。更に、被加工物11を接着する糊剤を用いない分だけ保護テープを安価に製造できるという点も有利である。
なお、被加工物固定ステップ(S40)における固定とは、永久的な固定ではなく、一時的な固定を意味する。被加工物11及び樹脂シート21は、厚さ方向においては大気圧により押圧されることで固定されているが、例えば、被加工物11と樹脂シート21との間に空気を入れることで、樹脂シート21を被加工物11から容易に剥離できる。
なお、被加工物固定ステップ(S40)では、被加工物11の表面11a側が押圧プレート66により押圧されるが、基本的には、表面11aに傷が生じたりダメージが入ったりすることは無い。但し、表面11a側への傷やダメージを更に確実に回避するために、表面11aに保護部材を設けてもよい。
保護部材は、水溶性樹脂膜、粘着層を有しない樹脂シート等の保護膜であってよい。被加工物固定ステップ(S40)後に、水溶性樹脂膜は、例えば、液体供給ステップ(S30)で用いたスピンナテーブルで洗浄することにより除去され、樹脂シートは、除去装置又は手作業により、被加工物11から捲り取ることで除去される。
ところで、本実施形態では、押圧装置60を用いたが、作業者が手で被加工物11を樹脂シートユニット31の表面21a側に押圧してもよい。また、チャックテーブル62及び押圧プレート66を上下反転させて配置し、被加工物11を上方から吊り下げる様に、チャックテーブル62で表面11a側を吸引保持してもよい。
そして、押圧プレート66上に載置された樹脂シートユニット31を上昇させることにより、被加工物11の裏面11bと樹脂シート21の表面21aとが対向した状態で、純水56を介して樹脂シート21を被加工物11に押圧してもよい。
被加工物固定ステップ(S40)の後、被加工物11を加工する。本実施形態では、被加工物11を切削(加工)するために、まず、被加工物ユニット33の樹脂シート21とは反対側に位置する支持基台29の裏面29bを、切削装置70が備えるチャックテーブル72の保持面72aで保持する(保持ステップ(S50))。
図9(A)は、保持ステップ(S50)を示す断面図であり、図9(B)は、保持ステップ(S50)を示す斜視図である。チャックテーブル72は、表面側にポーラス板74を有する。ポーラス板74には、流路(不図示)が接続され、更に、この流路にはエジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。
吸引源が生じる負圧をポーラス板74に作用させることにより、ポーラス板74の表面は保持面72aとして機能する。また、チャックテーブル72には、その下方にモータ等の回転駆動源(不図示)を有する回転機構が連結されており、チャックテーブル72は、Z軸方向(鉛直方向)に概ね平行な回転軸の周りに回転可能である。
保持ステップ(S50)では、まず、支持基台29の裏面29b側が保持面72aに接する様に、被加工物ユニット33を保持面72a上に載置する。そして、吸引機構により保持面72aに負圧を作用させることで、被加工物ユニット33をチャックテーブル72で保持する。
保持ステップ(S50)の後、切削装置70を用いて被加工物11を切削する(切削ステップ(S60))。図10(A)は、切削ステップ(S60)を示す一部断面側面図であり、図10(B)は、切削ステップ(S60)を示す斜視図である。
切削装置70は、上述のチャックテーブル72に加えて、チャックテーブル72の保持面72a上に設けられた切削ユニット76を有する。切削ユニット76は、筒状のスピンドルハウジング(不図示)を有し、スピンドルハウジングに接続されたZ軸移動機構によりZ軸方向の高さ位置が調整される。
切削ユニット76は、スピンドルハウジングに回転可能な態様で支持されたスピンドル76aを有する。スピンドル76aの一端には、スピンドル76aを回転駆動するモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
