JP7140275B2 - チタン板、チタン圧延コイル及び銅箔製造ドラム - Google Patents

チタン板、チタン圧延コイル及び銅箔製造ドラム Download PDF

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Description

本発明は、チタン板、チタン圧延コイル及び銅箔製造ドラムに関する。
本願は、2019年4月17日に、日本に出願された特願2019-78826号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
多層配線基板、フレキシブル配線板等の配線基板の配線やリチウムイオン電池の集電体等の電子部品の導電部位には、多くの場合、銅箔が原料として利用されている。
このような用途に利用される銅箔は、例えば、以下の方法で製造される。銅原料を硫酸溶液に溶解させた硫酸銅溶液中に、鉛やチタンなどの不溶性金属の陽極及び陰極としての幅1m以上、直径数mのドラムを配置する。このドラムを回転させつつドラム上に銅を連続的に電析させる。ドラム上に析出した銅を、連続的に剥離し、ロール状に巻き取る。以上より、銅箔は、製造される。
ドラム(銅箔製造ドラム)の材料としては、耐食性に優れること、銅箔の剥離性に優れること、などの観点から、その表面(外周面)にはチタンが一般に使用されている。しかしながら、耐食性に優れたチタン板を用いた場合であっても、銅箔の製造を長期間にわたり行うと、硫酸銅溶液中で、ドラムを構成するチタン板の表面が徐々に腐食する。そして、腐食したドラム表面の状態は、銅箔の製造時に銅箔に転写される。
金属材料の腐食は、その金属材料の有する結晶組織、結晶方位、欠陥、偏析、加工歪み、残留歪みなど金属組織に起因する様々な内質要因によって、腐食状態や腐食の程度が異なることが知られている。部位間で金属組織が不均質な金属材料を用いたドラムが、銅箔の製造に伴い腐食した場合、ドラムの均質な面状態が維持できなくなり、ドラム表面に不均質な面が生じる。ドラム表面に生じた不均質な面は模様として識別できる。このような不均質な金属組織に起因する模様のうち、比較的面積の大きなマクロ組織に起因し、肉眼で判別できる模様を「マクロ模様」という。そして、ドラム表面に生じたマクロ模様は、銅箔の製造時に銅箔に転写され得る。
したがって、高精度かつ均質な厚さの銅箔を製造するためには、ドラムを構成するチタン板のマクロ組織を均質にして、ドラムの表面腐食を均質にすることにより、不均質なマクロ組織に起因したマクロ模様を低減することが、重要である。
特許文献1には、質量%で、Cu:0.3~1.1%、Fe:0.04%以下、酸素:0.1%以下、水素:0.006%以下を含み、平均結晶粒度が8.2以上であり、かつビッカース硬度が115以上、145以下であり、板面に平行な部位において、集合組織が、圧延面より法線方向(ND軸)からのα相の(0001)面極点図において、(0001)面の法線の倒れの角度が、圧延幅方向TD方向に±45°を長軸、最終圧延方向RD方向に±25°を短軸とする楕円の範囲内に存在する結晶粒の総面積をA、それ以外の結晶粒の総面積をBとし、面積比A/Bが3.0以上であることを特徴とする電解Cu箔製造ドラム用チタン板が提案されている。
特許文献2には、Al:0.4~1.8%を含み、板厚4mm以上、表面下1.0mm及び1/2板厚部の板面に平行な部位において平均結晶粒度8.2以上、ビッカース硬度115以上145以下、表面下1mmから1/2板厚部にわたる板面に平行な部位において集合組織が最終圧延方向RD圧延面の法線ND圧延幅方向をTD(0001)面の法線をc軸としたとき圧延面より法線方向からのα相の(0001)面極点図においてc軸のTD方向への倒れの角度が-45~45°、c軸のRD方向への倒れの角度が-25~25°である楕円の領域にc軸が存在する結晶粒の総面積をA、それ以外の結晶粒の総面積をBとし、面積比A/Bが3.0以上のチタン合金厚板が提案されている。
特許文献3には、電子ビーム溶解法によって溶解鋳造した厚さ300mm以上の矩形断面スラブを、β域に加熱し、β域において圧下比3以上の分塊圧延あるいは分塊鍛造を行い、β相再結晶組織を形成させた後、直ちに、β域加工終了温度~700℃の範囲を冷却速度200℃/hr以上で冷却し、上記分塊圧延又は分塊鍛造後、さらに880℃以下に加熱して粗熱延を行い、該粗熱延後再加熱することなく、粗熱延の圧延方向と直交する方向に圧延するクロス熱延をクロス圧延比が1/10~6/10となるようにした仕上げ熱延を、650~750℃の温度範囲で行うことを特徴とする表層部組織に優れた銅箔製造ドラム用チタンの製造方法が提案されている。
日本国特開2012-112017号公報 日本国特開2013-41064号公報 日本国特開2002-285267号公報
しかしながら、今般の電子部品の小型化及び高密度化に伴い、銅箔には、さらなる薄肉化及び表面品質の向上が求められている。このような状況下、上述したマクロ模様についても更なる低減が求められている。特許文献1~3に記載されるような従来の技術では十分にはマクロ模様を低減することができなかった。
また、特許文献3に記載の銅箔製造ドラム用チタンの製造方法は、長手方向の圧延に加えて、幅方向へ圧延するクロス圧延を行うため、製造工期が長くなり、生産性の点で改善の余地があった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、生産性に優れ、銅箔製造用のドラムに使用した際にマクロ模様の発生を抑制可能なチタン板及びチタン圧延コイル、並びにチタン板を用いて製造される銅箔製造ドラムを提供することにある。
本発明者らは、上述した問題を解決すべく鋭意検討する中で、単に結晶粒径を小さくしたり、結晶の(0001)面の法線を圧延面と垂直に近づけたりするのみでは、今般求められる水準までマクロ模様の発生を抑制できないことを知見した。
そして、本発明者らは、金属組織において、結晶を微細のみならず均一の大きさとし、さらには、特定の方位にこだわることなく、Bungeの表記方法によるオイラー角で表した場合に、集積度が最大となる方位を中心に、方位差が15°以内の結晶方位を有する結晶粒の面積率が20%以上となるように組織を制御することにより、マクロ模様の発生を抑制できることを見出した。すなわち、本発明者らは、結晶粒径及び結晶方位の変動が問題であることを明らかにした。そして、クロス圧延を行うことなく、一方向圧延を行うことにより、このような組織を達成可能であり、かつ生産性に優れたチタン板の製造方法を見出し、本発明に至った。
上記知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)本発明の第1の態様は、質量%で、
N :0.10%以下、
C :0.08%以下、
H :0.015%以下、
Fe:0%以上0.50%以下、
O :0%以上0.40%以下、及び、
Cu:0%以上1.50%以下、を含み、
残部Ti及び不純物である化学組成を有し、
平均結晶粒径が40μm以下であり、
結晶粒径(μm)の対数に基づく粒度分布の標準偏差が0.80以下であり、及び、
