JP4712842B2 - 伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板 - Google Patents
伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板 Download PDFInfo
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Description
本発明は、加工性に優れた高強度鋼板に関し、詳細には、伸びと伸びフランジ性がともに高められた高強度鋼板に関する。
例えば自動車の骨格部品などに使用される鋼板には、衝突安全性や車体軽量化による燃費軽減などを目的として高強度が求められるとともに、形状の複雑な骨格部品に加工するために優れた成形加工性も要求される。
このため、伸び(全伸び;El)と伸びフランジ性(穴広げ率;λ)がともに高められた高強度鋼板の提供が切望されており、例えば引張強度800MPa級以上の鋼板に対して全伸び10%以上で穴広げ率90%以上のものが要望されている。
上記のようなニーズを受けて、種々の組織制御の考え方に基づき、伸びと伸びフランジ性のバランスを改善した高強度鋼板が多数提案されているものの、伸びと伸びフランジ性が上記要望レベルを満足するように両立させたものはいまだ完成に至っていないのが現状である。
例えば、特許文献1には、Mn、CrおよびMoの少なくとも1種を合計で1.6〜2.5質量%含有し、実質的にマルテンサイトの単相組織からなる高張力冷延鋼板が開示されており、その穴広げ率(伸びフランジ性)は90%以上が得られているものの、伸びは10%に達していない(同文献の表6の本発明例参照)。
また、特許文献2には、フェライトが面積率で65〜85%で残部が焼戻しマルテンサイトの二相組織からなる高張力鋼板が開示されている。
また、特許文献3には、フェライトおよびマルテンサイトの平均結晶粒径がともに2μm以下であり、マルテンサイトの体積率が20%以上60%未満の二相組織からなる高張力鋼板が開示されている。
上記特許文献2および3に開示された高張力鋼板はいずれも、伸びは10%以上を確保しているものの、穴広げ率(伸びフランジ性)は90%に達していない(特許文献2の表2の発明例、特許文献3の表2の実施例参照)。
また、特許文献4には、Siを1.0〜2.0質量%添加し、占積率で、残留オーステナイトを5%以上、ベイニティック・フェライトを60%以上含むベイニティック・フェライト主体の複相組織からなる高強度冷延鋼板が開示されており、高伸びで比較的高い伸びフランジ性が得られているが、伸び向上を主体とするものであり、伸びは10%以上が得られているものの、伸びフランジ性は60%程度までしか得られていない(同文献の表2参照)。
さらに、特許文献5には、同じくSiを1.0〜2.0質量%添加し、占積率で、残留オーステナイトを5〜20%、ベイニティック・フェライトを50%以上含む組織からなるベイニティック・フェライト主体の複相組織からなる高強度冷延鋼板が開示されており、20%以上の非常に優れた伸びを示すものの、伸びフランジ性は80%程度までしか得られていない(同文献の表2参照)。
特開2002−161336号公報
特開2004−256872号公報
特開2004−232022号公報
特開2005−240178号公報
特開2005−330584号公報
そこで本発明の目的は、伸びと伸びフランジ性をいずれも高めた、より成形性に優れた高強度冷延鋼板を提供することにある。
請求項1に記載の発明は、
質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
C:0.03%以上0.30%未満、
Si:1.0%以下(0%を含む)、
Mn:0.5〜2.4%、
P:0.1%以下、
S:0.005%以下、
N:0.01%以下、
Al:0.01%以上0.10%未満
を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、
面積率で、ベイナイト:70%以上(100%を含む)、フェライト:30%以下(0%を含む)、焼戻しマルテンサイトと残留オーステナイトとの合計:3%未満(0%を含む)からなる組織を有し、
上記ベイナイト中に存在する、円相当直径0.1μm以上のセメンタイト粒子が、該ベイナイト1μm2当たり3個以下である
ことを特徴とする伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である。
質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
C:0.03%以上0.30%未満、
Si:1.0%以下(0%を含む)、
Mn:0.5〜2.4%、
P:0.1%以下、
S:0.005%以下、
N:0.01%以下、
Al:0.01%以上0.10%未満
を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、
面積率で、ベイナイト:70%以上(100%を含む)、フェライト:30%以下(0%を含む)、焼戻しマルテンサイトと残留オーステナイトとの合計:3%未満(0%を含む)からなる組織を有し、
上記ベイナイト中に存在する、円相当直径0.1μm以上のセメンタイト粒子が、該ベイナイト1μm2当たり3個以下である
ことを特徴とする伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である。