スピンドル76aの他端は、スピンドルハウジングから外部に露出しており、この他端には、ブレードマウント76bが装着されている。ブレードマウント76bは、スピンドル76aとは反対側に突出するボス部(不図示)を有している。
ブレードマウント76bのボス部には、円環状の切削ブレード78の開口部が貫通する様に、切削ブレード78が配置される。そして、切削ブレード78を挟むように、マウントナット76cがボス部に締結される。これにより、切削ブレード78は、ブレードマウント76bとマウントナット76cとの間に挟持されて固定され、切削ブレード78はスピンドル76aに対して固定される。
切削ブレード78は、いわゆるハブ型のブレードであり、円環状のハブ基台78aの外周部に、円環状の切り刃78bが固定されている。切り刃78bは、例えば、金属、樹脂等の結合材に、ダイヤモンド、cBN(cubic boron nitride)等の砥粒を混合して形成される。ただし、結合材や砥粒に制限はなく、切り刃78bの仕様に応じて適宜選択できる。なお、切削ブレード78は、ハブレス型のブレードであってもよい。
切削ステップ(S60)では、スピンドル76aを回転軸として切削ブレード78を回転させながら、切削ユニット76をZ軸方向に沿って下降させ、切り刃78bを被加工物11の分割予定ライン13に沿って切り込ませる。そして、チャックテーブル72と切削ユニット76とを所定方向に沿って相対的に移動させることにより、被加工物11は切削ブレード78で切削される。
一の方向と平行な全ての分割予定ライン13に沿って被加工物11を切削した後、チャックテーブル72を90度回転させて、一の方向と直交する他の方向と平行な全ての分割予定ライン13に沿って、同様に被加工物11を切削する。
全ての分割予定ライン13に沿って被加工物11を切削することで、被加工物11は各々デバイス15を含む個々のチップに分割される。これにより、切削ステップ(S60)を終了する。なお、被加工物11を樹脂シートユニット31から剥離する場合は、まず、糊層25に紫外線又は熱等の外的刺激を与えて糊層25を硬化させることで、糊層25の粘着性を消失させる。
これにより、支持基台29を樹脂シート21から容易に剥離できる。次に、樹脂シート21の端部を捲り上げてチップ及び樹脂シート21の間に空気を入れる。これにより、樹脂シート21をチップから容易に剥離できる。図11は、第1実施形態の加工方法を示すフロー図である。
ところで、第1実施形態の第1変形例として、貼り付けステップ(S10)の前に、凹凸形成ステップ(S20)を行い、樹脂シート21の表面21a側に凹凸を形成してもよい。
例えば、離型シート(不図示)に貼り付けられた状態の樹脂シート21の離型シート側(即ち、裏面21b側)をチャックテーブル50の保持面52aで吸引保持した上で、バイト切削ユニット42で表面21a側を切削する。
これにより、樹脂シート21の表面21a側に凹凸を形成した後、貼り付けステップ(S10)を行い、次いで、液体供給ステップ(S30)を行う。以降、被加工物固定ステップ(S40)、保持ステップ(S50)及び切削ステップ(S60)を順次行う。
また、第1実施形態の第2変形例として、樹脂シート21ではなく被加工物11に純水56を供給してもよい。例えば、被加工物11の裏面11b側に純水56を供給する。そして、押圧装置60を用いて、純水56を介して被加工物11の裏面11b側を樹脂シート21の表面21a側に押圧、又は、純水56を介して樹脂シート21の表面21a側を被加工物11の裏面11b側に押圧する(被加工物固定ステップ(S40))。以降、保持ステップ(S50)及び切削ステップ(S60)を順次行う。
更に、第1実施形態の第3変形例として、被加工物固定ステップ(S40)で、被加工物11の表面11aと樹脂シート21の表面21aとを向き合わせて、純水56を介して被加工物11を樹脂シート21に押圧してもよい。
