JP7138848B2 - 接着剤組成物、それを用いた接着剤シート、および積層体並びにそれらを用いたプリント基板 - Google Patents

接着剤組成物、それを用いた接着剤シート、および積層体並びにそれらを用いたプリント基板 Download PDF

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Description

本発明は、プリント配線板用途において優れた性能を発揮し、難燃性、半田耐熱性、接着性、電気絶縁性に優れた難燃性接着剤組成物、並びに該組成物を用いた接着剤シート、カバーレイフィルム等のフィルム積層体、プリプレグ、銅張り積層板等の金属積層体及びこれらを用いたフレキシブルプリント配線板並びにリジッドプリント配線板に関するものである。
パーソナルコンピュータや携帯電話等の情報端末機器の普及に伴って、これらに搭載されるプリント配線板の小型化、高密度化が進んでいる。プリント配線板は、柔軟性や省スペース性が求められる電子機器部品、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどの表示装置用デバイス基板や、携帯電話、デジタルカメラ、携帯型ゲーム機などの基板中継ケーブル、操作スイッチ部基板などに広く使用されており、さらなる用途の拡大が見込まれている。
プリント配線板に用いられる接着剤としては、カバーレイフィルム、接着フィルム、プリプレグ積層体、銅張り積層板などのリジッドプリント基板、フレキシブルプリント配線板を構成する部位のなかで用いられる。これらの用途で用いられる接着剤としては、接着性、耐熱性に加えて、絶縁性・柔軟性・難燃性・流動性等が求められる。
プリント配線板に用いられる接着剤として、従来はエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂が使用されてきたが、近年の配線の高密度化や鉛フリー半田志向に対応するには耐熱性が不十分であった。
また、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂に難燃性を付与する方法として臭素等のハロゲン元素を含むハロゲン化合物を添加することによって、難燃性を確保することができるが、燃焼によって一酸化炭素やシアン化水素が発生する場合がある。また、臭素等のハロゲン化合物が添加されたアクリル系樹脂やエポキシ系樹脂では、加熱の際に臭素が分解し、耐熱性の低下や信頼性の低下が起こり得る。そのため、ハロゲン化合物を添加せずに、難燃性を確保できる成形物の開発が望まれていた。
ハロゲン化合物を添加せずに、難燃性を確保する方法としては、窒素、珪素、水酸化アルミニウム等を含むフィラーやリン化合物を配合する方法が挙げられる。その中でもリン化合物を配合する方法が広く用いられている。例えば、リン酸エステル系の化合物であるトリフェニルホスフェート(TPP)やトリクレジルホスフェート(TCP)が用いられる(例えば、特許文献1参照)。しかし、これらのリン化合物は、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂中に添加されても、反応することがないため、ブリードアウトが発生したり、得られた成形物の耐水性、吸湿後の耐熱性や耐薬品性等が低下するという問題があった。
また、エポキシ樹脂とリン化合物を反応させてリン含有エポキシ樹脂を合成するという方法が提案された(例えば、特許文献2等参照)。しかしこの場合でも低吸湿性、高温密着性、耐熱衝撃性等に十分に対応できているとは言えなかった。
更に、フェノール性水酸基含有化合物又はオリゴマーと9,10-ジヒドロー9-オキサー10-ホスファフェナントレンー10-オキシドを反応させた、フェノール性水酸基含有リン化合物をエポキシ系樹脂に配合して硬化性を向上させブリードアウトのない耐熱性接着剤が提案されているが、(例えば特許文献3、4等参照)プリプレグ用接着剤であり、本願特許の目的とする接着剤シート、フィルム積層体、金属箔積層体及びそれらを用いたプリント基板用の接着剤には不適であった。
特開2001-131393号公報 特開2002-265562号公報 特許5866806号公報 特表2017-502122号公報
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、取り扱い性に優れ、反応性が高いため、ブリードアウトが無く、難燃効果が高く、更に高耐熱性や金属、プラスチックに対する密着性、絶縁信頼性(耐マイグレーション)に優れた接着剤組成物及びこれを用いた接着シート、フィルム積層体、金属箔積層体、並びにそれらを用いたリジッドプリント配線板やフレキシブルプリント配線板を提供するものである。
ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂、エポキシ樹脂並びに一般式(1)で示されるリン化合物を含有することを特徴とする接着剤組成物。
Figure 0007138848000001
(一般式(1)中のR~Rは、以下の一般式(2)~(4)のいずれかであり、R~Rのうち少なくとも1つは一般式(2)である。一般式(2)~(4)における*は、一般式(1)の芳香環に直接結合する部位であることを表す。一般式(1)および一般式(3)中の複数のXはそれぞれ独立に、CHまたはC(CHであり、一般式(1)および一般式(3)中の複数のYはそれぞれ独立に、水素または水酸基である。ただし、一般式(1)において、複数あるYの少なくとも1つは水酸基である。一般式(4)中のRは水素または炭素数1~10のアルキル基である。)
Figure 0007138848000002
Figure 0007138848000003
Figure 0007138848000004
プリント配線板用途で使用されることを特徴とする前記接着剤組成物。前記接着剤組成物を使用したことを特徴とする接着剤シート。前記接着剤シートを使用したことを特徴とするプレプリグ積層体、ポリイミドフィルム積層体または金属箔積層体。前記積層体を使用したことを特徴とするリジッドプリント基板またはフレキシブルプリント基板。
本発明の接着剤組成物は、耐熱性、接着性、絶縁信頼性、難燃性に優れ、さらにBステージ状態での可撓性と仮付け性に優れるため、これを用いた接着性シート、フィルム積層体、金属箔積層体、リジッドプリント配線板やフレキシブルプリント配線板はパーソナルコンピュータや携帯電話等の情報端末機器に搭載されるプリント配線板の小型化、高密度化に大いに寄与する。
以下、本発明の接着剤組成物について詳細に説明する。本発明の接着剤組成物は、主として以下の3要素から構成される。
(1)接着性付与樹脂としてのポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂
(2)エポキシ樹脂
(3)特定のリン化合物(A)
<接着性付与樹脂>
本発明に用いられる接着性付与樹脂としては、各種フィルムや金属基材への密着性、電気絶縁性、成型加工性を向上させる機能を有し、エポキシ樹脂との反応性や特定リン化合物(A)との相溶性に優れる必要がある等の点からポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂が挙げられる。
これらの接着性付与樹脂は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は接着剤組成物の不揮発分(固形分)を100質量%としたときに20~80質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。接着性付与樹脂の配合量が20質量%未満では基材への密着性が低下したり、接着剤としての可撓性が低下して、Bステージ状態の形状保持が悪くなったりするおそれがある。また、80質量%を超えると、架橋密度が低下して耐熱性や耐薬品性、耐湿熱性が低下して高湿度下での絶縁信頼性や半田耐熱性が低下することがある。
以下、これらの接着性付与樹脂について更に説明する。
まず、ポリエステル樹脂について説明する。
