JP2011005525A - 鋼鋳片の連続鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 鋳造中に軽圧下帯のセグメント開度を調整可能とする機能を備えていない一般的な連続鋳造機であっても、軽圧下帯での圧下速度を、鋳造速度が変更した場合もほぼ同等の値に維持でき、鋼の連続鋳造鋳片の中心部に発生する中心偏析を低減する。
【解決手段】 鋳造中の鋳片10に圧下力を付与することの可能な複数本の圧下ロールからなる軽圧下帯14を有する連続鋳造機1を用い、前記圧下ロールで凝固末期の鋳片を圧下しながら鋼鋳片を連続鋳造するにあたり、前記軽圧下帯における圧下勾配を鋳造方向下流側ほど小さく設定し、当該軽圧下帯を用い、少なくとも、鋳片の厚み中心部の固相率が0.4以下の時点から0.8以上になる時点まで、0.9〜1.3mm/minの範囲内の圧下速度で鋳片を圧下する。
【選択図】 図1
【解決手段】 鋳造中の鋳片10に圧下力を付与することの可能な複数本の圧下ロールからなる軽圧下帯14を有する連続鋳造機1を用い、前記圧下ロールで凝固末期の鋳片を圧下しながら鋼鋳片を連続鋳造するにあたり、前記軽圧下帯における圧下勾配を鋳造方向下流側ほど小さく設定し、当該軽圧下帯を用い、少なくとも、鋳片の厚み中心部の固相率が0.4以下の時点から0.8以上になる時点まで、0.9〜1.3mm/minの範囲内の圧下速度で鋳片を圧下する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、鋼鋳片の連続鋳造方法に関し、詳しくは、中心偏析の軽微な鋼の連続鋳造鋳片を製造するための連続鋳造方法に関するものである。
鋼の凝固過程では体積収縮(凝固収縮ともいう)が起こり、この収縮に伴って、連続鋳造鋳片の場合には、鋳片の引き抜き方向へ未凝固溶鋼が吸引されて流動する。凝固収縮による、この吸引・流動に伴い、炭素、燐、硫黄などの溶質元素が濃縮されたデンドライト樹間の溶鋼(「濃化溶鋼」という)が流動を起こし、それが鋳片の厚み中心部に集積して凝固し、所謂、中心偏析が形成される。凝固末期の溶鋼が流動する要因としては、上記の凝固収縮の他に、溶鋼静圧によるロール間での鋳片バルジング(膨らみ)や、鋳片支持ロールのロールアライメントの不整合なども挙げられる。
この中心偏析は、鋼製品、特に厚鋼板の品質を劣化させる。例えば、石油輸送用や天然ガス輸送用のラインパイプ材においては、サワーガスの作用により中心偏析を起点として水素誘起割れが発生し、また、海洋構造物、貯槽、石油タンクなどにおいても、同様の問題が発生する。しかも近年、鋼材の使用環境は、より低温下或いはより腐食環境下といった厳しい環境での使用を求められることが多く、鋳片の中心偏析を低減することの重要性は益々大きくなっている。
これに対処するべく、連続鋳造工程から圧延工程に至るまで、鋳片の中心偏析を低減する或いは無害化する対策が多数提案されている。
そのなかで、効果的に鋳片の中心偏析を低減する手段として、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されるように、鋳片の凝固完了位置付近に圧下ロールを配置し、この圧下ロールにより連続鋳造中の鋳片を凝固収縮量と熱収縮量との和に相当する程度の圧下量で徐々に圧下し、鋳片中心部での空隙の形成や濃化溶鋼の流動を防止し、鋳片の中心偏析を改善する方法が提案されている。鋳片を凝固収縮量及び熱収縮量の和に相当する程度の圧下量で徐々に圧下する上記技術は、「軽圧下」或いは「軽圧下法」と呼ばれている。尚、近年の連続鋳造機は、複数本のロールを備えたセグメントで構成されるセグメント方式の連続鋳造機が主流であり、従って、軽圧下を実施する圧下ロール群(「軽圧下帯」という)も複数のセグメントから構成され、相対するロールの間隔を、セグメントの入り側と出側とで、入り側を出側よりも大きく調整することにより、軽圧下帯が構成されている。
