JP6152824B2 - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、連続鋳造中の鋳片を凝固収縮量に相当する程度の圧下量で徐々に圧下して鋳片の厚み中心部に発生する成分偏析を抑制する連続鋳造方法に関する。
連続鋳造中の鋳片の凝固過程では凝固収縮が起こり、この収縮に伴って生成する負圧を解消するべく未凝固溶鋼が吸引され、最終凝固部である鋳片の厚み中心部に向かって流動し、鋳片の厚み中心部に集積する。この未凝固溶鋼は、炭素(C)、燐(P)、マンガン(Mn)、硫黄(S)などの溶質元素が濃縮(「濃化溶鋼」という)しており、鋳片の中心部に集積した濃化溶鋼が凝固することで、周囲よりも溶質元素が濃化した中心偏析が発生する。凝固末期の濃化溶鋼が流動する要因としては、上記の凝固収縮の他に、溶鋼静圧による鋳片のロール間でのバルジング(膨らみ)や、鋳片支持ロールのロールアライメントの不整合なども挙げられる。
この中心偏析は、鋼製品、特に厚鋼板の品質を劣化させる。例えば、石油輸送用や天然ガス輸送用のラインパイプ材においては、サワーガスの作用により、中心偏析を起点として水素誘起割れが発生する。また、海洋構造物、貯槽、石油タンクなどにおいても、同様の問題が発生する。しかも近年、鋼材の使用環境は、より低温下或いはより腐食環境下といった厳しい環境での使用を求められることが多く、鋳片の中心偏析を低減することの重要性は益々大きくなっている。
したがって、連続鋳造工程から圧延工程に至るまで、鋳片の中心偏析を低減する或いは無害化する対策が多数提案されている。そのなかで、中心偏析を低減する方法として、未凝固層を有する連続鋳造中の凝固末期の鋳片を圧下する凝固末期軽圧下法が効果的であることが知られている。凝固末期軽圧下法とは、鋳片の凝固完了位置付近に圧下ロールを配置し、この圧下ロールにより連続鋳造中の鋳片を凝固収縮量に相当する程度の圧下量で徐々に圧下し、鋳片中心部での空隙の形成を防止し、これによって濃化溶鋼の流動を抑止して鋳片の中心偏析を抑制するという技術である。
この凝固末期軽圧下法では、圧下量が不足すると中心偏析や内質欠陥の生成防止が不十分となり、一方、圧下量が大き過ぎると逆V偏析や内部割れが発生し、却って鋳片の内質を悪化させる。したがって、凝固末期軽圧下法では、圧下量を凝固収縮量が補償される程度の範囲に適正に制御することが重要となる。
凝固末期軽圧下法を適用する場合、鋳片の短辺側は凝固が完了しており、この部分が圧下抵抗となり、鋳片中央部に所定の圧下力が付与されにくくなる。そこで、鋳片の短辺側を圧下しない技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、鋳片の厚みの3%以上25%以下の範囲で鋳片を強制的にバルジングさせた後、鋳片中心部の固相率が0.2以上0.7以下の鋳片位置で、前記バルジング量の30%以上70%以下に相当する厚みだけ圧下する連続鋳造方法が提案されている。しかしながら、特許文献1では、強制的なバルジング量が過大であり、鋳片に内部割れが発生する可能性がある。
特許文献2には、鋳片の液相線クレータエンド相当位置から固相線クレータエンド相当位置までの間の所定範囲に配列されたガイドロール群の鋳片厚さ方向の間隔を広げ、鋳片に合計で5mmから20mm未満のバルジングを強制的に生起させ、次いで鋳片の中心部固相率が0.1から0.8までの間で少なくとも1対の圧下ロールにより、バルジングさせた量の0.5倍から1.0倍までの圧下量で圧下する連続鋳造方法が提案されている。しかしながら、特許文献2では、1対の圧下ロールで圧下しており、ロール位置1本あたりの圧下量が大きくなり、大きな圧下能力の設備が必要となるとともに、圧下により鋳片内部に割れが発生する可能性がある。また、鋳片引き抜き速度の変動などの影響で凝固完了位置が変化したときには凝固完了位置が圧下ゾーンから逸脱し、鋳片に圧下力を付与できない可能性がある。
また、凝固末期軽圧下法を適用する場合に、鋳片引き抜き速度が変化しても凝固末期の鋳片に適正な圧下力を付与することを目的とする提案も行われている。
例えば、特許文献3には、複数本の圧下ロールからなる軽圧下帯を有する連続鋳造機を用い、前記軽圧下帯で凝固末期の鋳片を圧下しながら鋼鋳片を連続鋳造するにあたり、前記軽圧下帯における圧下勾配を鋳造方向下流側ほど小さく設定し、当該軽圧下帯を用い、少なくとも、鋳片の厚み中心部の固相率が0.4以下の時点から0.8以上になる時点まで、0.9〜1.3mm/minの範囲内の圧下速度で鋳片を圧下する連続鋳造方法が提案されている。この技術は、圧下速度は鋳片引き抜き速度と圧下勾配との積であることから、圧下勾配を鋳造方向下流側ほど小さく設定することで、鋳片引き抜き速度が変化しても、鋳片はほぼ同等の圧下速度で圧下されるという技術である。しかしながら、特許文献3では、軽圧下帯上部の圧下勾配が大きいので、何らかの理由で鋳片引き抜き速度が低下して凝固完了位置が軽圧下帯よりも上流側に位置するようなときには、凝固完了した鋳片を大きな圧下勾配で圧下することになり、軽圧下帯を構成する鋳片支持ロールへの負荷荷重が増大し、設備寿命の低下や設備破損につながる可能性がある。
ところで、連続鋳造の操業では、鋳片引き抜き速度を目標とする所定の値に保持して鋳造する領域と、鋳造終了時や複数のチャージを連続して鋳造する(「連々鋳」という)際の取鍋交換時などのように、鋳片引き抜き速度を低下させて鋳造する領域とが存在する。鋳片引き抜き速度を所定の値に維持して鋳造する領域を「定常鋳造域」と呼び、この定常鋳造域よりも低い鋳片引き抜き速度で鋳造する領域を「非定常鋳造域」と呼んでいる。非定常鋳造域では鋳片引き抜き速度を定常鋳造域に比較して低下するように変化させることから、非定常鋳造域における凝固完了位置は、定常鋳造域における凝固完了位置よりも鋳造方向上流側に移動する。
