JP5609784B2 - 電解Cu箔製造ドラム用チタン合金厚板とその製造方法 - Google Patents

電解Cu箔製造ドラム用チタン合金厚板とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電子部品の多層配線板、フレキシブル配線板やリチウムイオン電池の負極集電体などに使用される銅箔(Cu箔と記す)を製造するためのドラム用チタン材であって、均一でかつ緻密な板面金属組織を有するチタン合金厚板およびその製造方法に関するものである。
これらの用途に用いられるCu箔は、Cu原料を硫酸溶液に溶解させた硫酸銅溶液中で、Pbやチタンなどの不溶性金属を陽極、幅1m以上、直径数mのドラムを陰極とし、ドラムを回転させつつドラム上にCuを連続的に電析させ、これを連続的に剥離させ、ロール状に巻き取るという方法で製造されている。ドラムの材料としては、耐食性に優れること、Cu箔の剥離性に優れること、などの観点から、チタンが使用されている。
しかし、いかに高耐食性のチタン材といえども、使用中に電解液中で徐々に腐蝕を受けて、新たに出現した面の状態がCu箔に転写されるようになる。金属の腐蝕というのは、その金属材料の有する組織、結晶方位、欠陥、偏析、加工歪み、残留歪みなど様々な内質要因によってその程度が異なることが知られており、このような不均質な内質状態の材料からなるドラムが使用中に腐蝕を受けると、均質な面状態が維持できなくなる。
このような不均質な組織のうち、肉眼で判別できるものを「マクロ模様」と呼ぶ。Cu箔製造用チタンドラムの場合、マクロ組織は、表面を600番のサンドペーパーで研磨した後、硝酸約10%、沸酸約5%、残り水のエッチング液に数十秒〜数分間浸漬することにより観察できる。何らかの原因により、数ミリメートル長さでも不均質な組織があると、それらの部分はエッチング状態が異なるため、肉眼で判別される。したがって、素材チタン材のマクロ組織を均質にすること、すなわちマクロ組織中に生ずるいわゆる「マクロ模様」を低減することが、ドラムの均質な腐蝕を達成し、高精度かつ均質な厚さのCu箔を製造するための必須事項である。
これに対して、特許文献1には、チタン及びチタン合金板の製造方法として、950℃以上の加熱温度で粗熱延し、仕上げ圧延における加熱温度を700℃以下とし、仕上げ圧延を粗熱延の方向にほぼ直角な方向に変えるクロス熱延を実施する方法が記載されている。
特許文献2には、最表面から1/3板厚にわたる板面に平行な表層部において、平均粒径が40μm以下であり、さらに、集合組織が[0001]0°〜±45°TD、かつ、[0001]0°〜±25°RD(ただし、[0001]はc軸方位、TDは板幅方向、RDは圧延方向)であることを特徴とする表層部組織に優れた純チタン製銅箔製造ドラム用チタンが提案されている。
また、特許文献3には、結晶粒度7.0以上、かつ初期水素含有量が35ppm以下であることを特徴とする電解銅箔製造用のチタン材とその製造方法として、圧延開始温度を200℃以上550℃未満、圧延終止温度を200℃以上で圧下率40%以上の圧延を行う方法が提案されている。
特許文献4には、Cuを質量%で0.15%以上、0.5%未満、特許文献5には、Cuを0.5%以上、2.1%以下含むCu箔製造ドラム用チタン板が提案されている。
特開昭60−9866号公報 特開2002−285267号公報 特開2002−194585号公報 特開2009−41064号公報 特開2005−298853号公報
近年、電子部品で使用されるCu箔の表面品質は、Cu箔の薄肉化に伴いさらに厳しく問われるようになり、肉眼で判別できる「マクロ模様」のみならず、研磨時の表面の毟れの不均一に起因する直径数十μm以下のミクロサイズの欠陥も問題となる場合が出てきている。
