JP7133526B2 - 導電性フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、高分子と複数の金属粒子とを含有する導電性細線を有する導電性フィルムに関し、特に、金属粒子の粒径分布を調整した導電性細線を有する導電性フィルムに関する。
導電性細線(導電性を示す細線状の配線)を有する導電性フィルムは、タッチパネル、太陽電池、および、EL(エレクトロルミネッセンス)素子等種々の用途に幅広く利用されている。特に、近年、携帯電話および携帯ゲーム機器へのタッチパネルの搭載率が上昇しており、多点検出が可能な静電容量方式のタッチパネル用の導電性フィルムの需要が急速に拡大している。
導電性フィルムの導電性細線は、例えば、特許文献1に示されるように、ハロゲン化銀を含む感光性層に、露光処理、および、現像処理等を順次実施して、金属銀を含む導電性細線が形成されている。
特開2007-129205号公報
近年では、導電性フィルムは曲がった状態でも利用されることがある。このため、導電性フィルムでは、導電性細線について、電気抵抗が小さいことに加えて、曲げても断線が発生しない、折り曲げ性が求められている。
しかしながら、特許文献1では、導電性細線を曲げた場合の性能について何ら考慮されていない。
本発明は、上述の実情に鑑みて、電気抵抗が小さいことに加えて、曲げても断線が発生しない折り曲げ性が優れた導電性細線を有する導電性フィルムを提供することを課題とする。
上述の課題を解決するために、本発明は、可撓性基材と、可撓性基材上に配置された、高分子中に分散された複数の金属粒子を含有する導電性細線と、を有し、導電性細線が延在する方向に直交する方向での導電性細線の垂直断面において、複数の金属粒子を全て内包する最小包含円の半径をRとして、最小包含円の中心から距離0.2R以下の領域を第1の領域とし、最小包含円の中心から距離0.2R超R以下の領域を第2の領域とし、第1の領域内の複数の金属粒子の平均粒径をDaとし、第2の領域内の複数の金属粒子の平均粒径をDbとするとき、Db/Da>1.5である、導電性フィルムを提供するものである。
第1の領域内の複数の金属粒子の平均粒径Daと、第2の領域内の複数の金属粒子の平均粒径Dbとは、Db/Da>3であることが好ましい。
導電性細線中に含有される複数の金属粒子の割合は、70体積%~90体積%であることが好ましい。
第1の領域内の複数の金属粒子の平均粒径Daは、50nm以上200nm以下であることが好ましい。
可撓性基材は、ポリエチレンテレフタレートで構成されることが好ましい。
複数の金属粒子は、銀を含むことが好ましい。
複数の金属粒子は、全て銀で構成されていることが好ましい。
導電性細線の線幅は、1.0μm以上5.0μm未満であることが好ましい。
導電性細線の厚みは、0.5μm以上3.0μm未満であることが好ましい。
本発明によれば、電気抵抗が小さいことに加えて、曲げても断線が発生しない折り曲げ性が優れた導電性細線を有する導電性フィルムを提供することができる。
本発明の実施形態の導電性フィルムの一例を示す模式的斜視図である。 本発明の実施形態の導電性フィルムの一例を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の導電性フィルムの導電性細線により形成されるメッシュパターンの一例を示す平面図である。
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の導電性フィルムを詳細に説明する。
なお、以下に説明する図は、本発明を説明するための例示的なものであり、以下に示す図に本発明が限定されるものではない。
なお、以下において数値範囲を示す「~」とは両側に記載された数値を含む。例えば、εが数値α~数値βとは、εの範囲は数値αと数値βを含む範囲であり、数学記号で示せばα≦ε≦βである。
「具体的な数値で表された角度」、「平行」、「垂直」および「直交」等の角度は、特に記載がなければ、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
<導電性フィルム>
図1は本発明の実施形態の導電性フィルムの一例を示す模式的斜視図であり、図2は本発明の実施形態の導電性フィルムの一例を示す模式的断面図である。
導電性フィルム10は、可撓性基材12と、可撓性基材12の表面12a上に配置された導電性細線14とを有する。なお、図1では、一方向に延びる導電性細線14が2つ示されているが、導電性細線14の配置形態、および、その数は特に制限されない。
導電性細線14は、図2に示すように高分子16と、複数の金属粒子18とを含有するものである。導電性細線14では、複数の金属粒子18が高分子16中に分散している。
なお、金属粒子18の形状は粒子状には限定されず、例えば、融着して一部または全体にわたって結合している等の形態であってもよい。
図1および図2に導電性細線14が延在する方向DLに直交する方向DWでの導電性細線14の垂直断面Acを示す。
導電性細線14の垂直断面Acとは、導電性細線14が延在する方向DLに直交する面で切断した際の断面のことである。つまり、導電性細線14の垂直断面Acとは、導電性細線14が延在する方向DLに直交する方向DWに沿って、導電性細線14の表面14aに垂直な面で切断した際の断面である。
垂直断面Acにおいて、複数の金属粒子18を全て内包する最小包含円Sの半径をRとして、最小包含円Sの中心Cから距離0.2R以下の領域を第1の領域Qaとし、最小包含円Sの中心Cから距離0.2R超R以下の領域を第2の領域Qbとする。第1の領域Qaは、中心Cの半径0.2Rの円Saで囲まれる領域である。第2の領域Qbは、円Saと最小包含円Sとの間の領域である。
第1の領域Qa内の複数の金属粒子18の平均粒径をDaとし、第2の領域Qb内の複数の金属粒子18の平均粒径をDbとするとき、Db/Da>1.5であり、より好ましくはDb/Da>3である。
なお、Db/Daの上限値は特に限定されるものではないが、導電性細線14の線幅を考慮するとDb/Da≦10であることが好ましい。
導電性細線がDb/Da>1.5である場合、図2に示すように、金属粒子18は、導電性細線14の中心付近、0.2R相当の第1の領域内では粒径が小さく、その外側の第2の領域では金属粒子18の粒径が大きい状態にある。
ここで、高分子と金属粒子とを含有する導電性細線をパターニングした後に、めっき処理を行うことにより金属粒子を成長させて電気抵抗を下げることができる。しかし、金属量を増やすことにより相対的に金属粒子を担持している高分子の比率が下がってしまう。この状態で、導電性細線を折り曲げた時にかかる応力は高分子に集中するため、高分子の量が少ないと応力に耐えきれず、導電性細線が破断してしまい、折り曲げ性を保てなくなる。折り曲げ性を保つために、高分子を増やすとその分、電気抵抗が上がる。このように、導電性と折り曲げ性とはトレードオフの関係にある。
しかしながら、粒径の小さい金属粒子を含む層を形成し、後処理で無電解めっきを行うことにより表面に近い領域の金属粒子を優先的に成長させて、導電性細線の表面側と内部で金属粒子の粒径に差をつけられることを見出した。
粒径が小さい金属粒子の周囲に、粒径が大きい金属粒子が存在する領域を形成することにより、金属粒子の粒径の大きい領域で導電性を高めつつ、内部の金属粒子が小さい領域で折り曲げ時にかかる応力を分散させることに成功して、低抵抗と折り曲げ性の両立を実現し、本発明に至った。
導電性細線の中心部と外側とで導電性を担保する金属粒子の粒径を変えて、Db/Da>1.5とすることにより、第2の領域Qbの粒径が大きい金属粒子が電気抵抗を小さくすることを担い、第1の領域Qaの金属粒子が、曲げた際にかかる応力を分散させることを担う。これにより、導電性と折り曲げ性の両立を実現した導電性細線が得られる。
なお、導電性細線がDb/Da≦1.5では、導電性細線の中心部の粒径が相対的に大きくなり、曲げた際にかかる応力の耐性が小さく折り曲げ性が悪い。また、導電性細線の外側の粒径が相対的に小さくなると高分子の量が相対的に多くなり電気抵抗が高くなって導電性が悪くなる。このように導電性と折り曲げ性の両立を図ることができない。
導電性細線14中に含有される複数の金属粒子の割合は特に制限されず、55体積%~95体積%の場合が多く、70体積%~90体積%であることが好ましい。金属粒子の割合が上述の範囲であれば、導電性と折り曲げ性の両立を図ることができる。なお、金属粒子の割合は後述のようにして求めることができる。