しかしながら、従来の軽圧下法では以下の問題点があった。
即ち、鋳造中にセグメントの開度つまり軽圧下帯のロール間隔を調整可能とする機能を備えていない一般的な連続鋳造機においては、鋳造速度などの鋳造条件が定常状態のときに合わせて軽圧下帯のロール開度を設定する。例えば、鋳片凝固シェルの成長速度に照らし合わせた最適な圧下速度が1.0mm/minである場合、軽圧下帯における圧下勾配、つまりロール間隔の絞込み量を0.8mm/mに設定した連続鋳造機では、目標とする圧下速度(=1.0mm/min)が得られるのは、鋳造速度が1.25m/minの定常状態で鋳造された鋳片のみである。尚、圧下速度(mm/min)は、圧下勾配(mm/m)と鋳造速度(m/min)との積(=乗算値)で与えられる。
つまり、鋳造速度が変化した場合には、最適とする圧下速度から乖離し、中心偏析の改善効果は損なわれる。特に、鋳造速度が低い場合には、圧下速度は目標値を下回る値となる。これでは、中心偏析低減に必要な軽圧下量が得られないことになる。
連続鋳造においては、鋳造の初期や末期の非定常鋳造域で必然的に鋳造速度が低下する。また、溶鋼温度が高くて鋳造速度を予定した目標速度に上げられず、目標速度よりも低速で鋳造する場合や、複数のチャージを連続して鋳造する連々鋳のときに次のチャージの準備が遅れて鋳造速度を下げざるを得ないような場合には、目標速度から逸脱した鋳造速度で鋳造される鋳片、換言すれば中心偏析の悪化した鋳片が大量に発生することになる。
このような問題を解決するために、例えば特許文献3に提案されるように、鋳造中にセグメント開度を変更する機能を備えた連続鋳造機を用い、鋳造速度に応じて軽圧下帯を鋳造方向の上流側または下流側に移動させて軽圧下する技術が提案されているが、既設の連続鋳造機にこうした機能を付与することは多くの設備改造が必要で、多大の設備改造費が必要となり、実現化は困難といわざるを得ない。
現在、連続鋳造鋳片に対する品質要求レベルは高まり、以前にも増して中心偏析の少ない鋳片が求められている。そのために、鋳造中に軽圧下帯のセグメント開度を調整可能とする機能を備えていない一般的な連続鋳造機においては、中心偏析対策として、目標とする鋳造速度で鋳造することを第1の目標とし、鋳造速度を変更した部位の鋳片は、優れた品質を確保しない限り、低級品質鋳片へと格下げするなどの処置が採られていた。これは、鋳片歩留まりを低下させることであり、このような形態は、工業生産上からも望ましい形態とはいえない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鋳造中に軽圧下帯のセグメント開度を調整可能とする機能を備えていない一般的な連続鋳造機であっても、軽圧下帯での圧下速度を、鋳造速度が変更した場合もほぼ同等の値に維持でき、鋼の連続鋳造鋳片の中心部に発生する中心偏析を低減することのできる、鋼鋳片の連続鋳造方法を提供することである。
上記課題を解決するための第1の発明に係る鋼鋳片の連続鋳造方法は、鋳造中の鋳片に圧下力を付与することの可能な複数本の圧下ロールからなる軽圧下帯を有する連続鋳造機を用い、前記圧下ロールで凝固末期の鋳片を圧下しながら鋼鋳片を連続鋳造するにあたり、前記軽圧下帯における圧下勾配を鋳造方向下流側ほど小さく設定し、当該軽圧下帯を用い、少なくとも、鋳片の厚み中心部の固相率が0.4以下の時点から0.8以上になる時点まで、0.9〜1.3mm/minの範囲内の圧下速度で鋳片を圧下することを特徴とするものである。
第2の発明に係る鋼鋳片の連続鋳造方法は、第1の発明において、前記軽圧下帯における圧下勾配を、鋳型内溶鋼湯面からの距離に反比例するように、下記の(1)式で示す圧下勾配に設定することを特徴とするものである。
S=A/L …(1)
但し、(1)式において、Sは圧下勾配(mm/m)、Lは鋳型内溶鋼湯面からの距離(m)、Aは鋳片の厚みと冷却条件とで定まる定数(mm)である。
