JP4987614B2 - 電解Cu箔製造ドラム用チタン板およびその製造方法 - Google Patents

電解Cu箔製造ドラム用チタン板およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、電子部品のプリント配線板などに使用される銅箔(Cu箔と記す)を製造するためのドラム用チタン板、およびその製造方法に関するものである。
プリント配線板に用いられるCu箔は、圧延法で作られるものの他に、高品位のCu原料を硫酸溶液に溶解させた硫酸銅溶液中で、PbやTiなどの不溶性金属を陽極とし、直径2m超、幅1m超の円筒形ドラムを陰極とし、ドラムを回転させながら電気化学的にドラム上にCuを電析させ、これを連続的に剥離し、ロール状に巻き取るという方法で製造されている。ドラムの材料としては、耐食性に優れるという観点から、近年チタンが多く使用されている。
電子部品の配線パターンは極めて微細で(幅0.1〜0.5mm)高い精度が要求されることから、プリント配線に使用されるCu箔の面粗さも極めて高い精度・均質性が要求される。この面粗さは、Cu箔が電着していたチタン製ドラムの表面状態を継承していることから、チタン製ドラムの表面は高度に研磨・整面した後使用される。
ドラムの表面に不均質な模様があると模様がCu箔に転写されるため、高精度かつ均質な厚さのCu箔が製造できなくなるという問題が発生するため、チタン製ドラムの表面は、全体が均質かつ緻密な組織であることが求められる。
このような均質かつ緻密な組織をもつチタン製ドラム板を製造する方法として、Cuを含有させ、α+β温度域で熱間加工することにより均質組織を得る発明が、特許文献1〜3に記載されている。特許文献1では、Cuを0.5〜2.1%、Feを0.04%以下、酸素を0.1%以下含み、残部チタンと不可避不純物からなる均質微細再結晶組織を有するチタン合金ドラム用素材が提示されている。また、特許文献2では、Cuを0.1〜2.1%、水素を120ppm以下、および、残部チタンと、それぞれ0.05%以下の酸素、鉄、窒素、炭素等の不可避不純物からなる、水素化物の生成し難いチタン合金ドラム用素材が提示されている。また、特許文献3では、Cuを0.5〜2.1%、Ruを0.05〜1.00%、Feを0.04%以下、酸素を0.10%以下含み、残部チタンと不可避不純物からなる耐食性に優れたチタン合金ドラム用素材が提示されている。
特開2004−2953号公報 特開2004−250753号公報 特開2005−298853号公報
しかしながら、特許文献1および3記載のチタン合金材では、α+β温度域で熱間加工した後に材料中には微量であるが、TiとCuの析出物(Ti2Cu相)が生成する。これは、電解液によるドラムの腐食の不均質につながり、近年の高精度かつ均質なCu箔の品質に影響を与えるため、再固溶させる必要がある。そのためには、図1に示す、TiとCuの二元系平衡状態図からわかるとおり、660℃を超える比較的高温での熱処理が必要であり、その際に結晶粒径が粗大化するという問題があった。結晶粒径は粗大でも電解Cu箔製造用ドラムとして使用可能ではあるが、結晶粒径は微細な方が電解Cu箔の表面品質が良好であるため、平均結晶粒径は35μm未満であることが望ましく、そのため、さらに冷間圧延を施し、低温で再結晶熱処理する方法が取られる。しかし、板厚5mm以上の厚板製品を製造する上で、冷間圧延工程を含む製造工程は複雑であり、製造工期がかかるなどの問題があった。
また、特許文献2記載のチタン合金材では、酸素は不可避不純物として扱われ、0.05%以下であることが記されている。チタン合金の硬度は、酸素含有量によって左右されるが、0.05%以下では硬度が不十分であるため、ドラム表面を回転砥石で研磨して製品とする際、表面のムシレ(肉眼で確認できる毛羽立ち状の粗い研摩面の状況)の度合いが大きくなり、研磨後の外観が白っぽく曇り、光沢がやや鈍り、電解Cu箔の表面品質にも影響するという問題があった。