この場合、樹脂シート21の表面21a側又は被加工物11の表面11a側に純水56を供給し、被加工物11の裏面11b側を押圧プレート66で押圧して、被加工物11を樹脂シート21に密着させて固定する。これにより、保護部材を用いなくても、表面11a側への傷やダメージ等を確実に回避できる。なお、第1実施形態の第1変形例、第2変形例及び第3変形例のうち、任意の二つ又は三つを組み合わせてもよい。
ところで、上述の第1実施形態では、樹脂シートユニット31の表面21a側に1つの被加工物11が固定されたが、樹脂シートユニット31の表面21a側に複数の被加工物11が固定されてもよい。
図12(A)は、複数の円盤状の被加工物11が樹脂シート21に固定された状態を示す斜視図であり、保持ステップ(S50)に対応する図である。なお、図12(A)では、3つの被加工物11が樹脂シート21に固定されているが、2つ又は4つ以上の被加工物11が樹脂シート21に固定されてもよい。
また、被加工物11の形状は、円盤形状に限定されず、矩形形状であってもよい。図12(B)は、平面視で矩形状の複数の被加工物11が樹脂シート21に固定された状態を示す斜視図であり、保持ステップ(S50)に対応する図である。なお、2つ又は4つ以上の矩形状の被加工物11が樹脂シート21に固定されてもよい。また、樹脂シート21及び支持基台29も円盤形状に限定されず、矩形形状であってもよい。
次に、第2実施形態の加工方法について説明する。第2実施形態の加工方法では、支持基台29に代えて、金属製の環状フレーム39が用いられる(図13参照)。環状フレーム39は開口部39cを有しており、この開口部39cの径は、被加工物11の径よりも大きく、樹脂シート21の径よりも小さい。
なお、本実施形態では、便宜上、樹脂シート21が貼り付けられる側の環状フレーム39の一面を環状フレーム39の表面39aと称し、表面39aとは反対側の環状フレーム39の他面を環状フレーム39の裏面39bと称する。
第2実施形態の樹脂シート31は、基材層23の他面(即ち、表面21aとは反対側の面)の外周近傍に、環状に設けられた糊層25を有する(図13参照)。なお、糊層25は、環状の形態に限定されず、基材層23の他面の全体に設けられてもよい。但し、この場合、所定の領域(例えば、環状フレーム39の開口部39cに対応する領域)に、非粘着性の樹脂製のカバー層が更に設けられる。なお、糊層25の材料は、第1実施形態の糊剤と同じである。
次に、被加工物11の加工方法について説明する。まず、環状フレーム39の開口部39cを覆うように、樹脂シート21の裏面21bを環状フレーム39に貼り付けて、樹脂シート21と環状フレーム39とを一体化させる(貼り付けステップ(S10))。図13は、貼り付けステップ(S10)を示す斜視図である。
貼り付けステップ(S10)では、例えば、上述の貼付け装置(不図示)を用いる。貼り付けステップ(S10)では、まず、環状フレーム39の表面39aが上になる様に、支持テーブル上に環状フレーム39を載置する。次に、基材層23側の面が加圧ローラーに接し、糊層25側の面が支持テーブルに対向する様に、加圧ローラーと環状フレーム39との間に樹脂シート21を配置する。
樹脂シート21は、送り出し機構及び巻き取り機構により剥離ユニットへ送られ、剥離ユニットで離型シートから剥離される。その後、樹脂シート21は、加圧ローラーで下向きに加圧(押圧)されて、支持テーブル上の環状フレーム39の一部に貼り付けられる。
次に、送り出し機構及び巻き取り機構で樹脂シート21を剥離ユニットへ送り、且つ、加圧ローラーで樹脂シート21を下向きに加圧しながら、支持テーブルを上述の所定方向に移動させる。なお、樹脂シート21を支持テーブル上に送り出す速度と、支持テーブルの移動速度とは、同じとなる様に調整される。
