JP5365266B2 - プレス成形性に優れたチタン合金薄板およびその製造方法 - Google Patents

プレス成形性に優れたチタン合金薄板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、建築用内装材および外装材、厨房部材、食器、家具、器物、電気機器外装、電子機器筐体、時計、カメラ、メガネ、装身具、装飾品、また、鉄道、自動車、船舶、航空機などの内装材等に使用され、主にプレス成形等により製造される、冷間加工性に優れたチタン合金薄板製品およびその製造法に関する。
近年、携帯電話、カメラ、パソコン筐体、自動車・建築用内装、あるいは時計、メガネ等の装飾品の部品などで、チタン製品が使用されるようになってきた。これらは、チタンの優れた耐食性や、人体・生体への無害性、軽量であることを利用した用途で主に使用されている。中でも、低製造コストと高い冷間加工性が重視される場合には、純チタンが使用され、例えば、JIS H4600(2001)「チタン及びチタン合金板」に記載される1種材(TP270C)、あるいは2種材(TP340C)が使用されることが多い。このうち、特に、複雑な形状の部品を低コストで製造する場合、強度が低く冷間加工性に優れた1種材が使用され、プレス成形などにより効率的に量産するプロセスが採用される。
中でも、電子機器筐体用途など、特に複雑な立体形状に加工を行う場合、プレス成形時に肌荒れが発生して美感を損なうという問題があり、この時、素材の結晶粒径を細かくすることにより、肌荒れを抑制することは可能である。しかし、結晶粒の微細化に伴い耐力が上昇してエリクセン値等の冷間加工性が低下してしまうため、従来の1種材では肌荒れ防止とエリクセン値等の冷間加工性を両立させた、プレス成形性に優れる材料を提供することは困難であった。
なお、ここでいう、優れたプレス成形性とは、以下の3項目を兼ね備えた特性を指す。(i)プレス成形時の皺の発生が抑えられ、表面の寸法精度を損なわないこと、(ii)プレス成形後の表面の肌荒れが防止され、美感を損なわないこと、(iii)プレス成形にとって重要なエリクセン値等の冷間加工性が高いことを指すものとする。
この問題を解決するため、特許文献1には、O添加量を低くして優れた冷間加工性を確保するとともに、Feを適正量添加して、結晶粒径制御を行いやすくしたことを特徴とする純チタンが提案されている。同文献にはまた、この新しい成分系の純チタンにおいて、結晶粒径を微細なレベルに制御することにより、過酷なプレス成形に耐えられると同時に、プレス成形時の肌荒れやボディー皺の発生を抑える技術が開示されている。
これまでにCuを添加したチタン合金として、特許文献2、特許文献3等に開示されている。前者はTi−Cu合金の二相温度域への加熱により組織を均一微細化して、マクロ模様を低減するというものであり、プレス成形性を含む冷間加工性の改善についての記載はない。また、後者はTi2Cuなどを積極的に析出させて高強度化を図るとともに、抗菌性を利用するというものであるが、当合金の強度を支配するO量の制限がなく、プレス成形に適さない強度領域のものも含まれる。実際に、特許文献3中の実施例には、最大引張強度で750MPa以上の合金しか例示されておらず、高い冷間加工性を要求するプレス成形性まで追及した合金を示していないことは明らかである。
特開2006−316323号公報 特開2004−2953号公報 特開平11−80867号公報 特開2005−298970号公報
しかしながら、特許文献1に開示された純チタンの引張耐力は、160MPa未満と低く、より高強度が必要とされる部品への適用は不可という問題があった。あるいは、高強度部材に当該純チタンを適用するため、板厚増加を含む設計変更が必要とされた。しかし、近年、例えば、電子機器筐体用途などでは、より軽い素材のニーズが高くなっており、板厚を増やすことなく、強度部材に使用可能な引張耐力を有する素材を開発することは重要な課題であった。
