JP5080215B2 - 等方性と伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板 - Google Patents

等方性と伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、加工性に優れた高強度鋼板に関し、詳細には、機械的特性の異方性が小さく、かつ、伸び(全伸び)および伸びフランジ性の高められた高強度鋼板に関する。
例えば自動車の骨格部品などに使用される鋼板には、衝突安全性や車体軽量化による燃費軽減などを目的として高強度が求められるとともに、形状の複雑な骨格部品に加工するために優れた成形加工性も要求される。
このため、引張強度780MPa級以上の高強度鋼板であって、伸び(全伸び;El)と伸びフランジ性(穴広げ率;λ)がともに高められるとともに、機械的特性、特に伸びの異方性の小さい高強度鋼板の提供が切望されており、例えば引張強度780MPa級の鋼板に対しては全伸び15%以上で穴広げ率100%以上、引張強度980MPa級の鋼板に対しては全伸び10%以上で穴広げ率100%以上であって、さらに伸びの異方性(圧延方向と圧延方向に垂直な方向の伸びの差)ができるだけ小さい(例えば1%未満)ものが要望されている。
上記のようなニーズを受けて、種々の組織制御の考え方に基づき、伸びと伸びフランジ性のバランスを改善した高強度鋼板が多数提案されているものの、伸びと伸びフランジ性が上記要望レベルを満足するように両立させたものはいまだ完成に至っておらず、ましてや、伸びの異方性についてまで改善されたものはいまだ存在しないのが現状である。
例えば、特許文献1には、Mn、CrおよびMoの少なくとも1種を合計で1.6〜2.5質量%含有し、実質的にマルテンサイトの単相組織からなる高張力冷延鋼板が開示されており、その穴広げ率(伸びフランジ性)は100%以上が得られているものの、伸びは10%に達していないうえ(同文献の表6の本発明例参照)、伸びの異方性についての言及もなされていない。
また、特許文献2には、フェライトが面積率で65〜85%で残部が焼戻しマルテンサイトの二相組織からなる高張力鋼板が開示されている。
また、特許文献3には、フェライトおよびマルテンサイトの平均結晶粒径がともに2μm以下であり、マルテンサイトの体積率が20%以上60%未満の二相組織からなる高張力鋼板が開示されている。
上記特許文献2および3に開示された高張力鋼板はいずれも、伸びは10%以上を確保しているものの、穴広げ率(伸びフランジ性)は100%に達していないうえ(特許文献2の表2の発明例、特許文献3の表2の実施例参照)、伸びの異方性についての言及もなされていない。
特開2002−161336号公報 特開2004−256872号公報 特開2004−232022号公報
そこで本発明の目的は、伸びと伸びフランジ性をともに高めるとともに、伸びの異方性を小さくした、より成形性に優れた高強度冷延鋼板を提供することにある。
請求項1に記載の発明は、
質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
C:0.03〜0.30%、
Si:0.1〜3.0%、
Mn:0.1〜5.0%、
P:0.1%以下、
S:0.005%以下、
N:0.01%以下、
Al:0.01〜1.00%
を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、
硬さ380Hv以下の焼戻しマルテンサイトが面積率で50%以上(100%を含む)を含み、残部がフェライトからなる組織を有し、
前記焼戻しマルテンサイト中におけるセメンタイト粒子の分布状態として、円相当直径0.1μm以上のセメンタイト粒子が、前記焼戻しマルテンサイト1μm当たり3個以下であり、かつ、
前記フェライトの(110)結晶面の最大集積度が1.7以下である
ことを特徴とする等方性と伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である。
請求項2に記載の発明は、
成分組成が、更に、
Cr:0.01〜1.0%、および/または
