JP7139884B2 - 連続鋳造方法、及び連続鋳造機 - Google Patents

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本発明は、連続鋳造方法、及び連続鋳造機に関する。
連続鋳造機によって搬送される鋳片を圧下ロールによって圧下し、鋳片の内部に残存する濃化溶鋼を上流側(鋳型側)へ排出することで、鋳片の中心偏析(マクロ偏析)を低減する連続鋳造方法がある(例えば、特許文献1~3)。
特許第5929836号明細書 特開2016-022531号公報 特開2017-087249号公報
上記の連続鋳造方法では、鋳片の中心偏析が低減されるものの、鋳片の中心偏析をより効率的に低減するためには、さらなる改善の余地がある。
本発明は、上記の事実を考慮し、鋳片の中心偏析を低減することを目的とする。
第1態様に係る連続鋳造方法は、連続鋳造機によって搬送される鋳片を、該鋳片の搬送方向に隣り合う一対の圧下ロールによって圧下する連続鋳造方法であって、前記一対の圧下ロールのロールピッチを100mm以上、かつ、400mm以下とし、中心固相率が0.2以下の前記鋳片を前記一対の該圧下ロールによって10mm以上それぞれ圧下する。
第1態様に係る連続鋳造方法によれば、鋳片の搬送方向に隣り合う一対の圧下ロールによって、中心固相率が0.2以下の鋳片をそれぞれ10mm以上圧下する。これにより、鋳片の内部に残存する濃化溶鋼が鋳片の搬送方向の上流側へ排出される。この結果、鋳片の中心偏析が低減される。なお、濃化溶鋼とは、鋳片の凝固過程において、所定成分が濃化した溶鋼であり、中心偏析の原因となる。
ここで、中心固相率が0.2以下の鋳片を圧下ロールによって圧下した場合、鋳片に発生する圧縮応力は、次のようになる。すなわち、圧下ロールの回転中心に対して鋳片の搬送方向の上流側には、圧縮応力のピーク(以下、「上流側圧縮応力ピーク」という)が発生する。一方、圧下ロールの回転中心に対して鋳片の搬送方向の下流側には、圧縮応力のピーク(以下、「下流側圧縮応力ピーク」という)が発生する。
そこで、本態様は、一対の圧下ロールのうち、上流側の圧下ロールの下流側に発生する下流側圧縮応力ピークの周辺部と、下流側の圧下ロールの上流側に発生する上流側圧縮応力ピークの周辺部とが重なるように、一対の圧下ロールのロールピッチを100mm以上、かつ、400mm以下にする。
これにより、下流側圧縮応力ピークの周辺部と上流側圧縮応力ピークの周辺部とが重なる部分において、鋳片に発生する圧縮応力が大きくなる。そのため、本態様では、一対の圧下ロールによって、鋳片の内部に残存する濃化溶鋼が鋳片の搬送方向の上流側へ効率的に排出される。したがって、鋳片の中心偏析をより効率的に低減することができる。
第2態様に係る連続鋳造方法は、第1態様に係る連続鋳造方法において、前記鋳片に対する前記一対の圧下ロールの圧下量の合計値は、前記一対の圧下ロールのうち前記鋳片の搬送方向の上流側に配置される圧下ロールの位置で、かつ、前記鋳片の幅方向の中央部において、前記鋳片の厚み方向に互いに離間するとともに固相率が0.8となる前記鋳片の一対の部位の間隔以上とされる。
ここで、鋳片は、当該鋳片の厚み方向の両端(表面)から中心に向かって徐々に凝固される。そのため、鋳片の凝固過程では、鋳片の厚み方向の両端から中心に向かって、鋳片20の固相率が徐々に小さくなる。この鋳片の凝固過程において、鋳片の内部には、鋳片の厚み方向の互いに離間するとともに固相率が0.8となる一対の部位が形成される。
第2態様に係る連続鋳造方法では、鋳片に対する一対の圧下ロールの圧下量の合計値が、一対の圧下ロールのうち鋳片の搬送方向の上流側に配置される圧下ロールの位置で、かつ、鋳片の幅方向の中央部において、鋳片の厚み方向に互いに離間するとともに固相率が0.8となる鋳片の一対の部位の間隔以上とされる。
これにより、一対の圧下ロールによって、鋳片の一対の部位間に残存する濃化溶鋼が鋳片の搬送方向の上流側へより効率的に排出される。したがって、鋳片の中心偏析がより効率的に低減される。また、一対の圧下ロールによって、鋳片の一対の部位を互いに圧着させることにより、鋳片の内部割れが抑制される。
第3態様に係る連続鋳造機は、鋳片を搬送する搬送装置と、前記搬送装置による前記鋳片の搬送方向に隣り合って配置され、中心固相率が0.2以下の前記鋳片をそれぞれ10mm以上圧下する一対の圧下ロールと、を備え、前記一対の圧下ロールのロールピッチが、100mm以上、かつ、400mm以下とされる。
第3態様に係る連続鋳造機によれば、鋳片の搬送方向に隣り合う一対の圧下ロールによって、中心固相率が0.2以下の鋳片をそれぞれ10mm以上圧下する。これにより、鋳片の内部に残存する濃化溶鋼が鋳片の搬送方向の上流側へ排出される。この結果、鋳片の中心偏析が低減される。
また、本態様は、一対の圧下ロールのうち、上流側の圧下ロールの下流側に発生する下流側圧縮応力ピークの周辺部と、下流側の圧下ロールの上流側に発生する上流側圧縮応力ピークの周辺部とが重なるように、一対の圧下ロールのロールピッチを100mm以上、かつ、400mm以下にする。
