JP4094292B2 - 微細かつ均一な金属組織を有する銅箔製造ドラム用チタンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マクロ的不均一模様が無く、微細かつ均一な金属組織を有する銅箔製造ドラム用チタンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリント配線基板で用いられる厚さ数十μm以下の銅箔は、銅原料が溶解した硫酸溶液中で、鉛などの不溶性金属陽極に対峙させた回転金属製ドラム陰極に、電気化学的に電着した箔帯を連続的に剥離し巻き取ることによって製造される。ドラム素材としては、耐食性と電着銅箔の剥離性の観点から、近年、チタンが使用されるようになっている。
【0003】
プリント配線基板に使用される銅箔の表面性状すなわち表面粗さは、配線パターンの精度を決定する重要な因子である。この表面粗さは、銅箔が電着していたチタン製ドラムの表面粗さがそのまま転写される。ドラムは硫酸溶液中で徐々に腐食され、あたかも金属組織観察用のエッチングを施されたかのような状態となり、これが銅箔に転写されることになる。このときドラム表面の金属組織が不均一な模様を有していると、不均一な模様が銅箔に転写されてプリント配線のエッチングに悪影響を及ぼすという問題が生じる。
【0004】
また、近年では厚さ十μm以下の非常に薄い銅箔が製造されるようになってきているが、このような極薄の銅箔においては、結晶粒径が粗いと銅箔に転写された粒界の模様が、より目立つようになるという問題が生じる。
この金属組織のマクロ的不均一模様の発生原因は、ドラム用チタン材の金属組織の不均一性によることが経験的に知られている。酸液の腐食作用を受けて、コロニーと呼ばれる結晶方位がほぼそろった領域とランダムな結晶方位を持つ領域の境界が優先的に侵食されて模様として肉眼で観察される。したがって、コロニーが点在していると金属組織の不均一模様が発生する。
【0005】
これらの金属組織のマクロ的不均一模様発生を防ぐ対策として、これまで様々な方法が提案されてきた。特開昭60−9866号公報においては、分塊鍛造および粗熱延における加熱温度を950℃以上にするとともに、仕上げ熱延において、圧延板を再度700℃以下に加熱し、その後、粗熱延時の圧延方向と仕上げ熱延時の圧延方向を直交させるクロス圧延を実施する、いわゆるβ−α域2段加熱クロス圧延法によって、均一微細組織を有するチタンおよびチタン合金板を製造する方法が開示されている。
【0006】
同公報によれば、不均一なマクロ模様の原因は、
(a)鋳造組織残留によるもの
(b)変態組織残留によるもの
(c)粗大結晶粒残留によるもの
(d)圧延によって生じるもの
の4タイプに分類され、上記のβ−α域2段加熱クロス圧延法は、(a)、(b)、(c)、(d)のすべてを解消するために有効な方法であるとしている。しかしながら、同法は粗圧延後の圧延途中に圧延板を再度、仕上熱延用の加熱炉に投入する必要が有り、これは、加熱温度の異なる二基以上の加熱炉を設置することを前提とするので、生産設備ミル構成上の大きな制約を与える。加えて、同法は仕上熱延を700℃以下の低温度域で行うために圧延変形抵抗が高くなることから板形状制御が難しいこと、また、低温度域の圧延の際、再結晶温度以下となることが考えられ、前述(d)の不均一模様が発生する傾向が増大することなどの難点を有している。
【0007】
さらにこの不均一模様の発生は、板面表層部より板厚中心部に近い板面を削り出した表面において顕著となる。銅箔製造用ドラムの表面は、使用中に電気スパークなどによって荒れてくるため、何度も研磨・整面が行われるため、ドラム用チタン材では、表面の組織均一性はもちろん、厚さ方向の均一性も要求されている。この点において、特開昭60−9866号公報に開示された製造方法では厚さ方向の組織均一性まで得るには不十分であり、再研磨により、板の全厚に渡って使用することは不可能である。
【0008】
