以下、ヘリコプター移動装置に係る一実施形態について図面を参照して説明する。
図1、図2に示すように、ヘリコプター移動装置11は、ヘリコプター100のクロスチューブ101を台車12に設けられた複数(例えば4つ)のジャッキ13,14で持ち上げ、車輪15,16を回転させて走行することで、ヘリコプター100を移動させる装置である。ヘリコプター移動装置11が移動対象とするヘリコプター100は、橇型の降着装置102(図2参照)を有するタイプである。降着装置102は、ヘリコプター100の機体103の下部から左右2本ずつ下方へ湾曲して延びるクロスチューブ101と、左右2本ずつのクロスチューブ101の下端部に固定された橇状のスキッド104(図2参照)とを備えている。
図1に示すように、機体103の底部には、機器(例えばカメラ、スピーカー、アンテナ及び照明器等)及びフック等の突出物105が装着されている。ヘリコプター100を移動させる場合、ヘリコプター移動装置11をヘリコプター100の機体103の下側へ移動させた後、ジャッキ13,14でクロスチューブ101を支持してヘリコプター100を持ち上げる。そして、ヘリコプター100を持ち上げたヘリコプター移動装置11を、作業者が例えばロッド状のハンドル17の先端部のグリップ部17Aを握った手で操作部29を操作して走行させるとともにハンドル17を左右いずれかの方向へ押して進行方向を誘導することにより、ヘリコプター100を目標位置まで移動させる。なお、本実施形態では、ヘリコプター移動装置11の前後方向をX、左右方向(幅方向)をYとする。
図1、図2に示すように、ヘリコプター移動装置11は、複数の可倒式のジャッキ13,14が設けられた台車12を備えている。詳しくは、台車12は、四角枠状の本体フレーム18と、本体フレーム18の前側に連結されるとともに左右両側に車輪15(前輪)を有する操舵ユニット19と、本体フレーム18の後部左右両側に設けられた左右の車輪16(後輪)とを備えている。4つのジャッキ13,14は、本体フレーム18の四隅の外側に設けられ、本体フレーム18の前側寄りに配置された左右一対の前側のジャッキ13と後側寄りに配置された左右一対の後側のジャッキ14とからなる。なお、ジャッキ13,14は、一例として作動油の給排により駆動される油圧ジャッキである。
図2に示すように、左右両側に車輪15を有する操舵ユニット19は、本体フレーム18に対して左右に所定角度範囲内で回動可能な状態で連結されている。また、本体フレーム18の後端部に固定された車軸20の左右両側には、前後一対の車輪16を支持する左右一対のビーム21が揺動可能に支持されている。本体フレーム18の内側には、制御部22(制御ユニット)と、複数のバッテリー23と、複数のジャッキ13,14に作動油を供給する油圧ユニット24とが搭載されている。なお、以下の説明において、ジャッキ13,14を前後で区別する必要がある場合、前側のものを前側ジャッキ13と呼び、後側のものを後側ジャッキ14と呼ぶものとする。
図3に示すように、操舵ユニット19は、本体フレーム18の前側ほど幅が狭くなる山形の前部の先端部に対して前後方向Xに延びる連結軸19Aを介して連結軸19Aを中心に揺動可能な状態で連結されている。操舵ユニット19は、横長のフレーム部25と、フレーム部25の左右両側に設けられた左右の車輪15(前輪)と、左右の車輪15をそれぞれ個別に駆動させる2つの駆動源の一例としてのモーター26,27と、モーター26,27と左右の車輪15との間に介在するクラッチ機能付きの動力伝達機構28とを備える。操舵ユニット19は、フレーム部25の長手方向中央部に垂直に配置された操舵軸19Bを中心に回動可能に設けられている。また、操舵ユニット19の前面中央部には、前側が少し上方へ湾曲して延びるロッド状のハンドル17の基端部が連結されている。
操舵ユニット19から延びたロッド状のハンドル17の先端部に設けられた操作部29は、不図示の電源スイッチ及び走行スイッチ30(図11参照)を備え、作業者は走行スイッチ30を前後に操作して、ヘリコプター移動装置11に前進と後進を指示する。
図3に示すように、操舵ユニット19におけるハンドル17の基部の連結箇所の近傍位置には左右一対の操舵センサー31R,31Lが設けられている。操舵センサー31R,31Lは、ハンドル17が左右いずれかの方向に操作されたときの変化(例えば歪み又は変位)を検知するセンサーであり、右操作を検知する右操舵センサー31Rと、左操作を検知する左操舵センサー31Lとの2つ設けられている。ハンドル17が中立位置にあるとき操舵センサー31R,31Lは共にオフし、ハンドル17の右操作によって右操舵センサー31Rがオンし、ハンドル17の左操作によって左操舵センサー31Lがオンする。操舵センサー31R,31Lは、例えば歪みを検知する方式の場合、ハンドル17の基端部に設けられた不図示の弾性部が一方向に捻れたときの歪みを検知する。但し、操舵センサー31R,31Lは、ハンドル17の操作方向を検知できれば、その検出方式は適宜変更できる。例えばハンドル17を操舵ユニット19に対して所定の角度範囲で揺動可能に連結し、ハンドル17を右操作したときの操舵ユニット19に対する右側への角度変化を検知して右操舵センサーがオンし、ハンドル17を左操作したときの操舵ユニット19に対する左側への角度変化を検知して左操舵センサーがオンする構成でもよい。また、ハンドル17の操作が行われたときにその基部の捻れの変位を検知する圧電素子を、操舵センサー31R,31Lとして用いることもできる。
図3に示すように、本体フレーム18における山形の前部の2つの斜面には、左右一対の操舵限界センサー32R,32Lが設けられている。操舵ユニット19が本体フレーム18に対して二点鎖線で示す右側の操舵限界位置に達したときに右側の操舵限界センサー32Rがオンし、操舵ユニット19が本体フレーム18に対して二点鎖線で示す右側の操舵限界位置に達したときに左側の操舵限界センサー32Lがオンする。
図4に示すように、左右一対ずつのジャッキ13,14の幅方向Yの間隔は前後で同じであり、前後一対ずつのジャッキ13,14の前後方向Xの間隔は左右で同じになっている。左右一対ずつのジャッキ13,14の幅方向Yの間隔は、ヘリコプター100の左右一対のクロスチューブ101の根元部分の間隔にほぼ等しい。また、前後一対ずつのジャッキ13,14の前後方向Xの間隔は、前後一対のクロスチューブ101の根元部分の間隔にほぼ等しくなっている。