これにより、下流側圧縮応力ピークの周辺部と上流側圧縮応力ピークの周辺部とが重なる部分において、鋳片に発生する圧縮応力が大きくなる。そのため、本態様では、一対の圧下ロールによって、鋳片の内部に残存する濃化溶鋼が鋳片の搬送方向の上流側へ効率的に排出される。したがって、鋳片の中心偏析をより効率的に低減することができる。
第4態様に係る連続鋳造機は、第3態様に係る連続鋳造機において、前記鋳片に対する前記一対の圧下ロールの圧下量の合計値は、前記一対の圧下ロールのうち前記鋳片の搬送方向の上流側に配置される圧下ロールの位置で、かつ、前記鋳片の幅方向の中央部において、前記鋳片の厚み方向に互いに離間するとともに固相率が0.8となる前記鋳片の一対の部位の間隔以上とされる。
ここで、鋳片は、当該鋳片の厚み方向の両端(表面)から中心に向かって徐々に凝固される。そのため、鋳片の凝固過程では、鋳片の厚み方向の両端から中心に向かって、鋳片20の固相率が徐々に小さくなる。この鋳片の凝固過程において、鋳片の内部には、鋳片の厚み方向の互いに離間するとともに固相率が0.8となる一対の部位が形成される。
第4態様に係る連続鋳造方法では、鋳片に対する一対の圧下ロールの圧下量の合計値が、一対の圧下ロールのうち鋳片の搬送方向の上流側に配置される圧下ロールの位置で、かつ、鋳片の幅方向の中央部において、鋳片の厚み方向に互いに離間するとともに固相率が0.8となる鋳片の一対の部位の間隔以上とされる。
これにより、一対の圧下ロールによって、鋳片の一対の部位間に残存する濃化溶鋼が鋳片の搬送方向の上流側へより効率的に排出される。したがって、鋳片の中心偏析がより効率的に低減される。また、一対の圧下ロールによって、鋳片の一対の部位を互いに圧着させることにより、鋳片の内部割れが抑制される。
以上説明したように、本発明によれば、鋳片の中心偏析を低減することができる。
図1は、一実施形態に係る連続鋳造機を鋳片の幅方向から見た側面図である。 図2は、圧下装置を示す図1の一部拡大図である。 図3は、図1に示される鋳片の幅方向の中央部を示す横断面図である。 図4は、鋳片の搬送方向において上流側圧下ロールからの距離と、鋳片の発生する平均圧縮応力との関係を示すグラフである。 図5は、鋳片に発生する平均圧縮応力の最大値とロールピッチとの関係を示すグラフである。 図6は、鋳片の搬送方向において上流側圧下ロールからの距離と、鋳片に発生する平均圧縮応力との関係を示すグラフである。 図7は、連続鋳造試験の試験条件及び評価結果を示す表である。
以下、一実施形態に係る連続鋳造機及び連続鋳造方法について説明する。
(連続鋳造機)
先ず、連続鋳造機の構成について説明する。
図1には、本実施形態に係る連続鋳造機10が示されている。この連続鋳造機10は、タンディッシュ12と、鋳型16と、搬送装置30と、圧下装置40とを備えている。
(タンディッシュ)
タンディッシュ12は、溶鋼Wを一時的に貯留する容器とされている。このタンディッシュ12には、図示しない取鍋から溶鋼Wが注がれる。また、タンディッシュ12の底部には、溶鋼Wを排出する浸漬ノズル14が設けられている。このタンディッシュ12の下方には、鋳型16が配置されている。
(鋳型)
鋳型16は、例えば、水冷式の銅製鋳型とされる。この鋳型16は、タンディッシュ12の浸漬ノズル14から注がれた溶鋼Wを冷却し、溶鋼Wの表層を凝固させる。これにより、所定形状の鋳片20が成形される。
鋳型16は、軸方向の両端が開口された筒状に形成されている。また、鋳型16は、軸方向を上下方向として配置されている。この鋳型16の上端には、注入口16Uが形成されている。注入口16Uには、タンディッシュ12の浸漬ノズル14が挿入されている。この浸漬ノズル14から鋳型16内に溶鋼Wが注がれる。
なお、浸漬ノズル14には、溶鋼Wの排出量を調整する調整弁等の調整機構が設けられている。この調整機構によって、鋳型16内の溶鋼Wの液面(以下、「メニスカスM」という)が所定高さになるように、浸漬ノズル14から注入口16Uに排出する溶鋼Wの排出量が調整される。
鋳型16に注がれた溶鋼Wは、鋳型16によって冷却され、その表層から徐々に凝固される。これにより、表層が凝固され、内部に溶鋼Wが残存する鋳片20が形成される。また、鋳型16の断面形状は、矩形状とされている。これにより、鋳片20の断面形状が、矩形状に成形される。なお、以下では、溶鋼Wが凝固した鋳片20の表層部を凝固部(凝固シェル)20Aとし、鋳片20の内部に残存した凝固していない溶鋼Wを未凝固部20Bとする。
鋳型16の下端には、排出口16Lが形成されている。この排出口16Lから、鋳型16で成形された鋳片20が排出される。また、鋳型16の下側には、搬送装置30が配置されている。
(搬送装置)
搬送装置30は、鋳型16から排出された鋳片20を、冷却しながら所定方向(矢印H方向)へ搬送する。なお、以下では、矢印H方向を、搬送装置30の搬送方向(鋳造方向)とする。また、以下の説明における上流側及び下流側は、鋳片20の搬送方向の上流側及び下流側をそれぞれ意味する。