加圧ローラーによって加圧される樹脂シート21の被加圧領域を支持テーブルに対して移動させながら、環状フレーム39の開口部39cを樹脂シート21が覆う様に環状フレーム39の表面39aに樹脂シート21の裏面21bを密着させることで、環状フレーム39に樹脂シート21を貼り付ける。これにより、樹脂シート21及び環状フレーム39から成る樹脂シートユニット35を形成する。
外周端部が環状フレーム39に固定された樹脂シート21は、樹脂シート21の径方向で張った状態となる。それゆえ、樹脂シート21を環状フレーム39に貼り付けない場合と比較して、樹脂シート21が自重で撓むことを防止できる。なお、本実施形態の貼り付けステップ(S10)では、貼付け装置を用いるが、作業者が手作業で環状フレーム39に樹脂シート21を貼り付けてもよい。
貼り付けステップ(S10)の後、バイト切削装置40を用いて、樹脂シート21の表面21a側に凹凸を形成する(凹凸形成ステップ(S20))。図14は、凹凸形成ステップ(S20)を示す一部断面側面図であり、図15は、凹凸形成ステップ(S20)を示す斜視図である。
バイト切削装置40は、第1実施形態のバイト切削装置40と同じであるので重複する説明を省略する。なお、第1実施形態では用いられなかったが、チャックテーブル50の側方には、チャックテーブル50から突出する態様で、複数のクランプ機構(不図示)が設けられている。例えば、4つのクランプ機構が、チャックテーブル50の周方向に等間隔で設けられる。
各クランプ機構は、環状フレーム39の裏面39b側が載置されるフレーム支持部(不図示)を有する。フレーム支持部は、保持面50aよりも低い位置に配置されており、環状フレーム39がフレーム支持部に載置された場合に、樹脂シート21の外周部及び環状フレーム39は、保持面50aよりも低い位置に配置される。
フレーム支持部には、ロータリーアクチュエータ等の回転駆動源が設けられている。回転駆動源にはアームが連結されており、このアームは、回転駆動源により所定の角度範囲で回転させられる。また、アームの先端にはフレーム押さえ部(不図示)が固定されている。
フレーム押さえ部は、アーム部と一体となって回転移動し、フレーム支持部上に載置された環状フレーム39の表面39aを上方から押さえる押さえ位置と、フレーム支持部上を開放する開放位置と、のいずれかに配置される。フレーム押さえ部は、例えば、環状フレーム39をフレーム支持部上に載置するとき又は環状フレーム39をフレーム支持部から取り外すときに、開放位置に配置される。
凹凸形成ステップ(S20)では、まず、樹脂シート21の裏面21b側が保持面50aに接し、環状フレーム39の裏面39bがフレーム支持部上に接する様に、樹脂シートユニット35をチャックテーブル50上に載置する。
なお、このとき、フレーム押さえ部は開放位置に配置されている。その後、吸引源が生じる負圧を保持面50aに作用させ、樹脂シート21の裏面21b側をチャックテーブル50で吸引保持する。
次いで、フレーム支持部の回転駆動源を作動させて、フレーム押さえ部を押さえ位置に移動させる。これにより、環状フレーム39は、クランプ機構により挟持されて固定される。
なお、このとき、樹脂シート21の外周部及び環状フレーム39は、保持面50aよりも低い位置に配置されて、保持面50a上に位置する樹脂シート21の中央部は平坦な形状となり、樹脂シート21の外周部は、その中央部から外側に向かって下方に傾斜する。
次いで、Z軸移動機構で、バイト切削ユニット42のZ軸方向の高さ位置を調整して、樹脂シート21の表面21a側と接触する高さに切り刃48bの底部を位置付ける。そして、回転駆動源によりバイトホイール46を回転させる。この状態で、テーブル移動機構によりチャックテーブル50をバイト切削ユニット42の下方に移動させれば、樹脂シート21の表面21a側の中央部はバイト工具48で切削される。