図4に示すように、本体フレーム18には、4つのジャッキ13,14の傾倒と起立の各動作を連動させる連動機構33が設けられている。連動機構33は、本体フレーム18にその幅方向Yに貫通する状態で軸支された前後二本の回動軸34と、前後二本の回動軸34を連動して回動可能な状態に連結するロッド部材35とを備えている。そして、左右一対ずつのジャッキ13,14は、前後二本の回動軸34の両端部にそれぞれ支持部材36を介して支持されている。なお、連動機構33の詳細は後述する。
また、図4に示すように、本体フレーム18には、複数のジャッキ13,14を油圧駆動させる油圧回路50が設けられている。油圧回路50は、油圧ユニット24を構成するタンク51及び電動ポンプ52と、電動ポンプ52と複数のジャッキ13,14とを接続する配管からなる油路53とを備えている。4つのジャッキ13,14は油路53を介して並列に接続されている。電動ポンプ52は、タンク51からの作動油を、油路53を通じて4つのジャッキ13,14に供給する。
また、図4に示すように、本体フレーム18の前側寄りの位置には、複数のジャッキ13,14に対する作動油の供給/排出のために操作される左右一対の油圧操作部54が設けられている。油圧操作部54はスイッチ55を有し、複数のジャッキ13,14を起立姿勢とした状態でスイッチ55が操作されると、制御部22が電動ポンプ52を駆動させて複数のジャッキ13,14を伸長駆動させる。また、油圧操作部54が作業者によって手動で回動操作されると、操作力伝達機構56を介して弁57が開弁し、伸長状態のジャッキ13,14から油路53を通じて作動油が不図示の絞りを介してタンク51へ排出されることにより、ジャッキ13,14はゆっくり収縮する。
図5に示す4つ(但し、同図では2つのみ図示)の可倒式のジャッキ13,14は、図5(a)に示す傾倒姿勢と、図5(b)に示す起立姿勢との間を約90度の角度範囲で回動可能となっている。前後一対ずつのジャッキ13,14は、互いの先端部に設けられた受け部13A,14Aが前後方向Xに向き合う状態で傾倒し(図5(a)参照)、この傾倒姿勢から起立姿勢に起き上がるときは互いの受け部13A,14Aが前後方向Xに離れる方向に回動する。反対に、前後一対ずつのジャッキ13,14は、起立姿勢から傾倒姿勢に倒れるときに互いの受け部13A,14Aが近づく方向に回動する。
図5(a),(b)に示すように、連動機構33は、オーバーセンターリンケージ機構37を備える。オーバーセンターリンケージ機構37は、起立姿勢にあるときのジャッキ13,14を回動軸34に対して前後方向Xにオフセット距離Losだけ外れたオフセット位置に配置する。詳しくは、起立姿勢にあるジャッキ13,14は、それぞれの回動軸34に対して前後方向Xに互いに離れる方向(外側)に外れた位置に配置されている。
オーバーセンターリンケージ機構37によって、ジャッキ13,14は傾倒姿勢にあるとき支持部材36により支持された支持位置が回動軸34の真上に位置する最上昇位置にあり、起立姿勢にあるときに支持位置が最上昇位置よりも低い位置にある。このため、クロスチューブ101を受け部13A,14Aで支持する起立姿勢のジャッキ13,14が傾倒側へ回動する方向が支持位置を持ち上げる方向になるので、起立姿勢のジャッキ13,14の傾倒側への回動が抑制される。
また、図5(a),(b)に示すように、4つのジャッキ13,14の回動動作を連動させる連動機構33は、前後二本の回動軸34と、各回動軸34から径方向に延びるリンク部材38と、前後のリンク部材38の先端部に回動可能に両端部が連結されたロッド部材35とを有している。連動機構33により、前後一対の回動軸34は、互いに逆方向に回動するように連動する。4つのジャッキ13,14のうち1つのジャッキを傾倒姿勢から起立姿勢に手動で起こすと、連動機構33を介して他の3つのジャッキ13,14も連動して傾倒姿勢から起立姿勢まで起き上がる。反対に、起立姿勢にある4つのジャッキ13,14のうち1つのジャッキを起立姿勢から傾倒姿勢に手動で倒すと、連動機構33を介して他の3つのジャッキ13,14も連動して起立姿勢から傾倒姿勢に倒れる。
図5〜図7に示すように、ジャッキ13,14は、回動軸34に対して支持部材36を介して固定されたシリンダー41と、シリンダー41から突出するピストンロッド42と、ピストンロッド42の先端部に固定された受け部13A,14Aとを備えている。シリンダー41の先端寄り部分とピストンロッド42の先端寄り部分との間には、シリンダー41に対するピストンロッド42の軸回転を規制する屈曲式の連結機構43が連結されている。
図6、図7に示すように、回動軸34には略半月形状の規制板39が固定されている。また、本体フレーム18の側面には規制板39が回動したときに係合可能な位置に軸状のストッパ40が配置されている。ジャッキ13,14の回動に伴って回動軸34と共に規制板39が一緒に回動し、規制板39の第1端部39Aがストッパ40に当たることで、ジャッキ13,14は傾倒姿勢に位置決めされる(図6)。また、ジャッキ13,14の回動に伴って回動軸34と共に規制板39が一緒に回動し、規制板39の第2端部39Bがストッパ40に当たることで、ジャッキ13,14は起立姿勢に位置決めされる(図7)。
図8に示すように、ジャッキ13,14は、単動シリンダーにより構成される。ジャッキ13,14は、有底筒状のシリンダー41と、シリンダー41の開口端部に螺着された円孔46Aを有する蓋部46と、シリンダー41内に収容されたピストン44から延びて円孔46Aを通って一部が外側に突出するピストンロッド42とを備える。ピストンロッド42は、シリンダー41に対して収縮方向へばね45により付勢されている。シリンダー41の側部下端には油路53が接続されている。
