図1乃至3に示す農用車両は作業車両の一種であって、前後輪1,2によって支持された走行機体3と、走行機体3の後部に昇降リンク4を介して昇降自在に連結された耕耘機等の作業機6とを備えている。該作業機6は、作業機用昇降シリンダ5により昇降可能に構成されている。
走行機体3は、左右一対の前輪1,1及び後輪2,2に支持されて前後方向に延びる車台フレーム7と、該車台フレーム7の前後左右の計4つの車輪1,1,2,2に対して昇降させる車輪昇降装置と、車台フレーム7上に設置されてオペレータが乗込む操縦部9と、車台フレーム7の前側に設置固定されてボンネット11により上方側が覆われるバッテリーと電装品とを備えている。
前記車台フレーム7は、ボックスフレーム12と、該ボックスフレーム12から後方側に延出されたリヤフレーム13とを有している。なお、リヤフレーム13側には、走行機体3(車台フレーム7)の前後方向の傾斜を検出するポテンショメータからなる傾斜センサ(前後傾斜検出手段)65が設けられている(図3参照)。
上記リヤフレーム13内には、ミッションケース16により下支えされた状態のエンジン(図示しない)が収容されている。ミッションケース16には、図示しないトランスミッションが内装され、このトランスミッションを介して、エンジンからの動力が車輪1,1,2,2及び作業機6側に変速伝動される。
前記操縦部9には、オペレータが着座する座席17と、オペレータの機体上の移動作業を容易にするステップの基礎であるステッププレート18の上面側(ボックスフレーム12の上面側)に形成された床面19と、車台フレーム7の前部に立設された上下方向のフロント操作パネル21と、該フロント操作パネル21の上端部に設置されたステアリングハンドル22と、座席17の左右一方側に配設されて揺動により走行変速操作を行う主変速レバー23とを備えている。
該フロント操作パネル21には、図4に示されるように、上記ステアリングハンドル22の前方側に燃料タンク24が設置され、ステアリングハンドル22の左右一方(図示する例では左側)には、制御部60によって走行機体3の前後傾斜を制御する機体昇降制御を実行するための上り制御スイッチ26及び下り制御スイッチ27が設けられている。
また、ステアリングハンドル22の手前側には、作業車両を、路上走行に適した走行モードと、段差の走行時の段差モードと、圃場での作業に適した作業モードとに切換えるモード切換操作具31が配置されている。詳しくは後述する。
前記車輪昇降装置は、左右の前輪1,1をまとめて支持する単一のフロントアクスルケース32と、左右の後輪2,2をまとめて支持する単一のリヤアクスルケース33と、フロントアクスルケース32を車台フレーム7に昇降駆動自在に支持する前輪昇降機構と、リヤアクスルケース33を車台フレーム7に昇降自在に支持する後輪昇降機構とを備えている。
上記リヤアクスルケース33は、ミッションケース16の後部に一体形成されて、左右方向に延びる本体の各端部に上下揺動自在に支持されたファイナルケース34と、この左右のファイナルケース34同士を連結固定する左右方向の連結フレーム36とを有している。
左右の各ファイナルケース34,34は、揺動支点35側となる基端部と反対側の端部(先端部)に、左右方向の車軸37が、外側側方に突出した状態で、回転駆動可能に支持されている。ちなみに、連結フレーム36によって、左右のファイナルケース34,34が連結されて一体化されて強度が向上する。
上記フロントアクスルケース32は、左右方向に延びる本体ケース38と、本体ケース38の左右各端部から下方に延出されたファイナルケース39とを有し、全体が正面視でゲート状に成形されている。この左右の各ファイナルケース39,39は、本体ケース38に水平回動可能に支持され、このファイナルケース39の下端部には、外側側方に突出した状態で、水平方向に延びる車軸41が回転駆動可能に支持されている。
