<第1実施形態>
図面を参照して、本発明の第1実施形態に係る昇降台車100について説明する。図1は昇降台車100の自立状態における側面図であり、図2は昇降台車100の底面図である。
図1に示すように、昇降台車100は、運転者が荷物を運搬する装置であって、荷物が載せられた状態で階段等の傾斜路を昇降することが可能な装置である。昇降台車100は、荷物が載置される荷台部10と、荷台部10を支持する本体部20と、本体部20に取り付けられ、平坦路を移動する際に用いられる平坦路用走行部60と、本体部20に取り付けられ、傾斜路を移動する際に用いられる傾斜路用走行部70と、を備える。
図1及び図2に示すように、平坦路用走行部60は、平坦路を走行するために使用される左右一対の車輪61と、車輪61を移動させる車輪移動装置62と、を有する。車輪移動装置62は、後述するように本体部20に取り付けられ、車輪61を支持する。つまり、車輪61は、車輪移動装置62を介して本体部20に取り付けられる。傾斜路用走行部70は、互いに平行に配置される左右一対のクローラ50と、左右一対のクローラ50を駆動する昇降駆動部30と、を有する。左右一対のクローラ50は、本体部20に取り付けられ、階段等の傾斜路を走行するために使用される。
なお、以下の説明では、クローラ50が水平面に設置された自立状態における昇降台車100の上下、前後方向を図1に示すように定義する。また、昇降台車100の幅方向、すなわち昇降台車100の上下、前後方向に直交する方向を昇降台車100の左右方向と定義する。
図1に示すように、昇降台車100は、運転者に操作される操作部としての各種スイッチ193,198,199と、各種スイッチ193,198,199から出力される指令に応じて、平坦路用走行部60の車輪移動装置62及び傾斜路用走行部70の昇降モータ31の動作を制御する制御部としてのコントローラ140と、コントローラ140に接続されるリミットスイッチ181,182(図3参照)と、傾斜角度センサ189と、をさらに備える。各種スイッチ193,198,199及び各種スイッチ193,198,199の操作に応じたコントローラ140の制御内容の詳細については後述する。
図2に示すように、昇降駆動部30は、本体部20に取り付けられる駆動源としての昇降モータ31と、昇降モータ31の回転力をクローラ50に伝達する減速機32と、後述するクローラ50の駆動輪51を制動可能な電磁ブレーキ装置34と、を有する。昇降モータ31は、電動モータであり、コントローラ140によって回転方向および回転出力が制御される。
減速機32は、昇降モータ31の出力軸が連結される図示しない入力軸と、図示しない歯車を介して入力軸に連結される駆動軸33と、を有する。入力軸を介して入力された昇降モータ31の出力は、駆動軸33を介してクローラ50に伝達される。なお、減速機32は、歯車式に限定されず、ベルト式やチェーン式であってもよいし、これらを組み合わせたものであってもよく、昇降モータ31の回転数を減速して駆動軸33に伝達することができればどのような形式のものであってもよい。
昇降モータ31の出力軸には、出力軸を制動可能な電磁ブレーキ装置34が設けられる。電磁ブレーキ装置34は、後述するコントローラ140からの信号(制御電流)に応じて、昇降モータ31の出力軸に制動力を付与する。なお、電磁ブレーキ装置34は、昇降モータ31の出力軸からクローラ50の駆動輪51までの動力伝達機構を構成する部材に制動力を付与し、駆動輪51の回転を制動可能な構成であればよい。例えば、電磁ブレーキ装置34は、駆動輪51に接続される駆動軸33に制動力を付与する構成としてもよい。電磁ブレーキ装置34は、ソレノイドコイルが通電されたときに、クローラ50の駆動輪51を制動状態とする励磁作動形の電磁ブレーキ装置であってもよいし、ソレノイドコイルが通電されたときに、ばねの付勢力によって駆動輪51を制動状態とする無励磁作動形の電磁ブレーキ装置であってもよい。
左右一対のクローラ50は、互いに平行に配置され、昇降モータ31により駆動される。左右一対のクローラ50は、同様の構成である。図1に示すように、クローラ50は、前端部に配設される駆動輪51と、後端部に配設される従動輪52と、駆動輪51及び従動輪52に掛け回されるゴム製のベルト53と、駆動輪51と従動輪52との間に配置されベルト53を案内する複数のガイドローラ(不図示)と、ベルト53に所定の張力を付与するテンションローラ(不図示)と、駆動輪51、従動輪52、ガイドローラ(不図示)及びテンションローラ(不図示)を回転自在に支持する支持フレーム54と、を有する。駆動輪51は、駆動軸33の端部に結合され、駆動軸33と一体的に回転する。従動輪52は、駆動輪51よりも上方に配置される。
本体部20は、荷台部10、平坦路用走行部60及び傾斜路用走行部70が取り付けられる本体フレーム21と、本体フレーム21の後方に設けられ、後述するコントローラ140が収容されるコントローラ収容部22と、車輪61を格納する格納部23と、を有する。
本体フレーム21は、昇降台車100の左側及び右側に配置される左右一対の側部フレーム21aと、この左右一対の側部フレーム21aを連結する複数の連結フレーム(不図示)と、を有する。
コントローラ収容部22は、複数の板が溶接されるなどして箱状に形成される。コントローラ収容部22を構成する上面板には、電源スイッチ198及び昇降方向選択スイッチ199が配設される。
荷台部10は、荷物が載置される底板(不図示)と、左右の側板と、背面板(不図示)と、を有し、前面及び上面が開放された箱状に形成される。
左右一対の側部フレーム21aのそれぞれの上端部には、運転者により把持される把持部21bが設けられる。把持部21bの先端部(頂部)には、昇降モータ31を駆動するために操作される駆動源操作部としての昇降スイッチ193が配設される。後述するように、昇降スイッチ193は、平坦路を走行した後に、傾斜路を昇降する場合に使用される。
格納部23は、左右一対の側部フレーム21aの間に形成される格納スペースであり、荷台部10の後方であって、左右一対のクローラ50間に位置する。格納部23には、車輪61を含む平坦路用走行部60が収容される。
図3及び図4を参照して平坦路用走行部60について詳しく説明する。図3は、車輪61が走行位置にある状態の平坦路用走行部60の側面図であり、図4は、車輪61が格納位置にある状態の平坦路用走行部60の側面図である。
平坦路用走行部60は、車輪61と、車輪61を走行位置(図3参照)と格納位置(図4参照)との間で移動させる車輪移動装置62と、を有する。車輪移動装置62は、アクチュエータ169と、アクチュエータ169の動作に応じて車輪61を回動させる回動機構168と、を有する。アクチュエータ169は、いわゆる電動シリンダであって、電動モータ160と、電動モータ160によって駆動するロッド161と、電動モータ160の回転運動をロッド161の直線運動に変換する運動変換機構162と、運動変換機構162を収容する収容ケース163と、を有する。
運動変換機構162は、電動モータ160の出力軸に設けられるピニオン162aと、ピニオン162aに噛み合うラック162bと、を有するラックアンドピニオン機構である。なお、運動変換機構162は、電動モータ160の回転運動をロッド161の直線運動に変換することができればよいため、ラックアンドピニオン機構に代えて、ボールねじ機構としてもよい。
収容ケース163は、ロッド161の基端部が収容される円筒状のシリンダ163aと、シリンダ163aの側部に一体に設けられるモータケース163bと、を有する。シリンダ163aとモータケース163bとは、一体に成形してもよいし、別体に成形したものを締結部材等で結合してもよい。
側部フレーム21aは、荷台部10が固定される前側フレーム121aと、前側フレーム121aの後方に配設される後側フレーム121bと、前側フレーム121aと後側フレーム121bとを連結する連結フレーム121c,121iと、を有する。前側フレーム121a及び後側フレーム121bは、互いに平行に配設される。前側フレーム121a及び後側フレーム121bは、昇降台車100の後側から前側に向かって地面からの高さが低くなるように傾斜している。