そこで、本発明では、冷間圧延および再結晶熱処理をせずとも、熱間加工後の熱処理のみで、TiとCuの金属間化合物(Ti2Cu相)の析出がない微細な組織を有し、かつドラム用のチタン材料として適度な硬度を有する電解Cu製造用チタン製ドラム板とその製造法を提供することを目的としている。
本発明者らは、チタンへのCuの添加量とTiとCuの金属間化合物(Ti2Cu相)析出の関係、および熱間圧延後の熱処理温度と結晶粒径の関係、さらに、電解Cu箔製造用ドラムの研磨時に最適な硬さについて鋭意研究を重ねた結果、冷間圧延および再結晶熱処理をせずとも、熱間加工後の熱処理のみで、TiとCuの金属間化合物の析出がなく、微細かつ均質な組織を有する電解Cu製造用チタン製ドラム板とその製造法を見いだすに至った。
本発明はかかる知見に基づいて完成させたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で、Cu:0.15%以上、0.5%未満、酸素:0.05%超、0.20%以下、Fe:0.04%以下を含み残部チタンと不可避不純物からなり、平均結晶粒径が35μm未満のα相均質微細再結晶組織からなることを特徴とする、電解Cu箔製造ドラム用チタン板。
(2)質量%でさらに、Ruを0.05〜1.00%含有することを特徴とする、前記(1)に記載の電解Cu箔製造ドラム用チタン板。
(3)前記(1)または(2)に記載の成分を有するチタン板の素材を、α+βの二相温度域に加熱直後、熱間圧延し、さらに700℃以下のα単相温度域にて焼鈍を行うことを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の電解Cu箔製造ドラム用チタン板の製造方法。
(4)前記(1)または(2)に記載の成分を有するチタン板の素材を、700〜850℃に加熱後、575〜800℃で熱間圧延し、さらに以下で示される温度T℃にて焼鈍を行うことを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の電解Cu箔製造ドラム用チタン板の製造方法。
730[%Cu]0.126≦T≦670(℃)
ここで、[%Cu]はCuの含有量(質量%)である。
本発明により、マクロ模様が無く均質微細な板面金属組織を有し、高品質の電解Cu箔を製造するに適した、電解Cu箔製造ドラム用チタン板及びその製造方法を、複雑な加工熱処理工程を経ることなく提供することができる。
まず、本発明の含有成分について説明する。
前述のように、本発明チタン板は、電解Cu箔製造ドラムとして使用した場合において、電解Cu箔の品質を確保するために、電解Cu箔が生成する該表面において、析出相がほとんどなく、平均結晶粒径35μm未満の均質微細な、α単相再結晶組織を有することが必要である。
本発明で微細とは、平均結晶粒径が35μm未満であることを意味する。また、均質とは、α単相であり、不可避的析出相を除いて第二相がなく、結晶粒径分布も混相状態となっていないことを意味する。
この目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、質量%で、Cu:0.15%以上、0.5%未満、酸素:0.05超、0.20%以下、Fe:0.04%以下、を含み、残部チタンと不可避不純物からなることとした。
Cu、Feおよび酸素を上記範囲に限定した理由について説明する。
チタン板製品の組織を均質微細とするために、Cuは、請求項3に記載の発明において熱間圧延時のα+β二相温度域を確保する目的で、0.15%以上添加することが必要である。また、水素固溶量を上げて、不可避的に侵入した水素による水素化物の析出を抑える目的で、同じく0.15%以上添加することがのぞましい。
さらに、請求項3に記載の発明において、α+β二相温度域における熱間圧延後のα単相化熱処理温度を700℃以下、すなわち結晶粒径を平均粒径で35μm以上に粗大化させず、かつTi2Cuを析出させない熱処理温度とするためには、0.5%未満であることが必要である。