特に、樹脂シートユニット35が、バイトホイール46の径方向の一端側から、スピンドル44bの直下を通り、バイトホイール46の径方向の他端側に抜けるように、チャックテーブル50を加工送り方向に沿って直線状に移動させる。
これにより、樹脂シート21の表面21aの中央部がバイト切削される。より具体的には、バイト工具48の軌跡に沿って、樹脂シート21の表面21aに複数の円弧状の切削痕が形成される。バイト工具48は、柔軟性のある樹脂シート21の表面21a側に引っ掛かりながら表面21a側に傷をつける。それゆえ、円弧状の各切削痕は、円弧の円周方向に沿って離散的に形成された複数の微小な溝27から成る。
複数の溝27の各々は、表面21aから0.1μmから0.3μm程度の深さを有するが、数μm以下(例えば、2μmから3μm程度)の深さを有してもよく、樹脂シート21の厚さの3%以下の深さを有してもよい。溝27は表面21aに対する凹部となり、表面21aは溝27に対する凸部となるので、樹脂シート21の表面21a側には凹凸が形成される。
図16は、凹凸形成ステップ(S20)後の樹脂シート21の表面21a側を示す斜視図である。なお、図16では、チャックテーブル50から取り外した状態の樹脂シートユニット35を示す。
本実施形態では、バイト切削により表面21a側に凹凸を形成したが、圧縮空気に研磨材を混ぜて表面21aに吹き付けるサンドブラストにより表面21aに傷を形成することで、表面21a側に凹凸を形成してもよい。また、プラズマエッチングにより、表面21aをエッチングすることにより、表面21a側に凹凸を形成してもよい。
更に、スピンドルの下方に連結された円盤状の研削ホイールをスピンドルを回転軸として回転させつつ、研削ホイールの底部に設けられた研削砥石を表面21aに接触させる表面21a側の研削により表面21aに傷を形成することで、表面21a側に凹凸を形成してもよい。
ところで、凹凸形成ステップ(S20)で凹凸を形成する領域は、樹脂シート21の表面21a側全体ではなく、表面21a側の一部であってもよい。例えば、後述する被加工物固定ステップ(S40)で被加工物11が配置される領域にだけ、凹凸を形成してもよい。
凹凸形成ステップ(S20)の後に、不図示の液体供給装置により、凹凸が形成された樹脂シート21の表面21a側に液体を供給する(液体供給ステップ(S30))。図17は、液体供給ステップを示す斜視図である。
液体供給装置のスピンナテーブル58は、第1実施形態のスピンナテーブルと同じであるので、重複する説明を省略する。なお、第1実施形態では用いられなかったが、スピンナテーブル58の側方には、スピンナテーブル58から突出する態様で、複数の振り子式クランプ機構(不図示)が設けられている。例えば、スピンナテーブル58の周方向に等間隔で4つの振り子式クランプ機構が設けられる。
各振り子式クランプ機構は、一端がスピンナテーブル58に接続されたフレーム支持部(不図示)を有する。フレーム支持部の他端には、フレーム支持部に対して回転可能な態様で振り子式クランプ(不図示)が連結されている。
振り子式クランプは、スピンナテーブル58の回転速度が所定値未満の場合、フレーム支持部上を開放する開放位置に位置する。これに対して、スピンナテーブル58の回転速度が所定値以上の場合、フレーム支持部上に載置された環状フレーム39の表面39aを上方から押さえる押さえ位置に位置する。
液体供給ステップ(S30)では、まず、樹脂シート21の裏面21b側が保持面に接し、環状フレーム39の裏面39bがフレーム支持部上に接する様に、樹脂シートユニット35をスピンナテーブル58上に載置する。
なお、このとき、振り子式クランプは開放位置に配置されている。その後、吸引源が生じる負圧を保持面に作用させ、樹脂シート21の裏面21b側をスピンナテーブル58の保持面で吸引保持する。
次いで、回転機構を駆動してスピンナテーブル58を回転させる。スピンナテーブル58の回転速度が所定値以上となると、振り子式クランプは、遠心力により、環状フレーム39の表面39aを上方から押さえる押さえ位置に移動する。これにより、環状フレーム39は、振り子式クランプとフレーム支持部とによって挟持される。