また、第1の領域Qaの平均粒径Daは特に制限されず、10nm以上200nm以下の場合が多く、50nm以上200nm以下であることが好ましく、50nm以上100nm以下であることがより好ましく、50nm以上70nm以下であることが更に好ましい。平均粒径Daは、めっき処理前の金属粒子の粒径であり、導電性細線の第1の領域Qaの平均粒径Daが上述の範囲であれば、導電性細線の細線化を実現できる。
また、第2の領域Qbの平均粒径Dbは特に制限されず、50nm以上500nm以下の場合が多く、100nm以上300nm以下であることが好ましく、100nm以上200nm以下であることがより好ましい。
次に、図2を用いて、導電性細線の垂直断面における、第1の領域Qaと第2の領域Qbについて説明する。
本発明においては、走査型電子顕微鏡により導電性フィルム表面を観察し、延在する1本の導電性細線を選択して、選択された1本の導電性細線の任意の箇所を選び垂直断面Acを得る。垂直断面Acを走査型電子顕微鏡により観察して、以下のようにして最小包含円S,第1の領域Qa、第2の領域Qb、ならびに金属粒子18の平均粒径Da、平均粒径Dbおよび金属粒子の割合を求める。
図2に示すように導電性細線14の垂直断面Acには複数の金属粒子18が存在する。
最小包含円Sは、垂直断面Acに存在する、複数の金属粒子18を全て内包する円である。最小包含円Sを設定することにより、最小包含円Sの中心Cと、半径Rが特定される。中心Cから距離0.2R以下の第1の領域Qaを設定する。そして、最小包含円Sの中心Cから距離0.2R超R以下の領域を第2の領域Qbを設定する。第1の領域Qa内の金属粒子18を特定する。特定した金属粒子18のうち、大きい粒子から順に10個の粒子の球相当径を算出し、10個の球相当径の算術平均値を平均粒径Daとする。
第2の領域Qbにおいても、金属粒子18を特定し、特定した金属粒子18のうち、大きい粒子から順に10個の粒子の球相当径を算出し、10個の球相当径の算術平均値を平均粒径Dbとする。
金属粒子の割合(体積%)は、走査型電子顕微鏡による垂直断面Acの観察画像から、金属粒子部分の面積と、導電性細線全体の面積とを計算することにより、金属粒子の割合(体積%)を求めることができる。
なお、上述の走査型電子顕微鏡による測定方法としては、まず、導電性細線の表面への導電性付与のため、導電性細線の表面にカーボン蒸着を行い、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製S-5200型SEM)にて表面形態を観察することにより、導電性細線内部の金属が存在する領域を観察できる。なお、観察条件は、二次電子モードで、加速電圧:10kVで行う。
この際、導電性細線の垂直断面の観察は、走査型電子顕微鏡にて、高分子と金属粒子とのコントラストがつく加速電圧を選択する。より具体的には、導電性細線の垂直断面の観察方法としては、ミクロトームにて導電性細線の垂直断面を切削した後、導電性付与のため、露出した垂直断面にカーボン蒸着を行い、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製S-5200型SEM)にて垂直断面を観察する。このとき、垂直断面Acの観察画像が得られる。なお、観察条件は、反射電子モードで、加速電圧:5kVで行う。
導電性細線は、高分子と、複数の金属粒子とを含む。
高分子の種類は特に制限されず、公知の高分子を使用することができる。なかでも、後述する特定高分子が好ましい。
金属粒子は、導電性細線の導電性を担保する部分である。金属粒子は、高分子中で離散して存在してもよく、高分子中に、金属粒子が凝集して凝集体として存在してもよい。金属粒子としては、導電性がより優れる点で、銀(金属銀)、銅(金属銅)、金(金属金)、ニッケル(金属ニッケル)、パラジウム(金属パラジウム)、または、これらのうちの2種以上の混合物が好ましく、銀、銅、または、その混合物がより好ましく、銀がさらに好ましい。複数の金属粒子は、全て銀で構成されることが好ましい。金属粒子を全て銀で構成することにより、導電性細線の断線故障の発生が低下する。
なお、図2においては、金属粒子が高分子中に分散した形態を記載しているがこの形態には限定されず、Db/Da>1.5を満たせば、金属が層状となって導電性細線中に分散した形態であってもよい。
導電性細線の線幅Waは、折り曲げ性および視認しづらさのバランスの点から、1.0μm以上5.0μm未満であることが好ましい。なかでも、導電性細線が視認されにくい点から、線幅Waは2.5μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、導電性細線の導電性がより優れる点から、0.5μm以上が好ましく、1.2μm以上がより好ましい。
導電性細線の厚みTは特に制限されないが、導電性と折り曲げ性のバランスの点から、0.5μm以上3.0μm以下であることが好ましく、厚みTは1.0以上2.0μm以下であることがより好ましい。
上述の導電性細線14の線幅Waは、走査型電子顕微鏡を用いて、1本の導電性細線の線幅に相当する任意の5箇所を選択し、5箇所の線幅相当の算術平均値を線幅Waとする。
また、上述の導電性細線14の厚みTは、走査型電子顕微鏡を用いて、1本の導電性細線の厚みに相当する任意の5箇所を選択し、5箇所の厚みに相当する部分の算術平均値を厚みTとする。
導電性細線の線抵抗値は、200Ω/mm未満であることが好ましい。なかでも、タッチパネルとして用いた際の操作性の点から、100Ω/mm未満であることがより好ましく、60Ω/mm未満がさらに好ましい。
線抵抗値とは、四端針法で測定した抵抗値を測定端子間距離で除したものである。より具体的には、メッシュパターンを構成する任意の1本の導電性細線の両端を断線させてメッシュパターンから切り離した後に、4本(A、B、C、D)のマイクロプローブ(株式会社マイクロサポート製タングステンプローブ(直径0.5μm))を該切り離された導電性細線に接触させて、最外プローブA、Dにソースメーター(KEITHLEY製ソースメーター 2400型汎用ソースメーター)を用いて内部プローブB、C間の電圧Vが5mVになるよう定電流Iを印加し、抵抗値Ri=V/Iを測定し、得られた抵抗値RiをB、C間距離で除して線抵抗値を求める。
導電性細線は所定のパターンを形成していてもよく、例えば、そのパターンは特に制限されず、正三角形、二等辺三角形、直角三角形等の三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形等の四角形、(正)六角形、(正)八角形等の(正)n角形、円、楕円、および、星形等を組み合わせた幾何学図形であることが好ましく、メッシュ状(メッシュパターン)であることがより好ましい。
メッシュ状とは、図3に示すように、交差する導電性細線14Bにより構成される複数の開口部(格子)20を含んでいる形状を意図する。図3において、開口部20は、ひし形(正方形)の形状を有しているが、他の形状であってもよい。例えば、多角形状(例えば、三角形、四角形、六角形、および、ランダムな多角形)としてもよい。また、一辺の形状を直線状の他、湾曲形状にしてもよいし、円弧状にしてもよい。円弧状とする場合は、例えば、対向する二辺については、外方に凸の円弧状とし、他の対向する二辺については、内方に凸の円弧状としてもよい。また、各辺の形状を、外方に凸の円弧と内方に凸の円弧が連続した波線形状としてもよい。もちろん、各辺の形状を、サイン曲線にしてもよい。
ここで、図3は本発明の実施形態の導電性フィルムの導電性細線により形成されるメッシュパターンの一例を示す平面図である。
開口部20の一辺の長さLは特に制限されないが、1500μm以下が好ましく、1300μm以下がより好ましく、1000μm以下であることがさらに好ましく、5μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、80μm以上がさらに好ましい。開口部の辺の長さが上述の範囲である場合には、さらに透明性も良好に保つことが可能であり、導電性フィルムを表示装置の前面にとりつけた際に、違和感なく表示を視認することができる。
可視光透過率の点から、メッシュパターンの開口率は、90.00%以上が好ましく、95.00%以上がより好ましく、99.50%以上がさらに好ましい。上限は特に制限されないが、100%未満が挙げられる。
開口率とは、メッシュパターン領域中における導電性細線がある領域を除いた可撓性基材上の領域が全体に占める割合に相当する。