結晶方位をBungeの表記方法によるオイラー角で表した場合に、集積度が最大となる方位を中心に方位差が15°以内の結晶方位を有する結晶粒の面積率が20%以上である、チタン板である。
(2)上記(1)に記載のチタン板は、前記集積度が最大となる方位が、Bungeの表記方法によるオイラー角で表した場合に、Φが10°以上35°以下かつφ1が0°以上15°以下であってもよい。
(3)上記(1)又は上記(2)に記載のチタン板は、質量%で、Cu:0.10%以上1.50%以下を含んでもよい。
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載のチタン板は、銅箔製造ドラム用チタン板であってもよい。
(5)本発明の第2の態様は、質量%で、
N :0.10%以下、
C :0.08%以下、
H :0.015%以下、
Fe:0%以上0.50%以下、
O :0%以上0.40%以下、及び、
Cu:0%以上1.50%以下、を含み、
残部Ti及び不純物である化学組成を有し、
平均結晶粒径が40μm以下であり、
結晶粒径(μm)の対数に基づく粒度分布の標準偏差が0.80以下であり、及び、
結晶方位をBungeの表記方法によるオイラー角で表した場合に、集積度が最大となる方位を中心に方位差が15°以内の結晶方位を有する結晶粒の面積率が20%以上である、チタン圧延コイルである。
(6)上記(5)に記載のチタン圧延コイルは、長手方向の長さが20m以上であってもよい。
(7)本発明の第3の態様は、円筒状のインナードラムの外周面に沿って被着された、(1)~(4)のいずれかに記載のチタン板と、
前記チタン板の突き合わせ部に配された溶接部と、を有する、銅箔製造ドラムである。
以上説明したように本発明の上記態様によれば、生産性に優れ、銅箔製造用のドラムに使用した際にマクロ模様の発生を抑制することが可能となる。
Bungeの表記方法によるオイラー角による、本発明の一実施形態に係るチタン板及びチタン圧延コイルのα相結晶粒の結晶方位を説明するための説明図である。 同実施形態に係るチタン板の電子線後方散乱回折法により求められた結晶方位分布関数の一例である。 腐食後のチタン板の表面に観察されるマクロ模様の一例を示す顕微鏡写真である。 腐食後のチタン板の表面に観察されるマクロ模様の一例を示す顕微鏡写真であり、マクロ模様の位置を示すため、マクロ模様を強調した参考図である。 銅箔製造ドラムの一使用態様を示す銅箔製造装置の模式図である。 本発明の一実施形態に係る銅箔製造ドラムを示す模式図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態についてチタン板を例に挙げて詳細に説明する。なお、本実施形態に係るチタン圧延コイルは、本実施形態に係るチタン板と基本的に同様であるため、詳細な説明は省略する。
<1.チタン板>
まず、本実施形態に係るチタン板について説明する。本実施形態に係るチタン板は、銅箔製造用のドラムの材料として利用され、チタン板の一方の面は、製造されるドラムの円筒表面を構成する。したがって、本実施形態に係るチタン板は、銅箔製造ドラム用チタン板であるともいえる。
(1.1 金属組織)
まず、本実施形態に係るチタン板の金属組織について説明する。本実施形態に係るチタン板の金属組織は、平均結晶粒径が40μm以下であり、結晶粒径(μm)の対数に基づく粒度分布の標準偏差が0.80以下であり、及び、Bungeの表記方法によるオイラー角で表した場合に、集積度が最大となる方位(最大集積方位)を中心に方位差が15°以内の結晶方位を有する結晶粒の面積率が20%以上である。以下、本実施形態に係るチタン板の金属組織について、順を追って詳細に説明する。
(1.1.1 結晶粒の平均粒径及び粒度分布)
まず、本実施形態に係るチタン板の金属組織に含まれる結晶粒の平均粒径及び粒度分布について説明する。
チタン板の金属組織の結晶粒の粒径(結晶粒径)が粗大であると、その結晶粒そのものが模様となり、銅箔に模様が転写されるため、結晶粒径は微細な方が良い。このため、チタン板の金属組織の結晶粒の平均結晶粒径は、40μm以下とする。平均結晶粒径を40μm以下とすることで、結晶粒が十分に微細となり、マクロ模様の発生が抑制される。チタン板の金属組織の結晶粒の平均結晶粒径は、好ましくは38μm以下、より好ましくは35μm以下である。
これに対し、チタン板の金属組織の結晶粒の平均結晶粒径が40μmを超えると、その結晶粒そのものが模様となり、銅箔に模様が転写されてしまう。
チタン板の金属組織の結晶粒の平均結晶粒径の下限値は特に限定されない。しかしながら、結晶粒が非常に小さい場合には、熱処理時に未再結晶部が発生する場合がある。このため、結晶粒の平均結晶粒径は、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。
ところで、本発明者らは、チタン板の金属組織の結晶粒が単に微細であるのみでは、十分にマクロ模様を抑制できないことを知見した。すなわち、チタン板の金属組織の結晶粒が微細であっても、粒度分布が広い場合、比較的大きな結晶粒が存在してしまう。このような比較的大きな結晶粒と微細な結晶粒とが混在した部位が存在すると、粒径の差によりマクロ模様が発生し得る。このため、チタン板の金属組織の結晶粒は、微細であるのみならず、粒径分布が狭い、すなわち結晶粒の粒径が均一であることがマクロ模様の発生の抑制に重要であることを本発明者らは見出した。
具体的には、本実施形態において、結晶粒径(μm)の対数に基づく粒度分布の標準偏差は0.80以下である。結晶粒が、上述したような平均粒径とともに、このような粒度分布の標準偏差を満足することにより、金属組織中の結晶粒が十分に微細かつ均一となる。このため、チタン板をドラムに用いた際に、マクロ模様の発生が抑制される。
これに対し、結晶粒径(μm)の対数に基づく粒度分布の標準偏差が、0.80を超えると、上述したような平均結晶粒径を満足した場合であっても、粗大な結晶粒が発生してしまう。このようなチタン板をドラムに用いた場合、マクロ模様が発生しやすくなる。結晶粒径(μm)の対数に基づく粒度分布の標準偏差は、好ましくは、0.70以下、より好ましくは0.60以下である。一方、結晶粒径(μm)の対数に基づく粒度分布の標準偏差は、小さい方が好ましいが、実質的には、0.10以上である。結晶粒径(μm)の対数に基づく粒度分布の標準偏差は、0.20以上であってもよい。
チタン板の金属組織の結晶の平均結晶粒径及び粒度分布の標準偏差は、以下のようにして測定、算出することができる。具体的には、チタン板を切断した断面を化学研磨し、電子線後方散乱回折法;EBSD(Electron Back Scattering Diffraction Pattern)を用いて、チタン板圧延面下部(鋼板の圧延面のうちの一方の面から板厚方向に1/8の位置から3/8の位置までの範囲)及び板厚中央部(鋼板の圧延面から板厚方向に3/8の位置から5/8の位置までの範囲)のそれぞれについて、(1/4×板厚)mm×2mmの領域をステップ1~2μmで2~10視野程度測定する。その後、結晶粒径についてはEBSDにより測定された5°以上の方位差境界を結晶粒界とし、この結晶粒界で囲まれた範囲を結晶粒とし、結晶粒面積より円相当粒径(面積A=π×(粒径D/2))を求めこの個数基準の平均値を平均結晶粒径とし、さらに結晶粒径分布より対数正規分布における標準偏差σを算出する。
