JP7162116B1 - 長期保存安定性に優れた生分解性樹脂水系分散体とその使用方法 - Google Patents

長期保存安定性に優れた生分解性樹脂水系分散体とその使用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】分散性が良く長期保存しても分離を抑制できる生分解性樹脂水系分散体とその使用方法を提供する。【解決手段】本発明の生分解性樹脂水系分散体は、生分解性樹脂が水系溶媒に分散されている水系分散体であって、前記生分解性樹脂であるポリ乳酸樹脂、粘度平均重合度による平均分子量2万以上かつケン化度98%以下のポリビニルアルコール、及び多価カルボン酸エステルを含有し、前記ポリビニルアルコールに対する前記多価カルボン酸エステルの質量比が6以下であることを特徴としている。【選択図】なし

Description

本発明は、生分解性樹脂水系分散体に関する。
近年、環境意識の高まりや海洋プラスチックゴミ問題を背景に、プラスチック代替素材の需要が高まっている。
なかでも、生分解性樹脂の水系分散体は優れた生分解性、加工性、人体安全性を兼ね備えており、紙のコーティングや塗料、接着剤などあらゆる分野において応用開発が盛んに行われている。
生分解性樹脂水系分散体を上記用途に利用するためには、用途に応じて皮膜の耐水性、耐油性、柔軟性、接着性等が要求されるが、長期の保存安定性を欠く場合、水系分散体は経時で水層と樹脂層に分離してしまい、使用時に上記要求物性を発現できないという問題がある。
生分解性樹脂水系分散体の安定性は、使用する分散剤のイオン性や分子量、可塑剤を使用する場合にはその種類や比率、また分散体における樹脂粒子の粒子径等によって左右されるが、製品展開をする上で十分な長期保存安定性、例えば半年程度保存しても分離を抑制できるような長期保存安定性を有する生分解性樹脂水系分散体は得られていない。特に、皮膜の耐水性、耐油性、柔軟性等を満足しつつ長期保存安定性が得られる技術が望まれていた。
従来、生分解性樹脂としてポリ乳酸を用いた水系分散体として、特許文献1~8のような技術が提案されている。
特開2004-107413号公報 特開2004-204038号公報 特開2001-064440号公報 特開2004-099883号公報 特開2005-089751号公報 特開2002-121288号公報 特開2001-247392号公報 特開2006-241400号公報
しかしながら、半年程度保存しても分離を抑制できるような長期保存安定性は検討されていない。特許文献1、2は、可塑剤を含有するポリ乳酸の水系分散体を提案しているが、用いたポリビニルアルコールの分子量、ケン化度の記載はなく、長期保存安定性を評価していない。特許文献3、4は、可塑剤を添加した水系分散体について具体的な開示がなく、保管期間を確認したのは2ヶ月程度で実際の製品展開を考慮すると短い。特許文献5~8は、可塑剤がポリビニルアルコールに対して多い場合や、可塑剤の種類が適切でない場合等、使用するポリビニルアルコールと可塑剤の組み合わせについて長期保存安定性に適した開示はなく、分散体における樹脂粒子の粒子径も大きい場合がある。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、分散性が良く長期保存しても分離を抑制できる生分解性樹脂水系分散体とその使用方法を提供することを課題としている。
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリ乳酸樹脂を用いた生分解性樹脂水系分散体において、特定の分子量とケン化度を持つポリビニルアルコール、及び特定の可塑剤を使用し、これらの配合比を特定範囲とすることで上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の生分解性樹脂水系分散体は、生分解性樹脂が水系溶媒に分散されている水系分散体であって、前記生分解性樹脂であるポリ乳酸樹脂、粘度平均重合度による平均分子量2万以上かつケン化度98%以下のポリビニルアルコール、及び多価カルボン酸エステルを含有し、前記ポリビニルアルコールに対する前記多価カルボン酸エステルの質量比が6以下であることを特徴としている。
本発明の生分解性樹脂水系分散体の使用方法は、以下の工程を含むことを特徴としている:
前記生分解性樹脂水系分散体を得る工程;
前記生分解性樹脂水系分散体を6ヶ月以内で任意の期間保存する工程;及び
前記保存後、前記生分解性樹脂水系分散体を使用に供する工程。
本発明の生分解性樹脂分散体とその使用方法によれば、生分解性樹脂分散体は分散性が良く長期保存しても分離を抑制できる。
更に、耐水性や耐油性、柔軟性等の樹脂物性も満足することができ、長期保存した場合でもこれらの樹脂物性を低下させることがない。
以下に、本発明の具体的な実施形態を説明する。