本体部20の一部を構成する左右一対の前側フレーム121aには、アクチュエータ169が回動自在に取り付けられる。左右一対の前側フレーム121aのそれぞれには、取付ブラケット121dが固定される。シリンダ163aから後斜め上方に延在するロッド161の先端部(ロッドヘッド)は、左右一対の取付ブラケット121d間に配置される。ロッド161の先端部及び左右一対の取付ブラケット121dのそれぞれには昇降台車100の左右方向に貫通する孔が設けられ、これらの孔にピン161aが挿通される。これにより、アクチュエータ169は、左右方向に延在するピン161aを中心に回動自在とされる。
本体部20の一部を構成する左右一対の後側フレーム121bには、車輪61を保持する回動機構168が回動自在に取り付けられる。後側フレーム121bには、昇降台車100の左右方向に延在する軸121eが固定される。軸121eには、回動ブラケット121fが回動自在に取り付けられる。回動ブラケット121fは、軸121eが挿通するパイプ121gと、パイプ121gに固定される平板状の平板部121hと、を有する。
回動機構168は、車輪61を回転自在に支持する車軸171と、車軸171を保持する車軸保持部172と、車軸保持部172が固定されるL字ブラケット173と、を有する。
L字ブラケット173は、第1平板部173aと、第1平板部173aに対して直交するように第1平板部173aの後側端部から90度屈曲して設けられる第2平板部173bと、を有し、断面L字状を呈する。第1平板部173aは、平板状であり、その下面に車軸保持部172が取り付けられる。第2平板部173bは、平板状であり、後面に回動ブラケット121fが取り付けられる。
したがって、回動機構168及び回動機構168に固定される車輪61は、軸121eを中心として回動自在とされる。
第1平板部173aの前端側の上面には、左右一対の取付ブラケット175が固定される。左右一対の取付ブラケット175には、昇降台車100の左右方向に貫通する孔が設けられる。収容ケース163の下端部には、左右方向に貫通する孔を有する取付部163cが設けられる。取付部163cは、左右一対の取付ブラケット175間に配置され、左右一対の取付ブラケット175の孔及び取付部163cの孔のそれぞれにピン176が挿着される。これにより、アクチュエータ169の下端部と回動機構168とが左右方向に延在するピン176を中心に相互に回動自在に連結される。
アクチュエータ169の上端部は本体部20に回動自在に連結され、アクチュエータ169の下端部は回動機構168に回動自在に連結されているので、アクチュエータ169の伸長動作に応じて回動機構168が軸121eを中心に回動することができる。
本実施形態に係る車輪移動装置62は、収容ケース163から後斜め上方に向かって突出するロッド161の先端部が、本体部20に取付ブラケット121dを介して連結され、収容ケース163が回動機構168を介して車輪61に連結される。このように車輪移動装置62を配設することにより、重量物としての電動モータ160を下方に位置させることができる。
したがって、収容ケース163が本体部20に取り付けられ、ロッド161の先端部が車輪61に取り付けられる場合に比べて、平坦路用走行部60の重心を地面に近い位置に設定することができる。その結果、昇降台車100の重心を低くできるので、昇降台車100の安定性を向上することができる。
収容ケース163は、本体部20に回動自在に取り付けられる回動機構168を介して車輪61に連結されている。このため、アクチュエータ169を駆動させて車輪61を格納する際、回動機構168を介さずに車輪61をアクチュエータ169により直接引き上げる場合に比べて、駆動力を小さく抑えることができる。その結果、アクチュエータ169の小型化を図ることができる。
アクチュエータ169は、電動モータ160によって伸長する。図3に示すように、アクチュエータ169が、所定の長さまで伸長した状態では、車輪61が傾斜路用走行部70の下面(すなわちクローラ50における平坦路との接地面)よりも下方に突出して接地し、車輪61によって走行が可能な走行位置に配置される。
図3に示す状態からアクチュエータ169を収縮すると、図4に示すように、取付ブラケット175がアクチュエータ169によって引き上げられ、回動機構168が軸121eを中心に図示反時計回りに回動する。
アクチュエータ169が所定の長さまで収縮した状態では、車輪61が格納部23に格納される格納位置に配置される。このように、車輪移動装置62は、アクチュエータ169を伸縮駆動することにより、格納位置(図4参照)と走行位置(図3参照)との間で車輪61を移動させることができる。
図5及び図6を参照して、各種スイッチ193,198,199及び各種スイッチ193,198,199の操作に応じたコントローラ140の制御内容の詳細について説明する。図5は、コントローラ140の機能ブロック図である。コントローラ140には、上述した昇降スイッチ193、電源スイッチ198及び昇降方向選択スイッチ199等の各種操作部が接続される。
また、コントローラ140には、車輪61が格納位置にあるか否かを検出する位置検出部としての第1リミットスイッチ181と、車輪61が走行位置にあるか否かを検出する位置検出部としての第2リミットスイッチ182と、昇降台車100の傾斜角度を検出する傾斜角度検出部である傾斜角度センサ189と、が接続される。本実施形態に係る傾斜角度センサ189は、クローラ50の接地面(下面)と水平面とのなす角を昇降台車100の傾斜角度として検出する。傾斜角度センサ189は、加速度センサ、ジャイロセンサ、振子式角度センサ等であり、検出した傾斜角度を表す信号をコントローラ140に出力する。
コントローラ140は、各種スイッチ193,198,199からの信号、リミットスイッチ181,182からの信号及び傾斜角度センサ189からの信号に基づいて、傾斜路用走行部70の昇降モータ31及び平坦路用走行部60の車輪移動装置62のアクチュエータ169を制御する。
把持部21bの頂部に設けられる昇降スイッチ193は、モーメンタリ動作型のスイッチであり、所定量以上押し込まれているときだけオン信号(作動指令)をコントローラ140に出力する。
電源スイッチ198及び昇降方向選択スイッチ199は、オルタネイト動作型のトグルスイッチである。電源スイッチ198は、電源オン位置と電源オフ位置のいずれかを選択可能に構成される。昇降方向選択スイッチ199は、クローラ50の昇降方向を上昇方向として選択するための操作位置である上昇位置、クローラ50の昇降方向を下降方向として選択するための操作位置である下降位置、及び、クローラ50の回転方向を非選択状態とするための操作位置である中立位置のいずれかを選択可能に構成される。
さらに、昇降方向選択スイッチ199の上昇位置は、車輪61を格納位置に移動させるための操作位置でもある。すなわち、昇降方向選択スイッチ199の上昇位置は、車輪61を格納位置に移動させるとともにクローラ50を上昇方向に回転させるための格納上昇位置である。また、昇降方向選択スイッチ199の下降位置は、車輪61を走行位置に移動させるための操作位置でもある。すなわち、昇降方向選択スイッチ199の下降位置は、車輪61を走行位置に移動させるとともにクローラ50を下降方向に回転させるための格納下降位置である。なお、昇降方向選択スイッチ199の中立位置は、車輪61を走行位置に移動させるための走行操作位置でもある。
つまり、本実施形態に係る昇降方向選択スイッチ199は、昇降台車100の昇降方向を選択する昇降方向選択操作部としての機能に加え、車輪移動装置62により車輪61を格納位置から走行位置へ移動させるために操作される車輪移動操作部、及び車輪移動装置62により車輪61を走行位置から格納位置へ移動させるために操作される車輪移動操作部としての機能を有する。昇降方向選択スイッチ199が、車輪移動操作部としての機能と昇降方向選択操作部としての機能を備えているため、それぞれの操作部を個別に設ける場合に比べて、部品点数を低減することができ、コストの低減を図ることができる。
図4に示すように、第1リミットスイッチ181は、後側フレーム121bの長手方向中央部に固定される。回動機構168におけるL字ブラケット173の第1平板部173aの上面には、第1リミットスイッチ181に当接可能な当接部181aが設けられる。当接部181aは、車輪61が格納位置にあるときには、第1リミットスイッチ181に当接する。当接部181aが第1リミットスイッチ181に当接すると、第1リミットスイッチ181は、オン信号をコントローラ140に出力するオン状態となる。一方、車輪61が格納位置以外の位置、すなわち走行位置及び走行位置と格納位置との間に車輪61が位置しているときには、当接部181aは第1リミットスイッチ181から離隔し、非当接状態となっている。非当接状態では、第1リミットスイッチ181は、コントローラ140にオン信号を出力しないオフ状態となっている。