特許文献1、2は、圧下ロールの鋳造方向設置範囲が短く、定常鋳造域では凝固末期の鋳片を圧下することができるが、非定常鋳造域では、圧下ロールの設置位置ではすでに鋳片中心部まで凝固が完了する可能性が高く、非定常鋳造域では凝固末期の鋳片を圧下することができない可能性がある。つまり、非定常鋳造域の鋳片の中心偏析を抑制できない虞がある。
一方、特許文献3は、鋳造方向に17mの長さ(鋳型内溶鋼湯面位置から15〜32mの範囲、実施例1を参照)を有する軽圧下帯を設置しており、鋳片引き抜き速度が0.85〜1.6m/minの鋳片を所定の固相率及び圧下速度で圧下できるとしているが、軽圧下帯が長すぎ、例えば鋳片引き抜き速度が0.85m/minの場合には、軽圧下帯の上部(鋳型内溶鋼湯面位置から約17mの位置)で鋳片の凝固が完了し、その後も更に軽圧下帯での圧下が継続することから、軽圧下帯を構成する鋳片支持ロールへの負荷荷重が増大し、設備寿命の低下や設備破損につながる。
特開2000−288705号公報 特開平11−156511号公報 特開2011−5525号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、凝固末期軽圧下法によって鋳片の中心偏析を抑制するにあたり、軽圧下帯を構成する鋳片支持ロールへの負荷荷重を増加させることなく、定常鋳造域の鋳片は当然として、非定常鋳造域の鋳片にも圧下力が付与され、且つ、過剰な強制的バルジングに起因する鋳片内部割れを防止するとともに、圧下量不足による中心偏析や、圧下量過剰による内部割れ及びV偏析を発生させることなく、鋳片の中心偏析を低減することのできる、鋼の連続鋳造方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]複数対の鋳片支持ロールのロール開度を鋳造方向下流側に向かって段階的に増加させて鋳片長辺面を1〜30mmの範囲のバルジング総量でバルジングさせ、その後、複数対の鋳片支持ロールのロール開度を鋳造方向下流側に向かって段階的に減少させた軽圧下帯で、少なくとも、鋳片厚み中心部の固相率が0.9となる部位の鋳片の長辺面を圧下する鋼の連続鋳造方法であって、
前記軽圧下帯を、鋳造方向にn(n≧2)個の圧下区分に分割し、且つ、分割した後の各圧下区分の鋳造方向長さの和が凝固完了位置の鋳造中での鋳造方向変動範囲に対して下記の(1)式を満足するように各圧下区分の鋳造方向長さを設定し、
分割した各圧下区間での圧下量の合計値である鋳片の総圧下量を下記の(2)式に示すように前記バルジング総量の0.7倍以上1.0倍以下の範囲内に設定するともに、それぞれの圧下区間での圧下量を下記の(3)式に示すように下流側の圧下区間ほど大きいか等しくなるように設定し、且つ、鋳造方向上流側からn番目つまり最下流の圧下区間における圧下速度を下記の(4)式に示すように0.3〜1.5mm/minの範囲内に設定することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
ΣLi≧β+2・・・(1)
0.7×δIB≦Rtotal≦δIB・・・(2)
i≦Ri+1・・・(3)
0.3≦最下流の圧下区間での圧下速度(=(Rn/Ln)×V)≦1.5・・・(4)
但し、(1)式、(2)式、(3)式及び(4)式において、ΣLiは、各圧下区分の鋳造方向長さの和(m)、βは、凝固完了位置の鋳造中での鋳造方向変動範囲(m)、δIBは、鋳片のバルジング総量(mm)、Rtotalは、各圧下区間での圧下量の合計値である鋳片の総圧下量(mm)、Riは、鋳造方向上流側からi番目の圧下区間での圧下量(mm)、Ri+1は、鋳造方向上流側から「i+1」番目の圧下区間での圧下量(mm)、Rnは、鋳造方向上流側から第n番目つまり最下流の圧下区間での圧下量(mm)、Lnは、鋳造方向上流側から第n番目つまり最下流の圧下区間の鋳造方向長さ(m)、Vは、鋳片引き抜き速度(m/min)である。
[2]前記鋳片の総圧下量を、鋳片の鋳型出口での厚みに対して下記の(5)式を満足するように設定することを特徴とする、上記[1]に記載の鋼の連続鋳造方法。
total<D0/10・・・(5)
但し、(5)式において、Rtotalは、鋳片の総圧下量(mm)、D0は、鋳片の鋳型出口での厚み(mm)である。
[3]前記軽圧下帯を、鋳造方向上流側の第1番目の圧下区間と鋳造方向下流側の第2番目の圧下区間との2区間に分割することを特徴とする、上記[1]または上記[2]に記載の鋼の連続鋳造方法。
本発明によれば、(1)式を満足するように各圧下区間の鋳造方向長さを設定するので、定常鋳造域及び非定常鋳造域において、鋳片中心部の固相率が0.9となる部位の鋳片は軽圧下帯の範囲内に存在し、定常鋳造域の鋳片は当然として、非定常鋳造域の鋳片であっても、凝固末期の鋳片長辺面に軽圧下帯による圧下力を付与することができ、また、(2)式、(3)式及び(4)式を満足するように鋳片を圧下するので、鋳片に内部割れを生じることなく鋳片の中心偏析を抑制することができる。
本発明を実施する際に用いるスラブ連続鋳造機の1例の側面概略図である。 軽圧下帯を形成するロールセグメントの1例を示す概略図であり、連続鋳造機の側方から見た概略図である。 図2に示すロールセグメントを鋳片引き抜き方向と直交する方向から見た概略図である。 本発明における鋳片支持ロールのロール開度のプロフィルの例を示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は、本発明を実施する際に用いるスラブ連続鋳造機の1例の側面概略図である。
