JP5309528B2 - 高強度鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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0.05%≦[Ti]+[Nb]/2≦0.2% ・・・・・(1)
ただし、(1)式において[Ti]、[Nb]は、それぞれTi、Nbの含有量(%)を示す。
(A)上述した本発明に係る高強度鋼板が有する化学組成を有する鋼素材を1100℃以上1300℃以下とした後に熱間圧延を行い、800℃以上950℃以下の温度域でこの熱間圧延を終了し、450℃以上700℃以下の温度域で巻取って熱延鋼板とする熱間圧延工程。
(B)この熱延鋼板に酸洗を行った後、冷間圧延を行って冷延鋼板とする冷間圧延工程。及び
(C)この冷延鋼板を、N2濃度が95体積%以上の雰囲気で600℃〜Ac3変態点の温度域を30秒以上かけてAc3変態点以上の温度域に加熱してオーステナイト単相組織とし、N2濃度が95体積%以上の雰囲気でオーステナイト単相組織の状態に60秒間以上保時した後に、Ar3変態点から550℃まで平均冷却速度が5℃/秒以上となる冷却条件で冷却する連続焼鈍工程。
本発明に係る高強度鋼板の化学組成の限定理由は次の通りである。
Cは、強度向上に寄与する元素であり、780MPa以上の引張強度を確保するために少なくとも0.05%含有する。しかし、0.17%を超えて含有すると、不均一な組織となって曲げ性が劣化する。そこで、C含有量は0.05%以上0.17%以下とする。好ましくは0.05%以上0.10%以下である。
Mnは、強度の向上に寄与する元素であり、鋼板の引張強度を780MPa以上とするために少なくとも2.0%含有する。しかし、3.0%を超えて含有すると、不均一な組織となって曲げ性が劣化する。そこで、Mn含有量は2.0%以上3.0%以下とする。
Bは、重要な元素の一つであって、組織を均一かつ微細にするだけではなく、粒界や異相界面の強度を高める効果によって微小亀裂の発生を抑制し、曲げ性を向上する。このためには、少なくとも0.0005%含有する。しかし、0.01%を超えて含有すると上述した効果が飽和して経済的に無駄であるだけでなく、粒界にホウ化物が形成されて曲げ性が劣化する。そこで、B含有量は0.0005%以上0.01%以下とする。
Pは、本発明では不純物であり、過多にPを含有させると不均一な組織となって曲げ性が劣化する。そこで、P含有量は0.03%以下とする。好ましくは0.015%以下である。
Sは、鋼中において硫化物として存在し、この硫化物が応力集中源となって曲げ性が劣化する。このため、S含有量はできるだけ低いことが望ましいが、S含有量は0.01%以下であれば曲げ性に悪影響を及ぼさない。そこで、S含有量は0.01%以下とする。好ましくは0.005%以下である。
Nは、本発明では不純物であり、過多にNを含有させると粗大な窒化物が析出して加工性が劣化する。このため、N含有量はできるだけ低いことが望ましいが、N含有量は0.01%以下であれば加工性に悪影響を及ぼさない。そこで、N含有量は0.01%以下とする。好ましくは0.005%以下である。
Siは、曲げ性をさほど劣化することなく強度の向上に寄与する元素であるので、0.005%以上含有する。しかし、0.5%を超えて含有すると化成処理性が劣化する。このため、Si含有量を0.005%以上0.5%以下とする。
TiとNbは、いずれも重要な元素であり、析出強化及び結晶粒微細化によって、曲げ性をさほど劣化することなく、強度を向上する。そのため、TiとNbの一方又は両方を含有する。
Cr、Mo、Ni、Cu及びVは、いずれも、必要に応じて含有する任意添加元素である。曲げ性をさほど劣化させることなく780MPa以上の引張強度を確保するために、Cr、Mo、Ni、Cu及びVの一種又は二種以上を含有させることが好ましい。ただし、Cr含有量が1.0%超、Mo含有量が0.5%超、Ni含有量が0.5%超、Cu含有量が0.5%超、V含有量が0.2%超であると、上述した効果が飽和し経済的に無駄である。このため、Cr:1.0%以下、Mo:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Cu:0.5%以下、V:0.2%以下とする。
Ca、Mg、REM及びZrも、いずれも、必要に応じて含有する任意添加元素であり、介在物の形態制御によって曲げ性を向上するために、Ca、Mg、REM及びZrの一種又は二種以上を含有させることが好ましい。しかし、Ca含有量が0.003%超、Mg含有量が0.003%超、REM含有量が0.01%超、Zr含有量が0.01%超であると、上述した効果が飽和し経済的に無駄である。このため、Ca:0.003%以下、Mg:0.003%以下、REM:0.01%以下、Zr:0.01%以下とする。
上述した成分以外の残部は、Fe及び不純物である。不純物としては、上述したP、S、N以外に、例えばO:0.006%以下を許容することができる。
