JP4267284B2 - 曲げ加工性に優れたAl−Mg系合金圧延板調質材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
この発明は、建築、土木、電気機器、その他一般の機器、船舶などの用途において、1mm以上の比較的厚い板として使用されるAl−Mg系合金に関するものであり、特にH32〜H36相当に調質した曲げ加工性に優れるAl−Mg系合金圧延板調質材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にAl−Mg系合金、すなわちいわゆる5000番系合金は、強度と延性とのバランスに優れていて、良好な成形性を有することなどから、従来から建築、土木、電気機器、一般機器、船舶など、種々の用途に広く使用されている。これらの用途のAl−Mg系合金の代表的なものとしては、JIS5052合金などがある。ところでこれらの用途に使用されるAl−Mg系合金は、一般には冷間圧延のままではなく、冷間圧延により加工硬化した材料について、さらに安定化処理を目的とした調質焼鈍を施して、H3n材として用いるのが通常である。すなわち、Al−Mg系合金では、冷間圧延のままでは次第に強度が低下して伸びが増加するという経時変化を示すところから、安定化処理を目的とした調質焼鈍処理を施すのが通常である。
【0003】
なお前述のような用途では、1mm以上の比較的厚い板厚で用いることが多い。またその場合の製造方法としては、熱間圧延後に一次冷間圧延を行なって中間板厚とし、その段階で中間焼鈍を施してから最終冷間圧延を行なって最終板厚とし、その後に前述のような安定化処理を目的とした調質焼鈍を行なうのが通常である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、低コスト化の要請のみならず、地球環境保全の要請からも、各種材料製造工程における省エネルギー化が重要視されるようになっている。そこで本発明者等は、前述のような用途に使用されるAl−Mg系圧延板調質材についても、その製造プロセスを簡素化して、省エネルギー化を図る方策を検討している。
【0005】
ここで、Al−Mg系合金圧延板調質材の製造における省エネルギー化のためには、熱間圧延後の冷間圧延中途における中間焼鈍を省略することが考えられる。しかしながら単純に熱間圧延後の冷間圧延の中途での中間焼鈍を省略した場合、製品板の性能、特に1mm以上の厚板での曲げ加工性を満足させることは困難である。
【0006】
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、主として省エネルギーの観点から冷間圧延中途での中間焼鈍を省略しながらも、1mm以上の厚い最終製品板における曲げ加工性が良好なAl−Mg系合金圧延板調質材を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述のような課題を解決するため、本発明者等が鋭意実験・検討を重ねた結果、Al−Mg系合金の成分組成を適切に調整するばかりでなく、熱間圧延条件を厳密かつ適切に制御して板の集合組織を適切に調整することによって、冷間圧延中途の中間焼鈍を省略したプロセスでも、1mm以上の比較的厚い板で充分な曲げ加工性を確保し得ることを見出し、この発明をなすに至った。
【0008】
具体的には、請求項1の発明のAl−Mg系合金圧延板調質材は、Mg1.5〜3.0%、Cr0.03〜0.35%、Fe0.1〜0.5%、Si0.05〜0.4%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金を素材とし、板表面から100μmの深さの位置における板表面側から測定した集合組織として、傾角15°以内のキューブ方位密度がランダム方位の9倍以上であり、調質度がH32〜H36でかつ板厚が1mm以上であることを特徴とするものである。
【0009】
