本発明に係る固定具を図面に基づいて詳述する。
なお、本発明を実施するための形態で説明する固定具は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含むことはいうまでもない。
(発明を実施するための第1の形態)
図1は本発明に係る固定具の一例を示す斜視図であり、また、図2及び図3は図1に示した固定具の正面図及び平面図である。これら図1から図3中、対応する部分には同じ番号が付してある。
固定具1は、棒状材を倒立凸形状に成形してなる一対の第1フレーム部材11,11と、短寸棒状の一対の第2フレーム部材12,12とを備えており、第1フレーム部材11,11の両端部にはそれぞれ、溶接金網に固定するための固定部11e,11e、11e,11eが設けてある。これら第1フレーム部材11,11と第2フレーム部材12,12とは、後述する如く平面視が井桁状に固定してある。
前述した第1フレーム部材11は、施工対象面に当接可能な直線分状の当接部11bの両端部をそれぞれ立ち上がらせて立上り部11c,11cとし、全体としてU字状に成形された本体(担持部)11aを有している。この本体11aの両端にはそれぞれ、短寸のアーム部11d,11dが前記当接部11bと略平行な姿勢で互いに離隔する方向へ延設してあり、両アーム部11d,11dの先端部分は、前記立上り部11c,11cと平行な姿勢で立ち上がらせるとともに、互いに外側へ湾曲させて前述したフック状の固定部11e,11eが形成されている。すなわち、両固定部11e,11eは共に内巻きに曲成して構成してある。なお、本実施の形態では直線分状の当接部11bを設けた場合について示したが、本発明はこれに限らず、凹凸状又は波線状等、適宜の形状であってもよい。
第1フレーム部材11に設けられた両固定部11e,11eの内底部間の寸法は、固定具1を取り付ける溶接金網を構成する相隣る縦条材間の外寸又は相隣る横条材間の外寸と略同じ値にしてあり、また、両固定部11e,11eの曲率は前記縦条材又は横条材の周面の曲率と略同じ値にしてある。前記両固定部11e,11eは、前記溶接金網の縦条材の周面又は横条材の周面に、当該周面の周方向へ1/4を少し超える範囲で外嵌し得る長さ寸法にしてある。また、前記両固定部11e,11eの先端面ST,STは、平行配置された本体11a,11aの両当接部11b,11bにて形成される平面と平行な平面Hとのなす角αが略45°になる斜面になしてあり、これによって先端面ST,STの先端部が前記溶接金網の縦条材の周面又は横条材の周面に係合するようになっている。
平行配置された両第1フレーム部材11,11間の寸法は、固定具1を取り付ける溶接金網を構成する相隣る縦条材間の寸法又は相隣る横条材間の寸法より短くしてあり、前述した両第2フレーム部材12,12が、両第1フレーム部材11,11の本体11a,11aの両端部分にそれぞれ架設してある。この第2フレーム部材12,12の長さ寸法も固定具1を取り付ける溶接金網を構成する相隣る縦条材間の寸法又は相隣る横条材間の寸法より短くしてあり、対向配置された両第2フレーム部材12,12間の寸法も同様に、相隣る縦条材間の寸法又は相隣る横条材間の寸法より短くなしてある。
なお、図1に示した固定具1では、両第1フレーム部材11,11の本体11a,11aの両端部分にそれぞれ第2フレーム部材12,12を架設した場合について示したが、本発明はこれに限らず、両第1フレーム部材11,11の立上り部11c,11cの適宜位置の間、両第1フレーム部材11,11の当接部11b,11bの適宜位置の間等、両第1フレーム部材11,11の適宜の位置の間等々、種々の位置に架設することができる。
前述した第1フレーム部材11,11の当接部11b,11bの長手方向の略中央位置には、固定具1を取り付けた溶接金網に重畳される他の溶接金網の相隣る縦条材又は相隣る横条材を結合させる結合手段14,14がそれぞれ設けてある。
結合手段14は、縦方向に長い長方形板状の本体14aの中心軸上に、当該本体14aの天井位置から底部近傍の位置に亘るU字状の切欠きを設けて構成してある。この切欠きは、その内部に前記他の溶接金網の縦条材又は横条材を挿入させる挿入部14eになっており、本体14aの挿入部14eの両側の部分は、該挿入部14e内に挿入された縦条材又は横条材を保持する一対の保持部14b,14bになしてある。