S=A/L …(1)
但し、(1)式において、Sは圧下勾配(mm/m)、Lは鋳型内溶鋼湯面からの距離(m)、Aは鋳片の厚みと冷却条件とで定まる定数(mm)である。
本発明によれば、鋳造中の凝固末期の鋳片を軽圧下帯で圧下しながら連続鋳造するにあたり、軽圧下帯の圧下勾配を鋳造方向下流側ほど小さく設定しているので、鋳片の凝固完了位置は鋳造速度に比例して鋳造方向上流側または下流側へ移動するが、鋳造速度が遅い場合の凝固完了位置の圧下勾配は相対的に大きく、一方、鋳造速度が速い場合の凝固完了位置の圧下勾配は相対的に小さくなり、凝固完了位置付近の圧下速度(圧下勾配と鋳造速度との積)は変化しないまたは大きく変化せず、従って、鋳造速度が変化しても、凝固完了位置が軽圧下帯に存在する鋳造条件である限り、軽圧下によって鋳片の中心偏析を改善することが実現される。その結果、鋳造速度が変更された鋳片や非定常鋳造域の鋳片の中心偏析が改善され、鋳片歩留まりを高めることができ、省資源、省エネルギー、製造コスト低減などの工業上有益な効果がもたらされる。
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は、本発明を実施する際に用いたスラブ連続鋳造機の側面概略図である。
図1に示すように、スラブ連続鋳造機1には、溶鋼9を注入して凝固させ、鋳片10の外殻形状を形成するための鋳型5が設置され、この鋳型5の上方所定位置には、取鍋(図示せず)から供給される溶鋼9を鋳型5に中継供給するためのタンディッシュ2が設置されている。タンディッシュ2の底部には、溶鋼9の流量を調整するためのスライディングノズル3が設置され、このスライディングノズル3の下面には、浸漬ノズル4が設置されている。一方、鋳型5の下方には、サポートロール、ガイドロール及びピンチロールからなる複数対の鋳片支持ロール6が配置されている。鋳造方向に隣り合う鋳片支持ロール6の間隙には、水スプレーノズル或いはエアーミストスプレーノズルなどのスプレーノズル(図示せず)が配置された二次冷却帯が構成され、二次冷却帯のスプレーノズルから噴霧される冷却水(「二次冷却水」ともいう)によって鋳片10は引抜かれながら冷却されるようになっている。また、鋳造方向最終の鋳片支持ロール6の下流側には、鋳造された鋳片10を搬送するための複数の搬送ロール7が設置されており、この搬送ロール7の上方には、鋳造される鋳片10から所定の長さの鋳片10aを切断するための鋳片切断機8が配置されている。
鋳片10の凝固完了位置13を挟んで鋳造方向の上流側及び下流側には、鋳片10を挟んで対向する鋳片支持ロール間の間隔(この間隔を「ロール間隔」と呼ぶ)を鋳造方向下流側に向かって順次狭くなるように設定された、複数対の鋳片支持ロール群から構成される軽圧下帯14が設置されている。軽圧下帯14では、その全域または一部選択した領域で、鋳片10に軽圧下を行うことが可能である。軽圧下帯14の各鋳片支持ロール間にも鋳片10を冷却するためのスプレーノズルが配置されている。尚、軽圧下帯14の鋳片支持ロール6を、軽圧下を施すためのロールであることから「圧下ロール」とも称している。また、鋳造方向下流に向かって順次狭くなるように設定されたロール間隔の状態を「圧下勾配」と称している。通常、圧下勾配は、鋳造方向1m当たりのロール間隔絞り込み量、つまり「mm/m」で表示される。従って、軽圧下帯14における、鋳片10の圧下速度(mm/min)は、この圧下勾配(mm/m)に鋳造速度(m/min)を乗算することで得られる。