請求項4に記載の発明においても、α単相温度域で、熱間圧延した後の焼鈍温度を670℃以下とし、結晶粒径を平均粒径で35μm以上に粗大化させず、かつTi2Cuを析出させない熱処理温度とするためにも、Cu量の上限は、0.5%未満であることが必要である。したがって、Cuの含有成分範囲は0.15%以上、0.5%未満とした。
酸素はドラム板の適度な硬度を得るために添加した。ドラム表面は回転砥石で研磨され製品となるが、硬度が低いと研磨時に表面のムシレが大きくなり、研磨後の外観が白っぽく曇り、光沢がやや鈍るという問題が生じる。これに対し、表面のビッカース硬度を120〜180程度にコントロールすることにより、表面ムシレの少ない光沢のあるドラム表面を得ることが出来る。このような硬度とするために必要な酸素の含有量は、0.05%超、0.20%以下である。
Feは、β相を安定化する元素であり、α相中への固溶量は極めて小さく最も多量に固溶する温度においても高々0.04%である。これを超えてFeが添加されると、Feの濃化したβ相が出現するようになるが、このβ相は腐食環境下で優先的に溶解し、ピット状の窪みとなりやすい。このような窪みが面上に存在すると、電析するCu箔に転写されるため、高品質のCu箔が製造できなくなる。したがって、Fe含有量は0.04%以下であることが必要である。Fe量の下限は特に規定しないが、不純物として通常0.005%以上含有している。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明に加え、Ruを0.05〜1.00%含有することを特徴とする電解Cu箔製造ドラム用チタン板である。
Ruは、Ti−Cu合金の均質微細な組織を維持しつつ、硫酸溶液に対する耐食性を向上させる。Ruはα相中に固溶するため、硫酸溶液に対する耐食性を有しながら、組織均質性は維持されるため、硫酸溶液中で長時間使用しても表面の凹凸の出現が起こりにくい。Ru添加による硫酸溶液に対する耐食性向上の効果が得られる最低量は0.05%であり、1.00%を超える添加では効果は飽和するため、Ruの添加量を0.05〜1.00%に限定した。
Cuの濃化したβ相やTi2Cu相が少量存在しても、高品質のCu箔の製造が可能なドラムを製造することができるが、これらを完全に消失させ、完全にα単相とすると、電解液による腐食は著しく均質となり、大変高品質なCu箔が製造できるようになる。このため、低温平衡相Ti2Cu相は熱処理により再固溶させ、α単相にする必要がある。
平均結晶粒径を35μm未満としたのは、35μm以上では、電析したCu箔のチタンドラムと接触している表面がややざらついたように見え、特に厚さ10μm以下の薄手のCu箔では、形状に影響を及ぼすためである。平均結晶粒径は好ましくは20〜30μmが望ましい。なお、平均結晶粒径の測定は、切断法(JISG0551)で行う。
以上述べたような、電解Cu箔製造ドラム用チタン板は、請求項3または4に記載の方法で製造することができる。まず、請求項3に記載の製造方法について説明する。
請求項3の発明においては、最初に、当該チタン材をα+β二相温度域で加熱し、直後に熱間圧延する。請求項1に記載の発明におけるCu添加によって、十分なα+β二相温度域を出現させることができる。したがって、圧延途中でこの温度域に入れば当初の目的は達成できるが、最初からスラブをこの温度域に加熱し、直後に圧延すれば確実にこの目的は達成される。α+β二相温度域としては、860〜880℃であるため、加熱温度も860〜880℃とすることが望ましい。このように、α+β二相域温度で熱間圧延を行うことにより、均質な結晶組織を得ることができる。α+β二相域で熱間圧延すると、動的再結晶が生じても、α相とβ相が互いの結晶粒成長を妨げ合うために、結晶粒径の粗大化を防止できる。その後冷却時に、β相はα相に変態し、結果的に、平均結晶粒径の小さなα単相組織が得られる。
