JP5363867B2 - 伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板 - Google Patents

伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板

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Description

本発明は、加工性に優れた高強度鋼板に関し、詳細には、伸び(全伸び)および伸びフランジ性の高められた高強度鋼板に関する。
例えば自動車の骨格部品などに使用される鋼板には、衝突安全性や車体軽量化による燃費軽減などを目的として高強度が求められるとともに、形状の複雑な骨格部品に加工するために優れた成形加工性も要求される。
このため、引張強度980MPa級以上の高強度鋼板であって、伸び(全伸び;El)と伸びフランジ性(穴広げ率;λ)がともに高められた高強度鋼板の提供が切望されており、例えば、引張強度980MPa級(980MPa以上1180MPa未満)の鋼板に対しては全伸び15%以上で穴広げ率90%以上、引張強度1180MPa級(1180MPa以上1380MPa未満)の鋼板に対しては全伸び13%以上で穴広げ率75%以上、引張強度1380MPa級(1380MPa以上)の鋼板に対しては全伸び10%以上で穴広げ率60%以上のものが要望されている。
上記のようなニーズを受けて、種々の組織制御の考え方に基づき、伸びと伸びフランジ性のバランスを改善した高強度鋼板が多数提案されているものの、伸びと伸びフランジ性が上記要望レベルを満足するように両立させたものはいまだ完成に至っていないのが現状である。
例えば、特許文献1には、Mn、CrおよびMoの少なくとも1種を合計で1.6〜2.5質量%含有し、実質的にマルテンサイトの単相組織からなる高張力冷延鋼板が開示されており、その穴広げ率(伸びフランジ性)は100%以上が得られているものの、伸びは10%に達していない(同文献の表6の本発明例参照)。
また、特許文献2には、フェライトが面積率で65〜85%で残部が焼戻しマルテンサイトの二相組織からなる高張力鋼板が開示されている。
また、特許文献3には、フェライトおよびマルテンサイトの平均結晶粒径がともに2μm以下であり、マルテンサイトの体積率が20%以上60%未満の二相組織からなる高張力鋼板が開示されている。
上記特許文献2および3に開示された高張力鋼板はいずれも、上記各引張強度クラスに応じて、伸びは上記要望レベル以上を確保しているものの、穴広げ率(伸びフランジ性)は上記要望レベルに達していない(特許文献2の表2の発明例、特許文献3の表2の実施例参照)。
一方、出願人は、フェライトと焼戻しマルテンサイトからなる二相組織鋼(DP鋼)において、焼戻しマルテンサイト中におけるセメンタイト粒子の分布状態を制御することで、伸びと伸びフランジ性のバランスが改善されることを見出し、既に特許出願(特願2008−290099)を行った。この技術では、SiとMnの添加により焼戻し時のセメンタイトの粗大化を抑制してセメンタイト粒子を微細化しているが、これらの元素の添加により同時にフェライトの硬さも上昇するため(特にSiの添加はフェライトを固溶強化するのでフェライトの硬さ上昇に対する影響が大きい)、伸びを若干犠牲にして伸びフランジ性を向上させることで、伸びと伸びフランジ性のバランスの改善を図っている。このため、本技術では、上記各引張強度クラスに応じて、伸びフランジ性は上記要望レベル以上を確保できるようになったものの、全伸びはまだ上記要望レベルにまでは到達していなかった。
また、本願発明と同様、フェライトと焼戻しマルテンサイトからなる二相組織鋼(DP鋼)において、Siを低減してAlに代替する技術が開示されている(特許文献4参照)。しかしながら、この技術は、引張強度と伸びを維持しつつ化成処理性を向上させることを目的としており、特許文献4には、フェライトの微細化や焼戻しマルテンサイト中のセメンタイト粒子の微細化はもとより、伸びフランジ性の向上効果についても何ら記載されていない。したがって、伸びと伸びフランジ性をともに高めて成形性を向上させるという本願発明とはその目的や技術的思想を全く異にするものである。