本発明の生分解性樹脂分散体は、生分解性樹脂が水系溶媒に分散されている水系分散体である。この生分解性樹脂分散体は、生分解性樹脂であるポリ乳酸樹脂、粘度平均重合度による平均分子量2万以上かつケン化度98%以下のポリビニルアルコール、及び多価カルボン酸エステルを含有し、前記ポリビニルアルコールに対する前記多価カルボン酸エステルの質量比が6以下である。
本発明の生分解性樹脂分散体において、ポリ乳酸樹脂としては、ポリ乳酸、及び乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体を用いることができる。
乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体における他のヒドロキシカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、グリコール酸、2-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシバレリン酸、2-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシヘプタン酸、2-ヒドロキシオクタン酸、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、2-ヒドロキシ-2-エチル酪酸、2-ヒドロキシ-2-メチルバレリン酸、2-ヒドロキシ-2-エチルバレリン酸、2-ヒドロキシ-2-プロピルバレリン酸、2-ヒドロキシ-2-ブチルバレリン酸、2-ヒドロキシ-2-メチルカプロン酸、2-ヒドロキシ-2-エチルカプロン酸、2-ヒドロキシ-2-プロピルカプロン酸、2-ヒドロキシ-2-ブチルカプロン酸、2-ヒドロキシ-2-ペンチルカプロン酸、2-ヒドロキシ-2-メチルヘプタン酸、2-ヒドロキシ-2-エチルヘプタン酸、2-ヒドロキシ-2-プロピルヘプタン酸、2-ヒドロキシ-2-ブチルヘプタン酸、2-ヒドロキシ-2-メチルオクタン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、4-ヒドロキシ酪酸、5-ヒドロキシバレリン酸、6-ヒドロキシカプロン酸、7-ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体における、乳酸単量体に対するヒドロキシカルボン酸単量体のモル比は、特に限定されないが、例えば0.2以下、あるいは0.1以下、あるいは0.05以下である。
ポリ乳酸樹脂としてポリ乳酸を用いる場合、D-乳酸含有率が1~30モル%であることが好ましく、5~20モル%であることがより好ましい。
乳酸及びヒドロキシカルボン酸は、D体、L体、D/L体などの形態をとる場合があるが、いずれの形態であってもよく、制限はない。
ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量は、5000~100万であること好ましく、1万~30万であることがより好ましい。
ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、分子量が既知の標準物質と比較することにより後記の実施例欄に記載の方法で求めることができる。
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、生分解性樹脂として、ポリ乳酸樹脂以外の樹脂を含有してもよい。このような生分解性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレートサクシネートや、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリカプロラクトン等の二塩基酸ポリエステル、ポリカプロラクトン、カプロラクトンと他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレートと他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ酪酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、ポリ乳酸樹脂を生分解性樹脂の全量を基準として50質量%以上含有することが好ましく、生分解性樹脂におけるポリ乳酸樹脂の含有量が高い程好ましく、より好ましい順に示すと、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上のポリ乳酸樹脂を生分解性樹脂の全量を基準として含有する。最も好ましくは、生分解性樹脂の全てがポリ乳酸樹脂である。
本発明の生分解性樹脂水系分散体において、ポリビニルアルコールは、ポリ乳酸樹脂の樹脂粒子を溶媒に安定に分散させる。
本発明の生分解性樹脂分散体において、ポリビニルアルコールとしては、未変性のポリビニルアルコール、及び変性ポリビニルアルコールを用いることができる。