本発明は、以上の事情を背景としてなされたものであり、プレス加工時の皺の発生を抑えて、表面の寸法精度を上げ、肌荒れ発生を抑えて、本発明材が利用されるプレス製品の美感を損なわず、かつ、冷間加工性に優れ、エリクセン値で12.0mm以上である、JIS1種純チタンよりも優れたプレス成形性を有し、1種材同等以上の引張耐力を有する、プレス加工部品の素材として用いることが最適なチタン合金薄板およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、Cuをチタンに添加して、Ti2Cu相析出により強度上昇を図ることと、ピニング効果により結晶粒径を抑えることが、課題解決に有効であることを見出した。即ち、チタンの冷間加工性におよぼす成分元素の影響を詳しく調査した結果、チタンに一定量のCuを添加して、Ti2Cuを最大相とする析出相(Ti2Cuをモル分率で80%以上、および残部不可避的析出相からなる析出相)を微細に析出させ、O量を適正に調整するとともに、結晶粒径を微細化することにより、JIS1種純チタンと同等以上のプレス成形性を有しながら、引張耐力を向上させることが可能であることを見出した。
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
(1)質量%で0.3〜1.8%のCu、0.01〜0.04%のO、0.05%以下のFe、残部Tiおよび0.3%未満の不純物元素からなり、平均結晶粒径12μm未満であり、Ti 2 Cuを最大相とする粒径0.05〜0.5μmの析出相を含有することを特徴とする、プレス成形性に優れるチタン合金薄板。
(2)前記1に記載のチタン合金薄板の製造において、熱延板に、熱延板焼鈍あるいは中間焼鈍を行うことなく、冷延を行い、最終焼鈍を480〜625℃の温度域にて行うことを特徴とする、プレス成形性に優れるチタン合金薄板の製造方法。
成形性評価のための型の形状
本発明者らは上記課題を解決すべく、チタンの冷間加工性におよぼす成分元素の影響を詳しく調査した結果、チタンに一定量のCuを添加して、Ti2Cuを最大相とする析出相(Ti2Cuをモル分率で80%以上、および残部不可避的析出相からなる析出相)を微細に析出させ、O量を適正に調整するとともに、結晶粒径を微細化することにより、JIS1種純チタンと同等以上のプレス成形性を有しながら、引張耐力を向上させることが可能であることを見出した。
当該発明はこの知見に基づいてなされたものである。以下に、請求項1に記載の本発明(以下、本発明(1))に示した各種添加元素を選択した理由と、その添加量範囲を限定した理由、並びに結晶粒径を限定した理由を示す。
Cuはチタンα相中に質量%で最大1.5%まで固溶する。固溶状態のCuは、固溶体強化により高温強度を高めるとともに、双晶変形発生を損なわずに強化する作用があることが知られており、その効果は特許文献4等により公開されている。当該文献では、固溶Cuによる冷間加工性向上と高温強度上昇効果を見出し、利用しているのが特徴である。
一方、Ti−Cu合金でα相中にTi2Cuを最大相とする析出相を適正量生成させると、析出強化により強度が上昇するとともに、α粒界へのピニング効果によりα相の粒成長を抑制する作用がある。本発明者らは、Ti2Cuを最大相とする析出相生成を制御すると、α結晶粒径が微細なレベルで制御しやすいことと、適度の析出強化がもたらされることにより、加工硬化係数が増加し、引張耐力が上昇することを見出した。特に、Ti2Cuを最大相とする析出相を微細に生成させて、結晶粒径を微細な範囲に調整すると、1種材同等以上の引張耐力に調整されるとともに、1種材よりも優れた冷間加工性を確保しつつ、プレス成形時の皺の発生を抑えられることも明らかとした。