特開2002−161336号公報 特開2004−256872号公報 特開2004−232022号公報 特開2003−193192号公報
そこで本発明の目的は、伸びと伸びフランジ性をともに高めた、より成形性に優れた高強度冷延鋼板を提供することにある。
請求項1に記載の発明は、
質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
C:0.10〜0.30%、
Si:0.05〜0.5%、
Mn:1.0〜4.0%、
Ni:0.05〜1.0%、
P:0.1%以下、
S:0.005%以下、
N:0.01%以下、
Al:1.0%超2.0%以下
を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、
硬さ90〜130Hvのフェライトを面積率で20〜50%含み、残部が焼戻しマルテンサイトからなる組織を有し、
前記フェライトの円相当直径は平均で8μm以下であり、
前記焼戻しマルテンサイト中の円相当直径0.1μm以上のセメンタイト粒子は、前記焼戻しマルテンサイト1μm当たり2個以下である
ことを特徴とする伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である。
請求項2に記載の発明は、
成分組成が、更に、
Cr:0.01〜1.0%、
Mo:0.01〜1.0%、
Cu:0.05〜1.0%
の1種または2種以上を含むものである請求項1に記載の伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である。
請求項3に記載の発明は、
成分組成が、更に、
Ca:0.0005〜0.01%、および/または
Mg:0.0005〜0.01%
を含むものである請求項1または2に記載の伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である。
本発明によれば、フェライトと焼戻しマルテンサイトからなる二相組織において、フェライトの硬さ、面積率およびサイズ、ならびに該焼戻しマルテンサイト中における粗大セメンタイト粒子の存在密度を適正に制御することで、伸びを確保しつつ、伸びフランジ性を改善することが可能となり、より成形性に優れた高強度鋼板を提供できるようになった。
上記本出願人の特許出願(特願2008−290099)の技術は、フェライトと焼戻しマルテンサイト(以下、単に「マルテンサイト」ということあり。)からなる二相組織を有する高強度鋼板において、フェライトの割合を少なくすることに加え、該焼戻しマルテンサイトの硬さを低下させること、および、焼戻し時にマルテンサイト中に析出したセメンタイト粒子を微細化することで、伸びを確保しつつ伸びフランジ性を向上させる技術である。
本発明者らは、上記特許出願の技術をベース技術として、焼戻しマルテンサイト中のセメンタイト粒子を微細化するとともに、フェライトをも微細化することで、上記ベース技術の鋼板と同等の伸びフランジ性を確保しつつ、フェライトの硬さを低下させることで、伸びを向上させれば、上記各引張強度クラスに応じた要望レベルを満足しうる高強度鋼板が得られると考え、引張強度、伸びおよび伸びフランジ性に及ぼす各種要因の影響を調査するなど鋭意検討を行ってきた。その結果、フェライトの硬さ、面積率およびサイズ、ならびに焼戻しマルテンサイト中の粗大セメンタイト粒子の存在密度を規定することで、伸びフランジ性を確保しつつ伸びを向上できることを見出し、該知見に基づいて本発明を完成するに至った。
以下、まず本発明鋼板を特徴づける組織について説明する。
〔本発明鋼板の組織〕
上述したとおり、本発明鋼板は、上記ベース技術と同様の二相組織(フェライト+焼戻しマルテンサイト)をベースとするものであるが、特に、フェライトの硬さとサイズが制御されている点で、上記ベース技術の鋼板とは相違している。
<硬さ90〜130Hvのフェライト:面積率で20〜50%>
