JP7131969B2 - カーボンナノチューブ水系分散液 - Google Patents
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Description
PETフィルム表面の濡れ性改善のために、有機溶剤を添加することが知られているが、効果が発揮するまで多く添加すると、コスト的に不利になるとともに、引火点が低下して取り扱いにくくなることが懸念される。更に、カーボンナノチューブの分散性を悪化させる懸念もある。
成分A:カーボンナノチューブ。
成分B:(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量が97.7mol%以上である高分子化合物。
成分C:炭素数1~4からなるモノアルコール。
カーボンナノチューブと(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量が97.7mol%以上の高分子化合物と水系媒体とを混合し、前記カーボンナノチューブを前記水性溶媒に分散させて、CNT分散液調製用混合液を得る工程と、
前記CNT分散液調製用混合液に、炭素数が1以上4以下のモノアルコールを添加する工程と、を含み、
前記カーボンナノチューブ水系分散液中の前記モノアルコールの含有量が3質量%以上12質量%以下である、カーボンナノチューブ水系分散液の製造方法に関する。
分散剤として用いられる前記成分Bは、強固に凝集しているカーボンナノチューブとの親和性が高いポリエチレン構造を有するとともに、水との親和性が高いカルボキシル基を有することから、カーボンナノチューブの分散性を高めると考えられる。更に、カーボンナノチューブとの親和性が低いために所定量であればカーボンナノチューブの分散性には影響せず、分散液の表面張力を低下できる、特定のアルコールを含むことから、カーボンナノチューブの分散性とPETフィルム表面等の樹脂表面に対する塗工性とを両立できると考えられる。ただし、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されない。
成分A:カーボンナノチューブ。
成分B:(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量が97.7mol%以上である高分子化合物。
成分C:炭素数1~4からなるモノアルコール。
本開示によれば、カーボンナノチューブの分散性が良好で、且つ、PETフィルム表面等の樹脂表面に対する濡れ性が向上したカーボンナノチューブ水系分散液(以下、「CNT分散液」ともいう。)を提供できる。本開示のCNT分散液は、PETフィルム表面等の樹脂表面に対する濡れ性が良好であるので、1液で、PETフィルム表面等の樹脂表面に直接良好な塗膜を形成可能である。
本開示において、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ともいう。)とは、複数のCNTを含む総体を意味する。CNTの形態は、特に限定されなくてもよく、例えば、複数のCNTがそれぞれ独立していてもよいし、複数のCNTが束状あるいは絡まり合うなどの形態でもよいし、これらの形態が混合した形態でもよい。CNTは、種々の層数または直径のCNTであってもよい。CNTは、CNTの製造におけるプロセス由来の不純物(例えば、触媒やアモルファスカーボン)を含み得る。
本開示のCNT分散液は、CNTの分散性向上の観点から、分散剤として、(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量が97.7mol%以上の高分子化合物を含む。成分Bを構成する全構成単位中の(メタ)アクリル酸由来の構成単位は、CNTの分散性向上の観点から、97.9mol%以上がより好ましく、98.2mol%以上が更に好ましく、そして、濡れ性向上の観点から、100mol%以下が好ましく、99.7mol%以下がより好ましく、99.5mol%以下が更に好ましく、99.3mol%以下が更により好ましい。
本開示のCNT分散液は、PETへの濡れ性向上の観点から、炭素数が1以上4以下のモノアルコールを含む。成分Cとしては、例えば、メチルアルコール(MeOH)、エチルアルコール(EtOH)、n-プロピルアルコール(nPrOH)、イソプロパノール(IPA)、n-ブチルアルコール(nBuOH)、i-ブチルアルコール(iBuOH)、sec-ブチルアルコール(sBuOH)、及びtert-ブチルアルコール(tBuOH)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられるが、安全性の観点、及び、泡立ち抑制の観点から、エチルアルコール(EtOH)、n-プロピルアルコール(nPrOH)、イソプロパノール(IPA)、n-ブチルアルコール(nBuOH)、i-ブチルアルコール(iBuOH)、sec-ブチルアルコール(sBuOH)、及びtert-ブチルアルコール(tBuOH)からなる群から選ばれる少なくとも1種が好まししく、PETへの濡れ性向上の観点から、エチルアルコール(EtOH)、イソプロパノール(IPA)、及びtert-ブチルアルコール(tBuOH)のうちの少なくとも1種がより好ましい。
10mLスクリュー管にCNT分散液を2g量りとり蓋をする。手で10秒間激しく浸透させ、直ちに静置し、泡が完全になくなるまでの時間を測定した。3回測定し、その平均値が10秒未満なら合格(○)、10秒以上なら不合格(×)とする。
<評価基準>
○:平均10秒未満で泡が完全になくなる
×:泡が完全になくなるまで平均10秒以上かかる
