JP7311651B1 - 電子材料用銅合金及び電子部品 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]
Niの量が1.0質量%以下であり、0.5~2.5質量%のCoを含有し、Siを質量割合で(Ni+Co)/Siが3~5となるように含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなり、圧延直角方向に伸長し板厚が減少する平面ひずみ下での平均Taylor因子が3.5以下であり、結晶粒径が10μm以下であり、圧延方向の0.2%耐力が700MPa以上であり、圧延方向の導電率が50%IACS以上である、電子材料用銅合金。
[2]
さらにAg、Cr、Mn、Sn、P、B、Zr、Ti、Mg、Al、Fe及びZnから選択される少なくとも1種類以上を総計で1.0質量%以下含有する[1]に記載の電子材料用銅合金。
[3]
[1]又は[2]に記載の電子材料用銅合金を備えた電子部品。
Co、Ni及びSiは、適当な熱処理を施すことによりCo2SiやNi2Siとして母相中に析出し、導電率を低下させずに高強度化を図ることができる。ただし、Co濃度が0.5質量%未満の場合、析出硬化が不十分となり、他方の成分を添加しても所望とする強度が得られない。また、Co濃度が2.5質量%を超える場合、又はNi濃度が1.0質量%を超える場合は十分な強度が得られるものの、導電性や曲げ加工性、熱間加工性が低下する。Ni及びCoの濃度としては、好ましくは、Coが0.7~2.3質量%、Niが0.2~0.8質量%である。Coの上限は2.2質量%以下でもよく、2.1質量%以下でもよく、2.0質量%以下でもよく、1.9質量%以下でもよく、1.8質量%以下でもよく、1.7質量%以下でもよい。なお、Niの量は0質量%であってもよい。
Siは質量割合で(Ni+Co)/Siが3~5となるように調整する。上記割合とすれば、析出硬化後の強度と導電率を共に向上させることができる。上記割合が5を超えると、時効処理でのCo2SiやNi2Siの析出が不十分になり、強度が低下する。上記割合が3未満であると、Co2SiやNi2Siとして析出しないSiが母相中に固溶し、導電率が低下する。
Ag、Cr、Mn、Sn、Zr、Ti、Mg、Al、Fe及びZnは、微量の添加で、導電率を損なわずに強度、応力緩和特性等の製品特性を改善することができる。Pは脱酸効果を有し、Bは鋳造組織の微細化効果を有し、Mnは熱間加工性を向上させる効果を有する。添加の効果は主に母相への固溶により発揮されるが、第二相粒子に含有されることで一層の効果を発揮させることもできる。
Taylor因子は多結晶体の複数のすべり系を考慮した塑性変形のしやすさを表す指標であり、応力方向と結晶方位分布によって決まる値である。多結晶体の降伏応力をσy、結晶の臨界分解せん断応力をτCRSSとすると、Taylor因子Mはσy=M・τCRSSと表される。このTaylor因子が小さいほど、すべり変形を生じさせるために必要な降伏応力が小さく、容易に塑性変形させることができる。本発明者は、Badway方向(圧延平行方向に曲げの中心軸を有する曲げ方向)の曲げ加工を、圧延直角方向を主ひずみ方向とする平面ひずみ変形であるとみなし、算出されるTaylor因子の値を所定の範囲に制御することで、好適な曲げ加工性を備えた材料を得ることができることを見出した。本発明において、平均Taylor因子の測定方法を以下に示す。
結晶粒径を小さくすることにより、好適な曲げ加工性を備えた材料を得ることができる。本発明において、好適な曲げ加工性を得るためには、結晶粒径を10μm以下に制御する必要がある。曲げ加工性をさらに高める観点から、結晶粒径は、9.5μm以下であることが好ましく、9.0μm以下であることがより好ましく、8.5μm以下であることがさらにより好ましく、8.0μm以下であることがさらにより好ましく、7.5μm以下であることがさらにより好ましい。