ポリエステル樹脂はジカルボン酸を主体とする多価カルボン酸とジオールを主体とする多価アルコールの縮合反応で得られる樹脂であることが好ましい。本発明のポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸(ポリカルボン酸)成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フェニレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、1,2-シクロヘキセンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、テルペン-マレイン酸付加体などの不飽和基含有ジカルボン酸などを挙げることができ、これらの中から1種または2種以上を選び使用することができる。なかでも芳香族ジカルボン酸を使用することが好ましい。前記ポリカルボン酸成分は全酸成分を100モル%としたとき、80モル%以上であることが好ましく、より好ましくは90モル%以上であり、さらに好ましくは95モル%以上であり、100モル%であっても差し支えない。
本発明のポリエステル樹脂を構成する多価アルコール(ポリオール)成分としては、例えばエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1-メチル-1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,6-ヘキサンジオール、4-メチル-1,7-ヘプタンジオール、4-メチル-1,8-オクタンジオール、4-プロピル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等の脂肪族グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリオレフィングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルグリコール類、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカングリコール類、水添加ビスフェノール類などの脂環族ポリオールが挙げることができ、これらの中から1種またはそれ以上を選び使用できる。なかでも脂肪族グリコールを使用することが好ましい。前記ポリオール成分は全酸成分を100モル%としたとき、80モル%以上であることが好ましく、より好ましくは90モル%以上であり、さらに好ましくは95モル%以上であり、100モル%であっても差し支えない。
本発明の接着剤組成物において、架橋密度を向上させて耐熱性や耐水性、耐薬品性を向上させる目的でポリエステル樹脂のポリカルボン酸成分および/またはポリオール成分に3官能以上の成分を共重合しても良い。3官能以上のポリカルボン酸成分としては、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などが挙げられ、3官能以上のポリオールとしてはグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、マンニトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、α-メチルグルコシドなどが挙げられる。
3官能以上の酸成分およびポリオール成分の共重合比率は、酸またはグリコール成分中、好ましくは0~5モル%であり、より好ましくは0~4モル%であり、さらに好ましくは0~2モル%である。上記を超えるとポリエステル樹脂の可撓性が失われ加工性が低下したりポリエステル樹脂の重合時にゲル化するおそれがある。
本発明のポリエステル樹脂は、有機溶剤に溶解することが好ましい。有機溶剤としては、加工性の点から沸点が150℃以下のものが好ましく、該有機溶剤はポリエステル樹脂の製造後または接着剤組成物の製造時に使用され、更に塗装時に希釈剤として使用される。使用できる有機溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、等が挙げられる。これらのうち価格、生産性、安全性などの点から酢酸エチルやメチルエチルケトンを使用するのが好ましい。該ポリエステル樹脂溶液の固形分濃度は通常30~60質量%であることが好ましく、より好ましくは40~50質量%である。
本発明のポリエステル樹脂の特性のうち、ガラス転移温度(Tg)の下限は、好ましくは30℃であり、より好ましくは50℃である。上記未満であると耐熱性および/または耐薬品性が低下することがある。上限は特に限定されず、150℃以下であることが好ましく、より好ましくは100℃以下である。
本発明のポリエステル樹脂は、公知の重縮合方法により製造することができる。例えば、ポリカルボン酸成分とポリオール成分をエステル化させてオリゴマーを得て、これを更に減圧下、高温で溶融重縮合させる直接重合法、ポリカルボン酸の炭素数1~2の低級アルキルエステル体とポリオール成分をエステル交換させてオリゴマーを得て、これを更に減圧下、高温で溶融重縮合させるエステル交換法などを挙げることができる。
次にポリウレタン樹脂について説明する。
本発明に用いられるポリウレタン樹脂はジオールを主体とする多価アルコールとジイソシアネートを主体とする多価イソシアネートから重付加反応で得られる樹脂であることが好ましい。
本発明のポリウレタン樹脂の製造に用いられる多価アルコールとしては、前記のポリエステル樹脂の製造に用いられる低分子量の多価アルコールやポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等の高分子量の多価アルコールの1種又は2種以上を組み合わせて用いることが出来、これらの中では、ポリエステルポリオールが基材への密着性、耐熱性、Bステージ状態での可撓性等の点から好ましい。
本発明のポリウレタン樹脂の合成に用いられるジイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートが用いられるが本発明の目的を達成するためには芳香族ジイソシアネートを主体に用いることが好ましい。
芳香族ジイソシアネート成分としては、具体的には、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3,2’-又は3,3’-又は 4,2’-又は4,3’-又は5,2’-又は5,3’-又は6,2’-又は6,3’-ジメチルジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3,2’- 又は3,3’-又は4,2’-又は4,3’-又は5,2’-又は5,3’-又は6,2’-又は6,3’-ジエチルジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3,2’-又は3,3’-又は4,2’-又は4,3’-又は5,2’-又は5,3’-又は6,2’-又は6,3’-ジメトキシジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-3,3’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-3, 4’-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイソシアネート、ベンゾフェノン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルスルホン-4,4’-ジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、4,4’-[2,2ビス(4-フェノキシフェニル)プロパン]ジイソシアネート、3,3’-または2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-または2,2’-ジエチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジエトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネート成分としてはヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられ、また脂環族ジイソシアネート成分としてはイソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4-ジイソシアネートなどが挙げられる。
これらの中では接着剤としての耐熱性や基材への密着性の点から、脂肪族ジイソシアネートまたは芳香族のジイソシアネートが好ましく、脂肪族ジイソシアネートがより好ましい。なかでもヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。また、経済的な理由で、2,4-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネートなども好ましい。