また、特開平9−176809号公報においては、▲1▼α域一段加熱クロス圧延法、すなわち分塊鍛造あるいは分塊圧延にて得たスラブを、粗熱延、仕上げ熱延を行うに際して、粗熱延時のスラブ加熱温度を700℃以上からβ変態温度未満の温度範囲にするとともに、直交する長手方向と幅方向に対して圧延を行い、かつ長手方向への圧延による加工真歪量をεL 、幅方向への圧延による加工真歪をεW とするとき、両真歪量の間にεL ×εW ≧0.25が成り立つ条件下で圧下することを特徴とする不均一マクロ模様の無いチタンまたはチタン合金板の製造方法が開示されている。
【0009】
さらに同法は、▲2▼粗熱延に供するスラブとして、β変態温度未満で熱間加工が施された後、β変態温度以上に加熱することにより、結晶組織が微細化されたスラブを用いること、あるいは、▲3▼熱延板を800℃以下で焼鈍した後、冷延および焼鈍を付加して平均結晶粒径が50μm以下とする製造方法を開示している。しかしながら、▲2▼で述べられているように、β変態温度未満で熱間加工が施された後、β変態温度以上に加熱すると、かえって結晶粒の粗大化が促進され、緻密で均一な組織が得られ難くなるという難点を有している。
【0010】
さらに▲3▼で述べられているように、熱延板を800℃以下で焼鈍した後、冷延および焼鈍を付加しても、分塊スラブ時点で存在していた粗大粒領域の影響は消し去ることが出来ず、結晶粒径がやや大きな箇所や、近接方位集団粒(コロニー)が部分的に存在する組織が残存する難点を有しており、さらに厚さ方向の組織均一性に関しても不十分で、板の全厚に渡っての使用は不可能である。
【0011】
また、従来の技術に特徴的な点に、金属組織の均一性を知る指標として結晶粒度を用いている点がある。例えば特開平6−93400号公報および特開平6−93401号公報では、平均25μm以下となった場合に、チタン電着ドラムとして適した材料が出来るとして、その製造方法を規定している。
しかし、平均結晶粒径の測定は、JIS G 0552に記載されているように、切断法といわれる方法で行われるため、組織の部分的箇所に粒径の大きな結晶粒があっても、平均粒径には表れてこないという問題があった。
【0012】
したがって、チタン製電着ドラムのように、マクロ模様のない均一な材料としては、ある水準の平均結晶粒径を目指すことは必ずしも必須ではなく、平均結晶粒径の大小よりも、結晶粒径の大きさのばらつきが最も重要な指標となっている。
特に、箔厚が10μm以下のような薄い銅箔を製造する場合には、平均結晶粒径や結晶粒の大きさのばらつきが大きいと、銅箔に転写される結晶粒界が外観上目立つという問題がある。すなわち平均結晶粒径や結晶粒の大きさのばらつきが大きいと、マクロ的不均一模様が無くても、表面がややざらついて見える。この場合、結晶粒径のばらつきが小さく、マクロ的不均一模様が無ければ、一般の厚手の銅箔(厚さ15μm以上)では問題ないが、厚さ10μm以下の銅箔の場合、できるだけ表面が滑らかに見えることが重要である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような現状に鑑み、本発明の課題は、微細かつ均一な金属組織を有する銅箔製造ドラム用チタンを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、以上のような銅箔製造ドラム用チタンの現状に鑑み、特に箔厚が10μm以下のような極薄の銅箔の電着製造に適したチタンドラム材として、表面下1mmおよび1/2板厚部(板厚中心部)における平均結晶粒がいずれも20μm以下で、さらに、両部位における平均結晶粒径の差が5μm以内であるチタンが適していることを突き止めた。
また、圧延に先立って、少なくとも2回の鍛造処理によって、鋳造に由来する粗大な組織を加工微細化することによって、このような条件を満たす微細かつ均一な金属組織を有するチタンを製造できることを見出した。その上で、さらに適切な鍛造条件および熱延条件の組み合わせを模索した結果、本発明に至ったものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
