JP2020158857A - 銀ナノワイヤの製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、アルコール溶媒還元法による銀ナノワイヤの合成において、反応温度を高めること以外の手法により合成時間の短縮化を図る。【解決手段】銀化合物、有機保護剤が溶解している有機溶媒中で、銀をワイヤ状に還元析出させるに際し、前記有機保護剤としてビニルピロリドン構造単位を持つポリマーを使用し、前記有機溶媒としてアルコールと有機酸エステルとの混合溶媒を使用し、前記混合溶媒を構成する各化合物についてのハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHに基づいて算出されるδALL値が12.5〜20.70(J/cm3)1/2である組成の当該混合溶媒中で前記還元析出を進行させる。【選択図】図5
Description
本発明は、透明導電膜の導電素材(フィラー)として有用な銀ナノワイヤを有機溶媒中で効率良く合成するための銀ナノワイヤの製造方法に関する。
本明細書では、太さが200nm程度以下の微細な金属ワイヤを「ナノワイヤ(nanowire(s)」と呼ぶ。
銀ナノワイヤは、透明基材に導電性を付与するための導電素材として有望視されている。銀ナノワイヤを含有する塗工液(銀ナノワイヤインクと呼ばれる場合もある。)をガラス、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)などの透明基材に塗布したのち、液状成分を蒸発等により除去すると、銀ナノワイヤは当該基材上で互いに接触し合うことにより導電ネットワークを形成するので、透明導電膜を実現することができる。
電子機器のタッチパネル等に使用される透明導電膜には、導電性が良好であることに加え、ヘイズの少ないクリアな視認性が要求される。銀ナノワイヤを導電素材とする透明導電膜において導電性と視認性を高いレベルで両立させるためには、できるだけ細く、かつ長い銀ナノワイヤを適用することが有利となる。
従来、銀ナノワイヤの合成法として、例えば、エチレングリコール等の多価アルコール溶媒に銀化合物を溶解させ、ハロゲン化合物と有機保護剤の存在下において、溶媒である多価アルコールの還元力を利用して線状形状の金属銀を析出させる手法(以下、「アルコール溶媒還元法」と言う。)が知られている。アルコール溶媒還元法によって合成された銀ナノワイヤの表面には、合成時に使用された有機保護剤の分子が付着している。表面に付着している有機保護剤は、塗工液などの液状媒体中において、銀ナノワイヤの分散性を確保するための重要な役割を有する。
その有機保護剤として、従来一般的にPVP(ポリビニルピロリドン)が多用されてきた。最近ではビニルピロリドンと他のモノマーとのコポリマーを使用する手法も開発されており(例えば特許文献1)、実用化が進められている。これらのポリマーは細く長い銀ナノワイヤを析出させる上で好適な有機保護剤である。また、これらのポリマーはビニルピロリドン構造単位(図1)を持ち、銀ナノワイヤに水中での良好な分散性を付与することができる。上記コポリマーでは、親水性の程度をPVPよりもやや疎水性側に調整することができる。そのようなコポリマーは、水に対する良好な分散性を維持しつつ、アルコールを含有する水系の液状媒体や、アルコール系の液状媒体に対する分散性をも向上させた銀ナノワイヤを作製する上で有用である。ここで「水系の液状媒体」とは、液状媒体を構成する成分の50質量%以上が水である液状媒体を意味する。「アルコール系の液状媒体」とは、液状媒体を構成する成分の50質量%以上がアルコールである液状媒体を意味する。
アルコール溶媒還元法は、所定の有機保護剤に覆われた細くて長い銀ナノワイヤを合成するうえで有用な手法である。しかし、アルコール溶媒還元法で細い銀ナノワイヤを安定して合成するためには、従来、長時間の還元時間を確保することが必要であった。例えば特許文献1の実施例では24時間の還元時間を要している。工業的規模での実用化においては、合成時間の短縮化を図ることが重要である。合成時の反応温度を高めると、合成時間も短くできるが、その場合は例えば平均直径が30nm以下といった非常に細いワイヤを合成することが難しくなる。本発明は、アルコール溶媒還元法による銀ナノワイヤの合成において、反応温度を高めること以外の手法により合成時間の短縮化を図ることを課題とする。
上記課題を達成するために、本明細書では、以下の発明を開示する。
[1]銀化合物、有機保護剤が溶解している有機溶媒中で、銀をワイヤ状に還元析出させる工程を有する銀ナノワイヤの製造法において、
前記有機保護剤としてビニルピロリドン構造単位を持つポリマーを使用すること、
前記有機溶媒として1種以上のアルコールと1種以上の有機酸エステルとの混合溶媒を使用すること、
前記混合溶媒を構成する各化合物についてのハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHに基づいて下記(1)式により算出されるδALL値が12.50〜20.70(J/cm3)1/2である組成の当該混合溶媒中で前記還元析出を進行させること、
を特徴とする銀ナノワイヤの製造法。
δALL=δH1×V1+δH2×V2+・・・+δHn×Vn …(1)