本発明に用いるポリウレタンを製造する上で、必要により鎖延長剤を使用しても良い。鎖延長剤としては、前記のポリエステル樹脂を合成する際に用いたグリコール成分としての低分子量ポリオールや、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有低分子量ジオール等が挙げられる。その中で、ポリウレタン樹脂の硬化性を向上させ耐熱性や耐水性、耐薬品性を向上させる目的からジメチロールブタン酸やトリメチロールプロパンの使用も好ましい。
本発明に用いるポリウレタン樹脂の製造方法としては、多価アルコール及び多価イソシアネート、必要により鎖延長剤を一括して反応容器に仕込んでも良いし、分割して仕込んでも良い。いずれにしても、系内の多価アルコール、必要であれば鎖延長剤の水酸基価の合計と、多価イソシアネートのイソシアネート基の合計について、イソシアネート基/ 水酸基の官能基の比率が1以下で反応させることが好ましい。またこの反応は、イソシアネート基に対して不活性な有機溶剤の存在下または非存在下に反応させることにより製造することができる。その有機溶剤としては、エステル系溶剤( 酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチルなど)、エーテル系溶剤(ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなど)、ケトン系溶剤(シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、芳香族炭化水素系溶剤(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)およびこれらの混合溶剤が挙げられる。価格や環境負荷の低減の観点から、酢酸エチルやメチルエチルケトンが好ましい。
本発明のポリウレタン樹脂溶液の固形分濃度は30~60質量%であることが好ましく、より好ましくは40~50質量%である。
次にポリアミド樹脂について説明する。
本発明に用いられるポリアミド樹脂の合成は多価カルボン酸クロリドとジアミンを用いる酸クロリド法や多価カルボン酸とジアミンを用いる溶融重合法、多価カルボン酸とジイソシアネートを用いる溶液重合法で合成される。本発明の場合、成型加工性やエポキシ樹脂、リン化合物との相溶性の点から溶剤に溶解するポリアミド樹脂が好ましい。
本発明に用いられるポリアミド樹脂の合成に用いられる多価カルボン酸成分は、前記ポリエステル樹脂の合成に用いられた芳香族、脂肪族又は脂環族のジカルボン酸及び3官能以上のカルボン酸を用いることが出来る。これらの中では重合性、溶剤溶解性、基材への密着性の点から、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、アゼライン酸が好ましく、更に柔軟性が必要な場合はダイマー酸や分子量が1000以上のジカルボキシポリブタジエン、ジカルボキシポリ(アクリロニトリルブタジエン)、ジカルボキシポリ(スチレン-ブタジエン)を共重合しても構わない。
本発明において、溶融重合法でポリアミド樹脂を合成する場合に用いられるジアミン成分としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。これらの中では溶剤溶解性や耐熱性、基材への密着性の点からイソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミンが好ましく、それらの一部にジアミノジフェニルメタン、トリレンジアミンを共重合することも好ましい。
ポリアミド樹脂を溶融重合する方法は、上記のジカルボン酸とジアミンとから塩を形成させ、これらを加圧下、加熱、撹拌しながら縮合させる等通常お方法で合成することが出来る。
溶融重合法で製造したポリアミド樹脂を用いて、本発明の接着剤組成物を製造する場合、ポリアミド樹脂は有機溶剤に溶解することが好ましい。この場合に用いられる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブタノール、クレゾール、ベンジルアルコール等のアルコール類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系溶剤及びこれらの一部をトルエン、キシレンなどの炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、メチルイソブチルエーテル、セロソルブ類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶剤で置き換えることが出来る。
本発明のポリアミド樹脂溶液の固形分濃度は、通常30~60質量%、好ましくは40~50質量%である。
本発明に用いるポリアミド樹脂を溶液重合法で合成する場合、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン等の極性溶剤に固形分濃度が30~60質量%となるように上記のジカルボン酸とジイソシアネートを溶解し、60~200℃に加熱しながら攪拌することで容易に製造することができる。この場合、必要に応じてトリエチルアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属塩等を触媒として用いることもできる。
この場合、ジイソシアネートとしては前記のポリウレタン樹脂の合成に用いられたジイソシアネートを用いることができ、それらの中では溶剤用解性や耐熱性、基材への密着性の点からイソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好ましく、その一部をジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネートやトリレンジイソシアネートで置き換えるのが好ましい。
本発明に用いるポリアミド樹脂のガラス転移温度は30℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましい。ガラス転移温度が30℃未満では耐熱性が不足する場合がある。上限は特に限定されず、200℃以下であることが好ましく、より好ましくは160℃以下である。
ポリオレフィン樹脂について説明する。
本発明で用いることができるポリオレフィン樹脂は限定的ではないが、ポリオレフィン樹脂にα,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフトすることにより得られるものであることが好ましい。ポリオレフィン樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレン等に例示されるオレフィンモノマーの単独重合、もしくはその他のモノマーとの共重合、および得られた重合体の水素化物やハロゲン化物など、炭化水素骨格を主体とする重合体を指す。すわなち、酸変性ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン及びプロピレン-α-オレフィン共重合体の少なくとも1種に、α,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフトすることにより得られるものが好ましい。
プロピレン-α-オレフィン共重合体は、プロピレンを主体としてこれにα-オレフィンを共重合したものである。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、酢酸ビニルなどを1種又は数種用いるこができる。これらのα-オレフィンの中では、エチレン、1-ブテンが好ましい。プロピレン-α-オレフィン共重合体のプロピレン成分とα-オレフィン成分との比率は限定されないが、プロピレン成分が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
α,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも酸無水物が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。具体的には、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン共重合体、無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体、無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン-ブテン共重合体等が挙げられ、これらポリオレフィン樹脂を1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