Mo:0.01〜1.0%
を含むものである請求項1に記載の等方性と伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である。
請求項3に記載の発明は、
成分組成が、更に、
Cu:0.05〜1.0%、および/または
Ni:0.05〜1.0%
を含むものである請求項1または2に記載の等方性と伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である。
請求項4に記載の発明は、
更に、
Ca:0.0005〜0.01%、および/または
Mg:0.0005〜0.01%
を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の等方性と伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である。
本発明によれば、フェライトと焼戻しマルテンサイトからなる二相組織において、焼戻しマルテンサイトの硬さとその面積率、該焼戻しマルテンサイト中におけるセメンタイト粒子の分布状態、およびフェライトの(110)結晶面の集積度を適正に制御することで、伸びを確保しつつ、伸びフランジ性を改善するとともに、伸びの異方性を小さくすることが可能となり、より成形性に優れた高強度鋼板を提供できるようになった。
本発明者らは、フェライトと焼戻しマルテンサイト(以下、単に「マルテンサイト」ということあり。)からなる二相組織を有する高強度鋼板(上記特許文献2、3参照)に着目し、伸びを確保しつつ該伸びの異方性を低下させるとともに、伸びフランジ性を改善することができれば、上記要望レベルを満足しうる高強度鋼板が得られると考え、伸びと伸びフランジ性に及ぼす各種要因の影響を調査するなど鋭意検討を行ってきた。その結果、フェライトの割合を少なくすることに加え、該焼戻しマルテンサイトの硬さを低下させること、および、焼戻し時にマルテンサイト中に析出したセメンタイト粒子の粗大化を防止することで、伸びフランジ性を向上できるとともに、フェライトの(110)結晶面の集積度を所定値以下に制限することで、圧延方向と圧延方向に垂直な方向の伸びの差を小さくできることを見出し、該知見に基づいて本発明を完成するに至った。
以下、まず本発明鋼板を特徴づける組織について説明する。
〔本発明鋼板の組織〕
上述したとおり、本発明鋼板は、上記特許文献2、3と同様の二相組織(フェライト+焼戻しマルテンサイト)をベースとするものであるが、特に、該焼戻しマルテンサイトの硬さが380Hv以下に制御されているとともに、該焼戻しマルテンサイト中に析出したセメンタイト粒子の分布状態が制御されている点で、上記特許文献2、3の鋼板とは相違している。
<硬さ380Hv以下の焼戻しマルテンサイト:面積率で50%以上(100%を含む)>
焼戻しマルテンサイトの硬さを制限して該焼戻しマルテンサイトの変形能を高めることで、フェライトと該焼戻しマルテンサイトの界面への応力集中を抑制し、該界面での亀裂の発生を防止して伸びフランジ性を確保するとともに、焼戻しマルテンサイト主体の組織にすることで、該焼戻しマルテンサイトの硬さを低下させても高強度を確保できる。
上記作用を有効に発揮させるには、焼戻しマルテンサイトの硬さは380Hv以下(好ましくは370Hv以下、さらに好ましくは350Hv以下)とし、該焼戻しマルテンサイトは、面積率で50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上(100%を含む)とする。なお、残部はフェライトである。
<円相当直径0.1μm以上のセメンタイト粒子:焼戻しマルテンサイト1μm当たり3個以下>
焼戻しの際にマルテンサイト中に析出したセメンタイト粒子のサイズと存在数を制御することで、伸びフランジ性を向上させることができる。つまり、伸びフランジ変形時において破壊の起点となる粗大なセメンタイト粒子の数を減少させることで、伸びフランジ性を改善することができる。また、このように、セメンタイト粒子の粗大化を防止することに伴い、マルテンサイト中に適切なサイズ(例えば0.02μm以上0.1μm未満)のセメンタイトの粒子が分散するので、これらが転位の増殖源として働くことで加工硬化指数が大きくなり、伸びの向上にも寄与する。