ここで、nは混合溶媒を構成する化合物の数、δHi(iは1からnまでの番号。以下同様。)は化合物iについてのハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δH((J/cm3)1/2)、Viは化合物iの体積比(ただし、V1+V2+・・・+Vn=1)である。
[2]上記[1]に記載の製造法において、δALL値が16.50〜20.70(J/cm3)1/2である混合溶媒を使用し、平均直径30nm以下、かつ下記(2)式で定義される平均アスペクト比AMが300以上である銀ナノワイヤを還元析出させる銀ナノワイヤの製造法。
AM=LM/DM …(2)
ここで、LMは上記平均長さをnmの単位で表した値、DMは上記平均直径をnmの単位で表した値である。
[3]前記アルコールとして、1分子中の炭素数が2〜4である多価アルコールの1種以上を使用する上記[1]または[2]に記載の銀ナノワイヤの製造法。
[4]前記有機酸エステルとして、酢酸エチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルの1種以上を使用する上記[1]〜[3]のいずれかに記載の銀ナノワイヤの製造法。
[5]前記ポリマーが、PVP(ポリビニルピロリドン)またはビニルピロリドンと他のモノマーとのコポリマーである上記[1]〜[4]のいずれかに記載の銀ナノワイヤの製造法。
[6]前記ポリマーが、ビニルピロリドンと、ジアリルジメチルアンモニウム塩、エチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、および2−ジエチルアミノエチルメタクリレートから選ばれる1種または2種以上のモノマーとの重合組成を有するものである上記[1]〜[4]のいずれかに記載の銀ナノワイヤの製造法。
[7]前記ポリマーは、重量平均分子量Mwが30,000〜300,000である上記[1]〜[6]のいずれかに記載の銀ナノワイヤの製造法。
[1]銀化合物、有機保護剤が溶解している有機溶媒中で、銀をワイヤ状に還元析出させる工程を有する銀ナノワイヤの製造法において、
前記有機保護剤としてビニルピロリドン構造単位を持つポリマーを使用すること、
前記有機溶媒として1種以上のアルコールと1種以上の有機酸エステルとの混合溶媒を使用すること、
前記混合溶媒を構成する各化合物についてのハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHに基づいて下記(1)式により算出されるδALL値が12.50〜20.70(J/cm3)1/2である組成の当該混合溶媒中で前記還元析出を進行させること、
を特徴とする銀ナノワイヤの製造法。
δALL=δH1×V1+δH2×V2+・・・+δHn×Vn …(1)
ここで、nは混合溶媒を構成する化合物の数、δHi(iは1からnまでの番号。以下同様。)は化合物iについてのハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δH((J/cm3)1/2)、Viは化合物iの体積比(ただし、V1+V2+・・・+Vn=1)である。
[2]上記[1]に記載の製造法において、δALL値が16.50〜20.70(J/cm3)1/2である混合溶媒を使用し、平均直径30nm以下、かつ下記(2)式で定義される平均アスペクト比AMが300以上である銀ナノワイヤを還元析出させる銀ナノワイヤの製造法。
AM=LM/DM …(2)
ここで、LMは上記平均長さをnmの単位で表した値、DMは上記平均直径をnmの単位で表した値である。
[3]前記アルコールとして、1分子中の炭素数が2〜4である多価アルコールの1種以上を使用する上記[1]または[2]に記載の銀ナノワイヤの製造法。
[4]前記有機酸エステルとして、酢酸エチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルの1種以上を使用する上記[1]〜[3]のいずれかに記載の銀ナノワイヤの製造法。
[5]前記ポリマーが、PVP(ポリビニルピロリドン)またはビニルピロリドンと他のモノマーとのコポリマーである上記[1]〜[4]のいずれかに記載の銀ナノワイヤの製造法。
[6]前記ポリマーが、ビニルピロリドンと、ジアリルジメチルアンモニウム塩、エチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、および2−ジエチルアミノエチルメタクリレートから選ばれる1種または2種以上のモノマーとの重合組成を有するものである上記[1]〜[4]のいずれかに記載の銀ナノワイヤの製造法。
[7]前記ポリマーは、重量平均分子量Mwが30,000〜300,000である上記[1]〜[6]のいずれかに記載の銀ナノワイヤの製造法。
上記(1)式に適用する各物質の体積比Viは、混合する各物質の20℃の体積に基づいて定めることができる。上記の「沸点」は外圧が1013hPa(1atm=760mmHg)であるときの値である。銀ナノワイヤの平均長さ、平均直径、平均アスペクト比は以下の定義に従う。
[平均長さLM]
電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)による観察画像上で、ある1本の銀ナノワイヤの一端から他端までのトレース長さを、そのワイヤの長さと定義する。顕微鏡画像上に存在する個々の銀ナノワイヤの長さを平均した値を、平均長さLMと定義する。平均長さを算出するためには、測定対象のワイヤの総数を100以上とする。ここでは、還元反応を終えた液から回収される銀ナノワイヤを洗浄した段階(クロスフローろ過などの精製工程に供給する前の段階)での平均長さを評価する。
