JP6863531B2 - チタン板および銅箔製造ドラム - Google Patents
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Description
本願は、2019年04月17日に、日本に出願された特願2019−078825号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
(1)本発明の一態様に係るチタン板は、質量%で、O:0%以上、0.400%以下、Cu:0%以上、1.50%以下、Fe:0%以上、0.500%以下、N:0.100%以下、C:0.080%以下、及びH:0.0150%以下、を含み、残部がTiおよび不純物である化学組成を有し、金属組織が、結晶構造が六方最密充填構造であるα相を含み、平均結晶粒径が40μm以下であり、前記六方最密充填構造を有する結晶の(0001)面の法線をc軸としたとき、板面の法線方向から40°以内の角度に前記c軸が傾いた結晶粒の、すべての結晶粒に対する面積率が、70%以上であり、単位μmでの結晶粒径の対数に基づく粒度分布の標準偏差が0.80以下である。
(2)上記(1)のチタン板では、前記板面の前記法線方向からの(0001)極点図において、電子線後方散乱回折法の球面調和関数法を用いた極点図の展開指数を16、ガウス半値幅を5°としたときのTexture解析により算出される結晶粒の集積度のピークが、前記板面の前記法線方向から30°以内に存在し、かつ、最大集積度が4.0以上である、集合組織を有してもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載のチタン板では、前記平均結晶粒径を単位μmでDとした際に、前記粒度分布の標準偏差が、(0.35×lnD−0.42)以下であってもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のチタン板では、板厚方向断面を観察した際に、表面から板厚の1/4の位置における、全結晶粒界長さに対する双晶粒界長さの割合が、5.0%以下であってもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のチタン板では、前記化学組成が、質量%で、Cu:0.10%以上1.50%以下を含んでもよい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のチタン板は、銅箔製造ドラム用チタン板であってもよい。
(7)本発明の別の態様に係る銅箔製造ドラムは、円筒状のインナードラムと、前記インナードラムの外周面に被着された、上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載のチタン板と、前記チタン板の突合せ部に設けられた溶接部と、を有する。
<1.チタン板>
まず、本発明の一実施形態に係るチタン板(本実施形態に係るチタン板)について説明する。本実施形態に係るチタン板は、銅箔製造ドラムの材料として利用されることを想定している。したがって、本実施形態に係るチタン板は、銅箔製造ドラム用チタン板であるともいえる。銅箔製造ドラムにおいて使用される場合、チタン板の一方の面が、ドラムの円筒表面を構成する。
本実施形態に係るチタン板の化学組成について説明する。本実施形態に係るチタン板は、工業用純チタンまたは前記工業用純チタン中のTiの一部に代え1.50質量%以下のCuを含むチタン合金の化学組成を有する。具体的には、本実施形態に係るチタン板は、質量%で、Cu:0%以上1.50%以下、Fe:0%以上0.500%以下、O:0%以上0.400%以下、N:0.100%以下、C:0.080%以下、及びH:0.0150%以下、を含み、残部がTiおよび不純物を含む化学組成を有する。
以下、具体的に説明する。