図3に示すように、第2リミットスイッチ182は、後側フレーム121bの下端部近傍(前端部近傍)に固定される。回動機構168におけるL字ブラケット173の第1平板部173aの下面には、第2リミットスイッチ182に当接可能な当接部182aが設けられる。当接部182aは、車輪61が走行位置にあるときには、第2リミットスイッチ182に当接する。当接部182aが第2リミットスイッチ182に当接すると、第2リミットスイッチ182は、オン信号をコントローラ140に出力するオン状態となる。一方、車輪61が走行位置以外の位置、すなわち格納位置及び走行位置と格納位置との間に車輪61が位置しているときには、当接部182aは第2リミットスイッチ182から離隔し、非当接状態となっている。非当接状態では、第2リミットスイッチ182は、コントローラ140にオン信号を出力しないオフ状態となっている。
図5に示すコントローラ140は、動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶部及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)、その他の周辺回路を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ140は、複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
なお、動作回路としては、CPUに代えてまたはCPUとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
コントローラ140は、操作判定部としての第1判定部141と、状態判定部としての第2判定部142と、昇降モータ31を制御する駆動源制御部143と、車輪61の移動を制御する車輪移動制御部としてのアクチュエータ制御部144と、を有する。第1判定部141は、昇降スイッチ193により昇降モータ31を駆動するための押し込み操作がなされたか否かを判定する。また、第1判定部141は、昇降方向選択スイッチ199からの方向選択指令に基づいて、昇降方向選択スイッチ199の操作位置(切り換え位置)も判定する。
第2判定部142は、第1リミットスイッチ181での検出結果に基づいて車輪61が格納位置にあるか否かを判定する。第2判定部142は、第1リミットスイッチ181からオン信号が出力されている場合、車輪61が格納位置にあると判定する。第2判定部142は、第1リミットスイッチ181からオン信号が出力されていない場合、車輪61が格納位置にないと判定する。
また、第2判定部142は、第2リミットスイッチ182での検出結果に基づいて車輪61が走行位置にあるか否かを判定する。第2判定部142は、第2リミットスイッチ182からオン信号が出力されている場合、車輪61が走行位置にあると判定する。第2判定部142は、第2リミットスイッチ182からオン信号が出力されていない場合、車輪61が走行位置にないと判定する。
さらに、第2判定部142は、傾斜角度センサ189での検出結果に基づいて、昇降台車100のクローラ50が平坦路に接地しているのか、あるいは、傾斜路に接地しているのかを判定する。第2判定部142は、傾斜角度センサ189で検出された傾斜角度θが、所定角度θ1未満であるか否かを判定する。所定角度θ1は、クローラ50が平坦路に接地しているのか否かを判定するための閾値であり、予めコントローラ140の記憶部に記憶される。所定角度θ1は、予め実験等により車輪61を格納位置から走行位置に移動させたときに、安定して姿勢を変えることのできる角度の上限値が設定される。所定角度θ1としては、例えば、10~15度の値が設定される。
第2判定部142は、傾斜角度センサ189で検出された傾斜角度θが所定角度θ1未満である場合、クローラ50が平坦路に接地していると判定する。第2判定部142は、傾斜角度センサ189で検出された傾斜角度θが所定角度θ1以上である場合、クローラ50が傾斜路に接地していると判定する。
アクチュエータ制御部144は、傾斜角度センサ189により検出された傾斜角度θが所定角度θ1未満であるときには、昇降方向選択スイッチ199による車輪61を走行位置へ移動させるための操作に基づく車輪移動装置62の動作を許可する。したがって、アクチュエータ制御部144は、第1判定部141により昇降方向選択スイッチ199が中立位置に操作されていると判定され、かつ、第2判定部142によりクローラ50が平坦路に接地していると判定された場合、アクチュエータ169を伸長させる。つまり、アクチュエータ制御部144は、昇降方向選択スイッチ199が中立位置に操作され、かつ、昇降台車100の傾斜角度θが所定角度θ1未満の場合、車輪61を走行位置に移動させる。
なお、アクチュエータ制御部144は、アクチュエータ169を動作させた後、第2判定部142により車輪61が走行位置にあると判定された場合、アクチュエータ169を停止する。したがって、アクチュエータ制御部144は、平坦路において昇降方向選択スイッチ199が中立位置に選択されている場合であって、車輪61が走行位置にないときには、車輪61が走行位置に位置するまで、アクチュエータ169を伸長させる。
アクチュエータ制御部144は、傾斜角度センサ189により検出された傾斜角度θが所定角度θ1以上であるときには、昇降方向選択スイッチ199による車輪61を走行位置へ移動させるための操作に基づく車輪移動装置62の動作を禁止する。したがって、アクチュエータ制御部144は、第1判定部141により昇降方向選択スイッチ199が中立位置に操作されていると判定され、かつ、第2判定部142によりクローラ50が傾斜路に接地していると判定された場合、アクチュエータ169を伸長させない。つまり、アクチュエータ制御部144は、昇降方向選択スイッチ199が中立位置に操作され、かつ、昇降台車100の傾斜角度θが所定角度θ1以上の場合、車輪移動装置62を動作させない。
また、アクチュエータ制御部144は、第1判定部141により昇降方向選択スイッチ199が上昇位置または下降位置に操作されていると判定された場合、アクチュエータ169を収縮させる。アクチュエータ制御部144は、アクチュエータ169を動作させた後、第2判定部142により車輪61が格納位置にあると判定された場合、アクチュエータ169を停止する。したがって、アクチュエータ制御部144は、昇降方向選択スイッチ199が上昇位置または下降位置に選択されている場合であって、車輪61が格納位置にないときには、車輪61が格納位置に位置するまでアクチュエータ169を収縮させる。
駆動源制御部143は、第1判定部141により昇降スイッチ193が押し込み操作されていると判定され、かつ、第2判定部142により車輪61が格納位置にあると判定された場合に、電磁ブレーキ装置34の制動状態を解除して電磁ブレーキ装置34を非制動状態とするとともに、昇降モータ31を作動させる。
駆動源制御部143は、第1判定部141により、昇降方向選択スイッチ199が上昇位置に切り換えられていると判定された場合には、昇降モータ31を一方(上昇方向)に回転(正転)させる。駆動源制御部143は、第1判定部141により、昇降方向選択スイッチ199が下降位置に切り換えられていると判定された場合には、昇降モータ31を他方(下降方向)に回転(逆転)させる。
つまり、駆動源制御部143は、昇降方向選択スイッチ199が上昇位置または下降位置に選択されている場合であって、車輪61が格納位置にあるときに、昇降スイッチ193により昇降モータ31を駆動するための押し込み操作がなされると、電磁ブレーキ装置34の制動状態を解除するとともにクローラ50が昇降方向選択スイッチ199の操作位置に応じた昇降方向に回転するように昇降モータ31を制御する。
駆動源制御部143は、第1判定部141により昇降スイッチ193が押し込み操作されていないと判定された場合、昇降モータ31を停止状態にするとともに電磁ブレーキ装置34を制動状態にする。つまり、電磁ブレーキ装置34は、昇降スイッチ193により昇降モータ31を駆動するための操作がなされていない場合、昇降モータ31に制動力を付与する。これにより、意図せずにクローラ50が回転し、昇降台車100が移動してしまうことを防止することができる。