変性ポリビニルアルコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレン変性ポリビニルアルコール、カルボニル変性ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、アルキルエーテル変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、アセトアミド変性ポリビニルアルコール、ジアセトン基変性ポリビニルアルコール、アクリルニトリル変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリビニルアルコールの粘度平均重合度による平均分子量は2万以上である。平均分子量が2万以上であると、ポリ乳酸樹脂の樹脂粒子の粒径は微細で、生分解性樹脂水系分散体を長期保存しても分離を抑制できる。そのため、長期保存した場合でも耐水性や耐油性、柔軟性等のような皮膜等の樹脂物性の低下を抑制できる。長期保存安定性を高める点から、ポリビニルアルコールの平均分子量は3万以上が好ましく、6万以上がより好ましく、7万以上が更に好ましい。ポリビニルアルコールの平均分子量の上限は特に限定されないが、ポリ乳酸樹脂粒子の分散性や、更に皮膜等の耐水性や耐油性、柔軟性等の樹脂物性と長期保存した場合でもこれらの樹脂物性の低下を抑制できる点から、25万以下が好ましく、22万以下がより好ましく、20万以下が更に好ましく、18万以下が特に好ましく、14万以下が殊更好ましい。
例えば、ポリビニルアルコールの平均分子量が6万以上、更には7万以上であると、特に生分解性樹脂水系分散体の長期保存安定性とポリ乳酸樹脂粒子の分散性、及び経時での皮膜等の樹脂物性がより向上する。平均分子量が20万以下であると、特に造膜性や、その他の皮膜等における樹脂物性がより向上し、平均分子量が14万以下であると、ポリ乳酸樹脂粒子の分散性、及び経時での皮膜等における樹脂物性がより向上する。
ポリビニルアルコールの平均分子量は、粘度平均重合度、ケン化度及び酢酸ビニル単位とビニルアルコール単位の分子量から算出することができる。
ポリビニルアルコールの重合度は、JIS K 6726に記載されたように、ポリビニルアルコールを水酸化ナトリウムを用いて再ケン化し、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:リットル/g)から、以下の式に基づいて算出できる。
粘度平均重合度=([η]×10000/8.29)(1/0.62)
この粘度平均重合度に、ケン化度の割合に応じた酢酸ビニル単位とビニルアルコール単位の分子量換算をして平均分子量とする。
変性ポリビニルアルコールの場合も、粘度平均重合度から上記と同様に算出する。
ポリビニルアルコールのケン化度は98%以下である。ケン化度が98%以下であると可塑剤として多価カルボン酸エステルを用いた場合にもポリ乳酸樹脂粒子の分散性が良く、樹脂粒子の不均一化、凝集及び沈降を抑制し良好な分散状態を維持することができる。また生分解性樹脂水系分散体を長期保存しても分離を抑制する。この点から好ましくは96%以下、より好ましくは94%以下である。更にポリ乳酸樹脂粒子の分散性が良く、また長期保存しても分離を抑制し、更に長期保存した場合でも皮膜等の耐水性や耐油性、柔軟性等の樹脂物性の低下を抑制できる点から、ポリビニルアルコールのケン化度は好ましくは90%以下、より好ましくは87%以下である。ポリビニルアルコールのケン化度の下限は特に限定されないが、長期保存安定性を高める点から、またポリ乳酸樹脂粒子の分散性や、更に皮膜等の耐水性や耐油性、柔軟性等の樹脂物性と長期保存した場合でもこれらの樹脂物性の低下を抑制できる点から、好ましくは70%以上、より好ましくは72%以上、更に好ましくは75%以上、特に好ましくは78%以上である。
例えば、ポリビニルアルコールのケン化度が90%以下であると、長期保存安定性や、経時での皮膜等における樹脂物性がより向上し、87%以下であると、ポリ乳酸樹脂粒子の分散性や、経時での皮膜等における樹脂物性がより向上する。ケン化度が75%以上であると、ポリ乳酸樹脂粒子の分散性がより向上する。
ポリビニルアルコールのケン化度は、JIS K 6726に記載された、水酸化ナトリウムを用いて残存酢酸基を定量する方法で算出することができる。
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、長期保存安定性を高める点から、またポリ乳酸樹脂粒子の分散性や、更に皮膜等の耐水性や耐油性、柔軟性等の樹脂物性と長期保存した場合でもこれらの樹脂物性の低下を抑制できる点から、好ましくは、ポリビニルアルコールは、前記平均分子量が3万以上20万以下であり、かつケン化度が70%以上94%以下である。より好ましくは、ポリビニルアルコールは、前記平均分子量が6万以上20万以下であり、かつケン化度が78%以上かつ94%以下である。更に好ましくは、ポリビニルアルコールは、前記平均分子量が7万以上20万以下であり、かつケン化度が78%以上かつ90%以下である。特に好ましくは、ポリビニルアルコールは、前記平均分子量が7万以上14万以下であり、かつケン化度が78%以上かつ87%以下である。