Oは、チタン板の強度の向上に寄与し、表面硬度の増大に寄与する元素である。しかしながら、チタン板の強度が高くなりすぎると、矯正時に比較的大きな加工が必要となり、ドラムを製造し難くなる。また、表面硬度が大きくなりすぎると、チタン板をドラムとした際に研磨が困難となる。したがって、O含有量を0.400%以下とする。O含有量は、好ましくは0.150%以下、より好ましくは0.120%以下である。Oは、本実施形態に係るチタン板において必須ではないことから、その含有量の下限は0%である。しかしながら、溶解原料であるスポンジチタンや添加元素からの混入を防ぐことは難しく、実質的な下限は0.020%である。
O含有量により強度向上効果を得る場合、O含有量は好ましくは、0.030%以上である。
Cuは、β相を安定化させるとともに、α相にも固溶し、α相を強化することで、研磨性の向上に寄与する元素である。さらに、CuはTiと結合してTi2Cuを形成し得る元素である。研磨性の観点からは、Ti2Cuは析出させない方がよいが、Ti2Cuは結晶粒成長を抑制するので、研磨性に影響しない程度でTi2Cuを析出させると、チタン板において均一かつ微細な結晶粒径が得られやすくなる。このような効果を得る場合、Cu含有量を、0.10%以上とすることが好ましく、0.20%以上とすることがより好ましく、0.40%以上とすることがさらに好ましい。
一方、Cu含有量が1.50%超であると、Ti2Cuが過度に析出し、研磨性が低下するとともに表面性状が劣化する(マクロ模様が形成される)懸念がある。そのため、Cu含有量を1.50%以下とする。Cu含有量は、好ましくは1.30%以下、さらに好ましくは1.20%以下である。
Feは、β相を安定化する元素である。チタン板においてはβ相の析出量が多くなるとマクロ模様が生成しやすくなる。そのため、Fe含有量を0.500%以下とする。Fe含有量は、好ましくは0.100%以下、より好ましくは0.080%以下である。Feは、本実施形態に係るチタン板において必須ではないことから、その含有量の下限は0%である。しかしながら、溶解原料であるスポンジチタンや添加元素からの混入を防ぐことは難しく、実質的な下限は0.001%である。
また、Feはβ相のピン止めによる結晶粒成長抑制に寄与する元素である。また、FeはTi中に固溶した状態でもソリュートドラッグ効果により粒成長を抑制する元素である。これらの効果を得る場合、Fe含有量は、0.020%以上が好ましく、0.025%以上がさらに好ましい。
C :0.080%以下
H :0.0150%以下
N、C、Hは、いずれも多量に含有すると、延性、加工性が低下する。そのため、N含有量は0.100%以下、C含有量は0.080%以下、H含有量は0.0150%以下にそれぞれ制限する。
一方、N、C、Hの含有量はそれぞれ低いほど好ましいが、N、C、Hは、不可避的に混入する不純物である。そのため、実質的な含有量の下限は、通常、Nで0.0001%、Cで0.0005%、Hで0.0005%である。
Cu、Fe等のβ安定化元素はIPC発光分光分析により測定する。OおよびNについては、酸素・窒素同時分析装置を用い、不活性ガス溶融、熱伝導度・赤外線吸収法により測定する。Cについては、炭素硫黄同時分析装置を用い、赤外線吸収法により測定する。Hについては、不活性ガス溶融、赤外線吸収法により測定する。
次に、本実施形態に係るチタン板の金属組織について説明する。本実施形態に係るチタン板は、金属組織が、結晶構造が六方最密充填構造であるα相を含み、平均結晶粒径が40μm以下であり、結晶粒径(μm)の対数に基づく粒度分布の標準偏差が0.80以下であり、板面の法線方向から40°以内の角度にc軸(六方最密充填構造を有する結晶の(0001)面の法線)が傾いた結晶粒の、すべての結晶粒に対する面積率が、70%以上である。以下、本実施形態に係るチタン板の金属組織について、順を追って詳細に説明する。
本実施形態に係るチタン板の金属組織は、主としてα相を含む。α相は、六方最密充填構造(hexagonal close−packed、hcp)を有する。