なお、駆動源制御部143は、第1判定部141により車輪61が格納位置にないと判定されている場合、昇降スイッチ193が押し込み操作されたときであっても、電磁ブレーキ装置34の制動状態を維持するとともに昇降モータ31を停止状態とする。
図6を参照して、コントローラ140により実行されるプログラムによる処理について説明する。図6は、コントローラ140により実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図6のフローチャートに示す処理は、電源スイッチ198が電源オン位置に切り換えられることにより開始され、図示しない初期設定が行われた後、所定の制御周期で繰り返し実行される。なお、初期状態において、昇降台車100のクローラ50の昇降モータ31及び車輪移動装置62のアクチュエータ169は停止状態であり、電磁ブレーキ装置34は制動状態である。コントローラ140は、上記リミットスイッチ181,182及び傾斜角度センサ189からの情報を制御周期ごとに取得する。
図中、ステップS115,S120,S125,S130は、傾斜路を昇降した後、平坦路の走行を開始する際にコントローラ140により実行される処理であり、ステップS140,S145,S150,S160,S165,S170,S173,S176,S180,S185は、平坦路を走行した後、傾斜路の昇降を開始する際にコントローラ140により実行される処理である。
図6に示すように、ステップS110において、コントローラ140は、昇降方向選択スイッチ199が中立位置に操作されているか否かを判定する。ステップS110において、昇降方向選択スイッチ199が中立位置に操作されていると判定された場合、ステップS115へ進む。ステップS110において、昇降方向選択スイッチ199が中立位置に操作されていないと判定された場合、ステップS140へ進む。
ステップS115において、コントローラ140は、昇降台車100の傾斜角度θが所定角度θ1未満であるか否かを判定する。ステップS115において、昇降台車100の傾斜角度θが所定角度θ1未満であると判定された場合、ステップS120へ進む。ステップS115において、昇降台車100の傾斜角度θが所定角度θ1以上であると判定された場合、ステップS110へ戻る。
ステップS120において、コントローラ140は、車輪61が走行位置にあるか否かを判定する。ステップS120において、車輪61が走行位置にないと判定された場合、すなわち第2リミットスイッチ182がオフ状態である場合、ステップS125へ進む。ステップS120において、車輪61が走行位置にあると判定された場合、すなわち第2リミットスイッチ182がオン状態である場合、ステップS130へ進む。
ステップS125において、コントローラ140は、電動モータ160を回転駆動させ、アクチュエータ169を伸長させ、ステップS120へ戻る。ステップS130において、コントローラ140は、電動モータ160を停止させる、すなわちアクチュエータ169を停止させる。ステップS130において、アクチュエータ169の停止処理が完了すると、図6のフローチャートに示す処理を終了する。すなわち、次の制御周期において、再び、ステップS110から各処理が実行される。
ステップS140において、コントローラ140は、車輪61が格納位置にあるか否かを判定する。ステップS140において、車輪61が格納位置にないと判定された場合、すなわち第1リミットスイッチ181がオフ状態である場合、ステップS145へ進む。ステップS140において、車輪61が格納位置にあると判定された場合、すなわち第1リミットスイッチ181がオン状態である場合、ステップS150へ進む。
ステップS145において、コントローラ140は、電動モータ160を回転駆動させ、アクチュエータ169を収縮させ、ステップS140へ戻る。ステップS150において、コントローラ140は、電動モータ160を停止させる、すなわちアクチュエータ169を停止させる。ステップS150において、アクチュエータ169の停止処理が完了すると、ステップS160へ進む。
ステップS160において、コントローラ140は、昇降スイッチ193が押し込み操作されているか否かを判定する。ステップS160において、昇降スイッチ193が押し込み操作されていると判定された場合、ステップS165へ進む。ステップS160において、昇降スイッチ193が押し込み操作されていないと判定された場合、ステップS180へ進む。
ステップS165において、コントローラ140は、電磁ブレーキ装置34によるブレーキを解除し、すなわち電磁ブレーキ装置34を非制動状態とし、ステップS170へ進む。
ステップS170において、コントローラ140は、昇降方向選択スイッチ199が上昇位置に操作されているか否かを判定する。ステップS170において、昇降方向選択スイッチ199が上昇位置に操作されていると判定された場合、ステップS173へ進む。ステップS170において、昇降方向選択スイッチ199が下降位置に操作されていると判定された場合、ステップS176へ進む。
ステップS173において、コントローラ140は、昇降モータ31を一方に回転(正転)させ、クローラ50を上昇方向に駆動させる。ステップS176において、コントローラ140は、昇降モータ31を他方に回転(逆転)させ、クローラ50を下降方向に駆動させる。ステップS173またはステップS176におけるクローラ50の駆動処理が完了すると、図6のフローチャートに示す処理を終了する。すなわち、次の制御周期において、再び、ステップS110から各処理が実行される。したがって、昇降スイッチ193が押し込み操作されている間は、クローラ50の駆動が継続して行われる。
ステップS160において、昇降スイッチ193が押し込み操作されていないと判定されると、ステップS180において、コントローラ140は、昇降モータ31を停止させ、すなわちクローラ50を停止させ、ステップS185へ進む。ステップS185において、コントローラ140は、電磁ブレーキ装置34を作動させて制動状態とし、図6のフローチャートに示す処理を終了する。
本実施形態に係る昇降台車100の操作手順及び昇降台車100の動作について、階段を下降する場合を例に説明する。
昇降台車100の車輪61が走行位置にある状態(図3参照)では、車輪61が接地し、車輪61による走行が可能な状態とされている。運転者は、把持部21bを把持した状態で、昇降台車100を押すことにより、平坦路を走行する。運転者は、階段の手前で昇降台車100を停止させる。
運転者は、電源スイッチ198(図1、図5照)を電源オン位置に切り換え、昇降方向選択スイッチ199(図1、図5参照)を中立位置から下降位置に切り換える。昇降方向選択スイッチ199が下降位置に切り換えられると、アクチュエータ169が収縮する(S110でN→S140でN→S145)。アクチュエータ169の収縮により車輪61が軸121eを中心に回動するのに伴ってクローラ50が下方に移動し、クローラ50が平坦路に接地する。その後、アクチュエータ169はさらに収縮し、車輪61が格納位置まで移動する、すなわち車輪61が格納部23に格納される(図4参照)。つまり、昇降方向選択スイッチ199を下降位置に操作することにより、平坦路用走行部60が接地する平坦路走行姿勢(図3参照)から傾斜路用走行部70が接地する傾斜路走行姿勢(図1、図4参照)へと昇降台車100の姿勢を移行させることができる(S140でY→S150)。
運転者が、把持部21bに設けられた昇降スイッチ193を押し込み操作すると、電磁ブレーキ装置34が解除され、昇降モータ31(図1参照)が下降方向(前進方向)に回動し始める(S160でY→S165→S170でN→S176)。
なお、運転者が、昇降方向選択スイッチ199を下降位置に切り換えた後、車輪61が格納位置に移動している間に、昇降スイッチ193の押し込み操作をしておくと、車輪61が格納位置まで移動した段階で、昇降モータ31(図1参照)が下降方向(前進方向)に回動し始める。
このように、平坦路走行から傾斜路走行へ移行する際、昇降方向選択スイッチ199を上昇位置または下降位置に切り換え、昇降スイッチ193を押し込み操作しておくことにより、車輪61が走行位置から格納位置への移動が完了次第、クローラ50による傾斜路の昇降を開始することができる。このため、平坦路の走行後、階段等の傾斜路を昇降させるまでにかかる時間を短縮することができる。