図8に示すシリンダー41における蓋部46の円孔46Aは、ピストンロッド42の直径(外径)よりも長い直径(内径)を有しており、ピストン44が上昇するときに円孔46Aとピストンロッド42との隙間から空気が押し出される。シリンダー41内において油路53と連通する油室41Aに対してピストン44を挟んだ反対側の空間41Bには、金属製の円筒47が収容されている。シリンダー41内への作動油の供給により上昇したピストン44が押し上げた円筒47が蓋部46に当たると、ピストンロッド42が最上昇位置に到達する。このため、ジャッキ13,14が最も伸長した状態におけるシリンダー41とピストンロッド42とのシリンダー軸線方向の重複量が円筒47の高さ分だけ相対的により長く確保される。よって、クロスチューブ101を受け部13A,14Aで支持する4つのジャッキ13,14を伸長させることで持ち上げたヘリコプター100を安定に支持することが可能となる。
次に図11を参照してヘリコプター移動装置11の電気的構成および油圧回路の詳細を説明する。
図11に示すように、ヘリコプター移動装置11は電気的な制御を司る前述の制御部22を備える。制御部22には、入力系として、走行スイッチ30、左右の操舵センサー31R,31L、左右の操舵限界センサー32R,32L及びスイッチ55が電気的に接続されている。また、制御部22には、出力系として、左右のモーター26,27および電動ポンプ52が電気的に接続されている。また、制御部22はバッテリー23と電気的に接続され、バッテリー23からの電力をモーター26,27および電動ポンプ52に供給する。制御部22は、左右の車輪15を駆動させる2つのモーター26,27を個別に制御する2つの駆動制御回路61,62を内蔵する。
図11に示すように、ヘリコプター移動装置11は、4つのジャッキ13,14を油圧制御する前述の油圧回路50を備える。制御部22は、スイッチ55が操作された操作信号を入力すると、電動ポンプ52を駆動させる。4つのジャッキ13,14は油路53に対して互いに並列に接続されているため、電動ポンプ52から4つのジャッキ13,14に同じ油圧の作動油が供給される。
次に入力系の電気的構成について詳細に説明する。
図11に示す走行スイッチ30は、中立位置と前進位置と後進位置とに操作可能な操作レバー30A(図12に示す)を有する。図12に示すように、走行スイッチ30の操作レバー30Aは、例えばトルグ式で中立位置に復帰するよう不図示のばねで付勢され、中立位置から前方に押した(手前に引いた)前進位置と、中立位置から後方へ押した後進位置とに操作される。走行スイッチ30は、前進信号と後進信号とを2つの信号線に出力可能に構成されている。操作レバー30Aが前進位置にあるとき、前進信号はオンし後進信号はオフし、操作レバー30Aが後進位置にあるとき、前進信号はオフし後進信号はオンする。
また、ハンドル17を右操作すると、右操舵センサー31Rがオンし、左操舵センサー31Lがオフする。また、ハンドル17を左操作すると、右操舵センサー31Rがオフし、左操舵センサー31Lがオンする。作業者がヘリコプター移動装置11に対して走行を指示する操作は、走行スイッチ30の前進/後進の操作及びハンドル17を右操作/左操作により行われる。これゆえ本実施形態では、走行スイッチ30及び操舵センサー31R,31Lにより、作業者の走行を指示する操作に応じて指示信号を出力する指示部60が構成される。この場合、走行スイッチ30及び操舵センサー31R,31Lが出力する検出信号が指示信号の一例に相当する。
操舵限界センサー32R,32Lは、操舵ユニット19が本体フレーム18に対して左右の操舵限界位置に達したことを検知する。すなわち、右側の操舵限界センサー32Rは、操舵ユニット19が右操舵限界位置に達するとオンし、左側の操舵限界センサー32Lは、操舵ユニット19が左操舵時に左操舵限界位置に達するとオンする。
図11に示す制御部22は、左右のモーター26,27の駆動状態(停止/回転)を把握し、台車12が停止中である停止モードか走行中である走行モードかを判定する。制御部22は、停止モードであるとき、右操舵センサー31Rがハンドル17の右操作を検知し右操舵の指示を受け付けると、右側(右車輪用)のモーター26を逆転させるとともに左側(左車輪用)のモーター27を正転させる。また、制御部22は、停止モードであるとき、左操舵センサー31Lがハンドル17の左操作を検知し左操舵の指示を受け付けると、右側のモーター26を正転させるとともに左側のモーター27を逆転させる。
図11に示す制御部22は、走行モードにあるとき、操舵センサー31R,31Lから操舵の指示を受け付けると、左右のモーター26,27をそのときの回転方向で駆動速度の差を作ることにより走行中の操舵を行う。その後、制御部22は、走行モードにおいて、操舵センサー31R,31Lから操舵の指示を受け付けなくなると、それまで減速又は増速させていた一方のモーターの駆動速度を他方のモーターの駆動速度に合わせて駆動速度差を無くすことにより、台車12の操舵を停止させる。上記のモーター26,27の制御は、2つの駆動制御回路61,62によって個別に行われる。
次に図12を参照して、2つの駆動制御回路61,62の詳細を説明する。なお、図12は、右側のモーター26を駆動制御する右モーター用の駆動制御回路61を示す。左側のモーター27を駆動制御する左モーター用の駆動制御回路62も、左右の操舵センサー31R,31Lから入力される検知信号に基づき制御されるモーターの回転方向が反対になっている点を除き、図12の回路構成と基本的に同じである。このため、以下では、図12を参照して右モーター用の駆動制御回路61について説明し、左モーター用の駆動制御回路62の詳細な説明は省略する。
図12に示す駆動制御回路61は、制御回路70と、信号調整回路63と、切換回路64とを備える。制御回路70は、信号調整回路63からの2つの検知信号を入力する入力端子F,Rと、信号調整回路63から操作信号Ssを入力する操作信号端子Sと、左右の操舵限界センサー32R,32Lから検出信号を入力するリセット端子Rsとを有する。信号調整回路63は、走行スイッチ30からの前進信号と後進信号、及び左右の操舵センサー31R,31Lからの検知信号(オン/オフ信号)を入力し、入力した各信号に基づき2つの検知信号と操作信号Ssとを出力する。
制御回路70は、入力端子F,R、操作信号端子S及びリセット端子Rsからの入力に基づき、モーター26へ供給する電流の向き及び電流値を制御して、モーター26の回転方向及び回転速度を制御する。