上記後輪昇降機構は、リヤアクスルケース33とリヤフレーム13とを連結するリンク機構42と、リヤアクスルケース33の左右方向中途部の上面側の連結部30との間に介設されて上下方向に伸縮作動する電動、油圧若しくはエアで駆動する比較的安価なアクチュエータである後輪昇降シリンダ43とを備えている。該アクチュエータは電動モータ等を用いて走行機体7を傾斜させるように作動する構成であればシリンダに限られない。
リンク機構42は、側面視でくの字状をなすように上下一対のリンクが上下回動自在に連結されている。また、後輪昇降シリンダ43の上下の端部は、リヤフレーム13側で後部ブラケット45と、連結フレーム36側の連結部30とにそれぞれ回転自在に連結されている。
後輪昇降シリンダ43を伸長作動させると、左右のファイナルケース34,34が一体的に下方側に揺動して、各後輪2,2が走行機体3に対して下降作動する。一方、後輪昇降シリンダ43を短縮作動させると、左右のファイナルケース34,34が一体的に上方側に揺動して、各後輪2,2が走行機体3に対して上昇する。このとき、リンク機構42は、後述の伸縮位置検出ポテンショ67が設けられており、後輪昇降シリンダ43の伸縮作動に連動して、リンクの曲げ角が操作されることにより、後輪昇降シリンダ43の伸縮位置を検出している。なお、本発明において後輪昇降シリンダ43の伸縮作動は伸びきるか縮みきるかのどちらかであるため、前記伸縮位置検出ポテンショ67では、後輪昇降シリンダの伸縮位置は伸びきった位置、又は縮みきった位置のどちらかの状態を検出する。
そして、後輪昇降シリンダ43の伸長作動によって、リヤアクスルケース33及び一対の後輪2,2はファイナルケース34の上記揺動支点35を中心とした円弧軌跡に沿って上下に移動し、走行機体3の後部側が後輪2,2に対して昇降作動する。
上記前輪昇降機構は、上下方向に延びる棒状の左右一対の前側スライドレール46と、上下方向に延びる棒状の左右一対の後側スライドレール47と、該前後左右の計4本のスライドレール46,47にスライド自在に支持された単一のスライド体48と、スライド体48を昇降駆動させる電動、油圧若しくはエアで駆動する比較的安価なアクチュエータである前輪昇降シリンダ49とを備えている。
スライド体48は、スライドレール46,47の軸方向にスライド自在に支持されており、該スライド体48は、左右方向に延びる上述したフロントアクスルケース32の前面の左右両側端部と、後面の左右両側端部とにボルトで固定されている。これによって、フロントアクスルケース32は、スライドレール46,47方向にスライド自在(昇降自在)に車台フレーム7に支持されている。
前輪昇降シリンダ49は、上下方向に伸縮するように姿勢が定められ、この前輪昇降シリンダ49の上端部は、ボックスフレーム12の上面前端部から上方に一体的に突設された逆L字状の支持ブラケット53に前後回動自在に支持される一方で、該前輪昇降シリンダ49の下端部は、スライド体48の左右方向中途部に前後回動自在に支持されている。
該前輪昇降シリンダ49を伸長作動させると、フロントアクスルケース32がスライドレール46,47に沿って下降し、前輪1,1が走行機体3に対して下降作動する。一方、前輪昇降シリンダ49を短縮作動させると、フロントアクスルケース32がスライドレール46,47に沿って上昇し、前輪1,1が走行機体3に対して上昇作動する。言い換えると、前輪昇降シリンダ49の伸縮作動によって、走行機体3の前部側が前輪1,1に対して昇降作動する。なお、本発明において前輪昇降シリンダ49の伸縮作動は伸びきるか縮みきるかのどちらかであるため、伸縮位置検出ポテンショ66では、前輪昇降シリンダの伸縮位置は伸びきった位置、又は縮みきった位置のどちらかの状態が検出される。
上述の前記車輪昇降装置によれば走行機体は、図5及び図6に示すように、制御部を介して、車台フレームの高さ位置や、前後傾斜を適宜変更することができる。