階段を下り終え、平坦路にクローラ50を接地させた後、運転者は、昇降スイッチ193に対する押し込み操作をやめる。これにより、昇降スイッチ193からのオン信号(作動指令)の出力が無くなるため、昇降モータ31が停止し、電磁ブレーキ装置34が作動し、制動状態となる(S160でN→S180→S185)。
次に、運転者は、昇降方向選択スイッチ199を中立位置に切り換え操作する。昇降方向選択スイッチ199が中立位置に切り換えられると、アクチュエータ169が伸長し、車輪61が下方に移動する(S110でY→S115でY→S120でN→S125)。車輪61が接地すると、昇降台車100が持ち上げられ、クローラ50が地面から離隔する。車輪61が走行位置まで移動すると、アクチュエータ169が停止し(S120でY→S130)、昇降台車100は平坦路走行姿勢(図3参照)となる。
なお、昇降台車100が傾斜路に接地している状態で、誤って昇降方向選択スイッチ199が中立位置に切り換えられたとしても、アクチュエータ169の伸長動作が禁止されるので(S115でN→S110)、傾斜路において車輪61が走行位置に向かって移動してしまう誤動作を防止することができる。このため、誤動作に起因して昇降台車100の重心位置が変化することにより昇降台車100が不安定な状態となることを防止することができる。
昇降台車100が平坦路走行姿勢になると、車輪61を支点として左右に旋回が可能な状態となる。このため、運転者は、左右の把持部21bに対する力を加減することにより、昇降台車100を直進させたり、旋回させたりすることができる。
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
(1)コントローラ140は、傾斜角度センサ189により検出された傾斜角度θが所定角度θ1未満であるときには、車輪61を走行位置へ移動させるための操作、すなわち昇降方向選択スイッチ199を中立位置へ切り換える操作に基づく車輪移動装置62の動作を許可する。また、コントローラ140は、傾斜角度センサ189により検出された傾斜角度θが所定角度θ1以上であるときには、車輪61を走行位置へ移動させるための操作、すなわち昇降方向選択スイッチ199を中立位置へ切り換える操作に基づく車輪移動装置62の動作を禁止する。つまり、昇降台車100が平坦路に接地している場合には、昇降方向選択スイッチ199が中立位置に操作されると、車輪移動装置62により車輪61を走行位置に移動させ、昇降台車100が傾斜路に接地している場合には、昇降方向選択スイッチ199が中立位置に操作されたとしても、車輪移動装置62を動作させない。
昇降台車100が所定角度θ1以上の傾斜路に位置しているときに、平坦路用走行部60の車輪61を格納位置から走行位置へ移動させるための操作が誤ってなされてしまった場合に、車輪61を走行位置に移動させるための車輪移動装置62の動作が禁止されるので、傾斜路において車輪61が走行位置に向かって移動してしまう誤動作を防止することができる。このため、誤動作に起因して昇降台車100の重心位置が変化することにより昇降台車100が不安定な状態となることを防止することができ、安定性の高い昇降台車100を提供することができる。
<第2実施形態>
図7から図9を参照して、本発明の第2実施形態に係る昇降台車100について説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、図中、上記第1実施形態で説明した構成と同一の構成または相当する構成には同一の符号を付して説明を省略する。
上記第1実施形態では、昇降方向選択スイッチ199が、昇降方向選択操作部としての機能と車輪移動操作部としての機能を備える例について説明した。これに対して、本第2実施形態では、昇降方向選択スイッチ299が、昇降方向選択操作部としての機能のみを備える。一方、昇降スイッチ293が、クローラ50の昇降モータ31を駆動させるために操作される駆動源操作部としての機能に加え、車輪移動装置62により車輪61を走行位置から格納位置へ移動させるために操作される車輪移動操作部としての機能を備える。また、本第2実施形態では、車輪移動装置62により車輪61を格納位置から走行位置へ移動させるために操作される車輪移動操作部としての車輪出しスイッチ297を備える。
図7は、コントローラ240の機能ブロック図である。コントローラ240には、昇降スイッチ193、電源スイッチ198、昇降方向選択スイッチ299及び車輪出しスイッチ297が接続される。車輪出しスイッチ297は、オン位置とオフ位置のいずれかに切り換えられるオルタネイト動作型のトグルスイッチであり、コントローラ収容部22(図1参照)を構成する上面板に配設される。
なお、車輪出しスイッチ297は、オン位置側に押圧操作されているときだけオン信号(作動指令)をコントローラ240に出力するモーメンタリ動作型のスイッチとしてもよい。車輪出しスイッチ297は、オルタネイト動作型のスイッチとする場合、車輪61が格納位置から走行位置への移動を完了したときに、コントローラ240からの信号に応じてオフ位置に自動復帰する構成としてもよい。
コントローラ240は、操作判定部としての第1判定部241と、状態判定部としての第2判定部242と、駆動源制御部243と、アクチュエータ制御部244と、を有する。第1判定部241は、昇降スイッチ193により昇降モータ31を駆動するための押し込み操作がなされたか否かを判定する。また、第1判定部241は、昇降方向選択スイッチ299からの方向選択指令に基づいて、昇降方向選択スイッチ299の操作位置(切り換え位置)も判定する。さらに、第1判定部241は、車輪出しスイッチ297がオン位置に切り換え操作されたか否かも判定する。
第2判定部242は、第1リミットスイッチ181での検出結果に基づいて車輪61が格納位置にあるか否かを判定する。第2判定部242は、第1リミットスイッチ181からオン信号が出力されている場合、車輪61が格納位置にあると判定する。第2判定部242は、第1リミットスイッチ181からオン信号が出力されていない場合、車輪61が格納位置にないと判定する。
第2判定部242は、第2リミットスイッチ182での検出結果に基づいて車輪61が走行位置にあるか否かを判定する。第2判定部242は、第2リミットスイッチ182からオン信号が出力されている場合、車輪61が走行位置にあると判定する。第2判定部242は、第2リミットスイッチ182からオン信号が出力されていない場合、車輪61が走行位置にないと判定する。
第2判定部242は、傾斜角度センサ189で検出された傾斜角度θが、所定角度θ1未満であるか否かを判定する。第2判定部242は、傾斜角度センサ189で検出された傾斜角度θが所定角度θ1未満である場合、クローラ50が平坦路に接地していると判定する。第2判定部242は、傾斜角度センサ189で検出された傾斜角度θが所定角度θ1以上である場合、クローラ50が傾斜路に接地していると判定する。
アクチュエータ制御部244は、第1判定部241により昇降スイッチ193が押し込み操作されていると判定され、かつ、第2判定部242により車輪61が格納位置にないと判定された場合、アクチュエータ169を収縮させる。さらに、アクチュエータ制御部244は、第2判定部242により車輪61が格納位置にあると判定された場合、アクチュエータ169を停止する。つまり、昇降スイッチ193の押し込み操作が維持されると、車輪61が格納位置に位置するまで、アクチュエータ169が収縮する。
アクチュエータ制御部244は、第1判定部241により車輪出しスイッチ297がオン位置に切り換え操作されていると判定され、かつ、第2判定部242により車輪61が走行位置にないと判定された場合、アクチュエータ169を伸長させる。さらに、アクチュエータ制御部244は、第2判定部242により車輪61が走行位置にあると判定された場合、アクチュエータ169を停止する。つまり、車輪出しスイッチ297がオン位置に切り換えられている状態が維持されると、車輪61が走行位置に位置するまで、アクチュエータ169が伸長する。
アクチュエータ制御部244は、傾斜角度センサ189により検出された傾斜角度θが予め定められた所定角度θ1未満であるときには、車輪出しスイッチ297による車輪61を走行位置へ移動させるための操作に基づく車輪移動装置62の動作を許可する。つまり、アクチュエータ制御部244は、第2判定部242によりクローラ50が平坦路に接地していると判定された場合、車輪出しスイッチ297からの信号を有効とする。したがって、アクチュエータ制御部244は、クローラ50が平坦路に接地している場合であって、車輪出しスイッチ297がオン位置に切り換えられたときには、アクチュエータ169を伸長させる。