搬送装置30は、複数対のサポートロール32を有している。複数対のサポートロール32は、鋳片20の厚み方向(矢印e方向)の両側に、鋳片20の搬送方向に間隔を空けて配列されている。また、各サポートロール32の軸方向の両端部は、鋳片20の幅方向(図3の矢印k方向)の両側で、図示しない軸受け部に回転可能に支持されている。これらのサポートロール32によって、鋳型16の排出口16Lから後述する圧下装置40へ向けて緩やかに湾曲した後、略水平方向に延びる搬送路34が形成されている。
複数対のサポートロール32は、鋳片20を厚み方向の両側から把持しながら、当該鋳片20を搬送方向に搬送する。これにより、鋳片20が厚み方向に膨らむバルジングが抑制される。なお、複数のサポートロール32の一部は、回転駆動する駆動ロールとされている。この駆動ロールによって、鋳片20の搬送速度(鋳造速度)が調整される。
搬送装置30は、鋳片20を冷却する図示しない複数の冷却器(二次冷却器)を有している。複数の冷却器は、例えば、冷却水を噴射するスプレーノズルを有する。これらの冷却器は、鋳片20の搬送方向に間隔を空けて配列されており、鋳片20に対して冷却水を噴射する。これにより、鋳片20が冷却され、鋳片20の未凝固部20Bが徐々に凝固される。
また、搬送装置30による鋳片20の搬送速度及び冷却速度は、後述する一対の上流側圧下ロール42によって鋳片20が圧下される際の鋳片20の中心温度が、所定値(例えば、1350℃以上)になるように、図示しない制御部によって制御(調整)される。
なお、ここでいう鋳片20の中心温度とは、鋳片20の厚み方向の中心の温度である。また、一対の上流側圧下ロール42によって鋳片20が圧下される際の鋳片20の中心温度は、例えば、鋳片20の搬送速度を早くすると高くなり、鋳片20の搬送速度を遅くすると低くなる。また、一対の上流側圧下ロール42によって鋳片20が圧下される際の鋳片20の中心温度は、例えば、鋳片20の冷却速度を早くすると低くなり、鋳片20の冷却速度を遅くすると高くなる。
また、鋳片20の搬送速度は、例えば、前述した駆動ロールの回転速度を早くすると早くなり、駆動ロールの回転速度を遅くすると遅くなる。また、鋳片20の冷却速度は、例えば、冷却器から鋳片20に噴射する冷却水の噴射量を多くすると早くなり、冷却器から鋳片20に噴射する冷却水の噴射量を少なくすると遅くなる。また、鋳片20の冷却速度は、例えば、冷却器から鋳片20に噴射する冷却水の温度を低くすると早くなり、冷却器から鋳片20に噴射する冷却水の温度を高くすると遅くなる。
なお、搬送路34には、鋳片20の未凝固部20Bを電磁的に撹拌する電磁撹拌装置が設けられても良い。
(圧下装置)
圧下装置40は、略水平方向に延びる搬送路34の下流側に配置されている。また、圧下装置40は、鋳片20を厚み方向に圧縮することにより、鋳片20の中心偏析及びポロシティが低減されるとともに、鋳片20の内部割れが抑制される。この圧下装置40は、一対の上流側圧下ロール42と、一対の下流側圧下ロール44とを有している。
図2に示されるように、一対の上流側圧下ロール42は、鋳片20を厚み方向の両側から把持しながら、当該鋳片20を搬送方向に搬送する。これと同様に、一対の下流側圧下ロール44は、鋳片20を厚み方向の両側から把持しながら、当該鋳片20を搬送方向に搬送する。また、一対の下流側圧下ロール44は、一対の上流側圧下ロール42に対し、鋳片20の搬送方向の下流側に配置されている。この一対の上流側圧下ロール42及び一対の下流側圧下ロール44は、鋳片20の搬送路34の一部を形成している。
なお、本実施形態では、一対の上流側圧下ロール42と一対の下流側圧下ロール44とが同様の構成とされている。そのため、以下では、一対の上流側圧下ロール42の構成について説明し、一対の下流側圧下ロール44の構成の説明は適宜省略する。また、鋳片20の上側に配置された上流側圧下ロール42及び下流側圧下ロール44は、鋳片20の搬送方向に隣り合う一対の圧下ロールの一例である。
一対の上流側圧下ロール42は、鋳片20の厚み方向の両側に配置されている。また、一対の上流側圧下ロール42は、円柱状に形成されている。さらに、一対の上流側圧下ロール42は、軸方向(長手方向)を鋳片20の幅方向として配置されている。この一対の上流側圧下ロール42の軸方向の両端部は、鋳片20の幅方向の両側において、図示しない軸受け部によって支持されている。これにより、一対の上流側圧下ロール42が、回転中心(回転軸)C1を中心として回転可能とされている。
また、鋳片20の上側に配置された上流側圧下ロール42の軸方向の両端部を支持する軸受け部は、図示しない油圧シリンダ等の押圧装置によって、鋳片20の厚み方向の中心側(下側)へ押圧される。これにより、上流側圧下ロール42によって、鋳片20が圧下される。