図1に示すように、スラブ連続鋳造機1には、溶鋼9を注入して凝固させ、鋳片10の長方形の外殻を形成するための鋳型5が設置され、この鋳型5の上方所定位置には、取鍋(図示せず)から供給される溶鋼9を鋳型5に中継供給するためのタンディッシュ2が設置されている。タンディッシュ2の底部には、溶鋼9の流量を調整するためのスライディングノズル3が設置され、このスライディングノズル3の下面には浸漬ノズル4が設置されている。一方、鋳型5の下方には、サポートロール、ガイドロール及びピンチロールからなる複数対の鋳片支持ロール6が配置されている。鋳造方向に隣り合う鋳片支持ロール6の間隙には、水スプレーノズル或いはエアーミストスプレーノズルなどのスプレーノズル(図示せず)が配置された二次冷却帯が構成され、二次冷却帯の各スプレーノズルから噴射される冷却水(「二次冷却水」ともいう)によって鋳片10は引き抜かれながら冷却されるようになっている。また、鋳造方向最終の鋳片支持ロール6の下流側には、鋳造された鋳片10を搬送するための複数の搬送ロール7が設置されており、この搬送ロール7の上方には、鋳造される鋳片10から所定の長さの鋳片10aを切断するための鋳片切断機8が配置されている。
鋳片10の凝固完了位置13の鋳造方向上流側には、鋳片10を挟んで対向する鋳片支持ロール間の間隔(この間隔を「ロール開度」と呼ぶ)を鋳造方向下流側に向かって順次狭くなるように設定された、つまり圧下勾配(鋳造方向下流に向かって順次狭くなるように設定されたロール開度の状態)が設定された、複数対の鋳片支持ロール群から構成される軽圧下帯14が設置されている。図1では、凝固完了位置13の鋳造方向上流側に軽圧下帯14が設置されているが、これは、鋳片厚み中心部の固相率が0.9となる部位の鋳片が軽圧下帯14の下部に位置し、鋳片厚み中心部の固相率が0.9を超えた鋳片は軽圧下帯14から直ちに遠ざかるようにするためである。このようにすることで、鋳片10の中心偏析が抑制され、且つ、圧下抵抗の大きい、鋳片厚み中心部の固相率が0.9を超えた部位に圧下力が付与されず、軽圧下帯14の圧下負荷が軽減される。但し、これは、鋳片引き抜き速度が目標とする所定値となった定常鋳造域での理想的な状態を示すものであり、この場合でも、連々鋳の取鍋交換や鋳造終了時の鋳片引き抜き速度が前記の目標とする値よりも低下するときには、凝固完了位置13は鋳造方向上流側に移動し、軽圧下帯14の範囲内に入る。尚、鋳片厚み中心部の固相率が0.9となる部位の鋳片が軽圧下帯14の下部に位置する限り、定常鋳造域の鋳片引き抜き速度のときに凝固完了位置13が軽圧下帯14の下部に存在するように、軽圧下帯14を設置しても構わない。
軽圧下帯14は、複数対の鋳片支持ロール6が一体的に配置されるロールセグメントで形成され、図1では、軽圧下帯14は、2基のロールセグメントによって鋳造方向で2つに分割されている。ここでは、軽圧下帯14を形成する鋳造方向上流側のロールセグメント14Aを第1番目の圧下区間と呼び、鋳造方向下流側のロールセグメント14Bを第2番目の圧下区間と呼ぶ。図1では、軽圧下帯14が2基のロールセグメント14A、14Bによって鋳造方向に2分割されているが、本発明において軽圧下帯14は鋳造方向で2分割のみに限るものではなく、3分割以上としても構わない。つまり、軽圧下帯14をn個(n≧2)以上に分割すればよい。但し、何れの場合も、定常鋳造域の鋳片引き抜き速度のときには、鋳片厚み中心部の固相率が0.9となる部位の鋳片が最下流の圧下区間の範囲に位置するように、予定する鋳片引き抜き速度に応じて各圧下区間を設定する。
この場合、軽圧下帯14を、ロールセグメント単位で分割してもよく、また、1つのロールセグメントの範囲内で2つ以上の圧下区間に分割してもよい。但し、1つのロールセグメントのなかで分割する場合には、予めオフラインでのロールセグメントの整備段階で、ロールセグメント内の鋳片支持ロール6を、上流側から下流側に向けて異なるロール勾配に設定することが必要である。尚、図1では、1つのロールセグメントが3対の鋳片支持ロール6によって構成されているが、ロールセグメントを構成する鋳片支持ロール6は3対に限るものではなく、2対以上であるならば幾つであっても構わない。
通常、軽圧下帯14における圧下勾配は、鋳造方向1mあたりのロール開度絞り込み量、つまり「mm/m」で表示されており、したがって、軽圧下帯14における鋳片10の圧下速度(mm/min)は、この圧下勾配(mm/m)と鋳片引き抜き速度(m/min)との積で求められる。本発明では、軽圧下帯14を鋳造方向で2つ以上の圧下区間に分割しており、各圧下区間での圧下速度は、その圧下区間の圧下勾配と鋳片引き抜き速度との積で得られる。また、各圧下区間での圧下量は、その圧下区間での入り口のロール開度と出口のロール開度との差で求められ、換言すれば、その圧下区間の圧下勾配とその圧下区間の鋳造方向長さとの積で算出される。尚、軽圧下帯14を構成する各鋳片支持ロール間にも鋳片10を冷却するためのスプレーノズルが配置されている。また、軽圧下帯14に配置される鋳片支持ロール6を圧下ロールとも称す。
図2、図3に、軽圧下帯14を形成するロールセグメントの1例として、ロールセグメント14Aの拡大概略図を示す。図2は、連続鋳造機の側方から見た概略図、図3は、鋳片引き抜き方向と直交する方向から見た概略図である。図2及び図3に示すロールセグメント14Aは、5対の鋳片支持ロール6が配置された例を示す図で、5対の鋳片支持ロール6のうちの1対がピンチロール6Aで、他の4対がガイドロール6Bの例である。ロールセグメント14Bも図2及び図3と同様の構造である。
