JP2011208232A - Cu−Co−Si合金材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】1.5〜2.5wt%のCo、0.3〜0.7wt%のSiを含有し、Co/Siの元素比は3.5〜5.0であり、第2相粒子で直径0.20μm以上1.00μm未満を3,000〜150,000個/mm2含有し、結晶粒径10μm以下、導電率60%IACS以上で良好な曲げ加工性を有するCu−Co−Si合金材。上記合金材は、直径1.00〜5.00μmの第2相粒子を10〜1,000個/mm2含有し、0.2%耐力が600MPa以上であってもよく、鋳造後、溶体化処理前に行われる熱間加熱の温度が、下記溶体化処理温度から45℃以上高い温度であり、熱間圧延開始時温度から600℃までの冷却速度が100℃/分以下であり、溶体化処理温度は、(50×Cowt%+775)℃以上(50×Cowt%+825)℃以下で選択され、溶体化処理後の時効処理は好ましくは450〜650℃で1〜20時間で製造できる。
【選択図】なし
Description
従来、導電性を劣化させずに高い強度が達成できる特性を有する析出強化型銅合金として、Cu−Ni−Si系銅合金、Cu−Co−Si系やCu−Ni−Co−Si系銅合金が知られている。これら銅合金を製造するには、溶体化処理で添加元素を固溶させた後、冷間圧延、時効熱処理によりマトリックス中に第2相粒子としてNi2SiやCo2Si等を析出又は晶析させている。しかし、Ni2Siの固溶量は比較的大きいため、60%IACS以上の導電率はCu−Ni−Si系銅合金では達成することが難しい。そのため、固溶量が低いCo2Siを主要析出物として有し、高い導電性を示すCu−Co−Si系やCu−Ni−Co−Si系合金が研究されている。これら銅合金は、充分に固溶させてから微細析出物を析出させないと、目標とする強度を達成できない。しかし、高温で溶体化すると結晶が粗大化し、曲げ加工性が悪くなる等の問題が生じるため、種々の対策が検討されてきた。
特許文献3では、溶体化温度、溶体化処理後の冷却速度、時効熱処理温度によって結晶粒径を10μm以下に制御しているが、この手法では1.5質量%以上にCoを固溶させることが出来ず目的とする強度が得られない。
このように、従来の析出強化型銅合金はリードフレーム等の電子部品への薄板利用を目的としてきたため、0.3mm程度の厚板における優れた曲げ加工性は検討されていなかった。
(1)1.5〜2.5wt%のCo、0.3〜0.7wt%のSiを含有し、Co/Siの元素比は3.5〜5.0であるCu−Co−Si合金材であり、直径0.20μm以上1.00μm未満の第2相粒子を3,000〜150,000個/mm2含有し、導電率ECが60%IACS以上であり、結晶粒径が10μm以下である、良好な曲げ加工性を有する銅合金材。
(2)直径1.00μm以上5.00μm以下の第2相粒子を10〜1,000個/mm2含有する(1)の銅合金材。
(3)0.2%耐力YSが600MPa以上である(1)又は(2)の銅合金材。
(4)鋳造後、溶体化処理前に行われる熱間加熱の温度が、下記で選択された溶体化処理温度から45℃以上高い温度であり、熱間圧延開始時温度から600℃までの冷却速度が100℃/分以下であり、溶体化処理温度は、(50×Cowt%+775)℃以上(50×Cowt%+825)℃以下の範囲で選択される、(1)〜(3)いずれか記載の銅合金材の製造方法。
(5)溶体化処理後の時効処理は、450〜650℃で1〜20時間である(4)記載の銅合金材の製造方法。
本発明の合金材は、1.5〜2.5wt%(以下特記しない限り%で示す)、好ましくは1.7〜2.2%のCoを含有し、0.3〜0.7%、好ましくは0.4〜0.55%のSiを含有する。好ましくは残部はCu及び不可避的不純物よりなるが、本発明の構成が目的とする効果を達成できる範囲内において、当業者が通常銅合金へ添加する成分として採用する種々の元素、例えばCr、Mg、Mn、Ni、Sn、Zn、P、Agなどを更に含んでも良い。