特許文献1に開示された方法は、仕上げ熱延における加熱温度を低下させることにより、粗大結晶粒起因のマクロ模様の出現を抑制し、仕上げ圧延を粗圧延の方向に直角な方向にクロス圧延を行うことにより、圧延方向に生じるバンド状のマクロ模様を抑制できるが、上記ミクロサイズの欠陥の出現は抑制できない。
また特許文献2では、純チタンにおいて、β温度域における分塊鍛造後急冷、α温度域で粗圧延後、仕上げ圧延を650〜750℃の温度で、粗圧延の方向に直角な方向にクロス圧延し、焼鈍後、冷延、再焼鈍を行うことにより、特徴のある集合組織を得、マクロ的不均一模様のないCu箔製造ドラム用純チタン材を得ている。
しかし、この方法は工程が複雑、かつ、製造条件管理も煩雑である。また、集合組織は、c軸が板法線方向とほぼ平行な(傾きは25°以内)、Center−Pole−texture、c軸がTD方向に35〜45°傾く、Split−TD−texture およびc軸がTD方向に35〜45°傾く、Split−RD−textureの単一もしくは複合的集合組織である。この集合組織は、c軸がTD方向に70°以上傾くTransverse−textureの全結晶粒の割合が数十%以上存在するため、隣接する結晶粒の面方位が大きく異なる場合がある。結晶粒の面方位の境界では、研磨時の毟られ方が顕著となり、ミクロレベルの欠陥が生じる場合がある。
また、同特許文献には、「集合組織が[0001]0°〜±45°TD、かつ、[0001]0°〜±25°RD(ただしTDは板幅方向、RDは圧延方向)であることを特徴とする」という定性的な記述はあるが、集合組織の特徴を定量的に記載していない。
特許文献3では、結晶粒度7.0以上、かつ初期水素含有量が35ppm以下であることを特徴とする電解Cu箔製造用のチタン材とその製造方法として、圧延開始温度を200℃以上550℃未満、圧延終止温度を200℃以上で圧下率40%以上の圧延を行う方法が提案されている。しかし、結晶粒度7.0以上、かつ初期水素含有量35ppm以下の純チタン材は、純チタン製品としては極普通の結晶粒度、かつ、水素含有量であり、この程度の組織微細化と水素含有量抑制による水素化物の生成抑制だけでは、ミクロサイズの欠陥は抑制できない。
特許文献4では、Cuを質量%で0.15%以上、0.5%未満、特許文献5には、Cuを0.5%以上、2.1%以下含むCu箔製造ドラム用チタン板が提案されている。さらに、特許文献5には、α+β二相温度域に加熱し、熱間圧延を行い、500℃以上β変態点以下の温度域で焼鈍、さらに冷間圧延を行い、500℃以上、β変態点以下の温度域で焼鈍するCu箔製造ドラム用チタン板の製造方法が提案されている。しかし、この方法は工程が複雑、かつ、製造条件管理も煩雑である。また、特許文献および特許文献5に記載の技術は、ミクロサイズの欠陥の抑制に関しても不十分である。
以上のような現状に鑑み、本発明は、Cu箔製造ドラム用チタン材で、マクロ模様のみならず、研磨時の毟れに起因するミクロサイズの欠陥(直径数十μm以下の欠陥)がなく均一微細な板面金属組織を有し、複雑な加工熱処理に頼ることなく製造可能で、高品質の電解Cu箔を製造することのできるドラム用チタン材、及びその製造方法を提供しようとするものである。
本発明者らは、Al添加チタン合金について、その表面結晶方位と研磨時の表面の毟れ状態、およびミクロサイズの欠陥発生の関係を調査し、その製造方法について鋭意検討を重ねた結果、マクロ模様だけでなく、ミクロサイズの欠陥を抑制可能な集合組織を見出し、その製造プロセスを見出すにいたった。
