JP7131969B2 - カーボンナノチューブ水系分散液 - Google Patents

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Description

本開示は、カーボンナノチューブ水系分散液及びその製造方法に関する。
カーボンナノチューブは実質的にグラファイト1枚面を巻いて筒状にした形状を有したナノ炭素材料であり、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、同軸に多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブという。カーボンナノチューブは、それ自体が優れた真性の導電性を有し、導電性材料として使用されることが期待されている。
カーボンナノチューブはアスペクト比が高く少量で導電パスを形成できるため、従来のカーボンブラック等の導電性微粒子と比べ光透過性、耐脱落性に優れた導電性材料となりうる。例えば、カーボンナノチューブを用いて光学用透明導電性薄膜として用いることが知られている。
カーボンナノチューブを用いて光透過性に優れた導電性フィルムを得るには、数10本のカーボンナノチューブからなる太いバンドル(束)や強固な凝集を解し、カーボンナノチューブを高分散させて、少ないカーボンナノチューブの本数で効率良く導電パスを形成することが求められている。このような導電性フィルムを得る手段としては、例えばカーボンナノチューブを溶媒中に高分散させた分散液を基材に塗布する方法などが知られている。カーボンナノチューブを溶媒中に高分散させるためには、分散剤を用いて分散させる手法がある。中でも、カーボンナノチューブをより高度に分散させるためには、水性溶媒中、水に親和性のある親水性基およびカーボンナノチューブと親和性の高い疎水性基の両方を有する分散剤を用いて分散させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
WO2014-002885号
しかしながら、 特許文献1に記載の技術においては、PETフィルムに塗工しても、表面の濡れ性が悪く、はじいてうまく塗工できないという課題があった。そのような場合、塗工前にPETフィルムの表面を処理する方法もあるが、工程的な面やコスト的に不利となる。
PETフィルム表面の濡れ性改善のために、有機溶剤を添加することが知られているが、効果が発揮するまで多く添加すると、コスト的に不利になるとともに、引火点が低下して取り扱いにくくなることが懸念される。更に、カーボンナノチューブの分散性を悪化させる懸念もある。
そこで、本開示は、一態様において、カーボンナノチューブの分散性が良好で、しかもPETフィルム表面等の樹脂表面に対する濡れ性が向上した、カーボンナノチューブ水系分散液及びその製造方法を提供する。
本開示は、一態様において、下記成分A~Cを含むカーボンナノチューブ水系分散液であり、カーボンナノチューブ水系分散液中の下記成分Cの含有量が3質量%以上12質量%以下である、カーボンナノチューブ水系分散液に関する。
成分A:カーボンナノチューブ。
成分B:(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量が97.7mol%以上である高分子化合物。
成分C:炭素数1~4からなるモノアルコール。
本開示は、別の態様において、カーボンナノチューブ水系分散液の製造方法であり、
カーボンナノチューブと(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量が97.7mol%以上の高分子化合物と水系媒体とを混合し、前記カーボンナノチューブを前記水性溶媒に分散させて、CNT分散液調製用混合液を得る工程と、
前記CNT分散液調製用混合液に、炭素数が1以上4以下のモノアルコールを添加する工程と、を含み、
前記カーボンナノチューブ水系分散液中の前記モノアルコールの含有量が3質量%以上12質量%以下である、カーボンナノチューブ水系分散液の製造方法に関する。