また請求項2の発明のAl−Mg系合金圧延板調質材は、請求項1に記載のAl−Mg系合金圧延板調質材において、前記合金が、前記各成分のほか、さらにMn0.01〜0.6%、Cu0.01〜0.3%、Ti0.005〜0.3%、Zn0.01〜0.2%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
まずこの発明におけるAl−Mg系合金の成分組成の限定理由について説明する。
【0013】
Mg:
Mgの添加は、Mgそれ自体の固溶による強度向上に効果があり、またMgは転位との相互作用が大きいため加工硬化による強度向上も期待でき、したがって要求強度を満たすためには不可欠な元素である。さらにMgは集合組織の制御にも有効である。但しMg量が1.5%未満では、要求強度を満たすことが困難となることもあり、また他の合金成分とのバランスによっては熱間圧延でキューブ方位が発達しにくくなり、そのため後の冷間圧延後に残るキューブ方位が少なくなるため、曲げ加工性に優れた材料を得ることが困難となる。一方Mg量が3.0%を越えるような多量のMgの添加により得られる高強度は必要としないのが通常であり、またMg量が3.0%を越えれば、熱間圧延でキューブ方位が発達しにくくなり、前記と同様に曲げ加工性に優れた材料を得ることが困難となる。そこでMg添加量は1.5〜3.0%の範囲内とした。
【0014】
Cr:
Crの添加は集合組織の制御と製品板の強度調整に不可欠である。ここで、Cr添加量が0.03%未満でも熱間圧延でキューブ方位を容易に発達させることができるが、製品板の要求強度を満たすことが困難となる。一方Cr量が0.35%を越えれば、Al−Cr系の粗大金属間化合物が多くなって熱間圧延でキューブ方位が発達しにくくなり、その後の冷間圧延後に残るキューブ方位が少なくなり、そのため曲げ加工性に優れた材料を得ることが困難となる。そこでCr添加量は、0.03〜0.35%の範囲内とした。
【0015】
Fe:
Feの添加も集合組織の制御と製品板の強度調整に不可欠である。ここで、Fe量が0.1%未満でも、熱間圧延でキューブ方位を容易に発達させることができるが、製品板の要求度を満たすことが困難となる。またFeを0.1%未満とするためには高純度の地金を使用しなければならないため、生産コストが高くなる。一方Fe量が0.5%を越えれば、Al−Fe−(Mn)−(Si)系の粗大金属間化合物が多くなって熱間圧延でキューブ方位が発達しにくくなり、その後の冷間圧延後に残るキューブ方位が少なくなって、曲げ加工性に優れた材料を得ることが困難となる。また粗大金属間化合物によって材料の延性が低下し、その点からも曲げ加工性に悪影響を及ぼす。そこでFe量は0.1〜0.5%の範囲内とした。
【0016】
Si:
Siの添加も、集合組織の制御と製品板の強度調整に不可欠である。ここで、Si量が0.05%未満でも、熱間圧延でキューブ方位を容易に発達させることができるが、製品板要求強度を満たすことは困難となる。またSi量を0.05%未満とするためには高純度の地金を使用しなければならないため、生産コストが高くなる。一方Si量が0.4%を越えれば、Al−Fe−Si−(Mn)系の粗大金属間化合物が多くなって熱間圧延でキューブ方位が発達しにくくなり、その後の冷間圧延後に残るキューブ方位が少なくなるため、曲げ加工性に優れた材料を得ることが困難となる。また粗大金属間化合物によって材料の延性が低下し、このことも曲げ加工性に悪影響を及ぼす。そこでSi量は0.05〜0.4%の範囲内とした。
【0017】
以上の各元素のほかは、基本的にAlおよび不可避的不純物とすれば良いが、請求項2の発明の場合は、前記各成分元素のほか、さらにMn、Cu、Ti、Znのうちの1種または2種以上を添加する。次にこれらの元素の添加理由を説明する。
【0018】
Mn:
Mnの添加は、集合組織制御と製品板の強度調整に影響を及ぼす。しかしながら、Mn添加量が0.01%未満では、その効果はあらわれない。一方Mn量が0.6%を越えれば、Al−Fe−Mn−(Si)系粗大金属間化合物が多くなって熱間圧延でキューブ方位が発達しにくくなり、その後の冷間圧延後に残るキューブ方位が少なくなり、曲げ加工性に優れた材料を得ることが困難となる。また粗大金属間化合物によって材料の延性が低下し、その点からも曲げ加工性に悪影響を及ぼす。そこでMn添加量は0.01〜0.6%の範囲内とした。