そして、ノズル54をスピンナテーブル58上で円弧状に揺動させつつ、ノズル54から表面21a側に純水56を噴射させる。これにより、純水56は、遠心力により表面21aの中央部上に一様に広がる。なお、本実施形態の液体供給ステップ(S30)では、液体供給装置を用いるが、作業者が手作業で樹脂シート21の表面21a側に一様に純水56を供給してもよい。
液体供給ステップ(S30)の後、被加工物11の裏面11bと樹脂シート21の表面21aとを向き合わせて、純水56を介して被加工物11を樹脂シート21に押圧し、被加工物11を樹脂シート21に密着させて固定する(被加工物固定ステップ(S40))。図18は、被加工物固定ステップ(S40)を示す一部断面側面図である。
被加工物固定ステップ(S40)では、例えば、押圧装置60が用いられる。押圧装置60は、第1実施形態の押圧装置60と同じであるので重複する説明を省略する。
被加工物固定ステップ(S40)では、まず、樹脂シート21の表面21a側が上になる様に、樹脂シートユニット35をチャックテーブル62の保持面62aに載置する。そして、吸引源を作動させて樹脂シート21の裏面21b側を保持面62aで吸引保持する。
次いで、被加工物11の裏面11b側が表面21a側に接する様に、表面21a上に被加工物11を載置する。そして、昇降機構により押圧プレート66を下降させて、押圧プレート66で被加工物11の表面11aを押圧する。なお、押圧する力は、例えば、数Nから数十N程度とする。なお、このとき、被加工物11及び樹脂シート21の少なくとも一方に熱を加えてもよい。
平坦な円盤状の押圧プレート66で被加工物11を、例えば、数秒から数十秒程度押圧することにより、被加工物11に対してZ軸方向に略均等に力をかけることができる。樹脂シート21の表面21a側の凹凸には純水56が設けられているので、押圧された被加工物11の裏面11b側は、純水56を介して樹脂シート21の表面21a側に密着する。
そして、押圧後、押圧プレート66を上昇させる。被加工物11の裏面11bと樹脂シート21の表面21aとの間では空気が排除されており純水56で充填されているか、又は、裏面11bと表面21aとは密着している。それゆえ、押圧プレート66を被加工物11から離した後も、被加工物11と樹脂シート21とは大気圧により互いに押し付けられた状態が維持される。
この様に、溝27は吸盤の様に機能するので、樹脂シート21を介して被加工物11が環状フレーム39に固定された被加工物ユニット37が形成される。被加工物ユニット37では、被加工物11が表面21a側に配置され、環状フレーム39が裏面21b側に配置されている。このような配置は、糊層25を介して樹脂シート21と被加工物11とを固定しない本実施形態において特有の配置である。
樹脂シート21は、糊層を用いて被加工物11に貼り付けられるのではなく、樹脂シート21の基材層23の表面21a側に形成した凹凸に供給された純水を介して、被加工物11に貼り付けられる。
仮に、被加工物11を樹脂シート21から剥離しても、被加工物11には糊剤が残存することはない。また、被加工物11を樹脂シート21から剥離した後に、被加工物11を乾燥させるだけで裏面11b側の液体を除去でき、被加工物11の裏面11b側には不純物が残らない。更に、被加工物11を接着する糊剤を用いない分だけ保護テープを安価に製造できるという点も有利である。
なお、被加工物固定ステップ(S40)では、基本的には、表面11aに傷が生じたりダメージが入ったりすることは無いが、表面11a側への傷やダメージを更に確実に回避するために、表面11aに保護部材を設けてもよい。保護部材は、第1実施形態と同様に、水溶性樹脂膜、粘着層を有しない樹脂シート等の保護膜であってよい。