一対の上流側圧下ロール42は、鋳片20の搬送路34のうち、鋳片20の中心固相率Rが0.2以下となる位置に配置される(0≦R≦0.2)。若しくは、一対の上流側圧下ロール42によって圧下される鋳片20の中心固相率Rが0.2以下となるように、搬送装置30による鋳片20の搬送速度及び冷却速度が、制御部によって制御(調整)される。
これにより、一対の上流側圧下ロール42によって中心固相率Rが0.2以下の鋳片20を圧下したときに、鋳片20の内部に残存する濃化溶鋼が上流側(鋳型側)へ排出され易くなる。この結果、鋳片20の厚み方向の中心部に負偏析帯が形成され易くなる。一方、一対の上流側圧下ロール42によって圧下する鋳片20の中心固相率Rが0.2を超えると、鋳片20の内部に残存する濃化溶鋼が上流側へ排出され難くなる。なお、濃化溶鋼とは、鋳片20の凝固過程において、所定成分が濃化した溶鋼であり、中心偏析の原因となる。
鋳片20は、前述したように搬送装置30の複数の冷却器によって、冷却されながら搬送される。これにより、鋳片20の未凝固部20Bは、下流側へ向かうに従って徐々に凝固される。そのため、鋳片20の中心固相率Rは、下流側へ向かうに従って高くなる。
ここで、鋳片20の「中心固相率R」とは、鋳片20の幅方向(矢印k方向)及び厚み方向(矢印e方向)の中心部の「固相率」を意味する。また、「固相率」とは、鋳片20の固・液相共存領域において、固相の占める分率を意味する。この固相率は、固相率を求める鋳片の所定部の温度をTとし、鋳片を構成する鋼種の液相線温度をTLとし、当該鋼種の固相線温度をTSとすると、固相率=(TL-T)/(TL-TS)として定義される。
なお、温度Tの温度範囲は、TS≦T≦TLである。この温度Tに応じて、固相率は変動する。また、温度Tは、例えば、鋳片20の連続鋳造時の抜熱条件にて、差分法伝熱計算プログラムによって算出される。
さらに、鋳片20を構成する鋼種の液相線温度TL及び固相線温度TSは、周知の熱力学データから得られる。より具体的には、川和の式(「鉄鋼の凝固:日本学術振興会製鋼第19委員会,2015,付-13」参照)という実験回帰式から液相線温度TL(固相率0)及び固相線温度TS(固相率1.0)が得られる。そして、例えば、得られた液相線温度TLと固相線温度TSとの間の固相率を線形と仮定することで、鋳片20の中心固相率Rが求められる。
また、鋳片20は、前述したように搬送装置30の複数の冷却器によって、冷却されながら搬送される。これにより、鋳片20は、当該鋳片20の厚み方向の両端(表面)から中心に向かって徐々に凝固される。そのため、鋳片20の凝固過程では、鋳片20の厚み方向の両端から中心に向かって、鋳片20の固相率が徐々に小さくなる。この鋳片20の凝固過程において、鋳片20の内部には、横断面視にて、鋳片20の厚み方向(矢印e方向)に互いに離間するとともに固相率が0.8となる一対の固相率線20Xが形成される。
一対の固相率線20Xは、鋳片20の幅方向(矢印k方向)の中央部20Cでは、表面と略平行する直線となり、鋳片20の厚み方向に互いに対向する。このように一対の固相率線20Xを、中央部20Cに有する鋳片20が、一対の上流側圧下ロール42及び一対の下流側圧下ロール44によって圧下される。
図2に示されるように、一対の上流側圧下ロール42は、前述した油圧シリンダ等の押圧装置の押圧力を制御することにより、鋳片20を厚み方向に10mm以上圧下可能とされている。これと同様に、一対の下流側圧下ロール44は、鋳片20を厚み方向に10mm以上圧下可能とされている。
また、鋳片20に対する一対の上流側圧下ロール42の圧下量と、鋳片20に対する一対の下流側圧下ロール44の圧下量の合計値は、一対の上流側圧下ロール42の位置で、かつ、鋳片20の幅方向の中央部20Cにおいて、鋳片20の厚み方向に互いに離間するとともに固相率が0.8となる鋳片20の一対の部位の間隔(距離)D以上に設定される。換言すると、上記合計値は、一対の上流側圧下ロール42の位置における鋳片20の横断面において、一対の固相率線20Xの中心点20X1の間隔Dとされる。これにより、一対の上流側圧下ロール42及び一対の下流側圧下ロール44によって、一対の固相率線20Xの間に残存する濃化溶鋼が上流側へ排出されるとともに、一対の固相率線20Xが互いに圧着され易くなる。
なお、ここでいう一対の上流側圧下ロール42の位置とは、一対の上流側圧下ロール42によって鋳片20が圧下される直前の位置を意味する。また、一対の固相率線20Xの中心点20X1とは、一対の固相率線20Xにおける鋳片20の幅方向の中心の点を意味する。さらに、一対の固相率線20Xの中心点20X1は、鋳片20の幅方向の中央部20Cにおいて、鋳片20の厚み方向に互いに離間するとともに固相率が0.8となる鋳片20の一対の部位の一例である。
また、一対の上流側圧下ロール42及び一対の上流側圧下ロール42の圧下量S1,S2は、押圧装置の最大出力等の観点から、例えば、30mm以下が好ましい。また、ここでいう一対の上流側圧下ロール42及び一対の上流側圧下ロール42の圧下量S1,S2とは、鋳片20の上側に配置された一対の上流側圧下ロール42及び一対の上流側圧下ロール42によって鋳片20を下方へ押し下げる量を意味する。