含有されるCo/Siの化学量論比は、理論的には4.2であるが、実際には3.5〜5.0、好ましくは3.8〜4.6であり、その範囲内であると析出強化及び結晶粒径調整に適した第2相粒子Co2Siが形成される。Co及び/又はSiが少なすぎると析出強化効果が少なく、多すぎると固溶されず導電性にも劣る。第2相粒子Co2Siが析出すると、析出強化効果が表れ、析出後はマトリックス純度が高くなるため導電性が向上する。更に、特定サイズの第2相粒子が特定量存在すると、結晶粒子の成長が阻まれ結晶粒径を10μm以下にすることができる。
本発明の合金材の結晶粒径は10μm以下である。10μm以下であると良好な曲げ加工性が達成できる。
本発明の銅合金材は、例えば板材、条材、線材、棒材、箔などの種々の形状を有してもよく、可動コネクタ用板材又は条材でもよいが特に限定されるものではない。
本発明の第2相粒子とは、銅に他の元素が含まれる場合に生成し、銅母相(マトリックス)とは異なる相を形成する粒子をいう。直径50nm以上の第2相粒子の数は、機械研磨にて鏡面仕上げした後、電解研磨や酸洗エッチングをした銅板圧延平行断面(圧延面に平行、かつ厚み方向に平行な面)を任意に5箇所選択して得られた1視野の走査電子顕微鏡写真(図1参照)から該当する直径範囲の粒子数を測定して得られる。ここで、直径とは、図2のように粒子の短径(L1)と長径(L2)を測定し、L1とL2の平均値をいう。
本発明の第2相粒子の大部分はCo2Siであるが、Ni2Si等の他の金属間化合物も直径が範囲内であればよい。第2相粒子を構成する元素は、例えば、FE−SEM(日本FEI株式会社型式XL30SFEG)に付属のEDXを使用して確認できる。
又、直径1.00μm以上5.00μm以下の第2相粒子は、好ましくは10〜1,000個/mm2、更に好ましくは20〜500個/mm2、最も好ましくは30〜400個/mm2含有され、熱間加熱した後の冷却速度を遅くして析出し、必要であれば第1時効処理することで粒径が調整できる。上記好ましい範囲は0.20μm以上1.00μm未満の第2相粒子の数にも連動する。この範囲であると高温溶体化が可能であり、溶体化処理での結晶粒径の成長が抑制される一方、充分に固溶されたCo及びSiが後段の(第2)時効処理により微細析出されて、高強度、高導電性、良好な曲げ加工性を達成することができる。しかし、1,000個/mm2を超えると曲げ性が低下するため好ましくない。
上記直径0.20μm以上1.00μm未満及び1.00μm以上5.00μm以下の第2相粒子の数は、溶体化処理前後及び第2時効処理後も余り変動しないので最終圧延前の試験片で評価できる。
0.05μm以上0.20μm未満の第2相粒子は、熱間圧延、その後の冷却、第1時効処理中に析出するが、溶体化処理でほとんど固溶してしまい、その後の冷却及び(第2)時効処理により析出する。0.05μm未満の第2相粒子は、溶体化処理で固溶し、(第2)時効処理により大量に析出する。従って、これらの第2相粒子は、結晶粒径の調整効果は無いが強度向上に寄与する。
本発明の合金材の導電率ECは、60%IACS以上、好ましくは65%IACS以上である。この範囲であると高電流化可能な部品が製造できる。
本発明で良好な曲げ加工性とは、0.3mm厚板で最小曲げ半径MBR/tが0.5以下(Bad Way)をいう。0.3mm厚板でMBR/tが0.5以下であると、電子部品、特に可動コネクタの製造、使用時に求められる特性を満たす。なお、本発明の合金材を0.3mm厚よりも薄くした場合にはさらに良好な曲げ加工性が得られる。
本発明の合金材の0.2%耐力YSは、好ましくは600MPa以上であり、更に好ましくは650MPa以上であり、引張り強さTSは好ましくは630MPa以上、更に好ましくは660MPa以上である。上記範囲内であると、特に可動コネクタ用板材等の電子部品用材料として充分である。
本発明の合金材の製造方法工程は、通常の析出強化型銅合金と同様であり、溶解鋳造→(均質化熱処理)→熱間圧延→冷却→(第1時効処理)→面削→冷間圧延→溶体化処理→冷却→(冷間圧延)→第2時効処理→最終冷間圧延→(調質歪取焼鈍)である。なお、括弧内の工程は省略可能であり、最終冷間圧延は時効熱処理前に行っても良い。
