JP7139221B2 - 状態判定装置および状態判定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、加熱装置の制御対象の状態を判定する技術に係り、特に状態判定のための指標を算出するのに妥当ではない制御ループ条件を排除することができる状態判定装置および状態判定方法に関するものである。
温調計などの制御機器は、図9に示すような熱操作装置である加熱装置の温度制御に利用される。図9の加熱装置は、処理対象のワークを加熱する加熱処理炉100と、電気ヒータ101と、加熱処理炉100内の温度を計測する温度センサ102と、加熱処理炉100内の温度を制御する温調計103と、電力調整器104と、電力供給回路105と、加熱装置全体を制御するPLC(Programmable Logic Controller)106とから構成される。温調計103は、温度センサ102が計測した温度(制御量PV)が温度設定値SPと一致するように操作量MVを算出する。電力調整器104は、操作量MVに応じた電力を決定し、この決定した電力を電力供給回路105を通じて電気ヒータ101に供給する。
例えば図9に示したような温度制御系を主な適用対象として、制御の過渡状態を発生させる操作量の時系列データと過渡状態における制御量の時系列データとに基づいて、制御対象の動的プロセスゲインKpとプロセス時定数Tpとの比率Kp/Tpを算出し、この比率を判定指標として制御対象の状態を判定する方法が実用されている(特許文献1参照)。
例えば、図10(A)~図10(D)は100℃から400℃への、PID制御による昇温のシミュレーション結果を示しており、制御量PV(温度[℃])と操作量MV[%]の時間変化を示している。図10(A)~図10(D)の各例のPIDパラメータ(比例帯Pb、積分時間Ti、微分時間Td)は以下のとおりである。
図10(A)の例では、比例帯Pbを60℃、積分時間Tiを100sec.、微分時間Tdを12sec.としている。上記の比率はKp/Tp=0.0232である。図10(B)の例では、比例帯Pbを180℃、積分時間Tiを100sec.、微分時間Tdを12sec.としている。比率はKp/Tp=0.0232である。図10(C)の例では、比例帯Pbを60℃、積分時間Tiを30sec.、微分時間Tdを12sec.としている。比率はKp/Tp=0.0232である。図10(D)の例では、比例帯Pbを60℃、積分時間Tiを100sec.、微分時間Tdを12sec.としている。比率はKp/Tp=0.0209である。
見かけ上は、図10(A)の例と比べて図10(B),図10(C)の例は異なる状態であり、図10(A)と図10(D)が類似の状態のようになる。しかし、この見かけ上の違いはPIDパラメータの違いによるものであり、制御対象の状態としては図10(D)のみが他の例とは異なる。すなわち、比率Kp/Tpを判定指標とすることによって、制御対象の状態を判定できる。
しかしながら、現実の加熱装置では、シミュレーションのような理想的な再現性が得られるとは限らず、例えば比率Kp/Tpを算出する制御ループ条件次第では、特異な判定あるいは誤った判定になることもあるので、改善が求められている。
特許第4481953号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、制御対象の状態判定のための指標を算出するのに妥当ではない制御ループ条件を排除することができる状態判定装置および状態判定方法を提供することを目的とする。
本発明の状態判定装置は、加熱装置において加熱制御の過渡状態を発生させる操作量の時系列データとこの過渡状態における制御対象の温度である制御量の時系列データとに基づいて、前記制御対象の状態判定のための指標として、前記制御対象の動的プロセスゲインとプロセス時定数との比率を算出するように構成されたゲイン時定数比率算出部と、前記比率を記憶するように構成されたゲイン時定数比率記憶部と、前記ゲイン時定数比率算出部による比率の算出を停止すべき温度帯を予め記憶するように構成された登録部と、前記加熱制御の開始時の制御量を温度情報として取得するように構成された情報取得部と、前記情報取得部によって取得された加熱制御開始時の温度が前記登録部に記憶されている温度帯に含まれる場合に、前記ゲイン時定数比率算出部による比率の算出を停止させるように構成されたゲイン時定数比率停止部とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