JP3843021B2 - 曲げ加工性に優れた厚肉Al−Mg系合金圧延板調質材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
この発明は、建築、土木、電気機器、その他一般の機器、船舶などの用途において、0.8mm程度以上の比較的厚い板として使用されるAl−Mg系合金に関するものであり、特にH32〜H36相当に調質した曲げ加工性に優れるAl−Mg系合金圧延板調質材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にAl−Mg系合金、すなわちいわゆる5000番系合金は、強度と延性とのバランスに優れていて、良好な成形性を有することなどから、従来から建築、土木、電気機器、一般機器、船舶など、種々の用途に広く使用されている。これらの用途のAl−Mg系合金の代表的なものとしては、JIS5052合金などがある。ところでこれらの用途に使用されるAl−Mg系合金は、一般には冷間圧延のままではなく、冷間圧延により加工硬化した材料について、さらに安定化処理を目的とした調質焼鈍を施して、H3n材として用いるのが通常である。すなわち、Al−Mg系合金では、冷間圧延のままでは次第に強度が低下して伸びが増加するという経時変化を示すところから、安定化処理を目的とした調質焼鈍処理を施すのが通常である。
【0003】
なお前述のような用途では、0.8mm以上の比較的厚い板厚で用いることが多い。またその場合の製造方法としては、熱間圧延後に一次冷間圧延を行なって中間板厚とし、その段階で中間焼鈍を施してから最終冷間圧延を行なって最終板厚とし、その後に前述のような安定化処理を目的とした調質焼鈍を行なうのが通常である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、低コスト化の要請のみならず、地球環境保全の要請からも、各種材料製造工程における省エネルギー化が重要視されるようになっている。そこで本発明者等も、前述のような用途に使用されるAl−Mg系圧延板調質材についても、その製造プロセスを簡素化して、省エネルギー化を図る方策を検討している。
【0005】
ここで、Al−Mg系合金圧延板調質材の製造における省エネルギー化のためには、熱間圧延後の冷間圧延中途における中間焼鈍を省略することが考えられる。但し従来の冷間圧延中途における中間焼鈍は、単に材料を軟質化させるだけでなく、材料を再結晶させることにより熱間圧延後に行なう冷間圧延の組織を消失させ、主として曲げ加工性等の加工性を確保するために必要な工程とされている。そこで従来の製造プロセスにおける冷間圧延中途の中間焼鈍を省略するためには、熱間圧延中、さらには熱間圧延直後のコイル巻取にかけての段階で、熱延時の熱により自己再結晶(自己焼鈍)させることが考えられる。しかしながらこのような熱間圧延−巻取の段階で自己再結晶させた場合には、冷間圧延中途における中間焼鈍で再結晶させた場合よりも、再結晶粒径が大きくなってしまう傾向を示す。一方、この発明で主として対象としている0.8mm程度以上の比較的厚い板を製造する場合、冷間圧延の圧延率が比較的低く、そのため冷間圧延で熱間圧延板の組織が充分に破壊されず、熱間圧延板の組織の特徴が最終製品板まで強く残ってしまうため、前述のように再結晶粒が大きくなれば、製品板の曲げ加工性の大きな低下を招いてしまうおそれがある。
【0006】
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、主として省エネルギーの観点から冷間圧延中途での中間焼鈍を省略し、熱間圧延〜巻取の段階で再結晶を生起させながらも、0.8mm以上の比較的厚い最終製品板における曲げ加工性が良好なAl−Mg系合金圧延板調質材を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述のような課題を解決するため、本発明者等が鋭意実験・検討を重ねた結果、Al−Mg系合金の成分組成を適切に調整し、併せて製造プロセス、特に熱間圧延工程の条件を厳密に規制することによって、0.8mm以上の比較的厚い板でも充分な曲げ加工性を確保し得ることを見出し、この発明をなすに至った。
【0009】