β相は、α相よりも優先して腐食する。このため、均一な腐食を達成し、マクロ模様の発生を抑制する観点からは、β相は少ないほうが好ましい。そのため、本実施形態に係るチタン板の金属組織におけるα相の体積率は、好ましくは98.0%以上、より好ましくは99.0%以上、さらに好ましくは100%である。すなわち、実質的にα相単相である。実質的なα相単相の金属組織は、上述したようなチタン板の化学組成により達成することができる。
一方で、β相が少量存在する場合、熱処理時の結晶粒成長を抑制できるので、均一かつ微細な結晶粒径を得ることができる。また、チタン板がCuを含有する場合、生成するTi2Cuは粒成長を抑制できる。しかしながら、Ti2Cuが析出し過ぎると研磨性が変化する恐れがある。このような観点から、チタン板の金属組織は、β相、Ti2Cuを含んでもよいが、β相、Ti2Cuの体積率は、合計で2.0%以下であることが望ましい。β相、Ti2Cuの体積率は好ましくはそれぞれ1.0%以下である。
次に、本実施形態に係るチタン板の金属組織に含まれる結晶粒の平均粒径及び粒度分布について説明する。
チタン板の金属組織の結晶粒の粒径(結晶粒径)が粗大であると、その結晶粒そのものが模様となり、銅箔に模様が転写されるので、結晶粒径は微細な方が良い。チタン板の金属組織の結晶粒の平均結晶粒径が40μmを超えると、その結晶粒そのものが模様となり、銅箔に模様が転写されてしまう。このため、チタン板の金属組織の結晶粒の平均結晶粒径は、40μm以下とする。これにより、結晶粒が十分に微細となり、マクロ模様の発生が抑制される。チタン板の金属組織の結晶粒の平均結晶粒径は、好ましくは38μm以下、より好ましくは35μm以下である。
チタン板の金属組織の平均結晶粒径の下限値は特に限定されない。しかしながら、結晶粒が非常に小さい場合には、熱処理時に未再結晶部が発生する恐れがある。このため、結晶粒の平均結晶粒径は、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。
結晶粒径(μm)の対数に基づく粒度分布の標準偏差は、平均結晶粒径をD(μm)とした際に、(0.35×lnD−0.42)以下であることが好ましい。
また、結晶粒径分布より対数正規分布(各結晶粒の円相当粒径Dを自然対数LnDに変換した変換値の分布)における標準偏差σを算出する。
一般に金属材料の結晶粒径分布は対数正規分布に従うことが知られている。したがって、上述したような粒度分布の標準偏差の算出に当たっては、得られた粒度分布を対数正規分布に規格化し、規格化した対数正規分布より標準偏差を算出してもよい。
次に、チタン板の集合組織の結晶方位について説明する。チタン板は、上述した化学組成に起因して、実質的にα相単相であり、α相の結晶構造は、図6に示すような六方最密充填構造(hexagonal close−packed、hcp)をとる。hcp構造は、結晶方位による物性の異方性が大きい。具体的には、六方最密充填構造を有する結晶の(0001)面の法線方向(c軸方向:[0001]方向)に平行な方向では強度が高く、c軸方向と垂直な方向に近づくほど強度が低い。このため、チタン板が上述したような結晶粒の粒度分布を満足しても、結晶方位の異なる結晶の集合体が発生すると、両集合体間での加工性が異なり、銅箔製造ドラム製造時において、研磨時の加工で差が発生する。この結果、得られるドラムにおいて結晶粒に近いサイズでの模様として認識されてしまう。本発明者らは、チタン板の集合組織の結晶方位をできる限り集積させることにより、上記の模様の発生を抑制できることを知見した。
ここで、板面の法線方向から40°以内の角度にc軸が傾いたとは、図7に示すように、チタン板のNDと結晶粒のc軸とがなす角θが40°以内であることを意味する。
チタン板を切断した断面を化学研磨し、電子線後方散乱回折法;EBSD(Electron Back Scattering Diffraction Pattern)を用いて、1〜2mm×1〜2mmの領域を、1〜2μmのステップで、2〜10視野程度測定する。そのデータをTSLソリューションズ製のOIM Analysisソフトウェアを用いて、c軸の傾きが板面の法線方向から40°以内の角度の結晶粒の、全体の結晶粒に対する面積率を求める。