上記作用を有効に発揮させるには、円相当直径0.1μm以上の粗大なセメンタイト粒子は、焼戻しマルテンサイト1μm当たり3個以下、好ましくは2.5個以下、さらに好ましくは2個以下に制限する。
<フェライトの(110)結晶面の最大集積度が1.7以下>
フェライトの(110)結晶面(以下、「(110)α」と表記することあり。)が特定方向に過度に集積すると、該特定方向と(110)結晶面があまり集積していない方向とで、応力が加わった際に作用するすべり系が変化するため、引張荷重の方向によって伸びに差異が発生してしまう。したがって、フェライトの(110)結晶面の集積度を制御することで、機械的特性、特に伸び(El)の異方性を小さくすることができる。
上記異方性抑制効果を効果的に発揮させるには、フェライトの(110)結晶面の最大集積度は1.7以下、好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.5以下とする。
以下、焼戻しマルテンサイトの硬さおよびその面積率、セメンタイト粒子のサイズおよびその存在数、ならびに、(110)面の集積度の測定方法について説明する。
まず、マルテンサイトの面積率については、各供試鋼板を鏡面研磨し、3%ナイタール液で腐食して金属組織を顕出させた後、概略4μm×3μm領域5視野について倍率20000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察し、画像解析によってセメンタイトを含まない領域をフェライトとし、残りの領域をマルテンサイトとして、各領域の面積比率よりマルテンサイトの面積率を算出した。
次に、マルテンサイトの硬さについては、JIS Z 2244の試験方法に従って各供試鋼板表面のビッカース硬さ(98.07N)Hvを測定し、下記式(1)を用いてマルテンサイトの硬さHvMに換算を行った。
HvM=(100×Hv−VF×HvF)/VM ・・・式(1)
ただし、HvF=102+209[%P]+27[%Si]+10[%Mn]+4[%Mo]−10[%Cr]+12[%Cu](藤田利夫ら訳:「鉄鋼材料の設計と理論」(丸善株式会社)、昭和56年9月30日発行、p.10の図2.1から、低Cフェライト鋼の降伏応力の変化に及ぼす各合金元素量の影響の度合い(直線の傾き)を読み取って定式化を行った。なお、Al、Nなどその他の元素はフェライトの硬さに影響しないとした。)
ここに、HvF:フェライトの硬さ、VF:フェライトの面積率(%)、VM:マルテンサイトの面積率(%)、[%X]:成分元素Xの含有量(質量%)である。
セメンタイト粒子のサイズおよびその存在数については、各供試鋼板を鏡面研磨し、3%ナイタールで腐食して金属組織を顕出させた後、マルテンサイト内部の領域を解析できるよう、100μm領域の視野について倍率10000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察し、画像のコントラストから白い部分をセメンタイト粒子と判別してマーキングし、画像解析ソフトにて、前記マーキングした各セメンタイト粒子の面積から円相当直径を算出するとともに、単位面積あたりに存在する所定のサイズのセメンタイト粒子の個数を求めた。
フェライトの(110)結晶面の集積度については、日本鉄鋼協会編:第3版 鉄鋼便覧 I基礎[丸善]、p.465に記載のFM法によりフェライトの(110)結晶面の正極点図を作成し、その極点密度の最大値を集積度とした。
次に、本発明鋼板を構成する成分組成について説明する。以下、化学成分の単位はすべて質量%である。
〔本発明鋼板の成分組成〕
C:0.03〜0.30%
Cは、マルテンサイトの面積率およびマルテンサイト中に析出するセメンタイト量に影響し、強度および伸びフランジ性に影響する重要な元素である。0.03%未満では強度が確保できず、一方、0.30%超ではマルテンサイトの硬さが高くなりすぎて伸びフランジ性が確保できない。C含有量の範囲は、好ましくは0.05〜0.25%、さらに好ましくは0.07〜0.20%である。