本開示のCNT分散液は、水系媒体を含む水系分散液である。水系媒体としては、水が好ましく、例えば、蒸留水、イオン交換水、超純水等が挙げられる。水系媒体は、水のみからなると好ましいが、水系媒体には、CNTの分散性を損なわない程度であれば、水以外に、前記成分C以外の水溶性有機溶剤以外の他の溶剤が含まれていてもよい。水系媒体が、水と前記水溶性有機溶剤との混合溶媒である場合、前記水溶性有機溶剤は、水とは別に添加(配合)されてもよいし、水と同時に添加(配合)されてもよい。混合溶媒の水の含有量は、水系媒体を100質量部とした場合、引火点を考慮した取り扱い易さとコスト低減の観点から、88質量部以上が好ましく、95質量部以上がより好ましく、98質量部以上が更に好ましい。
本開示のCNT分散液は、例えば、CNT(成分A)、高分子化合物(成分B)、モノアルコール(成分C)、及び水系媒体を公知の方法で配合することにより製造できる。したがって、本開示は、一態様において、CNT(成分A)、高分子化合物(成分B)、及び水系媒体を混合し、CNTを水系媒体中で分散させて、CNT分散液調製用混合液を得る第1工程と、更にCNT分散液調製用混合液にモノアルコール(成分C)を添加し混合する第2工程とを含む、CNT分散液の製造方法(以下、「本開示のCNT分散液の製造方法」ともいう)に関する。本開示のCNT分散液の製造方法によれば、分散性及びPETに対する濡れ性に優れるCNT分散液を製造しうる。
本発明のCNT分散液は、樹脂膜への塗工に用いることができる。樹脂膜としては、特に限定されないが、PET樹脂膜が挙げられる。塗工手段に関しても、刷毛塗、噴霧吹付、浸漬などが挙げられるが特に制限はない。
ゲル浸透クロマトグラフィー(以下「GPC」ともいう)法を用いて成分B及びその比較対象物の数平均分子量を測定した。
すなわち、試料(成分B及びその比較対象物)をN,N-ジメチルホルムアミドで希釈し、試料の固形分濃度0.3質量%の溶液を調製して試料溶液とし、その100μLを測定に供した。N,N-ジメチルホルムアミドに、リン酸とリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、GPC〔装置:東ソー株式会社製「HLC-8120GPC」、検出器:示差屈折計(装置付属)、カラム:東ソー株式会社製「TSK-GEL α-M」×2本、カラム温度:40℃、溶離液流速:1mL/min〕により、測定した。
標準物質としては、ポリスチレン(東ソー株式会社製:分子量 5.26×102、1.02×105、8.42×106;西尾工業株式会社製:分子量 4.0×103、3.0×104、9.0×105)を用いた。
表1及び表2に示す分散剤1~3の水溶液の調製には、下記成分を使用した。
アクリル酸(和光純薬工業社製試薬)
メタクリル酸(和光純薬工業製試薬)
<疎水性モノマー>
MPG2A:メトキシジプロピレングリコールアクリレート(共栄化学社製「ライトアクリレートDPM-A」、25℃の水への溶解性:2質量%)
<重合開始剤>
VA-057:2,2-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]4水和物(和光純薬工業社製試薬「VA-057」)
<連鎖移動剤>
MPA:3-メルカプトプロピオン酸(和光純薬工業社製試薬)
1L4つ口セパラブルフラスコに予め蒸留水を15.0g仕込んでおき、滴下ロート二つ、還流冷却管、温度計、撹拌装置を取り付けた。窒素置換した後、150rpmで撹拌しながら、80℃まで昇温し、温度を保ったまま80質量%アクリル酸水溶液:60.6gとMPG2A(疎水性モノマー):1.5gの混合溶液と、VA-057(重合開始剤):1.13gとMPA(連鎖移動剤):0.87gと蒸留水:47.9gの混合溶液を別々に60分かけて滴下した。滴下終了後、80℃で60分温度を保ち、その後冷却した。得られた分散剤1(モル比(アクリル酸/MPG2A)=(98.9/1.1))の水溶液の固形分濃度は44.9質量%であり、分散剤1のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量は10710であった。
1L4つ口セパラブルフラスコに予め蒸留水を15.0g仕込んでおき、滴下ロート二つ、還流冷却管、温度計、撹拌装置を取り付けた。窒素置換した後、150rpmで撹拌しながら、80℃まで昇温し、温度を保ったまま80質量%アクリル酸水溶液:62.5gと、VA-057(重合開始剤):1.15gとMPA(連鎖移動剤):0.74gと蒸留水:47.5gの混合溶液とを別々に60分かけて滴下した。滴下終了後、80℃で60分温度を保ち、その後冷却した。得られた分散剤2(ポリアクリル酸)の水溶液の固形分濃度は43.8質量%であり、分散剤2のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量は11800であった。
1L4つ口セパラブルフラスコに予め蒸留水を15.0g仕込んでおき、滴下ロート二つ、還流冷却管、温度計、撹拌装置を取り付けた。窒素置換した後、150rpmで撹拌しながら、80℃まで昇温し、温度を保ったまま80質量%アクリル酸水溶液:43.8gとメタクリル酸:15.0gの混合溶液と、VA-057(重合開始剤):1.09gとMPA(連鎖移動剤):0.70gと蒸留水:51.2gの混合溶液を別々に60分かけて滴下した。滴下終了後、80℃で60分温度を保ち、その後冷却した。得られた分散剤3(モル比(アクリル酸/メタクリル酸)=(74/26))の水溶液の固形分濃度は43.9質量%であり、分散剤3のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量は12300であった。