電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)による観察画像上で、ある1本の銀ナノワイヤの一端から他端までのトレース長さを、そのワイヤの長さと定義する。顕微鏡画像上に存在する個々の銀ナノワイヤの長さを平均した値を、平均長さLMと定義する。平均長さを算出するためには、測定対象のワイヤの総数を100以上とする。ここでは、還元反応を終えた液から回収される銀ナノワイヤを洗浄した段階(クロスフローろ過などの精製工程に供給する前の段階)での平均長さを評価する。
[平均直径DM]
透過型電子顕微鏡(TEM)による明視野観察画像上で、ある1本の銀ナノワイヤにおける太さ方向両側の輪郭間距離を、そのワイヤの直径と定義する。各ワイヤは全長にわたってほぼ均等な太さを有しているとみなすことができる。従って、太さの計測は他のワイヤと重なっていない部分を選択して行うことができる。1つの視野を写した銀ナノワイヤについてのTEMによる明視野観察画像(以下「TEM画像」という。)において、その画像内に観察される銀ナノワイヤのうち、他のワイヤと完全に重なって直径の計測が困難であるワイヤを除く全てのワイヤの直径を測定する、という操作を無作為に選んだ複数の視野について行い、合計100本以上の異なる銀ナノワイヤの直径を求め、個々の銀ナノワイヤの直径の平均値を算出し、その値を平均直径DMと定義する。
透過型電子顕微鏡(TEM)による明視野観察画像上で、ある1本の銀ナノワイヤにおける太さ方向両側の輪郭間距離を、そのワイヤの直径と定義する。各ワイヤは全長にわたってほぼ均等な太さを有しているとみなすことができる。従って、太さの計測は他のワイヤと重なっていない部分を選択して行うことができる。1つの視野を写した銀ナノワイヤについてのTEMによる明視野観察画像(以下「TEM画像」という。)において、その画像内に観察される銀ナノワイヤのうち、他のワイヤと完全に重なって直径の計測が困難であるワイヤを除く全てのワイヤの直径を測定する、という操作を無作為に選んだ複数の視野について行い、合計100本以上の異なる銀ナノワイヤの直径を求め、個々の銀ナノワイヤの直径の平均値を算出し、その値を平均直径DMと定義する。
[平均アスペクト比]
上記の平均直径DMおよび平均長さLMを下記(2)式に代入することにより平均アスペクト比AMを算出する。ただし、(2)式に代入するDM、LMはいずれもnmの単位で表された値とする。
AM=LM/DM …(2)
上記の平均直径DMおよび平均長さLMを下記(2)式に代入することにより平均アスペクト比AMを算出する。ただし、(2)式に代入するDM、LMはいずれもnmの単位で表された値とする。
AM=LM/DM …(2)
本発明に従えば、アルコール溶媒還元法において、銀ナノワイヤの合成に要する時間を大幅に短縮することが可能となった。特に平均直径が例えば30nm以下といった細い銀ナノワイヤの合成において、還元析出時間の短縮化を図ることができる。合成された銀ナノワイヤは、その表面にはビニルピロリドン構造単位を持つポリマーが付着しているので、水系の液状媒体に対する分散性が良好である。上記ポリマーとしてビニルピロリドンと他のモノマーとのコポリマーを適用することができるので、アルコール系の液状媒体に対する分散性が良好である銀ナノワイヤの合成にも対応できる。溶媒に使用する有機酸エステルとしては、工業的に入手が容易な種々のものを適用することができる。
[有機保護剤]
本発明で対象とするアルコール溶媒還元法では、溶媒中に溶解させておく有機保護剤としてビニルピロリドン構造単位を持つポリマーを使用する。ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーとして、PVP(ポリビニルピロリドン)や、ビニルピロリドンと他のモノマーとのコポリマーが対象となる。後者のコポリマーとしては、例えば、ビニルピロリドンと、ジアリルジメチルアンモニウム塩、エチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミドおよびN−tert−ブチルマレイミドから選ばれる1種または2種以上のモノマーとの重合組成を有するコポリマーが挙げられる。コポリマーの重合組成は、ビニルピロリドン以外のモノマー0.1〜10質量%、残部ビニルピロリドンであることが好ましい。
本発明で対象とするアルコール溶媒還元法では、溶媒中に溶解させておく有機保護剤としてビニルピロリドン構造単位を持つポリマーを使用する。ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーとして、PVP(ポリビニルピロリドン)や、ビニルピロリドンと他のモノマーとのコポリマーが対象となる。後者のコポリマーとしては、例えば、ビニルピロリドンと、ジアリルジメチルアンモニウム塩、エチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミドおよびN−tert−ブチルマレイミドから選ばれる1種または2種以上のモノマーとの重合組成を有するコポリマーが挙げられる。コポリマーの重合組成は、ビニルピロリドン以外のモノマー0.1〜10質量%、残部ビニルピロリドンであることが好ましい。