Si:0.1〜3.0%
Siは、焼戻し時におけるセメンタイト粒子の粗大化を抑制する効果を有し、粗大なセメンタイト粒子の生成を防止することで、伸びフランジ性の両立に寄与する有用な元素である。0.10%未満では焼戻し中にセメンタイト粒子が粗大化するため、伸びフランジ性が確保できず、一方、3.0%超では加熱時におけるオーステナイトの形成を阻害するため、マルテンサイトの面積率を確保できず、やはり伸びフランジ性を確保できない。Si含有量の範囲は、好ましくは0.30〜2.5%、さらに好ましくは0.50〜2.0%である。
Mn:0.1〜5.0%
Mnは、上記Siと同様、焼戻し時におけるセメンタイトの粗大化を抑制する効果を有し、粗大なセメンタイト粒子の生成を防止することで、伸びフランジ性の向上に寄与するとともに、焼入れ性を確保するのに有用な元素である。0.1%未満では焼戻し中にセメンタイト粒子が粗大化するため、伸びフランジ性を確保できず、一方、5.0%超とすると焼入れ時(焼鈍加熱後の冷却時)にオーステナイトが残存し、伸びフランジ性を低下させる。Mn含有量の範囲は、好ましくは0.30〜2.5%、さらに好ましくは0.50〜2.0%である。
P:0.1%以下
Pは不純物元素として不可避的に存在し、固溶強化により強度の上昇に寄与するが、 旧オーステナイト粒界に偏析し、粒界を脆化させることで伸びフランジ性を劣化させるので、0.1%以下とする。好ましくは0.05%以下、さらに好ましくは0.03%以下である。
S:0.005%以下
Sも不純物元素として不可避的に存在し、MnS介在物を形成し、穴拡げ時に亀裂の起点となることで伸びフランジ性を低下させるので、0.005%以下とする。より好ましくは0.003%以下である。
N:0.01%以下
Nも不純物元素として不可避的に存在し、歪時効により伸びと伸びフランジ性を低下させるので、低い方が好ましく、0.01%以下とする。
Al:0.01〜1.00%
AlはNと結合してAlNを形成し、歪時効の発生に寄与する固溶Nを低減させることで伸びフランジ性の劣化を防止するとともに、固溶強化により強度向上に寄与する。0.01%未満では鋼中に固溶Nが残存するため、歪時効が起こり、伸びと伸びフランジ性を確保できず、一方、1.00%超では加熱時におけるオーステナイトの形成を阻害するため、マルテンサイトの面積率を確保できず、伸びフランジ性を確保できなくなる。
本発明の鋼は上記成分を基本的に含有し、残部が実質的に鉄及び不純物であるが、その他、本発明の作用を損なわない範囲で、以下の許容成分を添加することができる。
Cr:0.01〜1.0%、および/または、Mo:0.01〜1.0%
これらの元素は、セメンタイトの代わりに微細な炭化物として析出することで、伸びフランジ性の劣化を抑えつつ、析出強化量を高めるのに有用な元素である。各元素とも0.01%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、各元素とも1.0%を超える添加では析出強化が過剰となり、マルテンサイトの硬さが高くなりすぎ伸びフランジ性が低下してしまう。
Cu:0.05〜1.0%、および/または、Ni:0.05〜1.0%
これらの元素は、セメンタイトの成長を抑制することで、適度に微細なセメンタイトが得られやすくなり、伸びと伸びフランジ性のバランスを改善するのに有用な元素である。CuとNiでは0.05%未満、Bでは0.0002%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、各元素とも0.05%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、各元素とも1.0%を超える添加では焼入れ時にオーステナイトが残存し、伸びフランジ性を低下させる。
Ca:0.0005〜0.01%、および/または、Mg:0.0005〜0.01%
これらの元素は、介在物を微細化し、破壊の起点を減少させることで、伸びフランジ性を向上させるのに有用な元素である。各元素とも0.0005%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、各元素とも0.01%を超える添加では逆に介在物が粗大化し、伸びフランジ性が低下する。