挿入部14eの本体14aの天井側には、該挿入部14e内へ他の溶接金網の縦条材又は横条材を挿入させるための挿入口14cが設けてあり、前述した保持部14b,14bの挿入口14cに対向する部分にはそれぞれ、嘴状の第1抜止部14d,14dが突設してある。すなわち、両第1抜止部14d,14dの間である挿入口14cの幅寸法は、挿入部14eの幅寸法より小さくなっており、これによって挿入部14e内に挿入された縦条材又は横条材が挿入部14eから抜け出ないようになっている。また、両第1抜止部14d,14dの天井部はそれぞれ、挿入部14eの底部からの高さ位置が挿入口14cへ向かうに従って低くなるテーパになっており、これによって前記他の溶接金網の縦条材又は横条材は挿入口14cへ案内される。
更に、保持部14b,14bの挿入部14eに臨む縁部であって、前記第1抜止部14d,14dから適宜距離を隔てた高さ位置には、第1抜止部14d,14dと略同じ寸法になした第2抜止部14d1,14d1が突設してある。ここで、挿入部14eの底部から第2抜止部14d1,14d1までの高さ寸法は、固定具1を取り付けた溶接金網と当該溶接金網に重畳させた他の溶接金網とを固定具1にて固定させた場合に、挿入部14e内に挿入された他の溶接金網の縦条材又は横条材の周面が、当該固定具1の第2抜止部14d1,14d1に当接する値になしてある。
このように、挿入部14e内に挿入された他の溶接金網の縦条材又は横条材が、第2抜止部14d1,14d1を通過して挿入部14eの底部側へ挿入され、その状態で当該縦条材又は横条材の周面が第2抜止部14d1,14d1に当接するようになっているため、他の溶接金網上で作業員が作業を行った場合であっても、挿入部14e内に挿入された縦条材又は横条材にガタが生じることが防止されるので、作業員による作業に支障を来さず、また、挿入部14e内に挿入された縦条材又は横条材が挿入部14eから抜け出することが更に防止される。
前述した保持部14b,14bは、互いに離隔する方向へ撓むことが可能になっており、挿入口14cへ案内された他の溶接金網の縦条材又は横条材に押力が印加されると、保持部14b,14bが互いに離隔する方向へ撓むため、挿入口14cの幅寸法が相対的に大きくなり、当該縦条材又は横条材が挿入口14cを通過して挿入部14e内へ挿入され、その後、保持部14b,14bが元の姿勢に復帰するため、挿入口14cの幅寸法も元に戻り、挿入部14e内に挿入された縦条材又は横条材が挿入部14eから抜け出ることが防止される。これによって当該縦条材又は横条材が結合手段14に結合される。
一方、第1フレーム部材11の当接部11bから保持部14bの天井位置までの高さ寸法は、前記当接部11bから第1フレーム部材11の固定部11eの天井位置までの高さ寸法より大きくしてあり、固定具1を溶接金網に固定した場合、固定具1の保持部14b,14b、14b,14bは当該溶接金網から突出した様態になる。
後述するように固定具1は一の溶接金網に予め固定されているため、当該固定具1の結合手段14,14に他の溶接金網の縦条材又は横条材を前述した如く結合させることによって、当該溶接金網とこれに重畳された他の溶接金網とが相互に固定される。
ところで、対向配置された第1フレーム部材11,11の間の寸法は、施工対象面が複数の畝状の凹凸を有するデッキプレートである場合、当該デッキプレートの山部の幅の1/2未満の値になしてある。固定具1を構成する一対の第1フレーム部材11,11の内の一方がデッキプレートの山部の肩に位置する場合、後述する如く固定具1を取り付けた溶接金網上に重畳させた他の溶接金網に押圧を印加して当該固定具1の結合手段14,14に他の溶接金網の縦条材又は横条材を結合させようとする際に、デッキプレートの山部の肩に位置する第1フレーム部材11がデッキプレートの谷部へ没入して、前記溶接金網及び他の溶接金網に反りが発生してしまう。これに対して、固定具1の第1フレーム部材11,11の間の寸法がデッキプレートの山部の幅の1/2未満の値になしてある場合、両第1フレーム部材11,11のいずれもが、デッキプレートの山部の肩に位置することが回避されるため、前述した如き溶接金網及び他の溶接金網に反りが生じることが回避される。