Cu添加量の上限を1.8%としたのは、これを超えて含有するとTi2Cu相が多く生成するため、析出強化量が大きくなり過ぎてプレス成形性全般が低下するからである。同時に、析出粒子が粗大化し粒界へのピニング効果が小さくなって、α粒径を微細化することが困難となり、プレス成形時の肌荒れが発生するからである。また、合金中に均一に、Ti2Cuを最大相とする析出相を分散析出させ、α粒界へのピニング効果を均一にもたらしてα粒径を微細化できるCuの最低添加量は0.3%であるため、Cuは0.3%以上添加する必要がある。
Oはα相中に固溶し固溶体強化する作用を有するため、過度に添加すると、プレス成形性を含む冷間加工性の低下をもたらすこととなる。プレス成形により加工される部品などに使用されるために、高い冷間加工性を維持するには、O量は0.04%以下に抑える必要があるため、O量の上限を0.04%とした。さらに、厳しい成形加工が必要となる場合は、O量の上限を0.03%とすることが望ましい。また、O量を0.01%未満とすると、Ti2Cuの析出強化をもってしてもJIS1種材相当の引張耐力を確保できなくなるため、添加量の下限を0.01%とした。
Feはβ安定化元素であり、室温から高温域にかけてβ相を発現させる。Fe含有量が0.05%未満であれば、β相発生はわずかであるが、これを超えて添加されると、β相の量が増え、β相に濃化しやすいCuがβ相に集中する。こうしてCuの濃化したβ相中に、Ti2Cuを最大相とする析出相が集中して析出するため析出相が粗大化しやすくなり、均一な分布状態が得られないこととなる。その結果、局所的にα粒界へのピニング効果を発揮できない領域が発生し、その部分ではα粒の粗大化をもたらすこととなり、プレス成形時に肌荒れが発生してしまう。したがって、Feの含有量は0.05%以下である必要があり、低いほど良いが、不可避的不純物量程度であれば、実質的にその影響は無視できる。
その他に、不純物元素として、N、C、Ni、Cr、Al、Sn、Si、Hなど、通常のチタン材に含まれる元素については、これらの総和が0.3%を超えなければ、冷間加工性に悪影響をもたらさない。したがって、これら不純物元素の総和が0.3%以下であれば、含有しても問題はない。
チタン合金薄板中の結晶粒が粗大であると、プレス成形時に激しい肌荒れが発生し、表面の寸法精度が損なわれるとともに、皺が発生して、本合金薄板が用いられるプレス加工部品の需要者の視覚を通じて起こさせる美感感を損なうことがある。当合金薄板において、プレス成形しても肌荒れや皺発生が起らず、美しい表面意匠性を維持するには、α結晶粒径が平均12μm未満である必要がある。望ましくは、10μm以下である。
これは、肉眼から30cm離れた物体表面をモノクロで認識する際の肉眼の解像度が、その物体表面で50μm程度と言われているが、物体表面の質感を左右する光の反射の状態は、さらに微細な表面凹凸に起因し、これまで、肉眼で観察した際に、肌荒れと認識できるのは、12μm以上の表面凹凸が表面を覆った場合であったため、表面凹凸を生じさせうる、α結晶粒径は平均12μm未満である必要があるからである。プレス成形時の皺発生を抑える効果も、結晶粒径が小さいほど大きい。プレス成形時の肌荒れや皺発生を確実に抑えるためには、α結晶粒径は平均10μm以下であることが望ましい。
請求項2に記載する本発明(以下、本発明(2))は、複雑な形状のプレス成形用に使用されるチタン合金薄板の製造方法に関するものである。すなわち、本発明(2)は、溶解、熱延、酸洗、冷延、焼鈍等の工程を経て製造される、本発明(1)のチタン合金成分を有する薄板の製造方法において、最終焼鈍を480〜625℃の温度域にて行うことを特徴とする、本発明(1)の、プレス成形性、特に冷間加工性に優れたチタン合金薄板の製造方法である。
これは、プレス成形工程などでの冷間加工性を確保するためにα粒を微細化させると同時に、析出硬化により引張耐力を適正範囲に上昇させるために、Ti2Cuを最大相とする析出相を微細かつ適正量得ることを狙った条件である。すなわち、480〜625℃はTi2Cuを最大相とする析出相が粒径0.05〜0.5μmの微細なサイズで、かつ、均一に析出しやすい温度範囲であり、この温度域で焼鈍することにより、チタン合金薄板中の平均結晶粒径を12μm未満と微細化することができ、薄板の冷間加工性を高めるとともに、析出強化により所望の引張耐力を得ることができる。