本発明はかかる知見に基づいて完成させたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で、Al:0.4〜1.8%を含み、残部チタンと不可避不純物からなり、板厚が4mm以上で、表面下1.0mmおよび1/2板厚部の板面に平行な部位において、平均結晶粒度が8.2以上、かつ、ビッカース硬度が115以上、145以下であり、表面下1mmから1/2板厚部にわたる板面に平行な部位において、集合組織が、最終圧延方向RD、圧延面の法線ND、圧延幅方向をTD、(0001)面の法線をc軸としたとき、圧延面より法線方向からのα相の(0001)面極点図において、c軸のTD方向への倒れの角度が−45〜45°、また、c軸のRD方向への倒れの角度が−25〜25°である楕円の領域にc軸が存在する結晶粒の総面積をA、それ以外の結晶粒の総面積をBとし、面積比A/Bが3.0以上であることを特徴とする電解Cu箔製造ドラム用チタン合金厚板。
(2)(1)記載の電解Cu箔製造ドラム用チタン合金厚板の製造方法であって、(1)の成分からなるチタン合金を800〜900℃に加熱し、圧下率60%以上の熱間圧延を行い、600〜750℃の熱処理を施すことを特徴とするチタン合金厚板の製造方法。
(3)(1)記載の電解Cu箔製造ドラム用チタン合金厚板の製造方法であって、(1)の成分からなるチタン合金を800〜900℃に加熱し、圧下率60%以上の熱間圧延を行い、600〜750℃の熱処理を施した後、圧下率30%以上の冷間圧延を行い、その後600〜750℃で熱処理を行うことを特徴とするチタン合金厚板の製造方法。
以上説明したように、本発明により、ミクロサイズの欠陥発生が少なく均一微細な板面金属組織を有し、高品質の電解Cu箔を製造するに適した、電解Cu箔製造ドラム用チタン合金厚板及びその製造方法を、複雑な加工熱処理工程を経ることなく提供することができる。
従来のチタン製ドラム材の表面に生じた毟れの写真。 c軸のTD方向への倒れの角度が、TD方向に±45°、c軸のRD方向への倒れの角度が±25°であるような楕円の領域を示す模式図。 (0001)極点図の例。 TD方向に−45〜45°、RD方向に−25〜25°となる楕円を示すウルフネット。
本発明のチタン合金厚板は、電解Cu箔製造ドラムに用いられるものである。電解Cu箔製造ドラムは、電解Cu箔製造用のカソード電極として用いることが好ましい。
本発明(1)のチタン合金厚板は、質量%で、Al:0.4〜1.8%と残部チタン、不可避不純物からなる。
まず、各組成を上記範囲に限定した理由について説明する。
本発明のAl濃度範囲(0.4〜1.8%)を含むチタン合金は、変態温度より低いα単相温度域で圧延することにより、純チタン材に比べて結晶粒成長が抑制されるため、より微細な組織となる。加工再結晶組織は、加工前の組織が微細であるほど均質微細となる。均質微細組織とするためには、Alの添加量は0.4〜1.8%であることが必要である。Alの含有量が0.4%未満の場合、結晶粒微細化の効果はなく、一方、1.8%を超えて含有すると、硬度が高くなりすぎて、ドラム製造時に行う表面の研削、研磨、及び、電解Cu箔生成の合間に行う研磨に要する時間が著しく増えるとともに、研磨斑を起因とするマクロ模様が発生しやすくなる。
不可避不純物とは、精錬、溶解等の製造工程で、材料中への混入が避けられない不純物元素を指すものであり、例えば0.1%以下の酸素、0.05%以下の鉄、窒素、炭素、Ni、Cr、Mn、Mg、Sn、Al、V、Si、0.012%以下の水素等を指す。この内、酸素はドラムへの成形性の観点から0.06%以下、鉄は耐腐食性の観点から0.04%以下、水素は対衝撃性の観点から0.006%以下が望ましい。
また、電解Cu箔製造用ドラムとしての使用に伴い、板厚の若干の減少が発生するため、板厚は4mm以上であることが必要である。
本発明のチタン合金厚板においては、表面下1.0mmおよび1/2板厚部の板面に平行な部位において、平均結晶粒度が8.2以上であり、かつ、ビッカース硬度が115以上、145以下であると規定した。
本発明で問題とするのは、肉眼で判別できる「マクロ模様」のみならず、研磨時の表面の毟れの不均一に起因する直径数十μm以下のミクロサイズの欠陥である。毟れは、結晶粒が微細であるほど微小となる。十分に微小な毟れは、欠陥ではない。微細な結晶粒による毟れの抑制効果は平均結晶粒度が8.2以上で顕著となる。結晶粒は微細なほど良いが、実質的には平均結晶粒度8.2〜10.5の範囲のものが望ましい。