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、カーボンナノチューブの分散性が良好であり、PETフィルム表面等の樹脂表面に対する濡れ性が向上した、カーボンナノチューブ水系分散液及びその製造方法を提供できる。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、カーボンナノチューブ水系分散液が、(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量が97.7mol%以上である高分子化合物(成分B)と共に、炭素数が1以上4以下のモノアルコールを所定量含むことで、カーボンナノチューブの水系媒体への分散性が良好で、PETフィルム表面等の樹脂表面に対する濡れ性が向上して、PETフィルム表面等の樹脂表面に直接塗膜を形成可能なカーボンナノチューブ水系分散液を得ることができることを見出し、本開示を完成させた。
本開示の効果発現のメカニズムの詳細については明らかではないが、以下のように推察される。
分散剤として用いられる前記成分Bは、強固に凝集しているカーボンナノチューブとの親和性が高いポリエチレン構造を有するとともに、水との親和性が高いカルボキシル基を有することから、カーボンナノチューブの分散性を高めると考えられる。更に、カーボンナノチューブとの親和性が低いために所定量であればカーボンナノチューブの分散性には影響せず、分散液の表面張力を低下できる、特定のアルコールを含むことから、カーボンナノチューブの分散性とPETフィルム表面等の樹脂表面に対する塗工性とを両立できると考えられる。ただし、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されない。
すなわち、本開示は、一態様において、下記成分A~Cを含むカーボンナノチューブ水系分散液であり、カーボンナノチューブ水系分散液(以下、「本開示のCNT分散液」ともいう。)中の下記成分Cの含有量が3質量%以上12質量%以下である、カーボンナノチューブ水系分散液に関する。
成分A:カーボンナノチューブ。
成分B:(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量が97.7mol%以上である高分子化合物。
成分C:炭素数1~4からなるモノアルコール。
[カーボンナノチューブ水系分散液]
本開示によれば、カーボンナノチューブの分散性が良好で、且つ、PETフィルム表面等の樹脂表面に対する濡れ性が向上したカーボンナノチューブ水系分散液(以下、「CNT分散液」ともいう。)を提供できる。本開示のCNT分散液は、PETフィルム表面等の樹脂表面に対する濡れ性が良好であるので、1液で、PETフィルム表面等の樹脂表面に直接良好な塗膜を形成可能である。
[カーボンナノチューブ(成分A)]
本開示において、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ともいう。)とは、複数のCNTを含む総体を意味する。CNTの形態は、特に限定されなくてもよく、例えば、複数のCNTがそれぞれ独立していてもよいし、複数のCNTが束状あるいは絡まり合うなどの形態でもよいし、これらの形態が混合した形態でもよい。CNTは、種々の層数または直径のCNTであってもよい。CNTは、CNTの製造におけるプロセス由来の不純物(例えば、触媒やアモルファスカーボン)を含み得る。
CNTは、一又は複数の実施形態において、グラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有するものであり、1層に巻いたものを単層CNT、2層に巻いたものを2層CNT、3層以上に巻いたものを多層CNTともいう。CNT分散液及び該分散液を塗布して得られる塗膜には、求められる用途特性に応じて、単層、2層、多層のいずれのCNT及びそれらの混合物を用いることができる。特に、光透過性の高い導電塗膜を得るには、単層CNTを用いることが好ましい。
CNTの長さは、走査型電子顕微鏡(SEM)や原子間力顕微鏡(AFM)により測定されるが、本発明でのその長さは、特に限定されなくてもよく、高導電性の観点から、0.5μm以上が好ましく、より好ましくは1μm以上であり、そして、高分散性の観点から、30μm以下が好ましい。
CNTにおける不純物の含有量は、熱重量分析等の方法により測定されるが、本発明ではなるべく少ない方が良い。CNTにおける不純物の含有量は、CNTの有効分を高濃度とする観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が更により好ましく、実質的に0質量%が更により好ましい。
本開示のCNT分散液中のCNTの含有量は、0.05質量%以上が好ましく、0.07質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、そして、分散液を取り扱いやすい粘度とする観点から、0.5質量%以下が好ましく、0.4質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が更に好ましい。