図2及び図3に示すように、ロールセグメント14Aは、ロールチョック22を介して5対の鋳片支持ロール(5対の鋳片支持ロールのうちで、1対はピンチロール6Aで、4対はガイドロール6B)を保持した1対のフレーム17及びフレーム17′からなり、フレーム17及びフレーム17′を貫通させて合計4本(上流側の両サイド及び下流側の両サイド)のタイロッド18が配置され、このタイロッド18に設置されているウオームジャッキ20をモーター21にて駆動させることにより、フレーム17とフレーム17′との間隔の調整、つまり、ロールセグメント14Aにおける圧下勾配の調整が行われるようになっている。鋳造中は、ウオームジャッキ20は未凝固層12を有する鋳片10の溶鋼静圧によってセルフロックされ、鋳片10のバルジング力に対抗しており、鋳片10が存在しない条件下で、つまり、ロールセグメント14Aに設置されるピンチロール6A及びガイドロール6Bに鋳片10からの負荷が作用しない条件下で、圧下勾配の調整が行われるように構成されている。
また、タイロッド18には、フレーム17′とウオームジャッキ20との間に皿バネ19が設置されている。皿バネ19は、1個の皿バネで構成されるものではなく、複数個の皿バネを重ねて構成されるものである(多数個の皿バネを重ねるほど剛性が高くなる)。この皿バネ19は、皿バネ19に或る所定の荷重以上の負荷荷重が作用しない場合には収縮せずに一定の厚みを呈しているが、或る所定の負荷荷重が作用した場合に収縮し始め、或る所定の負荷荷重を超えた以降は負荷荷重に比例して収縮するように構成されている。例えば、鋳片10がロールセグメント14Aの範囲内で凝固完了した場合には、凝固完了した鋳片10を圧下することによってロールセグメント14Aに過大な荷重が負荷されるが、このような過大な荷重が負荷される場合には、皿バネ19が収縮することで、フレーム17′が開放し、つまり、ロール開度が拡大し、ロールセグメント14Aに過大な荷重が負荷されないように構成されている。尚、下面側のフレーム17は、連続鋳造機の基礎に固定されていて鋳造中には移動しないように構成されている。
フレーム17′に設置されるガイドロール6Bは、ロールチョック22がフレーム17′に固定されていて、フレーム17′と同一の動きをするが、フレーム17′に配置されるピンチロール6Aは、ロールチョック22が油圧シリンダー16のシリンダーロッド23で支持されており、油圧シリンダー16の油圧に応じて、鋳片10を押し付けるように構成されている。但し、ピンチロール6Aの押し付け力が鋳片10の静鉄圧よりも小さい場合には、他のガイドロール6Bの圧下勾配と同一の勾配になる位置に退避するように構成されている。また、ピンチロール6Aは電動機(図示せず)に接続され、この電動機によって所定の回転速度で回転するように構成されている。これに対してガイドロール6Bは、駆動せず、移動する鋳片10と接触することで回転する。
一方、フレーム17に設置されるピンチロール6Aは、フレーム17に設置されるガイドロール6Bと同様に、フレーム17に固定されており、鋳片厚み方向に移動しないように構成されている。但し、フレーム17に設置されるピンチロール6Aも電動機(図示せず)に接続されており、所定の回転速度で回転するように構成されている。
ピンチロール6Aが圧下セグメント14での圧下勾配と関係なく鋳片10を押し付け可能に構成される理由は、ピンチロール6Aによって鋳片10やダミーバー(鋳造開始時に鋳片の代わりに連続鋳造機内に挿入される物体)を所定の速度で引く抜く必要があり、そのためには、ピンチロール6Aは鋳片10やダミーバーへの所定の押し付け力を有することが必要であるからである。鋳片10やダミーバーに対して所定の押し付け力を確保できない場合には、鋳片10やダミーバーは駆動されない。
尚、図2では、圧下セグメント14に1対のピンチロール6Aが配置されているが、1つの圧下セグメント14に2対以上のピンチロール6Aが配置されていても構わない。また、図示はしないが、圧下セグメント14以外の鋳片支持ロール6もロールセグメント構造となっている。
図1において、鋳型5の下端から鋳片10の液相線クレータエンド位置との間に配置される鋳片支持ロール6は、鋳造方向下流側に向かって、ロール開度の拡大量が所定値となるまで、1ロール毎または数ロール毎に順次ロール開度が広くなった、内部に未凝固層12を有する鋳片10を強制的にバルジングさせるための強制バルジング帯15を構成している。強制バルジング帯15の下流側の鋳片支持ロール6は、ロール開度が一定値または鋳片10の温度降下に伴う収縮量に見合う程度に狭められ、その後、ロールセグメント14Aにつながっている。
図4に、本発明における鋳片支持ロール6のロール開度のプロフィルの例を示す。図4に示すように、強制バルジング帯15で鋳片長辺面を溶鋼静圧によって強制的にバルジングさせて鋳片長辺面の中央部の厚みを増大させ(領域b)、強制バルジング帯15を通りすぎた下流側では、ロール開度が一定値または鋳片10の温度降下に伴う収縮量に見合う程度に狭められ(領域c)、その後、軽圧下帯14のロールセグメント14A(第1番目の圧下区間)で鋳片長辺面を圧下し(領域d)し、次いで、軽圧下帯14のロールセグメント14B(第2番目の圧下区間)で鋳片長辺面を圧下する(領域e)というプロフィルである。図中のa及びfは、ロール開度が鋳片10の温度降下に伴う収縮量に見合う程度に狭められる領域である。図中のa′は、鋳片10の温度降下に伴う収縮量に見合う程度にロール開度を狭くする従来方法のロール開度の例である。