本発明のポリ乳酸樹脂水系分散体は、ポリ乳酸樹脂に対するポリビニルアルコールの質量比が0.001~1.0であることが好ましく、0.01~0.5であることがより好ましく、0.05~0.4であることが更に好ましく、0.1~0.3であることが特に好ましい。このような範囲であるとポリ乳酸樹脂粒子の分散性や生分解性樹脂水系分散体の長期保存における分離抑制に適している。
本発明の生分解性樹脂水系分散体において、多価カルボン酸エステルは、皮膜特性等を改良する可塑剤として使用される。可塑剤としては、多価カルボン酸エステルの他にもポリグリセリン脂肪酸エステル誘導体、ポリヒドロキシカルボン酸など各種のものがあるが、多価カルボン酸エステルを平均分子量及びケン化度が前記した特定範囲のポリビニルアルコールと組み合わせて用いると、ポリ乳酸樹脂粒子の分散性が良く生分解性樹脂水系分散体を長期保存しても分離を抑制し、かつ皮膜等の耐水性や耐油性、柔軟性等の樹脂物性も満足することができ、長期保存した場合でもこれらの樹脂物性を低下させることがない。
多価カルボン酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、脂肪族二塩基酸エステル、脂肪族三塩基酸エステル、芳香族二塩基酸エステル、芳香族三塩基酸エステル等が挙げられる。
脂肪族二塩基酸エステルとしては、セバシン酸ジオクチル(DOS)、セバシン酸ジエチルヘキシル(DEHS)等のセバシン酸エステル、アジピン酸ジイソブチル(DIBA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジエチルヘキシル(DEHA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル(DBEEA)、アジピン酸と2-(2-メトキシエチトキシ)エタノール及びベンジルアルコールのエステル等のアジピン酸エステル、アゼライン酸ジオクチル(DOZ)、アゼライン酸ジエチルヘキシル(DEHZ)等のアゼライン酸エステル、コハク酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、イタコン酸エステル等が挙げられる。
脂肪族三塩基酸エステルとしては、アセチルクエン酸トリエチル(クエン酸アセチルトリエチル、ATEC)、アセチルクエン酸トリブチル(クエン酸アセチルトリブチル、ATBC)、クエン酸トリエチル(TEC)、クエン酸トリブチル(TBC)、アセチルクエン酸トリ(エチルオキシカルボニルメチレン)エステル等のクエン酸エステル等が挙げられる。
芳香族二塩基酸エステルとしては、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)、エチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等のフタル酸エステル等が挙げられる。
芳香族三塩基酸エステルとしては、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリエチルヘキシル、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸ジ-n-オクチル-n-デシル等のトリメリット酸と炭素数8~13の飽和脂肪族アルコールとのトリエステル等が挙げられる。
これらの中でも、皮膜等の樹脂物性を考慮すると多価カルボン酸エステルの中でも脂肪族二塩基酸エステルもしくは脂肪族三塩基酸エステルが好ましく、脂肪族二塩基酸エステルではアジピン酸エステルが好ましく、特にアジピン酸ジイソブチルが好ましい。脂肪族三塩基酸エステルではクエン酸エステルが好ましく、特にアセチルクエン酸トリブチルが好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂水系分散体は、ポリビニルアルコールに対する多価カルボン酸エステルの質量比が6以下であり、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることが更に好ましい。当該質量比がこのような範囲であると、特に生分解性樹脂水系分散体を長期保存しても分離を抑制し、長期保存した場合でも皮膜等の樹脂物性を低下させることがない。当該質量比の下限は特に限定されないが、ポリ乳酸樹脂粒子の分散性や生分解性樹脂水系分散体の長期保存安定性の点から0.3以上が好ましく、0.6以上がより好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂水系分散体は、ポリ乳酸樹脂に対する多価カルボン酸エステルの質量比が0.005~5.0であることが好ましく、0.01~1.0であることがより好ましく、0.05~0.5であることが更に好ましい。当該質量比がこのような範囲であると、可塑化効果をより発揮でき、可塑剤のブリードアウトが発生するのを抑制するのに適している。