上げ姿勢、及び下げ姿勢は平地走行に適した姿勢であり、その内、上げ姿勢は、昇降シリンダ43,49を予め定めた既定の位置(伸びきった位置)まで伸長作動させることにより、走行機体3(車台フレーム7)を略水平に保った状態で最も高い位置に設定した姿勢であり、圃場での作業に適した作業姿勢となる(図5(A)参照)。
また、下げ姿勢は、昇降シリンダ43,49を予め定めた既定の位置(縮みきった位置)まで短縮作動させることにより、走行機体3(車台フレーム7)を略水平に保った状態で最も低い位置に設定した姿勢であり、路上での走行に適した走行姿勢となる(図5(B)参照)。
前下り姿勢は、後輪昇降シリンダ43を予め定めた既定の位置(伸びきった位置)に伸長作動させ、前輪昇降シリンダ49を予め定めた既定の位置(縮みきった位置)に短縮作動させることにより、走行機体3(車台フレーム7)を既定の角度で前方下方へ傾斜させた姿勢(図6(A)参照)に切換えられる。上り傾斜を走行する前にオペレータの操作によって、該前下り姿勢に切換え、走行機体3が段差を乗上げ走行する際に、詳しくは後述する制御部によって機体昇降制御(傾斜制御)を実行することで機体が過剰に前方上方へ傾斜し、後輪を中心に後側へ回転して機体が転倒することを防止できる。
前上り姿勢は、前輪昇降シリンダ49を予め定めた既定の位置(伸びきった位置)に伸長作動させ、後輪昇降シリンダ43を予め定めた既定の位置(縮みきった位置)に短縮作動させることにより、走行機体3(車台フレーム7)を既定の角度で前方上方へ傾斜させた姿勢(図6(B)参照)に切換えられる。下り傾斜を走行する前にオペレータの操作によって、該前上り姿勢に切換え、走行機体3が段差を下り走行する際に、詳しくは後述する制御部によって機体昇降制御を実行することで機体が過剰に前方下方へ傾斜し、前輪を中心に前側へ回転して機体が転倒することを防止できる。
なお、本実施例では、フロントアクスル32及びリヤアクスル33のそれぞれに昇降シリンダ49,43を備えているが、単独のアクチュエータで天秤リンク機構等を介して両車輪を背反的に昇降させるものでも良く、また前輪1,1,又は後輪2,2の何れか一方のみを昇降させることで機体の傾斜姿勢を変更するものであっても良い。
次に、図7及び図8に基づき、前記制御部による機体昇降制御について説明する。前記モード切換操作具31によって、モードが切換えられることによって、車台フレーム7の高さ位置や傾斜が状況に適した状態に変更される。
前記モード切換操作具31によって、作業モードに切換えられると、走行機体(車台フレーム)を略水平に保った状態で最上げ位置に操作されることにより、圃場での作業走行に適した前記上げ姿勢(作業姿勢)に切換えられる(図7(A)参照)。また、前記モード切換操作具31によって、走行モードに切換えられると、走行機体3を略水平に保った状態で最下げ位置に操作されることにより、路上走行での安定性に優れた下げ姿勢(走行姿勢)に切換えられる(図8(A)参照)。
また、図7に示すような上りの傾斜面においては、モード切換操作具31によって、段差モードに切換えられた状態で、上り制御スイッチ26の押し操作がされると、各昇降シリンダ43,49を予め定めた既定の前記前下り姿勢に成るまで昇降駆動させ、該既定の前下り姿勢で昇降駆動を停止させることで既定の前下り姿勢に切換えられ(図7(B)参照)、該状態で前進して前輪が上り段差に乗上げ(図7(C)参照)、さらに前進して後輪2が上り段差に上り始めると(図7(D)参照)、後輪昇降シリンダ43が操作されて走行機体3が前記下げ姿勢に切換えられる(図7(E)参照)。すなわち、上り制御スイッチ26が上り傾斜面走行制御が開始されて前下り姿勢に切換えられる条件検出手段として機能している。