有機保護剤に使用するポリマーの重量平均分子量Mwは30,000〜300,000の範囲にあることが好ましく、30,000〜150,000の範囲であることがより好ましい。MwはGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により求めることができる。
[有機溶媒]
発明者らは、銀ナノワイヤを合成するためのアルコール溶媒還元法において、種々の有機溶媒を用いて還元反応の短縮化に関する研究を行ってきた。その結果、有機保護剤にビニルピロリドン構造単位を持つポリマーが適用されるアルコール溶媒還元法の場合には、ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHの値が低い組成の有機溶媒を適用すると、銀ナノワイヤの還元析出時間が短縮されるという現象が生じることを発見した。溶媒成分として、還元力を担うアルコールを使用するとともに、溶媒のδHを低下させる物質を使用する。溶媒のδHを低下させる物質として、有機酸エステルを好適に使用することができる。すなわち、アルコールと有機酸エステルとの混合溶媒を適用することが極めて有効である。混合溶媒についてのハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHに相当する指標を本明細書ではδALLと表示する。δALL値((J/cm3)1/2)は下記(1)式により算出される。
δALL=δH1×V1+δH2×V2+・・・+δHn×Vn …(1)
ここで、nは混合溶媒を構成する化合物の数、δHi(iは1からnまでの番号。以下同様。)は化合物iについてのハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δH((J/cm3)1/2)、Viは化合物iの体積比(ただし、V1+V2+・・・+Vn=1)である。
発明者らは、銀ナノワイヤを合成するためのアルコール溶媒還元法において、種々の有機溶媒を用いて還元反応の短縮化に関する研究を行ってきた。その結果、有機保護剤にビニルピロリドン構造単位を持つポリマーが適用されるアルコール溶媒還元法の場合には、ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHの値が低い組成の有機溶媒を適用すると、銀ナノワイヤの還元析出時間が短縮されるという現象が生じることを発見した。溶媒成分として、還元力を担うアルコールを使用するとともに、溶媒のδHを低下させる物質を使用する。溶媒のδHを低下させる物質として、有機酸エステルを好適に使用することができる。すなわち、アルコールと有機酸エステルとの混合溶媒を適用することが極めて有効である。混合溶媒についてのハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHに相当する指標を本明細書ではδALLと表示する。δALL値((J/cm3)1/2)は下記(1)式により算出される。
δALL=δH1×V1+δH2×V2+・・・+δHn×Vn …(1)
ここで、nは混合溶媒を構成する化合物の数、δHi(iは1からnまでの番号。以下同様。)は化合物iについてのハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δH((J/cm3)1/2)、Viは化合物iの体積比(ただし、V1+V2+・・・+Vn=1)である。
混合溶媒を構成するアルコールとしては、アルコール溶媒還元法において従来から使用されているアルコールが適用できる。例えば、1分子中の炭素数が2〜4である多価アルコールの1種以上を使用することが望ましい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリンの1種以上を使用すればよい。
混合溶媒のδALL値をアルコールのみからなる溶媒よりも低下させるためには、使用するアルコールよりも低い「ハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δH」の値をとる有機酸エステルを1種以上混合する必要がある。ハンセンの溶解度パラメータSP値は、下記(3)式により算出されるものである。
SP値=(δD2+δP2+δH2)1/2 …(3)
ここで、δDは分散項、δPは極性項、δHは水素結合項である。
SP値=(δD2+δP2+δH2)1/2 …(3)
ここで、δDは分散項、δPは極性項、δHは水素結合項である。
混合溶媒を構成する有機酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、酢酸エチル(CH3COOC2H5)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(CH3COOC2H4OC2H4OC2H5)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(CH3COOC2H4OC2H4OC4H9)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(CH3COOC2H4OC4H9)、酢酸メチル(CH3COOCH3)、酢酸プロピル(CH3COOC3H7)、酢酸ブチル(CH3COOC4H9)などの1種以上を使用することができる。
