JP7149535B2 - 塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂組成物 - Google Patents
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Description
本発明は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂組成物に関する。
塩化ビニル-プラスチゾルなどの塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂組成物は、自動車のボディ等において、シーリング材、アンダーコートなどとして用いられている。
特許文献1においては、酢酸ビニル含有量が3~8重量%の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を用いた塩化ビニル-プラスチゾル組成物が開示されている。
近年、環境等への配慮から炭酸ガスの排出量を低減することが求められており、より低い温度で焼付けることができる塩化ビニル-プラスチゾルが望まれている。焼付温度を低減する方法として、酢酸ビニル含有量を高くすることが考えられるが、酢酸ビニル含有量を高くすると、貯蔵安定性が低下するという課題があった。
本発明の目的は、貯蔵安定性に優れ、かつ焼付温度を低減することができる塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂組成物を提供することにある。
本発明の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂組成物は、酢酸ビニル含有量が8~12質量%である塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂100質量部に対し、炭酸カルシウムを脂肪酸類で表面処理した表面処理炭酸カルシウムが70~300質量部含有されており、表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積が10~40m2/gであり、表面処理炭酸カルシウムの表面処理量が、表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積1m2/g当たり、0.1×10-2g/m2~0.4×10-2g/m2であることを特徴としている。
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂の酢酸ビニル含有量は、9~11質量%であることが好ましい。
本発明の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂組成物は、ペーストゾルとして用いることができる。
本発明によれば、貯蔵安定性に優れ、かつ焼付温度を低減することができる塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂組成物にすることができる。
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<表面処理炭酸カルシウム>
本発明で用いられる表面処理炭酸カルシウムは、炭酸カルシウムを脂肪酸類で表面処理し、BET比表面積が10~40m2/gであり、表面処理量が、炭酸カルシウムのBET比表面積1m2/g当たり、0.1×10-2g/m2~0.4×10-2g/m2である表面処理炭酸カルシウムである。
(炭酸カルシウム)
本発明の表面処理炭酸カルシウムに用いる原料となる炭酸カルシウムは、特に限定されるものではなく、例えば、従来より公知の炭酸カルシウムを用いることができる。このようなものとしては、合成(沈降性)炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムなどが挙げられる。本発明においては、合成(沈降性)炭酸カルシウムが好ましく用いられる。
合成(沈降性)炭酸カルシウムは、石灰乳-炭酸ガス反応法、塩化カルシウム-ソーダ灰反応法、石灰乳-ソーダ灰反応法等などの公知の方法により得ることができる。石灰乳-炭酸ガス反応法の一例を示すと、石灰石原石を、コークスあるいは石油系燃料(重油、軽油)、天然ガス、LPG等で混焼することによって生石灰とし、この生石灰を水和して水酸化カルシウムスラリーとし、これに混焼時に発生する炭酸ガスをバブリングして反応させることによって、炭酸カルシウムを生成することができる。炭酸ガス反応時の条件を設定することによって、所望の微粒子を得ることができる。
本発明で用いられる炭酸カルシウムは、BET比表面積が10~40m2/gであり、表面処理前と表面処理後において大きく変化することはなく、ほとんど同程度である。BET比表面積は、10~30m2/gであることがより好ましく、10~20m2/gであることがさらに好ましい。
なお、本発明における表面処理前および表面処理後の炭酸カルシウムのBET比表面積は、比表面積測定装置(マイクロメリチック社製、フローソーブII2300)を用いて測定した値である。
(表面処理)
本発明の表面処理炭酸カルシウムは、脂肪酸類で表面処理されている。脂肪酸類としては、例えば、炭素数が6~24の飽和及び不飽和脂肪酸、それらの塩もしくはエステルなどが挙げられる。