<導電性フィルムの製造方法>
次に、導電性フィルムの製造方法について説明する。
導電性フィルムの製造方法は、上述した構成の導電性フィルムが製造できれば特に制限されないが、生産性に優れる点で、後述する工程A~工程Eをこの順に有する導電性基板の製造方法が好ましい。以下、各工程について詳述する。
<工程A>
工程Aは、可撓性基材上に、ハロゲン化銀とゼラチンとゼラチンとは異なる高分子(以下、「特定高分子」ともいう。)とを含むハロゲン化銀含有感光性層(以下、「感光性層」ともいう。)を形成する工程である。本工程により、後述する露光処理が施される感光性層付き可撓性基材が製造される。
まず、工程Aで使用される材料および部材について詳述し、その後、工程Aの手順について詳述する。
(可撓性基材)
可撓性基材とは、折り曲げることができる基材を意味し、具体的には、折り曲げ曲率半径2mmで折り曲げても割れが生じない基材である。可撓性基材は、3次元形状を形成することができる加工性を有する。
可撓性基材は感光性層、および導電性細線を支持することができれば、その種類は特に制限されず、プラスチック基板、ガラス基板、および、金属基板が挙げられ、プラスチック基板が好ましい。
可撓性基材の厚みは特に制限されず、25~500μmの場合が多い。なお、導電性フィルムをタッチパネルに応用する際に、可撓性基材表面をタッチ面として用いる場合は、可撓性基材の厚みは500μmを超えていてもよい。
可撓性基材を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)(258℃)、ポリシクロオレフィン(134℃)、ポリカーボネート(250℃)、アクリルフィルム(128℃)、ポリエチレンナフタレート(269℃)、ポリエチレン(135℃)、ポリプロピレン(163℃)、ポリスチレン(230℃)、ポリ塩化ビニル(180℃)、ポリ塩化ビニリデン(212℃)、および、トリアセチルセルロース(290℃)等の融点が約290℃以下である樹脂が好ましく、PET、ポリシクロオレフィン、および、ポリカーボネートがより好ましい。この中でも、導電性細線との密着性が優れることから、PETが最も好ましい。また、( )内の数値は融点、または、ガラス転移温度である。
可撓性基材の全光線透過率は、85~100%が好ましい。全光透過率は、JIS(日本工業規格) K 7375:2008に規定される「プラスチック-全光線透過率および全光線反射率の求め方」を用いて測定される。
可撓性基材の表面上には、下塗り層が配置されていてもよい。
下塗り層は、後述する特定高分子を含むことが好ましい。この下塗り層を用いると、後述する導電性細線の可撓性基材に対する密着性がより向上する。
下塗り層の形成方法は特に制限されず、例えば、特定高分子を含む下塗り層形成用組成物を可撓性基材上に塗布して、必要に応じて加熱処理を施す方法が挙げられる。下塗り層形成用組成物には、必要に応じて、溶媒が含まれていてもよい。溶媒の種類は特に制限されず、後述する感光性層形成用組成物で使用される溶媒が例示される。また、特定高分子を含む下塗り層形成用組成物として、特定高分子の粒子を含むラテックスを使用してもよい。
下塗り層の厚みは特に制限されず、導電層の可撓性基材に対する密着性がより優れる点で、0.02~0.3μmが好ましく、0.03~0.2μmがより好ましい。
(ハロゲン化銀)
ハロゲン化銀に含まれるハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子およびフッ素原子のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよい。例えば、塩化銀、臭化銀、または、ヨウ化銀を主体としたハロゲン化銀が好ましく、塩化銀または臭化銀を主体としたハロゲン化銀がより好ましい。なお、塩臭化銀、ヨウ塩臭化銀、または、ヨウ臭化銀も、好ましく用いられる。
ここで、例えば、「塩化銀を主体としたハロゲン化銀」とは、ハロゲン化銀組成中、全ハロゲン化物イオンに占める塩化物イオンのモル分率が50%以上のハロゲン化銀をいう。この塩化銀を主体としたハロゲン化銀は、塩化物イオンのほかに、臭化物イオンおよび/またはヨウ化物イオンを含んでいてもよい。
ハロゲン化銀は、通常、固体粒子状であり、ハロゲン化銀の平均粒子径は、球相当径で10~1000nmが好ましく、10~200nmがより好ましく、湿熱環境下において導電性細線の抵抗値の変化がより小さい点で、50~150nmがさらに好ましい。
なお、球相当径とは、同じ体積を有する球形粒子の直径である。
上述のハロゲン化銀の平均粒子径として用いられる「球相当径」は平均値であり、100個のハロゲン化銀の球相当径を測定して、それらを算術平均したものである。
ハロゲン化銀の粒子の形状は特に制限されず、例えば、球状、立方体状、平板状(6角平板状、三角形平板状、4角形平板状等)、八面体状、および、14面体状等の形状が挙げられる。
(ゼラチン)
ゼラチンの種類は特に制限されず、例えば、石灰処理ゼラチン、および、酸処理ゼラチンが挙げられる。また、ゼラチンの加水分解物、ゼラチンの酵素分解物、並びに、アミノ基および/またはカルボキシル基で修飾されたゼラチン(フタル化ゼラチン、および、アセチル化ゼラチン)等を用いてもよい。
(ゼラチンとは異なる高分子)
感光性層には、ゼラチンと異なる高分子が含まれる。この特定高分子が感光性層に含まれることにより、感光性層より形成される導電性細線の強度がより優れる。
特定高分子の種類はゼラチンと異なれば特に制限されず、後述するゼラチンを分解する、タンパク質分解酵素または酸化剤で分解しない高分子が好ましい。
特定高分子としては、疎水性高分子(非水溶性高分子)が挙げられ、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリジエン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、セルロース系重合体、および、キトサン系重合体からなる群から選ばれる少なくともいずれかの樹脂、または、これらの樹脂を構成する単量体からなる共重合体等が挙げられる。
また、特定高分子は、後述する架橋剤と反応する反応性基を有することが好ましい。
特定高分子は、粒子状であることが好ましい。つまり、感光性層は、特定高分子の粒子を含むことが好ましい。
特定高分子としては、以下の一般式(1)で表される高分子(共重合体)が好ましい。
一般式(1): -(A)-(B)-(C)-(D)
なお、一般式(1)中、A、B、C、およびDはそれぞれ、下記一般式(A)~(D)で表される繰り返し単位を表す。
Figure 0007133526000001
1は、メチル基またはハロゲン原子を表し、メチル基、塩素原子、または、臭素原子が好ましい。pは0~2の整数を表し、0または1が好ましく、0がより好ましい。
2は、メチル基またはエチル基を表し、メチル基が好ましい。
3は、水素原子またはメチル基を表し、水素原子が好ましい。Lは、2価の連結基を表し、下記一般式(2)で表される基が好ましい。
一般式(2):-(CO-X1)r-X2
一般式(2)中、X1は、酸素原子または-NR30-を表す。ここでR30は、水素原子、アルキル基、アリール基、または、アシル基を表し、それぞれ置換基(例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、および、ヒドロキシル基)を有してもよい。R30としては、水素原子、炭素数1~10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-ブチル基、および、n-オクチル基)、または、アシル基(例えば、アセチル基、および、ベンゾイル基)が好ましい。X1としては、酸素原子または-NH-が好ましい。
2は、アルキレン基、アリーレン基、アルキレンアリーレン基、アリーレンアルキレン基、または、アルキレンアリーレンアルキレン基を表し、これらの基には-O-、-S-、-CO-、-COO-、-NH-、-SO2-、-N(R31)-、または、-N(R31)SO2-等が途中に挿入されてもよい。R31は、炭素数1~6の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を表す。X2としては、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、-CH2CH2OCOCH2CH2-、または、-CH2CH2OCO(C64)-が好ましい。