次に、一対の上流側圧下ロール42と一対の下流側圧下ロール44とのロールピッチPは、後述する解析結果に基づいて、100mm以上、かつ、400mm以下に設定される。
なお、ここでいうロールピッチPとは、鋳片20の搬送方向に隣り合う上流側圧下ロール42及び下流側圧下ロール44を上方から見て、上流側圧下ロール42及び下流側圧下ロール44の回転中心C1,C2間の距離である。また、上流側圧下ロール42及び下流側圧下ロール44の直径D1,D2は、隣り合う上流側圧下ロール42及び下流側圧下ロール44が互いに干渉しないように適宜設定される。
(解析)
ここで、圧下装置40によって鋳片20に発生する圧縮応力の解析について説明する。
本解析では、ロールピッチPをパラメータとし、一対の上流側圧下ロール42及び一対の下流側圧下ロール44によって鋳片20をそれぞれ圧下したときに、鋳片20に発生する圧縮応力を有限要素法により求めた。なお、解析する圧縮応力は、鋳片20の厚み方向、幅方向、及び搬送方向に発生する圧縮応力の平均値(以下、「平均圧縮応力」という)とした。
(解析モデル)
鋳片20の解析モデル(以下、単に「鋳片20」という)の幅は、2300mmとした。また、鋳片20の厚みT(図2参照)は、300mmとした。さらに、鋳片20の中心固相率Rは、0.2とした。また、鋳片20の温度分布は、差分法伝熱計算プログラムによって計算した。
鋳片20に対する一対の上流側圧下ロール42及び一対の下流側圧下ロール44の圧下量S1,S2は、それぞれ10mmとした。また、一対の上流側圧下ロール42及び一対の下流側圧下ロール44の直径D1,D2は、ロールピッチPが500mm未満の場合、ロールピッチPから20mmを減じた値(=P-20mm)とした。一方、ロールピッチPが500mm以上の場合は、一対の上流側圧下ロール42及び一対の下流側圧下ロール44の直径D1,D2を500mmとした。
なお、本解析では、一対の上流側圧下ロール42のみで鋳片20を圧下したときに、鋳片20に発生する平均圧縮応力も有限要素法により求めた。この場合の一対の上流側圧下ロール42の圧下量S1は、一対の上流側圧下ロール42及び一対の下流側圧下ロール44の両方で鋳片20を圧下する場合の圧下量S1,S2の合計値である20mm(=10mm+10mm)とした。さらに、一対の上流側圧下ロール42の直径D1は、500mmとした。
なお、後述する図5に示されるグラフでは、便宜上、一対の上流側圧下ロール42のみで鋳片20を圧下した場合のロールピッチPを0(ゼロ)とした。
(解析結果)
図4には、一対の上流側圧下ロール42及び一対の下流側圧下ロール44によって鋳片20を圧下した場合に、鋳片20に発生する平均圧縮応力の解析結果が示されている。
なお、図4に示されるグラフの横軸は、鋳片20の搬送方向において、上流側圧下ロール42の回転中心C1からの距離である。また、図4に示されるグラフの縦軸は、鋳片20に発生する平均圧縮応力である。さらに、図4に示される解析結果では、ロールピッチPが400mmとされている。
図4に示されるように、鋳片20に発生する平均圧縮応力は、一対の上流側圧下ロール42と一対の下流側圧下ロール44との間で最大値Qとなる。
また、図5には、前述した鋳片20に発生する平均圧縮応力の最大値とロールピッチPとの関係が示されている。なお、図5に示されるグラフの縦軸(鋳片の平均圧縮応力の最大値)は、例えば、ロールピッチPが400mmの場合、図4に示されるグラフ中の最大値Qである。
図5に示されるように、鋳片20の平均圧縮応力の最大値は、ロールピッチPが100mm以上で、かつ、400mm以下の範囲で、それ以外の範囲よりも大きくなった。したがって、ロールピッチPは、100mm以上、かつ、400mm以下の範囲に設定することが好ましい。
(補足)
なお、解析結果について補足すると、図6には、一対の上流側圧下ロール42のみで鋳片20を圧下したときに、鋳片20に発生する平均圧縮応力の解析結果が示されている。
図6に示されるように、鋳片20には、上流側圧下ロール42の回転中心C1に対し、当該鋳片20の搬送方向の上流側に平均圧縮応力のピーク(以下、「上流側圧縮応力ピーク」という)V1が発生する。また、鋳片20には、上流側圧下ロール42の回転中心C1に対し、当該鋳片20の搬送方向の下流側に平均圧縮応力のピーク(以下、「下流側圧縮応力ピーク」という)V2が発生する。これは、鋳片20の表層部と中心部との温度差により、当該鋳片20の表層部と中心部との変形抵抗差が大きくなったためと考えられる。
なお、一般的な厚板の圧延加工において、厚板に発生する平均圧縮応力のピークは、圧延ロールの回転中心付近に発生する。
また、図示を省略するが、一対の下流側圧下ロール44によって鋳片20を圧下すると、鋳片20には、下流側圧下ロール44の回転中心C2に対する上流側に平均圧縮応力のピーク(以下、「上流側圧縮応力ピーク」という)が発生する。また、鋳片20には、下流側圧下ロール44の回転中心C2に対する下流側に平均圧縮応力のピーク(以下、「下流側圧縮応力ピーク」という)が発生する。