炭素数が6~24の飽和もしくは不飽和の脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸などが挙げられる。特に、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸が好ましく用いられる。これらは、2種以上を混合して用いてもよい。
脂肪酸の塩としては、例えば、上記炭素数が6~24程度の飽和または不飽和の脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられる。脂肪酸の塩の炭素数は、10~20程度であることが好ましい。
脂肪酸のエステルとしては、例えば、炭素数が6~24の飽和もしくは不飽和の脂肪酸と、炭素数が6~18の低級アルコールとのエステルなどが挙げられる。
表面処理は、例えば、炭酸カルシウムと水とを含むスラリーに、脂肪酸類の少なくとも1種とを添加した後、脱水、乾燥する方法(湿式法)などが採用できる。例えば、脂肪酸のアルカリ金属塩で炭酸カルシウムを表面処理する具体的な方法としては、次のような方法が挙げられる。
脂肪酸を水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などのアルカリ金属水溶液中で加熱しながら、脂肪酸のアルカリ金属水溶液にする。次に、炭酸カルシウムと水とのスラリーに、脂肪酸のアルカリ金属水溶液を添加して攪拌する。これにより、炭酸カルシウムの表面を脂肪酸で表面処理することができる。
炭酸カルシウムと水とのスラリー中の炭酸カルシウムの固形分の含有量は、炭酸カルシウムの平均粒子径、炭酸カルシウムのスラリー中への分散性、スラリー脱水の容易さなどを考慮して適宜調整すればよい。一般的には、スラリーの固形分含有量を2~30質量%程度、好ましくは5~20質量%程度となるように調整することにより、適度な粘度のスラリーとすることができる。
スラリーの脱水は、例えばフィルタープレスなどの方法によって行えばよい。また、乾燥は、例えば箱型乾燥機などによって行えばよい。
また、乾式法により炭酸カルシウムを表面処理してもよい。乾式法としては、炭酸カルシウムを撹拌しながら、炭酸カルシウムに表面処理剤である脂肪酸類を添加する方法が挙げられる。表面処理剤を溶液にして添加してもよいし、炭酸カルシウムを表面処理剤の融点以上の温度に加熱しながら添加してもよい。
本発明で用いられる表面処理炭酸カルシウムは、BET比表面積が10~40m2/gである。BET比表面積が小さすぎると、ペーストゾルに高い粘度や優れたチキソ性を付与できなくなる場合があり、好ましくない。BET比表面積が大きすぎると、分散性が悪くなりペーストゾルの外観が悪くおそれがあり、また粘度が高くなりすぎるため好ましくない。BET比表面積は、10~30m2/gであることが好ましく、10~20m2/gであることがより好ましい。
本発明の表面処理炭酸カルシウムにおいて、表面処理量は、表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積1m2/g当たり、0.1×10-2g/m2~0.4×10-2g/m2である。表面処理量が0.1×10-2g/m2未満では、炭酸カルシウムの表面に処理されていない部分ができ、炭酸カルシウムとしての効果が十分に発揮できないため好ましくない。表面処理量が0.4×10-2g/m2超では、ペーストゾルの貯蔵安定性が悪くなるため好ましくない。また、製造コストが上がり経済的に不利になるため好ましくない。表面処理量は、表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積1m2/g当たり、0.1×10-2g/m2~0.3×10-2g/m2であることが好ましく、0.1×10-2g/m2~0.2×10-2g/m2であることがより好ましい。
BET比表面積1m2/gあたりの表面処理量は、以下の式から求めることができる。
BET比表面積1m2/gあたりの表面処理量(×10-2g/m2)=A/B
A:表面処理炭酸カルシウムの加熱減量(%)
B:表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積(m2/g)
なお、表面処理炭酸カルシウムの加熱減量は、表面処理量を測定するものであり、昇温速度を10℃/分で室温から昇温しながら、200℃と500℃に達したときのそれぞれ重量を測定する。それらの値から下記の式により加熱減量を算出する。
加熱減量(%)=[(200℃のときの重量(g)-500℃のときの重量(g))/200℃のときの重量(g)]×100
<塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体>
本発明において用いられる塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体は、塩化ビニル単量体および酢酸ビニル単量体を乳化重合法、シード乳化重合法または微細懸濁重合法により製造して得られたものであり、乾燥前の平均一次粒子径が0.1~4μmのものであることが好ましい。