図1に示す軽圧下帯14は、3対の圧下ロールを1組とするセグメント構造の圧下ロール群が鋳造方向に3基つながって構成されており、各セグメントの鋳片上面側(連続鋳造機1の反基準面側)のセグメントには、その上流側端部及び下流側端部に、油圧或いは電動機による遠隔操作によって、鋳片10が存在しない条件下、即ち圧下ロールに鋳片10からの負荷が作用しない条件下で圧下ロールの間隔を調整可能なロール間隔調整装置(図示せず)が設置されている。但し、セグメント構造であるので、3対の圧下ロールのロール間隔が一括して調整されるようになっている。遠隔操作による圧下ロールの移動量は、作動トランス、ウオームジャッキの回転数、レーザー光を利用した距離計などにより測定されており、それぞれのセグメントの圧下勾配が分かるようになっている。尚、鋳片10が存在する場合には、鋳片10による負荷が大きく、例えば電動機の場合ウオームジャッキが接触抵抗により回転せず、ロール間隔の調整は不可能である。また、図示はしないが、圧下ロール以外の鋳片支持ロール6もセグメント構造となっている。また更に、図1に示すセグメントは3対の圧下ロールで構成されているが、セグメントは3対の圧下ロールで構成されたものに限るものではなく、4対以上の圧下ロールで構成されるセグメントも本発明の適用範囲である。
本発明では、鋳造速度が変更されても、軽圧下帯14における、凝固末期の鋳片10に対する圧下速度が0.9〜1.3mm/minの範囲内となるようにするために、軽圧下帯14の圧下勾配を、鋳造方向の下流側ほど小さく設定し、好ましくは下記の(1)式で示されるように、鋳型内溶鋼湯面からの距離に反比例させて設定する。
S=A/L …(1)
但し、(1)式において、Sは軽圧下帯14の圧下勾配(mm/m)、Lは鋳型内溶鋼湯面からの距離(m)、Aは鋳片の厚みと冷却条件とで定まる定数(mm)である。
S=A/L …(1)
但し、(1)式において、Sは軽圧下帯14の圧下勾配(mm/m)、Lは鋳型内溶鋼湯面からの距離(m)、Aは鋳片の厚みと冷却条件とで定まる定数(mm)である。
尚、定数Aは任意の値を採ることはできず、軽圧下帯14における、凝固末期の鋳片10に対する圧下速度を0.9〜1.3mm/minの範囲内とするには、鋳片10の厚みDと、二次冷却条件から定まる凝固係数Kとから決定される(A=(D/2K)2×圧下速度)。因みに、鋳片10の厚みが250mm、凝固係数Kの値が28mm・min-1/2の場合には、Aの値は、およそ18(圧下速度=0.9mm/minに対応)〜26(圧下速度=1.3mm/minに対応)の範囲内となる。
軽圧下帯14の圧下勾配を、鋳造方向の下流側ほど小さくなるように設定することで、鋳造速度が変更されても凝固末期の鋳片10に対する圧下速度の変更は少なく、特に、鋳型内溶鋼湯面からの距離に反比例するように設定した場合には、鋳造速度が変更されても圧下速度は一定のままとなる。これは、凝固完了位置13は鋳造速度に比例して伸縮するが、圧下勾配が鋳型内溶鋼湯面からの距離に反比例して増減するので、圧下勾配と鋳造速度との積である圧下速度は、両者が相殺して一定となるからである。
軽圧下帯14の圧下勾配は、例えば、以下のようにして設定することができる。図1に示す軽圧下帯14はセグメント構造であるので、セグメントの鋳造方向中心位置で定められる圧下勾配でセグメント全体の圧下勾配を設定してもよく、また、セグメントの圧下ロール1本毎に、(1)式により定まる圧下勾配となるロール間隔に予めオフラインのセグメント整備段階で設定してもよい。尚、軽圧下帯14がセグメント構造でない場合には、圧下ロールのロール1本毎に(1)式により定まる圧下勾配となるロール間隔に設定すればよい。
この場合、鋳造速度の変更によって、凝固完了位置13が軽圧下帯14よりも鋳造方向上流側になったり、下流側に大幅に伸びたりした場合には、軽圧下の効果は発現しないので、鋳造速度の影響を少なくするために、軽圧下帯14の鋳造方向長さを少なくとも6m以上、望ましくは10m以上とすることが好ましい。
このようにして構成されるスラブ連続鋳造機1を用い、以下のようにして本発明を実施する。