強制バルジング帯15では、鋳片支持ロール6のロール開度を鋳造方向下流側に向かって順次広くすることにより、鋳片10の短辺近傍を除く長辺面は、未凝固層12による溶鋼静圧によって鋳片支持ロール6のロール開度に倣って強制的にバルジングさせられる。鋳片長辺面の短辺近傍は、凝固の完了した鋳片短辺面に固持されることから、強制的なバルジングを開始した時点の厚みを維持しており、したがって、鋳片10は、強制的なバルジングによって鋳片長辺面のバルジングした部分のみが鋳片支持ロール6に接触することになる。
この構成のスラブ連続鋳造機1において、タンディッシュ2から浸漬ノズル4を介して鋳型5に注入された溶鋼9は、鋳型5で冷却されて凝固シェル11を形成する。この凝固シェル11を外殻とし、内部に未凝固層12を有する、横断面が長方形の鋳片10は、鋳型5の下方に設けられた鋳片支持ロール6に支持されつつ、鋳型5の下方に連続的に引き抜かれる。鋳片10は、鋳片支持ロール6を通過する間、二次冷却帯の二次冷却水で冷却され、凝固シェル11の厚みを増大し、且つ、強制バルジング帯15では鋳片長辺面の短辺側端部を除いた部分の厚みを増大させ、更に、軽圧下帯14では鋳片長辺面が圧下されながら引き抜かれ、凝固完了位置13で内部までの凝固を完了する。凝固完了後の鋳片10は、鋳片切断機8によって切断されて鋳片10aとなる。
本発明において、強制バルジング帯15を鋳型5の下端から鋳片10の液相線クレータエンド位置との間に配置する理由は、以下のとおりである。即ち、鋳片10の液相線クレータエンド位置よりも鋳造方向上流側は、鋳片厚み中心部は全て未凝固層12(液相)であり、且つ、鋳片10の凝固シェル11は温度が高くて変形抵抗が小さいからである。鋳片10を強制的にバルジングさせる場合、鋳片10の内部に存在する未凝固層12が少ない時点でバルジングさせると、濃化溶鋼が流動して中心偏析は却って悪化する。しかし、鋳片10の液相線クレータエンド位置よりも鋳造方向上流側でバルジングさせた場合には、この時点では、溶質元素が濃化されていない初期濃度の溶鋼が鋳片内部に潤沢に存在し、且つ、この溶鋼が容易に流動する。この溶鋼が流動しても偏析は起こらず、したがって、この時点におけるバルジングは中心偏析の原因とはならない。また、凝固シェル11の変形抵抗が小さいことから、容易にバルジングさせることができる。
尚、鋳片10の液相線とは、鋳片10の化学成分によって決まる凝固開始温度であり、例えば、下記の(6)式から求めることができる。
TL=1536-(78×[%C]+7.6×[%Si]+4.9×[%Mn]+34.4×[%P]+38×[%S]+4.7×[%Cu]+3.1×[%Ni]+1.3×[%Cr]+3.6×[%Al])・・・(6)
但し、(6)式において、TLは液相線温度(℃)、[%C]は溶鋼の炭素濃度(質量%)、[%Si]は溶鋼の珪素濃度(質量%)、[%Mn]は溶鋼のマンガン濃度(質量%)、[%P]は溶鋼の燐濃度(質量%)、[%S]は溶鋼の硫黄濃度(質量%)、[%Cu]は溶鋼の銅濃度(質量%)、[%Ni]は溶鋼のニッケル濃度(質量%)、[%Cr]は溶鋼のクロム濃度(質量%)、[%Al]は溶鋼のアルミニウム濃度(質量%)である。
鋳片10の液相線クレータエンド位置は、二次元伝熱凝固計算により求められる鋳片内部の温度勾配と、(6)式で定まる液相線温度とを照らし合わせることで求めることができる。
強制バルジング帯15は、特別な機構は不要であり、ロール開度を調整するだけで形成されるので、鋳型5の下端から鋳片10の液相線クレータエンド位置との範囲である限り、任意の位置に設置することができる。
本発明においては、強制バルジング帯15では、強制的なバルジングの総量を、1〜30mmの範囲とすることが必要である。バルジング総量が1mm未満では、軽圧下帯14において、負荷荷重を低く抑えた状態での圧下可能な量が少なく、鋳片10に対して中心偏析の改善効果が不十分になる。一方、バルジング総量が30mmを超えると、バルジングによる歪により、強制バルジング帯15で鋳片10に内部割れを誘発する可能性がある。また、強制バルジング帯15において、1ロールあたりのロール開度の拡大量は、鋳片長辺面のバルジングする部位とバルジングしない部位との境界位置での亀裂発生を防止するために、1.5mm以下とすることが好ましい。
本発明では、n個に分割した軽圧下帯14の各圧下区間の鋳造方向長さの和が、凝固完了位置13の鋳造中での鋳造方向変動範囲に対して下記の(1)式を満足するように、各圧下区分の鋳造方向長さを設定する。つまり、図1に示す軽圧下帯14では、鋳造方向上流側の第1番目の圧下区間であるロールセグメント14Aの鋳造方向長さと、鋳造方向下流側の第2番目の圧下区間であるロールセグメント14Bの鋳造方向長さとの和が、下記の(1)式を満足するように、各圧下区分の鋳造方向長さを設定する。
ΣLi≧β+2・・・(1)
但し、(1)式において、ΣLiは、n個に分割した軽圧下帯14の各圧下区分の鋳造方向長さの和(m)、βは、凝固完了位置の鋳造中での鋳造方向変動範囲(m)である。ここで、凝固完了位置13の鋳造中での鋳造方向変動範囲βとは、目的とする定常鋳造域での鋳片引き抜き速度での凝固完了位置13の位置(鋳型内溶鋼湯面からの距離LCEst)と、連々鋳の取鍋交換や鋳造終了時の非定常鋳造域で鋳片引き抜き速度が低下するときの凝固完了位置13の位置(鋳型内溶鋼湯面からの距離LCEunst)との間の距離(=LCEst−LCEunst)である。