【0016】
(1)mass%で、Fe:0.01〜0.04%、O:0.001〜0.1%を含有し、残部チタンおよび不可避不純物からなり、表面下1mmと1/2板厚部の平均結晶粒径がいずれも20μm以下で、かつ、表面下1mmと1/2板厚部の平均結晶粒径差が5μm以下である銅箔製造ドラム用チタン、または、該チタンにおいて、表面下1mmと1/2板厚部の結晶粒面積分布の変動係数がいずれも20%以下である銅箔製造ドラム用チタンの製造方法であって、溶解鋳造したインゴットを800℃以上、1100℃以下に加熱し、インゴットの長手方向を減ずる向きに、圧下比1.2〜3の熱間加工を施し、さらに800℃以上、1100℃以下に加熱し、インゴットの直径または板厚方向を減ずる向きに圧下比1.2〜20の熱間加工を施した後、800℃以上、β変態温度以下に加熱し、圧下比1.2〜20、圧延終了温度550℃以上の熱間圧延を1回以上行うことを特徴とする微細かつ均一な金属組織を有する銅箔製造ドラム用チタンの製造方法。
(2)前記熱間圧延において、長手方向に直交する方向に圧延するクロス圧延を、クロス圧延比(幅方向の総圧下比/長手方向の総圧下比)が1/10〜10になるように施すことを特徴とする前記(1)に記載の微細かつ均一な金属組織を有する銅箔製造ドラム用チタンの製造方法。
【0017】
(3)前記熱間圧延終了後、圧下比1.2〜5の冷間圧延を施し、その後550℃以上、700℃以下の温度において10分〜1時間保持する熱処理を、さらに施すことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の微細かつ均一な金属組織を有する銅箔製造ドラム用チタンの製造方法。
(4)前記熱間圧延終了後、550℃以上、700℃以下の温度において10分〜5時間保持する熱処理を施した後、さらに圧下比1.2〜5の冷間圧延を施し、その後550℃以上、700℃以下の温度において10分〜1時間保持する熱処理を再度施すことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の微細かつ均一な金属組織を有する銅箔製造ドラム用チタンの製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、銅箔などの電解金属箔製造ドラム用チタン材の最終製品において問題とされるマクロ不均一模様が製造工程のどの段階の何に起因するのか、そしてそれを解消し、板厚表層部から板厚中心部にまで渡って均一な組織を有する材料を製造するためにはどうしたら良いかという視点で鋭意研究を進めた結果、次に述べる一連の知見を得た。
【0019】
その第1は、銅箔製造用チタンドラムとして、最終製品に残留するマクロ的不均一模様は、熱間加工段階で発生し、その後のいかなる加工、熱処理工程をとっても継承され、最終的には不均一模様として出現すること。
第2は、チタンインゴットを最初に熱間加工する際に、インゴットの長手方向を減じる熱間加工と、インゴットの直径または厚さ方向を減じる熱間加工の両方を施すと、板厚表層部から板厚中心部に渡って微細で均一な組織を有し、かつ、マクロ的不均一模様のないチタンドラム素材ができる。
ということである。
【0020】
以下に、本発明の要件につき詳細に説明する。
本発明によって製造される微細かつ均一な金属組織を有するチタンは、表面下1mmと板厚中心部における平均結晶粒が20μm以下で、かつ、両者の平均結晶粒径の差が5μm以内であることを特徴とする。
平均結晶粒径や結晶粒の大きさのばらつきが大きいと、銅箔に転写される結晶粒界が外観上目立つので平均結晶粒径が20μm以下、かつ、平均結晶粒径の差が5μm以内とする。平均結晶粒径、平均結晶粒径差のいずれかがこの範囲をはずれると製造される銅箔に外観上の問題が現れるが、平均結晶粒径は特に重要である。
【0021】