取鍋からタンディッシュ2に溶鋼9を注入してタンディッシュ2に所定量の溶鋼9を滞留させ、次いで、タンディッシュ2に滞留した溶鋼9を、浸漬ノズル4を介して鋳型5に注入する。鋳型5に注入された溶鋼9は、鋳型5で冷却されて凝固シェル11を形成し、外殻を凝固シェル11とし、内部に未凝固相12を有する鋳片10として、鋳片支持ロール6に支持されながらピンチロールによって鋳型5の下方に連続的に引抜かれる。鋳片10は、鋳片支持ロール6を通過する間、二次冷却帯の二次冷却水で冷却され、凝固シェル11の厚みを増大し、軽圧下帯14で軽圧下されながら凝固完了位置13で内部までの凝固を完了する。その後、凝固完了した鋳片10は、鋳片切断機8によって切断されて鋳片10aとなる。
二次冷却水量は、鋳造する鋼種に応じて、比水量としての換算値で0.8〜3.0リットル/kg-steel程度とする。ここで、比水量とは、連続鋳造機の二次冷却帯の全域において、鋳片1kgを冷却するのに要する二次冷却水の水量という意味である。一般に、割れ感受性の高い鋼種では比水量を少なくし、逆に、割れ感受性の低い鋼種では比水量を多くすることが行われている。
この場合、定常鋳造域においては、凝固完了位置13が、軽圧下帯14に位置するように、予め二次元伝熱凝固計算などの手法を用いて求めた鋳造速度及び二次冷却水量を設定する。一般的には、鋳造中に、定常鋳造域の鋳造速度を増速することは少ないので、凝固完了位置13が軽圧下帯14の後半部に位置するように、鋳造速度及び二次冷却水量を設定することが好ましい。
鋳片10の中心偏析を防止するためには、鋳片10の中心部の固相率が少なくとも0.4〜0.8の期間は継続して軽圧下することが必要である。本実施形態例では、凝固完了位置13を軽圧下帯14に位置させるので、鋳片中心部の固相率が0.8を超える範囲まで鋳片10には軽圧下が施されるが、鋳片10が軽圧下帯14に到達するときの鋳片10の中心部の固相率として0.4を確保する必要があり、この観点からも、軽圧下帯14の後半部に凝固完了位置13を位置させることが好ましい。軽圧下帯14の鋳造方向長さが6m以上であれば、軽圧下帯14の後半部に凝固完了位置13を位置させたときには、軽圧下帯14の入側での鋳片中心部の固相率は0.4以下を確保することができる。
尚、上記のように鋳片10の軽圧下期間を規定する理由は、鋳片中心部の固相率が0.4未満の範囲は未凝固相12が多く溶鋼流動が発生しても中心偏析には至らず、一方、鋳片中心部の固相率が0.8を超える範囲はバルジングなどが発生しても溶鋼流動が生じず、どちらも軽圧下の効果が見られなくなり、軽圧下の必要性がないからである。但し、この範囲を軽圧下しても全く問題はない。鋳片中心部の固相率は、二次元伝熱凝固計算によって求めることができる。鋳片中心部の固相率が1.0となる位置が凝固完了位置13である。
このようにして連続鋳造することで、凝固完了位置13が軽圧下帯14に存在する限り、鋳造速度の如何にかかわらず、凝固末期の鋳片10は0.9〜1.3mm/minの範囲内の一定速度の圧下速度で軽圧下される。その結果、鋳造速度が相対的に低下する鋳造の初期や末期、或いは何らかの理由で鋳造速度を低下した場合であって、所定の圧下量で圧下され、中心偏析の改善がなされる。
本発明では圧下速度を0.9〜1.3mm/minの範囲内に規定するが、その理由は以下のとおりである。即ち、本発明は、中心偏析が極めて軽微な鋳片10aを製造することを目的としており、圧下速度が0.9mm/min未満では、濃化溶鋼の流動を十分に阻止することができず、一方、圧下速度が1.3mm/minを越えると、セグメントに対する荷重負荷が増大するのみならず、濃化溶鋼が鋳造方向とは逆方向に絞り出され、鋳片中心部には負偏析が生成される恐れがあるからである。また、中心偏析を軽減するためには、総圧下量は2〜6mm程度で十分であるが、これ以上であっても構わない。