同様に、図8に示すような下りの傾斜面においては、モード切換操作具31によって、段差モードに切換えられた状態で、前記下り制御スイッチ27が押し操作がされると、各昇降シリンダ43,49を予め定めた既定の前記前上り姿勢に成るまで昇降駆動させ、該既定の前上り姿勢で昇降駆動を停止させることで既定の前上り姿勢に切換えられ(図8(B)参照)、該状態で前進して前輪1が段差を下り(図8(C)参照)、さらに前進して後輪2が段差を下り始めると(図8(D)参照)、後輪昇降シリンダ43が操作されて走行機体3が上げ姿勢に切換えられる(図8(E)参照)。すなわち、下り制御スイッチ27が下り傾斜面走行制御が開始されて前上り姿勢に切換えられる条件検出手段として機能している。
また、段差モードにおいて、上り制御では、段差を乗上げる前に予め前下り姿勢にし、該状態で段差を上り始め、段差を上る行程の後半で、走行機体の傾斜角度が前下げ側に変化したタイミングで走行機体が前下り姿勢から下げ姿勢に自動的に操作される。一方、下り制御では、段差を下る前に予め前上り姿勢にし、該状態で段差を下り始め、段差を下る行程の後半で、走行機体の傾斜角度が前上げ側に変化したタイミングで走行機体が前上り姿勢から上げ姿勢に自動的に操作される。
該構成によれば、オペレータは、段差を走行する際に走行機体3の水平に対する傾きが前後方向に大きく傾くことを防止することができ、安全性が高くなるとともに、段差を走行する際に、オペレータが走行機体3の傾きに関する操作をする必要がないため、機体の操縦に専念することができる。また、前輪昇降シリンダは伸びきった状態から縮みきった状態のみを制御することから、制御内容も簡易で、過剰品質なアクチュエータを使用しなくてもスムーズに走行機体の傾きを制御できるため、コストを低く抑えることができる。制御部60の詳しい構成について後述する。
次に、図9乃至14に基づき、制御部とその制御内容について説明する。なお、図10乃至図14を用いて説明する制御内容は本発明を実現するための制御プログラムの内容を示すものである。制御部60の出力側には、前記前輪昇降シリンダ49と、前記後輪昇降シリンダ43と、前記上り制御スイッチ26が操作されていることを報知する上り制御スイッチランプ61と、下り制御スイッチ27が操作されていることを報知する下り制御スイッチランプ62と、機体走行制御による昇降が終了したこと等を報知する報知ブザー63とが接続されている。
その一方で、制御部60の入力側には、前記作業モード切換操作具31と、前記上り制御スイッチ26と、前記下り制御スイッチ27と、走行機体3(車台フレーム7)の前後傾斜を検出するポテンショメータ等からなる傾斜センサ65と、前輪昇降シリンダ49の伸縮位置を検出するセンサである前輪昇降シリンダ伸縮位置検出ポテンショ66と、後輪昇降シリンダ43の伸縮位置を検出するセンサである後輪昇降シリンダ伸縮位置検出ポテンショ67と、が接続されている。ちなみに、上記上り制御スイッチ26と、下り制御スイッチ27は、後述する各車輪のシリンダの作動開始を確認する作動確認スイッチを兼ねている。
図10に示すように、制御部の機体昇降制御が開始されると、ステップS1から処理が開始する。ステップS1では、走行モード制御を実行し、その処理が終了すると、ステップS2に進む。ステップS2では、段差モード制御を実行し、その処理が終了すると、ステップS3に進む。ステップS3では、作業モード制御を実行し、その処理が終了すると、処理をステップS1に戻し、以下、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS1・・・とメインルーチン処理を繰返す。また、各ステップにおいて、個別の制御に移るサブルーチンに移って各制御を行うこととし、各サブルーチンが完了した時点で図10に示すルーチンに戻る。本プログラムは結果的に常に制御部分の状態を監視し、プログラムとしては常に各ルーチンを繰返すこととなる。
図11において、走行モード制御のサブルーチンが実行されると、ステップS11に進む。ステップS11では、前記モード切換操作具31による走行モードへの切換操作がされたか否かが確認され、走行モードに操作されている場合には、ステップS12に進み、走行モード以外に操作されている場合には、サブルーチンを終了してメインルーチンに戻る。