本発明において用いられる塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量は、8~12質量%であることが好ましく、8.5~11.5質量%であることがより好ましく、9~11質量%であることがさらに好ましい。酢酸ビニル含有量が8質量%未満では、焼付温度を低くすることができない場合がある。酢酸ビニル含有量が12質量%超では、ペーストゾルの貯蔵安定性が悪くなる場合がある。
乳化重合法では、陰イオン界面活性剤及び/または非イオン界面活性剤を乳化剤とし、水溶性過酸化物、水溶性過酸化物と水溶性還元剤との組み合わせ、または、油溶性過酸化物と水溶性還元剤との組み合わせを重合開始剤とし、他の重合助剤の存在下、水性媒体に塩化ビニル系単量体を平均粒径が0.1~0.4μm程度の微小粒滴として乳化分散し、その状態で重合して微細な粒子状の重合体を生成する。その後、未反応の塩化ビニル系単量体および酢酸ビニル単量体を除去回収した後、噴霧乾燥して、本発明で使用可能な塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体が得られる。なお、ホモジナイザー等の高速分散機を使用し、平均粒径が1~4μm程度の微小粒滴として懸濁させて重合させる、微細懸濁重合法によっても、本発明で使用可能な塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体が得られる。
乳化剤(微細懸濁分散剤)としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルアルコール硫酸エステル塩、脂肪酸塩またはジアツキルスルホコハク酸塩のような通常の陰イオン系界面活性剤、特にアルカリ金属塩、非イオン系界面活性剤として、例えば、高級脂肪酸のグリセリンエステル、グリコールエステルまたはソルビタンエステル、高級アルコール縮合物、高級脂肪酸縮合物、ポリプロピレンオキサイド縮合物などが挙げられる。
乳化重合において用いられる水溶性重合開始剤としては、例えば、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過ホウ酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムのような過酸化物が例示できる。また、油溶性重合開始剤としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、イソペンタハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドのような有機ハイドロパーオキサイドなどを例示できる。さらに、これらと、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ロンガリットなどの適当な水溶性還元剤との併用系であってもよい。
その他の重合助剤として、セチルアルコールおよびラウリルアルコールなどの高級アルコール、ラウリル酸、パルチミン酸およびステアリン酸などの高級脂肪酸またはそのエステル、芳香族炭化水素、高級脂肪族炭化水素、塩素化パラフィンのようなハロゲン化炭化水素、ポリビニルアルコール、ゼラチン、粒径調節剤(硫酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムなど)、連鎖移動剤、重合禁止剤などが使用可能である。これらは単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
乳化重合の重合条件は、ペースト塩化ビニル樹脂の製造に通常採用される条件でよく、特に制限されない。
また、従来、塩化ビニル系単量体の乳化重合の際に使用される重合度調節剤、連鎖移動剤、pH調節剤、ゲル化性改良剤、帯電防止剤、乳化剤、安定剤、スケール防止剤等を使用することも可能であり、これらの仕込み方法も公知の技術でよい。
予め乳化重合により製造された粒径が極微小である塩化ビニル系重合体微粒子の存在下で、再び乳化重合を行うシード乳化重合法により、該微粒子を核(種粒子)として肥大させて得られた平均粒径0.4~2μm程度の塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体も、本発明において使用できる。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物においては、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂100質量部に対し、上記表面処理炭酸カルシウムが70~300質量部含有されている。表面処理炭酸カルシウムの含有量が70質量部未満ではプラスチゾルに良好な粘度付与ができない傾向がある。表面処理炭酸カルシウムの含有量が300質量部超ではプラスチゾルの粘度が高くなり作業性が悪くなるおそれがある。表面処理炭酸カルシウムの含有量は、樹脂100質量部に対し、70~250質量部であることが好ましく、100~200質量部であることがより好ましい。
本発明の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂組成物は、例えば、ペーストゾルとして用いることができる。したがって、可塑剤が含まれていてもよい。可塑剤を含有する場合、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂100質量部に対し、50~350質量部であることが好ましく、70~300質量部であることがより好ましく、100~250質量部であることがさらに好ましい。