ポリオレフィン樹脂の製造方法としては、特に限定されず、例えばラジカルグラフト反応(すなわち主鎖となるポリマーに対してラジカル種を生成し、そのラジカル種を重合開始点として不飽和カルボン酸および酸無水物をグラフト重合させる反応)、などが挙げられる。
ラジカル発生剤としては、特に限定されないが、有機過酸化物を使用することが好ましい。有機過酸化物としては、特に限定されないが、ジ-tert-ブチルパーオキシフタレート、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル等のアゾニトリル類等が挙げられる。
<エポキシ樹脂>
次に、本発明に用いられるエポキシ樹脂について説明する。本発明においてエポキシ樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂からなる群より選ばれる1種以上の接着性付与樹脂及び後述するリン化合物(A)と硬化、反応させ、適度な架橋密度を形成させ、接着剤としての耐熱性や耐水性、耐薬品性、Bステージ状態での可撓性などを向上させる役割を担う。
本発明の接着剤組成物において、接着性付与樹脂100質量部に対して、エポキシ樹脂が10~100質量部であることが好ましく、より好ましくは20~80質量部であり、さらに好ましくは25~70質量部である。エポキシ樹脂の配合量が多いと、接着性付与樹脂の割合が低下し、エポキシ樹脂の一部が未硬化で残存するため、接着剤組成物の硬化後の耐熱性が低下することがある。また、エポキシ樹脂の配合量が少ないと、接着性付与樹脂と反応して十分な架橋構造を形成することができず、接着剤組成物の硬化後の耐熱性や絶縁信頼性が低下することがある。
本発明の接着剤組成物に用いられるエポキシ樹脂としては、25℃で液状、半固形または固体状のいずれのものでも構わないが、25℃で液状であり、かつ1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましい。前記エポキシ樹脂は変性されていてもよく、また分子骨格内に硫黄原子、窒素原子、リン原子等を含んでいてもよい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、またはそれらに水素添加したもの、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、NBR(両末端カルボキシル基変性アクリロニトリルブタジエンゴム)変性エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、ポリブタジエン変性エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの市販品としては、例えば、三菱化学(株)製の商品名jER(登録商標)825、jER827、jER828、YL980、DIC(株)製の商品名エピクロン(登録商標)840、840-S、850、850-S、EXA-850CRP、850-LC、新日鉄住金化学(株)製の商品名YD-127、YD-128、YD-128G、YD-128S、YD-128CA、YD-8125、YD-825GS、YD-825GHS等のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、三菱化学(株)製の商品名jER806、jER806H、jER807、YL983U、DIC(株)製の商品名エピクロン830、830-S、835、EXA-830CRP、EXA-830LVP、EXA-835LV、新日鉄住金化学(株)製の商品名YDF-170、YDF-170N、YDF-8170C、YDF-870GS等のビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、三菱化学(株)製の商品名YX8000、YX8034、新日鉄住金化学(株)製の商品名ST-3000等の水添ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、三菱化学(株)製の商品名jER152、DIC(株)製の商品名エピクロンN-730A等のフェノールノボラック型液状エポキシ樹脂、DIC(株)製の商品名エピクロンHP-4032D等のナフタレン型液状エポキシ樹脂、ADEKA(株)製の商品名アデカレジン(登録商標)EP-4088S、EP-4088L等のジシクロペンタジエン型液状エポキシ樹脂、DIC(株)製の商品名エピクロンTSR-960、TSR-601等のNBR変性エポキシ樹脂、三菱化学(株)製の商品名jER871、jER872、新日鉄住金化学(株)製の商品名エポトート(登録商標)YD-172等のダイマー酸変性エポキシ樹脂、日本曹達(株)製の商品名JP-100、JP-200、JP-400等のブタジエン変性エポキシ樹脂、ダイセル化学工業(株)製の商品名セロキサイド(登録商標)2021P、2081等の脂環族エポキシ樹脂、日産化学工業(株)製のTEPIC(登録商標)等のトリグリシジルイソシアヌレート、ナガセケムテックス(株)製の商品名デナコール(登録商標)EX-1000シリーズ、デナコールLシリーズ、デナコールDLCシリーズ、デナレックス(登録商標)シリーズ、EX991等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用しても構わない。
本発明の効果を損なわない範囲で、エポキシ樹脂成分として、25℃で半固形または固体状のエポキシ樹脂を用いることができる。25℃で半固形または固体状のエポキシ樹脂は変性されていてもよく、また分子骨格内に硫黄原子、窒素原子、リン原子等を含んでいてもよい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、またはそれらに水素添加したもの、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの市販品としては、例えば、三菱化学(株)製の商品名jER1001、jER1004、jER1007、jER1010、新日鉄住金化学(株)製の商品名エポトートYD-134、YD-011、YD-014、YD-017、DIC(株)製の商品名エピクロン860、1050、1055、2050、3050、4050、7050等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製の商品名jER4004P、jER4005P、jER4007P、jER4010P、新日鉄住金化学(株)製の商品名エポトートYDF-2001、YDF-2004等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、新日鉄住金化学(株)製の商品名ST-4000D等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製の商品名jER154、DIC(株)製の商品名エピクロンN-740、N-770、N-775、日本化薬(株)製の商品名EPPN(登録商標)-201、EPPN-501H、EPPN-501HY、EPPN-502H、NC-2000L、ダウケミカル社製の商品名DEN-438等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、DIC(株)製の商品名エピクロンN-660、N-665、N-670、N-673、N-680、N-690、N-695、新日鉄住金化学(株)製の商品名エポトートYDCN-700-7、YDCN-700-10、日本化薬(株)製の商品名EOCN(登録商標)-1020、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製の商品名YX4000、YX4000H、日本化薬(株)製の商品名NC-3000、NC-3000L、NC-3000H、NC-3100等のビフェニル型エポキシ樹脂、DIC(株)製の商品名エピクロンHP-4700、HP-4710、HP-4770、HP-5000、HP-6000、日本化薬(株)製の商品名NC-7000L、NC-7300L等のナフタレン型エポキシ樹脂、DIC(株)製の商品名エピクロンHP-7200L、HP-7200、HP-7200H、HP-7200HH、HP-7200HHH、日本化薬(株)製の商品名XD-1000等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ダイセル化学工業(株)製の商品名EHPE(登録商標)3150等の脂環族エポキシ樹脂、DIC(株)製のEXA-9726等のリン含エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用しても構わない。