フェライトの硬さを制限して該フェライトの変形能を高めることで、伸びを確保できる。上記作用を有効に発揮させるには、フェライトの硬さは130Hv以下とする。ただし、フェライトの硬さを低くしすぎると引張強度(以下、単に「強度」ということあり。)が確保できなくなるため、90Hv以上とする。好ましくは100〜120Hvである。また、フェライトの面積率は小さくしすぎると十分な伸びが得られず、一方、大きくしすぎると強度が確保できないため、20〜50%とする。なお、残部は焼戻しマルテンサイトである。
<フェライトの円相当直径:平均で8μm以下>
フェライトの硬さが低下すると、伸びフランジ変形時にフェライトと焼戻しマルテンサイトの界面に応力が集中しやすくなるため、伸びフランジ性が低下する。フェライトを微細化することで上記応力集中が緩和され伸びフランジ性を向上できる。上記作用を有効に発揮させるには、フェライトの円相当直径は平均で8μm以下、好ましくは6μm以下とする。
<焼戻しマルテンサイト中の円相当直径0.1μm以上のセメンタイト粒子:焼戻しマルテンサイト1μm当たり2個以下>
粗大なセメンタイト粒子は、伸びフランジ変形時に破壊の起点となり、伸びフランジ性を低下させる。特に0.1μm以上のサイズのセメンタイト粒子の影響が大きいため、焼戻しマルテンサイト1μm当たり2個以下に制限することで良好な伸びフランジ性を実現できる。
以下、フェライトの硬さ、面積率およびサイズ、ならびに、セメンタイト粒子のサイズおよびその存在密度の測定方法について説明する。
まず、フェライトの硬さについては、光学顕微鏡組織観察用の供試鋼板を用い、JIS Z 2244の試験方法に従って、1供試鋼板あたり5個のフェライト粒のビッカース硬さ(98.07N)Hvを測定し、その測定値の算術平均をフェライトの硬さとした。
次に、フェライトの面積率については、各供試鋼板を鏡面研磨し、3%ナイタール液で腐食して金属組織を顕出させた後、概略4μm×3μm領域5視野について倍率20000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察し、画像解析によってセメンタイトを含まない領域をフェライトとし、残りの領域をマルテンサイトとして、各領域の面積比率よりフェライトの面積率を算出した。
フェライトのサイズについては、上記フェライトの面積率の測定と同様に、SEM観察を行って個々のフェライト粒の面積を画像解析により求め、この面積を円相当直径に換算し、フェライト粒100個分の値を算術平均して求めた。
セメンタイト粒子のサイズおよびその存在密度については、各供試鋼板を鏡面研磨し、3%ナイタールで腐食して金属組織を顕出させた後、マルテンサイト内部の領域を解析できるよう、100μm領域の視野について倍率10000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察し、画像のコントラストから白い部分をセメンタイト粒子と判別してマーキングし、画像解析ソフトにて、前記マーキングした各セメンタイト粒子の面積から円相当直径を算出するとともに、単位面積あたりに存在する所定のサイズのセメンタイト粒子の個数を求めた。
次に、本発明鋼板を構成する成分組成について説明する。以下、化学成分の単位はすべて質量%である。
〔本発明鋼板の成分組成〕
C:0.10〜0.30%
Cは、フェライトの面積率およびマルテンサイト中に析出するセメンタイト量に影響し、強度、伸び、伸びフランジ性のいずれにも影響する重要な元素である。0.10%未満では強度が不足し、一方、0.30%を超えると焼戻しマルテンサイト中のセメンタイトのサイズが大きくなりすぎるために、伸びフランジ性が低下する。C含有量の範囲は、好ましくは0.13〜0.20%である。
Si:0.05〜0.5%
Siは、焼戻しマルテンサイト中のセメンタイト粒子の粗大化を防止するが、フェライトに固溶しフェライトの硬さを上昇させて伸びを低下させるので、0.5%以下、好ましくは0.2%以下とする。ただし、Siの含有量が少なすぎるフェライト硬さが低下しすぎて強度が不足するため、0.05%以上とする。
Mn:1.0〜4.0%