また、研磨時の毟れを小さく、または、毟れそのものを発生しにくくするため、表面の硬度はある程度の硬さを有することが望ましい。ビッカース硬度が115以上であれば、毟れは微小となり、毟れを効果的に抑制できる。ただし硬すぎると研磨そのものが困難となるためビッカース硬度の上限を145以下とする。
本発明のチタン合金厚板では、表面下1mmから1/2板厚部にわたる板面に平行な部位において、集合組織が、最終圧延方向RD、圧延面の法線ND、圧延幅方向をTD、(0001)面の法線をc軸としたとき、圧延面より法線方向からのα相の(0001)面極点図において、c軸のTD方向への倒れの角度が−45〜45°、また、c軸のRD方向への倒れの角度が−25〜25°である楕円の領域にc軸が存在する結晶粒の総面積をA、それ以外の結晶粒の総面積をBとし、面積比A/Bが3.0以上であることを規定した。
これにより、大部分の結晶粒のc軸が板面に対して垂直に近い集合組織を有し、最終的にマクロ不均一組織はもとより、ミクロサイズの欠陥もない均質微細な結晶組織、同欠陥の原因となる表面の毟れが微小または発生しにくい組織が得られる。
チタン製ドラム材表面の毟れとは、図1のaに示す部分のこと、である。c軸のTD方向への倒れの角度が、TD方向に±45°、また、c軸のRD方向への倒れの角度が±25°であるような楕円の領域というのは、図2の模式図に示す楕円の部分である。
集合組織を上記のように規定した理由は以下のとおりである。
Cu箔製造ドラム用チタン材でこれまで問題になっていたのは主にマクロ不均一模様に関するものである。マクロ不均一模様は肉眼で容易に識別できる程度、大きさで言うと数mmレベルの表面欠陥で、粗大粒の残存や、熱間圧延時に残留した筋状の圧延組織等に起因するものであるため、熱間圧延時にクロス圧延を行うことや、α温度域での加工量を十分取ること等により解決されていた。
一方、直径数十μm以下のミクロサイズの欠陥は、隣接する結晶粒の方位が関係している。α型チタン材料の各結晶粒はHCP構造(六方最密充填構造)をしているが、HCPの底面(0001)面は最稠密であるため、柱面(10−10)面に比べ硬度が高く、研磨条件によっては、表面の毟られ方が異なる。したがって、これらの面が隣接して存在すると一方はあまり毟られず、一方は顕著に毟られるため、境界部分の差が顕著となり、直径数十μm(結晶粒径と同等サイズ)以下のミクロサイズの欠陥として認識されるようになるのである。ドラム材の各結晶粒が完全にランダムだとしても、上記のような組み合わせはどこかに生じるため、局所的に欠陥が生じることになる。
このような事実に鑑み、発明者らは、結晶粒のほとんどが底面(0001)面か、それに近い方位の面に揃っていれば、研磨時の欠陥は抑制できることを見出した。
すなわち、最終圧延方向RD、圧延面の法線ND、圧延幅方向をTD、(0001)面の法線をc軸としたとき、圧延面より法線方向からのα相の(0001)面極点図において、c軸のTD方向への倒れの角度が−45〜45°、また、c軸のRD方向への倒れの角度が−25〜25°であるような楕円の領域にc軸が存在する結晶粒の総面積をA、それ以外の結晶粒の総面積をBとし、面積比A/Bが3.0以上である集合組織とする。
チタン材のc軸はRD方向に比べTD方向には倒れ方が大きい。c軸のTD方向への倒れの角度は0〜45°とした。上限を45°としたのは、これを超えると角度0°の結晶粒表面との硬度差が顕著となるため、研磨時の毟れの差が大きくなるためである。c軸のRD方向への倒れの角度は0〜25°である。c軸はRD方向へはTD方向に比べ倒れないため、上限は25°とした。
本発明(1)に記載した、c軸のTD方向への倒れの角度が0〜45°、また、c軸のRD方向への倒れの角度が0〜25°であるような楕円の領域にc軸が存在する結晶粒の総面積A、それ以外の結晶粒の総面積B、面積比A/Bは以下のようにして算出する。