圧延等によれば、結晶粒の集積度のピークは、最終圧延方向と直角な方向(最終圧延幅方向(TD))に傾きやすい。そのため、最終圧延方向が明確な場合には、圧延面の法線方向(ND)からの(0001)極点図において、結晶粒の集積度のピークが、圧延面の法線方向(ND)から最終圧延幅方向(TD)に30°以内に存在すればよい。
最大集積度は、大きい程好ましく、したがって上限は限定されないが、例えば熱間圧延により結晶方位を制御する場合、15〜20程度が上限となりうる。
チタン板は塑性変形時に双晶変形を生じることがある。双晶変形は化学組成以外にも結晶粒径にも依存し、粒径が大きいほど発生し易い。そのため、双晶が生じることにより、見た目の結晶粒径分布は均一になる場合がある。
一方で、双晶変形を生じると結晶方位差が大きくなり、結晶方位が大きく異なる結晶粒が隣接してしまい、その境界で研磨性が変化し模様として認識されるようになる。そのため、双晶は可能な限り抑制することが好ましい。
チタン板のドラム表面となる面の表面硬度(ビッカース硬さ)は、特に限定されないが、HV110以上であることが好ましい。これにより、チタン板を用いてドラムを製造し、表面を研磨する際に、均一な研磨が可能となり、マクロ模様をより一層抑制することができる。チタン板の表面硬度(ビッカース硬さ)は、より好ましくはHV112以上、さらに好ましくはHV115以上である。
本実施形態に係るチタン板の厚さは、特に限定されず、製造されるドラムの用途、仕様等に合わせて適宜設定することができる。銅箔製造ドラムの材料として用いられる場合、銅箔製造ドラムの使用に伴い、板厚が減少するため、チタン板の厚さは4.0mm以上とすることが好ましく、6.0mm以上であってもよい。チタン板の厚さの上限は、特に限定されないが、例えば、15.0mmである。
マクロ模様については、銅箔の製造工程で生じるが、チタン板におけるマクロ模様の生じやすさ(同一の条件でのマクロ模様の発生割合)については、チタン板の表面を#800のエメリー紙により研磨し、硝酸10%、ふっ酸5%溶液を用い表面を腐食させ、観察することで、評価できる。
図5を参照し、本実施形態に係る銅箔製造ドラム20は、電着ドラムの一部であり、円筒状のインナードラム21と、前記インナードラム21の外周面に被着されたチタン板22と、前記チタン板22の突合せ部に設けられた溶接部23とを有し、前記チタン板22が、上述した本実施形態に係るチタン板である。
すなわち、本実施形態に係る銅箔製造ドラム20は、本実施形態に係るチタン板を用いて製造された銅箔製造ドラムである。本実施形態に係る銅箔製造ドラム20は、銅箔が析出するドラムの表面に、本実施形態に係るチタン板を用いているので、マクロ模様の発生が抑制され、高品質の銅箔を製造することができる。
本実施形態に係る銅箔製造ドラムのサイズは特段制限されないが、ドラムの直径は、例えば1〜5mである。
インナードラム21は公知のものでよく、その素材は、チタン板でなくてもよく、例えば軟鋼やステンレス鋼でもよい。
チタン板22は、円筒状のインナードラム21の外周面に巻き付けられ、突合せ部を公知の溶接ワイヤを用いて溶接されることで、インナードラム21に被着される。そのため、突合せ部には溶接部23が存在する。溶接部23とは、溶接ワイヤの凝固組織をいう。
次に、本実施形態に係るチタン板の製造方法について説明する。本実施形態に係るチタン板は、いかなる方法によって製造されてもよいが、例えば以下に説明する本実施形態に係るチタン板の製造方法により製造することもできる。
本実施形態に係るチタン板の好ましい製造方法は、
上述した化学組成を有するチタン素材(工業用純チタンまたは前記工業用純チタン中のTiの一部に代え1.50質量%以下のCuを含むチタン合金の素材)を750℃以上880℃以下の温度に加熱する第1の工程と、
前記第1工程後に前記チタン素材を圧延してチタン板を得る第2の工程と、
を有し、
前記第2の工程において、合計の圧下率が85%以上であり、かつ、前記合計の圧下率のうち200℃以上650℃以下における圧延の圧下率の占める割合が、5%以上70%以下である。