具体的には請求項1の発明の板厚0.8mm以上の曲げ加工性に優れた厚肉Al−Mg系合金圧延板調質材の製造方法は、Mg1.50〜3.00%、Cr0.03〜0.35%、Cu0.30%以下、Fe0.10〜0.50%、Si0.05〜0.40%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金鋳塊に対して、最終パスの圧延率が35〜63%の範囲内、最終パスの圧延速度が200m/分以上、熱間圧延終了温度が280〜350℃の範囲内となるように熱間圧延を行って、熱延コイルにおける製品板となる領域の任意の箇所での直径1mmの円形視野内における再結晶率が85%以上となっている熱延コイルを得、引続き圧延率10〜65%の範囲内で冷間圧延を施し、さらにバッチ式焼鈍炉により100〜260℃の範囲内の温度で0.5〜10時間保持する調質焼鈍を行なうことを特徴とするものである。
【0010】
さらに請求項2の発明の板厚0.8mm以上の曲げ加工性に優れた厚肉Al−Mg系合金圧延板調質材の製造方法は、Mg1.50〜3.00%、Cr0.03〜0.35%、Cu0.30%以下、Fe0.10〜0.50%、Si0.05〜0.40%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金鋳塊に対して、最終パスの圧延率が35〜63%の範囲内、最終パスの圧延速度が200m/分以上、熱間圧延終了温度が280〜350℃の範囲内となるように熱間圧延を行って、熱延コイルにおける製品板となる領域の任意の箇所での直径1mmの円形視野内における再結晶率が85%以上となっている熱延コイルを得、引続き圧延率10〜65%の範囲内で冷間圧延を施し、さらに連続焼鈍炉により150〜340℃の範囲内の温度で保持なしもしくは1分以内保持する調質焼鈍を行なうことを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
先ずこの発明におけるAl−Mg系合金の成分組成の限定理由について説明する。
【0012】
Mg:
Mgの添加は、Mgそれ自体の固溶による強度向上に効果があり、またMgは転位との相互作用が大きいため加工硬化による強度向上も期待でき、したがって要求強度を満たすためには不可欠な元素である。但しMg量が1.50%未満では、要求強度を満たすことが困難となることもある。一方Mg量が3.00%を越えるような多量のMgの添加により得られる高強度は必要としないのが通常である。そこでMg添加量は、1.50〜3.00%の範囲内とした。
【0013】
Cr:
Crの添加は熱間圧延板の再結晶粒径の調整と製品板の強度調整に不可欠である。しかしながらCr添加量が0.03%未満では、熱間圧延板の再結晶粒が粗大となるばかりでなく、製品板の要求強度を満たすことが困難となる。一方Cr量が0.35%を越えれば、熱間圧延−巻取の段階で再結晶が生じにくくなり、熱間圧延板の再結晶率の規定を満たすことが困難となる。そこでCr添加量は、0.03〜0.35%の範囲内とした。
【0014】
Cu:
Cuは固溶強化により強度向上に寄与する元素であり、製品板の強度調整に効果的である。しかしながらCu量が0.30%を越えれば曲げ加工性を低下させてしまう。そこでCu添加量は0.30%以下とした。なおCu量の下限は特に限定しないが、0.01%未満では前述の効果が少ないから、0.01%以上とすることが好ましい。
【0015】
Fe:
Feの添加は熱間圧延板の再結晶粒の調整と製品板の強度調整に不可欠である。しかしながら、Fe量が0.10%未満では熱間圧延板の再結晶粒が粗大になるばかりでなく、製品板の要求強度を満たすことが困難となる。さらにFeを0.10%未満とするためには高純度の地金を使用しなければならないため、生産コストが高くなる。一方Fe量が0.50%を越えれば、熱間圧延〜巻取の段階で再結晶が生じにくくなり、熱間圧延板の再結晶率の規定を満たすことが困難となる。そこでFe量は0.10〜0.50%の範囲内とした。
【0016】
Si:
Siの添加も熱間圧延板の再結晶粒径の調整と製品板の強度調整に不可欠である。しかしながらSi量が0.05%未満では、熱間圧延板の再結晶粒が粗大になるばかりでなく、製品板の要求強度を満たすことが困難となる。さらにSi量を0.05%未満とするためには高純度の地金を使用しなければならないため、生産コストが高くなる。一方Si量が0.40%を越えれば、熱間圧延〜巻取の段階で再結晶が生じにくくなり、熱間圧延板についての再結晶率の規定を満たすことが困難となる。そこでSi量は0.05〜0.40%の範囲内とした。
【0017】