【0019】
Cu:
Cuの添加も製品板の強度調整に有効である。しかしながら、Cu添加量が0.01%未満では、その効果があらわれない。一方、Cu量が0.3%を越えれば、熱間圧延でキューブ方位が発達しにくくなり、その後の冷間圧延後に残るキューブ方位が少なくなって、曲げ加工性に優れた材料を得ることが困難となる。そこでCu添加量は0.01〜0.3%の範囲内とした。
【0020】
Ti:
Tiは結晶粒微細化に有効であるが、0.005%未満ではその効果があらわれにくく、添加する意味がない。一方Ti量が0.3%を越えれば、粗大金属間化合物が多くなって熱間圧延でキューブ方位が発達しにくくなり、その後の冷間圧延後に残るキューブ方位が少なくなって、曲げ加工性に優れた材料を得ることが困難となる。また粗大金属間化合物によって材料の延性が低下し、その点からも曲げ加工性に悪影響を及ぼす。そこでTi量は0.005〜0.3%の範囲内とした。なおTiにBを加えて添加する場合もあるが、その場合のB量は300ppm以下とすることが望ましい。
Zn:
Znの添加も製品板の強度調整に効果的である。しかしながら、Zn添加量が0.01%未満では、その効果があらわれにくく、添加する意味がない。一方Zn量が0.2%を越えれば、熱間圧延でキューブ方位が発達しにくくなり、その後の冷間圧延後に残るキューブ方位が少なくなって、曲げ加工性に優れた材料を得ることが困難となる。そこでZn量は0.01〜0.2%の範囲内とした。
【0021】
さらにこの発明のAl−Mg系合金圧延板調質材の製品板においては、板の最表面から板厚方向へ100μmの深さの位置における板表面側から測定した集合組織、換言すれば板の表面層を厚さ100μmだけ削った状態で表面側から観察した集合組織として、傾角15°以内のキューブ(Cube)方位の方位密度が、ランダム方位の9倍以上となっている必要がある。その理由について次に説明する。
【0022】
曲げ加工においては、曲げ部先端に張力が作用し、その際に多くの転位が曲げ先端部に導入され、割れをもたらす原因となる。しかしながら、キューブ方位の活動すべり系は対称的であるため、他の結晶方位に比べて動的回復が起こりやすく、そのためキューブ方位密度が高ければ、高歪み領域まで容易に曲げ加工が可能となる。本発明者等の実験によれば、傾角15°以内のキューブ方位の方位密度、特に板表面から100μmの深さの位置におけるキューブ方位密度がランダム方位の9倍以上であれば、曲げ加工時における動的回復の効果が大きく、割れが生じにくくなって曲げ加工性に優れることが判明した。すなわち、板表面から100μmの深さの位置でのキューブ方位密度がランダム方位の9倍に達しない場合は、良好な曲げ加工性が得られない。なおここでキューブ方位密度を板表面から100μmの深さの位置で規定した理由は次の通りである。すなわち、板の最表面はロールとの摩擦などの圧延条件の影響を受けて、集合組織にバラツキが生じる。そこでこのような影響を受けない部位として板表面から100μmの部位を選択した。
【0023】
なお板表面から100μmの深さの位置でのキューブ方位密度は、例えば次のようにして測定した。すなわち、集合組織測定用の試料について、最表面から100μm、10%NaOH浴中で溶かして、その後、機械研磨で鏡面に仕上げた。そしてキューブ方位の方位密度を、X線回折によって(200)、(220)、(111)の不完全極点図から級数展開法で方位分布関数(ODF)を計算して求める。またここで傾角15°以内のキューブ方位とは、Bungeの表示法でND回転のキューブとRD回転のキューブを、ψ角0〜15°の範囲で5°間隔づつ(ND回転のキューブ)、φ角0〜15°の範囲で5°間隔づづ(RD回転のキューブ)、それぞれの角度の方位密度を計算して、その和を求めたものである。なおここでψ角とφ角の0°は重複するから、いずれか一方の方位密度を採用した。またODFを計算する際にはゴーストピークの補正を行なうが、その際、方位によっては方位密度が負になったり、1より小さくなる場合がある。ここでの方位密度は完全にランダムな材料に対しての倍数で表すため、方位密度が負になったり、1より小さくなる場合は、方位密度を1として計算することとした。