コネクタ等の所定の電子材料で要求される特性を満たすため、圧延平行方向の0.2%耐力は700MPa以上、より好ましくは710MPa以上、さらにより好ましくは720MPa以上、さらにより好ましくは730MPa以上、さらにより好ましくは740MPa以上、さらにより好ましくは750MPa以上とする。0.2%耐力の上限値は、特に規制されないが、50%IACS以上の導電率となるには、典型的には850MPa以下である。
圧延方向の導電率は50%IACS(International Annealed Copper Standard)以上とする。これにより、電子材料として有効に用いることができる。導電率は、試験片の長手方向が圧延方向と平行になるように試験片を採取し、JIS H 0505(1975)に準拠して、4端子法で測定することができる。圧延方向の導電率は、51%IACS以上であることが好ましく、52%IACS以上であることがより好ましく、53%IACS以上であることがさらにより好ましく、54%IACS以上であることがさらにより好ましく、55%IACS以上であることがさらにより好ましい。
本発明に係るCu-Co-Ni-Si系合金の好適な製造方法の例を工程毎に説明する。
溶解鋳造は一般的には大気溶解炉で行うが、真空中又は不活性ガス雰囲気中で行うことも可能である。電気銅を溶解した後に、Co、Ni、Si等各試料の組成に応じて原料を添加し、撹拌後一定時間保持して、所望の組成の溶湯を得る。そして、この溶湯を1250℃以上に調整した後、インゴットに鋳造する。Co、Ni、Si以外、Ag、Cr、Mn、Sn、P、B、Zr、Ti、Mg、Al、Fe及びZnから選択される少なくとも1種類以上を総計で1.0質量%以下になるように添加することもできる。
鋳造時の凝固過程では粗大な晶出物が、その冷却過程では粗大な析出物が生成し得る。均質化焼鈍を適切な温度・時間で行った後に熱間圧延を行うことで、これらの第二相粒子を母相に再固溶させる。均質化焼鈍温度が高すぎる場合は材料が溶解する可能性があるため好ましくない。具体的には均質化焼鈍温度は950~1025℃、均質化焼鈍時間は1~24時間が好ましい。熱間圧延終了後の冷却過程では冷却速度をできるだけ速くし、第二相粒子の析出を抑制するのがよい。
熱間圧延工程後の銅合金材料に対して第1中間冷間圧延を行う。ここで、第1中間冷間圧延の加工度は30~98%とすることができる。加工度とは、圧延前後の材料の板厚をそれぞれh1、h2とするとき、(h1-h2)/h1×100%で算出される量である。
中間焼鈍により合金中の第二相粒子が一定量析出し、第2中間冷間圧延により、その後の再結晶の駆動力となるひずみが付与される。第二相粒子の析出状態やひずみ量を変化させることで、その後の溶体化処理で形成される再結晶集合組織が変化する。中間焼鈍温度を500~1000℃の範囲で、第2中間冷間圧延を50~99%の範囲で適宜調整することで、平均Taylor因子ならびに結晶粒径を制御することができ、曲げ加工に有利な再結晶集合組織を形成させることができる。
続いて、溶体化処理を行う。溶体化処理の目的は、再結晶集合組織の形成および添加元素の固溶である。溶体化処理温度が低すぎると、所望の再結晶集合組織が得られなくなり、また添加元素の固溶量が少なくなるため十分な時効硬化量が得られなくなり製品強度が低下する。また、溶体化処理温度が高すぎると結晶粒が粗大化し製品の強度が低下する。そのため、溶体化処理温度は850~1000℃とし、保持時間は5~300秒とすることが好ましい。
続いて、時効処理を行う。時効処理を行うことで、適切な大きさの析出物が均一に分布し、所望の強度および導電率が得られる。時効処理温度は、最高到達温度が400℃より低いと導電率が低くなり、最高到達温度が550℃より高いと強度が低下するので、最高到達温度は400~550℃とすることが好ましい。また、時効処理の合計時間は1~24時間が好ましい。時効処理は、酸化被膜の発生を抑制するために、Ar、N2、H2等の不活性雰囲気で行うことが好ましい。
時効処理後に引き続いて最終冷間圧延を行うことで、合金中に転位を導入し強度上昇をはかることができる。圧延加工度が高いほど高強度の材料が得られるが、圧延加工度が高すぎる場合には曲げ加工性が損なわれる傾向がある。したがって、強度と曲げ加工性の良好なバランスを得るために、圧延加工度を10~50%とすることができ、好ましくは20~40%とする。