本解析では、ロールピッチPが100mm以上、かつ、400mm以下の範囲で、一対の上流側圧下ロール42の圧下力による平均圧縮応力の下流側圧縮応力ピークV2の周辺部と、一対の下流側圧下ロール44の圧下力による平均圧縮応力の上流側圧縮応力ピークの周辺部とが重なり、鋳片20に発生する平均圧縮応力が大きくなったものと考えられる。
なお、ロールピッチPが100mm未満の場合であっても、一対の上流側圧下ロール42の圧下力による平均圧縮応力の下流側圧縮応力ピークV2の周辺部と、一対の下流側圧下ロール44による平均圧縮応力の上流側圧縮応力ピークの周辺部とが重なることが想定される。
しかしながら、ロールピッチPが100mm未満の場合、隣り合う上流側圧下ロール42と下流側圧下ロール44との干渉を避けるために、これらの上流側圧下ロール42及び下流側圧下ロール44の直径D1,D2を小さくする必要がある。この場合、上流側圧下ロール42及び下流側圧下ロール44が湾曲し易くなるため、鋳片20を十分に圧下することが困難になる可能性がある。したがって、ロールピッチPは、前述したように、100mm以上、かつ、400mm以下の範囲に設定することが好ましい。
(作用)
次に、本実施形態に係る連続鋳造方法(鋳片製造方法)を説明しつつ、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態に係る連続鋳造方法では、鋳片20の搬送方向(矢印H方向)に隣り合う上流側圧下ロール42及び下流側圧下ロール44によって、中心固相率Rが0.2以下の鋳片20をそれぞれ10mm以上圧下する。これにより、鋳片20の内部に残存する濃化溶鋼が上流側へ排出される。したがって、鋳片20の中心偏析が低減される。
また、鋳片20の搬送方向に隣り合う上流側圧下ロール42と下流側圧下ロール44とのロールピッチPを100mm以上、かつ、400mm以下にする。
これにより、例えば、図4に示されるように、一対の上流側圧下ロール42と一対の下流側圧下ロール44との間で、一対の上流側圧下ロール42の圧下力による平均圧縮応力の下流側圧縮応力ピークV2の周辺部と、一対の下流側圧下ロール44による平均圧縮応力の上流側圧縮応力ピークの周辺部とが重なり、鋳片20に発生する平均圧縮応力が大きくなる。この結果、鋳片20に発生する平均圧縮応力は、一対の上流側圧下ロール42と一対の下流側圧下ロール44との間で最大値Qとなる。
さらに、鋳片20に対する一対の上流側圧下ロール42及び一対の下流側圧下ロール44の圧下量の合計値が、一対の上流側圧下ロール42の位置において、固相率が0.8となる鋳片20の一対の固相率線20Xの中心点20X1の間隔D以上とされている。これにより、一対の上流側圧下ロール42及び一対の下流側圧下ロール44によって、一対の固相率線20Xの間に残存する濃化溶鋼が上流側へより効率的に排出される。
したがって、鋳片20の中心偏析をより効率的に低減することができる。また、一対の上流側圧下ロール42及び一対の下流側圧下ロール44によって、一対の固相率線20Xを互いに圧着させることにより、鋳片20の内部割れが抑制される。
このように本実施形態では、隣り合う上流側圧下ロール42及び下流側圧下ロール44の圧下力を大きくせずに、鋳片20に発生する平均圧縮応力を大きくすることができる。したがって、上流側圧下ロール42及び下流側圧下ロール44の圧下力を大きくせずに、鋳片20の中心偏析を低減することができるとともに、鋳片20の内部割れを抑制することができる。さらに、上流側圧下ロール42及び下流側圧下ロール44を鋳片20に押圧する押圧装置の大型化を抑制することができる。
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態では、鋳片20に対する一対の上流側圧下ロール42及び一対の下流側圧下ロール44の圧下量の合計値が、一対の上流側圧下ロール42の位置において、一対の固相率線20Xの中心点20X1の間隔D以上とされている。しかしながら、上記の合計値は、一対の上流側圧下ロール42の位置において、一対の固相率線20Xの中心点20X1の間隔D未満とされても良い。
また、一対の上流側圧下ロール42の上流側には、一対の上流側圧下ロール42によって上流側へ排出された鋳片20内の濃化溶鋼を電磁的に撹拌する電磁撹拌装置を設けても良い。
また、上記実施形態では、上流側圧下ロール42の直径D1と下流側圧下ロール44の直径D2とが同じとされている。しかしながら、上流側圧下ロール42の直径D1と下流側圧下ロール44の直径D2とは、異なっていても良い。
また、上記実施形態では、上流側圧下ロール42の圧下量S1と下流側圧下ロール44の圧下量S2とが同じとされている。しかしながら、上流側圧下ロール42の圧下量S1と下流側圧下ロール44の圧下量S2とは、異なっていても良い。
(連続鋳造試験)
次に、連続鋳造試験について説明する。