請求項2に記載の発明は、
成分組成が、更に、
Cr:0.3〜3.0%
を含むものである請求項1に記載の伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である。
成分組成が、更に、
Cr:0.3〜3.0%
を含むものである請求項1に記載の伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である。
請求項3に記載の発明は、
成分組成が、更に、
B:0.0002〜0.0050%を含むとともに、
Tiを、([N]−0.003)/12 ≦[Ti]/48≦([N]+0.01)/12([ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。)の関係を満たすように含むものである
請求項1または2に記載の伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である
成分組成が、更に、
B:0.0002〜0.0050%を含むとともに、
Tiを、([N]−0.003)/12 ≦[Ti]/48≦([N]+0.01)/12([ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。)の関係を満たすように含むものである
請求項1または2に記載の伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である
請求項4に記載の発明は、
成分組成が、更に、
Mo:0.01〜1.0%、
Cu:0.05〜1.0%、
Ni:0.05〜1.0%、
の1種または2種以上を含むものである
請求項1〜3のいずれか1項に記載の伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である。
成分組成が、更に、
Mo:0.01〜1.0%、
Cu:0.05〜1.0%、
Ni:0.05〜1.0%、
の1種または2種以上を含むものである
請求項1〜3のいずれか1項に記載の伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である。
請求項5に記載の発明は、
成分組成が、更に、
Ca:0.0005〜0.01%、
Mg:0.0005〜0.01%、
REM:0.0004〜0.01%、
の1種または2種以上を含むものである
請求項1〜4のいずれか1項に記載の伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である。
成分組成が、更に、
Ca:0.0005〜0.01%、
Mg:0.0005〜0.01%、
REM:0.0004〜0.01%、
の1種または2種以上を含むものである
請求項1〜4のいずれか1項に記載の伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である。
本発明によれば、ベイナイト単相組織、または、フェライトとベイナイトを主体とする複相組織において、破壊の主要原因となっていた、焼戻しマルテンサイトと残留オーステナイトの割合を極力少なくするとともに、破壊の他の主要原因となっていた、ベイナイト中に析出した粗大なセメンタイト粒子の存在数を適正に制御することで、引張強度(以下、単に「強度」ということあり。)を確保しつつ、伸びフランジ性を従来鋼よりさらに改善することが可能となり、より成形性に優れた高強度鋼板を提供できるようになった。
本発明者らは、焼戻しマルテンサイト(以下、単に「マルテンサイト」ということあり。)に比べ変形能の高いベイナイトを主体とする組織からなる高強度鋼板(上記特許文献4、5参照)に着目し、伸びを確保しつつ伸びフランジ性を改善できれば、上記要望レベルを満足しうる高強度鋼板が得られると考え、これらの機械的特性に及ぼす各種要因の影響を調査するなど鋭意検討を行ってきた。
上記検討の結果、主要組織を、焼戻しマルテンサイトに比べ変形能の高いベイナイト組織とし、必要に応じて該ベイナイト組織にフェライト組織を導入することで伸びを確保しつつ、一方で、破壊の主要原因となっていた、焼戻しマルテンサイトと残留オーステナイト(以下、「残留γ」と表記することあり。)の割合を極力少なくするとともに、破壊の他の主要原因となっていた、ベイナイト中に析出したセメンタイト粒子のサイズとその存在数を適正に制御することで、上記要望レベルの伸びフランジ性を確保できることを見出し、該知見に基づいて本発明を完成するに至った。
以下、まず本発明鋼板を特徴づける組織について説明する。
〔本発明鋼板の組織〕
本発明鋼板は、ベイナイト単相、または、フェライトとベイナイトを主体とする複相組織をベースとするものであるが、特に、焼戻しマルテンサイト組織と残留オーステナイト組織を極力少なくするとともに、ベイナイト中に析出した粗大なセメンタイト粒子の存在数が制御されている点に特徴を有するものである。
本発明鋼板は、ベイナイト単相、または、フェライトとベイナイトを主体とする複相組織をベースとするものであるが、特に、焼戻しマルテンサイト組織と残留オーステナイト組織を極力少なくするとともに、ベイナイト中に析出した粗大なセメンタイト粒子の存在数が制御されている点に特徴を有するものである。
<ベイナイト:面積率で70%以上(100%を含む)>
ベイナイトは、強度が高く、かつ、可塑性にも優れる均質な組織である。このような性質を有するベイナイト主体の組織にすることで、引張強度と伸びを確保しつつ、伸びフランジ性を向上できる。