ステップS12では、前記の各昇降シリンダ伸縮位置検出ポテンショ66,67により、前輪昇降シリンダ49と後輪昇降シリンダ43の伸縮位置を検出してステップS13に進む。ステップS13では、前後の昇降シリンダ49,43の伸縮位置から前記前上り姿勢か否かが検出され、前上り姿勢の場合には、ステップS14に進む。
ステップS14では、前後のシリンダの作動確認スイッチを兼ねる上り制御スイッチ26の押操作の有無が検出され、シリンダの作動確認スイッチが押操作されている場合には、ステップS15に進み、前輪昇降シリンダ49を短縮作動させ(走行姿勢に切換え)、その後、サブルーチンを終了してメインルーチンに戻り、作業車両としては走行状態となる。その一方で、ステップS14について、シリンダの作動確認スイッチの押操作が検出されなかった場合には、サブルーチンを終了してメインルーチンに戻る。
また、ステップS13において、前上り姿勢が検出されなかった場合には、ステップS16に進む。ステップS16では、前後の昇降シリンダの伸縮位置から前記前下り姿勢か否かが検出され、前下り姿勢の場合には、ステップS17に進む。
ステップS17では、前後のシリンダの作動確認スイッチを兼ねる下り制御スイッチ27の押操作の有無が検出され、シリンダの作動確認スイッチが押操作されている場合には、ステップS18に進み、後輪昇降シリンダ43を短縮作動させ、その後、サブルーチンを終了してプログラムとしてはメインルーチンに戻り、作業車両としては走行状態となる
。その一方で、ステップS17について、シリンダの作動確認スイッチの押操作が検出されなかった場合には、サブルーチンを終了してメインルーチンに戻る。
また、ステップS16において、前下り姿勢が検出されなかった場合には、ステップS19に進む。ステップS19では、前後の昇降シリンダの伸縮位置から作業姿勢であるか否かが検出され、作業姿勢の場合には、ステップS20に進む。その一方で、ステップS19で作業姿勢が検出されなかった場合には、サブルーチンを終了してメインルーチンに戻る。
ステップS20では、前後のシリンダの作動確認スイッチを兼ねる上り制御スイッチ26又は下り制御スイッチ27の押操作の有無が検出され、シリンダの作動確認スイッチが押操作されている場合には、ステップS21に進み、前輪昇降シリンダ49と、後輪昇降シリンダ43とを短縮作動させ、その後、サブルーチンを終了してプログラムとしてはメインルーチンに戻り、作業車両としては走行状態となる。その一方で、ステップS20について、シリンダの作動確認スイッチの押操作が検出されなかった場合には、サブルーチンを終了してメインルーチンに戻る。
すなわち、上述の走行モード制御では、モード切換操作具31が、走行モードに切換え操作されている場合には、車台フレーム7が路上走行に適した下げ姿勢に切換えられるように構成されている。なお、走行モードのサブルーチンにおけるステップS14,ステップS17,ステップS20の各ステップにおいて前後のシリンダの作動確認スイッチの押操作が検出されず、サブルーチンを終了してメインルーチンに戻った場合は、メインルーチンを繰返す中で再度走行モードのサブルーチンに移り、各ステップを実行し、走行状態になるまで繰返される。
図12及び図13において、段差モード制御のサブルーチンが実行されると、ステップS31に進む。ステップS31では、上り制御スイッチ26のON・OFF状態を確認し、ON状態が検出された場合には、ステップS32に進む。
ステップS32では、前記の各昇降シリンダ伸縮位置検出ポテンショ66,67により、前輪昇降シリンダ49と後輪昇降シリンダ43の伸縮位置を検出して、車台フレーム7が段差を上る準備状態である既定の前記前下り姿勢であることが検出されなかった場合には、ステップS33に進み、前輪昇降シリンダ49を短縮作動させるとともに、後輪昇降シリンダ43を伸長作動させて、ステップS34に進む。その一方で、ステップS32において、走行機体3が既定の前下り姿勢であることが検出された場合には、ステップS34に進む。