一方、アクチュエータ制御部244は、傾斜角度センサ189により検出された傾斜角度θが予め定められた所定角度θ1以上であるときには、車輪出しスイッチ297による車輪61を走行位置へ移動させるための操作に基づく車輪移動装置62の動作を禁止する。つまり、アクチュエータ制御部244は、第2判定部242によりクローラ50が傾斜路に接地していると判定された場合、車輪出しスイッチ297からの信号を無効とする。したがって、アクチュエータ制御部244は、クローラ50が傾斜路に接地している場合であって、車輪出しスイッチ297がオン位置に切り換えられたときには、アクチュエータ169を伸長させない。
このように、クローラ50が傾斜路に接地している場合には、車輪出しスイッチ297がオン位置に切り換えられたとしても、アクチュエータ169の停止状態が維持される。これにより、傾斜路において、誤って車輪出しスイッチ297がオン位置に操作されたとしても、車輪61がクローラ50の下方に突出するように移動することが防止される。
駆動源制御部243は、第1判定部241により昇降スイッチ193が押し込み操作されていると判定され、かつ、第2判定部242により車輪61が格納位置にあると判定された場合に、昇降モータ31を作動させる。駆動源制御部243は、第1判定部241により昇降スイッチ193が押し込み操作されていないと判定された場合、または、第2判定部242により車輪61が格納位置にないと判定された場合には、昇降モータ31を停止状態とする。
駆動源制御部243は、第1判定部241により、昇降方向選択スイッチ299が上昇位置に切り換えられていると判定された場合には、昇降モータ31を一方(上昇方向)に回転(正転)させる。駆動源制御部243は、第1判定部241により、昇降方向選択スイッチ299が下降位置に切り換えられていると判定された場合には、昇降モータ31を他方(下降方向)に回転(逆転)させる。駆動源制御部243は、第1判定部241により、昇降方向選択スイッチ299が中立位置に切り換えられていると判定された場合には、昇降モータ31を回転させない、すなわち停止状態を維持する。
図8及び図9を参照して、コントローラ240により実行されるプログラムによる処理について説明する。図8は、平坦路を走行した後、傾斜路の昇降を開始する際にコントローラ240により実行される処理の流れを示すフローチャートである。図9は、傾斜路を昇降した後、平坦路の走行を開始する際にコントローラ240により実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図8のフローチャートに示す処理は、電源スイッチ198が電源オン位置に切り換えられ、かつ、車輪61が走行位置にある状態のときに開始され、図示しない初期設定が行われた後、所定の制御周期で繰り返し実行される。なお、コントローラ240は、上記リミットスイッチ181,182及び傾斜角度センサ189からの情報を制御周期ごとに取得する。
図8に示すように、ステップS210において、コントローラ240は、昇降スイッチ293が押し込み操作されているか否かを判定する。ステップS210において、昇降スイッチ293が押し込み操作されていると判定された場合、ステップS220へ進む。ステップS210において、昇降スイッチ293が押し込み操作されていないと判定された場合、ステップS215へ進む。
ステップS215において、コントローラ240は、電動モータ160及び昇降モータ31を停止させ、ステップS210へ戻る。すなわち、コントローラ240は、昇降スイッチ293が押し込み操作されるまで、アクチュエータ169及びクローラ50を停止させた状態を維持する。なお、ステップS215では、電磁ブレーキ装置34を作動させる処理も行う。
ステップS220において、コントローラ240は、車輪61が格納位置にあるか否かを判定する。ステップS220において、車輪61が格納位置にないと判定された場合、すなわち第1リミットスイッチ181がオフ状態である場合、ステップS225へ進む。ステップS220において、車輪61が格納位置にあると判定された場合、すなわち第1リミットスイッチ181がオン状態である場合、ステップS230へ進む。
ステップS225において、コントローラ240は、電動モータ160を回転駆動させ、アクチュエータ169を収縮させ、ステップS210へ戻る。ステップS230において、コントローラ240は、電動モータ160を停止させる、すなわちアクチュエータ169を停止させる。ステップS230において、アクチュエータ169を停止させると、ステップS240へ進む。
ステップS240において、コントローラ240は、昇降方向選択スイッチ299が上昇位置、中立位置、下降位置のいずれに切り換えられているのかを判定する。ステップS240において、昇降方向選択スイッチ299が上昇位置に切り換えられていると判定された場合、ステップS250へ進む。ステップS240において、昇降方向選択スイッチ299が下降位置に切り換えられていると判定された場合、ステップS253へ進む。ステップS240において、昇降方向選択スイッチ299が中立位置に切り換えられていると判定された場合、ステップS256へ進む。
ステップS250において、コントローラ240は、昇降モータ31を一方に回転(正転)させ、クローラ50を上昇方向に駆動させる。ステップS253において、コントローラ240は、昇降モータ31を他方に回転(逆転)させ、クローラ50を下降方向に駆動させる。ステップS256において、コントローラ240は、昇降モータ31を停止させる、すなわちクローラ50を停止させる。なお、ステップS250及びステップS253では、電磁ブレーキ装置34のブレーキを解除する処理も行う。また、ステップS256では、電磁ブレーキ装置34を作動させる処理も行う。
図9のフローチャートに示す処理は、電源スイッチ198が電源オン位置に切り換えられ、かつ、車輪61が格納位置にある状態のときに開始され、図示しない初期設定が行われた後、所定の制御周期で繰り返し実行される。なお、コントローラ240は、上記リミットスイッチ181,182及び傾斜角度センサ189からの情報を制御周期ごとに取得する。
図9に示すように、ステップS260において、コントローラ240は、車輪出しスイッチ297がオン位置に切り換え操作されているか否かを判定する。ステップS260において、車輪出しスイッチ297がオン位置に切り換えられていると判定された場合には、ステップS263へ進む。ステップS260において、車輪出しスイッチ297がオフ位置に切り換えられていると判定された場合には、ステップS265へ進む。
ステップS263において、コントローラ240は、昇降台車100の傾斜角度θが所定角度θ1未満であるか否かを判定する。ステップS263において、昇降台車100の傾斜角度θが所定角度θ1未満であると判定された場合、ステップS270へ進む。ステップS263において、昇降台車100の傾斜角度θが所定角度θ1以上であると判定された場合、ステップS265へ進む。
ステップS265において、コントローラ240は、アクチュエータ169を停止させ、ステップS260へ戻る。すなわち、コントローラ240は、傾斜角度θが所定角度θ1以上のときには、アクチュエータ169の動作を禁止する。また、コントローラ240は、傾斜角度θが所定角度θ1未満のときには、車輪出しスイッチ297がオン位置に切り換えられるまで、アクチュエータ169を停止させた状態を維持する。
ステップS270において、コントローラ240は、車輪61が走行位置にあるか否かを判定する。ステップS270において、車輪61が走行位置にないと判定された場合、すなわち第2リミットスイッチ182がオフ状態である場合、ステップS275へ進む。ステップS270において、車輪61が走行位置にあると判定された場合、すなわち第2リミットスイッチ182がオン状態である場合、ステップS280へ進む。
ステップS275において、コントローラ240は、電動モータ160を回転駆動させ、アクチュエータ169を伸長させ、ステップS260へ戻る。ステップS280において、コントローラ240は、電動モータ160を停止させる、すなわちアクチュエータ169を停止させる。ステップS280において、アクチュエータ169の停止処理が完了すると、図9のフローチャートに示す処理を終了する。