なお、一般に金属材料の結晶粒径分布は対数正規分布に従うことが知られている。したがって、上述したような結晶粒径分布の標準偏差の算出に当たっては、得られた結晶粒径分布を対数正規分布に規格化し、規格化した対数正規分布より標準偏差を算出してもよい。
(1.1.2 集合組織)
次に、チタン板の集合組織について説明する。チタンの結晶構造は、α相を含み、α相は、六方最密充填構造(hexagonal close-packed、hcp)をとる。hcp構造は、結晶方位による物性の異方性が大きい。具体的には、(0001)面の法線方向であるc軸方向に平行な方向では強度が高く、c軸方向と垂直な方向に近づくほど強度が低い。このため、チタン板が上述したような結晶粒の粒度分布を満足しても、結晶方位の異なる結晶の集合体が発生すると、両集合体間での加工性が異なり、銅箔製造用ドラム製造時において、研磨時の加工量に差が発生する。この結果、得られるドラムにおいて結晶粒に近いサイズでの模様として認識されてしまう。したがって、本発明者らは、チタン板の集合組織をできる限り集積させることにより、上記の模様の発生を抑制できることを知見した。
以上の知見に基づき、本実施形態においては、チタン板は、結晶方位をBungeの表記方法によるオイラー角で表した場合に、集積度が最大となる方位を中心に方位差が15°以内の結晶方位を有する結晶粒の面積率が20%以上となる集合組織を有する。これにより、結晶方位が異なることで加工性が異なる結晶の集合体が抑制され、チタン板を銅箔製造用ドラムに用いた際に結晶方位の差に起因する模様の発生が視認できない水準まで抑制される。
さらに、チタン板の結晶粒の三次元的な結晶方位が特定の方向に揃っていることで、チタン板をドラムに加工する際の変形も均一になり、寸法精度を向上させ、また、局所的な残留応力やひずみのムラを抑制することができる。その結果、研磨後のドラムの平滑さを向上させることが可能となる。
ここで、図1を参照して、Bungeの表記方法によるオイラー角を説明する。図1は、Bungeの表記方法によるオイラー角によるチタン板のα相結晶粒の結晶方位を説明するための説明図である。試料座標系として、互いに直交する関係にある、RD(圧延方向)、TD(板幅方向)及びND(圧延面の法線方向)の3本の座標軸が示されている。また、結晶座標系として、互いに直交する関係にあるX軸、Y軸及びZ軸の3本の座標軸が示されている。そして、各座標系の原点が一致するようにそれぞれの座標軸が配置されており、hcpを示す六角柱がチタンのα相であるhcpの(0001)面の中心が原点と一致するように示されている。図1では、X軸は、α相の[10-10]方向と一致し、Y軸は、[-12-10]方向と一致し、Z軸は[0001]方向(C軸方向)と一致する。
Bungeの表記方法では、試料座標系のRD、TD、NDと結晶座標系のX軸、Y軸、Z軸とがそれぞれ一致した状態をまず考える。そこから、結晶座標系をZ軸回りに角度φ1だけ回転させ、φ1回転後のX軸(図1の状態)回りに角度Φだけ回転させる。最後にΦ回転の後のZ軸回りに角度φ2だけ回転させる。これらのφ1、Φ、φ2の3つの角度によって、結晶又は結晶座標系は、試料座標系に対して特定の傾いた状態で表される。すなわち、φ1、Φ、φ2の3つの角度を用いて、結晶方位は一義的に定められる。これら3つの角度φ1、Φ、φ2を、Bungeの表記方法によるオイラー角という。このBungeの表記方法によるオイラー角により、チタン板のα相結晶粒の結晶方位(C軸方向など)が規定される。
図1では、φ1は、試料座標系のRD-TD平面(圧延平面)と結晶座標系の[10-10]-[-12-10]平面との交線と、試料座標系のRD(圧延方向)とがなす角度である。Φは、試料座標系のND(圧延面の法線方向)と、結晶座標系の[0001]方向((0001)面の法線方向)とがなす角度である。φ2は、試料座標系のRD-TD平面(圧延面)と結晶座標系の[10-10]-[-12-10]平面との交線と、結晶座標系の[10-10]方向とがなす角度である。なお、圧延の場合、その対称性からφ1:0~90°、Φ:0~90°、φ2:0~60°の範囲で任意の方位を表記することができる。
最大集積方位を中心に方位差が15°以内の結晶方位を有する結晶粒の面積率は、以下のようにして求めることができる。チタン板を切断した断面を化学研磨し、EBSDを用いて結晶方位解析を行う。チタン板圧延面下部(鋼板の圧延面から板厚方向に1/8の位置から3/8の位置までの範囲)及び板厚中央部(鋼板の圧延面から板厚方向に3/8の位置から5/8の位置までの範囲)のそれぞれについて、(1/4×板厚)mm×2mmの領域をステップ1~5μmで2~10視野程度測定する。そのデータについて、TSLソリューションズ製のOIM Analysisソフトウェアを用いて結晶方位分布関数;ODF(Oriantation Disutribution Function)を算出する。結晶方位分布関数は、後方散乱電子線回折(EBSD;Electron Back Scattering Diffraction Pattern)法の球面調和関数法を用いたTexture解析を用いて算出できる(展開指数=16、ガウス半値幅=5°)。その際に、圧延変形の対称性を考慮し、板厚方向(ND)、圧延方向(RD)、板幅方向(TD)それぞれに対して線対称となるように、計算を行う。ODFは、測定された結晶方位がφ1-Φ-φ2の3次元空間(オイラー空間)にプロットされた三次元分布を分布関数で表したものである。図2は、本実施形態に係るチタン板の電子線後方散乱回折法により求められた結晶方位分布関数の一例を示す図である。図2は、オイラー空間を二次元で表示するために、オイラー空間を角度φ2方向に1度ごとに水平にスライスし、得られた断面を並べたものである。この結晶方位分布関数により、最大集積方位を求めることができる。なお、図2では、φ2=60°の断面において、最大集積方位が確認される。その後、OIM Analysisにより、前記最大集積方位中心に方位差が15°以内の結晶方位を有する結晶粒の面積率を算出する。
この最大集積方位は、Bungeの表記方法によるオイラー角で表した場合に、Φが10°以上35°以下かつφ1が0°以上15°以下であることが好ましい。最大集積方位が、Φが10°以上35°以下かつφ1が0°以上15°以下であることで、ドラムに成形時の加工が容易であり、表面硬度が高くなるという効果が得られる。
(1.1.3 金属組織の相構成)
本実施形態に係るチタン板の金属組織は、主としてα相を含むことが好ましい。β相は、α相よりも優先して腐食する。このため、均一な腐食を達成し、マクロ模様の発生を抑制する観点からは、β相は少ないほうが好ましい。一方で、β相が少量存在する場合、熱処理時の結晶粒成長を抑制できるため、均一かつ微細な結晶粒径を得ることができる。また、チタン板がCuを含有する場合、生成するTiCuは粒成長を抑制できるが、析出し過ぎると研磨性が変化する恐れがある。このような観点から、チタン板の金属組織は、β相、TiCuの体積率は、それぞれ、2.0%以下であることが望ましい。この場合において、チタン板の金属組織の残部はα相である。β相、TiCuの各体積率は、好ましくは1.0%以下であり、さらに好ましくは、チタン板の金属組織はα単相である。また、本実施形態に係るチタン板の金属組織におけるα相の体積率は、好ましくは98.0%以上、より好ましくは99.0%以上、さらに好ましくは100%である。すなわち、実質的にα相単相である。このような実質的なα相単相の金属組織は、上述したようなチタン板の化学組成により達成することができる。