ステップS34では、既定の前下り姿勢となった車台フレーム7の初期機体角度θ1が記憶されて、ステップS35に進む。ステップS35では、傾斜センサ65により、機体角度θ2が初期角度θ1よりも大きいことが検出された場合には、ステップS36に進む。その一方で、ステップS35において、機体角度θ2が初期角度θ1以下の場合には、ステップS35の直前に戻る。
ステップS36では、傾斜センサ65により、機体角度θ2が初期角度θ1よりも大きい状態がt1秒以上継続していることが検出された場合には、ステップS37に進む。その一方で、ステップS36において、機体角度θ2が初期角度θ1よりも大きい状態がt1秒以上継続しなかった場合には、その後、ステップS35の直前に戻る。
ここでは、前輪1が段差に乗上げることによって機体角度が前方上方に傾斜し始める状態が検出されている(図7(B)及び(C)参照)。
ステップS37では、傾斜センサ65により、走行機体3の角度変化量ω1が任意に設定した所定変化量α1より小さくなったことが検出された場合には、ステップS38に進む。ステップS38では、その時の機体角度θ3を記憶し、ステップS39に進む。ここで、所定変化量α1として、任意の値を与えることで、振動等による角度変化によって、意図しない検出がされることを回避している。
ここでは、前輪1のみが段差を乗上げた状態で、後輪2が段差に到達するまで前進している状態が検出されている(図7(C)及び(D)参照)。
尚、前後輪のホイールベースよりも長い傾斜面を上る際には、前輪1、及び後輪2が共に傾斜面にある状態を検出することとなる(図示せず)。
ステップS39では、傾斜センサ65により検出された機体角度θ4が、記憶した機体角度θ3よりも(水平面に対して)小さいことが検出された場合には、ステップS40に進む。その一方で、ステップS39において、検出された機体角度θ4が機体角度θ3以上の場合には、ステップS39の直前に戻る。
ステップS40では、傾斜センサ65により、機体角度θ4が機体角度θ3よりも小さい状態がt2秒以上継続していることが検出された場合には、ステップS41に進む。その一方で、ステップS40において、機体角度θ4が機体角度θ3よりも小さい状態がt2秒以上継続しなかった場合には、その後、ステップS39の直前に戻る。
ここでは、後輪2が段差斜面を走行し始めた状態が検出されている(図7(D)参照)。
尚、前後輪のホイールベースよりも長い傾斜面を上る際には、前輪1のみが段差を乗り上げ、平地に差し掛かった状態を検出することとなる(図示せず)。
また、ステップS39とステップS40を入替えて、所定時間経過したこと検出した後に、機体角度θ4が機体角度θ3よりも小さい状態が検出されたことを条件に、ステップS41に進む構成としても良い。
ステップS41では、後輪昇降シリンダ43が短縮作動されて、走行機体が既定の走行姿勢に切換えられ、ステップS42に進む。ステップS42では、上り制御スイッチ26がON状態からOFF状態に操作されたことが検出された場合には、その後、サブルーチンを終了してメインルーチンに戻る。ステップS42において、ON状態が検出された場合には、ステップS42の直前に戻る。
上記ステップS31において、上り制御スイッチ26のOFF状態が検出された場合には、ステップS43に進む。ステップS43では、下り制御スイッチ27のON・OFF状態を確認し、ON状態が検出された場合には、ステップS44に進む。その一方で、ステップS43において、下り制御スイッチ27のOFF状態が検出された場合には、その後、サブルーチンを終了してメインルーチンに戻る。