以下、各工程について説明する。
まず、上述した各工程に先立ち、チタン板の素材(チタン素材)を準備する。
素材としては、上述した化学組成のものを用いることができ、公知の方法により製造されたものを用いることができる。例えば、素材は、スポンジチタンから消耗電極式真空アーク溶解法や電子ビーム溶解法またはプラズマ溶解法等のハース溶解法等の各種溶解法によりインゴットを作製する。次に、得られたインゴットをα相高温域やβ単相域の温度で熱間鍛造することにより、素材を得ることができる。素材には、必要に応じて洗浄処理、切削等の前処理が施されていてもよい。また、ハース溶解法で熱延可能な矩形のスラブ形状を製造した場合は、熱間鍛造などを行わず直接下記の第1の工程および第2の工程(加熱、熱間圧延)に供しても良い。
本工程は、後述する第2の工程のための加熱工程である。本工程においては、チタン板の素材を750℃以上880℃以下の温度に加熱する。加熱温度が750℃未満であると、例えば熱間鍛造、鋳造等において粗大粒子が生じている場合、第2の工程の熱間圧延において当該粗大粒子を起点としてチタン板に割れが発生してしまう場合がある。加熱温度が750℃以上であることにより、第2の工程の熱間圧延においてチタン板の割れが発生することを防止できる。
また、加熱温度が880℃を超えると、第2の工程の熱間圧延においてhcp構造のc軸が板幅方向に配向する粗大な集合組織(T−texture)が生成してしまう。この場合、上述したような板面の法線方向から40°以内の角度にc軸が傾いた結晶粒の、すべての結晶粒に対する、面積率が70%以上である組織(集合組織)を得ることができない。加熱温度が880℃以下であることにより、第2の工程の熱間圧延において、板面の法線方向に対するhcp構造のc軸の傾きの大きい結晶粒が、生成することを防止できる。
加熱温度は、好ましくは870℃以下である。加熱温度が870℃以下であることにより、T−textureの生成をより確実に防止できる。
本工程では、加熱されたチタン素材を圧延(熱間圧延)する。本工程では、合計の圧下率を85%以上とし、かつ、合計の圧下率のうち200℃以上650℃以下における圧延の圧下率の占める割合を、5%以上70%以下とする。これにより、結晶粒が上述したように均一に微細化され、また、hcp構造のc軸の傾きが小さい結晶粒の面積率の多い組織が得られる。本工程における熱間圧延開始温度は、基本的には上記加熱温度となる。
本工程における合計の圧下率は、高ければ高いほど組織が良くなるので、必要とされる製品サイズおよび製造ミルの特性に合わせて定めればよい。
全圧延を650℃超で行うなど、200℃以上650℃以下における圧下率の占める割合が5%未満である場合、この温度域での圧下量が足りず、その後の冷却時に回復を生じ、ひずみ量が少ない部分が発生する。そのため、熱延後の熱処理により結晶粒径のバラつきが大きくなる。さらに、集合組織の集積度が低下し、上述したような板面の法線方向からの(0001)極点図において、板面の法線方向から40°以内の角度にc軸が傾いた結晶粒の、すべての結晶粒に対する面積率が、70%以上である組織を得ることができない。
一方、全圧延を200℃未満で行うなどで、200℃以上650℃以下における圧下率の占める割合が5%未満である場合、板形状が不安定となる。この場合、その後の矯正における加工量が大きくなり、ひずみが導入され、矯正部とそれ以外の部分とでひずみ量の差が大きくなり、その後の熱処理で結晶粒径のばらつきが大きくなる。さらに、また、熱処理後に矯正すると、ひずみが影響し、その部分のみが腐食され易くなり、マクロ模様の原因となる恐れがある。
合計の圧下率のうち200℃以上650℃以下におけるチタン板の圧延の圧下率の占める割合は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上である。
また、好ましくは200〜600℃の圧下率の占める割合を5〜70%とし、さらに好ましくは200〜550℃の圧下率の占める割合を5〜70%とする。