また、チタン板の金属組織は、未再結晶粒が含まれないことが好ましい。未再結晶粒は、一般に、粗大であり、マクロ模様の原因となりうる。チタン板の金属組織は、好ましくは完全再結晶組織である。未再結晶粒の有無は、以下の方法で確認することができる。すなわち、アスペクト比が5.0以上である結晶粒を未再結晶粒とし、その有無を確認する。具体的には、チタン板を切断した断面を化学研磨し、電子線後方散乱回折法を用いて、チタン板圧延面下部(鋼板の圧延面のうちの一方の面から板厚方向に1/8の位置から3/8の位置までの範囲)及び板厚中央部(鋼板の圧延面から板厚方向に3/8の位置から5/8の位置までの範囲)のそれぞれについて、(1/4×板厚)mm×2mmの領域をステップ1~2μmで2~10視野程度測定する。その後、EBSDにより測定された5°以上の方位差境界を結晶粒界とし、この結晶粒界で囲まれた範囲を結晶粒とし、結晶粒の長軸および短軸を求め、長軸を短軸で除した値(長軸/短軸)をアスペクト比とし算出する。なお、長軸とは、α相の粒界上の任意の2点を結ぶ線分のうちで、長さが最大になるものをいい、短軸とは、長軸に直交し、かつ粒界上の任意の2点を結ぶ線分のうちで、長さが最大になるものをいう。
また、チタン板の金属組織を構成する各相の体積率は、特定の断面での面積率と一致するため、SEM(Scanning Electron Microscopy)/EPMA(Electron Probe Microanalyzer)により容易に測定・算出できることができる。チタン板の任意の断面に対し、鏡面まで研磨し、SEM/EPMAにより、倍率100倍にてFe及びCuの濃度分布を測定する。FeやCuは、β相又はTiCu部で濃化するため、これら元素の濃化部の面積率がβ相もしくはTiCuの体積率、すなわち濃化していない部分がα相の体積率となる。具体的な測定方法は、SEM/EPMAにて、表面から板厚の1/4の位置の、1mm×1mmの領域をステップ1~2μmで2~5視野程度測定する。この際、Fe濃度が全ての測定点のFe濃度から算出されるFeの平均濃度より1質量%以上高い点をβ相、Cu濃度が全ての測定点のCu濃度から算出されるCuの平均濃度より1質量%以上高い点をTiCuと定義し、各相の面積率を求めた。
(1.2 化学組成)
続いて、本実施形態に係るチタン板の化学組成について説明する。質量%で、N :0.10%以下、C :0.08%以下、H :0.015%以下、Fe:0%以上0.50%以下、O :0%以上0.40%以下、及び、Cu:0%以上1.50%以下、を含み、残部がTi及び不純物を含む。本実施形態に係るチタン板は、例えば、工業用純チタン、又は、前記工業用純チタン中のTiの一部に代え、0.1質量%以上1.5質量%以下のCuを含むチタン合金により構成されることが好ましい。
工業用純チタンは、Ti以外の含有元素が極めて少量である。これを用いた場合、チタン板の結晶相は実質的にα相単相である。チタン板を構成する相をα相単相とすることにより、チタン板をドラムに用いて当該ドラムを硫酸銅溶液に浸漬した場合に、ドラムが均一に腐食する。これにより、α相、β相の腐食速度の違いによるマクロ模様の発生が抑制される。
さらには、工業用純チタンは、熱間加工性に優れ、熱間圧延後の板形状が平坦になり、その後の矯正を少なくすることが可能である。このため、矯正によるひずみの付与及びこれに伴う転位や双晶の導入が抑制される。チタン板に転位や双晶が多く存在する場合、転位や双晶を起点として模様が発生したり、硫酸銅溶液に浸漬した場合に、表面が不均一に腐食したりする。工業用純チタンをチタン板の材料として用いることにより、このような問題が予め防止され、この観点からもマクロ模様の発生が抑制される。
これに対し、チタン板にAl等のα安定化元素を含有させることも考えられる。例えば、Alは、α単相域での熱処理により結晶粒成長を抑制する効果がある。しかしながら、Al等のα相安定化元素は、チタン板の高温強度を大きく向上させる。高温強度が高くなりすぎると、熱間圧延時の反力が大きくなりすぎ、熱延後のチタン板の形状が大きく歪み、チタン板が波形状になる。そのため、チタン板に対しその後の矯正が多く必要となるが、その際にひずみが付与されると転位や双晶が多く導入されてしまう。この結果、上述したように、チタン板をドラムに用いた際に、マクロ模様が発生しやすくなる。
また、チタン板の結晶粒径を制御するために、β相安定化元素を含有させてβ相を生成させ、β相によるピン止め効果を活用する方法が考えられる。しかしながら、β相はα相に比べ腐食されやすいため、β相が仮に集合してしまった場合、その部分で優先的に腐食が進行してマクロ模様が発生する可能性がある。その結果、そのマクロ模様が銅箔に転写される可能性がある。したがって、β相安定化元素をチタン板に含有させた場合、基本的にはマクロ模様の発生の抑制は困難である。
一方、β相安定化元素の中でもCuは、他の元素と異なり、α相中の固溶限が大きい。そのため、β相の集合組織を析出させずに、Cuをチタン板に含有させることが可能である。さらに、Cuは、固溶強化能が比較的大きいため、後述する表面硬さを高くするのにも有効である。そのため、Cuは、チタン板中のTiに代えて0.1質量%以上1.5質量%以下の範囲で含有させることが可能である。
以下、具体的に説明する。なお、以下では特に断りのない限り、「%」との表記は「質量%」を表わすものとする。
工業用純チタンとしては、例えば、JIS H 4600:2012に規定される1~4種及びASTM B348に規定されるGrade 1~4、F67等が挙げられる。また、上述した規格に準拠していない工業用純チタンや、上述した以外の規格に準拠した工業用純チタンであっても、当業者が技術常識を考慮して「工業用純チタン」と認識すべき範囲内で、本実施形態に係るチタン板の材料として使用できる。そして、上述した工業用純チタンを、本実施形態に係るチタン板が使用されるドラムの具体的な用途や仕様に合わせて適宜選択することができる。
具体的には、本実施形態に係るチタン板は、工業用純チタンが用いられる場合、
質量%で、
N :0.100%以下、
C :0.08%以下、
H :0.015%以下、
Fe:0.50%以下、及び
O :0.40%以下を含み、
残部がTi及び不純物を含む化学組成を有することができる。
また、本実施形態に係るチタン板は、上述した工業用純チタン中のTiの一部に代え1.5質量%以下のCuを含むチタン合金であることもできる。したがって、具体的には、本実施形態に係るチタン板は、上記チタン合金が用いられる場合、
質量%で、
N :0.100%以下、
C :0.08%以下、
H :0.015%以下、
Fe:0%以上0.50%以下、
O :0%以上0.40%以下、及び
Cu:0%以上1.50%以下を含み、