次に、本発明鋼板を得るための好ましい製造方法を以下に説明する。
〔本発明鋼板の好ましい製造方法〕
上記のような冷延鋼板を製造するには、まず、上記成分組成を有する鋼を溶製し、造塊または連続鋳造によりスラブとしてから熱間圧延を行う。熱間圧延条件としては、仕上げ圧延の終了温度をAr点以上に設定し、適宜冷却を行った後、450〜700℃の範囲で巻き取る。熱間圧延終了後は酸洗してから冷間圧延を行うが、冷間圧延率は30%程度以上とするのがよい。
そして、上記冷間圧延後、引き続き、焼鈍、再焼鈍、さらには焼戻しを行う。
[焼鈍条件]
焼鈍条件としては、Ac3点以上に加熱し(必要により2回以上繰り返しAc3点以上に加熱してもよい)、十分にオーステナイト単相化を行ったのち、200℃以下に冷却する。その冷却方法は任意である。これにより、フェライトの(110)結晶面の特定方向への集積が抑制される。
[再焼鈍条件]
再焼鈍条件としては、再焼鈍加熱温度:[(Ac1+Ac3)/2]〜1000℃に加熱し、再焼鈍保持時間:3600s以下保持した後、再焼鈍加熱温度から直接Ms点以下の温度まで 50℃/s以上の冷却速度で急冷するか、または、再焼鈍加熱温度から、再焼鈍加熱温度未満で600℃以上の温度(第1冷却終了温度)まで1℃/s以上の冷却速度(第1冷却速度)で徐冷した後、Ms点以下の温度(第2冷却終了温度)まで50℃/s以下の冷却速度(第2冷却速度)で急冷するのがよい。
<再焼鈍加熱温度:[(Ac1+Ac3)/2]〜1000℃、再焼鈍保持時間:3600s以下>
再焼鈍加熱時に十分にオーステナイトに変態させ、その後の冷却時にオーステナイトから変態生成するマルテンサイトの面積率を50%以上確保するためである。
再焼鈍加熱温度が[(Ac1+Ac3)/2]℃未満では、再焼鈍加熱時においてオーステナイトへの変態量が不足するため、その後の冷却時にオーステナイトから変態生成するマルテンサイトの量が減少して面積率50%以上を確保できなくなり、一方、1000℃を超えると、オーステナイト組織が粗大化して鋼板の曲げ性や靭性が劣化するとともに、焼鈍設備の劣化をもたらすため好ましくない。
また、再焼鈍保持時間が3600sを超えると、生産性が極端に悪化するので好ましくない。
<Ms点以下の温度まで50℃/s以上の冷却速度で急冷>
冷却中にオーステナイトからフェライトやベイナイト組織が形成されることを抑制し、マルテンサイト組織を得るためである。
Ms点より高い温度で急冷を終了させたり、冷却速度が50℃/s未満になると、ベイナイトが形成されるようになり、鋼板の強度が確保できなくなる。
<再焼鈍加熱温度未満で600℃以上の温度まで1℃/s以上の冷却速度で徐冷>
面積率で50%未満のフェライト組織を形成させることにより、伸びフランジ性を確保したまま伸びの改善が図れるためである。
600℃未満の温度または1℃/s未満の冷却速度ではフェライトが形成されず、強度と伸びフランジ性が確保できなくなる。
[焼戻し条件]
焼戻し条件としては、上記再焼鈍冷却後の温度から1段目の焼戻し加熱温度:325〜375℃まで、100〜325℃の間を5℃/s以上の平均加熱速度で加熱し、1段目の焼戻し保持時間:50s以上保持した後、さらに、2段目の焼戻し加熱温度T:400℃以上まで加熱し、2段目の焼戻し保持時間t(s)が、Pg=exp[−9649/(T+273)]×t<1.2×10−3、かつ、Pt=(T+273)[log(t)+17]となる条件で保持した後、冷却すればよい。なお、2段目の保持中に温度Tを変化させる場合は、Pgとして下記式(2)を用いればよい。
Figure 0005080215
マルテンサイトからのセメンタイトの析出が最も速くなる温度域である350℃付近で保持してマルテンサイト組織中に均一にセメンタイト粒子を析出させた後、より高い温度域に加熱・保持することで、セメンタイト粒子を適切なサイズに成長させることができるためである。
<1段目の焼戻し加熱温度:325〜375℃まで、100〜325℃の間を5℃/s以上の平均加熱速度で加熱>