また、切換回路64は、モーター26に供給する電流の向きを切り換えてモーター26の正転/逆転を切り換える4つのパワー素子65〜68を備える。4つのパワー素子65〜68は、例えばリレー又はパワートランジスターからなる。制御回路70は、4つのパワー素子65〜68のうちオンさせる1組を選択する選択信号を出力する2つの出力端子Fr,Rrを有する。出力端子Frは2つのパワー素子65,66に接続され、出力端子Rrは残り2つのパワー素子67,68に接続されている。選択信号は、2つの出力端子Fr,Rrのうち一方の出力がオン信号のとき、他方の出力がオフ信号となる。
制御回路70は、バッテリー23の電源電圧Vb(例えば24V)が入力される電源端子Vsと、グランド端子GNDとを備える。電源端子Vsに接続された電力供給線81(高電位側配線)は出力端子M1を介して高電位側の2つのパワー素子66,67に接続されている。
グランド端子GNDに接続された電力供給線82(低電位側配線)は出力端子M2を介して低電位側の2つのパワー素子65,68に接続されている。電力供給線82上には速度制御回路71が設けられている。また、二本の電力供給線81,82の間には、モーター26の印加電圧を検出する電圧検出部72が介在している。
また、図12に示すように、制御回路70は、上述の速度制御回路71及び電圧検出部72の他、インターロック回路73、ホールド回路74、積分回路75、調整回路76及びモード判定部77を備えている。
インターロック回路73とホールド回路74とは、入力端子F,Rと、出力端子M1,M2との間を接続する2本の信号線LF,LR上に直列に接続されている。インターロック回路73は入力端子F,Rへの一方の入力が先にオンすると、その先にオンした一方の入力端子と異なる他方の入力端子へのオンの入力を遮断する機能を有する。ホールド回路74は、出力端子Fr,Rrのうち、入力端子F,Rの入力のうち先にオンになった一方と対応する出力端子の出力をオン状態に保持する機能を有する。ホールド回路74は、出力端子Fr,Rrのうち一方の出力をオン状態に保持した後、モーター26の印加電圧を検出する電圧検出部72の検出電圧が0(零)Vになった旨の信号(リセット信号)を入力すると、オン保持状態(ホールド状態)を解除する。
積分回路75は、2本の信号線L1,L2から操作信号Ssとリセット信号Srとの入力が可能となっており、2本の信号線L1,L2からの入力結果に応じた出力値Iを速度制御回路71に出力する。積分回路75は、入力する操作信号Ssがオンのとき、そのオンの連続時間が長いほど最大出力値Imaxに達するまでの期間で徐々に高くなる図9に示す出力値Iを出力する。また、操作信号Ssがオンからオフに切り換わると、図9に示すように、そのオフの連続時間が長いほど出力値Iが零に達するまで徐々に低下する出力値Iを出力する。なお、積分回路75は、出力値Iが最大出力値Imaxに達したときはオンの連続時間継続中は図9に破線で示すように最大出力値Imaxを維持し、操作信号Ssがオンからオフに切り換わると、図9に破線で示すように最大出力値Imaxから零に達するまでオフの連続時間に応じて徐々に低くなる出力値Iを出力する。
速度制御回路71は、積分回路75からの出力値Iに応じてモーター26に供給する電力を制御し、モーター26を速度制御する。速度制御回路71は、例えばPWM制御回路を備え、積分回路75から入力した出力値Iに応じたデューティー比のパルス電圧を出力し、モーター26の駆動速度を制御する。
図12に示すように、調整回路76は、ホールド回路74が出力端子Fr,Rrの一方の出力をオン状態に保持した状態の下で、そのオン状態の出力端子と対応する入力端子と反対側の入力端子の入力がオンになると、積分回路75の信号線L2にリセット信号(オン信号)を出力し、それ以外のときはリセット信号を出力しない。
図12に示すように、モード判定部77は、ヘリコプター移動装置11が停止モードにあるか走行モードにあるかを判定する。モード判定部77は、走行スイッチ30と操舵センサー31R,31Lとのうち先にオンしたのが操舵センサー31R,31Lの一方であれば停止モードと判定し、先にオンしたのが走行スイッチ30であれば走行モードと判定する。また、モード判定部77は、走行モードのとき、加速中の走行モードであるか減速中の走行モードであるかを判定する。モード判定部77の判定結果は信号調整回路63に出力される。
なお、駆動制御回路61,62は、制御部22の一部の制御を担う回路であり、本実施形態では、ハードウェアで構成したが、制御部22が備えるコンピューターがプログラムを実行することにより走行及び操舵を制御するソフトウェアにより構成してもよい。
次にヘリコプター移動装置の作用を説明する。
ヘリコプター100を移動させる場合、作業者は、ハンドル17を操作してヘリコプター移動装置11を後進させ、ヘリコプター100の下側へ前方から挿入する(図1参照)。このとき、4つのジャッキ13,14は傾倒姿勢にあるため、ヘリコプター移動装置11をヘリコプター100の機体103の下側の所定位置に移動するときに突出物105に当たる心配がない。
ヘリコプター移動装置11を所定位置に移動し終えると、作業者は手動操作で4つのジャッキ13,14のうち1つを傾倒姿勢から起立姿勢へ引き起こす。すると、連動機構33を介して他の3つのジャッキ13,14も連動して起立姿勢に起き上がる。このとき、前後のジャッキ13,14は、互いの先端部の受け部13A,14Aが前後方向Xに対峙する傾倒姿勢の状態から互いに離れる方向へ回動して起立姿勢となる。そして、作業者はハンドル17を操作して4つのジャッキ13,14の受け部13A,14Aがヘリコプター100のクロスチューブ101の基部の真下に位置するようにヘリコプター移動装置11を位置調整する。