【0024】
次にこの発明のAl−Mg系合金圧延板調質材を製造するにあたっては、前記成分組成の合金からなる鋳塊に対し、熱間粗圧延および熱間仕上げ圧延からなる熱間圧延を、粗圧延終了温度が370〜470℃の範囲内、仕上げ圧延における最終パスの対数圧下率が0.40〜0.85の範囲内、仕上げ圧延における最終パスの圧延速度が200m/分以上、仕上げ圧延の終了温度が285〜360℃の範囲内となるように行ない、その後10〜65%の範囲内の圧延率で冷間圧延を行ない、さらに調質焼鈍として、バッチタイプの焼鈍炉において100〜260℃の範囲内の温度で0.5〜10時間の保持の加熱処理を行なうか、または前記冷間圧延後の調質焼鈍として、連続焼鈍炉において150〜340℃の範囲内の板到達温度で保持なしもしくは1分以内の保持の加熱処理を行なうことが望ましい。このような製造プロセスについて次に説明する。
【0025】
先ず前述のような成分組成の合金をDC鋳造法などの常法に従って鋳造し、得られた鋳塊に均質化処理を施してから、あるいは均質化処理を兼ねて、熱間圧延前に加熱を行ない、熱間圧延に供する。熱間圧延は粗圧延および仕上げ圧延の組合せによって行なうが、この熱間圧延の条件は、集合組織を適切に制御して、最終的に曲げ加工性に優れた製品板を得るため、厳密に規制する必要がある。すなわち、熱間粗圧延の終了温度を370〜470℃の範囲内とし、熱間仕上げ圧延の最終パスの対数圧下率を0.40〜0.85の範囲内、熱間仕上げ圧延の最終パスの圧延速度を200m/分以上、熱間圧延終了温度を285〜360℃の範囲内の温度に制御することが、熱間圧延からその後の熱延板コイル巻取りの段階においてキューブ方位を充分に発達させ、最終的に曲げ加工性に優れた製品板を得るために必要である。以下にこれらの熱間圧延条件についてさらに詳細に説明する。
【0026】
先ず熱間粗圧延の終了温度については、370℃未満でも熱間圧延でキューブ方位を容易に発達させることができ、製品板の曲げ加工性を向上させることができるが、加工歪みを蓄積し過ぎるため、熱間圧延においてコイルのエッジ割れが著しく生じて、生産に支障をきたしてしまう。一方熱間粗圧延終了温度が470℃を越えれば、熱間圧延でキューブ方位が発達しにくくなり、そのためその後の冷間圧延後に残るキューブ方位が少なくなり、曲げ加工性に優れた材料を得ることが困難となる。そこで熱間粗圧延終了温度は370〜470℃の範囲内とした。
【0027】
次に熱間仕上げ圧延の最終パスの対数圧下率とは、熱間仕上げ圧延の最終パス前の板厚Hと熱間仕上げ圧延終了後の板厚Hとの比の自然対数Ln(H/H)を指称しているが、この熱間仕上げ圧延の最終パスの対数圧下率が0.40より小さい場合には、熱間圧延の終了温度が285℃を下回ってしまい、熱間圧延終了後にキューブ方位が発達しにくくなり、そのため熱延後の冷間圧延後に残るキューブ方位が少なくなってしまい、曲げ加工性に優れた材料を得ることが困難となる。一方、熱間仕上げ圧延の最終パスで対数圧下率が0.85を越える高圧下圧延を行なえば、圧延中にロール焼けが生じてコーティングが発生して製品としての価値を損なう。また板への剪断作用が大きくなって、熱間圧延終了後にキューブ方位が発達しにくくなってしまう。そこで熱間仕上げ圧延最終パスの圧下率は、自然対数Ln(H/H)で0.40〜0.85の範囲内とした。
【0028】
さらに、熱間仕上げ圧延の最終パスの圧延速度が200m/分未満であれば、熱間圧延の終了温度が285℃を下回ってしまい、熱間圧延終了後にキューブ方位が発達しにくくなり、そのため熱延後の冷間圧延後に残るキューブ方位が少なくなって、曲げ加工性に優れた材料を得ることが困難となる。そこで熱間仕上げ圧延最終パスの圧延速度を200m/分以上とした。