水、アルコール、有機酸エステルのいくつかの物質について、ハンセン溶解度パラメータアプリケーション(Hansen Solubility Parameters in Practice (HSPiP) Ver.5.1.05、開発者:Dr. Hansen、Prof. Abbott、Dr. Yamamoto)により求まる20℃における水素結合項δHの値を例示すると、以下の通りである。値の単位は(J/cm3)1/2である。
水:42.6
水:42.6
(アルコール)
グリセリン:27.4
メタノール:22.5
エタノール:19.6
2−プロパノール:16.5
n−ブタノール:15.9
エチレングリコール:26.2
プロピレングリコール:21.5
1,3−ブタンジオール:21.1
1,4−ブタンジオール:21.1
ジエチレングリコール:19.1
ブチルカルビトール:10.7
グリセリン:27.4
メタノール:22.5
エタノール:19.6
2−プロパノール:16.5
n−ブタノール:15.9
エチレングリコール:26.2
プロピレングリコール:21.5
1,3−ブタンジオール:21.1
1,4−ブタンジオール:21.1
ジエチレングリコール:19.1
ブチルカルビトール:10.7
(有機酸エステル)
酢酸エチル:7.3
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート:9.3
ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:8.3
エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:6.9
酢酸メチル:7.7
酢酸プロピル:7.7
酢酸ブチル:6.3
酢酸エチル:7.3
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート:9.3
ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:8.3
エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:6.9
酢酸メチル:7.7
酢酸プロピル:7.7
酢酸ブチル:6.3
発明者らは、ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーが溶解している溶媒中で、溶媒成分であるアルコールの還元力を利用して銀をワイヤ状に還元析出させる場合、溶媒の「親水性の程度」をやや疎水側にシフトさせたときに還元時間が短縮されるという傾向が見られることを、銀ナノワイヤの多くの合成実験を通じて把握していた。親水性の程度を表す指標としては上記(3)式で定まるSP値がある。しかし、SP値では、銀ナノワイヤ合成時間の短縮化の程度をうまく整理することができなかった。そこで、更に詳細に検討を重ねたところ、上記の水素結合項δHの値が、銀ナノワイヤ合成時間の短縮化の程度を表す指標として利用できることを見いだした。
具体的には、温度条件や、溶媒以外の物質条件が同様である場合、上記(1)式により定まるδALL値が20.70以下となる混合溶媒を使用すると、アルコールのみを使用した場合よりも、銀ナノワイヤの合成時間が短縮される効果が明確になる。δALL値が20.20以下となる混合溶媒を使用することがより効果的である。アルコールと混合する溶媒物質としては、δALL値を低減することができ、ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーが溶解している溶媒中での銀ナノワイヤの合成に支障とならない物質であれば、種々のものが適用可能であると考えられる。発明者らは現在のところ、そのような溶媒物質として有機酸エステルが有用であることを確認しており、その知見に基づいて本発明を完成するに至った。
本発明では、有機溶媒として1種以上のアルコールと1種以上の有機酸エステルとの混合溶媒を使用するが、上記(1)式により定まるδALL値が低くなりすぎると溶媒中にビニルピロリドン構造単位を有する有機保護剤が溶解し難くなる。また、還元力が低下し、銀ナノワイヤの合成が困難となったり、銀ナノワイヤの収率が悪くなったりすることが考えられる。検討の結果、上記(1)式により定まるδALL値が12.50以上となる範囲で有機酸エステルの含有量を調整することが好ましい。発明者らは、δALL値がこの範囲にある組成の混合溶媒とすれば、有機保護剤の溶解性に問題はなく、かつ合成時間の短縮化効果が得られることを確認している。平均アスペクト比AMが300以上といった、細くて長い銀ナノワイヤを安定して合成するためには、δALL値が16.50以上である溶媒組成とすることが好ましく、17.50以上とすることがより好ましい。
有機溶媒の組成を質量割合で見ると、アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量は5.0〜60.0質量%の範囲とすることが好ましい。平均アスペクト比AMが300以上といった、細くて長い銀ナノワイヤを安定して合成するためには、アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量を30質量%以下とすることが好ましく、25質量%以下とすることがより好ましい。