ベイナイトは、強度が高く、かつ、可塑性にも優れる均質な組織である。このような性質を有するベイナイト主体の組織にすることで、引張強度と伸びを確保しつつ、伸びフランジ性を向上できる。
ベイナイトの割合が減少すると組織が不均一になり伸びフランジ性が確保できなくなるので、上記作用を有効に発揮させるため、ベイナイトの面積率は、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上(100%を含む)とする。
<フェライト:面積率で30%以下(0%を含む)>
フェライトは、延性は高いものの強度が低いため、フェライトの割合を増加させることで、伸びは向上するが、強度は低下する。また、フェライトの割合が多くなると、変形時にフェライトにひずみが集中し、フェライトとベイナイトとの界面でのひずみが大きくなり、該界面での亀裂発生が助長されるようになるため、伸びフランジ性が劣化する。よって、フェライトの面積率は30%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下(0%を含む)とする。
フェライトは、延性は高いものの強度が低いため、フェライトの割合を増加させることで、伸びは向上するが、強度は低下する。また、フェライトの割合が多くなると、変形時にフェライトにひずみが集中し、フェライトとベイナイトとの界面でのひずみが大きくなり、該界面での亀裂発生が助長されるようになるため、伸びフランジ性が劣化する。よって、フェライトの面積率は30%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下(0%を含む)とする。
<焼戻しマルテンサイトと残留オーステナイトとの合計:面積率で3%未満(0%を含む)>
本発明に係る高強度冷延鋼板のように合金元素を多量に添加した鋼をベイナイト変態させると、変態速度が遅くなり、ベイナイトだけでなくマルテンサイトも形成されやすくなる。マルテンサイトは硬質であるため、フェライトとマルテンサイトとの界面にひずみが集中して破壊が起こりやすくなり、伸びフランジ性が劣化する。また、残留オーステナイトもひずみが加わった際に硬質なマルテンサイトに変態し破壊の起点になるため、やはり伸びフランジ性を劣化させる。したがって、これらの組織の割合をできるだけ少なくすることで伸びフランジ性を改善できる。よって、焼戻しマルテンサイトと残留オーステナイトとの面積率の合計は3%未満、好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下(0%を含む)とする。
本発明に係る高強度冷延鋼板のように合金元素を多量に添加した鋼をベイナイト変態させると、変態速度が遅くなり、ベイナイトだけでなくマルテンサイトも形成されやすくなる。マルテンサイトは硬質であるため、フェライトとマルテンサイトとの界面にひずみが集中して破壊が起こりやすくなり、伸びフランジ性が劣化する。また、残留オーステナイトもひずみが加わった際に硬質なマルテンサイトに変態し破壊の起点になるため、やはり伸びフランジ性を劣化させる。したがって、これらの組織の割合をできるだけ少なくすることで伸びフランジ性を改善できる。よって、焼戻しマルテンサイトと残留オーステナイトとの面積率の合計は3%未満、好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下(0%を含む)とする。
<上記ベイナイト中に存在する、円相当直径0.1μm以上のセメンタイト粒子:該ベイナイト1μm2当たり3個以下>
従来の高強度冷延鋼板(特許文献4、5参照)のようなベイナイトを主要組織とする鋼の場合、通常、焼戻しマルテンサイトや残留オーステナイトが形成されやすく、これらの組織が破壊の起点となるため、焼戻しの際にベイナイト中に析出したセメンタイト粒子の分散状態は伸びフランジ性にあまり影響を与えない。しかし、焼戻しマルテンサイトおよび残留オーステナイトが少なくなると変形時のおける破壊の起点が、ベイナイト中に析出したセメンタイト粒子に遷移するため、ベイナイト中におけるセメンタイト粒子の存在状態が伸びフランジ性を律速するようになる。このため、本発明に係る高強度冷延鋼板のように焼戻しマルテンサイトおよび残留オーステナイトの形成を極力抑制した鋼の場合は、破壊の起点となるセメンタイト粒子の析出状態を制御することで伸びフランジ性を調整することが可能となる。なお、セメンタイト粒子のうち、破壊の起点として働くのは大きい粒子だけであるので、粗大なセメンタイト粒子の数を減少させることで、所定の伸びフランジ性にまで改善することができる。
従来の高強度冷延鋼板(特許文献4、5参照)のようなベイナイトを主要組織とする鋼の場合、通常、焼戻しマルテンサイトや残留オーステナイトが形成されやすく、これらの組織が破壊の起点となるため、焼戻しの際にベイナイト中に析出したセメンタイト粒子の分散状態は伸びフランジ性にあまり影響を与えない。しかし、焼戻しマルテンサイトおよび残留オーステナイトが少なくなると変形時のおける破壊の起点が、ベイナイト中に析出したセメンタイト粒子に遷移するため、ベイナイト中におけるセメンタイト粒子の存在状態が伸びフランジ性を律速するようになる。このため、本発明に係る高強度冷延鋼板のように焼戻しマルテンサイトおよび残留オーステナイトの形成を極力抑制した鋼の場合は、破壊の起点となるセメンタイト粒子の析出状態を制御することで伸びフランジ性を調整することが可能となる。なお、セメンタイト粒子のうち、破壊の起点として働くのは大きい粒子だけであるので、粗大なセメンタイト粒子の数を減少させることで、所定の伸びフランジ性にまで改善することができる。