の状態判定装置の1構成例において、前記登録部は、前記ゲイン時定数比率算出部による比率の算出を停止すべき温度帯に加えて、前記ゲイン時定数比率算出部による比率の算出を停止すべき操作量帯を予め記憶し、前記情報取得部は、前記加熱制御の開始時の制御量を温度情報として取得すると共に、前記加熱制御の開始時の操作量を取得し、前記ゲイン時定数比率停止部は、前記情報取得部によって取得された加熱制御開始時の温度が前記登録部に記憶されている温度帯に含まれる場合、あるいは前記情報取得部によって取得された加熱制御開始時の操作量が前記登録部に記憶されている操作量帯に含まれる場合に、前記ゲイン時定数比率算出部による比率の算出を停止させることを特徴とするものである。
また、本発明の状態判定装置の1構成例は、前記比率に基づいて前記制御対象の状態を判定するように構成された状態判定部をさらに備えることを特徴とするものである。
また、本発明の状態判定方法は、加熱装置における加熱制御の開始時の制御量を温度情報として取得する第1のステップと、制御対象の状態判定のための指標の算出を停止すべき温度帯を予め記憶する登録部を参照して、前記第1のステップで取得した加熱制御開始時の温度と前記登録部に記憶されている温度帯とを比較する第2のステップと、前記第1のステップで取得した加熱制御開始時の温度が前記登録部に記憶されている温度帯の範囲外の場合に、前記加熱装置において加熱制御の過渡状態を発生させる操作量の時系列データとこの過渡状態における制御対象の温度である制御量の時系列データとに基づいて、前記制御対象の状態判定のための指標として、前記制御対象の動的プロセスゲインとプロセス時定数との比率を算出する第3のステップと、前記比率を記憶する第4のステップとを含むことを特徴とするものである。
本発明によれば、ゲイン時定数比率算出部による比率の算出を停止すべき温度帯を登録部に予め登録しておき、加熱制御開始時の温度が登録部に記憶されている温度帯に含まれる場合に、ゲイン時定数比率算出部による比率の算出を停止させることにより、制御対象の状態判定のための指標を算出するのに妥当ではない制御ループ条件を排除することができ、特異な判定結果あるいは誤った判定結果が生じることを回避することができる。本発明では、ループレベルコントローラ(温調計など)の範囲で得られる情報で、排除判断が行なえるようになる。
また、本発明では、ゲイン時定数比率算出部による比率の算出を停止すべき温度帯に加えて、ゲイン時定数比率算出部による比率の算出を停止すべき操作量帯を登録部に予め登録しておき、加熱制御開始時の温度が登録部に記憶されている温度帯に含まれる場合、あるいは加熱制御開始時の操作量が登録部に記憶されている操作量帯に含まれる場合に、ゲイン時定数比率算出部による比率の算出を停止させることにより、長時間に亘り操作量が0%(ヒータオフ)を維持していながらも、降温が不十分で加熱制御開始時の温度が登録部に記憶されている温度帯の範囲外という特異な制御ループ条件を排除することができる。
図1は、加熱装置が十分に暖まっているときの昇温と加熱装置が暖まっていないときの昇温の実機による実験結果を示す図である。 図2は、本発明の第1の実施例に係る状態判定装置の構成を示すブロック図である。 図3は、本発明の第1の実施例に係る操作量算出部の動作を説明するフローチャートである。 図4は、本発明の第1の実施例に係る状態判定装置の動作を説明するフローチャートである。 図5は、本発明の第1の実施例に係る状態判定装置のゲイン時定数比率算出部の構成を示すブロック図である。 図6は、本発明の第2の実施例に係る状態判定装置の構成を示すブロック図である。 図7は、本発明の第2の実施例に係る状態判定装置の動作を説明するフローチャートである。 図8は、本発明の第1、第2の実施例に係る状態判定装置を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。 図9は、加熱装置の構成を示すブロック図である。 図10は、PID制御による昇温のシミュレーション結果を示す図である。
[発明の原理]
加熱装置自体が暖まっていない低温からの昇温では、ヒータ自体の熱容量や装置全体の熱容量に対する熱放出があるため、見かけ上(一定のアルゴリズムでの計算上)、プロセス時定数Tpあるいは高次遅れとしてのむだ時間Lpが本来よりも長い特異応答になり易い。例えば図1(A)に示すような加熱装置が十分に暖まっているときの昇温の場合(設定値SP変更時の制御量PVが十分に高い場合)に比べて、加熱装置が暖まっていないときの特異な昇温の場合(設定値SP変更時の制御量PVが低い場合)には、図1(B)に示すような結果になる。