本発明では、鋳造後に均質加熱処理及び熱間圧延が行われるが、均質加熱処理は熱間圧延における加熱でもよい(なお、本件明細書では、均質加熱及び熱間圧延の際に行われる加熱を「熱間加熱」と総称する)。
熱間加熱の温度は、添加元素がほぼ固溶する温度であれば良く、具体的には下記で選択された溶体化処理温度から40℃以上、好ましくは45℃以上高温であると良い。熱間加熱の温度上限は、金属組成及び設備により個々に規定されるが通常は1000℃以下である。加熱時間は板厚みにもよるが、好ましくは30〜500分、更に好ましくは60〜240分である。熱間加熱時にはCoやSi等の添加元素はほとんど溶解することが好ましい。
熱間加熱後の冷却速度は、5〜100℃/min、更に好ましくは5〜50℃/minである。この冷却速度であると最終的に直径0.20μm〜5.00μmとなる第2相粒子が目的の範囲で析出する。しかし、従来は第2相粒子の粗大化抑制を目的として水冷シャワー等で急冷されていたため微細な第2相粒子しか析出していなかった。
冷却後、材料は面削されるが、更に任意で第1時効処理を行うと目的の第2相粒子のサイズ、数を調整できるので好ましい。この第1時効処理の条件は、好ましくは600〜800℃で30s〜10hである。
溶体化処理後の好ましい冷却速度は、10℃/s以上である。この冷却速度を下回ると冷却中に第2相粒子が析出し、固溶量が低下する。冷却速度の好ましい上限は特にないが、一般に採用されている設備であると、例えば、100℃/s程度でも可能である。
本発明よりCo及びSi含有量が低かったり、熱間圧延後に徐冷されず、第2時効処理加熱もされない場合、溶体化処理前に析出している第2相粒子は少ない。析出第2相粒子が少ない合金を溶体化処理する場合、900℃を超える高温で1分を超える溶体化処理時間では結晶粒径が粗大化してしまうため、30秒程度の短時間の熱処理しかできず、実際に固溶可能な量が少ないため、充分な析出強化効果を得ることができない。
最終圧延加工度は、好ましくは5〜40%、更に好ましくは10〜20%である。5%未満であると、加工硬化による強度の上昇が不足し、一方、40%を超えると曲げ加工性が低下する。
また、最終冷間圧延を第2時効熱処理前に行う場合には、第2時効熱処理を450℃〜600℃で1〜20時間行えばよい。
歪取焼鈍温度は、好ましくは250〜600℃であり、焼鈍時間は好ましくは10s〜1時間である。この範囲であると第2相粒子のサイズ、数に変化はなく、結晶粒径も変わらない。
電気銅、Si、Coを原料とした溶湯に、添加元素の量、種類を変更して添加し、厚みが30mmのインゴットを鋳造した。このインゴットを表中の温度で3時間(熱間)加熱し、熱間圧延により厚み10mmの板にした。次に、表面の酸化スケールを研削除去し、15時間時効熱処理し、その後、温度、時間を適宜変更した溶体化処理を行い、表中の冷却温度で冷却し、表中の温度で1〜15時間時効熱処理を行い、最終の冷間圧延で最終厚みを0.3mmに仕上げた。歪取焼鈍時間は1分である。
銅合金母地中の添加元素の濃度を、面削工程後のサンプルを使用してICP−質量分析法で分析した。
第2相粒子の直径及び個数は、最終冷間圧延前のサンプル圧延平行断面を機械研磨して鏡面に仕上げた後、電解研磨や酸洗エッチングをし、走査電子顕微鏡を用いて各倍率の顕微鏡写真5枚に対して行った。観察倍率は、(a)0.05μm以上0.20μm未満は5×104倍、(b)0.20μm以上1.00μm未満は1×104倍、(c)1.00μm以上5.00μm未満は1×103倍である。
結晶粒径は、JIS H0501に従い切断法にて平均結晶粒径を測定した。
導電率ECは、20℃(±0.5℃)に保たれた恒温槽中で四端子法により比抵抗を計測した(端子間距離50mm)。
0.2%耐力YS及び引張強さTSは、圧延平行方向に切り出したJIS Z2201−13B号のサンプルをJIS Z 2241に準じて3回測定して平均値を求めた。