表面付近、すなわち表面から2〜10μmの深さ位置におけるB濃度(GDS分析によるB強度の最小値)が大きくなると、ホウ化物の生成によって、曲げ性が劣化するだけでなく、曲げ後に曲げ戻し加工が施される際の加工性も著しく劣化する。このため、本発明に係る高強度鋼板は、表面から2〜10μmの深さ位置におけるGDS分析によるB強度の最小値が、表面から80μmの深さ位置におけるGDS分析によるB強度の60%以下となる断面B濃度分布を有する。
このような断面B濃度分布を有するには、後述するように、連続焼鈍中に鋼板の表面付近からBを低減する。
未再結晶フェライトは、冷間圧延による加工歪みが残存したフェライトである。未再結晶フェライトが存在すると、不均一変形が助長され、曲げ性が劣化する。このため、未再結晶フェライトを含まない組織とする。未再結晶フェライトを含まないようにするためには、後述するように、Ac3変態点以上に加熱しなければならない。また、未再結晶フェライトの有無はSEMによって測定可能であり、本発明では、アスペクト比が5以上の伸長フェライトを未再結晶フェライトとする。
フェライト及びベイナイトの平均粒径が大きくなり過ぎると、軟質相であるフェライト又はベイナイトと、硬質相であるマルテンサイト等との界面に微小亀裂が発生し易く、かつ亀裂の伝播が抑制されないので、曲げ性が劣化する。このため、フェライト及びベイナイトの平均粒径を3.5μm以下とする。この平均粒径は、測定部位の全フェライト結晶粒及び全ベイナイト結晶粒の粒径の平均値を意味する。ベイナイトの粒径とは、数個のラスから構成されるパケット径を意味する。この平均粒径は、JIS G 0552に規定される交差線分法により求められる。
次に、本発明に係る高強度鋼板の製造方法を、熱間圧延工程(工程A)、冷間圧延工程(工程B)及び連続焼鈍工程(工程C)の順に説明する。
上述した化学組成を有する溶鋼を、転炉や電気炉等を用いた公知の溶製方法により溶製し、連続鋳造法によりスラブ等の鋼素材とする。連続鋳造法に代えて、造塊法や薄スラブ鋳造法等を用いてもよい。
工程Aにより製造された熱延鋼板を、通常の方法により酸洗した後に冷間圧延することにより冷延鋼板とする。この冷間圧延における圧下率は、冷間圧延後の焼鈍時に鋼組織のフェライト及びベイナイトを上述したように微細にするために、30%以上とすることが好ましい。
工程Bにより製造された冷延鋼板を、以下に説明する加熱条件、均熱条件及び冷却条件で連続焼鈍する。
冷延鋼板を、N2濃度が95体積%以上の雰囲気で600℃以上Ac3変態点以下の温度域を20秒以上かけて、オーステナイト単相組織となるAc3変態点以上の温度に加熱する条件で、加熱する。
上述した加熱条件でAc3変態点以上に加熱された冷延鋼板を、N2濃度が95体積%以上の雰囲気でオーステナイト単相組織の状態に少なくとも60秒間保持する。この保持時間が60秒間未満であると、上述した断面B濃度分布を得ることができないだけでなく、Mn偏析の影響を受けてBやCが不均一に分布し、焼鈍後の鋼板の組織が不均一となる。保持時間を60秒以上とすることにより、上述した断面B濃度分布を得ることができるだけでなく、Mn偏析の影響で不均一に分布していたB及びCが均質に分布するようになり、焼鈍後の鋼板の組織が均質化する。
冷延鋼板は、上述した条件で加熱および温度保持した後、オーステナイト単相状態から急冷を開始し、Ar3変態点から550℃まで平均冷却速度が5℃/秒以上となる冷却条件で、冷却する。Ar3変態点から550℃までの平均冷却速度が5℃/秒未満であると、780MPa以上の引張強度を確保することが困難となる。
さらに、伸び率0.1%以上1%以下の調質圧延を行うことが好ましい。この調質圧延によって降伏点伸びを抑制することができる。
このスラブを、表2に示すスラブ加熱温度に加熱してから熱間圧延を行い、表2に示す仕上げ圧延温度で熱間圧延を終了し、続いて、約20℃/秒の冷却速度で巻取り温度650℃まで冷却し、巻取りを模擬してこの温度に30分間保持した後、20℃/時間の冷却速度で室温まで炉冷することにより、板厚が2.4mmの熱延鋼板を得た。
この冷延鋼板に対して、連続焼鈍を模擬した熱処理(N2濃度が97%の加熱雰囲気)を行った。まず、10℃/秒の昇温速度で600℃まで加熱し、600℃からAc3変態点までを、表2に示す加熱時間で加熱し(Ac3変態点以下の場合は保持温度)、表2に示す焼鈍温度で同じく表2に示す焼鈍時間保持した後、表2に示す焼鈍後冷却速度で700℃まで冷却した。
未熱処理の各冷延鋼板から試験片を採取し、室温から1000℃まで10℃/sで加熱した際の膨張率変化を解析することによって、Ac3変態点の温度を求めた。
(オーステナイト単相組織状態の保持時間の測定)
未熱処理の各冷延鋼板から試験片を採取し、表2に示すのと同じ焼鈍条件及び冷却条件で熱処理を行った際の膨張率変化を解析することにより、オーステナイト単相組織状態の保持時間を測定した。
上述した分析条件に基づいてスパッタリング速度0.1μm/秒でFeとBについて測定し、0.02秒間隔毎にサンプリングした。