本発明の生分解性樹脂水系分散体において、水系溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、及び水と相溶する有機溶媒との混合溶媒等が挙げられる。
前記混合溶媒において、水の比率は、特に限定されないが、混合溶媒の全量を基準として90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
前記混合溶媒において、有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、一価アルコール、多価アルコール等が挙げられる。一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルプロピルアルコール、ブタノール等が挙げられ、多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ブチレングリコール等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、本発明の効果を損なわない範囲内において、以上に示した以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、特に限定されないが、例えば、アニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤等のイオン性分散剤、粘度調整剤、表面平滑剤、撥水剤(疎水性向上剤)、離型剤、防錆剤、流動性調整剤、ワックス類等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、固形分が、生分解性樹脂水系分散体の全量を基準として30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましい。固形分がこの範囲内であると、水分散体に占める樹脂粒子の割合が多いため乾燥効率が向上する。また水分散体の粘度が適正な範囲となることで、増粘剤等の粘度調整剤を要することなく樹脂粒子が安定的に分散する。また、固形分が、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。固形分がこの範囲内であると、水分散体の粘度が高くなりすぎず、水分散体を塗工する際のハンドリング性が良好となる。ここで固形分とは、生分解性樹脂水系分散体の全体量に対して、水分等の水系溶媒の量を差し引いた質量の百分率のことである。
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、水系溶媒に分散されているポリ乳酸樹脂の樹脂粒子の平均粒子径が3.5μm以下であることが好ましい。平均粒子径がこの範囲内であると、樹脂粒子が安定に分散し、また乾燥工程において樹脂同士がより密に存在することができ、粒子同士の融着がし易いことから、特別な加熱処理を施さずに透明な皮膜を得ることができる。この点を考慮すると、平均粒子径は、好ましくは3.0μm以下である。
ここで樹脂粒子の平均粒子径は、後記の実施例欄に記載の方法で測定して得た値である。
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、その製造方法は特に限定されないが、例えば、生分解性樹脂、ポリビニルアルコール、及び多価カルボン酸エステルを、水系溶媒と共に混合攪拌することで製造することができる。
具体的には、例えば、攪拌装置を有する密閉槽を用い、生分解性樹脂、ポリビニルアルコール、多価カルボン酸エステル、及び水を同時に仕込み、加熱攪拌しながら加圧して生分解性樹脂を分散させる加圧分散法;加圧下で保持されている熱水中に、生分解性樹脂、ポリビニルアルコール、及び多価カルボン酸エステルを含む溶融物を添加攪拌して分散させる直接分散法;生分解性樹脂及び多価カルボン酸エステルを加熱溶融させ、これにポリビニルアルコールを含む水溶液を添加攪拌して生分解性樹脂を水に分散させる転相法;有機溶媒、水、生分解性樹脂、ポリビニルアルコール、及び多価カルボン酸エステルを添加攪拌して分散させた後、有機溶媒を除去する方法;生分解性樹脂及び多価カルボン酸エステルの有機溶媒溶液中に、ポリビニルアルコールを含む水溶液を添加攪拌して分散させた後、有機溶媒を除去する方法等が挙げられる。
生分解性樹脂の幅広い種類に適用が可能な点、加水分解の進行を考慮すると、攪拌装置を有する密閉槽に、有機溶媒、水、生分解性樹脂、ポリビニルアルコール、及び多価カルボン酸エステルを仕込み、攪拌しながら昇温し、固体原料を溶解、分散させた後、冷却し、その後、減圧下に有機溶媒を除去する方法が好ましい。
あるいは、攪拌装置を有する密閉槽に、有機溶媒、生分解性樹脂、及び多価カルボン酸エステルを仕込み攪拌昇温し溶解して生分解性樹脂溶解溶液を調製し、別の攪拌槽に水、ポリビニルアルコールを仕込み、溶解した水溶液を前記密閉槽に添加し、攪拌下で樹脂溶解温度以上に昇温しながら分散させた後、冷却し、その後、減圧下に有機溶媒を除去する方法が好ましい。