平均結晶粒径を20μm以下としたのは、10μm以下の銅箔に転写される結晶粒界が、平均結晶粒径が20μmを超えると、外観上目立つためである。ドラム素材をエッチングし、金属組織を出した場合、平均結晶粒径が20μmを超えると、マクロ的不均一模様が無くても、表面がややざらついて見える。この場合、結晶粒径のばらつきが小さく、マクロ的不均一模様が無ければ、一般の厚手の銅箔(厚さ15μm以上)では問題ないが、厚さ10μm以下の極薄銅箔の場合、できるだけ表面が滑らかに見えることが重要である。平均結晶粒径20μm以下では、エッチングを施し、表面を荒らした状態でも、外観上、表面はかなり滑らかに見える。結晶粒径は小さいほど好ましいが、製造効率などを考慮すると10μm未満とすることは必須ではない。
【0022】
また、平均結晶粒径差が5μm以内であれば、ドラム表面を何度か研磨しても、板厚1/2までの部分は問題なく使用できるという利点もある。したがって、平均結晶粒径差は小さいほどよい。
ここでいう平均結晶粒径とは、JIS G 0552に記載されている切断法と呼ばれる方法で測定する。
【0023】
さらに、表面下1mmと板厚中心部それぞれにおいて、結晶粒度面積分布の変動係数が20%以下であれば、表面状態はさらに均一となり銅箔ドラム素材としてより適した材料となる。
変動係数とは、粒度のばらつきを示す数値で、結晶粒面積相当粒度の標準偏差をその平均値で割って、百分率とした数値である。
結晶粒面積相当粒度は、ASTM E930に記載されている観察された結晶粒の面積から換算される結晶粒度で、結晶粒面積相当粒度と結晶粒面積の対応は表1の通りである。
【0024】
【表1】
【0025】
結晶粒面積相当粒度は、このように特定の結晶粒面積に対応する整数値として求められる。例えば、結晶粒面積相当粒度6の結晶粒数とは、粒度5.5超6.5以下の結晶粒数のことであり、結晶粒の面積が0.00143mm2 以上、0.00285mm2 未満である結晶粒の数のことである。
したがって、結晶粒面積相当粒度の分布は、ヒストグラムによって表すことができ、平均値、標準偏差、変動係数は、この分布の解析から計算する。
【0026】
結晶粒面積分布の変動係数を20%以下としたのは、平均結晶粒径が20μm以下の場合、20%を超えると金属表面にマクロ模様が見られるようになるためである。下限は一般的に実現可能な12%とすることが好ましい。なお、この計測は、同一材料の少なくとも数箇所以上で行うことが望ましい。
本発明で問題にしているマクロ的不均一模様とは、ドラム用チタン板を、酸液で腐食したとき、特定の結晶方位を向いた結晶粒の塊(コロニー)部分が、幅数ミリ、長さ数センチ程度の大きさで観察される模様のことを示している。
【0027】
マクロ的不均一模様の有無の判定は、次のようにして行う。製品に隣接する部分から、10cm角程度のチタン板を切出し、フライス研削後、サンドペーパーで研磨を行い、硝沸酸で数分間腐食を行う。マクロ的不均一模様は、肉眼で観察することが多いが、定量的な評価をする場合は、板面のエッチングされた面を写真にとるか、またはスキャナーや実体顕微鏡等で直接パソコンに画像として取り込み、マクロ的不均一模様部を曲線で取り囲み、その面積を算出する。これを試料の板面積で除したものをマクロ的不均一模様部の面積比率として評価基準とすることもある。
【0028】
本発明のチタン板を製造するにあたり、本発明の技術的根幹を成す思想は、熱間圧延中に再結晶を利用した組織の微細化を行うと同時に、熱間圧延終了段階において、マクロ的不均一模様の原因である、Transverse-textureの集合組織(α相の〔0001〕軸が板幅方向に、板面の法線方向に対して90°に近い角度で傾く組織)をもつコロニーの生成を抑えることにある。
【0029】
そのため、製造工程の初期段階、すなわち熱間圧延工程終了段階で、材料組織の均一性を確保することが必要である。初期の熱間圧延の段階で若干の結晶粒不均一部があったとしても最終熱延の終了までにそれを解消することが必要である。熱間圧延後の熱処理、冷延、焼鈍の一連の工程は、製造初期段階で培われた均一性を継承しつつ、結晶粒径を微細化する役割を持つ工程である。