rは0または1を表す。
qは0または1を表し、0が好ましい。
4は、アルキル基、アルケニル基、または、アルキニル基を表し、炭素数5~50のアルキル基が好ましく、炭素数5~30のアルキル基がより好ましく、炭素数5~20のアルキル基がさらに好ましい。
5は、水素原子、メチル基、エチル基、ハロゲン原子、または、-CH2COOR6を表し、水素原子、メチル基、ハロゲン原子、または、-CH2COOR6が好ましく、水素原子、メチル基、または、-CH2COOR6がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
6は、水素原子または炭素数1~80のアルキル基を表し、R4と同じでも異なってもよく、R6の炭素数は1~70が好ましく、1~60がより好ましい。
一般式(1)中、x、y、z、およびwは各繰り返し単位のモル比率を表す。
xは、3~60モル%であり、3~50モル%が好ましく、3~40モル%がより好ましい。
yは、30~96モル%であり、35~95モル%が好ましく、40~90モル%がより好ましい。
zは、0.5~25モル%であり、0.5~20モル%が好ましく、1~20モル%がより好ましい。
wは、0.5~40モル%であり、0.5~30モル%が好ましい。
一般式(1)において、xは3~40モル%、yは40~90モル%、zは0.5~20モル%、wは0.5~10モル%の場合が好ましい。
一般式(1)で表される高分子としては、下記一般式(2)で表される高分子が好ましい。
Figure 0007133526000002
一般式(2)中、x、y、zおよびwは、上述の定義の通りである。
一般式(1)で表される高分子は、上述の一般式(A)~(D)で表される繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を含んでもよい。
他の繰り返し単位を形成するためのモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、ビニルエステル類、オレフィン類、クロトン酸エステル類、イタコン酸ジエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、アクリルアミド類、不飽和カルボン酸類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、ビニル異節環化合物、グリシジルエステル類、および、不飽和ニトリル類が挙げられる。これらのモノマーとしては、特許第3754745号公報の段落0010~0022にも記載されている。疎水性の観点から、アクリル酸エステル類またはメタクリル酸エステル類が好ましく、ヒドロキシアルキルメタクリレートまたはヒドロキシアルキルアクリレートがより好ましい。
一般式(1)で表される高分子は、一般式(E)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
Figure 0007133526000003
上述の式中、LEはアルキレン基を表し、炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素数2~6のアルキレン基がより好ましく、炭素数2~4のアルキレン基がさらに好ましい。
一般式(1)で表される高分子としては、下記一般式(3)で表される高分子が特に好ましい。
Figure 0007133526000004
上述の式中、a1、b1、c1、d1、およびe1は各繰り返し単位のモル比率を表し、a1は3~60(モル%)、b1は30~95(モル%)、c1は0.5~25(モル%)、d1は0.5~40(モル%)、e1は1~10(モル%)を表す。
a1の好ましい範囲は上述のxの好ましい範囲と同じであり、b1の好ましい範囲は上述のyの好ましい範囲と同じであり、c1の好ましい範囲は上述のzの好ましい範囲と同じであり、d1の好ましい範囲は上述のwの好ましい範囲と同じである。
e1は、1~10モル%であり、2~9モル%が好ましく、2~8モル%がより好ましい。
特定高分子は、例えば、特許第3305459号公報および特許第3754745号公報等を参照して合成できる。
特定高分子の重量平均分子量は特に制限されず、1000~1000000が好ましく、2000~750000がより好ましく、3000~500000がさらに好ましい。
感光性層には、必要に応じて、上述した材料以外の他の材料が含まれていてもよい。
例えば、ハロゲン化銀の安定化および高感度化のために用いられるロジウム化合物およびイリジウム化合物等の8族および9族に属する金属化合物が挙げられる。または、特開2009-004348号公報の段落0220~0241に記載されるような、帯電防止剤、造核促進剤、分光増感色素、界面活性剤、カブリ防止剤、硬膜剤、黒ポツ防止剤、レドックス化合物、モノメチン化合物、および、ジヒドロキシベンゼン類も挙げられる。さらには、感光性層には、物理現像核が含まれていてもよい。
また、感光性層には、上述の特定高分子同士を架橋するために使用される架橋剤が含まれていてもよい。架橋剤が含まれることにより、特定高分子同士間での架橋が進行し、ゼラチンが分解除去された際にも導電層中の金属銀同士の連結が保たれる。
(工程Aの手順)
工程Aにおいて上述の成分を含む感光性層を形成する方法は特に制限されないが、生産性の点から、ハロゲン化銀とゼラチンと特定高分子とを含む感光性層形成用組成物を可撓性基材上に接触させ、可撓性基材上に感光性層を形成する方法が好ましい。
以下に、この方法で使用される感光性層形成用組成物の形態について詳述し、その後、工程の手順について詳述する。
(感光性層形成用組成物に含まれる材料)
感光性層形成用組成物には、上述したハロゲン化銀とゼラチンと特定高分子とが含まれる。なお、必要に応じて、特定高分子は粒子状の形態で感光性層形成用組成物中に含まれていてもよい。
感光性層形成用組成物には、必要に応じて、溶媒が含まれていてもよい。
溶媒としては、水、有機溶媒(例えば、アルコール類、ケトン類、アミド類、スルホキシド類、エステル類、および、エーテル類)、イオン性液体、および、これらの混合溶媒が挙げられる。
感光性層形成用組成物と可撓性基材とを接触させる方法は特に制限されず、例えば、感光性層形成用組成物を可撓性基材上に塗布する方法、および、感光性層形成用組成物中に可撓性基材を浸漬する方法等が挙げられる。
なお、上述の処理後、必要に応じて、乾燥処理を実施してもよい。
(ハロゲン化銀含有感光性層)
上述の手順により形成された感光性層中には、ハロゲン化銀とゼラチンと特定高分子とが含まれる。
感光性層中におけるハロゲン化銀の含有量は特に制限されず、導電性フィルムの導電性がより優れる点で、銀換算で3.0~20.0g/m2が好ましく、5.0~15.0g/m2がより好ましい。
銀換算とは、ハロゲン化銀が全て還元されて生成される銀の質量に換算したことを意味する。
感光性層中における特定高分子の含有量は特に制限されず、導電性フィルムの導電性がより優れる点で、0.04~2.0g/m2が好ましく、0.08~0.40g/m2がより好ましく、0.10~0.40g/m2がさらに好ましい。
<工程B>
工程Bは、感光性層を露光した後、現像処理して、金属銀とゼラチンと高分子とを含む細線状の銀含有層を形成する工程である。
感光性層に露光処理を施すことにより、露光領域において潜像が形成される。
露光はパターン状に実施してもよく、例えば、後述する導電性細線からなるメッシュパターンを得るためには、メッシュ状の開口パターンを有するマスクを介して、露光する方法、および、レーザー光を走査してメッシュ状に露光する方法が挙げられる。
露光の際に使用される光の種類は特に制限されず、ハロゲン化銀に潜像を形成できるものであればよく、例えば、可視光線、紫外線、および、X線が挙げられる。
露光された感光性層に現像処理を施すことにより、露光領域(潜像が形成された領域)では、金属銀が析出する。
現像処理の方法は特に制限されず、例えば、銀塩写真フィルム、印画紙、印刷製版用フィルム、および、フォトマスク用エマルジョンマスクに用いられる公知の方法が挙げられる。
現像処理では、通常、現像液を用いる。現像液の種類は特に制限されず、例えば、PQ(phenidone hydroquinone)現像液、MQ(Metol hydroquinone)現像液、および、MAA(メトール・アスコルビン酸)現像液が挙げられる。
本工程は、未露光部分のハロゲン化銀を除去して安定化させる目的で行われる定着処理をさらに有していてもよい。