また、熱間圧延後は、当該チタン材のα単相の温度域で焼鈍することとした。これにより、熱延後に混在していたβ相やTi2Cu相はすべてα相となり、完全なα単相組織が実現する。この状態は、α+β二相域やα+Ti2Cu域での焼鈍に比べ、単相状態であることから結晶粒成長しやすいが、先にα+β二相域で高度に歪みが蓄積されているため、不必要に焼鈍時間を長くしない限り、均質微細再結晶組織が達成できる。また、冷却中にα+Ti2Cu二相域を通過するが、α相からのTi2Cu相の析出は極めて遅いため、実質的にα単相状態が室温で達成できる。そのため、請求項1または2に記載の電解Cu箔製造ドラム用チタン板が製造でき、電解液による腐食が極めて均質となり、大変高品質なCu箔が製造可能となる。ただし、焼鈍温度は、含有Cu量に応じて、α単相温度域内として、時間としては、600〜700℃で30分以下程度行うことが、結晶粒の粗大化を防ぐために望ましい。これにより、平均粒径35μm未満の均質微細組織が得られる。
さらに、請求項4に記載の発明による製造方法によっても、請求項1または2に記載の電解Cu箔製造ドラム用チタン板を製造することができる。以下に、請求項4に記載の製造方法について説明する。
請求項4に記載の発明は、α単相域の比較的低温度の範囲で熱間圧延および焼鈍を行って均質微細再結晶組織を得るための発明である。
まず、素材を700〜850℃のα単相域で加熱することで、素材金属組織内のβ相または、Ti2Cu相をα相中に分解・固溶させることができる。加熱温度が700℃未満では、素材がスラブまたはインゴットの場合、加熱前に内部に存在していたβ相またはTi2Cu相を十分に分解・固溶させ、α単相にすることが難しい。一方、素材の加熱温度を850℃を超えた温度で行うと、α+β領域に入り、β相が析出する。β相が析出した状態で、請求項4に記載された比較的低温度で熱間圧延及び焼鈍を行うと、β相があった部位に濃化したCuが十分に拡散せずに偏析したままの状態となり、その部分にTi2Cu析出を生じる。Ti2Cuは、前述のように電解液によるドラムの腐食の不均一につながり、Cu箔製造時のCu箔品質を低下させる。このため、加熱温度の上限は850℃とする。なお、Cuの偏析部位があると、850℃付近に保持した場合、その部位にβ相を生じる場合がある。このため、操業の安定度を考慮すると、加熱温度上限は800℃未満の方がなお良い。チタン原子の拡散が比較的遅い低温度のα単相領域において圧延を行うため、再結晶後の結晶粒成長が抑えられ、結果的に、平均結晶粒径の小さなα単相組織が得られる。
次に、素材をα単相とした後、575〜800℃と比較的低いα単相温度域で熱間圧延を行う。575℃より低温で熱間圧延すると、Ti2Cu相を析出する場合がある。また、800℃以上の高温で熱間圧延すると、回復現象が早期に生じ、十分な累積歪をためることができずに、その後の焼鈍時の結晶粒径にばらつきを生じ、平均粒径も35μmを超えて大きくなり、電解Cu箔製造ドラムとして不適切となる。したがって、575〜800℃の単相温度域で熱間圧延を行うことで、十分な累積歪をためた後、次式で規定される焼鈍温度T℃で焼鈍を行うことで、平均粒径35μm未満の均質微細再結晶組織が得られる。
730[%Cu]0.126≦T≦670(℃)
ここで、[%Cu]はCuの含有量(質量%)である。
この焼鈍温度Tの規定における、730[%Cu]0.126 なる式は、Ti−Cu平衡状態図における550〜790℃までのαTi中のTi2Cu析出曲線を[%Cu]のべき乗関数として表した近似式である。この規定は、α単相域での焼鈍を行うためのものであり、Ti2Cuの析出を避け、かつ、焼鈍温度の上限を設け、焼鈍再結晶時の結晶粒の成長を抑えて、α相単相の均質微細再結晶組織を得るための制限を与えるものである。焼鈍温度Tが、670℃を超えると、再結晶時の結晶粒成長速度が大きくなり、平均粒径35μm未満の均質微細組織が安定的に得られなくなる。このため、焼鈍温度Tの上限温度を670℃とした。
本発明を、実施例を用いてさらに詳しく説明する。