有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル等の蟻酸エステル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類等のエステル系有機溶媒、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの中でも、樹脂の溶解性が良好なエステル系有機溶媒、特に蟻酸エステル類、酢酸エステル類が好ましい。有機溶媒と水との割合は、樹脂の十分な溶解及びポリビニルアルコールと多価カルボン酸エステルの十分な溶解を考慮すると、質量比で、有機溶媒:水=1:9~9:1の割合が好ましく、7:3~3:7の割合がより好ましい。
生分解性樹脂水系分散体の製造における分散攪拌装置としては、ホモミキサーや高圧乳化機等を用いてもよいが、これらの特殊な装置を使用せずとも、通常の分散や混合攪拌に使用される、例えば、プロペラ翼、パドル翼、タービン翼、アンカー翼、リボン翼等の攪拌翼を有する回転式攪拌機を用いることができる。また、攪拌速度及び回転速度についても通常の分散や混合で使用する条件であってよい。例えば、分散時の攪拌翼の翼径(d1)と攪拌槽の内径(d2)の比(翼比:d1/d2)が0.5~0.85である攪拌翼を用いることができる。また、攪拌翼の周速は1~8m/sとすることができる。
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、簡単かつ安価に安定的に提供され、皮膜の特性に優れている。また、食品衛生法に基づく基準や、米食品医薬品局(FDA)が使用を許可するリストに収録された物質から製造することもできる。これらの点から、コーティング、塗料、接着剤等に好適に用いることができる。より具体的には、例えば、食品包装用資材(クラフト紙、純白ロール紙、上質紙等の食品包装用紙、PE、PP、PET、生分解性樹脂等からなる食品包装用フィルム等)のコーティング剤、ヒートシール剤及び接着剤;液晶表示装置用スペーサー;トナー用添加剤;電子写真現像用トナー;塗料等のレオロジー改質剤もしくは添加剤;粉体塗料用材料;自動車材料及び建築材料等の成形品への機械特性改良剤;フィルム、紙、繊維等の機械特性改良剤;ラピッドプロトタイピング、ラピッドマニュファクチャリング等の樹脂成形体用原料;フラッシュ成形用材料;プラスチックゾル用ペーストレジン;粉ブロッキング材;粉体の流動性もしくは平滑性向上剤;潤滑剤;ゴム配合剤;研磨剤;増粘剤;濾剤;濾過助剤;ゲル化剤;凝集剤;吸油剤;離型剤;プラスチックのフィルムもしくはシートの滑り性向上剤;ブロッキング防止剤;光沢調節剤;つや消し仕上げ剤;光拡散剤;表面硬度向上剤;靭性向上剤;クロマトグラフィー用充填剤;マイクロカプセル用助剤;ドラッグデリバリーシステム及び診断薬等の医療用材料;医療用診断検査剤;香料もしくは農薬の保持剤;化学反応用触媒及びその担持体;ガス吸着剤;イオン交換樹脂;セラミック加工用焼結材;測定もしくは分析用の標準粒子;食品工業分野用の粒子;クラフト紙、和紙、グラシン紙、合成紙、加工紙(アルミ蒸着加工、アルミラミネート加工、ニス加工、樹脂加工等が施された紙)、感熱紙、パーチメント紙、レーヨン紙等の紙類用接着剤;檜、杉、樺、松等の木材用接着剤;疎水性繊維や親水性繊維を用いた織物、編物、不織布等の布帛用接着剤等に用いることができる。疎水性繊維や親水性繊維を用いた織物、編物、不織布としては、おむつやマスク等の衛生用品;吸音材、遮音断熱材、防音クッション材、防護服、防虫剤袋、包装材等の工業用材料;ティーパック、ドリップシート、食品用包装材等の食品用材料等が挙げられる。
また、以上に説明した生分解性樹脂水系分散体を用いて、以下の工程を含む、生分解性樹脂水系分散体の使用方法も提供する:
前記生分解性樹脂水系分散体を得る工程;
前記生分解性樹脂水系分散体を6ヶ月以内で任意の期間保存する工程;及び
前記保存後、前記生分解性樹脂水系分散体を使用に供する工程。
この方法によれば、生分解性樹脂水系分散体は長期保存安定性と分散性が良く、室温程度で6ヶ月保存後も樹脂層と水層の分離や沈殿を抑制できる。従って、長期保存した場合でも、使用時には、生分解性樹脂水系分散体の製造時における良好な皮膜等の耐水性や耐油性、柔軟性等の樹脂物性の低下が抑制される。
生分解性樹脂水系分散体の使用方法は、前記したような用途における通常の方法等であれば特に限定されない。例えば、生分解性樹脂水系分散体やそれを含む組成物を対象物の表面に適用した後、乾燥し、対象物の表面に皮膜を形成する。本発明の生分解性樹脂水系分散体は、水に分散されている樹脂粒子が水系溶媒の蒸発後にそれぞれ融着して均一な皮膜を形成する。対象物の表面に適用する方法は特に限定されず、目的に応じて塗布、噴霧等が挙げられる。コーティング装置等の装置や道具を使用してもよい。乾燥条件は特に限定されず、水等の溶媒成分が次第に飛散するのであれば大気下での自然乾燥であってもよい。皮膜を形成する温度は、特に限定されず、室温付近でも容易に造膜し、特別な加熱処理を施さずに樹脂粒子が融着して均一な膜を形成する。