ところで、本実施形態では、押圧装置60を用いたが、作業者が手で被加工物11を樹脂シートユニット35の表面21a側に押圧してもよい。また、チャックテーブル62及び押圧プレート66を上下反転させて配置し、被加工物11を上方から吊り下げる様に、チャックテーブル62で表面11a側を吸引保持してもよい。
そして、押圧プレート66上に載置された樹脂シートユニット35を上昇させることにより、被加工物11の裏面11bと樹脂シート21の表面21aとが対向した状態で、純水56を介して樹脂シート21を被加工物11に押圧してもよい。
被加工物固定ステップ(S40)の後、被加工物11を加工する。本実施形態では、まず、被加工物11の表面11a側(樹脂シート21側)を、切削装置70が備えるチャックテーブル72の保持面72aで保持する(保持ステップ(S50))。
図19(A)は、保持ステップ(S50)を示す一部断面側面図であり、図19(B)は、保持ステップ(S50)を示す斜視図である。チャックテーブル72は、表面側にポーラス板74を有する。
チャックテーブル72は、第1実施形態で説明したチャックテーブル72と同じであるので重複する説明を省略する。なお、第1実施形態では用いられなかったが、チャックテーブル72の側方には、複数のクランプ機構(不図示)が設けられている。但し、クランプ機構は、バイト切削装置40のクランプ機構と同じであるので説明を省略する。
保持ステップ(S50)では、まず、樹脂シート21の裏面21b側が保持面72aに接し、環状フレーム39の裏面39bがフレーム支持部上に接する様に、被加工物ユニット37をチャックテーブル72上に載置する。
なお、このとき、フレーム押さえ部は開放位置に配置されている。その後、吸引源が生じる負圧を保持面72aに作用させ、樹脂シート21の裏面21b側をチャックテーブル72で吸引保持する。
次いで、フレーム支持部の回転駆動源を作動させて、フレーム押さえ部を押さえ位置に移動させる。これにより、環状フレーム39の表面39a及び裏面39bは、クランプ機構により挟持されて固定される。
なお、このとき、樹脂シート21の外周部及び環状フレーム39は、保持面72aよりも低い位置に配置されて、保持面72a上に位置する樹脂シート21の中央部は平坦な形状となり、樹脂シート21の外周部は、その中央部から外側に向かって下方に傾斜する。
保持ステップ(S50)の後、被加工物11の裏面11b側を切削する(切削ステップ(S60))。図20(A)は、切削ステップ(S60)を示す一部断面側面図であり、図20(B)は、切削ステップ(S60)を示す斜視図である。
切削ステップ(S60)でも、第1実施形態の切削装置70が用いられる。切削ステップ(S60)では、スピンドル76aを回転軸として切削ブレード78を回転させながら、切削ユニット76をZ軸方向に沿って下降させ、切り刃78bを被加工物11の分割予定ライン13に沿って切り込ませる。
そして、チャックテーブル72と切削ユニット76とを所定方向に沿って相対的に移動させることにより、被加工物11は切削ブレード78で切削される。一の方向と平行な全ての分割予定ライン13に沿って被加工物11を切削した後、チャックテーブル72を90度回転させて、一の方向と直交する他の方向と平行な全ての分割予定ライン13に沿って、同様に被加工物11を切削する。
全ての分割予定ライン13に沿って被加工物11を切削することで、被加工物11は各々デバイス15を含む個々のチップに分割される。その後、糊層25に紫外線又は熱等の外的刺激を与えて糊層25を硬化させることで、糊層25の粘着性を消失させる。
そして、環状フレーム39を樹脂シート21から剥離し、樹脂シート21を捲ることでチップと樹脂シート21との間に空気を入れる。これにより、樹脂シート21をチップから容易に剥離できる。
第2実施形態の第1変形例として、貼り付けステップ(S10)の前に、凹凸形成ステップ(S20)を行い、樹脂シート21の表面21a側に凹凸を形成してもよい。