δALL値が上述のように低減された混合溶媒を用いたときに、銀ナノワイヤの合成時間が短縮されるメカニズムについては現時点では必ずしも明確でないが、以下のようなことが推察される。ビニルピロリドン構造単位を有するポリマーは、銀の多重双晶であると考えられる核結晶の{100}面に選択的に吸着する性質を有する。それにより{100}面の成長が抑制され、銀結晶の最密面である{111}面が優先的に成長し、金属銀の線状構造体(ワイヤ)が形成される。核結晶の{100}面へのポリマーの吸着性が強くなるほど、{111}面の成長が促進され、ワイヤの成長開始および成長終了の時期が早くなることが考えられる。溶媒のδALL値が低くなると、その溶媒の「親水性の程度」は疎水側にシフトする。ビニルピロリドン構造単位を有するポリマーが溶解している溶媒においては、溶媒の「親水性の程度」が疎水側にシフトするほど、溶媒に対するポリマーの親和性が低下し、相対的に金属銀表面への親和性(吸着しやすい性質)が高くなる。すなわち、核結晶の{100}面へのポリマーの吸着性が強くなる。その結果、銀ナノワイヤの合成時間が短縮される。ここで、溶媒の「親水性の程度」を、溶解度パラメータSP値や、分散項δD、極性項δPではなく、水素結合項δHによって規定することが、銀ナノワイヤ合成時間の短縮化を実現するうえで極めて有効となる。その理由については不明であるが、ビニルピロリドン構造単位を有するポリマーの金属銀表面への親和性に関しては、溶解度パラメータSP値、分散項δD、極性項δP、水素結合項δHのうち、特に水素結合項δHが最も大きな影響を与える因子となっているものと推測される。
[銀ナノワイヤの合成条件]
混合溶媒中に存在させる前記ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーの量と、還元析出に使用する銀の総量との質量割合「ポリマー/銀質量比」は0.5〜5.0の範囲とすることが好ましい。あまり多量のポリマーが存在する溶媒を使用すると、合成された銀ナノワイヤの表面に付着するポリマー量が過剰となる。ポリマー付着量が過剰である銀ナノワイヤを透明導電膜に適用するとワイヤ同士の接点抵抗が大きくなってしまい、導電性の高い透明導電膜を得る上では不利となる。
混合溶媒中に存在させる前記ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーの量と、還元析出に使用する銀の総量との質量割合「ポリマー/銀質量比」は0.5〜5.0の範囲とすることが好ましい。あまり多量のポリマーが存在する溶媒を使用すると、合成された銀ナノワイヤの表面に付着するポリマー量が過剰となる。ポリマー付着量が過剰である銀ナノワイヤを透明導電膜に適用するとワイヤ同士の接点抵抗が大きくなってしまい、導電性の高い透明導電膜を得る上では不利となる。
銀ナノワイヤの合成に使用する銀源としては、上述の混合溶媒に可溶な銀化合物を使用する。例えば、硝酸銀、酢酸銀、酸化銀、塩化銀などが挙げられるが、溶媒に対する溶解性やコストを考慮すると硝酸銀(AgNO3)が使いやすい。銀化合物、ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーの他に、塩化物、臭化物が溶解している溶媒中で還元析出を進行させることが好ましい。更にアルカリ金属水酸化物、アルミニウム塩が溶解している溶媒中で還元析出を進行させることがより好ましい。上記各物質のうち、例えば銀化合物、塩化物、臭化物、アルミニウム塩などは、溶液の状態で反応容器中に添加してもよい。その場合、各物質の溶液を作製するための溶媒としては、アルコール溶媒の中でも極性が高く、溶解性の高い溶媒を用いることが適している。例えば、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)が挙げられる。
細いワイヤを安定して合成するためには反応温度を低めに設定することが有利となりやすい。例えば、平均直径が30nm以下の銀ナノワイヤを合成する場合は反応温度を90℃以下とすることが望ましい。ただし、反応温度が常温付近より低いと還元反応時間の低減効果が不十分となりやすい。反応温度は45℃以上の範囲で設定することが好ましく、50℃以上とすることがより好ましい。
銀ナノワイヤの合成において、上述の混合溶媒の総使用量に対する銀の総使用量は、混合溶媒1L当たり銀0.01〜0.1モルの範囲とすることが好ましい。混合溶媒の総使用量に対する塩化物の総使用量は、混合溶媒1L当たりCl量として0.00001(1×10-5)〜0.01モルの範囲とすることが好ましく、0.00005(5×10-5)〜0.01モルの範囲とすることがより好ましい。混合溶媒の総使用量に対する臭化物の総使用量は、混合溶媒1L当たりBr量として0.000001(1×10-6)〜0.001(1×10-3)モルの範囲とすることが好ましく、0.000005(5×10-6)〜0.001(1×10-3)モルの範囲とすることがより好ましい。混合溶媒の総使用量に対するアルカリ金属水酸化物の総使用量は、混合溶媒1L当たり水酸化物量として0.0001(1×10-4)〜0.01(1×10-2)モルの範囲とすることが好ましい。混合溶媒の総使用量に対するアルミニウム塩の総使用量は、溶媒1L当たりAl量として0.00001(1×10-5)〜0.001(1×10-3)モルの範囲とすることが好ましい。
[実施例1]
(銀ナノワイヤ合成)