[高分子化合物(成分B)]
本開示のCNT分散液は、CNTの分散性向上の観点から、分散剤として、(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量が97.7mol%以上の高分子化合物を含む。成分Bを構成する全構成単位中の(メタ)アクリル酸由来の構成単位は、CNTの分散性向上の観点から、97.9mol%以上がより好ましく、98.2mol%以上が更に好ましく、そして、濡れ性向上の観点から、100mol%以下が好ましく、99.7mol%以下がより好ましく、99.5mol%以下が更に好ましく、99.3mol%以下が更により好ましい。
高分子化合物は、CNTの分散性向上のみならず、PETフィルム表面等の樹脂表面に対する濡れ性の向上の観点から、PETフィルム表面等の樹脂表面との親和性が高い疎水性基を有する疎水性モノマー由来の構成単位を更に含んでいると好ましい。成分Bは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。成分Bが、(メタ)アクリル酸と疎水性モノマーとの共重合体である場合は、(メタ)アクリル酸と疎水性モノマーとを重合反応させることにより製造できる。
本開示において、疎水性モノマーとは、25℃における水への溶解性が10質量%未満であるモノマーを示す。溶解とは、溶質が均一の溶媒に混ざり透明な状態を呈することを示す。疎水性モノマーとしては、例えば、メトキシジプロピレングリコールアクリレート(MPG2A)、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、フェニルアクリレート等が挙げられる。
成分Bを構成する全構成単位中の疎水性モノマー由来の構成単位は,分散性向上の観点から、2.3mol%以下が好ましく、2.1mol%以下がより好ましく、1.8mol%以下が更に好ましく、そして、濡れ性向上の観点から、0mol%以上が好ましく、0.3mol%以上がより好ましく、0.5mol%以上が更に好ましく、0.7mol%以上が更により好ましい。
成分Bは、一又は複数の実施形態において、他の構成単位をさらに含むことができる。一又は複数の実施形態において、成分Bを構成する全構成単位中の(メタ)アクリル酸由来の構成単位と疎水性モノマー由来の構成単位の合計量が、80mol%以上が好ましく、90mol%以上がより好ましく、実質的に100mol%が更に好ましい。
成分Bの数平均分子量は、分散性向上の観点から、3,000以上が好ましく、3,500以上がより好ましく、4,000以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、15,000以下が好ましく、14,000以下がより好ましく、13,000以下が更に好ましい。より具体的には、成分Bの数平均分子量は、3,000以上15,000以下が好ましく、3,500以上14,000以下がより好ましく、4,000以上13,000以下が更に好ましい。成分Aの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう)法を用いて測定でき、具体的には実施例に記載の方法により算出できる。
本開示において、成分Bは、分散性向上の観点から、中和度は低いことが好ましい、成分Bの中和度が、成分Bに含まれる中和可能な官能基(例えば、カルボキシ基)100mol%に対して、25mol%以下であることが好ましく、25mol%未満であることがより好ましく、分散性向上の観点から、10mol%以下が更に好ましく、実質的に中和されていないことがさらに好ましい。実質的に中和されていない場合の成分Bの中和度は、具体的には、1mol%以下が好ましく、0mol%がより好ましい。中和度は、例えば、pH測定により算出できる。
成分Bの製造方法は、公知の重合方法により製造できる。重合には、公知の重合開始剤や連鎖移動剤等を使用することができる。重合開始剤としては、例えば、2,2-アゾビス(イソブチロニトリル)(疎水性)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(疎水性)、2,2-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物(水溶性)、2,2-アゾビス[2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロライド(水溶性)等のアゾ開始重合剤等が挙げられる。連鎖移動剤としては、例えば、3-メルカプトプロピオン酸(親水性)、メルカプトプロパンジオール(水溶性)、1-オクタンチオール(疎水性)等が挙げられる。