まず、当該試料の観察表面を化学研磨し、電子線後方散乱回折法;EBSP(Electron Back Scattering Diffraction Pattern)を用いて結晶方位解析する。1mm×1mmの領域を、ステップ1〜2μmでスキャンし、(0001)極点図(図3)を作図する。
図中の黒い点は(0001)面の法線、すなわちc軸の板面に対して傾斜した角度を示している。その角度は、図4に示すウルフネットに重ね合わせることにより読み取ることができる。ウルフネットでTD方向に−45〜45°、RD方向に−25〜25°となる楕円(図4中のb)内にある黒点の密度とそれ以外の部分にある黒点の密度の比が、本発明(3)で規定する、c軸が楕円bの領域にある結晶粒の総面積Aと、c軸が楕円b以外の部分にある結晶粒の総面積Bの比A/Bに相当する。
図4中の楕円bの領域及びそれ以外の領域にある黒点の密度は、それぞれ画像解析により読み取ることにより得る。A/B3.0以上は、観察範囲の結晶粒の中で75%以上の結晶粒のc軸が、中央付近の領域に集まっていることを意味する。
面積比A/Bを3.0以上とするのは、3.0未満だと中央付近への集積が少なく、c軸が板面に対して倒れた結晶粒が多くなり、研磨時の毟れが顕著となるためである。面積比A/Bの上限はAが100%で、Bがゼロとなる場合であるが、実際にはそのような場合はなく、面積比A/Bは3.0〜19.0であることが好ましい。
本発明(2)記載の製造方法は、(1)記載の電解Cu箔製造ドラム用チタン合金厚板の製造方法であって、(1)の成分からなるチタン合金を800〜900℃に加熱し、圧下率60%以上の熱間圧延を行い、600〜750℃の熱処理を施すことを特徴とするチタン合金厚板の製造方法である。
(1)の成分からなるチタン合金を800〜900℃に加熱後圧延することにより、α単相温度域において圧延を行うことが可能となる。(1)記載の成分からなるチタン合金をα単相温度域で圧延し、600〜750℃の熱処理を施し再結晶させることにより、粒成長を抑制し、微細結晶粒組織を得ることができる。
圧延時の加熱温度が800℃を下回ると材料に疵が多くなり、疵取りのため多くの切削が必要となるため、圧延時の加熱温度は800℃以上とした。一方、加熱温度が900℃を超えると、β単相温度域となり、粒成長が著しく進み、Cu箔製造用ドラム材料として不適である。
圧下率60%未満では加工が不十分で、再結晶時十分微細とならないため、圧下率は60%以上とした。圧下率は高いほど微細組織が得られるが、95%を超えると圧延荷重が増大し圧延機への負荷が高くなりすぎるため、95%程度までが適当である。
熱処理温度は600℃未満では再結晶が不十分であり、750℃以上では粒成長により粗粒となるため、600〜750℃とした。
本発明(3)では、(2)記載の熱処理後、圧下率30%以上の冷間圧延を行い、その後600〜750℃で熱処理を行うことを特徴とする。
結晶粒度が8.2より著しく大きな結晶粒を得るにはα温度域での熱間加工、熱処理の後に冷間圧延を行うことがより効果的である。圧下率は30%より小さいと結晶組織微細化の効果が得られないため、圧下率30%以上とした。圧下率は高いほど微細組織が得られ、(1)記載の集合組織を十分形成させるためには40%以上の圧下を行うことが望ましい。冷間圧延後の熱処理温度は600℃未満では再結晶が不十分であり、750℃以上では粒成長により粗粒となるため、600〜750℃とした。
本発明を、実施例を用いてさらに詳しく説明する。
(実験1)
表1に示した成分からなるインゴット200kgを、真空アーク2回溶解により準備し、これを熱間鍛造後、スケール除去し、表2に示す厚さのスラブとした。このスラブについて、表2に示す加熱温度、熱間圧延圧下率、熱処理温度の条件により、加熱して熱間圧延を行い、熱処理を施してCu箔製造ドラム用のチタン板を作製した。