定着処理は、現像と同時および/または現像の後に実施される。定着処理の方法は特に制限されず、例えば、銀塩写真フィルム、印画紙、印刷製版用フィルム、および、フォトマスク用エマルジョンマスクに用いられる方法が挙げられる。
定着処理では、通常、定着液を用いる。定着液の種類は特に制限されず、例えば、「写真の化学」(笹井著、株式会社写真工業出版社)p321記載の定着液が挙げられる。
上述の処理を実施することにより、金属銀とゼラチンと特定高分子とを含む、細線状の銀含有層が形成される。
銀含有層の幅を調整する方法としては、例えば、露光時に使用されるマスクの開口幅を調整する方法が挙げられる。例えば、マスクの開口幅を1.0μm以上5.0μm未満にすることにより、露光領域を調整できる。
また、露光時にマスクを使用する際には、露光量を調整することにより、形成される銀含有層の幅を調整することもできる。例えば、マスクの開口幅が目標とする銀含有層の幅よりも狭い場合には、露光量を通常よりも増加させることにより、潜像が形成される領域の幅を調整できる。すなわち、露光量により、導電性細線の線幅を調整することができる。
さらに、レーザー光を用いる場合は、レーザー光の集光範囲および/または走査範囲を調整することにより、露光領域を調整できる。
銀含有層の幅は、1.0μm以上5.0μm未満が好ましく、形成される導電性細線が視認されにくい点から、1.4μm以下がより好ましい。
なお、上述の手順によって得られる銀含有層は細線状であり、銀含有層の幅とは細線状の銀含有層が延在する方向に直交する方向における銀含有層の長さ(幅)を意味する。
<工程C>
工程Cは、工程Bで得られた銀含有層に対して加熱処理を施す工程である。本工程を実施することにより、銀含有層中の特定高分子間での融着が進行し、銀含有層の強度が向上する。
加熱処理の方法は特に制限されず、銀含有層と過熱蒸気とを接触させる方法、および、温調装置(例えば、ヒーター)で銀含有層を加熱する方法が挙げられ、銀含有層と過熱蒸気とを接触させる方法が好ましい。
過熱蒸気としては、過熱水蒸気でもよいし、過熱水蒸気に他のガスを混合させたものでもよい。
過熱蒸気と銀含有層との接触時間は特に制限されず、10~70秒間が好ましい。
過熱蒸気の供給量は、500~600g/m3が好ましく、過熱蒸気の温度は、1気圧で100~160℃(好ましくは100~120℃)が好ましい。
温調装置で銀含有層を加熱する方法における加熱条件としては、100~200℃(好ましくは100~150℃)で1~240分間(好ましくは60~150分間)加熱する条件が好ましい。
<工程D>
工程Dは、工程Cで得られた銀含有層中のゼラチンを除去する工程である。本工程を実施することにより、銀含有層からゼラチンが除去され、銀含有層中に空間が形成される。
ゼラチンを除去する方法は特に制限されず、例えば、タンパク質分解酵素を用いる方法(以下、「方法1」ともいう。)、および、酸化剤を用いてゼラチンを分解除去する方法(以下、「方法2」ともいう。)が挙げられる。
方法1において用いられるタンパク質分解酵素としては、ゼラチン等のタンパク質を加水分解できる植物性または動物性酵素で公知の酵素が挙げられる。
タンパク質分解酵素としては、例えば、ペプシン、レンニン、トリプシン、キモトリプシン、カテプシン、パパイン、フィシン、トロンビン、レニン、コラゲナーゼ、ブロメライン、および、細菌プロテアーゼが挙げられ、トリプシン、パパイン、フィシン、または、細菌プロテアーゼが好ましい。
方法1における手順としては、銀含有層と上述のタンパク質分解酵素とを接触させる方法であればよく、例えば、銀含有層とタンパク質分解酵素を含む処理液(以下、「酵素液」ともいう。)とを接触させる方法が挙げられる。接触方法としては、銀含有層を酵素液中に浸漬させる方法、および、銀含有層上に酵素液を塗布する方法が挙げられる。
酵素液中におけるタンパク質分解酵素の含有量は特に制限されず、ゼラチンの分解除去の程度が制御しやすい点で、酵素液全量に対して、0.05~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
酵素液には、上述のタンパク質分解酵素に加え、通常、水が含まれる。
酵素液には、必要に応じて、他の添加剤(例えば、pH緩衝剤、抗菌性化合物、湿潤剤、および、保恒剤)が含まれていてもよい。
酵素液のpHは、酵素の働きが最大限得られるように選ばれるが、一般的には、5~9が好ましい。
酵素液の温度は、酵素の働きが高まる温度、具体的には25~45℃が好ましい。
なお、必要に応じて、酵素液での処理後に、得られた銀含有層を温水にて洗浄する洗浄処理を実施してもよい。
洗浄方法は特に制限されず、銀含有層と温水とを接触させる方法が好ましく、例えば、温水中に銀含有層を浸漬する方法、および、銀含有層上に温水を塗布する方法が挙げられる。
温水の温度は使用されるタンパク質分解酵素の種類に応じて適宜最適な温度が選択され、生産性の点から、20~80℃が好ましく、40~60℃がより好ましい。
温水と銀含有層との接触時間(洗浄時間)は特に制限されず、生産性の点から、1~600秒間が好ましく、30~360秒間がより好ましい。
方法2で用いられる酸化剤としては、ゼラチンを分解できる酸化剤であればよく、標準電極電位が+1.5V以上である酸化剤が好ましい。なお、ここで標準電極電位とは、酸化剤の水溶液中における標準水素電極に対する標準電極電位(25℃、E0)を意図する。
上述の酸化剤としては、例えば、過硫酸、過炭酸、過リン酸、次過塩素酸、過酢酸、メタクロロ過安息香酸、過酸化水素水、過塩素酸、過ヨウ素酸、過マンガン酸カリウム、過硫酸アンモニウム、オゾン、次亜塩素酸またはその塩等が挙げられるが、生産性、経済性の観点で、過酸化水素水(標準電極電位:1.76V)、次亜塩素酸またはその塩が好ましく、次亜塩素酸ナトリウムがより好ましい。
方法2における手順としては、銀含有層と上述の酸化剤とを接触させる方法であればよく、例えば、銀含有層と酸化剤を含む処理液(以下、「酸化剤液」ともいう。)とを接触させる方法が挙げられる。接触方法としては、銀含有層を酸化剤液中に浸漬させる方法、および、銀含有層上に酸化剤液を塗布する方法が挙げられる。
酸化剤液に含まれる溶媒の種類は特に制限されず、水、および、有機溶媒が挙げられる。
<工程E>
工程Eは、工程Dで得られた銀含有層に対してめっき処理を施し、導電性細線を得る工程である。本工程を実施することにより、ゼラチンを除去することにより形成された空間に金属(めっき金属)が充填された導電性細線が形成される。
めっき処理の種類は特に制限されないが、無電解めっき(化学還元めっき、または、置換めっき)および電解めっきが挙げられ、無電解めっきが好ましい。無電解めっきとしては、公知の無電解めっき技術が用いられる。
めっき処理としては、例えば、銀めっき処理、銅めっき処理、ニッケルめっき処理、および、コバルトめっき処理が挙げられ、導電性細線の導電性がより優れる点で、銀めっき処理または銅めっき処理が好ましく、銀めっき処理がより好ましい。
めっき処理で用いられるめっき液に含まれる成分は特に制限されないが、通常、溶剤(例えば、水)の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)、4.pH調整剤が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤等、公知の添加剤が含まれていてもよい。
めっき液に含まれるめっき用の金属イオンの種類は析出させたい金属種に応じて適宜選択でき、例えば、銀イオン、銅イオン、ニッケルイオン、および、コバルトイオンが挙げられる。
上述のめっき処理の手順は特に制限されず、銀含有層とめっき液とを接触させる方法であればよく、例えば、めっき液中に銀含有層を浸漬させる方法が挙げられる。
銀含有層とめっき液との接触時間は特に制限されず、導電性細線の導電性がより優れる点および生産性の点から、1~30分間が好ましい。
めっき処理時間を長くすることにより外側の金属粒子が成長し、第2の領域の金属粒子の平均粒径を大きくすることができ、また、金属粒子の体積%を大きくすることができる。めっき処理工程では、第1の領域の金属粒子は成長せず、金属粒子の大きさはめっき前のままである。めっき処理時間を調整することにより、Qb/Qaの値、第2の領域の金属粒子の平均粒径、および金属粒子の割合を制御することができる。
<工程F>