<一般式(1)で示されるリン化合物>
次に本発明に用いられるリン化合物について説明する。
本発明で、一般式(1)で示されるリン化合物(以下、リン化合物(A)ともいう。)の配合は難燃性を向上させるだけでなく、エポキシ樹脂の硬化剤としての機能も併せ持ち、接着剤組成物の耐熱性や耐薬品性の向上にも寄与するうえ、リン化合物のブリードアウトを抑え、耐水性や高湿度下での絶縁信頼性の低下を防ぐ。
一般式(1)において、R~Rは一般式(2)~(4)のいずれかであり、R~Rのうち少なくとも1つは一般式(2)である。好ましくは2つが一般式(2)であり、より好ましくは3つが一般式(2)である。一般式(2)が2つの場合の好ましい位置は特に限定されず、RとRでも良いし、RとRでも良い。一般式(1)および一般式(3)において、複数のXはそれぞれ独立に、「*-CH-*」または「*-C(CH-*」である(*は一般式(1)または一般式(3)の芳香環に直接結合する部位である。以下、単にCHまたはC(CHと表記する)。好ましくは一般式(1)または一般式(3)のいずれかのXがC(CHであり、より好ましくは一般式(1)と一般式(3)のいずれものXがC(CHである。また、一般式(1)および一般式(3)において、複数のYはそれぞれ独立に、水素または水酸基である。ただし、一般式(1)において、複数あるYの少なくとも1つは水酸基であり、好ましくはYの2つが水酸基である。一般式(1)において、Yの少なくとも1つが水酸基であることにより、一般式(1)のリン化合物が反応性官能基を有し、高温高湿環境下でのブリードアウトの抑制および優れた絶縁信頼性を発現することができる。水酸基の位置は、Xに対してオルト位でもパラ位でも良いが、少なくとも1つの水酸基がXに対してパラ位であることが好ましく、2つの水酸基がともにXに対してパラ位であることがより好ましい。一般式(3)において、水酸基は1つ以上であることが好ましく、より好ましくは2つである。その位置は、Xに対してオルト位でもパラ位でも良いが、少なくとも1つの水酸基がXに対してパラ位であることが好ましく、2つの水酸基がともにXに対してパラ位であることがより好ましい。一般式(4)において、Rは水素または炭素数1~10のアルキル基である。好ましくは炭素数2~8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数3~5のアルキル基である。アルキル基は直鎖状であっても分岐状であっても構わない。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基)、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられ、好ましくはプロピル基、ブチル基またはペンチル基であり、より好ましくはブチル基である。一般式(1)のリン化合物は単一の化合物であっても良いし、置換基の異なる複数の化合物の混合物であっても良い。
リン化合物(A)の含有量は、接着性付与樹脂100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは10質量部以上であり、さらに好ましくは15質量部以上であり、特に好ましくは20質量部以上である。また、100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは90質量部以下であり、さらに好ましくは80質量部以下であり、特に好ましくは70質量部以下である。上記範囲内とすることで優れた接着性、耐熱性、難燃性および絶縁信頼性を発現することができる。
本発明に用いられるリン化合物(A)としては、化学式(5)~(7)で示される構造を有するリン化合物(以下、それぞれ、化学式(5)~(7)のリン化合物ともいう。)のいずれかであること好ましく、なかでも化学式(5)のリン化合物であることが好ましい。リン化合物(A)中に占める化学式(5)~(7)のリン化合物の合計量の比率は30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上であり、100質量%であっても差し支えない。上記比率で含有することで優れた絶縁信頼性を発現することができる。化学式(5)~(7)のリン化合物が少ないと、絶縁信頼性が下がるおそれがある。また、化学式(5)~(7)のリン化合物合計中に占める化学式(5)のリン化合物の比率は30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上であり、100質量%であっても差し支えない。化学式(6)のリン化合物が多いと、接着性が下がるおそれがあり、化学式(7)のリン化合物が多いと、難燃性が下がるおそれがある。
Figure 0007138848000005
Figure 0007138848000006
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本発明の効果を損なわない範囲で、一般式(1)のリン化合物以外のリン化合物を加えることができる。例えば、三光(株)製の商品名BCA、HCA(登録商標)、BzHCA、M-Acid、M-Ester、HCA-HQ、HCA-NQ等のホスフィン酸誘導体、大八化学(株)製の商品名CR-733S、CR-741、PX-200、PX-202、ADEKA(株)製の商品名アデカスタブ(登録商標)FP-600、PFR等の縮合型リン酸エステル化合物、大塚化学(株)製の商品名SPB-100、SPE-100、SPB-100L、SPH-100、伏見製薬所(株)製の商品名FP-100、FP-110、FP-300、FP-400、FP-430、FP-500、FP-800E、FP-800H、FP-900H、FP-1000等の環状ホスファゼン化合物、クラリアントジャパン(株)製の商品名Exolit(登録商標)OPシリーズ等のリンアルミ塩化合物、日産化学(株)製の商品名ホスメル(登録商標)200等のメラミン系化合物、ADEKA(株)製の商品名アデカスタブFP-2100JC、FP-2200S、FP-2500S等のイントメッセント系難燃剤等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用しても構わない。
本発明の接着剤組成物の不揮発成分中の好ましいリン含有率は1.0~5.0質量%であり、より好ましくは1.0~3.0質量%である。リン含有率が少ないと良好な難燃性が得られず、逆に多いと接着性、耐熱性、絶縁信頼性が低下する傾向にある。
本発明の効果を損なわない範囲で、リンを含まない難燃剤を加えることができる。例えば、昭和電工(株)製の商品名ハイジライト(登録商標)H-42、H-42M、H-43、H-43M等の水酸化アルミニウム、協和化学工業(株)製の商品名キスマ(登録商標)5、8、5Q-S、200-06H等の水酸化マグネシウム、日産化学(株)製の商品名MC-4000、MC-4500、MC-6000等のメラミンシアヌレート化合物等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用しても構わない。
エポキシ樹脂およびリン化合物の一部は、一般的にその製造過程において不純物として塩素を含む。しかしながら、環境負荷低減の観点からハロゲン量を低下することが求められており、また、塩素、特に加水分解性塩素が多いと絶縁性が低下することが知られている。従って、接着剤組成物の不揮発成分中の全塩素量は500ppm以下であることが好ましく、より好ましくは300ppm以下である。
<その他の配合剤>
本発明の接着剤組成物には、特性を損なわない範囲でエポキシ樹脂の硬化剤や硬化促進剤を加えることができる。硬化剤としては、エポキシ樹脂と反応する化合物であれば特に制限は無いが、例えば、アミン系硬化剤、フェノール性水酸基を有する化合物、カルボン酸を有する化合物、酸無水物を有する化合物などが挙げられる。