残部がTi及び不純物を含む化学組成を有することができる。
N :0.100%以下
上述した元素のうち、Nは、チタン板に多量に含有されると、チタン板の延性又は加工性を低下させる場合がある。よって、N含有量は、0.100%以下である。なお、Nは、不可避的に混入する不純物であり、実質的な含有量は、通常、0.0001%以上である。
C :0.08%以下
上述した元素のうち、Cは、チタン板に多量に含有されると、チタン板の延性又は加工性を低下させる場合がある。よって、C含有量は、0.08%以下である。なお、Cは、不可避的に混入する不純物であり、実質的な含有量は、通常、0.0001%以上である。
H :0.015%以下
上述した元素のうち、Hは、チタン板に多量に含有されると、水素化物を生成してチタン板の衝撃特性が劣化し、加工性を低下させる場合がある。よって、H含有量は、0.015%以下である。なお、H含有量は少ない方が良いが、Hは不可避的に混入する不純物であるため、実質的な含有量は、通常、0.0001%以上である。
O :0%以上0.40%以下
上述した元素のうち、Oは、チタン板のα相の強度の向上とともに、加工中の双晶変形の発生の抑制に寄与する。チタン板のα相の強度が向上することにより、チタン板の表面硬度が増大する。これにより、ドラム製造過程における研磨時に、表面が平滑になりやすい。また、双晶が抑制されることで、結晶方位分布のばらつきが抑制され、均一な研磨が可能となる。上記効果を得るためには、Oの含有量は、0.02%以上であることが好ましい。Oの含有量は、より好ましくは、0.03%以上である。
一方で、Oが過剰に含まれる場合、チタン板の強度が高くなりすぎ、矯正時に比較的大きな加工が必要となる。その結果、かえって双晶が発生しやすくなる可能性がある。また、表面硬度が大きくなりすぎると、チタン板をドラムとした際に研磨が困難となる。したがって、Oの含有量は、0.40%以下である。Oの含有量は、好ましくは0.15%以下、より好ましくは、0.12%以下である。
Fe:0%以上0.50%以下
Feは、β相を安定化する元素である。チタン板においてはβ相の析出量が多くなるとマクロ模様の生成に影響を及ぼすことがあるため、Feの含有量は、0.50%以下とする。Feの含有量は、好ましくは0.10%以下、より好ましくは0.08%以下である。
なお、Fe含有量は少ない方が良いが、Feが少量含有することでβ相をわずかに析出させ、β相のピン止め効果により粒成長が抑制される。また、FeはTi中に固溶した状態でもソリュートドラッグ効果により粒成長を抑制する。なお、Feは不可避的に混入する不純物でもあるため、実質的な含有量は、通常、0.0001%以上である。Fe含有量は、例えば、0.001%以上であってもよいし、0.01%以上であってもよい。また、β相のピン止め効果やソリュートドラッグ効果による粒成長抑制効果を得るために、Fe含有量は、0.02%以上であってもよい。
Cu:0%以上1.50%以下
Cuは、β相を安定化させるとともに、α相にも固溶し、α相を強化する。そして、Cuは、α相中への固溶限が大きいため、含有させてもβ相やTiCuを生成し難い。一方、Cuを1.50%超含有させると、TiCuが過度に析出し表面性状を劣化(マクロ模様形成)させることから、Cuの含有量を1.5%以下とする。Cuの含有量は、好ましくは1,30%以下、より好ましくは1.20%以下である。また、Cuは比較的固溶強化能が高いため、チタン板の後述する表面硬度を高くすることができ、研磨性を高めることが期待できる。さらに、TiCuは結晶粒成長を抑制するため、研磨性に影響しない程度でTiCuを析出させると、チタン板において均一かつ微細な結晶粒径が得られやすくなる。このような効果を得るために、チタン板は、好ましくは、0.10%以上、より好ましくは0.20%以上、さらに好ましくは0.40%以上のCuを含有してもよい。
本実施形態に係るチタン板の化学組成の残部は、Ti及び不純物であってよい。不純物とは、具体的に例示すれば、精錬工程で混入するCl、Na、Mg、Si、Ca及びスクラップから混入するAl、Zr、Sn、Mo、Nb、Ta、Vなどが挙げられる。これらの不純物元素が含有される場合、その含有量は、例えば、それぞれ0.1%以下であり、チタン板の不純物の含有量は、総量で0.5%以下であれば問題無いレベルである。
なお、上記にて説明したTi以外の各元素の含有量の下限値は0%であり、いうまでもなく、チタン板は、上記の各元素を含まなくてもよい。なお、上述したようなα相を主とした金属組織は、上述したようなチタン板の化学組成により達成することができる。
以上、本実施形態に係るチタン板の化学組成について説明した。
(1.3 長さ)
本実施形態に係るチタン板の長さは、特に限定されず、製造されるドラムの用途、仕様等に合わせて適宜設定することができる。本実施形態に係るチタン板は、後述するように、クロス圧延を行うことなく、一方向圧延で製造されるため、長尺のチタン板を製造することができる。よって、本実施形態に係るチタン板の長さは、例えば、20m以上、200m以下とすることができる。さらに、より長尺のチタン圧延コイルとすることができる。このチタン圧延コイルの長さは、本実施形態に係るチタン板と同様、特に限定されず、製造されるドラムの用途、仕様等に合わせて適宜設定することができ、例えば、20m以上、400m以下とすることができる。
(1.4 厚さ)
本実施形態に係るチタン板の厚さは、特に限定されず、製造されるドラムの用途、仕様等に合わせて適宜設定することができる。本実施形態に係るチタン板の板厚は、例えば、4.0mm以上15.0mm以下であり、6.0mm以上10.0mm以下としてもよい。銅箔製造ドラムの材料として用いられる場合、銅箔製造ドラムの使用に伴い、板厚が減少するため、チタン板の厚さの下限は、4.0mm以上とすることが好ましく、6.0mm以上であってもよいし、7.0mm以上であってもよい。また、本実施形態に係るチタン板の厚さの上限は、特に限定されないが、例えば、15.0mm以下であり、12.0mm以下であってもよいし、10.0mm以下であってもよいし、9.0mm以下であってもよい。
以上説明した本実施形態においては、結晶を微細のみならず所定の標準偏差内に収まる均一の大きさとし、さらにはBungeの表記方法によるオイラー角で表した場合に、集積度が最大となる方位を中心に方位差が15°以内の結晶方位を有する結晶粒の面積率が20%以上であるように集合組織が制御されている。したがって、銅箔製造用のドラムに使用した際にマクロ模様の発生を十分に抑制可能である。
なお、マクロ模様については、チタン板の表面を#800のエメリー紙により研磨し、硝酸10質量%、ふっ酸5質量%溶液を用いて、表面を腐食させることで観察することができる。図3、4に一例としてマクロ模様が発生したチタン板の表面の写真を示す。なお、図3と図4は、互いに異なるチタン板の写真である。「マクロ模様」とは、圧延方向に沿って数mm長さのスジ状に色の異なる部位が発生した部分を指す。例えば、図4では、図4(A)の矢印で示した箇所に、図4(B)に示した形状のマクロ模様が生成している。このようなマクロ模様がチタン板に発生すると、最終的に製造する銅箔に、このマクロ模様が転写されてしまう。