上記作用を有効に発揮させるため、ベイナイト中に存在する、円相当直径0.1μm以上のセメンタイト粒子は、該ベイナイト1μm2当たり3個以下、好ましくは2.4個以下、さらに好ましくは1.6個以下とする。
以下、ベイナイト、フェライト、焼戻しマルテンサイトおよび残留オーステナイトの各面積率、ならびに、セメンタイト粒子のサイズおよびその存在数の各測定方法について説明する。
まず、フェライトの面積率については、各供試鋼板を鏡面研磨し、3%ナイタール液で腐食して金属組織を顕出させた後、走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率2000倍で5視野観察し、画像解析によってセメンタイトを含まず等軸状の領域をフェライトとし、全組織に対するフェライト領域の面積比率よりフェライトの面積率を算出した。
次に、焼戻しマルテンサイトと残留オーステナイトとの合計面積率については、各供試鋼板を鏡面研磨し、レペラ腐食液を用いて腐食して金属組織を顕出させた後、走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率2000倍で5視野観察し、画像解析によって画像のコントラストから白く見える領域を焼戻しマルテンサイトと残留オーステナイトとし、全組織に対するこの領域の面積比率より焼戻しマルテンサイトと残留オーステナイトとの合計面積率を算出した。
最後に、ベイナイトの面積率については、フェライトとマルテンサイトと残留オーステナイト以外の領域をベイナイトとし、100%から、上記でそれぞれ算出した、フェライトの面積率、および、焼戻しマルテンサイトと残留オーステナイトとの合計面積率を差し引くことによりベイナイトの面積率を求めた。
セメンタイト粒子のサイズおよびその存在数については、各供試鋼板を鏡面研磨し、3%ナイタールで腐食して金属組織を顕出させた後、ベイナイト内部の領域を解析できるよう、100μm2領域の視野について倍率10000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察し、画像のコントラストから白い部分をセメンタイト粒子と判別してマーキングし、画像解析ソフトにて、前記マーキングした各セメンタイト粒子の面積から円相当直径を算出するとともに、単位面積あたりに存在する所定のサイズのセメンタイト粒子の個数を求めた。
次に、本発明鋼板を構成する成分組成について説明する。以下、化学成分の単位はすべて質量%である。
〔本発明鋼板の成分組成〕
C:0.03%以上0.30%未満、
Cは、ベイナイト中にセメンタイトとして存在し、析出強化により強度向上に寄与する一方、該セメンタイト粒子が破壊の起点になるために伸びフランジ性に影響するとともに、焼入性改善元素でもあり、フェライトへの変態を抑制することでベイナイト面積率の確保に寄与する重要な元素である。0.03%未満ではベイナイト中のセメンタイト量が不足して強度が確保できず、一方、0.30%以上では焼入れ性が高くなりすぎ、ベイナイトへの変態が抑制されすぎて、マルテンサイトやオーステナイトの割合が増加し、伸びフランジ性が劣化する。C含有量の範囲は、好ましくは0.05〜0.25%、さらに好ましくは0.07〜0.20%である。
C:0.03%以上0.30%未満、
Cは、ベイナイト中にセメンタイトとして存在し、析出強化により強度向上に寄与する一方、該セメンタイト粒子が破壊の起点になるために伸びフランジ性に影響するとともに、焼入性改善元素でもあり、フェライトへの変態を抑制することでベイナイト面積率の確保に寄与する重要な元素である。0.03%未満ではベイナイト中のセメンタイト量が不足して強度が確保できず、一方、0.30%以上では焼入れ性が高くなりすぎ、ベイナイトへの変態が抑制されすぎて、マルテンサイトやオーステナイトの割合が増加し、伸びフランジ性が劣化する。C含有量の範囲は、好ましくは0.05〜0.25%、さらに好ましくは0.07〜0.20%である。
Si:1.0%以下(0%を含む)
Siは、固溶強化元素として、伸びを劣化させずに強度を高めるとともに、焼戻し時における、ベイナイト中に存在するセメンタイト粒子の粗大化を抑制する作用も有し、このような粗大なセメンタイト粒子の生成を防止することで、伸びフランジ性を向上させる効果も有する有用な元素であるが、焼戻しマルテンサイトや残留オーステナイトの形成を助長するため、1.0%以下に添加量を制限する必要がある。Si含有量の範囲は、好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.2%以下(0%を含む)である。
Siは、固溶強化元素として、伸びを劣化させずに強度を高めるとともに、焼戻し時における、ベイナイト中に存在するセメンタイト粒子の粗大化を抑制する作用も有し、このような粗大なセメンタイト粒子の生成を防止することで、伸びフランジ性を向上させる効果も有する有用な元素であるが、焼戻しマルテンサイトや残留オーステナイトの形成を助長するため、1.0%以下に添加量を制限する必要がある。Si含有量の範囲は、好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.2%以下(0%を含む)である。
Mn:0.5〜2.4%、