次に作業者はスイッチ55を操作する。制御部22はスイッチ55の操作信号を入力すると、電動ポンプ52を駆動する。この結果、電動ポンプ52から油路53を通じて作動油が4つのジャッキ13,14に供給され、4つのジャッキは図5(b)及び図7に実線で示す収縮状態から伸長して同図に二点鎖線で示す伸長状態になる。図1に示すように、ヘリコプター100の重心Gは、前後のクロスチューブ101のうち後側のクロスチューブ101寄りに位置する。4つのジャッキ13,14は油路53に対して並列に接続されているので、4つのうち相対的に負荷の小さい前側ジャッキ13に優先的に作動油が流れ込み、前側ジャッキ13がまず伸長する。2本の前側ジャッキ13が伸長し切った後、後側ジャッキ14に作動油が流れ込み、後側ジャッキ14が前側ジャッキ13に遅れて伸長する。つまり、ヘリコプター100ははじめに前側ジャッキ13が伸長することにより前側が押し上げられて浮き上がり、このときヘリコプター100の後方へかかる荷重は、ヘリコプター移動装置11の後側の8つの車輪16によって受け止められる。その後、ヘリコプター100は後側ジャッキ14が伸長することにより後側のクロスチューブ101が押し上げられて後側が浮き上がり、ヘリコプター100はヘリコプター移動装置11によりほぼ水平姿勢に持ち上げられる。このとき、ヘリコプター100は前後で持ち上げられるタイミングに差があるものの、左右においては荷重のばらつきがさほどないので左右の前側ジャッキ13同じタイミングで同じ長さだけ伸長し、左右の後側ジャッキ14は同じタイミングで同じ長さだけ伸長する。この結果、ヘリコプター100は左右に揺れることなく持ち上げられる。
また、4つのジャッキ13,14はオーバーセンターリンケージ機構37により、その支持位置が最上昇位置(回動軸34の真上)よりも下降した位置で規制板39がストッパ40に当たり起立姿勢に保持される。このため、ヘリコプター100の荷重を受けている起立姿勢の状態下では4つのジャッキ13,14は、オーバーセンターリンケージ機構37により傾倒側への回動が抑制される。つまり、ヘリコプター100を支える起立姿勢のジャッキ13,14が、仮に前後方向Xの荷重が原因で傾倒側へ回動しようとしても、ヘリコプター100の荷重(重力)に逆らってオーバーセンターリンケージ機構37の最上昇位置に向かって上昇する必要があるため、ヘリコプター100を支持するジャッキ13,14の傾倒側への回動が規制される。
また、ヘリコプター100からの前後方向Xの外力によって仮にジャッキ13,14がオーバーセンターリンケージ機構37の最上昇位置に向かって重力に逆らって上昇し傾倒側へ回動しようとしたとき、連動機構33を介して連動する前後のジャッキ13,14はそれぞれの受け部13A,14Aは前後方向Xに接近する方向に傾倒しようとする。しかし、このとき前後のジャッキ13,14は、受け部13A,14Aに保持する二本のクロスチューブ101によりそれ以上接近する方向への傾動が規制される。このため、ヘリコプター100を支持する前後のジャッキ13,14に前後方向の外力(荷重)がかかっても、ジャッキ13,14の傾倒が抑えられる。このため、ヘリコプター移動装置11にジャッキ13,14を起立姿勢にロックするロック機構を設ける必要がない。
ここで、ジャッキ13,14が起立姿勢で伸長した状態では、シリンダー41内の空間41Bに収容された円筒47(図8参照)により、シリンダー41とピストンロッド42との高さ方向(軸線方向)の重複量が相対的に多くなる。このため、ピストン44がシリンダー41の蓋部46に当たるまで上昇可能な構成のジャッキを使用する場合に比べ、ピストンロッド42のシリンダー41に対するがたつきが相対的に抑制される。この結果、4つのジャッキ13,14は受け部13A,14Aでクロスチューブ101を受けて持ち上げたヘリコプター100を安定に保持することができる。
そして、ヘリコプター100が4つのジャッキ13,14により持ち上げられると、作業者は、ハンドル17のグリップ部17Aを握り操作部29の走行スイッチ30を操作することによりヘリコプター移動装置11の走行と操舵を制御しつつヘリコプター100を目的位置まで移動させる。
制御部22は、走行スイッチ30と操舵センサー31R,31Lとのうち後者が先にオンすると停止モードと判定し前者が先にオンすると走行モードと判定する。このモード判定は、詳しくは制御回路70内のモード判定部77が行う。
例えばヘリコプター移動装置11の停止状態でハンドル17を左右いずれか一方側へ操作すると、ハンドル17の基部に伝わる変位(例えば捻れ変位又は角度変位)が操舵センサー31R,31Lに検知される。ヘリコプター移動装置11の停止状態の下で作業者がハンドル17を右操作して右操舵センサー31Rがオンすると、制御部22は右モーター26を逆転駆動させ、左モーター27を正転駆動させる。この結果、操舵ユニット19は右操舵される。また、ヘリコプター移動装置11の停止状態の下で作業者がハンドル17を左操作して左操舵センサー31Lがオンすると、制御部22は右モーター26を正転駆動させ、左モーター27を逆転駆動させる。この結果、操舵ユニット19は左操舵される。そして、ハンドル17の操作を止めると、操舵センサー31R,31Lが共にオフし、操舵ユニット19の操舵が停止する。
このとき、図12に示す右車輪用の駆動制御回路61では停止モードにおいて右操舵センサー31Rがオンすると、信号調整回路63から信号線LRにオン信号が入力されることで出力端子Rrの出力がオンし、1組のパワー素子67,68がオンすることにより右モーター26が逆転駆動する。一方、左車輪用の駆動制御回路62では停止モードにおいて右操舵センサー31Rがオンすると、信号調整回路63から信号線LFにオン信号が入力されることで出力端子Frの出力がオンし、1組のパワー素子65,66がオンすることにより左モーター27が正転駆動する。
また、このとき、ハンドル17の操作により操舵センサー31R,31Lの一方がオンしている間、信号調整回路63から信号線L1に入力される操作信号Ssがオンする。このため、積分回路75は、図9に示すように操作信号Ssのオンの連続時間が長いほど最大出力値Imaxに達するまでの期間で徐々に高くなる出力値Iを出力する。速度制御回路71は、積分回路75から入力した出力値Iに応じたデューティー比のパルス電圧を出力することによりモーター26,27に供給する電力を制御する。この結果、停止モードにおけるハンドル17の操作中は操舵ユニット19の操舵速度が徐々に速くなる。
一方、ハンドル17の操作を止めて操舵センサー31R,31Lの一方がオンからオフに切り換わると、出力端子Fr,Rrの一方のオン出力がホールド回路74により保持されたまま、信号調整回路63から信号線L1に入力される操作信号Ssがオンからオフに切り換わる。このため、積分回路75は、図9に示すように、操作信号Ssのオフの連続時間の間、零に達するまで徐々に低くなる出力値Iを出力する。この結果、停止モードにおいてハンドル17の操作を止めると、操舵ユニット19の操舵動作は操舵速度が徐々に低下しつつやがて停止する。