本連続鋳造試験では、図1に示される連続鋳造機10によって実施例1~6に係る複数の鋳片を連続鋳造し、各鋳片のMn偏析度を求めるとともに、内部割れの有無を確認した。また、比較例1~5に係る複数の鋳片を連続鋳造し、各鋳片内のMn偏析度を求めるとともに、内部割れの有無を確認した。
(溶鋼)
溶鋼の組成は、質量%で、C:0.05~0.15%、Si:0.1~0.4%、Mn:0.8~1.5%、P:0.02%以下、S:0.008%以下、及び残部にFeと不純物からなる組成とした。
(鋳型)
次に、鋳型16には、水冷式の銅製鋳型を用いた。また、鋳型16の各種寸法を下記表1に示す。
Figure 0007139884000001
(搬送装置)
次に、搬送装置30による鋳片の鋳造速度は、0.7m/minとした。また、搬送装置30の冷却器(二次冷却器)の比水量は、0.5~0.7L/kg-steelとした。これにより、一対の上流側圧下ロール42及び一対の下流側圧下ロール44によって圧下される鋳片の中心固相率Rを0.2とした。
ただし、後述する実施例4,6では、圧下装置40によって圧下される鋳片の中心固相率Rが0.1になるように、搬送装置30による鋳片の搬送速度等を適宜調整した。これと同様に、後述する実施例5では、圧下装置40によって圧下される鋳片の中心固相率Rが0.0になるように、搬送装置30による鋳片の搬送速度等を適宜調整した。さらに、後述する比較例5では、圧下装置40によって圧下される鋳片の中心固相率Rが0.3になるように、搬送装置30による鋳片の搬送速度等を適宜調整した。なお、鋳片の中心温度及び中心固相率Rは、鋳片の厚みE及び幅の二次元の凝固解析により算出した。
(圧下装置)
一対の上流側圧下ロール42は、鋳型16内のメニスカスMから、鋳片の搬送方向に沿って20m下流側に配置した。さらに、一対の上流側圧下ロール42に対する鋳片の搬送方向の下流側に、一対の下流側圧下ロール44を配置した。そして、鋳片の上側に配置された上流側圧下ロール42及び下流側圧下ロール44を図示しない油圧シリンダによって押圧することにより、これらの上流側圧下ロール42及び下流側圧下ロール44によって鋳片をそれぞれ圧下した。なお、上流側圧下ロール42及び下流側圧下ロール44の最大圧下力(最大出力)は、400tonF(3.92MN)である。
図7に示されるように、実施例1~6及び比較例1~5に係る鋳片では、圧下装置40(上流側圧下ロール42及び下流側圧下ロール44)のロールピッチP、直径D1,D2、圧下量S1,S2、及び鋳片の中心固相率Rが適宜変更されている。また、比較例1では、下流側圧下ロール44では鋳片を圧下せず、上流側圧下ロール42のみで鋳片を圧下した。
(鋳片の評価方法)
本連続鋳造試験では、実施例1~6及び比較例1~5に係る鋳片の中心偏析、及び内部割れを評価した。
中心偏析の評価では、実施例1~6及び比較例1~5に係る鋳片のMn偏析度を評価した。具体的には、実施例1~6及び比較例1~5に係る鋳片の厚み方向及び幅方向の中心から、鋳片の鋳造方向(搬送方向)に20mm、かつ、鋳片の厚み方向に50mmの領域を含むサンプルを切り出した。
次に、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)によって、各サンプルのMn濃度を面分析した。また、各サンプルにおいて、Mn濃度が最も高い位置を中心に搬送方向に2mm幅の領域のMn濃度の平均値を算出し、この平均値を最大Mn濃度(Cmax)とした。そして、最大Mn濃度(Cmax)を鋳片のバルク組成のMn濃度(C0)で除した値をMn偏析度(=Cmax/C0)とした。なお、バルク組成のMn濃度は、鋳片から分析用サンプルを切り出し、化学分析により求めた。
本評価では、Mn偏析度が1.2を超えた場合を不合格とし、Mn偏析度が1.2以下の場合を合格とした。Mn偏析度が1.2を超えると、鋳片の機械的特性が低下するためである。
次に、鋳片の内部割れの評価では、実施例1~6及び比較例1~5に係る鋳片の横断面から切り出したサンプルを研磨した後、腐食液にてエッチングし、目視により内部割れの有無を確認した。そして、内部割れがある場合を不合格(×)とし、内部割れがない場合を合格(○)とした。
(評価結果)
図7には、実施例1~6及び比較例1~5に係る鋳片の評価結果が示されている。なお、図7における圧下装置(上流側圧下ロール及び下流側圧下ロール)の圧下量S1,S2の実測値は、上流側圧下ロール42及び下流側圧下ロール44にそれぞれ設置した位置センサによって測定した。
(実施例)
実施例1~6では、Mn偏析度が何れも基準値である1.2以下となった。その理由は、実施例1~6では、上流側圧下ロール42及び下流側圧下ロール44によって圧下される鋳片の中心固相率Rが0.2以下とされている。これにより、鋳片の内部に残存する濃化溶鋼が上流側へ排出され易くなり、鋳片に負偏析帯が形成されたためと考えられる。