各圧下区間の鋳造方向長さの和、つまり軽圧下帯14の鋳造方向長さが、(1)式に示すように、凝固完了位置13の鋳造中での鋳造方向変動範囲βよりも2m以上長くなるように各圧下区間の鋳造方向長さを設定することで、定常鋳造域及び非定常鋳造域において、鋳片中心部の固相率が0.9となる部位の鋳片は軽圧下帯14の範囲内に存在し、定常鋳造域の鋳片は当然として、非定常鋳造域の鋳片であっても、凝固末期の鋳片長辺面に軽圧下帯14による圧下力を付与することが可能となる。これにより、非定常鋳造域の鋳片及び非定常鋳造域の鋳片の中心偏析が改善される。但し、軽圧下帯14の鋳造方向長さを過剰に長くすることは軽圧下帯14を形成するロールセグメントへの負荷の観点から好ましくなく、したがって、「β+4≧ΣLi」とすることが好ましい。
また、本発明では、各圧下区間での圧下量の合計値である鋳片の総圧下量を下記の(2)式に示すようにバルジング総量の0.7倍以上1.0倍以下の範囲内に設定する。つまり、図1に示す軽圧下帯14では、鋳造方向上流側の第1番目の圧下区間であるロールセグメント14Aでの圧下量と、鋳造方向下流側の第2番目の圧下区間であるロールセグメント14Bでの圧下量との和がバルジング総量の0.7倍以上1.0倍以下の範囲内となるように圧下量を設定する。
0.7×δIB≦Rtotal≦δIB・・・(2)
但し、(2)式において、δIBは、鋳片のバルジング総量(mm)、Rtotalは、各圧下区間での圧下量の合計値である鋳片の総圧下量(mm)である。
総圧下量がバルジング総量の0.7倍未満では、総圧下量が少なく、鋳片10の中心偏析軽減効果が十分とならない虞があるが、総圧下量をバルジング総量の0.7倍以上とすることで、鋳片長辺面へ所定量の圧下力が付与され、鋳片10の中心偏析を抑制することが可能となる。また、総圧下量をバルジング総量の1.0倍以下とすることで、軽圧下帯14では鋳片10の短辺は圧下されず、軽圧下帯14を形成するロールセグメントの負荷荷重が軽減され、ロールセグメントでのベアリング破損や圧下ロールの折損などの設備トラブルを抑制することができる。
また、本発明では、鋳造方向に分割したそれぞれの圧下区間での鋳片圧下量が、下記の(3)式に示すように、下流側の圧下区間ほど大きいか等しくなるように設定する。つまり、図1に示す軽圧下帯14では、鋳造方向上流側の第1番目の圧下区間であるロールセグメント14Aでの圧下量に対して、鋳造方向下流側の第2番目の圧下区間であるロールセグメント14Bでの圧下量が大きいか等しくなるように設定する。
i≦Ri+1・・・(3)
但し、(3)式において、Riは鋳造方向上流側からi番目の圧下区間での圧下量(mm)、Ri+1は鋳造方向上流側から「i+1」番目の圧下区間での圧下量(mm)である。
これは、前述したように、本発明では総圧下量をバルジング総量の範囲内に制限しており、鋳造方向上流側の圧下量を大きくすると、鋳造方向下流側の圧下量が小さくなって鋳片10の中心偏析が悪化する可能性があるからである。
ここで、各圧下区間における鋳片10の圧下量は、その圧下区間の圧下勾配とその圧下区間の鋳造方向長さとを乗算することで求められる。したがって、鋳造方向下流側の圧下区間での圧下量をその上流側の圧下区間の圧下量よりも大きくする方法としては、上流側の圧下区間よりも圧下勾配を大きくする方法や、圧下勾配を大きくせずに、圧下区間の鋳造方向長さと大きくする方法などを採ることができる。要は、その圧下区間の圧下勾配とその圧下区間の鋳造方向長さとの積が上流側の圧下区間での値と同一かそれ以上となるようにすればよい。
また、更に本発明では、鋳造方向上流側からn番目つまり最下流の圧下区間における圧下速度を下記の(4)式に示すように0.3〜1.5mm/minの範囲内に設定する。
0.3≦最下流の圧下区間での圧下速度(=(Rn/Ln)×V)≦1.5・・・(4)
但し、(4)式において、Rnは、鋳造方向上流側から第n番目つまり最下流の圧下区間での圧下量(mm)、Lnは、鋳造方向上流側から第n番目つまり最下流の圧下区間の鋳造方向長さ(m)、Vは、鋳片引き抜き速度(m/min)である。
本発明において、定常鋳造域の鋳片引き抜き速度のときには、鋳片厚み中心部の固相率が0.9となる部位の鋳片は最下流の圧下区間の範囲に位置しており、最下流の圧下区間での圧下速度を0.3〜1.5mm/minの範囲とすることで、少なくとも定常鋳造域の鋳片10には目的とする圧下速度で圧下力が付与され、鋳片10の中心偏析が抑制される。圧下速度が0.3mm/min未満では、凝固収縮量に対して圧下速度が小さすぎ、濃化溶鋼の流動を抑制することが不十分であり、一方、圧下速度が1.5mm/minを超えると、凝固収縮量に対して圧下速度が大きすぎ、逆V偏析や内部割れを発生する虞がある。
また、本発明において、定常鋳造域の鋳片引き抜き速度のときには、軽圧下帯14において、少なくとも、鋳片厚み中心部の固相率が0.3の時点から0.9になる時点まで、鋳片10を圧下することが好ましい。鋳片厚み中心部の固相率が0.9を超える鋳片は圧下抵抗が大きく、鋳片厚み中心部の固相率が0.9を超える鋳片が軽圧下帯14の範囲内に存在する場合には、皿バネ19が収縮して所望する圧下量を鋳片に付与できなくなる可能性がある。また、鋳片厚み中心部の固相率が0.9を超える範囲では濃化溶鋼の流動は起こらず、圧下しなくても中心偏析は悪化しない。一方、軽圧下帯14において鋳片厚み中心部の固相率が0.3を超えてから圧下を開始しても、それ以前に濃化溶鋼の流動が発生する可能性があり、これにより中心偏析が発生し、中心偏析軽減効果を十分に得ることができない。
鋳片厚み中心部の固相率は、液相線クレータエンド位置を求める場合と同様に、二次元伝熱凝固計算によって求めることができる。ここで、固相率とは、凝固開始前を固相率=0、凝固完了時を固相率=1.0と定義されるものであり、鋳片厚み中心部の固相率が1.0となる位置が凝固完了位置13(固相線クレータエンド位置)であり、液相線クレータエンド位置は、鋳片厚み中心部の固相率がゼロとなる最も下流側の位置に該当する。