以上説明したように、本実施形態に係るチタン板は、生産性に優れ、銅箔製造用のドラムに使用した際にマクロ模様の発生を抑制可能であり、銅箔製造用のドラムの材料として適している。したがって、本発明は、その一局面において、本発明に係るチタン板を用いて製造された銅箔製造ドラムにも関する。
図5、6を参照して、本発明に係るチタン板を用いて製造された銅箔製造ドラムを説明する。図5は、銅箔製造ドラムの一使用態様を示す銅箔製造装置の模式図であり、図6は、本発明の一実施形態に係る銅箔製造ドラムを示す模式図である。銅箔製造装置1は、例えば、図5に示すように、硫酸銅溶液が溜められている電解槽10と、一部が硫酸銅溶液に浸漬されるように電解槽10内に設けられた電着ドラム20と、電解槽10内で硫酸銅溶液に浸漬され、電着ドラム20の外周面と所定間隔で対向するように設けられた電極板30と、を備える。電着ドラム20と電極板30との間に電圧を印加することで、電着ドラム20の外周面に銅箔Fが電着して生成する。所定厚さとなった銅箔Fは、巻取部40により銅箔製造ドラム20から剥離され、ガイドロール50でガイドされながら巻取ロール60に巻き取られる。
電着ドラム20は、円筒状のインナードラム21と、当該インナードラム21の外周面に沿って被着された本実施形態に係るチタン板22と、当該チタン板22の突き合わせ部に配された溶接部23と、インナードラムの側面に設けられた側板24と、回転軸25と、を備える。本実施形態に係る銅箔製造ドラムは、電着ドラム20の一部であり、円筒状のインナードラム21の外周面に沿って被着された本実施形態に係るチタン板22と、当該チタン板22の突き合わせ部に配された溶接部23と、で構成される。側板24は、インナードラム21及びチタン板22の軸方向の両端に被着されている。また、回転軸25は、インナードラム21の中心軸Aと同軸に、側板24に設けられている。
本実施形態に係る銅箔製造ドラムは、公知の方法で製造でき、例えば、本実施形態に係るチタン板をインナードラムの外側面に張設し、円筒状に加工したチタン板の突き合わされた2つの端部を公知の溶接棒で溶接して製造される。溶接部とは、溶接棒の凝固組織をいう。
本実施形態に係る銅箔製造ドラムのサイズは特段制限されないが、例えば、その直径を2~5mとすることができる。
このような銅箔製造ドラムは、マクロ模様の発生が抑制されており、高品質の銅箔を製造することができる。
本実施形態に係るチタン圧延コイルは、上述した本実施形態に係るチタン板と基本的に同様である。しかしながら、本実施形態に係るチタン圧延コイルは、上述したように、その長さにおいて、クロス圧延を行わず、一方向圧延を行い製造される。そのため、長尺とすることができ、例えば、20m以上とすることができる。このような長尺のチタン圧延コイルは、クロス圧延では製造することは不可能である。
なお、本実施形態に係るチタン圧延コイルを用いて銅箔製造ドラムを製造する場合、チタン圧延コイルを巻き戻し、製造する銅箔製造ドラムの大きさに応じて、チタン圧延コイルを切断しても当然構わない。チタン圧延コイルから切り出されたチタン板も本発明に係るチタン板に含まれる。したがって、本発明に係るチタン板は、上述したチタン板と、チタン圧延コイルから切り出されたチタン板と、を含む。
詳細な製造方法は後述するが、チタン圧延コイルから切り出されたチタン板の場合、例えば、サイズ160~250mm厚×1000~1500mm幅×40000~8000mm長のチタンスラブを連続圧延する。当該チタンスラブを熱間圧延して厚さ10mm、64~200m長の熱延板とし、コイル状に巻き取る。コイル状のチタン材(チタン圧延コイル)から、3~16m長さに切り出してチタン板とすることができる。
以上説明した本実施形態に係るチタン板及びチタン圧延コイルは、いかなる方法によって製造されてもよいが、例えば以下に説明する本実施形態に係るチタン板の製造方法及びチタン圧延コイルの製造方法により製造することもできる。
なお、本実施形態に係るチタン圧延コイルの製造方法は、本実施形態に係るチタン板の製造方法と基本的に同様である。具体的には、上述の条件にて熱間圧延後に、圧延コイルとして巻取りを行う。その後、連続炉やバッチ炉などを用いて、上述の条件の熱処理(焼鈍)を行う。必要に応じて矯正加工を施してもよい。なお、これらの巻取りなどの工程による金属組織の変化はほとんどなく、圧延後に直接板状のチタン素材を得ても、圧延コイルを切断してチタン素材を得ても、本発明に係る金属組織を得ることができる。
<2.チタン板の製造方法>
本実施形態に係るチタン板の製造方法では、一方向に圧延してチタン板を製造するチタン板の製造方法であって、圧延前の加熱温度が300℃以上600℃以下であり、圧下率が75%以上であり、最終圧延後のチタン素材の板厚の1.5倍の厚さから最終圧延後の板厚までのひずみ速度が0.05/s以上10.0/s以下であり、最終圧延後のチタン素材の表面温度が250℃以上500℃以下である圧延工程を行う。圧延工程後、チタン板を、600℃以上850℃以下の温度で1分以上480分以下の時間、熱処理(焼鈍)する。以下、本実施形態に係るチタン板の製造方法を詳細に説明する。
(2.1 チタン板の素材の準備)
まず、チタン板の素材(チタン素材)を準備する。チタン素材としては、上述した化学組成のものを用いることができ、公知の方法により製造されたものを用いることができる。例えば、チタン素材は、スポンジチタンから真空アーク溶解法や電子ビーム溶解法又はプラズマ溶解法等のハース溶解法等の各種溶解法によりインゴットを作製する。次に、得られたインゴットをα相高温域やβ単相域の温度で熱間鍛造することにより、チタン素材を得ることができる。なお、チタン素材には、必要に応じて洗浄処理、切削等の前処理が施されていてもよい。また、ハース溶解法で熱延可能な矩形のスラブ形状を製造した場合は、熱間鍛造などを行わず直接圧延に供しても良い。
(2.2 圧延工程)
本工程では、加熱されたチタン板の素材を一方向に圧延(熱間圧延)する。本工程において、圧延前の加熱温度が300℃以上600℃以下であり、圧下率が75%以上であり、最終圧延後のチタン素材の板厚の1.5倍の厚さから最終圧延後の板厚までのひずみ速度が0.05/s以上10.0/s以下であり、最終圧延後のチタン素材の表面温度が250℃以上500℃以下である。
本工程における加熱温度を300℃以上600℃以下として、300℃以上加熱温度以下の温度で圧延することにより、チタン板の素材の双晶変形を抑制することが可能となる。チタン板の素材を一軸圧延する際、すべり変形とともに双晶変形が生じる。一般に、集合組織は、すべり変形によって発達するが、双晶変形が発生すると、結晶方位が大きく変化するため、集合組織の集積度が低下する。しかしながら、加熱温度を300℃以上600℃以下として、300℃以上加熱温度以下の温度で圧延することで、双晶変形が抑制されて集積度が高くなる。さらに、加熱温度が300℃以上600℃以下では、再結晶が生じないため、圧延中に方位がランダム化しにくく、集合組織の集積度を高めることが可能となる。加熱温度の上限は、好ましくは550℃であり、より好ましくは500℃である。また、加熱温度の下限は好ましくは350℃であり、より好ましくは400℃である。