Mnは、上記Siと同様、固溶強化元素として、伸びを劣化させずに強度を高めるとともに、焼入れ性を高めてベイナイト面積率の確保に寄与し、強度と伸びフランジ性を向上させる効果も有する有用な元素である。0.5%未満では、焼入れ性が不足してベイナイト面積率が確保できなくなり、強度が確保できなくなる。一方、2.4%超とすると焼入れ性が高くなりすぎてマルテンサイトが過剰に形成され、伸びフランジ性が劣化する。Mn含有量の範囲は、好ましくは0.8〜3.0%、さらに好ましくは1.0〜2.2%である。
Mnは、上記Siと同様、固溶強化元素として、伸びを劣化させずに強度を高めるとともに、焼入れ性を高めてベイナイト面積率の確保に寄与し、強度と伸びフランジ性を向上させる効果も有する有用な元素である。0.5%未満では、焼入れ性が不足してベイナイト面積率が確保できなくなり、強度が確保できなくなる。一方、2.4%超とすると焼入れ性が高くなりすぎてマルテンサイトが過剰に形成され、伸びフランジ性が劣化する。Mn含有量の範囲は、好ましくは0.8〜3.0%、さらに好ましくは1.0〜2.2%である。
P:0.1%以下
Pは不純物元素として不可避的に存在し、固溶強化により強度の上昇に寄与するが、旧オーステナイト粒界に偏析し、粒界を脆化させることで伸びフランジ性を劣化させるので、0.1%以下とする。好ましくは0.05%以下、さらに好ましくは0.03%以下である。
Pは不純物元素として不可避的に存在し、固溶強化により強度の上昇に寄与するが、旧オーステナイト粒界に偏析し、粒界を脆化させることで伸びフランジ性を劣化させるので、0.1%以下とする。好ましくは0.05%以下、さらに好ましくは0.03%以下である。
S:0.005%以下
Sも不純物元素として不可避的に存在し、MnS介在物を形成し、穴拡げ時に亀裂の起点となることで伸びフランジ性を低下させるので、0.005%以下とする。より好ましくは0.003%以下である。なお、Sの下限は上記観点からはできるだけ低くするのが望ましいが、工業的には0.0003%以下にすることは困難である。
Sも不純物元素として不可避的に存在し、MnS介在物を形成し、穴拡げ時に亀裂の起点となることで伸びフランジ性を低下させるので、0.005%以下とする。より好ましくは0.003%以下である。なお、Sの下限は上記観点からはできるだけ低くするのが望ましいが、工業的には0.0003%以下にすることは困難である。
N:0.01%以下
Nも不純物元素として不可避的に存在し、ひずみ時効により伸びと伸びフランジ性を低下させるので、低い方が好ましく、0.01%以下とする。
Nも不純物元素として不可避的に存在し、ひずみ時効により伸びと伸びフランジ性を低下させるので、低い方が好ましく、0.01%以下とする。
Al:0.01以上0.10%未満
AlはNと結合してAlNを形成し、ひずみ時効の発生に寄与する固溶Nを低減させることで伸びフランジ性の劣化を防止するとともに、固溶強化により強度向上に寄与する。0.01%未満では鋼中に固溶Nが残存するため、ひずみ時効が起こり、伸びと伸びフランジ性を確保できず、一方、0.10%以上ではセメンタイトの形成を阻害し、焼戻しマルテンサイトと残留オーステナイトとの合計面積率が過大になるため伸びフランジ性が劣化する。
AlはNと結合してAlNを形成し、ひずみ時効の発生に寄与する固溶Nを低減させることで伸びフランジ性の劣化を防止するとともに、固溶強化により強度向上に寄与する。0.01%未満では鋼中に固溶Nが残存するため、ひずみ時効が起こり、伸びと伸びフランジ性を確保できず、一方、0.10%以上ではセメンタイトの形成を阻害し、焼戻しマルテンサイトと残留オーステナイトとの合計面積率が過大になるため伸びフランジ性が劣化する。
本発明の鋼は上記成分を基本的に含有し、残部が実質的に鉄および不純物であるが、その他、本発明の作用を損なわない範囲で、以下の許容成分を添加することができる。
Cr:0.3〜3.0%
ベイナイトのうち、本発明の鋼が主として対象とする上部ベイナイトは、(1)ベイニティックフェライトの形成→(2)ベイニティックフェライトからオーステナイトへの炭素の吐き出し→(3)オーステナイトからのセメンタイトの形成、というフローで進行する変態現象により形成される。このフロー中、オーステナイトからのセメンタイトの形成はSiなどの合金元素の添加により遅延するため、残留オーステナイトや焼戻しマルテンサイトが形成されやすくなる。これに対して、Crはセメンタイトの核生成の駆動力を大きくする元素であり、セメンタイトの形成を促進し、これにより残留オーステナイトや焼戻しマルテンサイトの形成を抑制する作用を有する。また、形成されたセメンタイトは、通常は拡散速度の大きい炭素の拡散律速により粗大化が進行するため、粗大化しやすいが、Crが添加されると、拡散速度の小さいCrの拡散律速により粗大化が進行するようになるため、セメンタイトの粗大化が抑制できる。その結果、破壊の起点となるセメンタイトを微細に分散でき、伸びフランジ性を改善することができる。0.3%未満では上記作用が有効に発揮しえず、焼戻しマルテンサイトや残留オーステナイトの割合が増加するとともに、セメンタイトが粗大化するため伸びフランジ性が劣化する。一方、3.0%超では、焼入れ時に残留オーステナイトが形成され、ベイナイト面積率を確保できず、強度と伸びフランジ性が劣化する。Cr含有量の範囲は、好ましくは0.6〜2.5%、さらに好ましくは0.8〜2.0%である。