再加熱を行うと、再加熱時に再結晶してしまい、その後の圧延でひずみ量が少なくなる。その結果、最終焼鈍前のひずみ量が少なくなり、結晶粒のばらつきが大きくなる。さらに、再加熱後の圧延時に双晶が発生し、結晶方位のばらつきが大きくなることで、板面の法線方向から40°以内の角度にc軸が傾いた結晶粒の面積率が低くなる。
具体的には、最終圧延方向での圧延による圧下率をL(%)、最終圧延方向と直交する方向での圧延による圧下率をT(%)とした際に、L/Tが1.0以上5.0以下であることが好ましい。これにより、得られるチタン板において、Texture解析により算出される結晶粒の集積度のピーク位置を制御するとともに、集合組織の集積度を高めることができる。L/Tは、より好ましくは1.0以上4.0以下である。
本工程では、チタン板を600℃以上750℃以下の温度で20分以上90分以下の時間、熱処理(焼鈍)する。これにより、未再結晶粒を微細な再結晶粒として析出させることができ、得られるチタン板の金属組織中の結晶を均一かつ微細にすることができる。この結果、マクロ模様の発生を抑制できる。
また、チタン板の焼鈍温度が750℃超、または焼鈍時間が90分超では、結晶粒が粗大化する。チタン板を750℃以下の温度で90分以下の時間熱処理することにより、一部の結晶粒が粗大になることを防止することができる。
熱処理は、大気雰囲気、不活性雰囲気もしくは真空雰囲気のいずれで行っても良い。
後処理としては、酸洗や切削による酸化スケール等の除去や、洗浄処理等が挙げられ、必要に応じて適宜適用することができる。
あるいは、後処理として、チタン板の矯正加工を行ってもよい。但し、双晶が生成することから、冷間圧延は行わないことが好ましい。
銅箔製造ドラムの製造方法は、特に限定されず、公知の方法とすることができる。例えば、本実施形態に係るチタン板を円筒状のインナードラムの外周面に巻き付け、突き合わされた端部を公知の溶接ワイヤを用いて溶接して製造される。溶接ワイヤとしては、工業用純チタン(例えば、JIS1〜4種)製が好ましい。
まず、消耗電極式真空アーク溶解法により表1の化学組成を有するインゴットを作製し、これを熱間鍛造することにより、所定の化学組成のチタンの素材を得た。発明例13〜15、比較例3、比較例5については、純Tiの範囲を超えて、表1の含有量となるようにCuを添加した。
各発明例および比較例に係るチタン板について、以下の項目について分析および評価を行った。
各発明例および比較例に係るチタン板の金属組織の結晶の平均結晶粒径および粒度分布の標準偏差は、以下のようにして測定、算出した。チタン板を切断した断面を化学研磨し、電子線後方散乱回折法;EBSD(Electron Back Scattering Diffraction Pattern)を用いて、表面から板厚の1/4の位置の1mm×1mmの領域を1μmのステップで10視野測定した。その後、結晶粒径についてはEBSDにより測定した結晶粒面積より円相当粒径(面積A=π×(粒径D/2)2)を求め、この個数基準の平均値を平均結晶粒径とし、さらに、結晶粒径分布より対数正規分布における標準偏差σを算出した。
上述した方法で、OIM Analysisソフトウェアを用いて板面の法線方向から40°以内の角度にc軸が傾いた結晶粒の面積率を求めた。
また、上述した方法で、TSLソリューションズ製のOIM Analysisソフトウェアを用い(0001)極点図を作図し、(0001)極点図の、最も等高線が高い位置を集積度のピーク位置とし、ピーク位置の内、最も集積度が大きいものをND方向からの角度とした。また、ピーク位置のうち最も集積度の大きな値を最大集積度とした。最大集積度は、球面調和関数法を用いた極点図のTexture解析を用いて算出した(展開指数=16、ガウス半値幅=5°)。