【0030】
製造工程の初期段階、すなわち熱間圧延までの段階で、材料組織の均一性を確保するためには、まずFeの含有量が0.01mass%以上であることが必要である。粗熱延時の加熱において、800℃以上、β変態温度以下としたとき、Ti−Feの2元合金系において、α+βの2相となれば、粒成長はα中にFeを多く含むβが存在することによって抑制される。
一方、α単相となると、粒成長を阻害するものが何も存在しないため結晶粒の粗大化が進行する。Feの含有量の下限値を0.01mass%としたのは、それ未満ではβ変態温度以下でα+βとなる温度範囲が加熱温度制御不能なほど狭い温度範囲となるためである。一方、Fe含有量の上限値を0.04mass%としたのは、これを超えると硫酸溶液に対する耐腐食性に問題が生じるためである。
【0031】
また、酸素の含有量を0.001mass%以上としたのは、酸素含有量を0.001mass%未満にすることは工業的に困難なためであり、0.1mass%以下としたのは、これを超えると溶接時における酸素の不可避な混入で素地よりも硬度が高くなり、研磨によっても溶接線が解消できなくなるためである。
【0032】
以下本発明の製造方法におけるプロセス条件の規定について説明する。
本発明で用いられるチタンインゴットは、VAR(真空アーク溶解)による円柱状インゴット、またはEBR(エレクトロンビーム溶解)によるスラブ状インゴットのいずれでもかまわない。
【0033】
本発明の製造方法では、まず、インゴットを最初に熱間加工する際に、インゴットの長手方向を減ずる熱間加工と、インゴットの直径または厚さ方向を減じる熱間加工の両方を施すことを特徴としている。インゴットの直径または厚さ方向を減じる熱間加工の両方を施すことにより、インゴットの鋳造組織を完全に破壊し、材料組織の均一化・微細化されるだけでなく、インゴット段階で存在していたFe含有量の偏析(インゴット中央部が高く、周囲が低い傾向がある)が軽減される働きもある。
【0034】
このときの加熱温度を800℃以上としたのは、800℃より低い温度だと加工終了時の温度が低下して加工負荷が増大し、割れ等が発生するためであり、1100℃以下としたのは、1100℃を超える温度は不必要に高い温度であり、なおかつβ相の粒成長が促進されて、以下の工程で結晶粒径を微細化するのに不都合を生じるためである。
【0035】
長手方向を減ずる向きの熱間加工の圧下比1.2以上としたのは、1.2未満では充分な歪が導入されず、β相やα相における再結晶、並びにその後の冷却過程における変態β組織(微細ラメラ組織)の生成が充分に促進されないためである。長手方向を減ずる向きの熱間加工の圧下比3以下としたのは、3を超えるとインゴットが座屈したりして形状が乱れ、後の工程への移行が円滑に行えないためである。
【0036】
板厚方向を減ずる向きの熱間加工を施す際の加熱温度の下限、上限及び圧下比の下限の理由は、長手方向を減ずる向きの熱間加工を施す際の理由と同じである。板厚方向を減ずる向きの熱間加工を施す際の圧下比の上限を20としたのは、20を超えると加工終了温度が低下し、端部に割れ等が発生するためである。
【0037】
引き続き、800℃以上β変態温度以下に加熱し、550℃以上で終了する熱間圧延を1回以上3回以下繰り返し施すのは、材料組織をより細粒化、均質化するためである。
本熱間圧延における結晶組織微細化・均質化の効果は加工・再結晶によるものであるため、繰り返し施すことは効果がある。繰り返し回数の上限を3回以下とすることが好ましい。その理由は、3回を超えると効果が飽和し製造コストに見合わなくなるばかりでなく、充分な圧下比を確保できなくなるためである。
【0038】