以上に、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.生分解性樹脂水系分散体の調製
実施例及び比較例において、生分解性樹脂、ポリビニルアルコール、及び可塑剤として次のものを用いた。
(生分解性樹脂)
ポリ乳酸 重量平均分子量20万
ポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、下記の装置及び条件で測定したポリスチレン換算の平均分子量である。
[GPC測定装置]
カラム: 日本分光株式会社製
検出器: 液体クロマトグラム用RI検出器 日本分光株式会社製RI-1530
[測定条件]
溶媒: クロロホルム(特級)
測定温度: 50℃
流速: 1.0ml/分
試料濃度: 15mg/ml
注入量: 2μl
検量線:Universal Calibration
解析プログラム:ChromNAV (Ver.1.19.02)
(分散剤:ポリビニルアルコール)
ポリ乳酸の分散剤として表1のポリビニルアルコールPVA-1~PVA-9を用いた。ポリビニルアルコールの平均分子量は、前記のとおりJIS K 6726に記載された粘度平均重合度、ケン化度及び酢酸ビニル単位とビニルアルコール単位の分子量から算出した値、ポリビニルアルコールのケン化度は、JIS K 6726に記載された、水酸化ナトリウムを用いて残存酢酸基を定量する方法で算出した値である。
Figure 0007162116000001
(可塑剤)
可塑剤として、表2A、表2B、表3A及び表3Bに示すアセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリエチル、アジピン酸ジイソブチル、ジグリセリンカプリル酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンオレイン酸エステルを用いた。
表2A、表2B、表3A及び表3Bに示した成分割合で、各成分を密閉分散槽に仕込み、65℃に加熱して所定の攪拌分散装置を用いた分散方法によって分散後、40℃まで急冷した。その後、減圧下に酢酸エチルを除去して生分解性樹脂水系分散体を得た。
平均粒子径と粒度分布の標準偏差
生分解性樹脂水系分散体中における樹脂粒子の平均粒子径と粒度分布の標準偏差は、島津レーザ回折型粒度分布測定装置((株)島津製作所製、SALD-2300型、屈折率1.45-0.00i)を用いて測定した。
2.評価
実施例及び比較例の生分解性樹脂水系分散体について、次の評価を行った。
[長期保存安定性]
実施例及び比較例の生分解性樹脂水系分散体を100mlガラス容器に入れ、25℃にて6ヶ月保管後の外観を観察し、樹脂層と水層の分離度(%)を次の基準で評価した。
◎:分離なしもしくは10%未満の分離があるが沈殿なし
○:10%以上の分離があるが沈殿なし
△:10%以上の分離があり且つ沈殿もあるが、攪拌すれば再分散可能
×:10%以上の分離があり且つ沈殿もあり、攪拌しても再分散不可能
[分散性]
実施例及び比較例の生分解性樹脂水系分散体を調製時の分散性を目視で観察し、次の基準で評価した。
◎+:速やかに水中油型エマルション(O/W)を形成
◎:30分以内に水中油型エマルション(O/W)を形成
○:3時間以内に水中油型エマルション(O/W)を形成
×:水中油型エマルション(O/W)を形成できず
[造膜性]
130mm×130mmの小片に切り出したクラフト紙(坪量70g/m2)に、実施例及び比較例の生分解性水系分散体を、バーコーターNo.20で塗工し、25℃、40%RHで24時間乾燥後の塗工紙外観の白濁度を目視で観察し、次の基準で評価した。
◎:透明
○:半透明
△:全体的に白っぽい
×:真白
[柔軟性]
直径84mmのテフロン(登録商標)シャーレに0.3mmの膜厚になるよう実施例及び比較例の生分解性樹脂分散体を入れ、25℃、40%RHで24時間乾燥し、得られたフィルムを次の基準で官能評価した。
◎:全体的に柔軟性あり
○:面積の10%未満で割れが生じる
△:面積の10%以上50%未満で割れが生じる
×:面積の50%以上で割れが生じる
[耐水性]
130mm×130mmの小片に切り出したクラフト紙(坪量70g/m2)に、実施例及び比較例の生分解性水系分散体を、バーコーターNo.20で塗工し、25℃、40%RHで24時間乾燥後、株式会社羽島製全自動転写プレス:HP-84にて180℃、300g/cm2の条件にて3分間プレスすることで試験片を得た。耐水性の評価はJIS P 8140に準拠し、吸水量(g/m2)で判断した。
◎:吸水度が5g/m2未満
○:吸水度が5g/m2以上10g/m2未満
△:吸水度が10g/m2以上30g/m2未満