【0029】
最終に、熱間仕上げ圧延の終了温度が285℃未満では、熱間圧延終了後にキューブ方位が発達しにくくなり、そのため熱延後の冷間圧延後まで残るキューブ方位が少なくなり、その結果曲げ加工性に優れた材料を得ることが困難となる。一方、熱間仕上げ圧延の終了温度が360℃を越えれば、圧延中にロール焼けが生じてコーティングが発生し、製品としての価値を損なってしまう。そこで熱間仕上げ圧延の終了温度は285〜360℃の範囲内とした。
【0030】
なおこれらの熱間圧延条件は、タンデム熱延機やシングルリバース熱延機など圧延機のタイプには依存せず、汎用されているいずれの熱延機でも適用可能であることはもちろんである。また上記以外の熱間圧延条件は特に限定されるものではないが、例えば熱間圧延開始温度は440〜520℃程度とすることが望ましい。また熱間圧延の仕上げ板厚も特に限定されないが、この発明では熱間圧延後に圧延率10〜65%で冷間圧延を行なって、最終的に1mm以上の比較的厚い圧延板を得るため、熱間圧延仕上げ板厚は2.0〜4.5mm程度とすれば良い。
【0031】
以上のようにして熱間圧延を行なって巻取った熱延板コイルに対しては、次いで冷間圧延を施す。この冷間圧延は、最終的に製品強度を得るために必要な工程である。ここで冷間圧延率が10%未満では、目標とする製品板強度を得ることが困難となる。一方65%を越える圧延率では、この発明で規定するH32〜H36の材質から外れてしまうおそれがある。そこで冷間圧延率は10〜65%の範囲内とした。
【0032】
冷間圧延後には、最終的に安定化処理を目的として調質焼鈍を行ない、H32〜H36の調質度の材料とする。この調質焼鈍は、箱型タイプの焼鈍炉を用いたバッチ式の焼鈍によって行なっても、あるいは連続焼鈍炉を用いた連続焼鈍によって行なっても良い。
【0033】
箱型タイプの焼鈍炉を用いたバッチ式によって調質焼鈍を行なう場合、その条件は、100〜260℃の範囲内の温度で0.5〜10時間保持とする必要がある。ここで、焼鈍温度が100℃未満では、冷間圧延によって導入された転位の消滅が不充分で、製品にした場合に経時軟化が生じてしまうおそれがある。一方焼鈍温度が260℃を越えれば、H3n材ではなく、完全に再結晶したO材になってしまい、要求強度を満たすことができなくなる。また保持時間が0.5時間未満では、コイル全体にわたり均一な熱処理ができず、コイル内で強度の不均一が生じてしまう。一方保持時間が10時間を越えれば、焼鈍温度によっては完全に再結晶してしまい、要求強度を満たすことができなくなり、また生産性も低下させてしまう。そこで箱型タイプの焼鈍炉でバッチ式により調質焼鈍を行なう場合は、100〜260℃の温度範囲内で、0.5〜10時間の保持とした。
【0034】
一方連続焼鈍炉を用いた連続式の調質焼鈍の場合は、板到達温度が150〜340℃の範囲内となるように加熱して保持なしもしくは1分以内の保持の条件とする必要がある。ここで、板到達温度が150℃未満では、冷間圧延によって導入された転位の消滅が不充分で、製品にした場合に経時軟化が生じてしまい、製品としての価値を損なう。一方板到達温度が340℃を越えれば、H3n材ではなく、完全に再結晶したO材になってしまうことがあり、要求強度を満たすことができなくなる。また保持時間が1分を越えれば、完全に再結晶してしまうこともあり、要求強度を満たすことができず、また生産性も低下してしまう。そこで連続焼鈍炉で調質焼鈍を行なう場合は、150〜340℃の温度範囲で、保持なしもしくは1分以内の保持とした。
【0035】
【実施例】
表1の合金No.1〜No.5に示す種々の成分組成のAl合金を常法に従ってDC鋳造し、得られた鋳塊に均質化処理を兼ねた加熱処理を行なって、熱間圧延を行ない、さらに冷間圧延、調質焼鈍を施してH32〜H36材とした。各プロセスの詳細な条件を表2の製造No.1〜No.9に示す。
【0036】