溶媒のアルコールとしてとしてプロピレングリコール(1,2−プロパンジオール、和光純薬工業社製、特級)を用意した。溶媒の有機酸エステルとして酢酸エチル(和光純薬株式会社製)を用意した。有機保護剤としてビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト(diallyldimethylammonium nitrate)のコポリマー(ビニルピロリドン99質量%、ジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト1質量%でコポリマー作成、重量平均分子量75,000)を用意した。
(銀ナノワイヤ合成)
溶媒のアルコールとしてとしてプロピレングリコール(1,2−プロパンジオール、和光純薬工業社製、特級)を用意した。溶媒の有機酸エステルとして酢酸エチル(和光純薬株式会社製)を用意した。有機保護剤としてビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト(diallyldimethylammonium nitrate)のコポリマー(ビニルピロリドン99質量%、ジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト1質量%でコポリマー作成、重量平均分子量75,000)を用意した。
常温にて、プロピレングリコール771.8g中に、酢酸エチル45.75g、塩化リチウム(アルドリッチ社製)含有量が10質量%であるプロピレングリコール溶液0.486g、臭化カリウム(和光純薬工業社製)含有量が1質量%であるプロピレングリコール溶液1.048g、水酸化リチウム(アルドリッチ社製)0.0521g、硝酸アルミニウム九水和物(キシダ化成社製)含有量が20質量%であるプロピレングリコール溶液0.541g、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイトのコポリマー8.39gを添加して溶解させ、溶液Aとした。
プロピレングリコール8.97gのアルコール溶媒中に、純水1.37g、硝酸銀6.80gを添加して、27℃で撹拌して溶解させ、銀含有液(溶液B)を得た。
上記の溶液Aを反応容器に入れ、常温から85℃まで撹拌しながら昇温したのち、溶液Aの中に、溶液Bの全量を1分かけて添加した。溶液Bの添加終了後、溶液Bの添加に使用した容器および管路を4gのプロピレングリコールで共洗いした。その後、さらに撹拌状態を維持して85℃で保持した。以下において「撹拌保持」と言うときは、特に断らない限り、溶液Bの添加終了後に撹拌状態を維持しながら所定の反応温度で保持することを意味する。また、溶液Bの添加終了時点を「還元開始時点」と呼ぶ。
プロピレングリコール8.97gのアルコール溶媒中に、純水1.37g、硝酸銀6.80gを添加して、27℃で撹拌して溶解させ、銀含有液(溶液B)を得た。
上記の溶液Aを反応容器に入れ、常温から85℃まで撹拌しながら昇温したのち、溶液Aの中に、溶液Bの全量を1分かけて添加した。溶液Bの添加終了後、溶液Bの添加に使用した容器および管路を4gのプロピレングリコールで共洗いした。その後、さらに撹拌状態を維持して85℃で保持した。以下において「撹拌保持」と言うときは、特に断らない限り、溶液Bの添加終了後に撹拌状態を維持しながら所定の反応温度で保持することを意味する。また、溶液Bの添加終了時点を「還元開始時点」と呼ぶ。
本例で使用した混合溶媒は、アルコール成分であるプロピレングリコールと、有機酸エステル成分である酢酸エチルとの混合液である。溶液Aと溶液Bの両方から供給されるプロピレングリコールおよび共洗に使用したプロピレングリコールの合計量は784.8gであり、その分量のプロピレングリコールの20℃における体積は754.6mLである。一方、酢酸エチルの使用量は45.75gであり、その分量の酢酸エチルの20℃における体積は50.8mLである。プロピレングリコールの体積比をV1、酢酸エチルの体積比をV2とすると、それらは次の値となる。
V1=754.6/(754.6+50.8)
=0.937
V2=50.8/(754.6+50.8)
=0.063
また、プロピレングリコールについてのハンセンの溶解度パラメータの水素結合項をδH1、酢酸エチルについてのそれをδH2とすると、それらの値として次の値を採用することができる。
δH1=21.5(J/cm3)1/2
δH2=7.3(J/cm3)1/2
これらの値を前述の(1)式に代入すると次のようになる。
δALL=δH1×V1+δH2×V2
=21.5×0.937+7.3×0.063
=20.61
V1=754.6/(754.6+50.8)
=0.937
V2=50.8/(754.6+50.8)
=0.063
また、プロピレングリコールについてのハンセンの溶解度パラメータの水素結合項をδH1、酢酸エチルについてのそれをδH2とすると、それらの値として次の値を採用することができる。
δH1=21.5(J/cm3)1/2
δH2=7.3(J/cm3)1/2
これらの値を前述の(1)式に代入すると次のようになる。
δALL=δH1×V1+δH2×V2
=21.5×0.937+7.3×0.063
=20.61
本例で使用した混合溶媒は、δALL値が20.61(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が5.5質量%である。また、混合溶媒中の水酸化リチウムと銀のモル比(LiOH/Agモル比)は0.055である。
前記の撹拌保持中に、還元開始時点を基準として2時間毎に反応容器中の溶液(反応液)を分取して、それらを各経過時間でのサンプル液とした。最終的に撹拌保持を24時間まで継続し、その後、反応液の温度を常温まで冷却した。