1段目の焼戻し加熱温度が325℃未満もしくは375℃超え、または、100〜325℃の間の平均加熱速度が5℃/s未満の場合は、マルテンサイト中にセメンタイト粒子の析出が不均一に起こるため、その後の2段目の加熱・保持中における成長により、粗大なセメンタイト粒子の割合が増加し、伸びフランジ性が得られなくなる。
<2段目の焼戻し加熱温度T:400℃以上まで加熱し、2段目の焼戻し保持時間t(s)が、Pg=exp[−9649/(T+273)]×t<1.2×10−3 、かつ、Pt=(T+273)[log(t)+17]となる条件で保持>
ここで、Pg=exp[−9649/(T+273)]×tは、杉本孝一ら:材料組織学[朝倉書店出版]、p106の 式(4.18)に記載の、析出物の粒成長モデルを元に変数の設定および簡略化を行った、析出物としてのセメンタイト粒子のサイズを規定するパラメータである。
また、Pt=(T+273)[log(t)+17]は、金属学会編:鉄鋼材料 講座・現代の金属学材料編 4、p.50に記載の、焼戻しマルテンサイトの硬さを規定するパラメータである。
2段目の焼戻し加熱温度Tを400℃未満とすると、セメンタイト粒子を適切なサイズに成長させるために必要な保持時間tが長くなりすぎる。
Pg=exp[−9649/(T+273)]×t≧1.2×10−3では、セメンタイト粒子が粗大化し、0.1μm以上のセメンタイト粒子の数が多くなりすぎるため、伸びフランジ性が確保できなくなる。
また、Pt=(T+273)[log(t)+17]<13600では、マルテンサイトの硬さが十分に低下せず、伸びフランジ性が確保できない。
下記表1に示す成分の鋼を溶製し、厚さ120mmのインゴットを作成した。
これを熱間圧延で厚さ25mmにした後、再度、熱間圧延で厚さ3.2mmとした。これを酸洗した後、厚さ1.6mmに冷間圧延して供試材とし、表2に示す条件にて熱処理を施した。
Figure 0005080215
Figure 0005080215
熱処理後の各鋼板について、上記[発明を実施するための最良の形態]の項で説明した測定方法により、マルテンサイトの面積率およびその硬さ、ならびに、セメンタイト粒子のサイズおよびその存在数を測定した。
また、上記各鋼板について、引張強度TS、L方向(圧延方向)の伸びElとC方向(圧延方向と直角の方向)の伸びEl、および伸びフランジ性λを測定した。なお、引張強度TSとC方向の伸びElは圧延方向と直角方向に長軸をとり、L方向の伸びElは圧延方向に沿って長軸をとって、それぞれJIS Z 2201に記載の5号試験片を作成し、JIS Z 2241に従って測定を行った。そして、L方向とC方向の伸びの差ΔEl=El−ElCを計算し、ΔElが1%未満のものを伸びの異方性が小さいものとして合格とした。また、伸びフランジ性λは、鉄連規格JFST1001に則り、穴拡げ試験を実施して穴拡げ率の測定を行い、これを伸びフランジ性とした。
測定結果を表3に示す。
同表に示すように、発明例である鋼No.1〜3、5、7、10、11、13〜17、25は、いずれも、引張強度TSが780MPa以上の場合には伸びElが15%以上で伸びフランジ性(穴広げ率)λが100%以上、引張強度TSが980MPa以上の場合には伸びElが10%以上で伸びフランジ性(穴広げ率)λが100%以上を満足し、さらに伸びの異方性が小さく、上記[背景技術]の項で述べた要望レベルを満足する、等方性および伸びと伸びフランジ性を兼備した高強度冷延鋼板が得られた。
これに対して、比較例である鋼No.4、6、8、9、12、19〜24、26、27は、いずれかの特性が劣っている。
例えば、鋼No.4は、マルテンサイト面積率が50%未満のため、伸びは優れているものの、引張強度と伸びフランジ性が劣るとともに、(110)αの最大集積度が1.7を超えるため、伸びの異方性が大きい。
また、鋼No.6は、C含有量が高すぎることにより、マルテンサイトの面積率は50%以上あるが、その硬さが高すぎることに加え、粗大化したセメンタイト粒子が多くなりすぎるため、引張強度に優れるとともに伸びの異方性は小さいものの、伸びの絶対値と伸びフランジ性がともに劣っている。