ステップS44では、前記各昇降シリンダ伸縮位置検出ポテンショ66,67により、前輪昇降シリンダ49と後輪昇降シリンダ43の伸縮位置を検出して、車台フレーム7が段差を下る準備状態である前記既定の前上り姿勢であることが検出されなかった場合には、ステップS45に進み、前輪昇降シリンダ49を伸長作動させるとともに、後輪昇降シリンダ43を短縮作動させて、ステップS46に進む。その一方で、ステップS44において、走行機体3が既に既定の前上り姿勢であることが検出された場合には、ステップS46に進む。
ステップS46では、既定の前上り姿勢となった車台フレーム7の初期機体角度θ5が記憶されて、ステップS47に進む。ステップS47では、傾斜センサ65により検出された機体角度θ6が初期角度θ5よりも小さいことが検出された場合には、ステップS48に進む。その一方で、ステップS47において、検出された機体角度θ6が初期角度θ5以上の場合には、ステップS47の直前に戻る。
ステップS48では、傾斜センサ65により検出された機体角度θ6が初期角度θ5よりも小さい状態がt3秒以上継続していることが検出された場合には、ステップS49に進む。その一方で、ステップS48において、検出された機体角度θ6が初期角度θ5よりも小さい状態がt3秒以上継続しなかった場合には、その後、ステップS47の直前に戻る。
ここでは、前輪1が段差を下って機体角度が前方下方に傾斜し始める状態が検出されている(図8(B)及び(C)参照)。
ステップS49では、傾斜センサ65により、走行機体3の角度変化量ω2が任意に設定した所定変化量α2より小さくなったことが検出された場合には、ステップS50に進む。ステップS50では、その時の機体角度θ7を記憶し、ステップS51に進む。ここで、所定変化量α2として、任意の値を与えることで、振動等による角度変化によって、意図しない検出がされることを回避している。
ここでは、前輪1のみが段差を下りきった状態で、後輪2が段差に到達するまで前進している状態が検出されている(図8(C)及び(D)参照)。
尚、前後輪のホイールベースよりも長い傾斜面を下る際には、前輪1、及び後輪2が共に傾斜面にある状態を検出することとなる(図示せず)。
ステップS51では、傾斜センサ65により検出された機体角度θ8が記憶した機体角度θ7よりも(水平面に対して)大きいことが検出された場合には、ステップS52に進む。その一方で、ステップS51において、検出された機体角度θ8が記憶した機体角度θ7以下の場合には、ステップS51の直前に戻る。
ステップS52では、傾斜センサ65により検出された機体角度θ8が記憶した機体角度θ7よりも大きい状態がt4秒以上継続していることが検出された場合には、ステップS53に進む。その一方で、ステップS52において、検出された機体角度θ8が記憶した機体角度θ7よりも大きい状態がt4秒以上継続しなかった場合には、その後、ステップS51の直前に戻る。
ここでは、後輪2が傾斜面を走行し始めた状態が検出されている(図8(D)から(E)の間)。
尚、前後輪のホイールベースよりも長い傾斜面を下る際には、前輪1のみが段差を下りきり、平地に差し掛かった状態を検出することとなる(図示せず)。
ステップS53では、後輪昇降シリンダ43が伸長作動されて、走行機体3が作業姿勢に切換えられ、ステップS54に進む。ステップS54では、下り制御スイッチ27がON状態からOFF状態に操作されたことが検出された場合には、その後、サブルーチンを終了して、メインルーチンに戻る。ステップS54において、ON状態が検出された場合には、ステップS54の直前に戻る。
なお、ステップS51とステップS52を入替えて、所定時間t4が経過したこと検出した後に、機体角度θ8が機体角度θ7よりも(水平面に対して)大きい状態が検出されたことを条件に、次のステップに進む構成としても良い。