また、操舵中に操舵ユニット19が最大操舵角に達すると、操舵限界センサー32R,32Lの一方がオンするので、制御部22はモーター26,27の駆動を停止させる。詳しくは、操舵限界センサー32R,32Lの一方から信号線L2にリセット信号Srが入力されるので、積分回路75はリセットされる。このため、積分回路75から速度制御回路71への出力値Iは直ちに零になり、モーター26,27の駆動が直ちに停止される。この結果、操舵ユニット19が最大操舵角に達したときは、その操舵動作が直ちに停止される。なお、積分回路75は、リセット信号Sr(オン)を受け付けた後は一旦オフした後でなければそのオンを受け付けない。
また、最大操舵角の状態で、作業者が反対側へハンドル17を操作して操舵センサー31R,31Lのオンとオフが入れ替わると、モーター26,27が先の駆動方向と反対方向に駆動され、操舵ユニット19が反対側へ操舵される。このとき、ハンドル17の操作中はモーター26,27の駆動速度が徐々に上昇することにより操舵ユニット19の操舵速度が徐々に上昇し、ハンドル17の操作を止めると、操舵ユニット19は操舵速度が徐々に低下してから停止する。こうしてモーター26,27が停止して電圧検出部72が検出するモーター26,27の印加電圧(検出電圧)が「零」になることでホールド回路74が出力端子Fr,Rrのうち一方の出力をオンに保持するホールド状態が解除される。こうして停止モードにおける操舵制御が終了する。
次に走行モードにおける制御は次のように行われる。走行スイッチ30の操作レバー30Aが前進操作されると、信号調整回路63から信号線LFに前進信号(オン)が入力され、操作レバー30Aが後進操作されると、信号調整回路63から信号線LRに後進信号(オン)が入力される。この信号調整回路63の信号調整結果は、図12に示す右車輪用の駆動制御回路61と、左車輪用の駆動制御回路62とで同じである。
このため、作業者が走行スイッチ30を前進操作したときは信号線LFにオン信号が入力されることで出力端子Frの出力がオンし、1組のパワー素子65,66がオンすることにより右モーター26が正転駆動する。一方、左車輪用の駆動制御回路62でも同様に、信号線LFにオン信号が入力されることで出力端子Frの出力がオンし、1組のパワー素子65,66がオンすることにより左モーター27が正転駆動する。このように左右のモーター26,27が正転駆動する結果、台車12は前進する。
また、このとき、走行スイッチ30が前進操作されている間、信号調整回路63から信号線L1にオンの操作信号Ssが入力される。このため、積分回路75は、図9に示すように操作信号Ssのオンの連続時間が長いほど最大出力値Imaxに達するまでの期間で徐々に高くなる出力値Iを出力する。速度制御回路71は、積分回路75から入力した出力値Iに応じたデューティー比のパルス電圧を出力することによりモーター26,27に供給する電力を制御する。この結果、走行スイッチ30の前進操作中は台車12の前進速度が徐々に速くなる。一方、走行スイッチ30の前進操作を止めて前進信号がオンからオフに切り換わると、出力端子Fr,Rrの一方のオン出力がホールド回路74により保持されたまま、信号調整回路63から信号線L1に入力される操作信号Ssがオンからオフに切り換わる。このため、積分回路75は、図9に示すように、操作信号Ssのオフの連続時間の間、零に達するまで徐々に低くなる出力値Iを出力する。この結果、走行モードにおいて走行スイッチ30の前進操作を止めると、台車12は前進速度を徐々に低下しつつやがて停止する。
一方、作業者が走行スイッチ30を後進操作したときは信号線LRにオン信号が入力されることで出力端子Rrの出力がオンし、1組のパワー素子67,68がオンすることにより右モーター26が逆転駆動する。一方、左車輪用の駆動制御回路62でも同様に、信号線LRにオン信号が入力されることで出力端子Rrの出力がオンし、1組のパワー素子67,68がオンすることにより左モーター27が逆転駆動する。このように左右のモーター26,27が逆転駆動する結果、台車12は後進する。
また、このとき、走行スイッチ30が後進操作されている間、信号調整回路63から信号線L1にオンの操作信号Ssが入力される。このため、積分回路75は、図9に示すように操作信号Ssのオンの連続時間が長いほど最大出力値Imaxに達するまでの期間で徐々に高くなる出力値Iを出力する。速度制御回路71は、積分回路75から入力した出力値Iに応じた電力をモーター26,27に供給する。この結果、後進操作中は台車12の後進速度が徐々に速くなる。一方、走行スイッチ30の後進操作を止めて後進信号がオンからオフに切り換わると、出力端子Fr,Rrの一方のオン出力がホールド回路74により保持されたまま、信号調整回路63から信号線L1に入力される操作信号Ssがオンからオフに切り換わる。このため、積分回路75は、図9に示すように、操作信号Ssのオフの連続時間の間、零に達するまで徐々に低くなる出力値Iを出力する。この結果、走行モードにおいて走行スイッチ30の後進操作を止めると、台車12は後進速度を徐々に低下しつつやがて停止する。こうしてモーター26,27が停止して電圧検出部72が検出するモーター26,27の印加電圧が「零」になることでホールド回路74がオン出力を保持するホールド状態が解除される。
また、ヘリコプター移動装置11の走行中において、走行スイッチ30の前進/中立の小刻みな切換え操作あるいは後進/中立の小刻みな切換え操作を繰り返すと、図10に示すように、出力値Iが最大出力値Imax未満の所定値を中心とする比較的狭い範囲内で小刻みに変化する。このため、作業者は走行スイッチ30の前進/中立又は後進/中立の間の小刻みな切換え操作を繰り返すことにより、ヘリコプター移動装置11を最高速度未満の所定速度(例えば低速度)でほぼ定速走行させることができる。なお、モード判定部77は、このような加速中及び最高速度走行中の走行モード(「第1走行モード」ともいう。)と、減速中の走行モード(「第2走行モード」ともいう。)とを区別して判定する。