本発明の導電性フィルムの製造方法は、工程Eの後に、工程Eで得られた導電性細線に、さらに平滑化処理を施す工程Fを有していてもよい。
本工程を実施することにより、導電性により優れる導電性細線が得られる。
平滑化処理の方法は特に制限されず、例えば、導電性細線を有する可撓性基材を、少なくとも一対のロール間を加圧下で通過させるカレンダー処理工程が好ましい。以下、カレンダーロールを用いた平滑化処理をカレンダー処理と記す。
カレンダー処理に用いられるロールとしては、プラスチックロール、および、金属ロールが挙げられ、シワ防止の点から、プラスチックロールが好ましい。
ロール間の圧力は特に制限されず、2MPa以上が好ましく、4MPa以上がより好ましく、120MPa以下が好ましい。なお、ロール間の圧力は、富士フイルム株式会社製プレスケール(高圧用)を用いて測定できる。
平滑化処理の温度は特に制限されず、10~100℃が好ましく、10~50℃がより好ましい。
<工程G>
本発明の導電性フィルムの製造方法は、工程Fの後に、さらに、工程Fで得られた導電性細線に加熱処理を施す工程Gを有していてもよい。本工程を実施することにより、導電性により優れる導電性細線が得られる。
導電性細線に加熱処理を施す方法は特に制限されず、工程Cで述べた方法が挙げられる。
<工程H>
本発明の導電性フィルムの製造方法は、工程Aの前に、可撓性基材上にゼラチンおよび特定高分子を含むハロゲン化銀不含有層を形成する工程Hを有していてもよい。本工程を実施することにより、可撓性基材とハロゲン化銀含有感光性層との間にハロゲン化銀不含有層が形成される。このハロゲン化銀不含有層は、いわゆるアンチハレーション層の役割を果たすと共に、導電層と可撓性基材との密着性向上に寄与する。
ハロゲン化銀不含有層には、上述したゼラチンと特定高分子とが含まれる。一方、ハロゲン化銀不含有層には、ハロゲン化銀が含まれない。
ハロゲン化銀不含有層中における、ゼラチンの質量に対する、特定高分子の質量の比(特定高分子の質量/ゼラチンの質量)は特に制限されず、0.1~5.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましい。
ハロゲン化銀不含有層中の特定高分子の含有量は特に制限されず、0.03g/m2以上の場合が多く、導電性細線の密着性がより優れる点で、1.0g/m2以上が好ましい。上限は特に制限されないが、1.63g/m2以下の場合が多い。
ハロゲン化銀不含有層の形成方法は特に制限されず、例えば、ゼラチンと特定高分子とを含有する層形成用組成物を可撓性基材上に塗布して、必要に応じて加熱処理を施す方法が挙げられる。
層形成用組成物には、必要に応じて溶媒が含まれていてもよい。溶媒の種類は、上述した感光性層形成用組成物で使用される溶媒が例示される。
ハロゲン化銀不含有層の厚みは特に制限されず、0.05μm以上の場合が多く、導電性細線の密着性がより優れる点で、1.0μm超が好ましく、1.5μm以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、3.0μm未満であることが好ましい。
<工程I>
本発明の導電性フィルムの製造方法は、工程Aの後で工程Bの前に、ハロゲン化銀含有感光性層上にゼラチンと特定高分子とを含む保護層を形成する工程Iを有していてもよい。保護層を設けることにより、感光性層の擦り傷防止および力学特性を改良できる。
保護層中における、ゼラチンの質量に対する、特定高分子の質量の比(特定高分子の質量/ゼラチンの質量)は特に制限されず、0超2.0以下が好ましく、0超1.0以下がより好ましい。
また、保護層中の特定高分子の含有量は特に制限されず、0g/m2超0.3g/m2以下が好ましく、0.005~0.1g/m2がより好ましい。
保護層の形成方法は特に制限されず、例えば、ゼラチンと特定高分子とを含む保護層形成用組成物をハロゲン化銀含有感光性層上に塗布して、必要に応じて加熱処理を施す方法が挙げられる。
保護層形成用組成物には、必要に応じて溶媒が含まれていてもよい。溶媒の種類は、上述した感光性層形成用組成物で使用される溶媒が例示される。
保護層の厚みは特に制限されず、0.03~0.3μmが好ましく、0.075~0.20μmがより好ましい。
なお、上述した工程H、工程Aおよび工程Iは、同時重層塗布によって同時に実施してもよい。
<用途>
上述のようにして得られた導電性フィルムは、種々の用途に適用でき、タッチパネル(または、タッチパネルセンサー)、半導体チップ、各種電気配線板、FPC(Flexible Printed Circuits)、COF(Chip on Film)、TAB(Tape Automated Bonding)、アンテナ、多層配線基板、および、マザーボード等の種々の用途に適用できる。なかでも、本発明の導電性フィルムは、タッチパネル(静電容量式タッチパネル)に用いることが好ましい。
本発明の導電性フィルムをタッチパネルに用いる場合、上述した導電性細線は検出電極として有効に機能し得る。
なお、導電性フィルムにおいては、上述した所定の特性を有する導電性細線とは別に、導電性細線とは構成が異なる導電部を有していてもよい。この導電部は、上述した導電性細線と電気的に接続して、導通していてもよい。
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の導電性フィルムについて詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、および、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、実施例1~8、および比較例1~3について、評価項目として導電性、折り曲げ性、および視認性を評価した。以下、実施例1~8、および比較例1~3について説明する。
<実施例1>
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
38℃、pH4.5に保たれた下記1液に、下記の2液および3液の各々90%に相当する量を、1液を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmの核粒子を形成した。続いて、得られた溶液に下記4液および5液を8分間にわたって加え、さらに、下記の2液および3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、核粒子を0.21μmまで成長させた。さらに、得られた溶液にヨウ化カリウム0.15gを加え、5分間熟成し、粒子形成を終了した。
1液:
水 750ml
ゼラチン 8.6g
塩化ナトリウム 3g
1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
2液:
水 300ml
硝酸銀 150g
3液:
水 300ml
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム
(0.005%KCl 20%水溶液) 5ml
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム
(0.001%NaCl 20%水溶液) 7ml
4液:
水 100ml
硝酸銀 50g
5液:
水 100ml
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
その後、常法に従ってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、上述の得られた溶液の温度を35℃に下げ、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.6±0.2の範囲であった)。次に、得られた溶液から上澄み液を約3リットル除去した(第1水洗)。次に、上澄み液を除去した溶液に、3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、得られた溶液から上澄み液を3リットル除去した(第2水洗)。第2水洗と同じ操作をさらに1回繰り返して(第3水洗)、水洗および脱塩工程を終了した。水洗および脱塩後の乳剤をpH6.4、pAg7.5に調整し、ゼラチン2.5g、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム10mg、ベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム3mg、チオ硫酸ナトリウム15mgおよび塩化金酸10mgを加え、55℃にて最適感度を得るように化学増感を施した。その後、さらに、得られた乳剤に、安定剤として1,3,3a,7-テトラアザインデン100mg、および、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に得られた乳剤は、沃化銀を0.08モル%含み、塩臭化銀の比率を塩化銀70モル%、臭化銀30モル%とする、平均粒子径(球相当径)200nm、変動係数9%の塩臭化銀立方体粒子乳剤であった。