発明者は、上記の点に着眼し、温度帯を制限することで、例えば低温からのスタートアップの昇温応答データ(特異応答データ)を、診断データから除外できることに想到した。また、温度帯制限を強化すれば、むしろ特定の優良応答データのみを診断データとして採用する形態にもできる。
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図2は本発明の第1の実施例に係る状態判定装置の構成を示すブロック図である。状態判定装置は、加熱装置において加熱制御の過渡状態を発生させる操作量MVの時系列データとこの過渡状態における制御対象の温度である制御量PVの時系列データとに基づいて、制御対象の状態判定のための指標として、制御対象の動的プロセスゲインKpとプロセス時定数Tpとの比率Kp/Tpを算出するゲイン時定数比率算出部1と、比率Kp/Tpを記憶するゲイン時定数比率記憶部2と、ゲイン時定数比率算出部1による比率の算出を停止すべき温度帯を予め記憶する温度帯登録部3と、加熱制御の開始時の制御量PVを温度情報として取得する温度情報取得部4と、温度情報取得部4によって取得された加熱制御開始時の温度が温度帯登録部3に記憶されている温度帯に含まれる場合に、ゲイン時定数比率算出部1による比率の算出を停止させるゲイン時定数比率停止部5と、比率に基づいて制御対象の状態を判定する状態判定部6とを備えている。
図3は本実施例の操作量算出部10(温調計)の動作を説明するフローチャートである。設定値SP(温度設定値)は、オペレータなどによって設定され、操作量算出部10に入力される(図3ステップS100)。
制御量PV(温度計測値)は、図示しない計測器(例えば図9に示した加熱装置の加熱処理炉100内の温度を計測する温度センサ、または加熱処理炉100内のワークの温度を計測する温度センサ)によって計測され、操作量算出部10に入力される(図3ステップS101)。
操作量算出部10は、設定値SPと制御量PVとを入力として、制御量PVが設定値SPと一致するように周知のPID制御演算を行って操作量MVを算出し、算出した操作量MVを制御対象に出力する(図3ステップS102)。本実施例では、操作量MVの実際の出力先は、加熱処理炉の電気ヒータに電力を供給する電力調整器となる。
操作量算出部10は、ステップS100~S102の処理を例えばオペレータの指示によって制御が終了するまで(図3ステップS103においてYES)、制御周期毎に実行する。なお、操作量算出部10が算出した操作量MVに対して適宜、上下限リミット処理などを施してもよいことは言うまでもない。
図4は本実施例の状態判定装置の動作を説明するフローチャートである。温度帯登録部3には、ゲイン時定数比率算出部1による比率の算出を停止すべき温度帯が予め登録されている。
温度情報取得部4は、加熱制御が開始されたとき(設定値SPが上昇する方向に変更されたとき)の制御量PVを加熱制御開始時の温度情報として取得する(図4ステップS200)。
図5はゲイン時定数比率算出部1の構成を示すブロック図である。ゲイン時定数比率算出部1は、制御量PVと操作量MVの時系列データについてステップ応答前半の過渡状態のデータを特定する過渡状態データ特定部11と、制御量PVの時系列データのうち過渡状態データ特定部11によって特定された過渡状態のデータと、操作量MVの時系列データのうち過渡状態データ特定部11によって特定された過渡状態のデータとにより、制御対象のモデル数式を同定する制御対象モデリング部12と、制御対象のモデル数式に基づいて制御対象の動的プロセスゲインKpとプロセス時定数Tpとの比率Rを算出する比率算出処理部13とから構成される。
ゲイン時定数比率停止部5は、温度情報取得部4によって取得された、加熱制御開始時の温度が温度帯登録部3に記憶されている温度帯に含まれる場合(図4ステップS201においてYES)、ゲイン時定数比率算出部1による比率Rの算出を停止させる。この場合、状態判定装置は、現在の処理対象のワークについて比率Rを算出・保存することなく、動作をいったん停止させ、次の処理対象のワークが加熱処理炉に投入されて加熱制御が始まるまで待機する。
一方、温度情報取得部4によって取得された、加熱制御開始時の温度が温度帯登録部3に記憶されている温度帯の範囲外の場合(ステップS201においてNO)、以下のようなゲイン時定数比率算出部1の処理が行われる。