前述した両保持部14,14の外側部、即ち両保持部14,14の第2フレーム部材12,12側の部分にはそれぞれ、前記他の溶接金網の縦条材又は横条材を案内する三角形状の案内部14f,14fが突設してある。案内部14fの天井辺は、保持部14bから離隔するに従ってその高さ寸法が低くなるテーパになしてあり、また、案内部14fの長さ寸法は、当該案内部14fと対向する第1フレーム部材11との間に、前記他の溶接金網の縦条材又は横条材が進入し得ない値になしてある。
後述するように、固定具1を取り付けた溶接金網上に他の溶接金網を重畳させた際に、当該他の溶接金網の縦条材又は横条材が、固定具1の対をなす保持部14b,14b、14b,14b上に位置しなかった場合は、他の溶接金網を、当該縦条材又は横条材が保持部14b,14b、14b,14b上に位置するように平行に移動させるが、このとき、保持部14b,14b、14b,14bに前述した案内部14f,14f、14f,14fが設けられていないと、他の溶接金網が保持部14b,14b、14b,14bに当接するため、円滑な平行移動が阻害される。しかしながら、本発明に係る保持具1にあっては、保持部14b,14b、14b,14bに前述した案内部14f,14f、14f,14fが設けてあるため、他の溶接金網の縦条材又は横条材が案内部14f,14f、14f,14fの天井辺上を摺動し、他の溶接金網を円滑に平行移動させることができる。
また、両本体14a,14aの底部側には、対応する第1フレーム部材11,11に固着させるための固着用片14g,14g,14g、14gが、例えば側面視がL字を構成するように突設してあり、一又は複数(図1にあっては2個)の固着用片14g,14g、14g,14gを対応する第1フレーム部材11,11に溶接又は接着等によって固着させることによって、両本体14a,14aが対応する第1フレーム部材11,11の内側に固定されている。
なお、固着用片14gは板形、アーチ形等種々の形状であってよく、本体14aに1又は複数個の固着用片14gを設けてよい。また、本実施の形態では、本体14aと第1フレーム部材11とを別体に構成した場合について示したが、本発明はこれに限らず、鋳造等によって、本体と第1フレーム部材とを一体的に構成してもよい。更に、本実施の形態では、両本体14a,14aを対応する第1フレーム部材11,11の内側に固定した場合について示したが、本発明はこれに限らず、両本体14a,14aを対応する第1フレーム部材11,11上又は対応する第1フレーム部材11,11の外側に固定してもよい。
ところで、対をなす保持部14b,14b、14b,14bに突設した案内部14f,14f、14f,14fは、対応する本体14a,14aと面一の姿勢になしてもよいが、両第1フレーム部材11,11より外側(図1及び図3参照)又は内側へ屈曲させた場合、前述した固着用片14g,14g、14g,14gを対応する第1フレーム部材11,11にスポット溶接によって固着させる際に、溶接機の電極が案内部14f,14f、14f,14fに接触する事故を回避することができるため好適である。
なお、本実施の形態では、結合手段14,14の本体14a,14aを対応する第1フレーム部材11,11に固定すべく、当該本体14a,14aに固着用片14g,14g、14g,14gを突設した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、固着用片14g,14g、14g,14gを設けることなく、結合手段14,14の本体14a,14aと対応する第1フレーム部材11,11とをアーク溶接等によって固着させてもよい。この場合、対をなす保持部14b,14b、14b,14bに突設した案内部11f,11f、11f,11fは、対応する本体14a,14aと面一の姿勢になすことができる。
一方、本実施の形態では、第1フレーム部材11,11及び第2フレーム部材12,12を棒材にて構成してあるが、本発明はこれに限らず、第1フレーム部材及び第2フレーム部材を板材で構成してもよい。