〔実施例1〕
表1に示した成分からなるインゴットを、真空アーク2回溶解により準備し、これを分塊圧延して厚さ150mmのスラブとした。このスラブを860〜880℃に加熱直後に、熱間圧延を行い、厚さ8mmの板に熱間圧延し、600〜700℃で30分焼鈍した。
Figure 0004987614
評価法の第一のポイントである、均質組織かどうかという点については、マクロエッチング後の目視観察で確認した。具体的には、上記の厚板から板厚×8cm×10cmの検査用試験片を切り出し、板面に平行に黒皮部を含めて1mm研削し、更に#600の研磨を行って硝酸約10%、沸酸約5%、残り水のマクロ腐食液に数十秒〜数分浸漬してエッチングし、表面に肉眼で何らかの模様が見えるかどうか観察を行った。
また、別途切り出した小片の表面ミクロ組織を光学顕微鏡観察することにより、結晶粒径とビッカース硬度を測定した。平均結晶粒径の測定はJISG0551に準拠した。Ti2Cuの析出有無については、ミクロ組織の光学顕微鏡観察の観察と共に、X線回折でTi2Cuのピークが出ているか否かを確認した。
表1において、請求項1に記載の成分に相当するNo.1〜12をα+β二相温度域に加熱し、圧延後、α温度域で焼鈍することにより、平均結晶粒径35μm未満で、ビッカース硬度が適切な(Hv=120〜180)、α相均質微細組織を有する電解Cu箔製造ドラム用チタン板が、熱間圧延、焼鈍という簡易な製造プロセスにより得られた。
No.10〜12は、本発明2に相当する。硫酸溶液に対する耐食性を向上させるためにRuを添加している。pH=0.5の沸騰硫酸溶液に24時間浸漬し、その質量変化から腐食速度を求めたところ、No.10、11、12ではそれぞれ、0.21、0.18、0.16mm/yearであり極めて高い耐腐食性を示した。ちなみにRuの添加のないNo.1では、同腐食速度は、2.5mm/yearであった。
一方、Cu含有量が本発明の範囲を超えるNo.13では、均質組織であり、硬度も研磨に適したものであったが、Ti2Cu析出物の再固溶のため、700℃の焼鈍が必要となり、平均結晶粒径が35μmを超え、粗粒であった。
酸素の含有量が本発明の範囲を超えるNo.14では、α相均質微細組織が得られるが、硬度が高すぎて、研磨に適さない上、円筒形状への加工が困難となった。
また、酸素含有量が本発明の範囲を下回るNo.15では、硬度が低く研磨を行ったときに表面が白く見える現象がおき、電解Cu箔製造ドラム用チタン板として不適切であった。
比較例No.16は、熱間圧延後の焼鈍をα+Ti2Cuの温度域で行ったものである。このとき、X線回折でTi2Cu析出物のピークが見られ、8cm×10cmの試料表面に1mm〜3mmの大きさのマクロ模様が数個観察された。
Feの含有量が本発明の範囲を超えるNo.17では、マクロエッチングの際、ピットが発生し、それが試料表面に模様となって観察された。
以上、実施例1の結果から、請求項1または2に記載の発明のチタン板は、電解Cu箔製造ドラムとして適しており、かつ請求項3に記載の製造方法によって請求項1または2に記載のチタン板が提供できることがわかった。
〔実施例2〕
表2に示した成分からなるインゴットを、真空アーク2回溶解により準備し、これを分塊圧延して厚さ150mmのスラブとした。このスラブを700〜850℃0.3〜2時間加熱し、650〜800℃の温度域で熱間圧延を行い、厚さ8mmの板とし、600〜700℃で0.4〜2時間焼鈍した。
Figure 0004987614
評価法の第一のポイントである、均質組織かどうかという点については、マクロエッチング後の目視観察で確認した。具体的には、上記の厚板から板厚×8cm×10cmの検査用試験片を切り出し、板面に平行に黒皮部を含めて1mm研削し、更に耐水研摩紙#600の研磨を行って硝酸約10%、沸酸約5%、残り水のマクロ腐食液に数十秒〜数分浸漬してエッチングし、表面に肉眼で何らかの模様が見えるかどうか観察を行った。