これらのチタン板の表面下1mm、および1/2板厚部の表面を機械研磨し鏡面にした後、コロイダルシリカを用いて研磨した。その後、FE−SEM(Field Emission−Scanning Electron Microscope)/EBSPを用いて結晶方位解析を実施した。なお、EBSP測定については、試料の平均的な情報を得るため、試料ごとに1mm×1mmの範囲、5視野をステップ2μmで測定し、(0001)極点図を作図、ウルフネットでTD方向に−45〜45°、RD方向に−25〜25°となる楕円(図4中のb)内にある黒点の密度とそれ以外の部分にある黒点の密度を画像解析により求め、その比(A/B)を求めた。
また、これらのチタン板から50mm×70mmの試験片を切り出し、表面下1mmの面と板厚1/2の面をフライス加工により表出し、サンドペーパー研磨600番で研磨した後、ポリビニール・アルコールのアセタール化物を結合剤とする弾性砥石(砥粒はSiC、粒度#600、以下PVA砥石と称す)により研磨し、SEM観察により、表面の状態を観察した。尚、潤滑油は石油を使用した。表面の状態は、PVA研磨後の毟れの状態を観察した。100×130μmの領域に毟れが、5個以上あれば、「やや多い」、2〜4個であれば「微少」、1個以下を「ほぼ無し」と評価した。
また、マクロ不均一模様に関しては、同じくチタン板から50mm×70mmの試験片を切り出し、表面下1mmの面と板厚1/2の面をフライス加工により表出し、サンドペーパー研磨600番で研磨した後、硝酸10%、フッ酸5%の水溶液に約4分間浸漬し、肉眼で筋模様の発生有無を調査した。
結晶粒度は小片の表層下1mmと1/2板厚部の表面のそれぞれ任意の5箇所のミクロ組織を光学顕微鏡観察し、ミクロ組織よりJISG0551に準拠して測定した。ビッカース硬度についても同様の面の硬度を荷重1kgで5点測定し、平均した。
表2に製造条件と各測定値、および研磨時毟れ等の評価結果をまとめた。
No.2−1〜14は、本発明の実施例である。電解Cu箔製造ドラムの板厚は10mm以下程度であるため、熱間圧延後の板厚は7、8、9、10mmとし、熱間圧延前の板厚を20〜150mmにすることにより、熱間圧延の圧下率60%以上を確保した。
本発明のいずれの試作材についても、表面下1mm、1/2板厚部のいずれの表面においても、結晶粒度も8.2以上、ビッカース硬度も115以上、145以下であり、また、c軸の板面法線方向への集積を示すA/Bは3.0以上であり、マクロ不均一模様は発生しなかった。また、表面下1mmをPVA研磨した際の毟れの発生は、「ほぼ無し」または「微少」であり、毟れを起因とするミクロ欠陥の発生が抑制された電解Cu箔製造ドラム用チタン材料が製造できた。
一方、熱間圧延時の加熱温度が、770℃と低温のNo.2−15では、熱間圧延時に温度の低下が著しく、圧延後表面に疵が発生し、疵を除去するためには製品厚さよりも切削加工する必要が生じ、使用不可となった。
また、熱間圧延時の加熱温度が、920℃とβ温度域にはずれたNo.2−16では、粒成長が顕著となり、結晶粒度が7.3前後と小さく、ビッカース硬度も110未満で低め、なおかつ研磨時の毟れもやや多かった。
圧延時の圧下率が50%、または33%と低いNo.2−17、18では、粒成長がやや顕著で、結晶粒度がいずれも8.2よりも低く、表面下1mm、および1/2板厚部ともに硬度は115に満たなかった。さらに1/2板厚部のA/Bが3.0に満たず、集合組織が十分発達しなかった。
熱処理温度が本発明より低いNo.2−19では、再結晶せず筋状のマクロ模様が残り不適、熱処理温度が本発明より高いNo.2−20では、結晶粒度が小さく、集合組織の発達が不十分であった。
また、Alを構成成分に含まないNo.2−21、Alの含有量が0.3%と少ないNo.2−22では結晶粒度が小さく、硬度も低く、集合組織の発達も不十分であった。