中間焼鈍温度が高い場合は合金中の第二相粒子の数密度が大きくなるため、第二相粒子の結晶粒界に対するピン止め効果が有効に働き結晶粒径は小さくなる。一方で、BW方向(Bad Way、圧延方向に対して曲げ軸が平行する方向)の曲げ加工に有利な再結晶集合組織(例えば、Cube方位{100}<001>やBR方位{236}<385>)の成長が阻害されるため、平均Taylor因子は高くなる。中間焼鈍温度が低い場合は、合金中の第二相粒子の数密度が小さくなるため、第二相粒子の結晶粒界に対するピン止め効果が不十分となり結晶粒径は大きくなる。一方でBW方向の曲げ加工に有利な再結晶集合組織が発達するため、平均Taylor因子は低くなる。
第2中間冷間圧延加工度が低い場合は、加工ひずみが十分に付与されないため、再結晶核の生成頻度が少なくなり、結晶粒径は大きくなる。第2中間冷間圧延加工度が高い場合は、BW方向の曲げ加工に有利な再結晶集合組織の成長が阻害されるため、平均Taylor因子は高くなる。
各発明例及び比較例の銅合金試料について、圧延面表面をリン酸67%+硫酸10%の溶液中において、10μm電解研磨した後、EBSD(Electron Back Scatter Diffraction:電子後方散乱回折)測定を行った。試料の圧延面法線方向(ND方向)を入射電子線に対して70°傾け、加速電圧:15.0kV、照射電流量:1.5×10-8A、ワーキングディスタンス:15mmとして、500μm×500μmの領域を1μmステップで測定を行った。測定装置として、日本電子株式会社製のJSM-IT500HRを用いた。解析プログラムとして、TSLソリューションズ社製のOIM Analysis 8を用い、圧延直角方向に伸長し板厚が減少するような変形状態を表すひずみテンソルを設定し、測定視野内のTaylor因子の平均値を算出した。
前述の圧延面のEBSD測定により得られたデータを用いて、解析プログラムのIntercept Lengths(切片長さ)モードにて平均結晶粒径を算出した。具体的には、圧延平行方向と圧延垂直方向それぞれの平均切片長さを算出し、両者の平均値を平均結晶粒径とした。なお、このとき方位差15°以上の粒界を結晶粒界とみなし、Σ3対応粒界は結晶粒界から除いた。
0.2%耐力は、引張方向が圧延方向と平行になるようにJIS13B号試験片を作製し、各試験片に対し、JIS Z 2241(2011)に基づいて圧延平行方向の引張り試験を行って、0.2%耐力(YS:MPa)を測定した。
導電率(EC:%IACS)については、試験片の長手方向が圧延方向と平行になるように試験片を採取し、JIS H 0505(1975)に準拠して、4端子法で測定した。
JIS H 3130(2018)に従いW曲げ試験をBW方向(Bad Way、圧延方向に対して曲げ軸が平行する方向)について行い、割れの生じない最小曲げ半径(MBR、単位:mm)を求め、板厚(t、単位:mm)との比(MBR/t)を測定した。MBR/tの数値が小さければ、より小さい曲げ半径に耐えられるので好ましい。MBR/tが0とは、曲げ半径が0mmでも割れが生じないことを示す。
Claims (3)
- Niの量が1.0質量%以下であり、0.5~2.5質量%のCoを含有し、Siを質量割合で(Ni+Co)/Siが3~5となるように含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなり、圧延直角方向に伸長し板厚が減少する平面ひずみ下での平均Taylor因子が3.5以下であり、結晶粒径が10μm以下であり、圧延方向の0.2%耐力が700MPa以上であり、圧延方向の導電率が50%IACS以上である、電子材料用銅合金。
- さらにAg、Cr、Mn、Sn、P、B、Zr、Ti、Mg、Al、Fe及びZnから選択される少なくとも1種類以上を総計で1.0質量%以下含有する、請求項1に記載の電子材料用銅合金。
- 請求項1又は2に記載の電子材料用銅合金を備えた電子部品。
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