以上の各元素のほかは、基本的にはAlおよび不可避的不純物とすればよいが、一般にAl合金においては結晶粒微細化のために微量のTiを単独であるいは微量のBと複合して添加することがある。この発明の場合もTi、もしくはTiおよびBを添加することが許容される。但し、Ti量が0.10%を越えれば粗大金属間化合物を生成してしまい、曲げ加工性を低下させてしまうおそれがある。したがってTi量は0.10%以下とすることが望ましい。またTiとBとを添加する場合、B量は100ppm以下にすることが望ましい。
【0018】
なお不純物の代表的なものとしては、Mn、Znがあるが、不純物元素としてのMnは、熱間圧延板の再結晶と製品板の強度に大きく影響するため、0.10%以下に規制することが望ましい。この発明の調質材の場合、強度に関しては前述の必須元素の成分範囲内で充分に達成でき、また熱間圧延板についての再結晶率の規制に関しても、前述の必須元素の成分範囲内で充分に達成できるが、Mn量が0.10%を越えれば熱延コイル全域にわたっての再結晶率の規定を満たすことが困難となる。また不純物元素としてのZnも熱間圧延板の再結晶と製品板の強度に大きく影響するため、0.1%以下に規制することが望ましい。強度に関しては、上記の必須成分範囲で充分であり、また再結晶の規制に関しても上記の必須成分範囲で充分であるが、Zn量が0.1%を越えれば熱延コイル全域にわたっての再結晶率の規定を満たすことが困難となる。
【0019】
次にこの発明の圧延板調質材の製品板においては、板表面における旧再結晶粒の圧延方向に対し直角な方向の平均の幅を200μm以下に規制する必要がある。ここで、旧再結晶粒とは、冷間圧延前の熱間圧延〜巻取の段階で再結晶した結晶粒(再結晶粒)が冷間圧延で圧延方向に引伸ばされたものを指称する。そして製品板の板表面における旧再結晶粒の圧延方向に対し直角な方向の幅が200μmを越える場合、曲げ加工性が低くなり、曲げ加工で割れが発生するおそれがあるから、圧延方向と直角な方向の平均再結晶粒幅を200μm以下と規定した。なお再結晶後の冷間圧延においては、板は圧延方向に対し直角な方向にはほとんど伸張しないから、ここで定義している平均旧再結晶粒幅は、熱間圧延板の平均再結晶粒径にほぼ相当する。なおまた、製品板における旧再結晶粒の圧延方向と平行な方向の長さは測定が困難なことが多く、そこでこの発明では圧延方向と直角な方向の幅で規定した。
【0020】
さらにこの発明のAl−Mg系合金圧延板調質材の製造プロセスについて説明する。
【0021】
先ず前述のような成分組成の合金をDC鋳造法などにより常法に従って鋳造し、得られた鋳塊に均質化処理を施してから、あるいは均質化処理を兼ねて熱間圧延前加熱を行ない、熱間圧延に供する。熱間圧延前の加熱温度は、後述するような熱間圧延終了温度が満たされれば、特に限定されるものではないが、通常は440〜530℃とする。
【0022】
熱間圧延条件については、その熱間圧延中、さらには巻取りの段階において適切に再結晶を生起させるため、厳しく規制する必要がある。すなわち、最終パスの圧延率を35〜63%の範囲内とするとともに、最終パスの圧延速度を200m/分以上とし、さらに熱間圧延終了温度を280〜350℃の範囲内として、熱間圧延板(熱延コイル)における最終的に製品板となるべき領域内の任意の個所での直径1mmの円形視野内における再結晶率が85%以上となるように、熱間圧延を規制する。
【0023】
これらの条件の規制理由は次のとおりである。
【0024】
▲1▼ 最終パスの圧延率:35〜63%
熱間圧延における最終パスの圧延率が35%未満では、熱間圧延時の加工発熱量が小さいため、熱間圧延終了温度が280℃を下回る場合があり、熱間圧延板の再結晶率が規定値を下回ってしまうおそれがある。一方最終パスの圧延率が63%を越える場合、再結晶率を上げるためには有効であるが、板切れが生じたりコーティングが発生したりして、製品としての価値を失ってしまうおそれがおそれがある。そこで最終パスの圧延率を35〜63%の範囲内に規定することとした。
【0025】
▲2▼ 最終パスの圧延速度:200m/分以上
熱間圧延における最終パスの圧延速度が200m/分未満であれば、熱間圧延時の加工発熱量が小さいため、熱間圧延の終了温度が280℃を下回る場合があり、前記と同様に熱間圧延板の再結晶率が規定値を下回ってしまうおそれがある。そこで最終パスの圧延速度を200m/分以上と規定した。
【0026】
▲3▼ 熱間圧延の終了温度:280〜350℃