(感光性層形成用組成物の調製)
上述の乳剤に1,3,3a,7-テトラアザインデン(1.2×10-4モル/モルAg)、ハイドロキノン(1.2×10-2モル/モルAg)、クエン酸(3.0×10-4モル/モルAg)、2,4-ジクロロ-6-ヒドロキシ-1,3,5-トリアジンナトリウム塩(0.90g/モルAg)、および、微量の硬膜剤を添加し、組成物を得た。次に、クエン酸を用いて組成物のpHを5.6に調整した。
上述の組成物に、下記(P-1)で表される高分子(以下、「高分子1」ともいう。)とジアルキルフェニルPEO(PEOはポリエチレンオキシドの略号である。)硫酸エステルからなる分散剤と水とを含有するポリマーラテックス(高分子1の質量に対する分散剤の質量の比(分散剤の質量/高分子1の質量、単位はg/g)が0.02であって、固形分含有量が22質量%である。)を、組成物中のゼラチンの合計質量に対する、高分子1の質量の比(高分子1の質量/ゼラチンの質量、単位g/g)が0.25/1となるように添加して、ポリマーラテックス含有組成物を得た。ここで、ポリマーラテックス含有組成物において、ハロゲン化銀由来の銀の質量に対するゼラチンの質量の比(ゼラチンの質量/ハロゲン化銀由来の銀の質量、単位はg/gである。)は0.11であった。
さらに、架橋剤としてEPOXY RESIN DY 022(商品名:ナガセケムテックス株式会社製)を添加した。なお、架橋剤の添加量は、後述するハロゲン化銀含有感光性層中における架橋剤の量が0.09g/m2となるように調整した。
以上のようにして感光性層形成用組成物を調製した。
なお、高分子1は、特許第3305459号公報および特許第3754745号公報を参照して合成した。
Figure 0007133526000005
厚み40μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(「富士フイルム株式会社製ロール状の長尺フィルム」)に上述のポリマーラテックスを塗布して、厚み0.05μmの下塗り層を設けた。この処理はロール・トゥ・ロールで行い、以下の各処理(工程)もこれと同様にロール・トゥ・ロールで行った。なお、このときのロール幅は1m、長さは1000mであった。
(工程H1、工程A1、工程I1)
次に、下塗り層上に、上述のポリマーラテックスとゼラチンとを混合したハロゲン化銀不含有層形成用組成物と、上述の感光性層形成用組成物と、ポリマーラテックスとゼラチンとを混合した保護層形成用組成物とを、同時重層塗布し、下塗り層上にハロゲン化銀不含有層と、ハロゲン化銀含有感光性層と、保護層とを形成した。
なお、ハロゲン化銀不含有層の厚みは2.0μmであり、ハロゲン化銀不含有層中における高分子1とゼラチンとの混合質量比(高分子1/ゼラチン)は2/1であり、高分子1の含有量は1.3g/m2であった。
また、ハロゲン化銀含有感光性層の厚みは2.5μmであり、ハロゲン化銀含有感光性層中における高分子1とゼラチンとの混合質量比(高分子1/ゼラチン)は0.25/1であり、高分子1の含有量は0.19g/m2であった。
また、保護層の厚みは0.15μmであり、保護層中における高分子1とゼラチンとの混合質量比(高分子1/ゼラチン)は0.1/1であり、高分子1の含有量は0.015g/m2であった。
(工程B1)
作製した上述の感光性層に、格子状のフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光した。フォトマスクとしてはパターン形成用のマスクを用いており、図3に示すような格子を形成する単位正方格子の線幅は1.2μm、格子(開口部)の一辺の長さLは600μmになるようにした。
露光後、得られたサンプルに対して、後述する現像液で現像し、さらに定着液(商品名:CN16X用N3X-R:富士フイルム株式会社製)を用いて現像処理を行った後、25℃の純水でリンスし、その後乾燥して、メッシュパターン状に形成された、金属銀を含む銀含有層を有するサンプルAを得た。サンプルAにおいては、21.0cm×29.7cmの大きさの導電性メッシュパターン領域が形成されていた。
(現像液の組成)
現像液1リットル(L)中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 0.037mol/L
N-メチルアミノフェノール 0.016mol/L
メタホウ酸ナトリウム 0.140mol/L
水酸化ナトリウム 0.360mol/L
臭化ナトリウム 0.031mol/L
メタ重亜硫酸カリウム 0.187mol/L
得られた上述のサンプルAを、50℃の温水中に180秒間浸漬させた。この後、エアシャワーで水を切り、自然乾燥させた。
(工程C1)
工程B1で得られたサンプルAを、110℃の過熱水蒸気処理槽に搬入し、30秒間静置して、過熱水蒸気処理を行った。なお、このときの蒸気流量は100kg/hであった。
(工程D1)
工程C1で得られたサンプルAを、次亜塩素酸含有水溶液(25℃)に30秒間浸漬した。サンプルAを水溶液から取り出し、サンプルAを温水(液温:50℃)に120秒間浸漬して、洗浄した。この後、エアシャワーで水を切り、自然乾燥させた。
なお、使用した次亜塩素酸含有水溶液は、花王株式会社製ハイターを2倍に希釈してから使用することで調製した。
(工程E1)
工程D1で得られたサンプルAを、以下組成のめっき液A(30℃)に5分間浸漬した。サンプルAをめっき液Aから取り出し、サンプルAを温水(液温:50℃)に120秒間浸漬して、洗浄した。
めっき液A(全量1200ml)の組成は、以下の通りであった。なお、めっき液AのpHは9.5であり、炭酸カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)を所定量加えることにより調整した。また、使用した以下の成分は、いずれも富士フイルム和光純薬株式会社製を用いた。めっき処理前後で線幅の変化は見られなかった。
(めっき液Aの組成)
・AgNO 8.8g
・亜硫酸ナトリウム 72g
・チオ硫酸ナトリウム五水和物 66g
・ヨウ化カリウム 0.004g
・クエン酸 12g
・メチルヒドロキノン 3.67g
・炭酸カリウム 所定量
・水 残部
(工程F1)
工程E1で得られたサンプルAに対して、金属ローラと樹脂製のローラとの組み合わせによるカレンダー装置を使用して、30kNの圧力でカレンダー処理した。カレンダー処理は室温で行った。
(工程G1)
工程F1で得られたサンプルAに対して、110℃の過熱水蒸気処理槽に搬入し、30秒間静置して、過熱水蒸気処理を行った。なお、このときの蒸気流量は100kg/hであった。得られた導電性メッシュパターン領域は、図3に示すような、導電性細線より形成される単位正方格子のメッシュ状の層であった。導電性細線の線幅は3.0μm、導電性細線の厚みは1.3μmであった。
得られたサンプルAをミクロトームにて断面を切削し、カーボン蒸着を行った後に、株式会社日立ハイテクノロジーズ製S-5200型SEMを用いて観察を行った。観察モードは反射電子モードを使用し、加速電圧は5kVとした。
得られた断面写真の各領域において、大きい粒子から順に10個の粒子の球相当径を算出し、算術平均値から第1の領域Qaに含まれる金属粒子の平均粒径Daと、第2の領域Qbに含まれる金属粒子の平均粒径Dbを求めた。Db/Daを計算すると、Db/Da=2.0となった。
<実施例2~8、比較例1~3>
実施例2~8、比較例1~3においては、工程B1における露光時間を調整することで露光量を変更し、線幅の調整を行った。
表1に記載する「線幅」は工程G1の加熱水蒸気処理後に測定しており、線幅の測定には株式会社キーエンス製のマイクロスコープVHX-5000を使用した。また、露光量の調整によって工程G1の加熱水蒸気処理による融着後の銀粒子径を調整した。
工程E1のめっき処理時間を長くすることで外側の粒子が成長し、金属粒子の体積%も大きくなることから、工程B1における露光量とめっき処理時間の調整によって線幅、Db/Daおよび金属粒子の体積分率の調整を行った。