最終焼鈍温度480℃未満ではTi2Cuを最大相とする析出相の効果が十分に発揮される程度の析出量を得るまでに必要な焼鈍時間が長くなり、工業的な生産に適さない。工業的な効率を考慮すると、最終焼鈍温度の下限は、500℃超えが望ましい。一方、最終焼鈍温度が625℃を超えると、Ti2Cuを最大相とする析出相の過度な粗大化が短時間うちに生じてしまい、工業生産上、Ti2Cuを最大相とする析出相のサイズ、ならびに、α結晶粒径を最適に制御することができなくなる。
最終焼鈍時間は、480〜625℃の範囲内の温度によって、最適時間は変化し、高温であるほど、最適時間は短くなるが、30分〜16時間程度が望ましい。
<実施例1>
真空アーク溶解法により表1に示す組成のチタン材を溶解し、これを熱間鍛造してビレットとし、860℃に加熱した後、熱間圧延により3mmの熱延板とした。
この熱延板を酸洗して酸化スケールを除去した後、冷間圧延を行い板厚0.6mmの冷延板とした。それに580℃、5時間、炉冷の真空焼鈍を施した後、引張試験片を採取して引張特性を調べた。また、エリクセン試験(JIS Z 2247)により成形高さを調査して、成形性を評価した。図1に示す円錐台成形を、径20mm、肩半径2mmのポンチと、径50mm、肩半径2mmのダイ金型を用いて、φ100mmの大きさのブランクを高さ20mmまで成形することにより試験を行った。この時、成形材の皺については、成形材の縦壁部分の表面および、肌荒れについては、ポンチが直接当たる面とは板厚を挟んで逆の面およびその外縁部にあたる、肩部の表面の状態を以下に示す方法で調査し、皺および肌荒れの発生を評価した。
平均結晶粒径については、板厚断面の鏡面研磨、2%弗酸水溶液でエッチングした後、光学顕微鏡で組織観察を行い、画像解析装置を用いて平均結晶粒径を求めた。
皺については、内径35mmの平滑な円形の穴の開いた厚さ0.7mmの鋼板ゲージを円錐台成形後の試験片にかぶせて縦壁部に接する状態で、最大で100μm以上の隙間が生じる場合は×、最大で50μm以上100μm以下の隙間が生じる場合は△、隙間が生じないか、生じても50μm未満の場合は〇と評価した。
肌荒れの発生有無については、携帯電話、カメラ等を使用する需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて判断するために、20歳代の男女各3名、30歳代の男女各3名、40歳代の男女各3名の計18名に、携帯電話またはカメラを手に持ってその表面を見ているつもりで、前記円錐台成形時に、ポンチが直接当たる面とは板厚を挟んで逆の面およびその外縁部にあたる肩部の表面を、成形前後でそれぞれ比較観察してもらい、成形後に肌荒れが生じていないと認めるか、または、わずかに肌荒れが生じていることが認められるが、成形前後の美感において類似の範囲内と判断できる場合は〇、成形後に肌荒れが生じていることが明確に判断でき、成形前後で美感が異なると判断できる場合を×、判断が難しい場合は△の表示をしてもらい、18名の〇、×、△の表示の結果から多数決で全体の評価とした。多数決で決しない場合は、発明者1名の美感に基づいて決した。それらの結果も合せて、表1に示す。本発明では、皺、肌荒れともに〇評価となることを目標としている。表1及び後述の表2〜4において、本発明範囲から外れる数値にアンダーラインを付している。
Figure 0005365266
表1において、試験番号1はJIS1種純チタンであり、試験番号2は低O含有の純チタンである。試験番号1は引張耐力およびエリクセン値は比較的高いが、皺および肌荒れが発生している。一方、試験番号2ではエリクセン値が高く、また、加工時に皺は発生していないが、わずかに肌荒れが認められ、1種純チタンに比べて引張耐力が低い。これらの材料では、板厚断面を鏡面研磨した後、2%弗酸水溶液でエッチングして、特性X線エネルギー分散型分析器(EDS)搭載の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、金属組織を観察した場合、Ti2Cuの析出は認められない。