加熱温度を800℃以上としたのは、800℃よりも低い温度で圧延を開始すると圧延終了温度までに充分な圧下比を確保しにくいためである。また加熱温度をβ変態温度以下としたのは、β変態温度を超えると1回目の熱間圧延終了時に形成された微細αラメラがβ相として粗粒化を始めるためであり、なおかつ、β変態温度を超えるとマクロ模様の原因の一つであるTransverse-textureが生成されやすくなるためである。熱間圧延終了温度を550℃以上としたのは、550℃未満では熱延抵抗が高くなり、加工が困難となるためである。また、充分な圧下比を確保するため熱間圧延終了温度は700℃未満とすることが好ましい。
【0039】
それぞれの熱間圧延における圧下比を1.2以上としたのは、1.2未満だとかえって粗粒化するためであり、20以下としたのは、20を超えると熱間圧延終了温度が550℃未満に低下してしまい、端部に割れ等が発生してしまうためである。
なお、熱間圧延中に、サイズ調整のために幅出し加工を行っても問題は無い。
【0040】
また、熱間圧延工程において、長手方向に直交する幅方向に圧延するクロス圧延を施すことは、圧延方向に生じるα延伸粒を破壊できるため、組織均一化の観点からさらに好ましい。
この際、クロス圧延比(スラブ状インゴットまたは円柱状インゴットの幅方向または直径方向の総圧下比/同長手方向の総圧下比)が1/10〜10になるようにクロス圧延を施す。クロス圧延比をこの範囲としたのは、圧延時に圧延方向に生じるα延伸粒を十分に解消するためである。1/10を下回るクロス圧延比および10を超えるクロス圧延比では、α延伸粒が残留し、均一な組織が得られないためである。
【0041】
熱間圧延に引続き、圧下比1.2以上、5以下で冷間圧延を施し、その後550℃以上700℃以下の温度において10分〜1時間の熱処理を施すことにより、微細な粒径の組織を得ることができる。
【0042】
冷間圧延において圧下比1.2以上としたのは、圧下比が1.2を下回ると、板厚1/2付近の結晶粒径が微細化しないためであり、5以下としたのは、圧下比が5を超えると、その後の熱処理においても加工組織が消えず、研磨性が不良になるためである。
【0043】
冷延後熱処理の温度範囲を550℃以上700℃としたのは、550℃を下回る温度では加工組織が完全に消えないためであり、700℃を超える温度では平均結晶粒径が粗大化し、表面の研磨性が不良になるためである。なお、この冷延後の熱処理においては、熱処理時間は10分未満では効果が不十分であり、一方、1時間を超えても効果が飽和する。
【0044】
また、熱間圧延後に550℃以上700℃以下温度において10分〜5時間の熱処理を施し、上述した冷間圧延および冷間圧延後の熱処理を行うと、さらに結晶粒径のばらつきの小さい組織が得られる。熱処理の際、形状矯正を兼ねて真空クリープ焼鈍矯正装置を用いても良い。温度範囲を550℃以上700℃以下としたのは、550℃を下回る温度では加工組織が完全に消えないためであり、700℃を超える温度では平均結晶粒径が粗大化し、その後に冷間圧延と熱処理を施しても最終的な平均結晶粒径を20μm以下とすることができないためである。なお、熱処理時間は、10分未満では効果が不十分であり、一方、5時間を超えても効果が飽和する。
【0045】
【実施例】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
真空アーク溶解法.または電子ビーム溶解法で作製したFe含有量0.01〜0.04mass%、O含有量0.001〜0.05mass%のそれぞれ直径約1050mmの円柱形状チタンインゴットと厚さ約630mmのスラブ形状チタンインゴットを8種用意し、表2に示す条件で加工を施し、表面下1mmおよび1/2板厚部分の板面に平行な面について、平均結晶粒径と結晶粒面積の粒度分布を測定すると共に、表面をマクロ研磨して模様の有無を判定した。
【0046】
【表2】
【0047】
マクロ研磨の方法はフライス加工の後、サンドペーパー研磨で#600で仕上げ、硝沸酸(硝酸10%、沸酸5%)でエッチングしたものである。
マクロ模様の判定は、◎:ほとんど模様なし、○:かすかな模様がみられる (無視できる程度)、△:軽度な模様が見られる(無視できない程度)、×:重度なマクロ模様である。なお、重度なマクロ模様については、実施例と比較例を通じて観察されていない。