硬化促進剤としては、接着性付与樹脂やリン化合物(A)とエポキシ樹脂との反応を促進するものであれば特に制限はない。例えば、2MZやC11Zなどのイミダゾール誘導体、ジシアンジアミドなどの尿素誘導体、トリエチルアミンやDBUなどの第三級アミン化合物などが挙げられる。
本発明の接着剤組成物には、接着性向上の目的でシランカップリング剤を加えることができ、従来公知のシランカップリング剤であれば特に限定されない。その具体例としては、アミノシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、イソシアネートシラン、ケチミンシランもしくはこれらの混合物もしくは反応物、または、これらとポリイソシアネートとの反応により得られる化合物等が挙げられる。シランカップリング剤の配合量は、接着剤組成物の不揮発分全体を100質量%とした場合、好ましくは0~3質量%であり、より好ましくは0~2質量%である。配合量が上記範囲を超えると耐熱性が低下する傾向にある。
本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、半田耐熱性を向上させる目的で有機・無機フィラーを添加することができる。有機フィラーとしては、耐熱性樹脂であるポリイミド、ポリアミドイミドなどの粉末が挙げられる。また、無機フィラーとしては、例えば、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、酸化タンタル(Ta)、ジルコニア(ZrO)、窒化硅素(Si)、窒化ホウ素(BN)、炭酸カルシウム(CaCO)、硫酸カルシウム(CaSO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸マグネシウム(MgO・TiO)、硫酸バリウム(BaSO)、有機ベントナイト、クレー、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられ、この中では分散の容易さや耐熱性向上効果からシリカが好ましい。これらの有機・無機フィラーの添加量は、接着剤組成物の不揮発成分に対して、1~30質量%であり、3~15質量%がより好ましい。有機・無機フィラーの添加量が多すぎると接着剤塗膜が脆化し、基材への密着性が損なわれる可能性がある。
また、本発明では、本発明の接着剤組成物の特性を損なわない範囲でレベリング剤、染料や顔料などの着色剤を適宜配合することが出来る。
<接着剤組成物の作製>
本発明の接着剤組成物を得る製造方法の一例を説明する。ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂などの接着性付与樹脂の溶剤溶液中にエポキシ樹脂、リン化合物(A)を投入して室温又は加熱下撹拌して均一溶液とする。この場合、エポキシ樹脂硬化剤、硬化促進剤やシランカップリング剤などを必要に応じて配合してもよい。この溶液に、必要に応じて、予め溶剤でスラリーにしたフィラーを配合して更に撹拌をして接着剤組成物のワニスを得ることが出来る。
上記接着剤組成物溶液中の各成分の合計濃度(固形分濃度)は、通常10~45質量%であり、好ましくは15~40質量%である。この濃度が10質量%未満であると、接着剤層の厚みが薄くなり、耐熱性、接着強度が低下することがあり、45質量%より大きくなると、溶液の粘度が高くなりすぎるために、均一に塗工することが困難になることがある。
<プリプレグ積層体及びリジッドプリント積層板>
本発明の接着剤組成物のワニス(接着剤組成物の溶剤溶液)を、ガラスクロスやガラス不織布に塗布・含浸させ、連続又は非連続的に加熱乾燥してBステージ化し、プリプレグを得る。このプリプレグの一方又は両方の面に銅箔を配し、積層し、加熱成形することによって、金属箔張り積層板が得られる。
<接着剤シート>
本発明の接着剤シートとは、本発明の接着剤組成物を基材に塗布・乾燥させて接着剤層とし、かつ少なくとも1層以上の剥離可能な保護フィルム層を有する構成のものをいう。ここでいう保護フィルム層とは、接着剤層の形態を損なうことなく剥離できれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリオレフィン等のプラスチックフィルム及びこれらをシリコーンあるいはフッ素化合物等でコーティング処理を施したフィルムであることが好ましい。具体的な製造方法については実施例で示す。
<フィルム積層体>
フィルム積層体として具体的にはカバーレイフィルムが挙げられ、本発明の難燃性接着剤組成物を接着剤層とし、絶縁性プラスチックフィルム層/接着剤層の2層構成、あるいは絶縁性プラスチックフィルム層/接着剤層/保護フィルム層の3層構成からなる。絶縁性プラスチックフィルムとは、ポリイミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、アラミド、ポリカーボネート、ポリアリレート等のプラスチックからなる厚さ5~200μmのフィルムであることが好ましく、保護フィルムは、上述した接着剤シートの保護フィルムとして説明したものを用いることができる。具体的な製造方法については実施例で示す。
<金属箔積層体>
本発明のフレキシブルプリント基板に用いる金属積層体とは、本発明の難燃性接着剤組成物を接着剤層とし、該接着層で絶縁性プラスチックフィルムと銅箔を貼り合せた構成のものをいう。例えば、絶縁性フィルムの片面又は両面に上に設けられた該接着剤層上に一層又は二層の銅箔が積層された構成のものである。上記銅箔には、プリント配線板に従来用いられている圧延銅箔、電解銅箔を使用することが出来る。絶縁性プラスチックフィルムは、上述したカバーレイフィルムの絶縁性プラスチックフィルムとして説明したものを用いることができる。具体的な製造方法については実施例に示す。
本発明で得られるフレキシブルプリント基板(フレキシブルプリント配線板)は、330℃の半田浴中に30秒間浸漬しても、剥がれ、膨れ、変色等の外観異常のいずれも生じないほどに優れた半田耐熱性を示すことができる。また、40℃、相対湿度90%の雰囲気下に24時間放置して、吸湿させた後、速やかに300℃の半田浴中に30秒間浸漬しても、剥がれ、膨れ、変色等の外観異常のいずれも生じない半田耐熱性は、従来技術では容易にはなし得なかったことである。
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明は実施例になんら限定されるものではない。実施例中および比較例中に単に部とあるのは質量部、%とあるのは質量%を示す。
1.接着性付与樹脂の製造例
接着性付与樹脂の特性は以下の方法で測定した。
(1)対数粘度
乾燥した固形状ポリマー0.5gを100mlのNMPに溶解した溶液を30℃でウベローデ型粘度管を用いて測定した。
(2)数平均分子量分子量
本発明におけるポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂については、試料を、樹脂濃度が0.5重量%程度となるようにテトラヒドロフランで溶解および/または希釈し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブレンフィルターで濾過したものを測定用試料として、テトラヒドロフランを移動相とし、示差屈折計を検出器とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分子量を測定した。流速は1mL/分、カラム温度は30℃とした。カラムには昭和電工製KF-802、804L、806Lを用いた。分子量標準には単分散ポリスチレンを使用した。
本発明におけるポリアミド樹脂については、樹脂濃度が0.5重量%程度となるようにジメチルアセトアミド(LiBr30mM添加)に溶解した後、孔径0.2μmのポリ四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過したものを測定用試料として、ジメチルアセトアミド(LiBr30mM添加)を移動相とし、示差屈折計を検出器とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分子量を測定した。流速は0.7mL/分、カラム温度は40℃とした。カラムにはTOSOH製TSKgel GMHXL、TSKgel GMHXL、TSKgel G2000HXLを用いた。分子量標準には単分散PEGを使用した。
(3)ガラス転移温度
接着剤シートから剥離した樹脂フィルムを170℃で3時間硬化させたサンプルを、アイテイ計測制御社製動的粘弾性測定装置DVA-220を用いて、周波数110Hzで動的粘弾性の測定を行い、その貯蔵弾性率の変曲点から求めた。