×:吸水度が30g/m2以上
[耐油性]
130mm×130mmの小片に切り出したクラフト紙(坪量70g/m2)に、実施例及び比較例の生分解性水系分散体を、バーコーターNo.20で塗工し、25℃、40%RHで24時間乾燥後することで試験片を得た。耐油性の評価はJAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.41、KITT法に準拠し、塗工紙を次の基準で評価した。
◎:KITT値が10以上
○:KITT値が4以上10未満
△:KITT値が1以上4未満
×:KITT値が1未満
上記評価の結果を表2A、表2B、表3A及び表3Bに示す。なお比較例2及び比較例5は、ポリ乳酸が分散せず水系分散体が得られなかったので、評価できなかった項目について同表では「-」で示している。
表2A、表2B、表3A及び表3Bの各項目における評価において、〇、◎、◎+は発明の課題解決において良好であり、この順により良好であることを示す。表2A及び表2Bの長期保存安定性と分散性は〇、◎、◎+が課題を解決し、表3A及び表3Bの造膜性、柔軟性、耐水性、及び耐油性において△は課題解決において最低限の基準を満たす。また全ての評価のうち×が1つ以上の場合、発明の課題を解決しないと判断した。
Figure 0007162116000002
Figure 0007162116000003
Figure 0007162116000004
Figure 0007162116000005
実施例1~25は、ポリ乳酸樹脂、平均分子量2万以上かつケン化度98%以下のポリビニルアルコール、及び多価カルボン酸エステルを含有し、ポリビニルアルコールに対する多価カルボン酸エステルの質量比が6以下であるポリ乳酸樹脂水系分散体である。これらは、表2A及び表2Bより分散性が良く長期保存しても分離を抑制し、表3A及び表3Bより耐水性や耐油性、柔軟性等の樹脂物性も満足することができ、長期保存した場合でもこれらの樹脂物性を低下させることがなかった。比較例1のPVA-8は平均分子量が小さく、比較例2のPVA-9はケン化度が大きい。また比較例6はポリビニルアルコールに対する多価カルボン酸エステルの質量比が6を超える。これらは分散性や長期保存性が悪いものであった。
実施例1~7ではポリビニルアルコールの平均分子量とケン化度を変更した。平均分子量についてはPVA-5及びPVA-7、ケン化度についてはPVA-6と対比すると、PVA-1~PVA-4、その中でもPVA-2、PVA-3は特に良好な傾向が確認された。
実施例8~10、実施例14~16、実施例20~22は、多価カルボン酸エステルを変更したがいずれも長期保存性などについて同様の効果を発揮した。一方、比較例3~5は可塑剤を多価カルボン酸エステル以外のものに変更したが、同様の効果は得られなかった。
[ヒートシール性]
25mm×200mmの小片に切り出したクラフト紙(坪量70g/m2)の25mm×150mmの部分に、各実施例の生分解性樹脂水系分散体を、バーコーターで5g/m2塗工し、25℃、40%RHで乾燥後、試験片2枚が貼り合わさるようフェロタイプ板に挟み、株式会社羽島製自動転写プレス:HP-84にて180℃、300kg/cm2、1秒熱圧着することで試験片を得た。得られた試験片について、JIS K 6854-3に準じ、株式会社東洋精機製引張試験機:ストログラフE-3を用いてヒートシール強度(N/15mm)を評価した結果、実施例の生分解性樹脂水系分散体はいずれも良好なヒートシール性を示すことを確認した。以上より、本発明の生分解性樹脂水系分散体は、包装用資材のヒートシール剤として有用である。

Claims (4)

  1. 生分解性樹脂が水系溶媒に分散されている水系分散体であって、
    前記生分解性樹脂であるポリ乳酸樹脂、粘度平均重合度による平均分子量6万以上20万以下かつケン化度98%以下のポリビニルアルコール、及び多価カルボン酸エステルを含有し、前記ポリビニルアルコールに対する前記多価カルボン酸エステルの質量比が6以下であり、前記ポリ乳酸樹脂に対する前記ポリビニルアルコールの質量比が0.01~1.0である、生分解性樹脂水系分散体。
  2. 水系溶媒に分散されている前記ポリ乳酸樹脂の樹脂粒子の平均粒子径が3.5μm以下である、請求項1に記載の生分解性樹脂水系分散体。
  3. 前記ポリビニルアルコールは、前記平均分子量が6万以上20万以下であり、かつケン化度が78%以上94%以下である、請求項1又は2に記載の生分解性樹脂水系分散体。
  4. 以下の工程を含む、生分解性樹脂水系分散体の使用方法:
    請求項1~3のいずれか一項に記載の生分解性樹脂水系分散体を得る工程;
    前記生分解性樹脂水系分散体を6ヶ月以内で任意の期間保存する工程;及び
    前記保存後、前記生分解性樹脂水系分散体を使用に供する工程。
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