本工程における圧下率を75%以上とすることにより、集合組織の集積度を高めることができ、また、結晶粒径分布を均一にすることができる。集積度が高まり、結晶粒径分布が均一となることで、マクロ模様の発生を防止することが可能となる。一方で、圧下率が低いと、圧延前の結晶方位分布によっては、結晶が安定な結晶方位まで回転することができなくなり、集積度が低下する。また、圧下率が低いと、圧延前の結晶方位分布によっては、局所的にひずみが入っていない領域が発生し、圧延後に焼鈍を行った場合に、そのひずみが入っていない領域で結晶粒が大きくなり、結晶粒径分布が不均一となる。その結果、マクロ模様が形成される。圧下率は、好ましくは、80%以上、より好ましくは、85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
また、本工程においては、最終圧延後のチタン素材の板厚の1.5倍の厚さから最終圧延後の板厚までのひずみ速度は、0.05/s以上10.0/s以下である。一般の圧延工程における最終板厚付近のひずみ速度は、30.0/s程度以上である。このように、本工程では、最終板厚付近のひずみ速度を従来の圧延工程よりも小さくしてチタン板の素材が圧延される。最終圧延後のチタン素材の板厚の1.5倍の厚さから最終圧延後の板厚までのひずみ速度を0.05/s以上10.0/s以下とすることで、生産性を維持しながら結晶方位が集積した集合組織を得ることが可能となる。最終圧延後のチタン素材の板厚の1.5倍の厚さから最終圧延後の板厚までのひずみ速度が10.0/s超であると、上述した圧延温度であっても、双晶変形が活発化し、結晶方位が特定の方向に集積した集合組織を得ることができない。一方、最終圧延後のチタン素材の板厚の1.5倍の厚さから最終圧延後の板厚までのひずみ速度が、0.05/s未満であると、生産性が著しく低下する。最終圧延後のチタン素材の板厚の1.5倍の厚さから最終圧延後の板厚までのひずみ速度は、生産性の観点から、より好ましくは、0.1/s以上である。また、最終圧延後のチタン素材の板厚の1.5倍の厚さから最終圧延後の板厚までのひずみ速度は、好ましくは、8.0/s以下であり、より好ましくは、6.0/s以下である。
本工程における最終圧延後のチタン素材の表面温度を250℃以上500℃以下とすることにより、双晶変形がさらに抑制され、特定方位への集積がより増加するという効果が得られる。上記の圧延開始温度とともに、最終圧延後のチタン素材の表面温度が250℃以上500℃以下となるようにチタン素材を圧延することにより、双晶変形がさらに抑制され、所定の方位への集積がより増加する。最終圧延後のチタン素材の表面温度は、好ましくは、275℃以上であり、より好ましくは、300℃以上である。また、最終圧延後のチタン素材の表面温度は、好ましくは、480℃以下であり、より好ましくは、450℃以下である。
本工程における圧延は、チタン素材を長手方向に延伸する一方向圧延であり、長手方向と幅方向に圧延するクロス圧延を行わない。クロス圧延を行うと、Bungeの表記方法によるオイラー角で表した場合に、集積度が最大となる方位(最大集積方位)を中心に方位差が15°以内の結晶方位を有する結晶粒の面積率が20%以上である金属組織が得られない。上述した条件で一方向圧延を行うことにより、チタン板の組織を制御することができる。また、一方向圧延では、圧延方向を変更する作業がないため、製造工期を短縮することができる。また、クロス圧延は、チタン素材の長さが制限されるが、本工程では、クロス圧延を行わず、一方向圧延を行うため、歩留まりを向上することが可能となり、生産性を向上させることが可能となる。
以上の圧延工程の後に、熱処理工程を実施する。以下に、熱処理工程を説明する。
(2.3 熱処理工程)
本工程では、600℃以上850℃以下の温度で1分以上480分以下の時間、圧延工程後のチタン素材を保持する熱処理(焼鈍)を行う。これにより、未再結晶粒を再結晶させ、かつ粒成長を抑制することができる。これにより、得られるチタン板の金属組織中の結晶粒を均一かつ細粒にすることができる。この結果、マクロ模様の発生をより確実に抑制できる。
具体的には、圧延工程後のチタン素材を600℃以上の温度で1分以上保持することにより、未再結晶粒を十分に再結晶粒として析出させることができる。また、圧延工程後のチタン素材を850℃以下の温度で480分以下の時間熱処理することにより、一部の結晶粒が粗大になることを防止することができる。熱処理温度は、好ましくは、630℃以上である。また、熱処理温度は、好ましくは、820℃以下である。熱処理時間は、好ましくは、2分以上である。また、熱処理時間は、好ましくは、240分以下である。
なお、熱処理は、大気雰囲気、不活性雰囲気もしくは真空雰囲気のいずれで行っても良い。
また、チタン素材の熱処理工程では連続炉が用いられることが多い。連続炉を用いる場合は、熱処理時間は、好ましくは、1分以上であり、好ましくは、5分以下である。一方、圧延コイルの熱処理工程ではバッチ炉が用いられることもある。その場合は、チタン圧延コイルの熱処理時間は、好ましくは、120分以上であり、好ましくは、480分以下である。
以上の工程により、本実施形態に係るチタン板を得ることができる。なお、必要に応じて、熱処理工程の後に、以下の後処理工程を施してもよい。以下に、後処理工程を説明する。
(2.4 後処理工程)
後処理としては、酸洗や切削による酸化物スケール等の除去や、洗浄処理等が挙げられ、必要に応じて適宜適用することができる。あるいは、後処理として、チタン板の矯正加工を行ってもよい。但し、双晶が生成することから、冷間圧延は行わないことが好ましい。
以上、本実施形態に係るチタン板の製造方法について説明した。なお、本実施形態に係るチタン圧延コイルの製造方法は、本実施形態に係るチタン板の製造方法と基本的に同様とすることができる。具体的には、上述の条件にて熱間圧延後に、圧延コイルとして巻取りを行う。その後、連続炉やバッチ炉などを用いて、上述の条件の熱処理(焼鈍)を行う。必要に応じて矯正加工を施してもよい。なお、これらの巻取りなどの工程による金属組織の変化はほとんどなく、圧延後に直接板状のチタン素材を得ても、圧延コイルを切断してチタン素材を得ても、本発明に係る金属組織を得ることができる。さらに、本実施形態に係るチタン板及びチタン圧延コイルは、一方向圧延により製造され、クロス圧延を行わないため、製造工期を短縮することが可能となる。その結果、生産性を向上させることが可能となる。また、本実施形態に係るチタン板及びチタン圧延コイルは、クロス圧延を行わず一方向圧延により製造されるため、クロス圧延を行い製造される一般のチタン板と比較して長尺とすることが可能となる。
以下に、実施例を示しながら、本発明の実施形態について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明のあくまでも一例であって、本発明が下記の例に限定されるものではない。
1.チタン板の製造
まず、真空アーク溶解法により作製したインゴットを熱間鍛造することにより、表1の化学組成を有するチタンの素材A~Hを得た。なお、表1中、「Bal.」は残部を表す。