本開示のCNT分散液中の成分Bの含有量は、分散性向上の観点から、CNT100質量部に対して、50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、70質量部以上が更に好ましく、そして、分散液のコスト低減の観点から、500質量部以下が好ましく、400質量部以下がより好ましく、300質量部以下が更に好ましい。
[炭素数が1以上4以下のモノアルコール(成分C)]
本開示のCNT分散液は、PETへの濡れ性向上の観点から、炭素数が1以上4以下のモノアルコールを含む。成分Cとしては、例えば、メチルアルコール(MeOH)、エチルアルコール(EtOH)、n-プロピルアルコール(nPrOH)、イソプロパノール(IPA)、n-ブチルアルコール(nBuOH)、i-ブチルアルコール(iBuOH)、sec-ブチルアルコール(sBuOH)、及びtert-ブチルアルコール(tBuOH)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられるが、安全性の観点、及び、泡立ち抑制の観点から、エチルアルコール(EtOH)、n-プロピルアルコール(nPrOH)、イソプロパノール(IPA)、n-ブチルアルコール(nBuOH)、i-ブチルアルコール(iBuOH)、sec-ブチルアルコール(sBuOH)、及びtert-ブチルアルコール(tBuOH)からなる群から選ばれる少なくとも1種が好まししく、PETへの濡れ性向上の観点から、エチルアルコール(EtOH)、イソプロパノール(IPA)、及びtert-ブチルアルコール(tBuOH)のうちの少なくとも1種がより好ましい。
泡立ち抑制の評価は、例えば、下記のようにして行える。
10mLスクリュー管にCNT分散液を2g量りとり蓋をする。手で10秒間激しく浸透させ、直ちに静置し、泡が完全になくなるまでの時間を測定した。3回測定し、その平均値が10秒未満なら合格(○)、10秒以上なら不合格(×)とする。
<評価基準>
○:平均10秒未満で泡が完全になくなる
×:泡が完全になくなるまで平均10秒以上かかる
本開示のCNT分散液中の成分Cの含有量は、PETへの濡れ性向上の観点から、3質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましく、そして、引火点を考慮した取り扱い易さとコスト低減の観点から、12質量%以下が好ましく、11質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
[水系媒体
本開示のCNT分散液は、水系媒体を含む水系分散液である。水系媒体としては、水が好ましく、例えば、蒸留水、イオン交換水、超純水等が挙げられる。水系媒体は、水のみからなると好ましいが、水系媒体には、CNTの分散性を損なわない程度であれば、水以外に、前記成分C以外の水溶性有機溶剤以外の他の溶剤が含まれていてもよい。水系媒体が、水と前記水溶性有機溶剤との混合溶媒である場合、前記水溶性有機溶剤は、水とは別に添加(配合)されてもよいし、水と同時に添加(配合)されてもよい。混合溶媒の水の含有量は、水系媒体を100質量部とした場合、引火点を考慮した取り扱い易さとコスト低減の観点から、88質量部以上が好ましく、95質量部以上がより好ましく、98質量部以上が更に好ましい。
本開示のCNT分散液中の水系媒体の含有量は、塗工のしやすさの観点から、CNT分散液の25℃における粘度が、下記の範囲内の値となるような量であればよく、例えば、85質量%以上が好ましく、87質量%以上がより好ましく、89質量%以上が更に好ましく、そして、引火点を考慮した取り扱い易さとコスト低減の観点から、97質量%以下が好ましく、96質量%以下がより好ましく、95質量%以下が更に好ましい。
本開示のCNT分散液の粘度は、塗工のしやすさの観点から、25℃において、1mPa・s以上が好ましく、10mPa・s以上がより好ましく、20mPa・s以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、200mPa・s以下が好ましく、180mPa・s以下がより好ましく、150mPa・s以下が更に好ましい。より具体的には、本開示のCNT分散液の粘度は、1mPa・s以上200mPa・s以下が好ましく、10mPa・s以上180mPa・s以下がより好ましく、20mPa・s以上150mPa・s以下がさらに好ましい。