実施例5においては、工程E1のめっき処理の際に、無電解銅めっきを行った。無電解銅めっき液は市販の無電解銅めっき液を使用することができ、実施例5の作製においては奥野製薬工業株式会社製の「OICアクセラ」および「OICカッパー」を使用し、OICアクセラ(25℃)に3分間、OICカッパー(55℃)に10分間浸漬したのちに25℃の純水でリンスした。それ以外の工程は他の実施例と同様に作製した。
比較例1では、Db/Da=1になるように、工程B1における露光時間を調整して露光量を変更した。
比較例2では、ガラス基材を用いた。比較例3では、導電性細線が高分子を含有しない構成とした。
<評価>
以下、評価項目である導電性、折り曲げ性、および視認性について説明する。
(導電性)
導電性については、得られた導電性フィルムの導電性メッシュパターン領域の線抵抗値を測定して評価した。線抵抗値とは、四端針法で測定した抵抗値を測定端子間距離で除したものである。より具体的には、メッシュパターンを構成する任意の1本の導電性細線の両端を断線させてメッシュパターンから切り離した後に、4本(A、B、C、D)のマイクロプローブ(株式会社マイクロサポート製タングステンプローブ(直径0.5μm))を切り離された導電性細線に接触させて、最外プローブA、Dにソースメーター(KEITHLEY製ソースメーター、2400型汎用ソースメーター)を用いて250μm間隔とした内部プローブB、C間の電圧Vが5mVになるよう定電流Iを印加し、抵抗値Ri=V/Iを測定し、得られた抵抗値RiをB、C間距離で除して線抵抗値を求めた。得られた抵抗値RiをB、C間距離で除して線抵抗値とし、任意の10箇所の測定値の平均値を、以下の基準に従って、導電性として評価した。導電性の評価としては、下記1~5のうち、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5がさらに好ましい。
5:線抵抗値が60Ω/mm未満である。
4:線抵抗値が60Ω/mm以上、80Ω/mm未満である。
3:線抵抗値が80Ω/mm以上、100Ω/mm未満である。
2:線抵抗値が100Ω/mm以上、200Ω/mm未満である。
1:線抵抗値が200Ω/mm以上である。
(折り曲げ性)
折り曲げ性については、得られた導電性フィルムを折り曲げ試験機で複数回、導電性細線が延在する方向DL(図1参照)と、折り曲げ方向とが作る角度が45°になる方向に折り曲げ、導電性の変化を測定して評価した。折り曲げ試験には、ユアサシステム機器株式会社製の小型卓上試験機TCDM111LHを使用した。折り曲げ半径を2mmとし、20万回折り曲げた後の抵抗変化δによって以下の基準に従って評価した。抵抗変化δは、抵抗変化δ=(折り曲げ試験後の抵抗値)/(折り曲げ試験前の抵抗値)で表される。
ここでいう「抵抗値」とは、上述の導電性評価によって得られた抵抗値Riを指す。折り曲げ性の評価としては、下記1~5のうち、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5がさらに好ましい。
5:δが1.1未満である。
4:δが1.1以上、1.15未満である。
3:δが1.15以上、1.2未満である。
2:δが1.2以上、1.5未満である。
1:δが1.5以上である、もしくは導電性細線が破断している。
(視認性)
得られた導電性フィルムをガラス/導電性フィルム/偏光板/偏光板(偏光面が直行する向き)/黒PET(パナック株式会社製、工業用黒PET(GPH100E82A04))の順になるよう積層して、積層体を得た。なお、導電性フィルム中、導電性メッシュパターンがガラス側に位置するように、導電性フィルムを配置した。
次に、得られた積層体に対して、500luxの環境光にて、ガラス面側の正面および斜め30°~60°の角度から10人の観察者が目視にて観察し、以下の基準に従って、視認性を評価した。なお、メッシュパターンが視認されにくい場合、光学特性に優れ、導電性フィルムをディスプレイに積層した際に発生するモアレが低減される。視認性の評価としては、下記1~5のうち、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5がさらに好ましい。
5:15cm離れた位置から導電性フィルムを観察した際に、メッシュパターンが視認されなかった。
4:30cm離れた位置から導電性フィルムを観察した際に、メッシュパターンを視認した観察者が0人あるいは1人であった。
3:30cm離れた位置から導電性フィルムを観察した際に、メッシュパターンを視認した観察者が2~4人であった。
2:30cm離れた位置から導電性フィルムを観察した際に、メッシュパターンを視認した観察者が5人以上であった。
1:50cm離れた位置から導電性フィルムを観察した際に、メッシュパターンを視認した観察者が5人以上であった。
Figure 0007133526000006
表1に示すように、実施例1~8は、比較例1~3に比して、導電性、折り曲げ性および視認性について良好な結果を得ることができ、導電性と折り曲げ性の両立が実現できた。
比較例1は、Db/Da=1であり、導電性が劣り、導電性と折り曲げ性の両立が実現できなかった。
比較例2は、ガラス基材であり、折り曲げ性が劣り、導電性と折り曲げ性の両立が実現できなかった。
比較例3は、導電性細線が高分子を含有しておらず、折り曲げ性が劣り、導電性と折り曲げ性の両立が実現できなかった。
実施例1~8では、Db/Daの値が高く(Db/Da>3)、体積分率が高く(70体積%~90体積%)、および平均粒径Daが大きい(50nm以上200nm以下)、実施例8が最も良好な結果が得られた。
実施例1~8より、導電性細線の線幅は2.5μm以下(好ましくは、2.0μm以下)である場合、視認性がより優れていた。
導電性細線の線幅と厚みが同じ実施例1と実施例5とは、銀めっきの実施例1の方が、折り曲げ性が優れていた。
10 導電性フィルム
12 可撓性基材
12a 表面
14、14B 導電性細線
14a 表面
16 高分子
18 金属粒子
20 開口部
Ac 垂直断面
DL 方向
DW 方向
Qa 第1の領域
Qb 第2の領域
R 半径
S 最小包含円
Sa 円
T 厚み
Wa 線幅

Claims (8)

  1. 可撓性基材と、
    前記可撓性基材上に配置された、高分子中に分散された複数の金属粒子を含有する導電性細線と、を有し、
    前記導電性細線が延在する方向に直交する方向での前記導電性細線の垂直断面において、前記複数の金属粒子を全て内包する最小包含円の半径をRとして、前記最小包含円の中心から距離0.2R以下の領域を第1の領域とし、前記最小包含円の中心から距離0.2R超R以下の領域を第2の領域とし、
    前記第1の領域内の複数の金属粒子の平均粒径をDaとし、前記第2の領域内の複数の金属粒子の平均粒径をDbとするとき、Db/Da>1.5であ
    前記導電性細線中に含有される前記複数の金属粒子の割合は、70体積%~90体積%である、導電性フィルム。
  2. 前記第1の領域内の前記複数の金属粒子の平均粒径Daと、前記第2の領域内の前記複数の金属粒子の平均粒径Dbとは、Db/Da>3である、請求項1に記載の導電性フィルム。
  3. 前記第1の領域内の前記複数の金属粒子の平均粒径Daは、50nm以上200nm以下である、請求項1または2に記載の導電性フィルム。
  4. 前記可撓性基材は、ポリエチレンテレフタレートで構成される、請求項1~のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
  5. 前記複数の金属粒子は、銀を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
  6. 前記複数の金属粒子は、全て銀で構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
  7. 前記導電性細線の線幅は、1.0μm以上5.0μm未満である、請求項1~のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
  8. 前記導電性細線の厚みは、0.5μm以上3.0μm未満である、請求項1~のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
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