調製した分散剤1~3の水溶液、CNT、及び水系媒体(蒸留水)を混合し、実施例1~13及び比較例1~8、10のCNT分散液調製用の混合液を調製した。
具体的には、60mLスクリュー管に、分散剤の水溶液と蒸留水を、合計が40gとなるように測りとり、次いで、CNT0.08gを測りとって、両者を混合した。そして、得られた混合物を、長さ2cmスターラーチップで、300rpm、1時間撹拌した後、氷冷しながら超音波ホモジナイザー(300μA)で13分間分散させて、CNT分散液調製用の混合液を得た。超音波ホモジナイザーは、日本精機製作所社製US-300を用いた。CNTには、OCSiAl社製の「TUBALL」(純度75%の単層カーボンナノチューブ、1~2層、長さ5μm以上)を使用した。
比較例9のCNT分散液調製用の混合液の調製においては、分散剤として、カルボキシメチルセルロース(DN10L、ダイセルファインケム社製、1%粘度;10~50mPa・s)を用い、その濃度を0.15質量%としたこと以外は、実施例1のCNT分散液調製用の混合液と同様にして、CNT分散液調製用の混合液の調製をした。
上記で得られたCNT分散液調製用の混合液と、表1及び表2に示すアルコールとを混合し、良く撹拌して、実施例1~13、比較例1~10のCNT分散液を得た。各CNT分散液における、CNT分散液を100質量%とした、CNT、分散剤(高分子化合物)、アルコールの含有量は、各々、表1及び表2に示した通りとした。残余は水である。尚、PhOHはフェノール、BDGはブチルジグリコール、PGはプロピレングリコール、EGはエチレングリコールである。
[分散状態]
分散状態の評価は目視と粘度により判断した。
(目視)
スクリュー管の壁面にCNTの凝集物が観察されるかどうかを確認した。結果を表1に示した。
<評価基準>
A:ガラス壁面に吸着した凝集物の数が1cm2当たり2粒以内である。
B:ガラス壁面に吸着した凝集物の数が1cm2当たり3~5粒以内である。
C:ガラス壁面に吸着した凝集物の数が1cm2当たり6粒以上である。
D:全く分散できていない
評価基準がA及びBの場合、CNTの分散性が良好と判断する。
ブルックフィールド粘度計コーンプレート型(コーン半径12mm、コーン角度3°)、せん断速度10s-1で60秒間回転させた後の粘度を読み取った。測定温度は25℃とした。結果を表1及び表2に示した。
市販PETフィルムとしては、東レ社製ルミラーT60(100μm)を用いた。調製したCNT分散液をスパイラルバーコーターNo.3を用いて塗工し、100℃の送風乾燥機にて1分間乾燥してから塗工面を観察した。下記に評価基準を示す。評価結果を表1及び表2に示した。表1及び表2において、評価基準がA及びBの場合、PETフィルムへの濡れ性が良好と判断する。
<評価基準>
A:ハジキが見られない
B:1~2か所ハジキが見られる。
C:3~10か所ハジキが見られる。
D:明らかに10か所を超えるハジキが見られる。
Claims (7)
- 樹脂表面に塗工されるカーボンナノチューブ水系分散液であり、
下記成分A~Cを含み、下記成分Cの含有量が3質量%以上12質量%以下である、カーボンナノチューブ水系分散液。
成分A:カーボンナノチューブ
成分B:(メタ)アクリル酸と疎水性モノマーとの共重合体であり、前記(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量が97.7mol%以上の高分子化合物
成分C:炭素数が1以上4以下のモノアルコール - 前記疎水性モノマー由来の構成単位の含有量が、0.3mol%以上2.3mol%以下である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ水系分散液。
- 前記高分子化合物の数平均分子量が3,000以上15,000以下である、請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ水系分散液。
- 前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブである、請求項1~3のいずれかの項に記載のカーボンナノチューブ水系分散液。
- 前記モノアルコールが、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、及びtert-ブチルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1~4のいずれかの項に記載のカーボンナノチューブ水系分散液。
- 前記成分Bの含有量は、前記成分A100質量部に対して70質量部以上300質量部以下である請求項1~5のいずれかの項に記載のカーボンナノチューブ水系分散液。
- 樹脂表面に塗工されるカーボンナノチューブ水系分散液の製造方法であって、
カーボンナノチューブと、(メタ)アクリル酸と疎水性モノマーとの共重合体であり前記(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量が97.7mol%以上の高分子化合物と、水系媒体とを混合し、前記カーボンナノチューブを前記水系媒体に分散させて、カーボンナノチューブ分散液調製用混合液を得る工程と、
前記カーボンナノチューブ分散液調製用混合液に、炭素数が1以上4以下のモノアルコールを添加する工程と、を含み、
前記カーボンナノチューブ水系分散液中の前記モノアルコールの含有量が3質量%以上12質量%以下である、カーボンナノチューブ水系分散液の製造方法。
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