熱間圧延の終了温度が280℃未満では、再結晶が充分に行なわれないため、熱間圧延板の板内において再結晶率の規定を満たす領域と満たさない領域とが混在してしまう。この影響は製品板にした場合でも残存してしまい、採取位置によって製品板の強度が著しく異なってしまう。このように採取位置によって強度が著しく異なれば、製品としての価値は全く損なわれてしまう。一方熱間圧延の終了温度が350℃を越えれば、再結晶粒が粗大になり過ぎて、製品板表面において圧延方向に対し直角な方向の平均旧再結晶粒の幅が200μmを越えてしまうことがあり、曲げ加工性の低下は避けられない。そこで熱間圧延の終了温度を280〜350℃の範囲に規制することとした。
【0027】
▲4▼ 熱間圧延板コイルにおける製品板となるべき領域の任意の箇所での直径1mmの円形視野内の再結晶率:85%以上
熱間圧延〜巻取では、板中央部よりも板端部のほうが温度低下が大きく、そのため板端部では再結晶が生じにくくなって、再結晶率85%以上の条件を満たさない部分が生じることがある。そして製品板となるべき領域において再結晶率85%以上の条件を満たさない箇所があれば、組織の不均一性が著しくなり、冷間圧延してもその影響が製品板まで残存してしまい、採取位置によって強度が大きく異なってしまう。そこで、製品板となるべき領域の全域にわたって、再結晶率が85%以上となっている必要がある。またここで、製品板となるべき領域内の任意の箇所において直径1mmの円形視野内の再結晶率が85%以上であれば、製品板となるべき領域の全域にわたって再結晶率85%以上とみなすことができ、そこで上述のように再結晶率を定義した。また実際の製造工程では、熱間圧延コイルの両端縁部等は不良部分として切捨てることが多く、このような切捨て部分は特に考慮する必要がないから、製品板となるべき領域についてのみ規定した。
【0028】
以上のようにして熱間圧延〜巻取を経て再結晶した熱間圧延板コイルに対しては、次いで冷間圧延を施して、板厚0.8mm以上の製品板とする。この冷間圧延は、目標とする製品強度を得るために重要な工程であり、圧延率を10〜65%の範囲内とする必要がある。ここで、冷間圧延率が10%未満では、目標とする製品板強度を得ることができない。一方、65%を越える圧延率では、この発明で目標とするH32〜H36材の材質から外れてしまうおそれがある。そこで冷間圧延率を10〜65%の範囲に限定した。
【0029】
冷間圧延後には、最終的に安定化処理を目的として調質焼鈍を行ない、H32〜H36の調質度の材料とする。この調質焼鈍は、箱型タイプの焼鈍炉を用いたバッチ式の焼鈍によって行なっても、あるいは連続焼鈍炉を用いた連続焼鈍によって行なっても良い。
【0030】
箱型タイプの焼鈍炉を用いたバッチ式によって調質焼鈍を行なう場合、その条件は、100〜260℃の範囲内の温度で0.5〜10時間保持とする必要がある。ここで、焼鈍温度が100℃未満では、冷間圧延によって導入された転位の消滅が不充分で、製品にした場合に経時軟化が生じてしまうおそれがある。一方焼鈍温度が260℃を越えれば、H3n材ではなく、完全に再結晶したO材になってしまい、要求強度を満たすことができなくなる。また保持時間が0.5時間未満では、コイル全体にわたり均一な熱処理ができず、コイル内で強度の変動が生じてしまう。一方保持時間が10時間を越えれば、焼鈍温度によっては完全に再結晶してしまい、要求強度を満たすことができなくなり、また生産性も低下させてしまう。そこで箱型タイプの焼鈍炉でバッチ式により調質焼鈍を行なう場合は、100〜260℃の温度範囲内で、0.5〜10時間の保持と規定した。
【0031】
一方連続焼鈍炉を用いた連続式の調質焼鈍の場合は、150〜340℃の範囲内の温度に加熱して保持なしもしくは1分以内の保持の条件とする必要がある。ここで、焼鈍温度が150℃未満では、冷間圧延によって導入された転位の消滅が不充分で、製品にした場合に経時軟化が生じてしまい、製品としての価値を損なう。一方焼鈍温度が340℃を越えれば、H3n材ではなく、完全に再結晶したO材になってしまうことがあり、要求強度を満たすことができなくなる。また保持時間が1分を越えれば、完全に再結晶してしまうこともあり、要求強度を満たすことができず、また生産性も低下してしまう。そこで連続焼鈍炉で調質焼鈍を行なう場合は、150〜340℃の温度範囲で、保持なしもしくは1分以内の保持と規定した。
【0032】
【実施例】
表1の合金No.▲1▼〜No.▲5▼に示す種々の成分組成のAl合金を常法に従ってDC鋳造し、得られた鋳塊に均質化処理を兼ねた加熱処理を行なって、熱間圧延−コイル巻取を行ない、さらに冷間圧延、調質焼鈍を施してH32〜H36材とした。各プロセスの詳細な条件を表2の製造No.1〜No.9に示す。また熱間圧延〜巻取後の熱間圧延コイルについて、製品板となるべき領域の端部および中央部で直径1mmの多数の円形視野内で再結晶率を調べたので、その平均値を表2中に併せて示す。