また、台車12の前進中又は後進中に作業者がハンドル17を左右いずれかに操作すると、制御部22は2つのモーター26,27をそのときの回転方向に駆動させつつ速度差を付ける制御を行い、ハンドル17の操作方向に応じた方向に操舵ユニット19を操舵させる。制御部22が2つのモーター26,27に速度差を付ける制御は、加速中及び最高速度走行中の第1走行モードと、減速中の第2走行モードとで異なる。
走行スイッチ30が前進位置又は後進位置に操作されているとき、図12に示す右車輪用の駆動制御回路61と左車輪用の駆動制御回路62において信号調整回路63から信号線L1に入力される操作信号Ssがオンになる。このため、積分回路75の出力値Iが徐々に上昇する。この結果、左右のモーター26,27の駆動速度が徐々に上昇し、台車12の前進速度又は後進速度は徐々に上昇する。最大出力値Imaxに達した場合は台車12の前進速度又は後進速度が最高速度に維持される。
この加速中及び最高速走行中の第1走行モードにおいて、例えば作業者がハンドル17を右操作すると、図12に示す右車輪用の駆動制御回路61では信号調整回路63が操作信号Ssをオフにする。このため、積分回路75の出力値Iが徐々に低下する。この結果、右モーター26の駆動速度が徐々に低下するとともに、左モーター27の駆動速度が徐々に上昇するか最高速度に維持される。このとき左右のモーター26,27に発生する速度差により、台車12は右操舵される。また、例えば作業者がハンドル17を左操作すると、2つの駆動制御回路61,62で右操作時と反対の制御が行われ、右モーター26の駆動速度が徐々に上昇するか最高速度に維持されるとともに、左モーター27の駆動速度が徐々に低下する。このとき左右のモーター26,27に発生する速度差により、台車12は左操舵される。
一方、走行スイッチ30が前進位置又は後進位置から中立位置に操作されたとき、図12に示す右車輪用の駆動制御回路61と左車輪用の駆動制御回路62とは信号調整回路63から信号線L1に入力される操作信号Ssをオフにする。このため、積分回路75の出力値Iが徐々に低下するため、左右のモーター26,27の駆動速度が徐々に低下する。この結果、前進中又は後進中の台車12は減速する。
この減速中の第2走行モードにおいて、例えば作業者がハンドル17を右操作すると、左車輪用の駆動制御回路62では信号調整回路63が操作信号Ssをオンにするため、積分回路75の出力値Iが徐々に上昇する。この結果、右モーター26の駆動速度が徐々に低下するとともに、左モーター27の駆動速度が徐々に上昇するため、左右のモーター26,27に速度差が発生し、台車12は右操舵される。また、例えば作業者がハンドル17を左操作すると、2つの駆動制御回路61,62で右操作時と反対の制御が行われるため、右モーター26の駆動速度が徐々に上昇するとともに、左モーター27の駆動速度が徐々に低下するため、左右のモーター26,27に速度差が発生し、台車12は左操舵される。
一方、台車12の停止中又は走行中にハンドル17の操作方向を左右反対側へ切り換えたとき、ホールド回路74からオン出力保持状態のオン信号を入力する調整回路76が信号調整回路63から信号線LF,LRのうち切換え先の他方からオン信号を入力すると、信号線L2にリセット信号Srを出力する。このため、積分回路75の出力値Iが直ちに「零」になって電圧検出部72が検出するモーター26,27の印加電圧が直ちに「零」になるので、ホールド回路74のオン出力保持状態が解除され、これに伴いインターロック回路73によるインターロックも解除される。この結果、台車12の停止中にハンドル17の操作方向を左右反対側へ切り換えたときは、その時点でモーター26,27が互いに正逆回転する回転方向が反転することにより操舵ユニット19の操舵方向が直ちに切り換わる。また、台車12の走行中であればその時点でモーター26,27の速度差を発生させる各速度の大小関係が反転することにより操舵ユニット19の操舵方向が直ちに切り換わる。
また、台車12の前進中又は後進中に走行スイッチ30の操作を反対側に切り換えたときも、同様に、ホールド回路74から出力保持のオン信号を入力する調整回路76が信号調整回路63から信号線LF,LRのうち切換え先からオン信号を入力すると、信号線L2にリセット信号Srを出力する。このため、積分回路75の出力値Iが直ちに「零」になって電圧検出部72が検出するモーター26,27の印加電圧が直ちに「零」になるので、ホールド回路74のオン出力保持状態が解除され、これに伴いインターロック回路73によるインターロックも解除される。この結果、走行スイッチ30を前進位置と後進位置との間で反対側へ切り換えたときは、直ちにモーター26,27の回転方向が反転することにより、台車12の進行方向が前進と後進との間で直ちに切り換わる。
また、台車12の走行中における操舵中に操舵ユニット19が最大操舵角に達した場合も、操舵限界センサー32R,32Lの一方から信号線L2にリセット信号Srが入力されるため、積分回路75はリセットされる。このため、積分回路75から速度制御回路71への出力値Iは直ちに零になり、モーター26,27の駆動が直ちに停止される。この結果、台車12の走行中に操舵ユニット19が最大操舵角に達したときは、その操舵動作が直ちに停止される。
以上詳述したように、この実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)ヘリコプター移動装置11は、台車12と、台車12に設けられた複数の可倒式のジャッキ13,14と、複数のジャッキ13,14の傾倒と起立との各動作を連動させる連動機構33とを備える。このため、ヘリコプター移動装置11をヘリコプター100の下側へ移動させる際に複数のジャッキ13,14を傾倒姿勢に配置しておけば、ヘリコプター移動装置11がヘリコプター100の機体103の底部に設けられた突出物105に接触することを回避し易い。よって、ヘリコプター移動装置11をヘリコプター100の下側へ誘導させる際に過度に慎重な操作が要求されない。また、前側ジャッキ13と後側ジャッキ14とは、連動機構33を介して互いに反対方向へ傾倒可能に設けられている。よって、ヘリコプター100を支持したジャッキ13,14が起立姿勢から傾倒側へ回動することを抑制できる。特に前側ジャッキ13を後側へ傾倒可能かつ後側ジャッキ14を前側へ傾倒可能に設けたので、ヘリコプター移動装置11の前後方向Xの全長を相対的に短くすることができる。