可塑剤としては、例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP),ジ-n-オクチルフタレート,ジイソノニルフタレート(DINP),ジブチルフタレート(DBP)等のフタル酸エステル系可塑剤;トリクレジルフォスフェート(TCP),トリキシリルホスフェート(TXP),トリフェニルフォスフェート(TPP)等のリン酸エステル系可塑剤;ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DEHA),ジ-2-エチルヘキシルセバケート等の脂肪酸エステル系可塑剤、ポリアクリル酸ブチル、アクリル酸-n-ブチル/メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸-2-エチルヘキシル/メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸-2-エチルヘキシル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸-n-ブチル共重合体等のポリアクリル系可塑剤等から選ばれる一種または二種以上の可塑剤が使用できる。
本発明の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂組成物には、必要に応じて、熱安定剤、滑剤、安定化助剤、加工助剤、充填剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料等の各種添加剤を添加することができる。また、樹脂として、上記塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂以外に、(a)乳化重合法、シード乳化重合法または微細懸濁重合法により製造して得られ、平均一次粒子径が0.1~4μmである塩化ビニル樹脂、(b)懸濁重合法により製造して得られ、平均粒子径が20~60μmである、ペーストブレンド用塩化ビニル樹脂、ペーストブレンド用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、などを、本発明の効果を阻害しない範囲で、配合することができる。また、炭酸カルシウムとして、上記表面処理炭酸カルシウム以外に、重質炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウムを配合してもよい。
以下、本発明を実施例によって、より具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
(表面処理炭酸カルシウムの調製)
所定のBET比表面積を有する合成炭酸カルシウム2000gに、固形分が10質量%となるように水を加え、40℃下で撹拌して、炭酸カルシウムのスラリーを調製した。次に、このスラリーに10質量%に調整した混合脂肪酸ナトリウム塩(質量比でラウリン酸:ミリスチン酸:パルミチン酸:ステアリン酸:オレイン酸=3:2:40:15:30、ミヨシ油脂社製のタンカルMH)の溶液を所定量添加して、炭酸カルシウムを表面処理した。次に、得られたスラリーを脱水して、固形分が60重量%のケーキを得た。得られたケーキを、乾燥機で乾燥して、表面処理炭酸カルシウムを得た。なお、表面処理量の測定は示差熱分析(ULVAC社製 TGD9600)で、上記の加熱減量を測定して求めることができる。
(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の製造)
<共重合体A(酢酸ビニル含有量10質量%)>
十分に脱気、N2置換した35L耐圧容器に、塩化ビニル単量体13.5kg、酢酸ビニル単量体2.16kg、クミルパーオキシエオデカノエート25.0g、t-ブチルパーオキシエオデカノエート1.23g、ステアリルアルコール27.3g、C12~C18アルコール90.0g、ラウリル硫酸ナトリウム347.5g、及び水12.9kgを添加し、30分間ホモジナイズして均質化液を得た。
攪拌機の回転数を29rpmに設定し、容器内を34℃に保温して重合を開始した。約14時間後に容器内の圧力が低下し始めた時点から、重合機内のモノマーを回収し、容器内を冷却した後、ラテックスを払い出した(重合転化率は約77%であった)。
スプレー式乾燥機(入口温度105℃/出口温度50℃)を用いてラテックスを乾燥し、パウダー状の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体Aを得た。
<共重合体B~共重合体G>
表1に示すように、塩化ビニルモノマー及び酢酸ビニルモノマーの仕込み量を変更した以外は、共重合体Aと同様の操作を行うことにより、酢酸ビニル含有量の異なる塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体B~Gを得た。
(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂組成物の調製)