[CNT分散液の製造方法]
本開示のCNT分散液は、例えば、CNT(成分A)、高分子化合物(成分B)、モノアルコール(成分C)、及び水系媒体を公知の方法で配合することにより製造できる。したがって、本開示は、一態様において、CNT(成分A)、高分子化合物(成分B)、及び水系媒体を混合し、CNTを水系媒体中で分散させて、CNT分散液調製用混合液を得る第1工程と、更にCNT分散液調製用混合液にモノアルコール(成分C)を添加し混合する第2工程とを含む、CNT分散液の製造方法(以下、「本開示のCNT分散液の製造方法」ともいう)に関する。本開示のCNT分散液の製造方法によれば、分散性及びPETに対する濡れ性に優れるCNT分散液を製造しうる。
前記第1工程及び第2工程では、各々、塗料製造用の一般的な混合分散機を用いて、CNT分散液調製用混合液及びCNT分散液を製造できる。混合分散機としては、例えば、超音波ホモジナイザー、振動ミル、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置、アトライター、デゾルバー、及びペイントシェーカー等から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。前記第1工程では、分散性向上の観点から、超音波を用いてCNTを分散することが好ましい。第2工程では、汎用の撹拌による混合方法を用いてもよい。CNT分散液の調製に用いるCNTの状態は、乾燥状態でもよいし、水系媒体を含んだCNT組成物の状態であってもよい。前記第2工程において、各成分の好ましい配合量は、上述した本開示のCNT分散液の好ましい含有量と同じとすることができる。
[樹脂膜への塗工]
本発明のCNT分散液は、樹脂膜への塗工に用いることができる。樹脂膜としては、特に限定されないが、PET樹脂膜が挙げられる。塗工手段に関しても、刷毛塗、噴霧吹付、浸漬などが挙げられるが特に制限はない。
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本開示はこれら実施例に制限されるものではない。
1.数平均分子量の測定方法
ゲル浸透クロマトグラフィー(以下「GPC」ともいう)法を用いて成分B及びその比較対象物の数平均分子量を測定した。
すなわち、試料(成分B及びその比較対象物)をN,N-ジメチルホルムアミドで希釈し、試料の固形分濃度0.3質量%の溶液を調製して試料溶液とし、その100μLを測定に供した。N,N-ジメチルホルムアミドに、リン酸とリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、GPC〔装置:東ソー株式会社製「HLC-8120GPC」、検出器:示差屈折計(装置付属)、カラム:東ソー株式会社製「TSK-GEL α-M」×2本、カラム温度:40℃、溶離液流速:1mL/min〕により、測定した。
標準物質としては、ポリスチレン(東ソー株式会社製:分子量 5.26×102、1.02×105、8.42×106;西尾工業株式会社製:分子量 4.0×103、3.0×104、9.0×105)を用いた。
2.分散剤1の水溶液、分散剤2の水溶液、及び分散剤3の水溶液の調製
表1及び表2に示す分散剤1~3の水溶液の調製には、下記成分を使用した。
アクリル酸(和光純薬工業社製試薬)
メタクリル酸(和光純薬工業製試薬)
<疎水性モノマー>
MPG2A:メトキシジプロピレングリコールアクリレート(共栄化学社製「ライトアクリレートDPM-A」、25℃の水への溶解性:2質量%)
<重合開始剤>
VA-057:2,2-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]4水和物(和光純薬工業社製試薬「VA-057」)
<連鎖移動剤>
MPA:3-メルカプトプロピオン酸(和光純薬工業社製試薬)
[高分子化合物1(分散剤1)の水溶液の合成]