(2)ジャッキ13,14を傾倒姿勢と起立姿勢との間で回動させる回動軸34を更に有し、連動機構33は、起立姿勢にあるときのジャッキ13,14を回動軸34よりも前後方向外側となるオフセット位置に配置するオーバーセンターリンケージ機構37を含む。よって、オーバーセンターリンケージ機構37によって、起立姿勢にあるときのジャッキ13,14は回動軸34よりも前後方向に外れたオフセット位置に配置されるので、ヘリコプター100を支持したジャッキ13,14が起立姿勢から傾倒姿勢へ回動する事態を一層効果的に抑制できる。
(3)ジャッキ13,14は油圧ジャッキであり、複数のジャッキ13,14は油圧ユニット24から作動油が供給される油路53に対して並列に接続されている。ヘリコプター100から受ける前後の荷重のうち相対的に荷重の小さい方の前側のジャッキ13が先に伸長し、これに続いて相対的に荷重の大きい方の後側のジャッキ14が伸長することにより、ヘリコプター100は荷重の相対的に小さい前側が先に持ち上げられ、続いて荷重の相対的に大きい後側が持ち上げられる。このとき、前後のジャッキ13,14で伸長するタイミングに差があるものの、前側の左右のジャッキ13,13と後側の左右のジャッキ14,14において、左右の伸長のタイミングの差が小さく抑えられる。よって、ジャッキ13,14によりヘリコプター100を安定に持ち上げることができる。
(4)ヘリコプター移動装置11は、台車12に設けられた左右一対の車輪15を左右で個別に回転させる複数のモーター26,27と、複数のモーター26,27を制御する制御部22と、走行を指示する操作に応じて指示信号を出力する指示部60とを備える。制御部22は、指示部60からの指示信号に基づいて複数のモーター26,27を個別に制御して台車12の走行と操舵とを制御する。よって、作業者は指示部60を操作することにより制御部22に複数のモーター26,27を個別に制御させてヘリコプター移動装置11の走行に加え操舵も制御できる。
(5)制御部22は、台車12の停止中に指示部60から操舵の指示を受け付けると、右車輪用のモーター26と左車輪用のモーター27とを互いに逆向きの回転で駆動させる。一方、台車12の走行中に指示部60から操舵の指示を受け付けると、右車輪用のモーター26と左車輪用のモーター27とをそのときの回転方向で異なる駆動速度に制御する。よって、作業者は指示部60の操作によって台車12の停止中も走行中も台車12を適切に操舵させることができる。
(6)制御部22は、台車12の加速走行中又は最高速度での走行中においては、操舵の指示を受け付けると、左右のモーター26,27のうち片方の駆動速度を減速させ、操舵の指示を受け付けなくなると、左右のモーター26,27のうち減速させた片方の駆動速度を増速させることで左右のモーター26,27の駆動速度を同じ戻す。一方、制御部22は、台車12の減速走行中においては、操舵の指示を受け付けると、左右のモーター26,27のうち片方の駆動速度を増速させ、操舵の指示を受け付けなくなると、左右のモーター26,27のうち増速させた片方の駆動速度を減速させることで左右のモーター26,27の駆動速度を同じに戻す。よって、操舵輪及び操舵専用モーターを設けなくても、加速走行中、最高速度走行中、減速走行中においても、走行用のモーター26,27を制御することによって、台車12の操舵を適切に行うことができる。
(7)指示部60は操作を検知する検知部(走行スイッチ30及び操舵センサー31R,31L)を有し、制御部22は、検知部の連続検知時間に応じてモーター26,27に供給される駆動電力を制御する。よって、指示部60の操作の有無を検知する検知部を用いても、台車12を適切に操舵させることができる。
実施形態は、上記に限定されず、以下のように変更してもよい。
・指示部60は、左右のモーター26,27の制御を制御部22に対して遠隔操作により指示可能なリモートコントローラー等の遠隔操作機器でもよい。この場合、遠隔操作機器には、台車の前進/後進を指示する走行スイッチ及び右操舵/左操舵を指示する操舵スイッチを設ければよい。また、ハンドルの操作部29に走行スイッチ30に加え操舵スイッチを設けてもよい。また、指示部の操作を検知する検知部は、スイッチに替え、操作量を検出可能なセンサーでもよい。
・ジャッキの間隔を前後又は左右、さらには前後左右に変更可能とするスライド装置を設けてもよい。
・ジャッキは可倒式であれば、回動する方向は適宜変更してよい。例えば前後一対のジャッキが先端部の受け部が互いに離れる側へ倒れることで傾倒姿勢となり、受け部が互いに接近する方向に回動することにより起立姿勢となる構成でもよい。また、左右一対のジャッキが先端部の受け部が互いに対峙した状態で傾倒姿勢となり、受け部が互いに離れる方向に回動することにより起立姿勢となる構成、あるいは左右一対のジャッキが先端部の受け部が互いに離れる側へ倒れることで傾倒姿勢となり、受け部が互いに接近する方向に回動することにより起立姿勢となる構成でもよい。これらの構成でも、前後一対又は左右一対の回動軸が互いに逆方向に回動するように連動機構を設けることが好ましい。さらにこれらの構成でも、回動軸に対するジャッキの支持位置が傾倒姿勢のときよりも起立姿勢のときの方が低くなるオーバーセンターリンケージ機構を設けることが望ましい。
・複数のジャッキ13,14を油圧ジャッキに替え、電動ジャッキとしてもよい。例えば電動モーター等の電動式動力源の動力により機械式のジャッキの傾倒と起立の各動作を行ってもよい。この種の機械式のジャッキとした場合、ねじ式、クランク式、トグル式、カム式などが挙げられる。
・操舵に用いる車輪は前輪に替え、後輪であってもよい。また、操舵に用いる車輪は左右一対に限定されず、左右二対又は全ての車輪であってもよい。要するに、操舵に用いる車輪は、少なくとも左右一対の車輪であればよい。
・制御部22は、電気回路や電子回路により構成されるハードウェアからなる構成に替え、コンピューターがプログラムを実行することにより、各種のセンサーやスイッチからの信号に基づき走行と操舵の制御を行うソフトウェアにより構成されてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの協働により構成されてもよい。