例えば、離型シート(不図示)に貼り付けられた状態の樹脂シート21の離型シート側(即ち、裏面21b側)をチャックテーブル50の保持面52aで吸引保持した上で、バイト切削ユニット42で表面21a側を切削する。
これにより、樹脂シート21の表面21a側に凹凸を形成した後、貼り付けステップ(S10)を行い、次いで、液体供給ステップ(S30)を行う。以降、被加工物固定ステップ(S40)、保持ステップ(S50)及び切削ステップ(S60)を順次行う。
また、第2実施形態の第2変形例として、樹脂シート21ではなく被加工物11に純水56を供給してもよい。例えば、被加工物11の裏面11b側に純水56を供給する。そして、押圧装置60を用いて、純水56を介して被加工物11の裏面11b側を樹脂シート21の表面21a側に押圧、又は、純水56を介して樹脂シート21の表面21a側を被加工物11の裏面11b側に押圧する(被加工物固定ステップ(S40))。以降、保持ステップ(S50)及び切削ステップ(S60)を順次行う。
更に、第2実施形態の第3変形例として、被加工物固定ステップ(S40)で、被加工物11の表面11aと樹脂シート21の表面21aとを向き合わせて、純水56を介して被加工物11を樹脂シート21に押圧してもよい。
この場合、被加工物11の表面11a側に純水56を供給し、被加工物11の裏面11b側を押圧プレート66で押圧して、被加工物11を樹脂シート21に密着させて固定する。これにより、保護部材を用いなくても、表面11a側への傷やダメージ等を確実に回避できる。なお、第2実施形態の第1変形例、第2変形例及び第3変形例のうち、任意の二つ又は三つを組み合わせてもよい。
ところで、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、樹脂シートユニット35の表面21a側に1つの被加工物11が固定されたが、樹脂シートユニット35の表面21a側に複数の被加工物11が固定されてもよい。
図21(A)は、複数の円盤状の被加工物11が樹脂シート21に固定された状態を示す斜視図であり、被加工物固定ステップ(S40)で用いたチャックテーブル62から取り外された状態の被加工物ユニット37を示す。なお、図21(A)では、3つの被加工物11が樹脂シート21に固定されているが、2つ又は4つ以上の被加工物11が樹脂シート21に固定されてもよい。
また、被加工物11の形状は、円盤形状に限定されず、矩形形状であってもよい。図21(B)は、平面視で矩形状の複数の被加工物11が樹脂シート21に固定された状態を示す斜視図であり、被加工物固定ステップ(S40)で用いたチャックテーブル62から取り外された状態の被加工物ユニット37を示す。なお、2つ又は4つ以上の矩形状の被加工物11が樹脂シート21に固定されてもよい。
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、加工方法の各ステップの流れに従って、貼り付けステップ(S10)から保持ステップ(S50)まで行った後、切削ステップ(S60)に代えて、環状フレーム39に支持された被加工物11を観察、測定又は搬送してもよい。
被加工物ユニット37の状態で被加工物11を観察、測定又は搬送する、観察方法、測定方法又は搬送方法では、被加工物11が支持基台29又は環状フレーム39に支持されていない場合に比べて、被加工物11の取り扱いが容易になる。勿論、上述の様に、被加工物11を樹脂シート21から剥離しても、被加工物11には糊剤が残存することはない。
また、一度使用した樹脂シート21を再利用してもよい。但し、使用済の樹脂シート21では溝27が形成時に比べて広がり、吸盤として機能しにくくなる場合がある。それゆえ、使用済の樹脂シート21を再利用する場合、再度、凹凸形成ステップ(S20)を行い、表面21a側に凹凸を形成するとより好ましい。