1L4つ口セパラブルフラスコに予め蒸留水を15.0g仕込んでおき、滴下ロート二つ、還流冷却管、温度計、撹拌装置を取り付けた。窒素置換した後、150rpmで撹拌しながら、80℃まで昇温し、温度を保ったまま80質量%アクリル酸水溶液:60.6gとMPG2A(疎水性モノマー):1.5gの混合溶液と、VA-057(重合開始剤):1.13gとMPA(連鎖移動剤):0.87gと蒸留水:47.9gの混合溶液を別々に60分かけて滴下した。滴下終了後、80℃で60分温度を保ち、その後冷却した。得られた分散剤1(モル比(アクリル酸/MPG2A)=(98.9/1.1))の水溶液の固形分濃度は44.9質量%であり、分散剤1のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量は10710であった。
[高分子化合物2(分散剤2)の水溶液の合成]
1L4つ口セパラブルフラスコに予め蒸留水を15.0g仕込んでおき、滴下ロート二つ、還流冷却管、温度計、撹拌装置を取り付けた。窒素置換した後、150rpmで撹拌しながら、80℃まで昇温し、温度を保ったまま80質量%アクリル酸水溶液:62.5gと、VA-057(重合開始剤):1.15gとMPA(連鎖移動剤):0.74gと蒸留水:47.5gの混合溶液とを別々に60分かけて滴下した。滴下終了後、80℃で60分温度を保ち、その後冷却した。得られた分散剤2(ポリアクリル酸)の水溶液の固形分濃度は43.8質量%であり、分散剤2のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量は11800であった。
[高分子化合物3(分散剤3)の水溶液の合成]
1L4つ口セパラブルフラスコに予め蒸留水を15.0g仕込んでおき、滴下ロート二つ、還流冷却管、温度計、撹拌装置を取り付けた。窒素置換した後、150rpmで撹拌しながら、80℃まで昇温し、温度を保ったまま80質量%アクリル酸水溶液:43.8gとメタクリル酸:15.0gの混合溶液と、VA-057(重合開始剤):1.09gとMPA(連鎖移動剤):0.70gと蒸留水:51.2gの混合溶液を別々に60分かけて滴下した。滴下終了後、80℃で60分温度を保ち、その後冷却した。得られた分散剤3(モル比(アクリル酸/メタクリル酸)=(74/26))の水溶液の固形分濃度は43.9質量%であり、分散剤3のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量は12300であった。
3.CNT分散液調製用の混合液
調製した分散剤1~3の水溶液、CNT、及び水系媒体(蒸留水)を混合し、実施例1~13及び比較例1~8、10のCNT分散液調製用の混合液を調製した。
具体的には、60mLスクリュー管に、分散剤の水溶液と蒸留水を、合計が40gとなるように測りとり、次いで、CNT0.08gを測りとって、両者を混合した。そして、得られた混合物を、長さ2cmスターラーチップで、300rpm、1時間撹拌した後、氷冷しながら超音波ホモジナイザー(300μA)で13分間分散させて、CNT分散液調製用の混合液を得た。超音波ホモジナイザーは、日本精機製作所社製US-300を用いた。CNTには、OCSiAl社製の「TUBALL」(純度75%の単層カーボンナノチューブ、1~2層、長さ5μm以上)を使用した。
比較例9のCNT分散液調製用の混合液の調製においては、分散剤として、カルボキシメチルセルロース(DN10L、ダイセルファインケム社製、1%粘度;10~50mPa・s)を用い、その濃度を0.15質量%としたこと以外は、実施例1のCNT分散液調製用の混合液と同様にして、CNT分散液調製用の混合液の調製をした。
CNT分散液調製用の混合液中の分散剤の含有量は0.12~0.23質量%、CNTの含有量は0.10~0.15質量%とした。CNT水分散液中の蒸留水の含有量は、分散剤及びCNTを除いた残余である。
4.CNT分散液の調製
上記で得られたCNT分散液調製用の混合液と、表1及び表2に示すアルコールとを混合し、良く撹拌して、実施例1~13、比較例1~10のCNT分散液を得た。各CNT分散液における、CNT分散液を100質量%とした、CNT、分散剤(高分子化合物)、アルコールの含有量は、各々、表1及び表2に示した通りとした。残余は水である。尚、PhOHはフェノール、BDGはブチルジグリコール、PGはプロピレングリコール、EGはエチレングリコールである。
5.評価
[分散状態]
分散状態の評価は目視と粘度により判断した。
(目視)
スクリュー管の壁面にCNTの凝集物が観察されるかどうかを確認した。結果を表1に示した。
<評価基準>
A:ガラス壁面に吸着した凝集物の数が1cm2当たり2粒以内である。
B:ガラス壁面に吸着した凝集物の数が1cm2当たり3~5粒以内である。
C:ガラス壁面に吸着した凝集物の数が1cm2当たり6粒以上である。
D:全く分散できていない