図4は溶接金網に複数の固定具を固定した一例を示す平面図である。なお、図中、図1から図3に示した部分に対応する部分には同じ番号が付してある。
図4に示したように、溶接金網WMは、複数の縦条材W1,W1,…と複数の横条材W2,W2,…とを所定距離を隔てて格子状に配してあり、両者の交差部分を溶接してある。また、溶接金網WMには、各縦条材W1,W1,…及び各横条材W2,W2,…にて囲まれる複数の枡目M,M,…が複数行複数列になるように形成されている。ここで、図4に示した溶接金網WMにあっては、縦条材W1,W1,…の長さ寸法は横条材W2,W2,…の長さ寸法より短くしてあり、これによって長方形状の格子状体が形成されている。なお、縦条材W1,W1,…の長さ寸法は横条材W2,W2,…の長さ寸法より長くしてもよく、また、縦条材W1,W1,…の長さ寸法は横条材W2,W2,…の長さ寸法と同じにしてもよい。
また、溶接金網WMの各縦条材W1,W1,…は同じ面内に、各横条材W2,W2,…は別の面内に配置されており、縦条材W1,W1,…が横条材W2,W2,…の上に位置する側を溶接金網WMの表とすると、縦条材W1,W1,…が横条材W2,W2,…の下に位置する側が溶接金網WMの裏となる。図4に示した場合にあっては、溶接金網WMは表になるように敷設されている。なお、溶接金網WMは裏になるように敷設される場合もある。
そして、図4に示したように、複数行複数列の各枡目M,M,…の内、先頭行又は末尾行の端の枡目Mと、当該枡目Mと同じ行であって横方向の略中央位置の枡目Mに固定具1,1をそれぞれ配置してある。前者の固定具1にあっては、両第1フレーム部材11,11が当該枡目Mを形成する相隣る横条材W2,W2に平行な姿勢になしてあり、第1フレーム部材11,11の両端部にそれぞれ設けた固定部11e,11e、11e,11eが当該枡目Mを形成する相隣る縦条材W1,W1に外嵌固定してある。一方、後者の固定具1にあっては、両第1フレーム部材11,11が当該枡目Mを形成する相隣る縦条材W1,W1に平行な姿勢になしてあり、第1フレーム部材11,11の両端部にそれぞれ設けた固定部11e,11e、11e,11eが当該枡目Mを形成する相隣る横条材W2,W2に外嵌固定してある。
また、前者の固定具1においては、両結合手段14,14は縦条材W1の長手方向へ配列されており、これによって両結合手段14,14に他の溶接金網の縦条材が結合されるようになっている。一方、後者の固定具1においては、両結合手段14,14は横条材W2の長手方向へ配列されており、これによって両結合手段14,14に他の溶接金網の横条材が結合されるようになっている。
ここで、前述した如く固定部11e,11e、11e,11eの先端面ST,ST、ST,STは平面Hとのなす角α(いずれも図1参照)が略45°になる斜面になしてあるため、固定具1を溶接金網WMに固定すべく、固定部11e,11e、11e,11eを溶接金網WMの縦条材W1又は横条材W2に外嵌させる際、先端面ST,ST、ST,ST上を縦条材W1又は横条材W2の周面が摺動して、縦条材W1又は横条材W2を固定部11e,11e、11e,11e内に容易に挿入させることができる。
このとき、例えば固定具1を施工対象面上の適宜位置に固定具1の当接部11bが施工対象面に当接するように設置しておき、この固定具1上に溶接金網WMを当該溶接金網WMの所定枡目Mが位置するように配置すると、当該枡目Mを形成する相隣る縦条材W1,W1又は相隣る横条材W2,W2が固定部11e,11e、11e,11eの先端面ST,ST、ST,STに当接する。この状態で、溶接金網WMに押圧を印加すると、前述した如く先端面ST,ST、ST,ST上を縦条材W1又は横条材W2が摺動して、縦条材W1,W1又は横条材W2,W2を固定部11e,11e、11e,11e内にワンタッチで嵌入させることができる。
このようにして、所定位置に固定具1,1を固定した複数の溶接金網WM,WM,…を用い、次のようにして各溶接金網WM,WM,…を施工対象面に施工する。