本発明では、連続鋳造操業の種々の鋳造条件において、予め二次元伝熱凝固計算などを用いて凝固シェル11の厚み及び鋳片厚み中心部の固相率を求め、鋳片引き抜き速度が予定した定常鋳造域のときには、鋳片中心部の固相率が0.9となる部位の鋳片が最下流の圧下区間に位置するように、二次冷却水量、二次冷却の幅切り、鋳片引き抜き速度のうちの何れか1種または2種以上を調整する。ここで、「二次冷却の幅切り」とは、鋳片長辺面の両端部への冷却水の噴霧を中止することである。二次冷却の幅切りを実施することで、二次冷却は弱冷化され、一般的に、凝固完了位置13は鋳造方向下流側に延長される。
また、本発明において、鋳片10の総圧下量を鋳片10の鋳型出口での厚みに対して下記の(5)式を満足するように設定することが好ましい。但し、(5)式において、Rtotalは、鋳片の総圧下量(mm)、D0は、鋳片の鋳型出口での厚み(mm)である。
total<D0/10・・・(5)
総圧下量が多くなると、軽圧下帯14での圧下時に、鋳片10に内部割れが発生する虞があるが、総圧下量が(5)式を満足する範囲内であるならば、鋳片10の内部割れを抑制することができる。
以上説明したように、本発明によれば、(1)式を満足するように各圧下区間の鋳造方向長さを設定するので、定常鋳造域及び非定常鋳造域において、鋳片中心部の固相率が0.9となる部位の鋳片は軽圧下帯の範囲内に存在し、定常鋳造域の鋳片は当然として、非定常鋳造域の鋳片であっても、凝固末期の鋳片長辺面に軽圧下帯14での圧下力を付与することができ、また、(2)式、(3)式及び(4)式を満足するように鋳片10を圧下するので、鋳片10に内部割れを生じることなく鋳片10の中心偏析を抑制することができる。
尚、図1に示す連続鋳造機は垂直曲げ型連続鋳造機であるが、本発明は垂直曲げ型連続鋳造機に限定されるものではなく、湾曲型連続鋳造機であってもまた垂直型連続鋳造機であっても、上記と同様に本発明を適用することができる。
図1に示す、上部に強制バルジング帯が配置され、その下方に鋳造方向で2つに分割された軽圧下帯が配置されたスラブ連続鋳造機を用い、鋳造するスラブ鋳片の鋳型出口での厚み(D0)、強制バルジング帯でのバルジング総量(δIB)、第1番目及び第2番目の圧下区間での鋳造方向長さ(L1、L2)、圧下量(R1、R2)、圧下速度((R1/L1)×V、(R2/L2)×V)を種々変更し、低炭素アルミキルド鋼を鋳造する試験を合計15回行った。鋳片の幅は、全ての試験で2100mmであった。
表1に、条件1〜15の各鋳造試験での鋳造条件、バルジング総量、圧下条件、及び、鋳造されたスラブ鋳片における中心偏析度、ポロシティー、内部割れの調査結果を示す。尚、表1の備考欄には、本発明の範囲内の条件の試験を「本発明例」と表示し、それ以外を「比較例」と表示している。
Figure 0006152824
各試験の鋳造条件において、二次元伝熱凝固計算によって鋳片引き抜き速度が一定に保持される定常鋳造域(表1の「最高引き抜き速度」)の場合、及び、取鍋交換または鋳造終了時の非定常鋳造域での鋳片引き抜き速度(表1の「最低引き抜き速度」)の場合での凝固完了位置を求め、求めたそれぞれの凝固完了位置から、凝固完了位置の鋳造中での鋳造方向変動範囲βを算出した。
その結果、鋳片引き抜き速度が1.00〜1.60m/minの範囲の条件1〜10では、鋳造方向変動範囲βが8mであり、鋳片引き抜き速度が0.75〜1.10m/minの範囲の条件11〜15では、鋳造方向変動範囲βが6mであることがわかった。表1には、これらの値を記載している。条件1〜9は、第1番目及び第2番目の圧下区間での鋳造方向長さの和(L1+L2)が10mであり、また、条件11〜15は、第1番目及び第2番目の圧下区間での鋳造方向長さの和(L1+L2)が8mであり、これらは何れも(1)式を満足していた。但し、条件10は、第1番目の圧下区間が設定されておらず、(1)式を満足していない。尚、条件10は第1番目の圧下区間が設定されておらず、表1の「第2番目の圧下区間」の記載は正確ではないが、これは他の条件に揃えて表示したことによる。
鋳片の中心偏析度の測定方法は、鋳片の横断面中心部で鋳片厚さ方向に炭素濃度を分析し、その最大値をCmaxとし、平均炭素濃度(溶鋼から採取した試料の炭素濃度)をC0とし、Cmax/C0を中心偏析度と定義した。この定義では、中心偏析度が1.00に近づくほど中心偏析は低減することになる。中心偏析度が1.10以上になると水素誘起割れなどの中心偏析による弊害が激しくなるので、ここでは、中心偏析度の閾値を1.08とし、1.08以上を不合格と判定した。鋳片のポロシティー及び内部割れは、鋳造した鋳片の横断面をマクロ組織試験方法(JIS G 0553)によって腐食し、腐食面の鋳片厚み中心部を顕微鏡で観察し、ポロシティー及び内部割れの有無を調査した。
条件1〜3、条件6〜8及び条件11〜13は、本発明で規定した(1)式、(2)式、(3)式、(4)式の全てを満足しており、中心偏析度は1.058以下であり、ポロシティー及び内部割れとも発生しなかった。
これに対して、条件4は、総圧下量(=8mm)がバルジング総量(=6mm)を超えており、つまり、(2)式を満足しておらず、中心偏析度が悪化し、内部割れが発生した。これは、鋳片の総圧下量が過大であり、鋳片短辺面が圧下され、軽圧下帯のロールセグメントの荷重が増加し、鋳片に適切な圧下力を付与できなかったためと考えられる。同様に、条件14も総圧下量(=12mm)がバルジング総量(=8mm)に対して過大であり、中心偏析度は高く、内部割れが発生し、一部に逆V偏析も確認された。