また、別途切り出した小片の表面ミクロ組織を光学顕微鏡観察することにより、結晶粒径とビッカース硬度を測定した。平均結晶粒径の測定はJISG0551に準拠した。Ti2Cuの析出有無については、エッチングしたミクロ組織の光学顕微鏡観察試料の観察と共に、X線回折でTi2Cuのピークが出ているか否かを確認した。必要に応じて、光学顕微鏡観察試料を用いて、エネルギー分散型X線分析器付き走査電子顕微鏡観察・分析を行って、Ti2Cuの析出有無を確認した。
本発明例では、平均結晶粒径35μm未満のα相均質微細組織を有する、ビッカース硬度が適切な(Hv=120〜180)、電解Cu箔製造ドラム用チタン板が、熱間圧延および焼鈍という簡易な製造プロセスにより得られ、マクロ模様が観察されず、Ti2Cu析出も認められなかった。一方、比較例では、No.50〜52を除いて、マクロ模様またはTi2Cu析出が確認された。また、No.50および51はビッカース硬度が適切ではなかった。
一方、本発明例No.30と比較例No.52を用いて電解Cu箔製造ドラムを作製し、実際の電解Cu箔製造工程に適用し、電解Cu箔製造を3000時間行った段階で、No.52を用いた場合の電解Cu箔の目視検査による品質が、No.30を用いた場合に比べ劣化が認められた。この段階で、両ドラム表面から調査用試料を切り出し、断面を鏡面研摩した試料を、10質量%サリチル酸メチル−2質量%塩化テトラメチルアンモニウム−メチルアルコール溶液中にて、−200100mV vs. SCE(標準甘汞電極:水銀−塩化水銀標準電極)で、定電位電解を行い、表面近傍の試料内に微量析出した析出相の有無を確認した。抽出レプリカ法を用いた透過電子顕微鏡観察により、No.30では、目立った析出相はなかったが、No.52においては析出相が確認でき、この析出相は、電子線回折により、チタン水素化物と同定した。
すなわち、含有Cu量の低いNo.52では電解Cu箔製造中に侵入した水素により水素化物を生成し、電解Cu箔の品質を低下させたが、含有Cu量の高いNo.30では、水素の固溶限が高いため、水素化物の生成が抑えられ、操業中、電解Cu箔の品質が高いまま維持されたと考えられる。
以上、実施例2の結果から、請求項1または2に記載の発明のチタン板は、電解Cu箔製造ドラムとして適しており、かつ、請求項4の発明によっても、請求項1または2に記載のチタン板が製造できることがわかった。
TiとCuの二元系平衡状態図の一部を示す図である。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    Cu:0.15%以上、0.5%未満
    酸素:0.05%超、0.20%以下
    Fe:0.04%以下、
    を含み、残部チタンと不可避不純物からなり、平均結晶粒径が35μm未満のα相均質微細再結晶組織からなることを特徴とする、電解Cu箔製造ドラム用チタン板。
  2. 質量%でさらに、Ruを0.05〜1.00%含有することを特徴とする、請求項1に記載の電解Cu箔製造ドラム用チタン板。
  3. 請求項1または2に記載の成分を有するチタン板の素材を、α+βの二相温度域に加熱直後、熱間圧延し、さらに700℃以下のα単相温度域にて焼鈍を行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の電解Cu箔製造ドラム用チタン板の製造方法。
  4. 請求項1または2に記載の成分を有するチタン板の素材を、700〜850℃に加熱後、575〜800℃で熱間圧延し、さらに以下で示される温度T℃にて焼鈍を行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の電解Cu箔製造ドラム用チタン板の製造方法。
    730[%Cu]0.126≦T≦670(℃)
    ここで、[%Cu]はCuの含有量(質量%)である。
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