【0033】
得られた各製品板の端部と中央部から試験片を取出して、圧延方向に対し直角な方向の平均再結晶粒幅を調べるとともに、機械的性質(YS)と曲げ加工性を評価したので、その結果を表3に示す。なお機械的性質の評価規準は、JIS5052合金のH32、H34、H36材のYS規準(H32材:155MPa以上、H34材:175MPa以上、H36材:205MPa以上)に従い、それぞれの材質で、これらの規定を満たさない場合を不合格と評価した。さらに、端部と中央部でのYS差が30MPa以上ある場合には、製品としての価値がないため不合格と評価した。一方曲げ加工性については、製品板の端部と中央部とのそれぞれにおいて圧延方向に対し直角な方向に沿って試験片を各20片切り出し、それぞれ90°曲げ試験を行なった。なおこの90°曲げ試験では、曲げダイス先端のRを0.2mmに統一して実施した。そして目視にて1個でも曲げR部に割れが認められたものを不合格と評価した。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
表3から明らかなように、この発明で規定する成分組成範囲内の合金No.▲1▼、No.▲2▼を用いかつ製造プロセスもこの発明で規定する条件を満たした製造No.1、No.4の場合は、機械的性質(YS)が目標とする調質度の規準をクリヤするとともに端部と中央部とのYS差も小さく、さらに曲げ加工性も優れていて、総合的に優れた性能の材料を得ることができた。
【0038】
一方、成分組成はこの発明で規定する範囲を満たしていても製造プロセス条件が外れた場合(製造No.2、No.3,No.5、No.6)や、逆に製造プロセス条件は満たしていても成分組成がこの発明で規定する範囲を外れた場合(製造No.7〜No.9)には、機械的性質(YS)が目標材質から外れたり、端部と中央部とのYS差が著しく大きかったり、さらには曲げ加工性が劣ったりして、総合的に不合格となることが判明した。
【0039】
【発明の効果】
この発明によれば、Al−Mg系合金からなる調質度H32〜H36の圧延板調質材、特に板厚0.8mm以上の比較的厚い圧延板調質材として、冷間圧延中途の中間焼鈍を省略したプロセスを適用しても、曲げ加工性が安定して優れていてかつ機械的性質も目標材質に適合しかつコイル内における機械的性質のばらつきの少ない材料を得ることができる。
Claims (2)
- Mg1.50〜3.00%(mass%、以下同じ)、Cr0.03〜0.35%、Cu0.30%以下、Fe0.10〜0.50%、Si0.05〜0.40%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金鋳塊に対して、最終パスの圧延率が35〜63%の範囲内、最終パスの圧延速度が200m/分以上、熱間圧延終了温度が280〜350℃の範囲内となるように熱間圧延を行って、熱延コイルにおける製品板となる領域の任意の箇所での直径1mmの円形視野内における再結晶率が85%以上となっている熱延コイルを得、引続き圧延率10〜65%の範囲内で冷間圧延を施し、さらにバッチ式焼鈍炉により100〜260℃の範囲内の温度で0.5〜10時間保持する調質焼鈍を行なうことを特徴とする、板厚0.8mm以上の曲げ加工性に優れた厚肉Al−Mg系合金圧延板調質材の製造方法。
- Mg1.50〜3.00%、Cr0.03〜0.35%、Cu0.30%以下、Fe0.10〜0.50%、Si0.05〜0.40%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金鋳塊に対して、最終パスの圧延率が35〜63%の範囲内、最終パスの圧延速度が200m/分以上、熱間圧延終了温度が280〜350℃の範囲内となるように熱間圧延を行って、熱延コイルにおける製品板となる領域の任意の箇所での直径1mmの円形視野内における再結晶率が85%以上となっている熱延コイルを得、引続き圧延率10〜65%の範囲内で冷間圧延を施し、さらに連続焼鈍炉により150〜340℃の範囲内の温度で保持なしもしくは1分以内保持する調質焼鈍を行なうことを特徴とする、板厚0.8mm以上の曲げ加工性に優れた厚肉Al−Mg系合金圧延板調質材の製造方法。
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