ベイナイトのうち、本発明の鋼が主として対象とする上部ベイナイトは、(1)ベイニティックフェライトの形成→(2)ベイニティックフェライトからオーステナイトへの炭素の吐き出し→(3)オーステナイトからのセメンタイトの形成、というフローで進行する変態現象により形成される。このフロー中、オーステナイトからのセメンタイトの形成はSiなどの合金元素の添加により遅延するため、残留オーステナイトや焼戻しマルテンサイトが形成されやすくなる。これに対して、Crはセメンタイトの核生成の駆動力を大きくする元素であり、セメンタイトの形成を促進し、これにより残留オーステナイトや焼戻しマルテンサイトの形成を抑制する作用を有する。また、形成されたセメンタイトは、通常は拡散速度の大きい炭素の拡散律速により粗大化が進行するため、粗大化しやすいが、Crが添加されると、拡散速度の小さいCrの拡散律速により粗大化が進行するようになるため、セメンタイトの粗大化が抑制できる。その結果、破壊の起点となるセメンタイトを微細に分散でき、伸びフランジ性を改善することができる。0.3%未満では上記作用が有効に発揮しえず、焼戻しマルテンサイトや残留オーステナイトの割合が増加するとともに、セメンタイトが粗大化するため伸びフランジ性が劣化する。一方、3.0%超では、焼入れ時に残留オーステナイトが形成され、ベイナイト面積率を確保できず、強度と伸びフランジ性が劣化する。Cr含有量の範囲は、好ましくは0.6〜2.5%、さらに好ましくは0.8〜2.0%である。
Mo:0.01〜1.0%、
Ni:0.05〜1.0%、
B:0.0002〜0.0030%、
の1種または2種以上
これらの元素は、焼入れ性を高めてマルテンサイト面積率の確保に寄与することで、降伏強度と伸びフランジ性を高めるのに有用な元素である。各元素とも、上記各下限値未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、上記各上限値を超える添加では焼入れ時にオーステナイトが残存し、伸びフランジ性を低下させる。
Ni:0.05〜1.0%、
B:0.0002〜0.0030%、
の1種または2種以上
これらの元素は、焼入れ性を高めてマルテンサイト面積率の確保に寄与することで、降伏強度と伸びフランジ性を高めるのに有用な元素である。各元素とも、上記各下限値未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、上記各上限値を超える添加では焼入れ時にオーステナイトが残存し、伸びフランジ性を低下させる。
B:0.0002〜0.0050%
Bは、焼入れ性を高めてフェライトの形成を抑制し、ベイナイト面積率の確保に寄与することで、強度と伸びフランジ性を高めるのに有用な元素である。また、固溶強化元素として、伸びを劣化させずに強度を高める作用も有する。0.0002%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、0.0050%を超える添加ではFe23(CB)6が形成され固溶Bが減少するため、上記焼入れ性改善作用を減殺する。
Bは、焼入れ性を高めてフェライトの形成を抑制し、ベイナイト面積率の確保に寄与することで、強度と伸びフランジ性を高めるのに有用な元素である。また、固溶強化元素として、伸びを劣化させずに強度を高める作用も有する。0.0002%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、0.0050%を超える添加ではFe23(CB)6が形成され固溶Bが減少するため、上記焼入れ性改善作用を減殺する。
Ti:([N]−0.003)/12 ≦[Ti]/48≦([N]+0.01)/12([ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。)
NはBNを形成してBを消費し、固溶Bによる焼入れ性改善作用を減殺してしまう。これに対して、TiはNをTiNとして強く固定し、BNの形成を抑制するので、Bによる焼入れ性改善作用を発揮させるのに有用な元素である。Tiの添加量は、不足すると上記BN形成抑制作用が有効に発揮されず、一方過剰になるとセメンタイトの形成が阻害され、焼戻しマルテンサイトや残留オーステナイトの割合が大きくなり、伸びフランジ性が劣化する。
NはBNを形成してBを消費し、固溶Bによる焼入れ性改善作用を減殺してしまう。これに対して、TiはNをTiNとして強く固定し、BNの形成を抑制するので、Bによる焼入れ性改善作用を発揮させるのに有用な元素である。Tiの添加量は、不足すると上記BN形成抑制作用が有効に発揮されず、一方過剰になるとセメンタイトの形成が阻害され、焼戻しマルテンサイトや残留オーステナイトの割合が大きくなり、伸びフランジ性が劣化する。
Mo:0.01〜1.0%、
Cu:0.05〜1.0%、
Ni:0.05〜1.0%、
の1種または2種以上
これらの元素は、焼入れ性を高めてベイナイト面積率の確保に寄与することで強度と伸びフランジ性を高めるのに有用な元素である。また、固溶強化元素として、伸びを劣化させずに強度を高めるのにも有用である。各元素とも、上記各下限値未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、上記各上限値を超える添加では焼入れ時にオーステナイトが残存し、伸びフランジ性を低下させる。
Cu:0.05〜1.0%、
Ni:0.05〜1.0%、
の1種または2種以上