これに対し、本発明(2)に記載した方法で製造された本発明(1)の実施例である試験番号4、5、6、8、9、11、12、15、16、17、18、19、20は、薄膜試料による、特性X線エネルギー分散型分析器(EDS)搭載の透過電子顕微鏡観察の結果、電子線回折像解析およびEDS半定量分析により、粒径0.05〜0.5μmのTi2Cuを最大相とする析出相が認められ、その析出相内のTi2Cuのモル分率は、TiおよびCuの原子濃度から、80〜100%と推定された。Ti2Cuを最大相とする析出相が結晶粒の成長を抑える効果により、板厚断面の鏡面研磨、2%弗酸水溶液でエッチングした光学顕微鏡組織における平均結晶粒径は、12μm未満であった。
この結果、上記本発明例はJIS1種材同等以上の引張耐力を示すとともに、高い全伸びを示した。これらはいずれもエリクセン値が12.0mm以上と高く、冷間加工性は良好であり、かつ、円錐台成形後の表面の皺や肌荒れの発生は目視確認できないか、または、目視確認できても微小で問題とならないレベルであって、それぞれ前記基準で、〇評価であり、優れたプレス成形性を示した。
一方、試験番号1〜3、7、10、13では、円錐台成形後に、皺または肌荒れが発生しており、プレス成形性は不十分であった。これらの材料の板厚断面を鏡面研磨した後、2%弗酸水溶液でエッチングして、光学顕微鏡観察および、特性X線エネルギー分散型分析器(EDS)搭載の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた金属組織観察を行った。
このうち、試験番号1〜3は、Cu添加量が本発明の下限値である0.3%を下回っていた。これらの材料では、焼鈍中の粒成長を抑制するだけの十分な析出相が得られなかったため、部分的に粗粒となり、平均結晶粒径が14.3〜21.0μmと、12μmを超えており、不均一な変形が生じたため肌荒れまたは皺が発生した。また、試験番号2では、耐力(0.2%PS)が160MPa未満と低く、十分な強度が得られない。次に、試験番号7では、Cu添加量が本発明の上限値の1.8%を上回っていたため、Ti2Cu相の析出量およびその平均サイズが大きくなり、粒界のピンニング効果が薄れ、結晶粒径が大きくなって、肌荒れが発生し、エリクセン値も低かった。試験番号10では、一部に1μmを超える粗大なTi2Cuを最大相とし、Feを含有する析出相が生成していた。これは、β安定化元素であるFeの含有量が、本発明の上限である0.05%を越えて添加されたためβ相の量が増え、Cuがそこに集中的に濃縮して粗大な析出相が生成し、これらはαの粒成長を抑制することができないため、局所的に肌荒れや皺が発生したものである。
また、試験番号7、10、13、14では、エリクセン値が低下し12.0mm未満であって、十分な冷間加工性が得られなかった。その理由は、試験番号7は、Cu添加量が本発明の上限値である1.8%を越えて添加されたため、Ti2Cuを最大相とする析出相が多量に析出して、冷間での延性が損なわれたためである。試験番号10では、前述のように、Feの過大添加により、Ti2Cuを最大相とし、Feを含有する粗大な析出相が生成したためである。また、試験番号13では、酸素含有量が本発明の上限である0.06%を超えて添加されたため、Oの固溶強化により強度が上がりすぎ、試験番号14では、不純物量が0.3%を越えて含有していたために延性を損ない、それぞれ、エリクセン値が下がったためである。
以上のように、本発明に規定された元素含有量およびα結晶粒径からなるチタン合金薄板は、プレス成形性などの冷間加工性に優れ、JIS1種相当以上の160MPa以上の耐力を有しているが、本発明に規定された合金元素量ならびに、α結晶粒径の規定を外れると、冷間加工性を含むプレス成形性および強度の全ての特性を満足することはできない。