また、鋼No.8は、Si含有量が高すぎることにより、マルテンサイトの面積率は50%未満となり、その硬さが高すぎるため、引張強度と伸びに優れるとともに伸びの異方性が小さいものの、伸びフランジ性が劣っている。
また、鋼No.9は、Mn含有量が低すぎることにより、セメンタイト粒子が粗大化し、引張強度と伸びに優れるとともに、伸びの異方性は小さいものの、伸びフランジ性が劣っている。
また、鋼No.12は、Mn含有量が高すぎることにより、焼入れ時(焼鈍加熱後の冷却時)にオーステナイトが残留するため、引張強度と伸びに優れるとともに、伸びの異方性は小さいものの、伸びフランジ性が劣っている。
また、鋼No.18〜24は、再焼鈍条件または焼戻し条件が推奨範囲を外れていることにより、マルテンサイトの硬さまたはセメンタイト粒子の分散状態を規定する要件を満たさず、引張強度に優れるとともに伸びの異方性は小さいものの、少なくとも伸びフランジ性が劣っている。
また、鋼No.26、27は、焼鈍条件が推奨範囲を外れていることにより、(110)αの集積度を規定する要件を満たさず、引張強度、伸びの絶対値および伸びフランジ性に優れているものの、伸びの異方性が大きくなっている。
ちなみに、発明例(鋼No.2)と比較例(鋼No.19)の、マルテンサイト組織中におけるセメンタイト粒子の分布状態を図1に例示する。発明例では、適切なサイズのセメンタイト粒子が均一に分散しているのに対し、比較例では、粗大化したセメンタイト粒子が多数存在しているのが認められる。
また、発明例(鋼No.2)と比較例(鋼No.26)の、FM法による(110)αの正極点図を図2に例示する。発明例は、比較例に比べて、異方性が明らかに小さくなっているのが認められる。
Figure 0005080215
マルテンサイト組織中におけるセメンタイト粒子の分布状態を示す図である。 フェライトの(110)結晶面の正極点図である。

Claims (4)

  1. 質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
    C:0.03〜0.30%、
    Si:0.1〜3.0%、
    Mn:0.1〜5.0%、
    P:0.1%以下、
    S:0.005%以下、
    N:0.01%以下、
    Al:0.01〜1.00%
    を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    硬さ380Hv以下の焼戻しマルテンサイトが面積率で50%以上(100%を含む)を含み、残部がフェライトからなる組織を有し、
    前記焼戻しマルテンサイト中におけるセメンタイト粒子の分布状態として、円相当直径0.1μm以上のセメンタイト粒子が、前記焼戻しマルテンサイト1μm当たり3個以下であり、かつ、
    前記フェライトの(110)結晶面の最大集積度が1.7以下である
    ことを特徴とする等方性と伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板。
  2. 成分組成が、更に、
    Cr:0.01〜1.0%、および/または
    Mo:0.01〜1.0%
    を含むものである請求項1に記載の等方性と伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板。
  3. 成分組成が、更に、
    Cu:0.05〜1.0%、および/または
    Ni:0.05〜1.0%
    を含むものである請求項1または2に記載の等方性と伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板。
  4. 更に、
    Ca:0.0005〜0.01%、および/または
    Mg:0.0005〜0.01%
    を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の等方性と伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板。
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