(合成例1:ポリエステル樹脂の合成)
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にイソフタル酸1モル、テレフタル酸1モル、無水トリメリット酸0.01モル、エチレングリコール1モル、ネオペンチルグリコール1モル、触媒としてテトラ-n-ブチルチタネートを全酸成分に対して0.01モル%仕込み、160℃から240℃まで4時間かけて昇温しながらエステル交換反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて90分間重縮合反応を行った。窒素気流下、220℃まで冷却し、無水トリメリット酸を0.01モル投入し、30分間反応を行った。得られたポリエステルポリオール(1)はNMRによる組成分析の結果、酸成分がモル比でイソフタル酸/テレフタル酸/トリメリット酸=49/49/2であり、グリコール成分がモル比でエチレングリコール/ネオペンチルグリコール=50/50であった。また、数平均分子量は5400、ガラス転移温度は56℃であった。
得られたポリエステル樹脂を固形分濃度が40%となるようにメチルエチルケトン中で撹拌溶解した。
(合成例2:ポリウレタン樹脂の合成)
温度計、攪拌機、還流式冷却管および蒸留管を具備した反応容器に、ポリエステル樹脂の製造例と同じ方法で合成したポリエステルポリオールを100部、鎖延長剤として1,4-ブタンジオールを7部、メチルエチルケトトン100部を仕込み溶解後、ヘキサメチレンジイソシアネート28部を投入し、撹拌均一溶液としてから、触媒としてジブチルチンジラウレートを0.04部加え70℃で2時間反応させた。充分に反応させた後、メチルエチルケトンを追加投入して固形分濃度40質量%のポリエステルウレタンの溶液を得た。得られたポリエステルウレタンの分子量は9800、ガラス転移温度は48℃であった。
(合成例3:ポリアミド樹脂の合成)
温度計、冷却管、窒素ガス導入管のついた4ツ口フラスコにセバシン酸1モル、イソホロンジイソシアネート(IPDI)1モル、フッ化カリウム0.02モルを固形分濃度が50質量%となるようにN―メチル-2-ピロリドンと共に仕込み、180℃で5時間攪拌した後、n-ブタノールで固形分濃度が30質量%となるように希釈してポリアミド樹脂を合成した。得られたポリアミド樹脂の対数粘度は0.65dl/g、ガラス転移温度は130℃であった。
(合成例4:ポリオレフィン樹脂)
1Lオートクレーブに、プロピレン-ブテン共重合体(三井化学社製「タフマー(登録商標)XM7080」)100質量部、トルエン150質量部及び無水マレイン酸19質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイド6質量部を加え、140℃まで昇温した後、更に3時間撹拌した。その後、得られた反応液を冷却後、多量のメチルエチルケトンが入った容器に注ぎ、樹脂を析出させた。その後、当該樹脂を含有する液を遠心分離することにより、無水マレイン酸がグラフト重合した酸変性プロピレン-ブテン共重合体と(ポリ)無水マレイン酸および低分子量物とを分離、精製した。その後、減圧下70℃で5時間乾燥させることにより、無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体を得た。得られたポリオレフィン樹脂の分子量は25000であった。
得られたポリオレフィン樹脂を固形分濃度が30質量%となるようにメチルシクロヘキサン中で撹拌溶解した。
2.リン化合物(A)の製造例
撹拌機、冷却管を具備した溶剤回収装置、窒素導入管および温度計を備えた4つ口フラスコに、三光(株)製の商品名HCA(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド)558.3gおよびAllnex(株)製の商品名Phenodur(登録商標) PR411(ブタノール中固形分濃度75%)391.6gを加え、攪拌、窒素フローをしながら、フラスコ内温を199℃まで180分かけて昇温した。その過程で原料中に含まれるブタノールおよび反応により生成したブタノールは、溶剤回収装置を介して留出させた。その後、200℃で20分間保持し、反応物に残る揮発分を留出させた。得られた固体をフラスコから取り出し、リン化合物Aを得た。リン化合物(A)は化学式(5)の構造を有する。
3.接着剤組成物ワニスの製造
[実施例1]ポリエステル樹脂
合成例1で得られたポリエステル樹脂の溶液を250部、JER152(ジャパンエポキシ社製フェノールノボラック型エポキシ樹脂の50%トルエン溶液)を84.4部、リン化合物(A)を42.2部、硬化剤としてDDS(4,4’―ジアミノジフェニルスルホンの15%メチルエチルケトン溶液)を38.6部、KBM-403(信越化学社製アミン系シランカップリング剤の20%トルエン溶液)を9.5部、メチルエチルケトンを55.3部と共に容器に仕込み、室温で均一になるように撹拌して固形分濃度が40質量%の接着剤組成物ワニスを得た。
得られた接着剤組成物ワニスを用いて、下記に示す方法で接着剤シート、カバーレイフィルム、フレキシブルプリント配線板、プリプレグ及びリッドプリント配線板を作製し、下記に示す特性を評価した。結果を表1に示す。
[実施例2]ポリウレタン樹脂
合成例2で得られたポリウレタン樹脂の溶液を250部、JER152(ジャパンエポキシ社製フェノールノボラック型エポキシ樹脂の50%トルエン溶液)を84.4部、リン化合物(A)を42.2部、硬化剤としてDDS(4,4’―ジアミノジフェニルスルホンの15%メチルエチルケトン溶液)を38.6部、KBM-403(信越化学社製アミン系シランカップリング剤の20%トルエン溶液)を9.5部、メチルエチルケトンを55.3部と共に容器に仕込み、室温で均一になるように撹拌して固形分濃度が40質量%の接着剤組成物ワニスを得た。
得られた接着剤組成物ワニスを用いて、下記に示す方法で接着剤シート、カバーレイフィルム、フレキシブルプリント配線板、プリプレグ及びリッドプリント配線板を作製し、下記に示す特性を評価した。結果を表1に示す。
[実施例3]ポリアミド樹脂
合成例3で得られたポリアミド樹脂の溶液を333.3部、JER152(ジャパンエポキシ社製フェノールノボラック型エポキシ樹脂の50%トルエン溶液)を84.4部、リン化合物(A)を42.2部、硬化剤としてDDS(4,4’―ジアミノジフェニルスルホンの15%メチルエチルケトン溶液)を38.6部、KBM-403(信越化学社製アミン系シランカップリング剤の20%トルエン溶液)を9.5部、N,N-ジメチルアセトアミドを132部と共に容器に仕込み、室温で均一になるように撹拌して固形分濃度が30質量%の接着剤組成物ワニスを得た。
得られた接着剤組成物ワニスを用いて、下記に示す方法で接着剤シート、カバーレイフィルム、フレキシブルプリント配線板、プリプレグ及びリッドプリント配線板を作製し、下記に示す特性を評価した。結果を表1に示す。
[実施例4]ポリオレフィン樹脂
合成例4で得られたポリオレフィン樹脂333.3部、JER152(ジャパンエポキシ社製フェノールノボラック型エポキシ樹脂の50%トルエン溶液)を84.4部、リン化合物(A)を42.2部、硬化剤としてDDS(4,4’―ジアミノジフェニルスルホンの15%メチルエチルケトン溶液)を38.6部、KBM-403(信越化学社製アミン系シランカップリング剤の20%トルエン溶液)を9.5部、トルエンを105部と共に容器に仕込み、室温で均一になるように撹拌して固形分濃度が30質量%の接着剤組成物ワニスを得た。
得られた接着剤組成物ワニスを用いて、下記に示す方法で接着剤シート、カバーレイフィルム、フレキシブルプリント配線板、プリプレグ及びリッドプリント配線板を作製し、下記に示す特性を評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]接着性付与樹脂なし
JER152(ジャパンエポキシ社製フェノールノボラック型エポキシ樹脂の50%トルエン溶液)を284.4部、リン化合物Aを42.2部、硬化剤としてDDS(4,4’―ジアミノジフェニルスルホン)を38.6部、KBM-403(信越化学社製アミン系シランカップリング剤の20%トルエン溶液)を9.5部、トルエンを52.2部と共に容器に仕込み、室温で均一になるように撹拌して固形分濃度が45質量%の接着剤組成物ワニスを得た。