図14において、作業モード制御のサブルーチンが実行されると、ステップS61に進む。ステップS61では、前記モード切換操作具31による作業モードへの切換操作がされたか否かが確認され、作業モードに操作されている場合には、ステップS62に進み、作業モード以外に操作されている場合には、サブルーチンを終了して、メインルーチンに戻る。
ステップS62では、前記の各昇降シリンダ伸縮位置検出ポテンショ66,67により、前輪昇降シリンダ49と後輪昇降シリンダ43の伸縮位置を検出してステップS63に進む。ステップS63では、前後の昇降シリンダの伸縮位置から車台フレーム7が既定の前上り姿勢か否かが検出され、既定の前上り姿勢の場合には、ステップS64に進む。
ステップS64では、前後の昇降シリンダの作動確認スイッチ26,27の操作の有無が検出され、昇降シリンダの作動確認スイッチが押操作されている場合には、ステップS65に進み、前輪昇降シリンダ49と、後輪昇降シリンダ43とを伸長作動させ、プログラムとしてはサブルーチンを終了してメインルーチンに戻り、作業車両としては作業状態となる。その一方で、ステップS64について、昇降シリンダの作動確認スイッチの押操作が検出されなかった場合には、サブルーチンを終了してメインルーチンに戻る。すなわち、前記上り制御スイッチ26及び下り制御スイッチ27は、上記走行モード制御及び作業モード制御時においては、シリンダの作動開始の意味をもつ作動確認スイッチとして機能する。
また、ステップS63において、既定の前上り姿勢が検出されなかった場合には、ステップS66に進む。ステップS66では、前後の昇降シリンダの伸縮位置から既定の前記前下り姿勢か否かが検出され、既定の前下り姿勢の場合には、ステップS67に進む。
ステップS67では、前後の昇降シリンダ49,43の作動確認スイッチの操作の有無が検出され、昇降シリンダ49,43の作動確認スイッチが押操作されている場合には、ステップS68に進み、前輪昇降シリンダ49と、後輪昇降シリンダ43とを伸長作動させ、プログラムとしてはサブルーチンを終了してメインルーチンに戻り、作業車両としては作業状態となる。その一方で、ステップS67について、昇降シリンダ49,43の作動確認スイッチ26,27の押操作が検出されなかった場合には、サブルーチンを終了して、メインルーチンに戻る。
また、ステップS66において、既定の前下り姿勢が検出されなかった場合には、ステップS69に進む。ステップS69では、前後の昇降シリンダ49,43の伸縮位置から既定の走行姿勢である前記下げ姿勢か否かが検出され、下げ姿勢の場合には、ステップS70に進む。その一方で、S69で下げ姿勢が検出されなかった場合には、サブルーチンを終了してメインルーチンに戻る。
ステップS70では、前後の昇降シリンダ49,43の作動確認スイッチ26,27の操作の有無が検出され、昇降シリンダ49,43の作動確認スイッチ26,27が押操作されている場合には、ステップS71に進み、前輪昇降シリンダ49と、後輪昇降シリンダ43とを伸長作動させ、プログラムとしてはサブルーチンを終了してメインルーチンに戻り、作業車両としては作業状態となる。その一方で、ステップS70について、昇降シリンダ49,43の作動確認スイッチ26,27の押操作が検出されなかった場合には、サブルーチンを終了して、メインルーチンに戻る。
すなわち、上述の作業モード制御では、モード切換操作具31が、作業モードに切換え操作されている場合には、車台フレーム7が圃場での作業走行に適した上げ姿勢に切換えられるように構成されている。
なお、本実施形態は、上り制御スイッチ26、又は下り制御スイッチ27の押操作に基づきアクチュエータの伸縮作動を開始させるものであるが、本形態に限ることなく、傾斜センサの所定以上の傾斜の検出により機体が傾斜地にさしかかったことを判断し、アクチュエータの伸縮作動を開始させるものであってもよい。この場合、傾斜センサ65が上り制御スイッチ26又は下り制御スイッチ27に代わり条件検出手段として機能する。