一方、Alの含有量が本発明よりも多いNo.2−23では、研磨斑を起因とするマクロ模様が発生し、使用不可であった。
(実験2)
表1に示したNo.1−1〜10の成分からなるインゴット200kgを、真空アーク2回溶解により準備し、これを熱間鍛造後、スケール除去し、表3に示す厚さのスラブとした。このスラブについて、表3に示す加熱温度、熱間圧延圧下率、熱処理(I)温度、冷間圧延圧下率、熱処理(II)温度の条件により、加熱して熱間圧延を行い、熱処理(I)を施した後、冷間圧延を行い、熱処理(II)を施してCu箔製造ドラム用のチタン板を作製した。実験1と同じく表3に各測定値、および研磨毟れ、マクロ模様等の評価をまとめた。
No.3−1〜7は、本発明の実施例である。本発明のいずれの試作材についても、表面下1mm、1/2板厚部のいずれの表面においても、結晶粒度も8.2以上、ビッカース硬度も115以上、145以下であり、また、c軸の板面法線方向への集積を示すA/Bは3.0以上であり、マクロ不均一模様は発生しなかった。また、表面下1mmをPVA研磨した際の毟れの発生は、「ほぼ無し」であり、毟れを起因とするミクロ欠陥の発生が抑制された電解Cu箔製造ドラム用チタン材料が製造できた。
一方、Alを構成成分に含まないNo.3−8、Alの含有量が0.3%と少ないNo.3−9では結晶粒度が小さく、硬度も低く、集合組織の発達も不十分であった。一方、Alの含有量が本発明よりも多いNo.3−10では、研磨斑を起因とするマクロ模様が発生し、使用不可であった。
冷間圧延時の圧下率が23%と低いNo.3−11では、粒成長が顕著で、結晶粒度がいずれも8.2よりも低く、表面下1mm、および1/2板厚部ともに硬度は115に満たなかった。さらに1/2板厚部のA/Bが3.0に満たず、集合組織が十分発達しなかった。その結果、研磨時の毟れがやや多く発生した。
また、熱処理(II)の温度が本発明より高いNo.3−12でも、粒成長が顕著で、結晶粒度がいずれも8.2よりも低く、表面下1mm、および1/2板厚部ともに硬度は115に満たなかった。さらに1/2板厚部のA/Bが3.0に満たず、集合組織が十分発達しなかった。その結果、研磨時の毟れがやや多く発生した。

Claims (3)

  1. 質量%で、Al:0.4〜1.8%を含み、残部チタンと不可避不純物からなり、
    板厚が4mm以上で、表面下1.0mmおよび1/2板厚部の板面に平行な部位において、平均結晶粒度が8.2以上、かつ、ビッカース硬度が115以上、145以下であり、
    表面下1mmから1/2板厚部にわたる板面に平行な部位において、集合組織が、最終圧延方向RD、圧延面の法線ND、圧延幅方向をTD、(0001)面の法線をc軸としたとき、圧延面より法線方向からのα相の(0001)面極点図において、c軸のTD方向への倒れの角度が−45〜45°、また、c軸のRD方向への倒れの角度が−25〜25°である楕円の領域にc軸が存在する結晶粒の総面積をA、それ以外の結晶粒の総面積をBとし、面積比A/Bが3.0以上であることを特徴とする電解Cu箔製造ドラム用チタン合金厚板。
  2. 請求項1記載の電解Cu箔製造ドラム用チタン合金厚板の製造方法であって、請求項1の成分からなるチタン合金を800〜900℃に加熱し、圧下率60%以上の熱間圧延を行い、600〜750℃の熱処理を施すことを特徴とするチタン合金厚板の製造方法。
  3. 請求項1記載の電解Cu箔製造ドラム用チタン合金厚板の製造方法であって、請求項1の成分からなるチタン合金を800〜900℃に加熱し、圧下率60%以上の熱間圧延を行い、600〜750℃の熱処理を施した後、圧下率30%以上の冷間圧延を行い、その後600〜750℃で熱処理を行うことを特徴とするチタン合金厚板の製造方法。
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