実施例1〜6は本発明の要件を満たすため、優れた導電性、強度、厚板での曲げ加工性を備え、高電流化可能な可動コネクタに適する材料であった。参考発明例1は、実施例2と同様の条件であるが、溶体化処理後、表中の冷却温度で冷却し、最終冷間圧延で最終厚みを0.3mmに仕上げ、表中の温度で時効処理を行い、調質歪取焼鈍したものであり、実施例2と比較して若干強度が劣るものの若干曲げ性が向上している。
比較例10は、溶体化温度が高すぎるので直径0.20μm以上1.00μm未満の第2相粒子が溶体化熱処理中に消滅してしまったため、結晶の成長を抑制する効果が発揮できず、曲げ性が悪い。
比較例11はCo/Si比が低く、比較例12はCo/Si比が高く、いずれも微細第2相粒子による析出強化作用を得られず、Co又はSiの固溶濃度が高くなるため導電性も劣る。
比較例13は熱間加工後の冷却速度が遅すぎたため、直径1.00〜5.00μmの第2相粒子が多くなり、曲げ性が悪い。
比較例14は、熱間加工後の冷却速度が速く、0.20μm以上1.00μm未満の第2相粒子個数も直径1.00〜5.00μmの第2相粒子個数も少なく、結晶の成長を抑制する効果が発揮できず、曲げ性が悪い。比較例15でも同様に、熱間加工後の冷却速度を速くしたが、第1時効処理を高温で行い、直径0.20μm以上1.00μm未満の第2相粒子を析出させたが、直径1.00〜5.00μmの第2相粒子個数が少なく、かつ第1時効処理の加熱で結晶粒径が大きくなったため、曲げ性が悪い。
比較例16は実施例4に比べ、熱間加熱温度及び溶体化処理温度が高いため、結晶の成長を抑制する効果が発揮できず、曲げ性が悪く導電性も実施例4に比べ低い。
比較例17は実施例7に比べ、溶体化処理温度が低く、溶体化処理後の冷却温度が早いため、直径0.20μm以上1.00μm未満の第2相粒子及び直径1.00〜5.00μmの第2相粒子個数が多く、曲げ性が悪く強度も実施例7に比べ低い。
比較例18はCo濃度が高く、溶体化処理温度が高く時間も長くする必要があったため直径0.20μm以上1.00μm未満の第2相粒子個数が多く、曲げ性が悪い。
比較例19はCo濃度が高く、溶体化処理温度と熱間加工温度が同じだったため、結晶粒径の成長を抑制する効果が発揮できず、直径0.20μm以上1.00μm未満の第2相粒子個数が少なく直径1.00〜5.00μmの第2相粒子個数が多く、曲げ性が悪い。
表3に、(a)0.05μm以上0.20μm未満、(b)0.20μm以上1.00μm未満、(c)1.00μm以上5.00μm未満の第2相粒子が製造工程においてどのように変化するか測定した結果を示す。表3より(a)〜(c)について下記が認められる。
(a)は本発明の溶体化処理条件であると固溶して5分の1から10分の1程度の数になり、第2時効処理後では数にあまり変動はない。(b)は本発明の溶体化処理条件及び第2時効処理条件であると数がほとんど増減しない。(c)は本発明の熱間加熱、冷却条件であると、溶体化処理前も最終冷間圧延前も数が全く変化しない。
Claims (5)
- 1.5〜2.5wt%のCo、0.3〜0.7wt%のSiを含有し、Co/Siの元素比は3.5〜5.0であるCu−Co−Si合金材であり、直径0.20μm以上1.00μm未満の第2相粒子を3,000〜150,000個/mm2含有し、導電率ECが60%IACS以上であり、結晶粒径が10μm以下である、良好な曲げ加工性を有する銅合金材。
- 直径1.00μm以上5.00μm以下の第2相粒子を10〜1,000個/mm2含有する請求項1の銅合金材。
- 0.2%耐力YSが600MPa以上である請求項1又は2記載の銅合金材。
- 鋳造後、溶体化処理前に行われる熱間加熱の温度が、下記で選択された溶体化処理温度から45℃以上高い温度であり、熱間圧延開始時温度から600℃までの冷却速度が100℃/分以下であり、溶体化処理温度は、(50×Cowt%+775)℃以上(50×Cowt%+825)℃以下の範囲で選択される、請求項1〜3いずれか1項記載の銅合金材の製造方法。
- 溶体化処理後の時効処理は、450〜650℃で1〜20時間である請求項4記載の銅合金材の製造方法。
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