以上説明したように、本発明によれば、軽圧下帯14の圧下勾配を鋳造方向下流側ほど小さく設定しているので、鋳造速度が遅い場合の凝固完了位置13での圧下勾配は相対的に大きく、一方、鋳造速度が速い場合の凝固完了位置13での圧下勾配は相対的に小さくなり、鋳造中に軽圧下帯14のセグメント開度を調整可能とする機能を備えていない一般的な連続鋳造機であっても、凝固完了位置付近の圧下速度は変化しないまたは大きく変化せず、従って、鋳造速度が変化しても、凝固完了位置13が軽圧下帯14に存在する鋳造条件である限り、軽圧下によって鋳片の中心偏析を改善することが実現される。
尚、本発明は上記説明に限るものではなく、種々の変更が可能である。例えば、図1では、スラブ連続鋳造機1の水平部に軽圧下帯14が設置されているが、鋳片支持ロール6の設置されている範囲であればどこであっても、例えば湾曲部であっても軽圧下帯14とすることができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。前述した図1に示す垂直曲げ型のスラブ連続鋳造機を用い、厚み250mm、幅1900〜2100mmのスラブ鋳片を鋳造した。スラブ連続鋳造機の設備長は45mであり、軽圧下帯は鋳型内溶鋼湯面位置から15〜32mの範囲に設置されている。鋳造速度が約0.75m/minのときに、凝固完了位置が鋳型内溶鋼湯面位置から15mの位置(=軽圧下帯の入口)になり、鋳造速度が約1.6m/minのときに、凝固完了位置が鋳型内溶鋼湯面位置から32mの位置(=軽圧下帯の出口)になるように、二次冷却水量を調整した。この場合の凝固係数Kの値は約28mm・min-1/2となる。尚、この二次冷却条件では、軽圧下帯の入口で鋳片厚み中心部の固相率が0.4となる鋳造速度は、約0.85m/minのときであり、従って、鋳造速度が0.85〜1.6m/minの範囲では、少なくとも鋳片厚み中心部の固相率が0.4以下の時点から0.8以上になる時点まで、鋳片には軽圧下帯にて圧下力が付与される。
圧下速度が0.9mm/min(発明例1)、1.1mm/min(発明例2)、1.2mm/min(発明例3)及び1.3mm/min(発明例4)になるように、(1)式に基づいて軽圧下帯の圧下勾配を設定した。また、比較のために、圧下帯の圧下勾配を0.86mm/mの一定に設定した鋳造(比較例1)、及び、圧下速度が0.6mm/min(比較例2)、0.8mm/min(比較例3)、1.4mm/min(比較例4)、及び1.8mm/min(比較例5)になるように、軽圧下帯の圧下勾配を(1)式に基づいて設定した鋳造も実施した。
鋳造速度は、発明例及び比較例ともに、定常鋳造域は1.3m/minとした。この場合、凝固完了位置は鋳型内溶鋼湯面から約26mの位置となる。また、非定常域である鋳造の初期では、0.3m/minの鋳造速度で鋳造を開始し、0.3m/minから漸次増速して1.3m/minとし、また、非定常域である鋳造の末期では、1.3m/minから漸次減速して一旦引き抜きを停止し、その時点で鋳型への注入を終了し、その後、漸次増速して1.5m/minで再引き抜きした。
図2に、軽圧下帯における圧下勾配を発明例2と比較例1とで対比して示し、また、図3に、鋳造速度に応じて凝固完了位置が軽圧下帯のそれぞれの位置に位置したときの凝固末期鋳片にはたらく圧下速度を、発明例2と比較例1とで対比して示す。凝固完了位置は鋳造速度に応じて鋳造方向上流側または下流側に移動するが、これらの図からも明らかなように、発明例2では、鋳造速度の如何にかかわらず圧下速度は常に1.1mm/minであるのに対し、比較例1では、鋳造速度に応じて凝固末期鋳片にはたらく軽圧下の圧下速度は変化し、本発明で規定する0.9〜1.3mm/minの圧下速度の範囲を保てない場合が発生する。尚、比較例1では、定常鋳造域では約1.1mm/min(=1.3×0.86)の圧下速度となり、また、比較例2〜5では鋳造速度が変化しても圧下速度は一定となる。
鋳造後、鋳片を厚鋼板に熱間圧延し、定常域の鋳片及び非定常域の鋳片を圧延して製造された厚鋼板から試料を採取して水素誘起割れ試験(HIC試験)を実施し、水素誘起割れ試験結果から中心偏析を評価した。水素誘起割れ試験は、試験溶液をNACE溶液(5%NaCl+0.5%CH3COOHの硫化水素飽和溶液、pH=3.7)とし、浸漬時間を96時間、試験溶液温度を25℃として測定した結果である。