得られた各製品板について、既に述べたような測定方法にしたがって、板表面から板厚方向へ100μmの深さの位置のキューブ方位を調べるとともに、圧延方向に対し平行な方向に試験片を切出して、機械的性質(YS)と曲げ加工性を評価したので、その結果を表3に示す。
【0037】
なお機械的性質の評価規準は、JIS5052合金のH32、H34、H36材のYS規準(H32材:155MPa以上、H34材:175MPa以上、H36材:205MPa以上)に従い、それぞれの材質で、これらの規定を満たす場合を合格(○印)、満たさない場合を不合格(×印)と評価した。また曲げ加工性については、圧延方向に対し平行な方向に試験片を各10片切り出し、それぞれ180°曲げ試験を行なった。曲げ条件はR/t(R:曲げ治具先端の曲率、t:試験片の板厚)を1.5とした。そして目視にて割れが全く認められない場合を合格(○印)、1個でも曲げR部に割れが認められたものを不合格(×印)と評価した。
【0038】
【表1】
Figure 0004267284
【0039】
【表2】
Figure 0004267284
【0040】
【表3】
Figure 0004267284
【0041】
表3から明らかなように、この発明で規定する成分組成範囲内の合金No.1、No.2を用いかつ製造プロセスも前述の望ましい条件を満たした製造No.1、No.3の場合は、キューブ方位密度がこの発明で規定する条件を満たし、優れた曲げ加工性を得ることができるとともに、機械的性質(YS)が目標とする調質度の規準をクリヤしていて、総合的に優れた性能の材料を得ることができた。
【0042】
一方、成分組成はこの発明で規定する条件を満たしていても、熱間圧延条件が前述の望ましい条件範囲を外れた製造番号2、4の場合は、機械的性質は目標材質となっているが、キューブ方位密度がこの発明で規定する条件を満たすことができず、曲げ加工性が劣ってしまった。
【0043】
さらに、成分組成はこの発明で規定する条件を満たしていても、調質焼鈍条件が外れた製造番号5の場合、および冷間圧延条件が外れた製造番号6の場合は、いずれもキューブ方位密度はこの発明で規定する条件をクリヤして良好な曲げ加工性を得ることはできたが、機械的性質が目標材質から外れてしまった。
【0044】
一方、製造プロセス条件は前述の望ましい条件範囲内であるが、合金の成分組成がこの発明で規定する条件満たさなかった製造番号7〜9の場合は、機械的性質が目標材質から外れるかまたは曲げ加工性が劣ってしまい、総合的に不合格となった。
【0045】
【発明の効果】
この発明によれば、Al−Mg系合金からなる調質度H32〜H36の圧延板調質材、特に1mm以上の比較的厚い圧延板調質材として、集合組織を適切に制御することにより、冷間圧延中途の中間焼鈍を省略したプロセスを適用しても、曲げ加工性が優れていてかつ機械的性質も目標材質に確実に適合する材料を安定して得ることができる。

Claims (2)

  1. Mg1.5〜3.0%(mass%、以下同じ)、Cr0.03〜0.35%、Fe0.1〜0.5%、Si0.05〜0.4%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金を素材とし、板表面から100μmの深さの位置における板表面側から測定した集合組織として、傾角15°以内のキューブ方位密度がランダム方位の9倍以上であり、調質度がH32〜H36でかつ板厚が1mm以上であることを特徴とする、曲げ加工性に優れたAl−Mg系合金圧延板調質材。
  2. 請求項1に記載のAl−Mg系合金圧延板調質材において、
    前記合金が、前記各成分のほか、さらにMn0.01〜0.6%、Cu0.01〜0.3%、Ti0.005〜0.3%、Zn0.01〜0.2%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする、曲げ加工性に優れたAl−Mg系合金圧延板調質材。
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