本実施形態に係る昇降台車100の操作手順及び昇降台車100の動作について、階段を下降する場合を例に説明する。
昇降台車100の車輪61が走行位置にある状態(図3参照)では、車輪61が接地し、車輪61による走行が可能な状態とされている。運転者は、把持部21bを把持した状態で、昇降台車100を押すことにより、平坦路を走行する。運転者は、階段の手前で昇降台車100を停止させる。
運転者は、電源スイッチ198(図1、図7参照)を電源オン位置に切り換え、昇降方向選択スイッチ299(図1、図7参照)を下降位置に切り換える。次に、運転者は、把持部21bに設けられた昇降スイッチ293を押し込み操作する。昇降スイッチ293が押し込み操作されると、アクチュエータ169が収縮する(S210でY→S220でN→S225)。昇降スイッチ293の押し込み操作をし続けると、アクチュエータ169の収縮により車輪61が軸121eを中心に回動するのに伴ってクローラ50が下方に移動し、クローラ50が平坦路に接地する。その後、アクチュエータ169はさらに収縮し、車輪61が格納位置まで移動する、すなわち車輪61が格納部23に格納される(図4参照)。つまり、昇降スイッチ293を押し込み操作することにより、平坦路用走行部60が接地する平坦路走行姿勢(図3参照)から傾斜路用走行部70が接地する傾斜路走行姿勢(図4参照)へと昇降台車100の姿勢を移行させることができる。
そして、運転者が、昇降スイッチ293の押し込み操作をし続け、車輪61が格納位置まで移動すると、自動でアクチュエータ169が停止し、昇降モータ31(図1参照)が下降方向(前進方向)に回動し始める(S220でY→S230→S240→S253)。
つまり、本実施形態では、昇降台車100の平坦路走行姿勢から傾斜路走行姿勢への姿勢移行動作と、傾斜路用走行部70のクローラ50を駆動させて階段を下降する下降動作と、を単一の操作(昇降スイッチ293の押し込み操作)によって行うことができる。
階段を下り終えた後、運転者は、昇降スイッチ293に対する押し込み操作をやめる。これにより、昇降スイッチ293からのオン信号(作動指令)の出力が無くなるため、昇降モータ31が停止する(S210でN→S215)。
次に、運転者は、車輪出しスイッチ297をオン位置に切り換え操作する。昇降台車100が平坦路に接地している状態で、車輪出しスイッチ297がオン位置に切り換えられると、アクチュエータ169が伸長し(S260でY→S263でY→S270でN→S275)、車輪61が下方に移動する。車輪61が接地すると、昇降台車100が持ち上げられ、クローラ50が地面から離隔する。車輪61が走行位置まで移動すると、アクチュエータ169が停止し(S270でY→S280)、昇降台車100は平坦路走行姿勢(図3参照)となる。
なお、昇降台車100が傾斜路に接地している状態で、誤って車輪出しスイッチ297がオン位置に切り換えられたとしても、アクチュエータ169の伸長動作が禁止されるので(S263でN→S265)、傾斜路において車輪61が走行位置に向かって移動してしまう誤動作を防止することができる。このため、誤動作に起因して昇降台車100の重心位置が変化することにより昇降台車100が不安定な状態となることを防止することができる。
昇降台車100が平坦路走行姿勢になると、車輪61を支点として左右に旋回が可能な状態となる。このため、運転者は、左右の把持部21bに対する力を加減することにより、昇降台車100を直進させたり、旋回させたりすることができる。
このような第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果に加え、次の作用効果を奏する。
(2)コントローラ240は、車輪61が走行位置にある状態において、昇降スイッチ293が押し込み操作された場合には、アクチュエータ169を作動させて車輪61を格納位置に移動させ、その後、昇降モータ31を作動させる。したがって、運転者は、昇降スイッチ293の操作を行うことにより、車輪61を格納し、昇降モータ31を駆動させてクローラ50による傾斜路の昇降を開始することができる。このため、平坦路の走行後、階段等の傾斜路を昇降させるまでにかかる時間を短縮することができ、操作性を向上することができる。
(3)コントローラ240は、第1リミットスイッチ181での検出結果に基づいて車輪61が格納位置にあるか否かを判定し、車輪61が格納位置にあると判定された場合に、昇降モータ31を作動させるようにした。車輪61が格納位置にあることを第1リミットスイッチ181により検出してからクローラ50を駆動するので、車輪61がクローラ50の下方に突出した状態で、クローラ50が駆動することを防止することができる。この結果、階段を昇降する際に、車輪61が段差に引っ掛かることが無く、スムーズに階段を昇降することができる。
(4)コントローラ240は、第2リミットスイッチ182での検出結果に基づいて車輪61が走行位置にあるか否かを判定し、車輪61が走行位置にあると判定された場合に、アクチュエータ169を停止させるようにした。車輪61が走行位置にあることを第2リミットスイッチ182により検出してからアクチュエータ169を停止するので、車輪61がクローラ50の下方に突出していない状態で、平坦路を走行するために昇降台車100が運転者により押されることを防止することができる。
<第2実施形態の変形例>
上記第2実施形態では、昇降スイッチ193が押し込み操作された場合、位置検出部である第1リミットスイッチ181の検出結果に基づいて、アクチュエータ169及び昇降モータ31の動作を制御する構成とされていた。また、第2実施形態では、車輪出しスイッチ297がオン位置に切り換え操作された場合、位置検出部である第2リミットスイッチ182の検出結果に基づいて、アクチュエータ169の動作を制御する構成とされていた。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
例えば、コントローラ240は、昇降スイッチ193が押し込み操作されている間の時間が予め定められた所定時間に達した場合に、車輪61が走行位置から格納位置までの移動を完了し、車輪61が格納位置にあると判定してもよい。また、コントローラ240は、車輪出しスイッチ297がオン位置に切り換え操作されている間の時間が予め定めれた所定時間に達した場合に、車輪61が格納位置から走行位置までの移動を完了し、車輪61が走行位置にあると判定してもよい。
このような第2実施形態の変形例によれば、上記第2実施形態で説明した効果に加え、次の作用効果を奏する。
(5)車輪61が走行位置から格納位置へ向かって移動する時間に基づいて、昇降モータ31を作動させることができる。したがって、上記第2実施形態で説明した格納位置を検出するためのセンサ(第1リミットスイッチ181)等の部品を設ける必要がないため、部品点数を低減することができる。その結果、昇降台車100の低コスト化を図ることができる。
(6)車輪61が格納位置から走行位置へ向かって移動する時間に基づいて、アクチュエータ169を停止させることができる。したがって、上記第2実施形態で説明した走行位置を検出するためのセンサ(第2リミットスイッチ182)等の部品を設ける必要がないため、部品点数を低減することができる。その結果、昇降台車100の低コスト化を図ることができる。
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
<変形例1>
第1リミットスイッチ181及び当接部181a、並びに第2リミットスイッチ182及び当接部182aの設置位置は、上記実施形態に限定されない。例えば、図3及び図4に示す前側フレーム121aに第1リミットスイッチ181及び第2リミットスイッチ182を設け、シリンダ163aに第1リミットスイッチ181に当接可能な当接部181a及び第2リミットスイッチ182に当接可能な当接部182aを設けてもよい。つまり、上記実施形態では、回動機構168の位置(角度)に基づいて車輪61の格納位置と走行位置とを検出したが、本変形例では、アクチュエータ169のシリンダ163aの位置に基づいて車輪61の格納位置と走行位置とを検出する。
<変形例2>