【0048】
結晶粒面積の粒度分布は、エッチング写真の画像解析により、結晶粒面積を画素数で計測し面積に換算して出したものであり、結晶粒面積と粒度の関係から算出する。本実施例における結晶粒面積と粒度の関係は、表1に例示したとおりである。
各粒度No.毎に相当する結晶粒数をカウントし、平均結晶粒面積と標準偏差を算出し、変動係数(=標準偏差/平均)を算出した。
【0049】
本発明例のNo.1〜8は、いずれも平均結晶粒径は20μm以下、かつ表面下1mm部、および1/2板厚部の平均結晶粒径差が4μm以内であり、結晶粒面積の変動係数は20%以下であり、表面の模様についても、1/2板厚部でも表面下1mm部分でも、ほとんど模様は見られなかった。
一方、比較例No.1,3(長手方向及び厚さ方向の熱間加工が施されていない)、比較例No.2,4(長手方向の熱間加工が施されていない)では、1/2板厚部の結晶粒面積の変動係数が20μmを超え、比較例No.3,4は平均結晶粒径が20μmを超え、比較例No.1,2は平均結晶粒径差が5μmを超え、表面にかすかな模様が見られたため、いずれも箔厚が10μm以下のような薄い銅箔製造ドラム用チタンとしては不適当であった。
【0050】
本実験では熱処理は形状矯正を兼ねてVCF炉(Vacuum Creep Flattening:真空クリープ熱処理炉)で行ったが、結晶粒径、研磨後の表面状態を制御する観点からは、大気炉による熱処理でも構わない。
【0051】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、板厚表面から1/2板厚部にわたり、均一微細な組織を有する銅箔製造用ドラムチタンを提供することが可能になるため、その産業上の価値は極めて高いといえる。
Claims (4)
- mass%で、
Fe:0.01〜0.04%、
O :0.001〜0.1%
を含有し、残部チタンおよび不可避不純物からなり、表面下1mmと1/2板厚部の平均結晶粒径がいずれも20μm以下で、かつ、表面下1mmと1/2板厚部の平均結晶粒径差が5μm以下である銅箔製造ドラム用チタン、または、該チタンにおいて、表面下1mmと1/2板厚部の結晶粒面積分布の変動係数がいずれも20%以下である銅箔製造ドラム用チタンの製造方法であって、溶解鋳造したインゴットを800℃以上、1100℃以下に加熱し、インゴットの長手方向を減ずる向きに、圧下比1.2〜3の熱間加工を施し、さらに、800℃以上、1100℃以下に加熱し、インゴットの直径または板厚方向を減ずる向きに圧下比1.2〜20の熱間加工を施した後、800℃以上、β変態温度以下に加熱し、圧下比1.2〜20、圧延終了温度550℃以上の熱間圧延を1回以上行うことを特徴とする微細かつ均一な金属組織を有する銅箔製造ドラム用チタンの製造方法。 - 前記熱間圧延において、長手方向に直交する方向に圧延するクロス圧延を、クロス圧延比(幅方向の総圧下比/長手方向の総圧下比)が1/10〜10になるように施すことを特徴とする請求項1に記載の微細かつ均一な金属組織を有する銅箔製造ドラム用チタンの製造方法。
- 前記熱間圧延終了後、圧下比1.2〜5の冷間圧延を施し、その後550℃以上、700℃以下の温度において10分〜1時間保持する熱処理を、さらに施すことを特徴とする請求項1または2に記載の微細かつ均一な金属組織を有する銅箔製造ドラム用チタンの製造方法。
- 前記熱間圧延終了後、550℃以上、700℃以下の温度において10分〜5時間保持する熱処理を施した後、さらに圧下比1.2〜5の冷間圧延を施し、その後550℃以上、700℃以下の温度において10分〜1時間保持する熱処理を施すことを特徴とする請求項1または2に記載の微細かつ均一な金属組織を有する銅箔製造ドラム用チタンの製造方法。
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