評価基準がA及びBの場合、CNTの分散性が良好と判断する。
[CNT分散液のせん断速度10s-1における粘度]
ブルックフィールド粘度計コーンプレート型(コーン半径12mm、コーン角度3°)、せん断速度10s-1で60秒間回転させた後の粘度を読み取った。測定温度は25℃とした。結果を表1及び表2に示した。
[PETフィルムへの濡れ性]
市販PETフィルムとしては、東レ社製ルミラーT60(100μm)を用いた。調製したCNT分散液をスパイラルバーコーターNo.3を用いて塗工し、100℃の送風乾燥機にて1分間乾燥してから塗工面を観察した。下記に評価基準を示す。評価結果を表1及び表2に示した。表1及び表2において、評価基準がA及びBの場合、PETフィルムへの濡れ性が良好と判断する。
<評価基準>
A:ハジキが見られない
B:1~2か所ハジキが見られる。
C:3~10か所ハジキが見られる。
D:明らかに10か所を超えるハジキが見られる。
Figure 0007131969000001
Figure 0007131969000002
表1及び表2の結果から、実施例1~13のCNT分散液は、CNTの分散性及びPETフィルムに対する濡れ性が良好であることがわかる。すなわち、実施例1~13のCNT分散液は、PETフィルム表面に対する濡れ性が良好であるので、1液で、PETフィルム表面に直接良好な塗膜を形成可能である。尚、表1及び表2中、粘度、分散性、PET濡れ性について「-」は、CNTが凝集していたため、濡れ性の評価をする以前に、塗工は不可能であり、測定不可であったことを意味する。
本開示の分散剤とアルコールを併用すれば、分散性及びPETフィルム表面等の樹脂表面に対する濡れ性に優れるCNT分散液を製造できる。

Claims (7)

  1. 樹脂表面に塗工されるカーボンナノチューブ水系分散液であり、
    下記成分A~Cを含み、下記成分Cの含有量が3質量%以上12質量%以下である、カーボンナノチューブ水系分散液。
    成分A:カーボンナノチュー
    成分B:(メタ)アクリル酸と疎水性モノマーとの共重合体であり、前記(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量が97.7mol%以上の高分子化合
    成分C:炭素数が1以上4以下のモノアルコー
  2. 記疎水性モノマー由来の構成単位の含有量が、0.3mol%以上2.3mol%以下である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ水系分散液。
  3. 前記高分子化合物の数平均分子量が3,000以上15,000以下である、請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ水系分散液。
  4. 前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブである、請求項1~3のいずれかの項に記載のカーボンナノチューブ水系分散液。
  5. 前記モノアルコールが、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、及びtert-ブチルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1~4のいずれかの項に記載のカーボンナノチューブ水系分散液。
  6. 前記成分Bの含有量は、前記成分A100質量部に対して70質量部以上300質量部以下である請求項1~5のいずれかの項に記載のカーボンナノチューブ水系分散液。
  7. 樹脂表面に塗工されるカーボンナノチューブ水系分散液の製造方法であって、
    カーボンナノチューブと、(メタ)アクリル酸と疎水性モノマーとの共重合体であり前記(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量が97.7mol%以上の高分子化合物と水系媒体とを混合し、前記カーボンナノチューブを前記水系媒体に分散させて、カーボンナノチューブ分散液調製用混合液を得る工程と、
    前記カーボンナノチューブ分散液調製用混合液に、炭素数が1以上4以下のモノアルコールを添加する工程と、を含み、
    前記カーボンナノチューブ水系分散液中の前記モノアルコールの含有量が3質量%以上12質量%以下である、カーボンナノチューブ水系分散液の製造方法。
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