加熱処理炉内のワークの加熱のために設定値SPのステップ変更が行われると、上記の操作量算出部10による制御により制御量PVが設定値SPに追従して上昇する。
ゲイン時定数比率算出部1の過渡状態データ特定部11は、操作量算出部10から出力された制御量PVの時系列データと操作量MVの時系列データとについてステップ応答前半の過渡状態に相当する時間帯のデータを特定する(図4ステップS202)。過渡状態データ特定部11は、例えば操作量MVの時系列データが予め設定された基準値を超えている時間帯を割り出し、この時間帯をステップ応答前半の過渡状態に相当する時間帯として特定する。ただし、この方法は単なる1例であり、操作量MVの変化幅やその他の信号の変化によって制御の過渡状態のデータを特定することも可能である。
続いて、ゲイン時定数比率算出部1の制御対象モデリング部12は、制御対象のモデル数式を同定する(図4ステップS203)。制御対象モデリング部12には、次式のような伝達関数で表される制御対象の数式モデルGpが予め登録されている。
Gp=Kpexp(-Lps)/(1+Tps) ・・・(1)
式(1)のKpは動的プロセスゲイン、Lpはむだ時間、Tpはプロセス時定数であり、これらのパラメータは可変量として処理できるようになっている。本実施例の制御対象は、例えば加熱処理炉と、加熱処理炉内に投入されるワークと、電気ヒータなどのアクチュエータとを含むものである。
制御対象モデリング部12は、操作量MVの時系列データのうち過渡状態データ特定部11によってステップ応答前半の過渡状態と特定されたデータを式(1)の数式モデルに適用し、モデル制御量PVmの時系列データを生成する。モデル制御量PVmは次式のように表すことができる。
PVm=GpMV ・・・(2)
続いて、制御対象モデリング部12は、制御量PVの時系列データのうち過渡状態データ特定部11によってステップ応答前半の過渡状態と特定されたデータの変化率と、モデル制御量PVmの時系列データの変化率との近さを示す評価関数値(制御量PVの変化率とモデル制御量PVmの変化率との差の2乗の総和)を算出して、評価関数値が最適値(0に近い最小値)を示したときの動的プロセスゲインKpとむだ時間Lpとプロセス時定数Tpとの組み合わせを有する式(1)を制御対象のモデル数式Gpとして確定する。なお、以上のモデル数式の同定処理は、パラメータKp,Lp,Tpがとり得る全ての組み合わせを1つずつ生成して実行してもよいし、より効率的な探索方法として、一般に知られているシンプレックス法などを採用してもよい。
ゲイン時定数比率算出部1の比率算出処理部13は、制御対象モデリング部12が確定したモデル数式Gpに基づき、動的プロセスゲインKpとプロセス時定数Tpとの比率R=Kp/Tpを算出する(図4ステップS204)。比率算出処理部13によって算出された比率Rは、ゲイン時定数比率記憶部2に格納される(図4ステップS205)。
以上の過渡状態データ特定部11と制御対象モデリング部12と比率算出処理部13の動作は、特許文献1に開示されている。
次に、状態判定部6は、ゲイン時定数比率算出部1によって算出されゲイン時定数比率記憶部2に格納された比率Rに基づいて制御対象の状態を判定する(図4ステップS206)。特許文献1に開示された技術では、制御対象が特定の状態にある場合の比率Rの数値範囲を示す所定の判定基準と、比率Rとを比較して、比率Rが判定基準内の値であれば、制御対象の状態が特定の状態にあると判定する。ただし、本実施例での状態判定は、このような例に限るものではなく、比率Rと別の判定指標とを併用して制御対象の状態を判定するようにしてもよい。判定結果の出力方法としては、例えば判定結果を知らせる内容を表示したり、判定結果を知らせる情報を外部に送信したりする等の方法がある。
以上のような図4の処理が、加熱処理炉に処理対象のワークが投入され、操作量算出部10によって加熱制御が行われる度に実行される。
本実施例では、制御動作機能を実現する操作量算出部10はループレベルコントローラ(温調計など)に実装されるものであり、ゲイン時定数比率算出部1も通信などを介さない品質の良いデータを利用するのが好ましいので、やはりループレベルコントローラに実装されるべき構成要素である。ゲイン時定数比率記憶部2と状態判定部6も、ループレベルコントローラに実装して構わない。