得られた接着剤組成物ワニスを用いて、下記に示す方法で接着剤シート、カバーレイフィルム、フレキシブルプリント配線板、プリプレグ及びリッドプリント配線板を作製し、下記に示す特性を評価した。結果を表1に示す。
尚、各試料の作製方法と評価方法は以下のとおりである。
<接着剤シート>
実施例1~4と比較例1で得られた接着剤組成物溶液を用いて離型処理を施したポリエステルフィルム上に乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分間、送風オーブン内で乾燥し未硬化もしくは半硬化状態の接着剤シートを製造した。
<カバーレイフィルム>
実施例1~4と比較例1で得られた接着剤組成物の溶液を25μmのポリイミドフィルム((株)カネカ製、アピカル25NPI)上に乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分間、送風オーブン内で乾燥し未硬化もしくは半硬化状態のカバーレイフィルムを作製した。
<フレキシブルプリント配線板>
実施例1~4と比較例1で得られた接着剤組成物の溶液を25μmのポリイミドフィルム((株)カネカ製、アピカル25NPI)上に乾燥後の厚みが16μmとなるように塗布し、130℃で3分間、送風オーブン内で乾燥し未硬化もしくは半硬化状態の接着剤付きフィルムを作製した。このようにして得られた接着剤付きフィルムの接着剤塗布面と電解銅箔(厚さ18μm、日本電解社製USLP)または圧延銅箔(厚さ18μm、日鉱金属性BHY)の粗化処理面とを(株)ナセック社製真空プレスラミネート機を用いて、ラミネート温度130℃、圧力3MPa、時間20秒間の条件にて熱圧着させた。これを、さらに170℃で3時間加熱硬化させることにより、フレキシブルプリント配線板を作製した。
<プリプレグ及びリジッド銅張り積層板の作製>
実施例1~4と比較例1の接着剤組成物ワニスを厚さ:0.2mmのガラス布(旭シュエーベル株式会社製、商品名:7629)に塗布、含浸後、120℃、20分間加熱、乾燥しプリプレグを得た。
プリプレグの両側に、(厚さ18μm、日本電解社製USLP)を接着面がプリプレグと合わさるように重ね、ラミネート温度130℃、圧力3MPa、時間20秒間の条件にて熱圧着させた。これを、さらに170℃で3時間加熱硬化させることにより、フレキシブルプリント配線板を作製した。
以上のようにして得られた接着剤シート、カバーレイフィルム、フレキシブルプリント配線板及びリジッドプリント配線板を、以下に示す通りの評価項目に従い評価を行った。
<剥離強度>
JIS C6471に準拠して、上記フレキシブルプリント配線板及びリジッドプリント配線板にパターン幅1mmの回路を形成し、東洋ボールドウイン社製RTM100を用いて、25℃雰囲気下で、銅箔を該配線板の90°の方向に50mm/minの引っ張り速度で引っ張り試験を行い、90°剥離強度を測定した。
(判定)◎:15N/cm以上
○:11N/cm以上15N/cm未満
△:6N/cm以上11N/cm未満
×:6N/cm未満
<半田耐熱性>
(1)常態:JIS C6471に準拠して、上記フレキシブルプリント配線板及びリジッドプリント配線板を25mm角に切断することにより試験片を作製し、その試験片を300℃以上の半田浴中に30秒間浸漬した。その試験片に剥がれ、膨れ、変色等の外観異常のいずれも生じない温度を測定した。
(判定)◎:330℃以上
○:300℃以上330℃未満
×:300℃未満
(2)吸湿:前記の常態での測定と同様にして作製した試験片を40℃、相対湿度90%の雰囲気下に24時間放置した後、速やかにその試験片を280℃以上の半田浴中に30秒間浸漬した。その試験片に剥がれ、膨れ、変色等の外観異常のいずれも生じない温度を測定した。
(判定)◎:300℃以上
○:280℃以上300℃未満
×:280℃未満
<難燃性>
実施例1~4と比較例1で得られた接着剤組成物を厚み12.5μmのポリイミドフィルム((株)カネカ製、アピカル12.5NPI)の両面にそれぞれ乾燥後の厚みが16μmとなるように塗布し、130℃で3分間、送風オーブン内で乾燥した後、170℃で3時間、加熱硬化させることによりサンプルを作製した。UL-94VTM難燃性規格に準拠して、難燃性を評価した。
(判定)◎:UL94 VTM-0相当であり、サンプル片の燃焼が半分より少なかったもの。
○:UL94 VTM-0相当であり、サンプル片の燃焼が半分以上であったもの。
×:UL94 VTM-0を満足しないもの
<絶縁信頼性:耐マイグレーション性>
東洋紡社製2層CCL(商品名バイロフレックス)上に線間70μmの櫛型パターンを作製した。この回路上に実施例1~4と比較例1で得られた接着剤組成物ワニスを乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分間、送風オーブン内で乾燥した後、170℃で3時間、加熱硬化させることによりカバーレイを設けたサンプルを作製した。その後、温度85℃、相対湿度85%の条件化で、直流電圧50Vを印加し、耐マイグレーション性を測定した。
(判定)○:500hr後の絶縁抵抗値が1×10Ωを上回り且つデンドライトの成長が認められなかったもの。
×:500hr後の絶縁抵抗値が1×10Ωを下回った場合、もしくはデンドライトの成長が認められたもの。
<PCT処理後の剥離強度>
上記フレキシブルプリント配線板及びリジッドプリント配線板をサンプル幅が5mmになるように切断しサンプルを作製した後、トミー精工社製オートクレーブを用いて、温度121℃、湿度100%、気圧2atm条件化で40時間PCT試験を行った。これをJIS C6471に準拠して、東洋ボールドウイン社製RTM100を用いて、25℃雰囲気下で、銅箔を該配線板の90°の方向に50mm/minの引っ張り速度で引っ張り試験を行い、90°剥離強度を測定した。
(判定)◎:10N/cm以上
○:6N/cm以上10N/cm未満
△:4N/cm以上6N/cm未満
×:4N/cm未満
Figure 0007138848000008
本発明の接着剤組成物は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂からなる群より選ばれる1種の樹脂とエポキシ樹脂及び特定構造のリン化合物を含有することにより、耐熱性、接着性、絶縁信頼性、難燃性に優れ、さらにBステージ状態での可撓性と仮付け性に優れる。そのため、これを用いた接着性シート、フィルム積層体、金属箔積層体、リジッドプリント配線板やフレキシブルプリント配線板はパーソナルコンピュータや携帯電話等の情報端末機器に搭載されるプリント配線板の小型化、高密度化に大いに寄与する。

Claims (5)

  1. ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂およびポリオレフィン樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂、エポキシ樹脂並びに一般式(1)で示されるリン化合物を含有することを特徴とする接着剤組成物。
    Figure 0007138848000009
    (一般式(1)中のR~Rは、以下の一般式(2)~(4)のいずれかであり、R~Rのうち少なくとも1つは一般式(2)である。一般式(2)~(4)における*は、一般式(1)の芳香環に直接結合する部位であることを表す。一般式(1)および一般式(3)中の複数のXはそれぞれ独立に、CHまたはC(CHであり、一般式(1)および一般式(3)中の複数のYはそれぞれ独立に、水素または水酸基である。ただし、一般式(1)において、複数あるYの少なくとも1つは水酸基である。一般式(4)中のRは水素または炭素数1~10のアルキル基である。)
    Figure 0007138848000010
    Figure 0007138848000011
    Figure 0007138848000012
  2. プリント配線板用途で使用されることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
  3. 請求項1~2のいずれかに記載の接着剤組成物を使用したことを特徴とする接着剤シート。
  4. 請求項3に記載の接着剤シートを使用したことを特徴とするプレプリグ積層体、ポリイミドフィルム積層体または金属箔積層体。
  5. 請求項4に記載の積層体を使用したことを特徴とするリジッドプリント基板またはフレキシブルプリント基板。
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