車輪61の位置を検出する位置検出部としてリミットスイッチ181,182を設ける場合に限定されることもない。回動機構168の回動角度を検出するポテンショメータを設け、ポテンショメータにより検出された回動機構168の回動角度に基づいて、車輪61の位置を検出してもよい。すなわち、コントローラ140は、ポテンショメータで検出された回動機構168の回動角度に基づいて、車輪61が格納位置にあるのか、走行位置にあるのかを判定してもよい。また、アクチュエータ169のロッド161のストロークを検出するストロークセンサを設け、アクチュエータ169のロッド161のストロークに基づいて車輪61の位置を検出してもよい。すなわち、コントローラ140は、アクチュエータ169のロッド161のストロークに基づいて、車輪61が格納位置にあるのか、走行位置にあるのかを判定してもよい。
<変形例3>
上記実施形態では、車輪61が図3に示す走行位置から、図4に示す格納位置への移動が完了してから、昇降モータ31を駆動する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。車輪61が図3に示す走行位置から、車輪61の最下部がクローラ50の下面よりも上側に位置した時点で昇降モータ31を駆動してもよい。この場合、車輪61の最下部がクローラ50の下面よりも上側に位置してから、格納位置まで移動する間、昇降モータ31とアクチュエータ169とをともに駆動させることが可能となる。これにより、平坦路の走行後、階段等の傾斜路を昇降させるまでにかかる時間を、より短縮することができる。
本変形例3では、例えば、回動機構168の回動角度を検出するポテンショメータを設ける。コントローラ140は、ポテンショメータの検出結果に基づき、車輪61が走行位置から格納位置に向かって移動する際、車輪61の最下部がクローラ50の下面よりも上側に位置したことを判定し、昇降モータ41の駆動を許可する。さらに、コントローラ140は、ポテンショメータでの検出結果に基づき、車輪61が格納位置に位置したことを判定し、アクチュエータ169を停止する。
<変形例4>
上記実施形態では、回動機構168を介して、アクチュエータ169と車輪61とを連結する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。アクチュエータ169の下端部に直接、車輪61を取り付けてもよい。
<変形例5>
上記実施形態では、アクチュエータ169が電動モータ160によってロッド161を伸長させる電動シリンダである例について説明したが、本発明はこれに限定されない。油圧シリンダ等のアクチュエータによって、車輪61の出し入れを行ってもよい。
<変形例6>
上記実施形態では、昇降台車100が昇降する傾斜路が階段である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。傾斜路には、段差の無い坂道が含まれる。つまり、段差の無い坂道を昇降する昇降台車100に本発明を適用してもよい。
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、および効果をまとめて説明する。
昇降台車100は、荷物が載置される荷台部10と、荷台部10を支持する本体部20と、本体部20に取り付けられ、傾斜路を走行するために使用される一対のクローラ50と、クローラ50を駆動する駆動源(昇降モータ31)と、本体部20に取り付けられ、平坦路を走行するために使用される車輪61と、本体部20に設けられ車輪61を格納する格納部23と、本体部20に取り付けられ、車輪61を格納部23に格納する格納位置と、車輪61によって走行が可能な走行位置との間で車輪61を移動させる車輪移動装置62と、車輪移動装置62により車輪61を格納位置から走行位置へ移動させるために操作される車輪移動操作部(昇降方向選択スイッチ199、車輪出しスイッチ297)と、昇降台車100の傾斜角度θを検出する傾斜角度検出部(傾斜角度センサ189)と、車輪移動装置62を制御する制御部(コントローラ140,240)と、を備え、制御部(コントローラ140,240)は、傾斜角度検出部(傾斜角度センサ189)により検出された傾斜角度θが予め定められた所定角度θ1未満であるときには、車輪移動操作部(昇降方向選択スイッチ199、車輪出しスイッチ297)の操作に基づく車輪移動装置62の動作を許可し、傾斜角度検出部(傾斜角度センサ189)により検出された傾斜角度θが所定角度θ1以上であるときには、車輪移動操作部(昇降方向選択スイッチ199、車輪出しスイッチ297)の操作に基づく車輪移動装置62の動作を禁止する。
この構成では、昇降台車100が所定角度θ1以上の傾斜路に位置しているときに、平坦路用走行部60の車輪61を格納位置から走行位置へ移動させるための操作が誤ってなされてしまった場合に、車輪61を走行位置に移動させるための車輪移動装置62の動作が禁止されるので、傾斜路において車輪61が走行位置に向かって移動してしまう誤動作を防止することができる。このため、誤動作に起因して昇降台車100が不安定な状態となることを防止することができ、安定性の高い昇降台車100を提供することができる。
昇降台車100は、駆動源(昇降モータ31)を駆動するために操作される駆動源操作部(昇降スイッチ193)と、車輪61が格納位置にあるか否かを検出する位置検出部(第1リミットスイッチ181)と、をさらに備え、車輪移動操作部(昇降方向選択スイッチ199)が、車輪61を走行位置に移動させるための走行操作位置と、車輪61を格納位置に移動させるとともにクローラ50を上昇方向に回転させるための格納上昇位置と、車輪61を格納位置に移動させるとともにクローラ50を下降方向に回転させるための格納下降位置と、を有し、制御部(コントローラ140)が、車輪移動操作部(昇降方向選択スイッチ199)が格納上昇位置または格納下降位置に選択されている場合であって、車輪61が格納位置にないときには、車輪61が格納位置に位置するまで車輪移動装置62を作動させる車輪移動制御部(アクチュエータ制御部144)と、車輪移動操作部(昇降方向選択スイッチ199)が格納上昇位置または格納下降位置に選択されている場合であって、車輪61が格納位置にあるときに、駆動源操作部(昇降スイッチ193)により駆動源(昇降モータ31)を駆動するための操作がなされると、クローラ50が車輪移動操作部(昇降方向選択スイッチ199)の操作位置に応じた昇降方向に回転するように駆動源(昇降モータ31)を制御する駆動源制御部143と、を有し、車輪移動制御部(アクチュエータ制御部144)が、車輪移動操作部(昇降方向選択スイッチ199)が走行操作位置に操作され、かつ、傾斜角度θが所定角度θ1未満の場合、車輪61を走行位置に移動させ、車輪移動操作部(昇降方向選択スイッチ199)が走行操作位置に操作され、かつ、傾斜角度θが所定角度θ1以上の場合、車輪移動装置62を動作させない。
この構成では、車輪移動操作部(昇降方向選択スイッチ199)が、車輪移動装置62により車輪61を格納位置から走行位置へと移動させる操作部としての機能に加え、クローラ50の昇降方向を選択する操作部としての機能を備えているため、それぞれの操作部を個別に設ける場合に比べて、部品点数を低減することができ、コストの低減を図ることができる。
昇降台車100は、車輪移動装置62が、電動モータ160と、電動モータ160によって駆動するロッド161と、電動モータ160の回転運動をロッド161の直線運動に変換する運動変換機構162と、運動変換機構162を収容する収容ケース163と、を有し、車輪移動装置62が、収容ケース163から突出するロッド161の先端部が、本体部20に連結され、収容ケース163が車輪61に連結される。
この構成では、収容ケース163が本体部20に取り付けられ、ロッド161の先端部が車輪61に取り付けられる場合に比べて、平坦路用走行部60の重心を地面に近い位置に設定できるので、昇降台車100の安定性を向上することができる。
昇降台車100は、車輪移動装置62が、本体部20に回動自在に取り付けられる回動機構168を有し、収容ケース163が、回動機構168を介して車輪61に連結される。
この構成では、収容ケース163が回動機構168を介して車輪61に連結されている。このため、車輪移動装置62を駆動させて車輪61を格納する際、回動機構168を介さずに車輪61を直接引き上げる場合に比べて、駆動力を小さく抑えることができる。その結果、車輪移動装置62の小型化を図ることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。