図5は図4に示した如く固定具1,1を固定した2枚の溶接金網WM,WMを施工した状態を示す平面図であり、図6及び図7は2枚の溶接金網WM,WMを重畳させた部分の拡大斜視図である。なお、図5に示した2枚の溶接金網WM,WMにあっては、図5に向かって左側の溶接金網WMは表に、右側の溶接金網WMは裏にしてあり、両溶接金網WM,WMに固定具1,1、1,1を図4で説明した溶接金網WMにおける位置と同じ位置に同じ姿勢で固定してある。なお、これらの図中、図1から図3に示した部分に対応する部分には同じ番号が付してある。
図5に示したように、前述した表の状態で固定具1,1が固定された溶接金網WM(図5中左側)を施工対象面の適宜位置に施設しておき、表の溶接金網WMの隅に固定具1が固定された短辺側であって溶接金網WMの長手方向へ、裏の状態で固定具1,1が固定された溶接金網WM(図5中右側)を配すとともに、裏の溶接金網WMの固定具1が固定されてない短辺側を前記表の溶接金網WM上に、溶接金網WMの枡目Mが1つ半重畳するように配設する。これによって、図6に示したように、裏の溶接金網WMの縦条材W1が表の溶接金網WMの隅に固定された固定具1の両結合手段14,14の挿入口14c,14c上に配置される。
このとき、裏の溶接金網WMの縦条材W1が表の溶接金網WMの隅に固定された固定具1の両結合手段14,14の挿入口14c,14c上に配置されずに、ずれてしまった際には、裏の溶接金網WMを平行移動させて、裏の溶接金網WMの縦条材W1を表の溶接金網WMの固定具1の前記挿入口14c,14c上に位置させるが、両結合手段14,14を構成する保持部14b,14b、14b,14bに前述した案内部14f,14f、14f,14fが設けてあるため、裏の溶接金網WMの縦条材W1が案内部14f,14f、14f,14fの天井辺上を摺動し、裏の溶接金網WMを円滑に平行移動させることができる。
前述した如く、裏の溶接金網WMの縦条材W1を、表の溶接金網WMの隅に固定された固定具1の両結合手段14,14の挿入口14c,14c上に配置させた後、裏の溶接金網WMの当該縦条材W1に押圧を印加することによって、図7に示したように、当該縦条材W1を前述した如く両結合手段14,14の挿入部14e,14e内へ挿入させ、縦条材W1を結合手段14,14に結合させる。これによって、表の溶接金網WMと裏の溶接金網WMとをワンタッチで確実に固定することができる。
このとき、図7に示したように、挿入部14e内に挿入された縦条材W1は、第2抜止部14d1,14d1を通過して挿入部14eの底部側へ挿入されており、その状態で当該縦条材W1の周面が第2抜止部14d1,14d1に当接するようになっている。これによって、前述した如く、裏の溶接金網WM上で作業員が作業を行った場合であっても、挿入部14e内に挿入された縦条材W1にガタが生じることが防止されるので、作業員による作業に支障を来さない。また、このように挿入部14e内に挿入された縦条材W1にガタが生じることが防止されるため、挿入部14e内に挿入された縦条材W1が挿入部14eから抜け出することがより防止される。
ところで、両溶接金網WM,WMに固定された固定具1は、前述した如くU字状に成形された本体11aを有しており、該本体11aの両端に当接部11bと略平行な姿勢で延設されたアーム部11d,11d先端の固定部11e,11e、11e,11eによって溶接金網WMが固定されているため、図7に示したように、溶接金網WM,WMは固定具1によって施工対象面から離隔した状態で支持されている。このように本発明に係る固定具1はスペーサとしての機能も有している。
従って、前述したように複数の固定具1,1,…を各溶接金網WM,WM,…の所定位置に予め固定しておき、得られた溶接金網WM,WM,…を、例えば図5に示したように相隣る溶接金網WM,WM,…の一部が重畳するように施工対象面上に敷設し、各固定具1,1,…の固定部11e,11e、11e,11e、11e,11e、11e,11e、…,…、…,…と各溶接金網WM,WM,…の縦条材W1,W1,…又は横条材W2,W2,…とを結合させるだけで、従来の溶接金網WM,WM,…及びスペーサの施工並びに結束作業といった施工作業を一度に行うことができる。