表1~表4に示すように、所定の酢酸ビニル含有量を有する塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体に、上記で得られた表面処理炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、可塑剤及び各種添加剤を配合し、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体のペーストゾルを調製した。
ペーストゾルの基本配合は、以下の通りである。
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体:100質量部
・表面処理炭酸カルシウム:143質量部
・重質炭酸カルシウム(備北粉化工業社製、BF300):221質量部
・可塑剤(新日本理化社製、DINP):179質量部
・脱水剤(備北粉化工業社製、酸化カルシウム、CML35):21質量部
・接着付与剤(コグニスジャパン社製、ポリアミドアミン、バーサミド140):7質量部
・希釈剤(山桂産業社製、石油系溶剤、ミネラルターペン):29質量部
・合計:700質量部
(貯蔵安定性の評価)
得られたペーストゾルについて、以下のようにして粘度を測定し、以下の式で粘度変化率を算出し、貯蔵安定性として評価した。
初期粘度と、貯蔵後粘度の変化率を貯蔵安定性の指標とした。粘度変化率は、下式に従い算出した。初期粘度は、調製直後の20℃のペーストゾルについて、B形粘度計(20rpm)で測定した。貯蔵後の粘度は、35℃で30日貯蔵した後、20℃で3時間以上静置し、B型粘度計(20rpm)で測定した。
粘度変化率(%)=[(貯蔵後粘度(Pa・s)-初期粘度(Pa・s))/初期粘度(Pa・s)]×100
(引張強度の測定)
ガラス板上にPPシートを張り、シート上に厚さ3.0mmのガラススペーサーを貼り付け、その枠内に、気泡が入らないようペーストゾルを充填し、所定の温度設定でペーストゾルを硬化させ、硬化物を得た。
JIS K6251に規定されたダンベル状2号形で、得られたシートを打ち抜き、試験片を23℃で1日以上放置後、試験片の厚みを測定し、オートグラフを用い引張速度200mm/minで試験を行い、引張強度を測定した。なお、比較例7以外は、焼付温度を120℃にしている。比較例7は、焼付温度を130℃にしている。
<表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積の影響>
BET比表面積が9m2/g(比較例1)、13m2/g(実施例2)、20m2/g(実施例1)、28m2/g(実施例3)、40m2/g(実施例4)、53m2/g(比較例2)である各原料炭酸カルシウムに、表2に示す表面処理量(表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積1m2/g当たりの処理量:単位(×10-2g/m2))となるように、上記混合脂肪酸ナトリウム塩を用いて表面処理し、BET比表面積が8m2/g(比較例1)、12m2/g(実施例2)、18m2/g(実施例1)、26m2/g(実施例3)、35m2/g(実施例4)、41m2/g(比較例2)である表面処理炭酸カルシウムを得た。
得られた表面処理炭酸カルシウムを用いて、上記ペーストゾルを作製し、貯蔵安定性及び引張強度を評価した。評価結果を表2に示す。
表2に示すように、本発明に従う実施例1~4の共重合体樹脂組成物では、酢酸ビニル含有量が高い樹脂を用いても、ペーストゾルの貯蔵安定性が優れていることがわかる。BET比表面積が本発明の範囲より低い表面処理炭酸カルシウムを用いた比較例1では、ペーストゾルの粘度変化率が高く貯蔵安定性が悪くなっている。BET比表面積が本発明の範囲より高い表面処理炭酸カルシウムを用いた比較例2では、ペーストゾルの粘度が高くなっている。
<表面処理炭酸カルシウムの表面処理量の影響>
BET比表面積が20m2/gである原料炭酸カルシウムに、表3に示す表面処理量(炭酸カルシウムのBET比表面積1m2/g当たりの処理量:単位(×10-2g/m2))となるように、上記混合脂肪酸ナトリウム塩を用いて表面処理し、BET比表面積が18m2/gである表面処理炭酸カルシウムを得た。
得られた表面処理炭酸カルシウムを用いて、上記ペーストゾルを作製し、貯蔵安定性及び引張強度を評価した。評価結果を表3に示す。
表3に示すように、本発明に従う実施例1及び5~8の共重合体樹脂組成物では、酢酸ビニル含有量が高い樹脂を用いても、ペーストゾルの貯蔵安定性が優れていることがわかる。表面処理量が本発明の範囲より少ない表面処理炭酸カルシウムを用いた比較例3では、ペーストゾルの粘度変化率が減少し貯蔵安定性が悪くなっている。表面処理量が本発明の範囲より多い表面処理炭酸カルシウムを用いた比較例4は、ペーストゾルの粘度変化率が高く貯蔵安定性が悪くなっている。
<塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量の影響>