これらの元素は、焼入れ性を高めてベイナイト面積率の確保に寄与することで強度と伸びフランジ性を高めるのに有用な元素である。また、固溶強化元素として、伸びを劣化させずに強度を高めるのにも有用である。各元素とも、上記各下限値未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、上記各上限値を超える添加では焼入れ時にオーステナイトが残存し、伸びフランジ性を低下させる。
Ca:0.0005〜0.01%、
Mg:0.0005〜0.01%、
REM:0.0004〜0.01%、
の1種または2種以上
冷延鋼板これらの元素は、介在物を微細化し、破壊の起点を減少させることで、伸びフランジ性を向上させるのに有用な元素である。各元素とも上記下限値未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、各元素とも0.01%を超える添加では逆に介在物が粗大化し、伸びフランジ性が低下する。
Mg:0.0005〜0.01%、
REM:0.0004〜0.01%、
の1種または2種以上
冷延鋼板これらの元素は、介在物を微細化し、破壊の起点を減少させることで、伸びフランジ性を向上させるのに有用な元素である。各元素とも上記下限値未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、各元素とも0.01%を超える添加では逆に介在物が粗大化し、伸びフランジ性が低下する。
なお、REMは、希土類元素、すなわち、周期律表の3A属元素を指す。
次に、本発明鋼板を得るための好ましい製造方法を以下に説明する。
〔本発明鋼板の好ましい製造方法〕
上記のような冷延鋼板を製造するには、まず、上記成分組成を有する鋼を溶製し、造塊または連続鋳造によりスラブとしてから熱間圧延を行なう。熱間圧延条件としては、仕上げ圧延の終了温度をAr3点以上に設定し、適宜冷却を行った後、450〜700℃の範囲で巻き取る。熱間圧延終了後は酸洗してから冷間圧延を行うが、冷間圧延率は30%程度以上とするのがよい。
上記のような冷延鋼板を製造するには、まず、上記成分組成を有する鋼を溶製し、造塊または連続鋳造によりスラブとしてから熱間圧延を行なう。熱間圧延条件としては、仕上げ圧延の終了温度をAr3点以上に設定し、適宜冷却を行った後、450〜700℃の範囲で巻き取る。熱間圧延終了後は酸洗してから冷間圧延を行うが、冷間圧延率は30%程度以上とするのがよい。
そして、上記冷間圧延後、引き続き焼鈍を行うが、必要によってさらに焼戻ししてもよい。
[焼鈍条件]
焼鈍条件としては、焼鈍加熱温度:Ac3〜1000℃に加熱し、焼鈍保持時間:3600s以下保持した後、該焼鈍加熱温度から400〜550℃(冷却終了温度)まで10〜200℃/sの冷却速度で急冷した後、該冷却終了温度で10〜600s保持し、その後、室温まで冷却する。
焼鈍条件としては、焼鈍加熱温度:Ac3〜1000℃に加熱し、焼鈍保持時間:3600s以下保持した後、該焼鈍加熱温度から400〜550℃(冷却終了温度)まで10〜200℃/sの冷却速度で急冷した後、該冷却終了温度で10〜600s保持し、その後、室温まで冷却する。
<焼鈍加熱温度:Ac3〜1000℃>
焼鈍加熱時に十分にオーステナイトに変態させ、その後の冷却時にオーステナイトから変態生成するベイナイトの面積率を70%以上確保するためである。
焼鈍加熱時に十分にオーステナイトに変態させ、その後の冷却時にオーステナイトから変態生成するベイナイトの面積率を70%以上確保するためである。
焼鈍加熱温度がAc3未満では、焼鈍加熱時においてオーステナイトへの変態量が不足するため、その後の冷却時にオーステナイトから変態生成するベイナイトの量が減少して面積率70%以上を確保できなくなり、一方、1000℃を超えると、オーステナイト組織が粗大化して鋼板の曲げ性や靭性が劣化するとともに、焼鈍設備の劣化をもたらすため好ましくない。
また、焼鈍保持時間が3600sを超えると、生産性が極端に悪化するので好ましくない。
<400〜550℃(冷却終了温度)まで10〜200℃/sの冷却速度で急冷冷した後、該冷却終了温度範囲で10〜600s保持>
冷却中にオーステナイトからフェライトやマルテンサイト組織が形成されることをできるだけ抑制し、ベイナイト組織を十分に得るためである。
冷却中にオーステナイトからフェライトやマルテンサイト組織が形成されることをできるだけ抑制し、ベイナイト組織を十分に得るためである。
400℃より低い温度まで急冷すると、マルテンサイトが過剰に形成されてベイナイトが十分に得られなくなる。一方、550℃より高い温度で急冷を終了させたり、冷却速度が10℃/s未満になると、フェライトが過剰に形成され、ベイナイトが不足し、強度が確保できなくなる。一方、冷却速度が200℃/s超では、制御が困難になるので現実的でない。また、冷却終了温度範囲での保持時間が10s未満では、ベイナイトへの変態が十分に進行せず、伸びと伸びフランジ性が確保できなくなる。一方、該保持時間が600sを超えると、ベイナイト組織中に析出したセメンタイト粒子が粗大になりすぎて伸びフランジ性が低下する。
なお、冷却終了温度範囲(400〜550℃)での保持中の熱履歴については、特に限定されるものではなく、等温保持状態、冷却状態、再昇温状態のいずれの熱履歴であってもかまわない。
下記表1に示す成分の鋼を溶製し、厚さ120mmのインゴットを作成した。
これを熱間圧延で厚さ25mmにした後、再度、熱間圧延で厚さ3.2mmとした。これを酸洗した後、厚さ1.6mmに冷間圧延して供試材とし、表2に示す条件にて熱処理を施した。
これを熱間圧延で厚さ25mmにした後、再度、熱間圧延で厚さ3.2mmとした。これを酸洗した後、厚さ1.6mmに冷間圧延して供試材とし、表2に示す条件にて熱処理を施した。