さらに、温度帯登録部3と温度情報取得部4とゲイン時定数比率停止部5とは、特に加熱制御開始時の温度情報を扱う本発明に特有の管理機能であり、ループレベルコントローラで完結できる機能なので、同様にループレベルコントローラに実装されるべき構成要素である。別な言い方をすれば、制御量PV(温度計測値)や操作量MV(ヒータ出力値)などのループレベルの情報のみで比率Rの算出停止ができるので、ループレベルコントローラ(温調計など)で算出停止判断が行なえるようになる。
例えば、加熱装置が稼働状態になるために、必ず常温25℃付近(高くても50℃以下)から最初の昇温を開始するのが通常の運用であれば、最低温度の0℃から50℃以下を、比率Rの算出を停止すべき温度帯として登録すればよい。また、通常の運用において、300℃以上からの昇温が比率算出に好適であることが分かっているのであれば、最低温度の0℃から300℃未満を、比率Rの算出を停止すべき温度帯として登録してもよい。
なお、比率Rの算出を停止しない温度帯を温度帯登録部3に登録する構成も考えられるが、このような構成は本実施例と実質等価なものであることは言うまでもない。
[第2の実施例]
例えば400℃からの降温途中で長時間に亘り操作量MVが0%(ヒータオフ)を維持していながらも、降温が不十分で加熱制御再開時の制御量PV(温度計測値)が80℃という場合も有り得る。このような特異な制御ループ条件に対して、第1の実施例では、例えば50℃以下という温度帯が登録されていると、この制御ループ条件を排除することができない。本実施例は、加熱制御開始時の操作量MVが例えば5%未満という操作量帯を設定することにより、上記のような特異な制御ループ条件を排除できるようにしたものである。
図6は本実施例に係る状態判定装置の構成を示すブロック図であり、図2と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施例の状態判定装置は、ゲイン時定数比率算出部1と、ゲイン時定数比率記憶部2と、ゲイン時定数比率停止部5aと、状態判定部6と、ゲイン時定数比率算出部1による比率の算出を停止すべき温度帯に加えて、ゲイン時定数比率算出部1による比率の算出を停止すべき操作量帯を予め記憶する温度帯・操作量帯登録部7と、加熱制御の開始時の制御量PVを温度情報として取得すると共に、加熱制御の開始時の操作量MVを取得する温度・操作量情報取得部8とを備えている。
図7は本実施例の状態判定装置の動作を説明するフローチャートである。温度帯・操作量帯登録部7には、ゲイン時定数比率算出部1による比率の算出を停止すべき温度帯、およびゲイン時定数比率算出部1による比率の算出を停止すべき操作量帯が予め登録されている。
温度・操作量情報取得部8は、加熱制御が開始されたとき(設定値SPが上昇する方向に変更されたとき)の制御量PVを加熱制御開始時の温度情報として取得すると共に、加熱制御が開始されたときの操作量MVを操作量算出部10から取得する(図7ステップS300)。
ゲイン時定数比率停止部5aは、温度・操作量情報取得部8によって取得された、加熱制御開始時の温度が温度帯・操作量帯登録部7に記憶されている温度帯に含まれる場合、あるいは温度・操作量情報取得部8によって取得された、加熱制御開始時の操作量MVが温度帯・操作量帯登録部7に記憶されている操作量帯に含まれる場合に(図7ステップS301においてYES)、ゲイン時定数比率算出部1による比率Rの算出を停止させる。
加熱制御開始時の温度が温度帯・操作量帯登録部7に記憶されている温度帯の範囲外で、かつ加熱制御開始時の操作量MVが温度帯・操作量帯登録部7に記憶されている操作量帯の範囲外の場合のゲイン時定数比率算出部1とゲイン時定数比率記憶部2と状態判定部6の動作(図7ステップS302~S306)は、第1の実施例と同じである。
第1、第2の実施例で説明した状態判定装置は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインターフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図8に示す。コンピュータは、CPU300と、記憶装置301と、インターフェース装置302とを備えている。このようなコンピュータにおいて、本発明の状態判定方法を実現させるためのプログラムは記憶装置301に格納される。CPU300は、記憶装置301に格納されたプログラムに従って第1、第2の実施例で説明した処理を実行する。
なお、上記のように、状態判定装置と操作量算出部10とをループレベルコントローラ(温調計など)に実装する場合には、このコントローラを図8に示したようなコンピュータとプログラムによって実現することができる。