供試鋼板No.1〜44から、圧延方向の板厚断面の試験片と、圧延直角方向の板厚断面の試験片とを作製し、それぞれの組織を光学顕微鏡あるいは電子顕微鏡で撮影し、画像解析によりフェライト相(表3にFと表示)及びベイナイト相(表3にBと表示)の各相の分率とこれらの相を総合した平均結晶粒径を測定した。粒径の測定は、圧延方向の板厚断面および圧延直角方向の板厚断面のどちらも、板厚の全厚についてJIS G 0552の交差線分法の規定に準拠して測定し、それらの平均値で表した。未再結晶フェライトの有無は、0.04mm2の視野を電子顕微鏡で観察した際に、アスペクト比が5以上の伸長フェライトが確認されなかった場合を無しとし、伸長フェライトが確認された場合を有りとした。
供試鋼板No.1〜44の圧延直角方向を長手方向とするJIS5号引張試験片を採取し、引張特性(引張強度TS、降伏強度YS、伸びEl)を調査した。また、YS/TSの値である降伏比(YR)を算出した。
供試鋼板No.1〜44から圧延直角方向を長手方向とする曲げ試験片(幅40mm、長さ160mm、板厚1.2mm)を採取し、4.8mmの鋼板を挟んだ180°曲げ試験を行い、割れの有無を目視により確認した。
供試鋼板No.6は、Mn含有量が本発明で規定する範囲の下限を下回るため、引張強度が低い。
供試鋼板No.14は、C含有量が本発明で規定する範囲の下限を下回るため、引張強度が低い。
供試鋼板No.26は、B含有量が本発明で規定範囲の上限を上回るため、粒界のホウ化物が析出し、曲げ性が不芳である。
供試鋼板No.31は、連続焼鈍における焼鈍温度が本発明で規定する範囲の下限を下回るため、未再結晶フェライトが残存し、バンド状組織となり、曲げ性が不芳である。
供試鋼板No.34は、(Ti+Nb/2)の値が本発明で規定する範囲の下限を下回るため、結晶粒が微細化されず、曲げ性が不芳である。
さらに、供試No.42は、(Ti+Nb/2)の値が本発明で規定する範囲の下限を下回るため、結晶粒が微細化されず、曲げ性が不芳である。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.05〜0.17%、Mn:2.0〜3.0%、B:0.0005〜0.01%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、N:0.01%以下を含有し、さらにSi:0.005〜0.5%、sol.Al:0.01〜0.1%の双方を合計で0.5%以下含有し、さらにTi及びNbの1種または2種を、下記(1)式を満足する範囲で含有し、残部Fe及び不純物からなる化学組成を有し、未再結晶フェライトを含まず、フェライト及びベイナイトの平均粒径が3.5μm以下となる鋼組織を有し、表面から2〜10μmの深さ位置における、アルゴンスパッタを用いたグロー放電発光分光分析によるB強度の最小値が、表面から80μmの深さ位置における、アルゴンスパッタを用いたグロー放電発光分光分析によるB強度の60%以下であり、引張強度が780MPa以上であることを特徴とする高強度鋼板。
0.05%≦[Ti]+[Nb]/2≦0.2% ・・・・・(1)
(1)式において[Ti]、[Nb]は、それぞれTi、Nbの含有量(質量%)を示す。 - 前記化学組成が、さらに、質量%で、Cr:1.0%以下、Mo:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Cu:0.5%以下及びV:0.2%以下からなる群から選ばれた1種又は2種以上を含有する請求項1に記載された高強度鋼板。
- 前記化学組成が、さらに、質量%で、Ca:0.003%以下、Mg:0.003%以下、REM:0.01%以下及びZr:0.01%以下からなる群から選ばれた1種又は2種以上を含有する請求項1又は請求項2に記載された高強度鋼板。
- 下記工程(A)〜(C)を含むことを特徴とする高強度鋼板の製造方法:
(A)請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された化学組成を有する鋼素材を1100〜1300℃とした後に熱間圧延を行い、800〜950℃の温度域で該熱間圧延を終了し、450〜700℃の温度域で巻取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に酸洗を行った後、冷間圧延を行って冷延鋼板とする冷間圧延工程;及び
(C)前記冷延鋼板を、N2濃度が95体積%以上の雰囲気で600℃〜Ac3変態点の温度域を30秒以上かけてAc3変態点以上の温度域に加熱してオーステナイト単相組織とし、N2濃度が95体積%以上の雰囲気でオーステナイト単相組織の状態に60秒間以上保時した後に、Ar3変態点から550℃まで平均冷却速度が5℃/秒以上となる冷却条件で冷却する連続焼鈍工程。
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