各発明例および比較例に係るチタン板の試料の厚さ方向断面を化学研磨し、電子線後方散乱回折法(EBSD)を用いて結晶方位解析した。具体的には、試料のチタン板表面から板厚の1/4の位置において1mm×1mmの領域を、1μm間隔でスキャンし、逆極点図マップ(IPF:inverse pole figure)を作成した。その際、発生する(10−12)双晶、(10−11)双晶、(11−21)双晶、(11−22)双晶の回転軸および結晶方位差(回転角)の理論値から2°以内を双晶界面とみなした。そして、結晶方位差(回転角)が2°以上の粒界を全結晶粒界長さとし、全結晶粒界長さに対する双晶粒界長さの割合を算出した。
各発明例および比較例に係るチタン板の試料の厚さ方向断面を鏡面研磨し、上述の方法で、SEM/EPMAにより、同断面における表面から板厚の1/4の位置のFeおよびCuの濃度分布を測定し、Fe及びCuが濃化していない部分の面積をα相の面積率として算出した。
各発明例および比較例に係るチタン板の表面硬度については、チタン板表面を鏡面となるまで研磨した後、JIS Z 2244:2009に準拠してビッカース硬さ試験機を用いて荷重1kgで3〜5点測定し、得られた値を平均して、表面硬度とした。
マクロ模様については、それぞれ5〜10枚程度の50×100mmサイズの各実施例および比較例に係るチタン板の表面を#800のエメリー紙により研磨し、硝酸10%、ふっ酸5%溶液を用い表面を腐食させることで観察した。次いで、3mm以上の長さ発生したスジ状の模様をマクロ模様とし、発生割合の平均に応じて下記のように評価を行った。
B:発生割合が1.0個/枚超、10.0個/枚以下(良好、50×100mmの中に1.0個超10.0個以下)
C:発生割合が10.0個/枚超(不合格、50×100mmの中に10.0個超)
得られた分析結果・評価結果を表2に示す。
2 電着ドラム
10 電解槽
30 電極板
40 巻取部
50 ガイドロール
60 巻取ロール
A 銅箔
20 銅箔製造ドラム
21 インナードラム
22 チタン板
23 溶接部
Claims (7)
- 質量%で、
O :0%以上、0.400%以下、
Cu:0%以上、1.50%以下、
Fe:0%以上、0.500%以下、
N :0.100%以下、
C :0.080%以下、及び
H :0.0150%以下、を含み、
残部がTiおよび不純物である化学組成を有し、
金属組織が、結晶構造が六方最密充填構造であるα相を含み、
平均結晶粒径が40μm以下であり、
前記六方最密充填構造を有する結晶の(0001)面の法線をc軸としたとき、板面の法線方向から40°以内の角度に前記c軸が傾いた結晶粒の、すべての結晶粒に対する面積率が、70%以上であり、
単位μmでの結晶粒径の対数に基づく粒度分布の標準偏差が0.80以下である、
チタン板。 - 前記板面の前記法線方向からの(0001)極点図において、電子線後方散乱回折法の球面調和関数法を用いた極点図の展開指数を16、ガウス半値幅を5°としたときのTexture解析により算出される結晶粒の集積度のピークが、前記板面の前記法線方向から30°以内に存在し、かつ、最大集積度が4.0以上である、集合組織を有する、
請求項1に記載のチタン板。 - 前記平均結晶粒径を単位μmでDとした際に、前記粒度分布の標準偏差が、(0.35×lnD−0.42)以下である、請求項1または2に記載のチタン板。
- 板厚方向断面を観察した際に、表面から板厚の1/4の位置における、全結晶粒界長さに対する双晶粒界長さの割合が、5.0%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のチタン板。
- 前記化学組成が、質量%で、
Cu:0.10%以上1.50%以下を含む、
請求項1〜4のいずれか一項に記載のチタン板。 - 銅箔製造ドラム用チタン板である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のチタン板。
- 円筒状のインナードラムと、
前記インナードラムの外周面に被着された、請求項1〜6のいずれか一項に記載のチタン板と、
前記チタン板の突合せ部に設けられた溶接部と、
を有する、
銅箔製造ドラム。
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