本発明は、温度制御系に適用することができる。
1…ゲイン時定数比率算出部、2…ゲイン時定数比率記憶部、3…温度帯登録部、4…温度情報取得部、5,5a…ゲイン時定数比率停止部、6…状態判定部、7…温度帯・操作量帯登録部、8…温度・操作量情報取得部、10…操作量算出部、11…過渡状態データ特定部、12…制御対象モデリング部、13…比率算出処理部。

Claims (6)

  1. 加熱装置において加熱制御の過渡状態を発生させる操作量の時系列データとこの過渡状態における制御対象の温度である制御量の時系列データとに基づいて、前記制御対象の状態判定のための指標として、前記制御対象の動的プロセスゲインとプロセス時定数との比率を算出するように構成されたゲイン時定数比率算出部と、
    前記比率を記憶するように構成されたゲイン時定数比率記憶部と、
    前記ゲイン時定数比率算出部による比率の算出を停止すべき温度帯を予め記憶するように構成された登録部と、
    前記加熱制御の開始時の制御量を温度情報として取得するように構成された情報取得部と、
    前記情報取得部によって取得された加熱制御開始時の温度が前記登録部に記憶されている温度帯に含まれる場合に、前記ゲイン時定数比率算出部による比率の算出を停止させるように構成されたゲイン時定数比率停止部とを備えることを特徴とする状態判定装置。
  2. 請求項1記載の状態判定装置において、
    前記登録部は、前記ゲイン時定数比率算出部による比率の算出を停止すべき温度帯に加えて、前記ゲイン時定数比率算出部による比率の算出を停止すべき操作量帯を予め記憶し、
    前記情報取得部は、前記加熱制御の開始時の制御量を温度情報として取得すると共に、前記加熱制御の開始時の操作量を取得し、
    前記ゲイン時定数比率停止部は、前記情報取得部によって取得された加熱制御開始時の温度が前記登録部に記憶されている温度帯に含まれる場合、あるいは前記情報取得部によって取得された加熱制御開始時の操作量が前記登録部に記憶されている操作量帯に含まれる場合に、前記ゲイン時定数比率算出部による比率の算出を停止させることを特徴とする状態判定装置。
  3. 請求項1または2記載の状態判定装置において、
    前記比率に基づいて前記制御対象の状態を判定するように構成された状態判定部をさらに備えることを特徴とする状態判定装置。
  4. 加熱装置における加熱制御の開始時の制御量を温度情報として取得する第1のステップと、
    制御対象の状態判定のための指標の算出を停止すべき温度帯を予め記憶する登録部を参照して、前記第1のステップで取得した加熱制御開始時の温度と前記登録部に記憶されている温度帯とを比較する第2のステップと、
    前記第1のステップで取得した加熱制御開始時の温度が前記登録部に記憶されている温度帯の範囲外の場合に、前記加熱装置において加熱制御の過渡状態を発生させる操作量の時系列データとこの過渡状態における制御対象の温度である制御量の時系列データとに基づいて、前記制御対象の状態判定のための指標として、前記制御対象の動的プロセスゲインとプロセス時定数との比率を算出する第3のステップと、
    前記比率を記憶する第4のステップとを含むことを特徴とする状態判定方法。
  5. 請求項4記載の状態判定方法において、
    前記第1のステップは、前記加熱制御の開始時の制御量を温度情報として取得すると共に、前記加熱制御の開始時の操作量を取得するステップを含み、
    前記第2のステップは、制御対象の状態判定のための指標の算出を停止すべき温度帯に加えて、制御対象の状態判定のための指標の算出を停止すべき操作量帯を予め記憶する登録部を参照して、前記第1のステップで取得した加熱制御開始時の温度および操作量と前記登録部に記憶されている温度帯および操作量帯とを比較するステップを含み、
    前記第3のステップは、前記第1のステップで取得した加熱制御開始時の温度が前記登録部に記憶されている温度帯の範囲外で、かつ加熱制御開始時の操作量が前記登録部に記憶されている操作量帯の範囲外の場合に、前記制御対象の動的プロセスゲインとプロセス時定数との比率を算出するステップを含むことを特徴とする状態判定方法。
  6. 請求項4または5記載の状態判定方法において、
    前記比率に基づいて前記制御対象の状態を判定する第5のステップをさらに含むことを特徴とする状態判定方法。
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