Mnは、鋼材の焼入れ性を向上させ、マルテンサイトを生成させるために必要な元素である。1%未満では焼入れ性が不足するため焼入れ冷却中にフェライトが析出してフェライト量が増加するとともに、必要なマルテンサイト量が確保できないため低強度となりやすく、伸びフランジ性も低下する。一方4%を超えると焼入れ時にオーステナイトが残留し、伸びフランジ性が低下する。Mn含有量の範囲は、好ましくは0.30〜2.5%、さらに好ましくは0.50〜2.0%である。
Ni:0.05〜1.0%
Niは、Ac1点を低下させることで焼鈍加熱温度を低下させ、フェライトの微細化を可能とするための有用な元素である。0.05%未満ではAc1点低下の効果が小さく、フェライトが焼鈍時に粗大化して伸びフランジ性が低下する。一方、1.0%を超えるとオーステナイトが残留するためやはり伸びフランジ性が低下する。Ni含有量の範囲は、好ましくは0.1〜0.9%、さらに好ましくは0.3〜0.7%である。
P:0.1%以下
Pは不純物元素として不可避的に存在し、固溶強化により強度の上昇に寄与するが、 旧オーステナイト粒界に偏析し、粒界を脆化させることで伸びフランジ性を劣化させるので、0.1%以下とする。好ましくは0.05%以下、さらに好ましくは0.03%以下である。
S:0.005%以下
Sも不純物元素として不可避的に存在し、MnS介在物を形成し、穴拡げ時に亀裂の起点となることで伸びフランジ性を低下させるので、0.005%以下とする。より好ましくは0.003%以下である。
N:0.01%以下
Nも不純物元素として不可避的に存在し、歪時効により伸びと伸びフランジ性を低下させるので、低い方が好ましく、0.01%以下とする。
Al:1.0%超2.0%以下
Alは、焼戻し時のマルテンサイト中におけるセメンタイトの粗大化を抑制し、伸びフランジ性を向上させるのに有用な元素である。1.0%以下では上記効果が小さく、一方2.0%を超えるとAc1点が上昇するため、焼鈍加熱温度が高くなりフェライトの微細化が実現できなくなる。つまり、焼鈍時の加熱ではフェライトの一部をオーステナイト化してフェライトとオーステナイトの2相共存状態にし、その後の急冷でオーステナイトをマルテンサイトにするが、加熱温度が高くなるとフェライト粒が粗大化するためである。Al含有量の範囲は、好ましくは1.3〜1.9%、さらに好ましくは1.5〜1.7%である。
本発明の鋼は上記成分を基本的に含有し、残部が実質的に鉄及び不純物であるが、その他、本発明の作用を損なわない範囲で、以下の許容成分を添加することができる。
Cr:0.01〜1.0%、
Mo:0.01〜1.0%、
Cu:0.05〜1.0%の1種または2種以上
CrとMoは、セメンタイトの代わりに微細な炭化物として析出することで、伸びフランジ性の劣化を抑えつつ、析出強化量を高めるのに有用な元素である。各元素とも0.01%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、各元素とも1.0%を超える添加では析出強化が過剰となり、マルテンサイトの硬さが高くなりすぎ伸びフランジ性が低下してしまう。
Cuは、セメンタイトの成長を抑制することで、適度に微細なセメンタイトが得られやすくなり、伸びと伸びフランジ性のバランスを改善するのに有用な元素である。0.05%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、1.0%を超える添加では焼入れ時にオーステナイトが残存し、伸びフランジ性を低下させる。
Ca:0.0005〜0.01%、および/または、Mg:0.0005〜0.01%
これらの元素は、介在物を微細化し、破壊の起点を減少させることで、伸びフランジ性を向上させるのに有用な元素である。各元素とも0.0005%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、各元素とも0.01%を超える添加では逆に介在物が粗大化し、伸びフランジ性が低下する。
次に、本発明鋼板を得るための好ましい製造方法を以下に説明する。
〔本発明鋼板の好ましい製造方法〕
上記のような冷延鋼板を製造するには、まず、上記成分組成を有する鋼を溶製し、造塊または連続鋳造によりスラブとしてから熱間圧延を行なう。熱間圧延条件としては、仕上げ圧延の終了温度をAr3点以上に設定し、適宜冷却を行った後、450〜700℃の範囲で巻き取る。熱間圧延終了後は酸洗してから冷間圧延を行う。