Figure 0007140275000001
次に、得られたチタン板の素材を表1に示す圧延温度、圧下率で一方向圧延を行った。最終圧延後のチタン素材の板厚の1.5倍の厚さから最終圧延後の板厚までのひずみ速度を、表2に示すひずみ速度とした。なお、表2に示す「ひずみ速度」は、最終圧延後のチタン素材の板厚の1.5倍の厚さから最終圧延後の板厚までのひずみ速度であり、「表面温度」は、圧延完了時のチタン素材の表面温度である。
次に、大気雰囲気下、表2に記載される温度、時間にて、熱処理を行い、長さが約30mであり、表2に示す厚さのチタン板を得た。
2. 分析・評価
本実施例における各発明例及び比較例に係るチタン板について、以下の項目について分析及び評価を行った。
2.1 結晶粒径
各発明例及び比較例に係るチタン板の金属組織の結晶の平均結晶粒径及び粒度分布の標準偏差は、以下のようにして測定、算出した。チタン板を切断した断面を化学研磨し、EBSDを用いて、チタン板圧延面下部及び板厚中央部のそれぞれについて、(1/4×板厚)mm×2mmの領域をステップ1~2μmで2~10視野程度測定した。その後、結晶粒径についてはEBSDにより測定された5°以上の方位差境界を結晶粒界とし、この結晶粒界で囲まれた範囲を結晶粒とし、結晶粒面積より円相当粒径(面積A=π×(粒径D/2))を求め、この個数基準の平均値を平均結晶粒径とし、さらに、結晶粒径分布より対数正規分布(各結晶粒の円相当粒径Dを自然対数LnDに変換した変換値の分布)における標準偏差σを算出した。
また、未再結晶粒の有無を、以下の方法で確認した。すなわち、アスペクト比が5.0以上である結晶粒を未再結晶粒とし、その有無を確認した。具体的には、チタン板を切断した断面を化学研磨し、電子線後方散乱回折法を用いて、チタン板圧延面下部及び板厚中央部のそれぞれについて、(1/4×板厚)mm×2mmの領域をステップ1~2μmで2~10視野程度測定した。その後、EBSDにより測定された5°以上の方位差境界を結晶粒界とし、この結晶粒界で囲まれた範囲を結晶粒とし、結晶粒の長軸および短軸を求め、長軸を短軸で除した値(長軸/短軸)をアスペクト比とし算出した。なお、長軸とは、α相の粒界上の任意の2点を結ぶ線分のうちで、長さが最大になるものをいい、短軸とは、長軸に直交し、かつ粒界上の任意の2点を結ぶ線分のうちで、長さが最大になるものをいう。
2.2 集合組織
各発明例及び比較例に係るチタン板の集積度が最大となる方位、及び集積度が最大となる方位を中心に方位差が15°以内の結晶方位を有する結晶粒の面積率は、以下のようにして測定、算出した。チタン板を切断した断面を化学研磨し、EBSDを用いて結晶方位解析を行う。チタン板表面下部及び板厚中央部のそれぞれについて、(1/4×板厚)mm×2mmの領域をステップ1~5μmで2~10視野程度測定した。そのデータについて、TSLソリューションズ製のOIM Analysisソフトウェアを用いてODFを算出し、このODFから、集積度のピーク位置及び面積率を算出した。ODFは、後方散乱電子線回折(EBSD)法の球面調和関数法を用いたTexture解析を用いて算出した(展開指数=16、ガウス半値幅=5°)。その際に、圧延変形の対称性を考慮し、板厚方向、圧延方向、板幅方向それぞれに対して線対称となるように、計算を行った。なお、表2に示す「最大方位」は、集積度が最大となる方位であり、「Φ」及び「φ1」は、Bungeの表記方法に基づく角度である。
2.3 マクロ模様
マクロ模様については、5~10枚程度の50×100mmサイズの各発明例及び比較例に係るチタン板の表面を#800のエメリー紙により研磨し、硝酸10質量%、ふっ酸5質量%溶液を用い表面を腐食させることで観察した。次いで、3mm以上の長さのスジ状の模様をマクロ模様とし、発生割合に応じて下記のように評価を行った。
A:発生割合が1.0個/枚以下(非常に良好、50×100mmの中に1.0個以下)
B:発生割合が1.0個/枚超10.0個/枚以下(良好、50×100mmの中に1.0個超10.0個以下)
C:発生割合が超10.0個/枚超(不合格、50×100mmの中に10個超)
得られた分析結果・評価結果を表2に示す。なお、表2に示す「面積率」は、集積度が最大となる方位を中心に方位差が15°以内の結晶方位を有する結晶粒の面積率である。また、表2中の「再結晶未完」とは、未再結晶部が確認されたことを示す。
Figure 0007140275000002
表2に示すように発明例1~24に係るチタン板は、マクロ模様が抑制されていた。これに対し、比較例1~10に係るチタン板は、マクロ模様が発生した。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 銅箔製造装置
10 電解槽
20 電着ドラム
21 インナードラム
22 チタン板
23 溶接部
24 側板
25 回転軸
30 電極板
40 巻取部
50 ガイドロール
60 巻取ロール

Claims (7)

  1. 質量%で、
    N :0.10%以下、
    C :0.08%以下、
    H :0.015%以下、
    Fe:0%以上0.50%以下、
    O :0%以上0.40%以下、及び、
    Cu:0%以上1.50%以下、を含み、
    残部Ti及び不純物である化学組成を有し、
    平均結晶粒径が40μm以下であり、
    結晶粒径(μm)の対数に基づく粒度分布の標準偏差が0.80以下であり、及び、
    結晶方位をBungeの表記方法によるオイラー角で表した場合に、集積度が最大となる方位を中心に方位差が15°以内の結晶方位を有する結晶粒の面積率が20%以上である、チタン板。
  2. 前記集積度が最大となる方位が、Bungeの表記方法によるオイラー角で表した場合に、Φが10°以上35°以下かつφ1が0°以上15°以下である、請求項1に記載のチタン板。
  3. 質量%で、Cu:0.10%以上1.50%以下を含む、請求項1又は2に記載のチタン板。
  4. 銅箔製造ドラム用チタン板である、請求項1~3のいずれか一項に記載のチタン板。
  5. 質量%で、
    N :0.100%以下、
    C :0.08%以下、
    H :0.015%以下、
    Fe:0%以上0.50%以下、
    O :0%以上0.40%以下、及び、
    Cu:0%以上1.50%以下、を含み、
    残部Ti及び不純物である化学組成を有し、
    平均結晶粒径が40μm以下であり、
    結晶粒径(μm)の対数に基づく粒度分布の標準偏差が0.80以下であり、及び、
    結晶方位をBungeの表記方法によるオイラー角で表した場合に、集積度が最大となる方位を中心に方位差が15°以内の結晶方位を有する結晶粒の面積率が20%以上である、チタン圧延コイル。
  6. 長手方向の長さが20m以上である、請求項5に記載のチタン圧延コイル。
  7. 円筒状のインナードラムの外周面に沿って被着された、請求項1~4のいずれか一項に記載のチタン板と、
    前記チタン板の突き合わせ部に配された溶接部と、を有する、銅箔製造ドラム。
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