表4に示すように、酢酸ビニル含有量が7質量%(比較例5)、8質量%(実施例9)、9質量%(実施例10)、10質量%(実施例1)、11質量%(実施例11)、12質量%(実施例12)、13質量%(比較例6)である塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体に、BET比表面積が18~35m2/g、表面処理量(炭酸カルシウムのBET比表面積1m2/g当たりの処理量)が0.16×10-2g/m2である表面処理炭酸カルシウムを配合して、上記ペーストゾルを作製し、貯蔵安定性及び引張強度を評価した。評価結果を表4に示す。
比較例7においては、比較例5と同じ酢酸ビニル含有量が7質量%である塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を用い、焼付温度を130℃にしている。それ以外の実施例及び比較例では、焼付温度を120℃にしている。
表4に示すように、本発明に従う実施例1及び9~12の共重合体樹脂組成物では、ペーストゾルの貯蔵安定性が優れており、かつ高い引張強度を有していることがわかる。酢酸ビニル含有量が本発明の範囲より少ない共重合体樹脂を用いた比較例5では、焼付が不十分であるため、引張強度が低くなっている。この共重合体樹脂では、比較例7に示すように、高い引張強度を得るには、焼付温度を高くする必要がある。酢酸ビニル含有量が本発明の範囲より多い共重合体樹脂を用いた比較例6では、ペーストゾルの粘度変化率が大きく貯蔵安定性が悪くなっている。
<表面処理炭酸カルシウムの配合量の影響>
表5に示すように、表面処理炭酸カルシウムの配合量を、0(比較例8)、50(比較例9)、71(実施例13)、114(実施例14)、143(実施例1)、171(実施例15)、214(実施例16)、321(比較例10)と変化させて、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体に配合して、上記ペーストゾルを作製し、貯蔵安定性及び引張強度を評価した。評価結果を表5に示す。
表5に示すように、本発明に従う実施例1及び13~16の共重合体樹脂組成物では、ペーストゾルの貯蔵安定性が優れており、かつ高い引張強度を有していることがわかる。表面処理炭酸カルシウムの配合量が本発明の範囲より少ない共重合体樹脂を用いた比較例8および比較例9では、ペーストゾルの粘度が低くなりすぎている。表面処理炭酸カルシウムの配合量が本発明の範囲より多い共重合体樹脂を用いた比較例10では、ペーストゾルの初期粘度が高くなりすぎている。
<ブレンド樹脂の併用>
酢酸ビニル含有量が10質量%である本発明の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体に、酢酸ビニル含有量が3質量%であるブレンド樹脂(実施例17~20)または酢酸ビニル含有量が0質量%であるブレンド樹脂(実施例21~24)を、表6に示す配合割合で併用した。具体的な配合割合(共重合体:併用ブレンド樹脂)としては、95:5(実施例17及び21)、90:10(実施例18及び22)、80:20(実施例19及び23)、及び75:25(実施例20及び24)として、上記ペーストゾルを作製し、貯蔵安定性及び引張強度を評価した。評価結果を表6に示す。
表6に示すように、酢酸ビニル含有量が本発明の範囲より少ないブレンド樹脂を併用した場合にも、ペーストゾルの貯蔵安定性が優れており、かつ高い引張強度を有するという本発明の効果が得られることがわかる。
Claims (3)
- 酢酸ビニル含有量が8~11.5質量%である塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂100質量部に対し、炭酸カルシウムを脂肪酸類で表面処理した表面処理炭酸カルシウムが70~300質量部含有されており、前記表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積が10~40m2/gであり、前記表面処理炭酸カルシウムの表面処理量が、前記表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積1m2/g当たり、0.1×10-2g/m2~0.4×10-2g/m2であり、
前記表面処理炭酸カルシウムの表面処理量は、
表面処理炭酸カルシウムの加熱減量(%)/表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積(m 2 /g)の式から求められ、
前記表面処理炭酸カルシウムの加熱減量(%)は、
[(200℃のときの重量(g)-500℃のときの重量(g))/200℃のときの重量(g)]×100の式から求められることを特徴とする塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂組成物。 - 前記塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂の酢酸ビニル含有量が9~11質量%である、請求項1に記載の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂組成物。
- ペーストゾルである、請求項1または2に記載の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂組成物。
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