[冷間圧延条件]
冷間圧延条件(冷延条件)としては、冷間圧延率30%以上で圧延するのがよい。これにより、冷間圧延で導入された歪によって、次工程の焼鈍加熱時にオーステナイト析出の核生成サイトが多数導入されることで、フェライトが分断されてフェライトが微細化する。冷間圧延率は50%以上とするのがより好ましい。
そして、上記冷間圧延後、引き続き、焼鈍、さらには焼戻しを行う。
[焼鈍条件]
焼鈍条件としては、焼鈍後のフェライト面積率20〜50%が得られるように、焼鈍加熱温度:[(Ac1+Ac3)/2]〜[Ac3−50]℃に加熱し、焼鈍保持時間:720s以下保持した後、焼鈍加熱温度から直接Ms点以下の温度まで50℃/s以上の冷却速度で急冷するとよい。
焼鈍加熱温度は、オーステナイトとフェライトの2相共存状態となる温度域とする必要があるが、[(Ac1+Ac3)/2]℃未満では、焼鈍加熱時においてオーステナイトへの変態量が不足するため、フェライトが多くなりすぎて強度が不足する。一方、[Ac3−50]℃を超えると、フェライトが少なくなりすぎて伸びが不足する。
加熱保持時間は、長くしすぎるとフェライトが粗大化してしまい伸びフランジ性が低下するので、720s以下とする。
加熱保持後の急冷は、冷却中にオーステナイトからフェライトやベイナイト組織が形成されることを抑制し、マルテンサイト組織を得るため、Ms点以下の温度まで冷却速度50℃/s以上とする。
なお、焼鈍加熱温度は、あらかじめ、供試鋼板を用いて上記温度範囲内にて加熱温度を種々変更して加熱し、焼鈍保持時間720s以内の時間(例えば120s;実施例の表2参照)保持した後水焼入れする焼鈍実験を行い、焼鈍後のフェライト面積率を測定し、20〜50%が得られる温度を選定すればよい。
[焼戻し条件]
焼戻し条件としては、上記焼鈍冷却後に、焼戻し加熱温度:350〜550℃まで加熱し、焼戻し保持時間:300s以下保持した後、冷却すればよい。
焼戻し加熱温度が350℃未満では、マルテンサイトが焼戻されず硬さが高すぎるため伸びフランジ性が確保できなくなる。焼戻し加熱温度が550℃超または焼戻し保持時間が300sを超えると、セメンタイトが粗大化するためやはり伸びフランジ性が確保できなくなる。
下記表1に示す成分の鋼を溶製し、厚さ120mmのインゴットを作製した。
これを熱間圧延で厚さ25mmにした後、再度、熱間圧延で厚さ3.2mmとした。これを酸洗した後、圧延率20〜80%で冷間圧延して厚さ2.56〜0.64mmの冷延板を作製し、表2および表3に示す条件にて熱処理を施した。表2は、表1の鋼種5を使用して熱処理条件の影響を調査した実験の熱処理条件であり、表3は、鋼種ごとの成分の影響を調査するための実験の熱処理条件である。
Figure 0005363867
Figure 0005363867
Figure 0005363867
熱処理後の各鋼板について、上記[発明を実施するための形態]の項で説明した測定方法により、フェライトの硬さ、その面積率およびそのサイズ、ならびに、セメンタイト粒子のサイズおよびその存在密度を測定した。
また、上記各鋼板について、引張強度TS、伸びEl、および伸びフランジ性λを測定した。なお、引張強度TSと伸びElは、圧延方向と直角方向に長軸をとってJIS Z 2201に記載の5号試験片を作成し、JIS Z 2241に従って測定を行った。また、伸びフランジ性λは、鉄連規格JFST1001に則り、穴拡げ試験を実施して穴拡げ率の測定を行い、これを伸びフランジ性とした。
測定結果を表4および表5に示す。
これらの表に示すように、発明例である鋼No.1〜3、5、6、9、11、13、15、16、18、20、21、24、27、41、43は、いずれも、引張強度TSが980MPa以上1180MPa未満の場合には伸びElが15%以上で伸びフランジ性(穴広げ率)λが90%以上、引張強度TSが1180MPa以上1380MPa未満の場合には伸びElが13%以上で伸びフランジ性(穴広げ率)λが75%以上、引張強度TSが1380MPa以上の場合には伸びElが10%以上で伸びフランジ性(穴広げ率)λが60%以上を満足し、上記[背景技術]の項で述べた要望レベルを満足する、伸びと伸びフランジ性を兼備した高強度冷延鋼板が得られた。