熱処理後の各鋼板について、上記[発明を実施するための最良の形態]の項で説明した測定方法により、ベイナイト、フェライト、焼戻しマルテンサイトおよび残留オーステナイトの各面積率、ならびに、セメンタイト粒子のサイズおよびその存在数を測定した。
また、上記各鋼板について、引張強度TS、伸びEl、および伸びフランジ性λを測定した。なお、引張強度TSと伸びElは、圧延方向と直角方向に長軸をとってJIS Z 2201に記載の5号試験片を作成し、JIS Z 2241に従って測定を行った。また、伸びフランジ性λは、鉄連規格JFST1001に則り、穴拡げ試験を実施して穴拡げ率の測定を行い、これを伸びフランジ性とした。
測定結果を表3に示す。
同表に示すように、発明例である鋼No.1〜6、9〜11、14〜16、18、21〜25は、いずれも、引張強度TSが800MPa以上で、かつ、伸びElが10%以上で伸びフランジ性(穴広げ率)λが90%以上を満足し、上記[背景技術]の項で述べた要望レベルを満足する、伸びと伸びフランジ性を兼備した高強度冷延鋼板が得られた。
これに対して、比較例である鋼No.7、8、12、13、17、19、26〜28は、いずれかの特性が劣っている。
例えば、鋼No.7は、Si含有量が高すぎることにより、マルテンサイトと残留オーステナイトとの合計面積率が過大になるため、伸びフランジ性が劣っている。
また、鋼No.8は、C含有量が低すぎることにより、ベイナイト中のセメンタイト量が不足するため、引張強度が劣っている。
また、鋼No.12は、C含有量が高すぎることにより、マルテンサイトと残留オーステナイトとの合計面積率が過大になるため、引張強度には優れているものの、伸びフランジ性が劣っている。
また、鋼No.13は、Mn含有量が低すぎることにより、ベイナイト面積率が不足するため、引張強度は確保されているものの、伸びフランジ性が劣っている。
また、鋼No.17は、Mn含有量が高すぎることにより、マルテンサイトが過剰に形成され、マルテンサイトと残留オーステナイトとの合計面積率が過大になるため、引張強度には優れているものの、伸びフランジ性が劣っている。
また、鋼No.26〜28は、焼鈍条件が推奨範囲を外れていることにより、本発明の組織を規定する要件のうち少なくとも一つを満たさず、伸びフランジ性が劣っている。
ここで、表3に示すデータのうち、鋼の成分組成とマトリックス組織の構成が本発明の規定範囲を満たす鋼No.のデータを用いて、以下の解析を試みた。
すなわち、伸びフランジ性(穴広げ率)λに及ぼすセメンタイト粒子数の影響度合いについて整理した結果、図1が得られた。
図1に示すように、伸びフランジ性(穴広げ率)λは、円相当直径0.1μm以上の粗大なセメンタイト粒子数の増加に伴って、ほぼ直線的に低下し、上記要望レベル以上のλ≧90%を確保するには、該粗大セメンタイト粒子数を3個/μm2以下にする必要があることがわかる。
Claims (5)
- 質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
C:0.03%以上0.30%未満、
Si:1.0%以下(0%を含む)、
Mn:0.5〜2.4%、
P:0.1%以下、
S:0.005%以下、
N:0.01%以下、
Al:0.01%以上0.10%未満
を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、
面積率で、ベイナイト:70%以上(100%を含む)、フェライト:30%以下(0%を含む)、焼戻しマルテンサイトと残留オーステナイトとの合計:3%未満(0%を含む)からなる組織を有し、
上記ベイナイト中に存在する、円相当直径0.1μm以上のセメンタイト粒子が、該ベイナイト1μm2当たり3個以下である
ことを特徴とする伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板。 - 成分組成が、更に、
Cr:0.3〜3.0%
を含むものである請求項1に記載の伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板。 - 成分組成が、更に、
B:0.0002〜0.0050%を含むとともに、
Tiを、([N]−0.003)/12 ≦[Ti]/48≦([N]+0.01)/12([ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。)の関係を満たすように含むものである
請求項1または2に記載の伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板。 - 成分組成が、更に、
Mo:0.01〜1.0%、
Cu:0.05〜1.0%、
Ni:0.05〜1.0%、
の1種または2種以上を含むものである
請求項1〜3のいずれか1項に記載の伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板。 - 成分組成が、更に、
Ca:0.0005〜0.01%、
Mg:0.0005〜0.01%、
REM:0.0004〜0.01%、
の1種または2種以上を含むものである
請求項1〜4のいずれか1項に記載の伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板。
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