<実施例2>
表1の試験番号6、11、15の素材を製造する際の中間製品である3mmの熱延板を使用して、酸洗して酸化スケールを除去した後、冷間圧延により厚み0.6mmの冷延板とした。それに表2〜4に示す条件にて真空焼鈍を施した後、引張特性を調べるとともに、エリクセン試験を行い冷間加工性を評価した。これらの評価結果も併せて表2〜4に示す。なお、円錐台成形および、成形後の縦壁部の皺および肌荒れの評価方法は、前記実施例1と同じである。
Figure 0005365266
Figure 0005365266
Figure 0005365266
また、これらの素材の板厚断面を鏡面研磨した後、2%弗酸水溶液でエッチングして、光学顕微鏡観察および、特性X線エネルギー分散型分析器(EDS)搭載の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた金属組織観察を行った。
表2、3、4はそれぞれ、試験番号6、試験番号11、試験番号15に示す組成の冷延焼鈍板における結果である。いずれも本発明(2)に従って製造したものは、高い延性を有し、プレス成形性も実用的に全く問題ないことが分る。特に、最終焼鈍を480〜625℃の温度域で実施した、試験番号21、22、23、26、27、28、31、32、33は、エリクセン値が高いと同時に、肌荒れや皺の発生が認められなかった。また、試験番号20、24、25、29、30、34のいずれも、高い延性とエリクセン値を有していた。しかし、試験番号21、26、31ではエリクセン値が実用上問題のない範囲でやや低かった一方、試験番号25、30、35では、目視確認することがやや困難な程の微細な肌荒れが発生したが、皺は小さく、かつ肌荒れによって美感は損なわれず、いずれも判定は〇であった。
これは、焼鈍温度が500℃以下である試験番号21、26、31では、Ti2Cuを最大相とする析出相の生成により強度がやや上昇するためである。したがって、望ましくは、最終焼鈍温度の下限は500℃超えである。一方、試験番号焼鈍温度が625℃の、試験番号25、30、35では、Ti2Cuを最大相とする析出相生成量が低くなる上、一部は粒径がわずかに粗くなって粒界のピニング効果がやや低くなるからである。この結果から、最終焼鈍温度上限は、625℃であるといえる。
表2〜4に示す試験番号25−2、30−2、35−2の最終焼鈍温度は、いずれも625℃を超えているため、Ti2Cuを最大相とする析出相が適切なサイズで、かつ、均一に析出しなかったと推定され、結晶粒径が12μmを超え、円錐台成形において、縦壁の皺または、肌荒れを発生した。
なお、本発明例の材料で観察された析出相において、EDS分析を行ったものは全て、TiとCuのモル比が1.8:1〜2.2:1の範囲内にあり、かつ、不純物としては、FeまたはOが、それぞれ最大で10モル%以下、Fe、Oおよびその他元素合計で最大20モル%未満、確認されたのみであった。
本発明のチタン合金薄板は、プレス成形性に代表される冷間加工性を要求される用途での携帯電話、カメラ等の電子機器外装、筐体、内装材など、主にプレス加工に供される部品に、特に活用することができる。

Claims (2)

  1. 質量%で0.3〜1.8%のCu、0.01〜0.04%のO、0.05%以下のFe、残部Tiおよび0.3%未満の不純物元素からなり、平均結晶粒径12μm未満であり、Ti 2 Cuを最大相とする粒径0.05〜0.5μmの析出相を含有することを特徴とする、プレス成形性に優れるチタン合金薄板。
  2. 請求項1に記載のチタン合金薄板の製造において、熱延板に、熱延板焼鈍あるいは中間焼鈍を行うことなく、冷延を行い、最終焼鈍を480〜625℃の温度域にて行うことを特徴とする、プレス成形性に優れるチタン合金薄板の製造方法。
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