これに対して、比較例である鋼No.4、7、8、10、12、14、17、19、22、25、26、29、30、33、35、38、39は、いずれかの機械的特性が劣っている。
例えば、表4に示すように、鋼No.4、8、12、14、19は、成分は本発明の規定範囲にあるものの、冷間圧延条件、焼鈍条件または焼戻し条件が推奨範囲を外れていることにより、本発明の組織を規定する要件のうち少なくとも一つを満たさず、いずれかの機械的特性が劣っている。
また、表5に示すように、鋼No.22、25、26、29、30、33、35、38、39は、成分が本発明の規定範囲を外れていることにより、以下のような理由でいずれかの機械的特性が劣っている。
鋼No.22は、C含有量が低すぎることにより、伸びは優れているものの、引張強度が劣っている。
また、鋼No.25は、Si含有量が低すぎることにより、フェライトが軟質化し、伸びは優れているものの、引張強度が劣っている。
一方、鋼No.26は、Si含有量が高すぎることにより、フェライトが硬質化し、伸びフランジ性は優れているものの、伸びが劣っている。
また、鋼No.29は、Mn含有量が低すぎることにより、フェライトが過多になり、伸びに優れるものの、引張強度が劣っている。
一方、鋼No.30は、Mn含有量が高すぎることにより、焼入れ時(焼鈍加熱後の冷却時)にオーステナイトが残留するため、伸びは優れているものの、伸びフランジ性が劣っている。
また、鋼No.33は、Ni含有量が低すぎることにより、フェライトが粗大化し、伸びは優れているものの、伸びフランジ性が劣っている。
一方、鋼No.35は、Ni含有量が高すぎることにより、焼入れ時(焼鈍加熱後の冷却時)にオーステナイトが残留するため、伸びは優れているものの、伸びフランジ性が劣っている。
また、鋼No.38は、Al含有量が低すぎることにより、セメンタイト粒子が粗大化し、伸びは優れているものの、伸びフランジ性が劣っている。
一方、鋼No.39は、Al含有量が高すぎることにより、フェライトが粗大化し、伸びは優れているものの、伸びフランジ性が劣っている。
Figure 0005363867
Figure 0005363867

Claims (3)

  1. 質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
    C:0.10〜0.30%、
    Si:0.05〜0.5%、
    Mn:1.0〜4.0%、
    Ni:0.05〜1.0%、
    P:0.1%以下、
    S:0.005%以下、
    N:0.01%以下、
    Al:1.0%超2.0%以下
    を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    硬さ90〜130Hvのフェライトを面積率で20〜50%含み、残部が焼戻しマルテンサイトからなる組織を有し、
    前記フェライトの円相当直径は平均で8μm以下であり、
    前記焼戻しマルテンサイト中の円相当直径0.1μm以上のセメンタイト粒子は、前記焼戻しマルテンサイト1μm当たり2個以下である
    ことを特徴とする伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板。
  2. 成分組成が、更に、
    Cr:0.01〜1.0%、
    Mo:0.01〜1.0%、
    Cu:0.05〜1.0%
    の1種または2種以上を含むものである請求項1に記載の伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板。
  3. 成分組成が、更に、
    Ca:0.0005〜0.01%、および/または
    Mg:0.0005〜0.01%
    を含むものである請求項1または2に記載の伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板。
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