表1に、軽圧下帯における圧下速度、及び、水素誘起割れ試験とそれに基づく中心偏析の評価結果を示す。尚、表1の中心偏析評価の欄の「○」印は良好、「△」印はやや不良、「×」印は不良を示している。水素誘起割れ試験での割れ面積率が6%未満を「○」、6%以上10%未満を「△」、10%以上を「×」として評価している。
表1に示すように、比較例1は、定常鋳造域では0.9〜1.3mm/minの範囲内の圧下速度を確保できることから、定常鋳造域鋳片の中心偏析は良好であったが、非定常域の鋳片では、圧下速度が0.9〜1.3mm/minの範囲から外れて、中心偏析は不良であった。比較例2〜5では、圧下速度が本発明の範囲を外れており、水素誘起割れ試験の割れ面積率が全般的に高く、中心偏析の改善効果が十分でないことが分かった。
これに対して、発明例1〜4では、定常域鋳片の中心偏析は良好であり、また、非定常域鋳片も圧下速度が変化しないことから、定常域鋳片に比較すれば劣るものの、比較例2〜5の定常域鋳片に比較しても、鋳片偏析は軽微であることが確認できた。
1 スラブ連続鋳造機
2 タンディッシュ
3 スライディングノズル
4 浸漬ノズル
5 鋳型
6 鋳片支持ロール
7 搬送ロール
8 鋳片切断機
9 溶鋼
10 鋳片
11 凝固シェル
12 未凝固相
13 凝固完了位置
14 軽圧下帯
2 タンディッシュ
3 スライディングノズル
4 浸漬ノズル
5 鋳型
6 鋳片支持ロール
7 搬送ロール
8 鋳片切断機
9 溶鋼
10 鋳片
11 凝固シェル
12 未凝固相
13 凝固完了位置
14 軽圧下帯
Claims (2)
- 鋳造中の鋳片に圧下力を付与することの可能な複数本の圧下ロールからなる軽圧下帯を有する連続鋳造機を用い、前記圧下ロールで凝固末期の鋳片を圧下しながら鋼鋳片を連続鋳造するにあたり、前記軽圧下帯における圧下勾配を鋳造方向下流側ほど小さく設定し、当該軽圧下帯を用い、少なくとも、鋳片の厚み中心部の固相率が0.4以下の時点から0.8以上になる時点まで、0.9〜1.3mm/minの範囲内の圧下速度で鋳片を圧下することを特徴とする、鋼鋳片の連続鋳造方法。
- 前記軽圧下帯における圧下勾配を、鋳型内溶鋼湯面からの距離に反比例するように、下記の(1)式で示す圧下勾配に設定することを特徴とする、請求項1に記載の鋼鋳片の連続鋳造方法。
S=A/L …(1)
但し、(1)式において、Sは圧下勾配(mm/m)、Lは鋳型内溶鋼湯面からの距離(m)、Aは鋳片の厚みと冷却条件とで定まる定数(mm)である。
Priority Applications (1)
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JP2009151933A JP2011005525A (ja) | 2009-06-26 | 2009-06-26 | 鋼鋳片の連続鋳造方法 |
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---|---|---|---|---|
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JP2015202510A (ja) * | 2014-04-15 | 2015-11-16 | Jfeスチール株式会社 | 鋼の連続鋳造方法 |
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2009
- 2009-06-26 JP JP2009151933A patent/JP2011005525A/ja not_active Withdrawn
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