なお、溶接金網WM,WM,…への固定具1,1,…の固定は、溶接金網WM,WM,…の敷設地で行ってもよいし、溶接金網WM,WM,…の製造施設で行ってもよい。
このように、所要数の固定具1,1,…を各溶接金網WM,WM,…の所定位置に予め固定しておくことができるため、敷設した溶接金網WM,WM,…にずれが発生して、当該溶接金網WM,WM,…の位置を調整する場合であっても、当該溶接金網WM,WM,…に固定具1,1,…が固定されているため、固定具1,1,…にずれが発生しない。従って、作業員に重労働を強いることなく、短時間で溶接金網WM,WM,…の敷設作業を完了することができる。
一方、固定具1を溶接金網WMの所定位置に固定するには、当該固定具1の固定部11e,11e、11e,11eの先端面ST,ST、ST,STを相隣る縦条材W1,W1の周面、又は相隣る横条材W2,W2の周面に当接させ、固定具1又は溶接金網WMに押圧を印加することによって行うことができ、固定具1を溶接金網WMにワンタッチで固定することができる。従って、作業員に重労働を強いることなく、短時間で固定具1,1,…の溶接金網WM,WM,…への固定作業を完了することができる。
なお、前述したように、本固定具1は、両第1フレーム部材11,11間の外寸を、溶接金網WMの相隣る縦条材W1,W1間の内寸、又は相隣る横条材W2,W2間の内寸より短くし、また、第2フレーム部材12,12間の外寸を、相隣る横条材W2,W2間の内寸、又は相隣る縦条材W1,W1間の内寸より短くしてあり、更に、第2フレーム部材12,12の長さ寸法が溶接金網WMの相隣る縦条材W1,W1間の内寸、又は相隣る横条材W2,W2間の内寸より短くしてあるため、固定具1は溶接金網WMの枡目M内で縦方向又は横方向へずらすことが可能になる。ところで、固定具1の溶接金網WMへの固定作業を製造工場で実施した場合、かかる製造工場から施工対象地までトラック等によって輸送するが、荷台上に複数の溶接金網WM1,WM1,…を互いに重積させるとき、溶接金網WMの枡目M内で固定具1を縦方向又は横方向へずらすことによって、上下の溶接金網WM1,WM1において当該溶接金網WM1,WM1に固定した固定具1,1,…の位置を互いに異ならせることができる。これによって、上下の溶接金網WM1,WM1間の隙間を可及的に狭くすることができ、溶接金網WM1,WM1の輸送密度を向上させることができる。
ところで、本実施の形態に示した固定具1にあっては、結合手段14に第1抜止部14d,14d及び第2抜止部14d1,14d1を設けた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、第1抜止部14d,14d又は第2抜止部14d1,14d1の一方を設けてもよい。後者の場合、保持部14b,14bの挿入口14cに対向する角部をそれぞれテーパになしておくとよい。
図8は、固定具を取り付けた溶接金網をデッキプレート上に敷設し、その一部を重畳させた他の溶接金網を前記固定具にて固定した状態を示す部分斜視図である。デッキプレートDPは複数の畝状の山部MT,MT,…が所定の間隔で突設してあり、相隣る山部MT,MT、MT,MT、…,…間は谷部V,V,…になっている。溶接金網WMに固定された固定具1はデッキプレートDP上に、その第1フレーム部材11,11がデッキプレートDPの山部MT,MT,…と平行になるように配置してある。
ここで、固定具1の対向配置された第1フレーム部材11,11の間の寸法L11は前述したように、デッキプレートDPの山部MTの幅LMTの1/2未満の値になしてある。固定具1を構成する一対の第1フレーム部材11,11の内の一方がデッキプレートDPの山部MTの肩に位置する場合、固定具1を取り付けた溶接金網WM上に重畳させた他の溶接金網WMに押圧を印加して当該固定具1の結合手段14,14に他の溶接金網WMの縦条材W1を結合させようとする際に、デッキプレートDPの山部MTの肩に位置する第1フレーム部材11がデッキプレートDPの谷部Vへ没入して、前記溶接金網WM及び他の溶接金網WMに反りが発生してしまうが、本固定具1にあっては、第1フレーム部材11,11の間の寸法L11がデッキプレートDPの山部MTの幅LMTの1/2未満の値になしてあるため、両第1フレーム部材11,11のいずれもが、デッキプレートDPの山部MTの肩に位置することが回避され、従って前述した如き溶接金網WM及び他の溶接金網WMに反りが生じることが回避される。