さらに、実施例1~6では、上流側圧下ロール42及び下流側圧下ロール44の圧下量S1,S2がそれぞれ10mm以上に設定され、さらに、ロールピッチPを100mm以上、かつ、400mm以下(100≦P≦400)の範囲に設定されている。これにより、一対の上流側圧下ロール42の下流側に発生する下流側圧縮応力ピークの周辺部と、一対の下流側圧下ロール44の上流側に発生する上流側圧縮応力ピークの周辺部とが重なり、鋳片に発生する圧縮応力が大きくなったためと考えられる。
次に、実施例1~5では、内部割れが確認されなかった。その理由は、実施例1~5では、上流側圧下ロール42及び下流側圧下ロール44の圧下量の合計実測値が、上流側圧下ロール42の位置における一対の固相率線20Xの中心点20X1の間隔D以上に設定されている。これにより、一対の固相率線20Xが互いに圧着されたためと考えられる。
一方、実施例6では、内部割れが確認された。その理由は、実施例6では、一対の上流側圧下ロール42及び一対の下流側圧下ロール44の圧下量の合計実測値が、上流側圧下ロール42の位置における一対の固相率線20Xの中心点20X1の間隔Dよりも小さくなっている。これにより、一対の固相率線20Xが互いに圧着されなかったためと考えられる。
以上の評価結果から、実施例1~6に係る鋳片は、中心偏析が低減されることが確認された。また、実施例1~5では、さらに鋳片の内部割れが抑制されることが確認された。
(比較例)
比較例1~3では、鋳片の内部割れは確認されなかったが、Mn偏析度が基準値である1.2を超える結果となった。その理由は、比較例1では、一対の上流側圧下ロール42のみで鋳片を圧下したため、実施例1~6よりも鋳片に発生する圧縮応力が小さくなったためと考えられる。
また、比較例2及び比較例3では、ロールピッチPが500mm以上(500mmと700mm)に設定されている。そのため、一対の上流側圧下ロール42の下流側の鋳片に発生する下流側圧縮応力ピークの周辺部と、一対の下流側圧下ロール44の上流側の鋳片に発生する上流側圧縮応力ピークの周辺部とが重ならず、実施例1~6よりも鋳片に発生する圧縮応力が小さくなったためと考えられる。
次に、比較例4では、Mn偏析度が基準値である1.2を超えるとともに、内部割れが確認された。その理由は、比較例4では、鋳片に対する一対の上流側圧下ロール42及び一対の下流側圧下ロール44の圧下量の設定値がそれぞれ5mmに設定されている。これにより、鋳片に発生する圧縮応力が不十分となり、鋳片の内部に残存する濃化溶鋼が上流側へ十分に排出されなかったためと考えられる。
次に、比較例5では、Mn偏析度が基準値である1.2を超えるとともに、内部割れが確認された。その理由は、比較例5では、一対の上流側圧下ロール42によって、中心固相率Rが0.3の鋳片を圧下している。これにより、鋳片の内部に残存する濃化溶鋼が上流側へ十分に排出されなかったためと考えられる。
以上、本発明の一実施形態等について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
10 連続鋳造機
20 鋳片
20C 鋳片の幅方向の中央部
20X 固相率線
20X1 固相率線の中心点(固相率が0.8となる鋳片の部位)
42 上流側圧下ロール(圧下ロール)
44 下流側圧下ロール(圧下ロール)
D 一対の固相率線の中心点の間隔(固相率が0.8となる鋳片の一対の部位の間隔)
H 鋳片の搬送方向
P ロールピッチ
S1 上流側圧下ロールの圧下量(圧下ロールの圧下量)
S2 下流側圧下ロールの圧下量(圧下ロールの圧下量)

Claims (4)

  1. 連続鋳造機によって搬送される鋳片を、該鋳片の搬送方向に隣り合う一対の圧下ロールによって圧下する連続鋳造方法であって、
    前記一対の圧下ロールのロールピッチを100mm以上、かつ、400mm以下とし、中心固相率が0.2以下の状態の前記鋳片を前記一対の圧下ロールによって10mm以上それぞれ圧下する、
    連続鋳造方法。
  2. 前記鋳片に対する前記一対の圧下ロールの圧下量の合計値は、前記一対の圧下ロールのうち前記鋳片の搬送方向の上流側に配置される圧下ロールの位置で、かつ、前記鋳片の幅方向の中央部において、前記鋳片の厚み方向に互いに離間するとともに固相率が0.8となる前記鋳片の一対の部位の間隔以上とされる、
    請求項1に記載の連続鋳造方法。
  3. 鋳片を搬送する搬送装置と、
    前記搬送装置による前記鋳片の搬送方向に隣り合って配置され、中心固相率が0.2以下の状態の前記鋳片をそれぞれ10mm以上圧下する一対の圧下ロールと、
    を備え、
    前記一対の圧下ロールのロールピッチが、100mm以上、かつ、400mm以下とされる、
    連続鋳造機。
  4. 前記鋳片に対する前記一対の圧下ロールの圧下量の合計値は、前記一対の圧下ロールのうち前記鋳片の搬送方向の上流側に配置される圧下ロールの位置で、かつ、前記鋳片の幅方向の中央部において、前記鋳片の厚み方向に互いに離間するとともに固相率が0.8となる前記鋳片の一対の部位の間隔以上とされる、
    請求項3に記載の連続鋳造機。
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