条件5は、第2番目の圧下区間での圧下速度((R2/L2)×V)が2.0〜3.2mm/minであり、(4)式を満足しておらず、つまり、圧下速度が過大であり、また、本発明の好ましい条件である(5)式も満足しておらず、中心偏析度は高く、内部割れが発生し、一部に逆V偏析も確認された。
条件9は、第1番目の圧下区間での圧下量(=5mm)が第2番目の圧下区間での圧下量(=4mm)よりも大きく、(3)式を満足しておらず、内部割れ、ポロシティーは良好であったが、中心偏析の低減効果が十分に得られなかった。
条件10は、バルジング総量に対する総圧下量が本発明の範囲であり、第2番目の圧下区間での圧下速度((R2/L2)×V)も本発明の範囲内であったが、第1番目の圧下区間が設定されておらず、軽圧下帯の鋳造方向長さが6mと短く、非定常鋳造域において凝固完了位置が軽圧下帯の範囲外となり、圧下量が付与されず、中心偏析度は高く、内部割れ及びポロシティーが発生した。
条件15は、第2番目の圧下区間での圧下速度((R2/L2)×V)が0.25〜0.28mm/minであり、(4)式を満足しておらず、つまり、圧下速度が過小であり、中心偏析度は高く、内部割れ及びポロシティーが発生した。
1 スラブ連続鋳造機
2 タンディッシュ
3 スライディングノズル
4 浸漬ノズル
5 鋳型
6 鋳片支持ロール
6A ピンチロール
6B ガイドロール
7 搬送ロール
8 鋳片切断機
9 溶鋼
10 鋳片
11 凝固シェル
12 未凝固層
13 凝固完了位置
14 軽圧下帯
14A ロールセグメント
14B ロールセグメント
15 強制バルジング帯
16 油圧シリンダー
17 フレーム
17′ フレーム
18 タイロッド
19 皿バネ
20 ウオームジャッキ
21 モーター
22 ロールチョック
23 シリンダーロッド

Claims (3)

  1. 複数対の鋳片支持ロールのロール開度を鋳造方向下流側に向かって段階的に増加させて鋳片長辺面を1〜30mmの範囲のバルジング総量でバルジングさせ、その後、複数対の鋳片支持ロールのロール開度を鋳造方向下流側に向かって段階的に減少させた軽圧下帯で、少なくとも、鋳片厚み中心部の固相率が0.9となる部位の鋳片の長辺面を圧下する鋼の連続鋳造方法であって、
    前記軽圧下帯は、複数対の鋳片支持ロールが配置されるロールセグメントで形成され、当該ロールセグメントは、当該ロールセグメントで形成する軽圧下帯の範囲内に、鋳片厚み中心部の固相率が0.9を超える鋳片が存在する場合には、鋳片の圧下抵抗によるロールセグメントへの負荷荷重によって収縮して当該ロールセグメントに配置される鋳片支持ロールのロール開度を拡大させる皿バネを備えており、
    前記軽圧下帯を、鋳造方向にn(n≧2)個の圧下区分に分割し、且つ、分割した後の各圧下区分の鋳造方向長さの和が凝固完了位置の鋳造中での鋳造方向変動範囲に対して下記の(1)式を満足するように各圧下区分の鋳造方向長さを設定し、
    分割した各圧下区間での圧下量の合計値である鋳片の総圧下量を下記の(2)式に示すように前記バルジング総量の0.7倍以上1.0倍以下の範囲内に設定するともに、それぞれの圧下区間での圧下量を下記の(3)式に示すように下流側の圧下区間ほど大きいか等しくなるように設定し、且つ、鋳造方向上流側からn番目つまり最下流の圧下区間における圧下速度を下記の(4)式に示すように0.3〜1.5mm/minの範囲内に設定することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
    ΣLi≧β+2・・・(1)
    0.7×δIB≦Rtotal≦δIB・・・(2)
    i≦Ri+1・・・(3)
    0.3≦最下流の圧下区間での圧下速度(=(Rn/Ln)×V)≦1.5・・・(4)
    但し、(1)式、(2)式、(3)式及び(4)式において、ΣLiは、各圧下区分の鋳造方向長さの和(m)、βは、凝固完了位置の鋳造中での鋳造方向変動範囲(m)であって、具体的には、定常鋳造域における鋳片引き抜き速度での凝固完了位置(鋳型内溶鋼湯面からの距離L CEst )と、連々鋳の取鍋交換や鋳造終了時の非定常鋳造域において鋳片引き抜き速度が定常鋳造域での鋳片引き抜き速度よりも低下するときの凝固完了位置(鋳型内溶鋼湯面からの距離L CEunst )と、の間の距離(=L CEst −L CEunst 、δIBは、鋳片のバルジング総量(mm)、Rtotalは、各圧下区間での圧下量の合計値である鋳片の総圧下量(mm)、Riは、鋳造方向上流側からi番目の圧下区間での圧下量(mm)、Ri+1は、鋳造方向上流側から「i+1」番目の圧下区間での圧下量(mm)、Rnは、鋳造方向上流側から第n番目つまり最下流の圧下区間での圧下量(mm)、Lnは、鋳造方向上流側から第n番目つまり最下流の圧下区間の鋳造方向長さ(m)、Vは、鋳片引き抜き速度(m/min)である。
  2. 前記鋳片の総圧下量を、鋳片の鋳型出口での厚みに対して下記の(5)式を満足するように設定することを特徴とする、請求項1に記載の鋼の連続鋳造方法。
    total<D0/10・・・(5)
    但し、(5)式において、Rtotalは、鋳片の総圧下量(mm)、D0は、鋳片の鋳型出口での厚み(mm)である。
  3. 前記軽圧下帯を、鋳造方向上流側の第1番目の圧下区間と鋳造方向下流側の第2番目の圧下区間との2区間に分割することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の鋼の連続鋳造方法。
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