図9は3枚の溶接金網WM,WM,WMを施工した状態を示す平面図であり、図5に示した両溶接金網WM,WMに更に他の溶接金網WMを敷設固定した場合を示している。また、図10は、図9に示した3枚の溶接金網WM,WM,WMが重畳した部分の拡大斜視図である。なお、両図中、図1から図7に示した部分に対応する部分には同じ番号が付してある。
図5で説明したように、固定具1,1が固定された表の溶接金網WMの短辺側部分の上に、2段目である裏の溶接金網WMの短辺側部分が重畳させてあり、1段目である表の溶接金網WMの隅に固定された固定具1の結合手段14,14に重畳した裏の溶接金網WMの縦条材W1が嵌合されている。次に、1段目である表の溶接金網WMの長辺側部分上に、3段目である表の他の溶接金網WMの長辺側部分が、当該他の溶接金網WMの枡目Mが1つ半重畳するように配置してある。なお、他の溶接金網WMの重畳させた長辺側部分のいずれの枡目M,M,…にも固定具1は固定されていない。
これによって、当該他の溶接金網WM、即ち3段目の溶接金網WMの横条材W2が、第1段目の溶接金網WMの隅に固定された固定具1の対向する保持部14b,14b、14b,14bの間上に位置するとともに、当該横条材W2が、1段目の溶接金網WMの長辺の略中央位置に固定された固定具1の両結合手段14,14上に位置する。そして、3段目の溶接金網WMの前記横条材W2に押圧を印加することによって、図9に示したように、当該横条材W2を第1段目の溶接金網WMの隅に固定された固定具1の対向する結合手段14,14の間内へ挿入させるとともに、前記図7と同様に、当該横条材W2を、1段目の溶接金網WMの長辺の略中央位置に固定された固定具1の両結合手段14,14の挿入部14e,14e内へ挿入させて、当該横条材W2を結合手段14,14に結合させる。これによって、3段目の溶接金網WMと1段目の溶接金網WMとをワンタッチで確実に固定することができる。
このとき、3段目の溶接金網WMの前記横条材W2が1段目の溶接金網WMの隅に固定された固定具1の対向する結合手段14,14の間内へ挿入されることによって3段目の溶接金網WMの姿勢が矯正されるため、2段目の溶接金網WM上に3段目の溶接金網WMを配置した際に、3段目の溶接金網WMの姿勢が正規の姿勢から若干ずれていた場合であっても、当該溶接金網WMの姿勢が正規の姿勢に矯正され、3段目の溶接金網WMの横条材W2を前記結合手段14,14に容易に結合させることができる。
一方、1段目の溶接金網WMの横方向の略中央位置に固定された固定具1の結合手段14,14には3段目の溶接金網WMの横条材W2が結合されている。かかる固定具1の結合手段14,14と3段目の溶接金網WMの横条材W2との結合状態は、前述した図7において縦条材W1,W1,…と横条材W2,W2,…とを入れ替えた状態になっている。これによって、1段目の溶接金網WMと3段目の溶接金網WMとが相互に固定される。
ここで前述した如く、3段目の溶接金網WMの横条材W2は、1段目の溶接金網WMの隅に固定された固定具1の結合手段14,14間内に挿入されており、これによって3段目の溶接金網WMの姿勢が矯正されているため、1段目の溶接金網WMの横方向の略中央位置に固定された固定具1の結合手段14,14に、3段目の溶接金網WMの横条材W2を容易に結合させることができる。
なお、本実施の形態では、第1フレーム部材11及び第2フレーム部材12を条材で形成した場合について示したが、本発明はこれに限らず、第1フレーム部材11及び第2フレーム部材12を板状材で形成してもよい。かかる場合、第1フレーム部材11及び第2フレーム部材12を成形又は打ち抜き加工等によって廉価に製造することができるため、部品コストを可及的に低減することができる。
なお、本固定具1は溶接金網以外にも、金属製又は樹脂製の網状のフェンスといった他の格子状体にも適用できることは言うまでもない。