(UV−Visによる銀ナノワイヤ生成の評価)
各経過時間でのサンプル液を用いて、以下のようにしてUV−Vis(紫外可視分光法)により吸収スペクトルを測定し、銀ナノワイヤの生成反応の進行の程度を調べた。サンプル液0.3gと純水39.7gを混合してUV−Vis測定用の試験液とした。これを紫外可視分光光度計(島津製作所製、UV−1900)により分析し、UV−Visスペクトルを得た。
各経過時間でのサンプル液を用いて、以下のようにしてUV−Vis(紫外可視分光法)により吸収スペクトルを測定し、銀ナノワイヤの生成反応の進行の程度を調べた。サンプル液0.3gと純水39.7gを混合してUV−Vis測定用の試験液とした。これを紫外可視分光光度計(島津製作所製、UV−1900)により分析し、UV−Visスペクトルを得た。
図2に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。還元開始初期のスペクトルに見られる波長400nm付近のピークは銀のナノ粒子に起因する吸収ピークである。還元開始からの時間が経過していくと350nm付近および370nm付近にピークが現れる。これらはワイヤ状の銀(銀ナノワイヤ)が生成したことに起因する吸収ピークである。そこで、2時間毎の各経過時間におけるスペクトルのうち、350nm付近および370nm付近にピークが生じ始めたことが確認できる最初のスペクトルについての「還元開始時点を基準とする経過時間(h)」を「ワイヤ成長開始時間」と定めた。2時間毎に採取したサンプル液を調べているので、実際には「ワイヤ成長開始時間」の時点以前に銀ナノワイヤの成長が始まっていることになる。
また、銀ナノワイヤの成長が終了に近づくと350nm付近および370nm付近にピークの高さの変化が小さくなる。ここでは、2時間毎の採取回数におけるk回目で採取されたサンプル液に基づくスペクトル(以下「k回目スペクトル」と言う。)と、k+1回目で採取されたサンプル液に基づくスペクトル(以下「k+1回目スペクトル」と言う。)について、370nm位置の吸収量(グラフの縦軸方向の高さ;以下「370nm吸収量」と言う。)を比較して、下記(4)式を最初に満たすk回目のスペクトルについての「還元開始時点を基準とする経過時間(h)」を「ワイヤ成長終了時間」と定めた。
[k+1回目スペクトルの370nm吸収量]≦[k回目スペクトルの370nm吸収量]×1.1 …(4)
ここで、kは自然数である。
上記(4)式を満たすようになったk回目のサンプリング時点では、既にワイヤの新たな成長は非常に少なくなっていると考えられる。上記のように定義される「ワイヤ成長終了時間」で還元反応を停止させても、得られる銀ナノワイヤの寸法形状や収率に大きな影響はない。むしろ、その時点で終了とする方が生産性の向上には好都合である。
[k+1回目スペクトルの370nm吸収量]≦[k回目スペクトルの370nm吸収量]×1.1 …(4)
ここで、kは自然数である。
上記(4)式を満たすようになったk回目のサンプリング時点では、既にワイヤの新たな成長は非常に少なくなっていると考えられる。上記のように定義される「ワイヤ成長終了時間」で還元反応を停止させても、得られる銀ナノワイヤの寸法形状や収率に大きな影響はない。むしろ、その時点で終了とする方が生産性の向上には好都合である。
図2中には、「ワイヤ成長開始時間」に対応するスペクトルを太い実線で示し、「ワイヤ成長終了時間」に対応するスペクトルを太い破線で示してある(以下の各例におけるUV−Visスペクトル図において同じ)。本例では、ワイヤ成長開始時間は12時間、ワイヤ成長終了時間は18時間であった。
(銀ナノワイヤの寸法形状の測定)
撹拌保持を24時間行って常温まで冷却された反応液から20gのサンプル液を採取し、これを純水170gで希釈したのち3000rpm、15分の遠心分離を行った。濃縮物と上澄みが観察されたため、上澄み部分は除去し、濃縮物を回収した。その後、回収された濃縮物に170gの純水を添加したのち3000rpmで15分の遠心分離を施し、濃縮物を回収する処理を3回行った。得られた濃縮物を純水に分散させ、銀ナノワイヤ分散液を得た。
撹拌保持を24時間行って常温まで冷却された反応液から20gのサンプル液を採取し、これを純水170gで希釈したのち3000rpm、15分の遠心分離を行った。濃縮物と上澄みが観察されたため、上澄み部分は除去し、濃縮物を回収した。その後、回収された濃縮物に170gの純水を添加したのち3000rpmで15分の遠心分離を施し、濃縮物を回収する処理を3回行った。得られた濃縮物を純水に分散させ、銀ナノワイヤ分散液を得た。
平均長さLMを以下のようにして測定した。上記の銀ナノワイヤ分散液を2−プロパノールで銀濃度が0.002質量%となるように希釈し、その液6μLをSi製の基板上に乗せた後、160℃で1分間乾燥させることにより、SEM観察用サンプルを得た。得られたサンプルを走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製;JSM−IT100 InTouchScope)により、加速電圧5kV、倍率1,000倍で観察した。無作為に選んだ3以上の視野について、視野内で全長が確認できるすべてのワイヤを測定対象として、ソフトウェア(ドクターカンバス)を用いて、上述の定義に従って平均長さLMを求めた。
平均直径DMを以下のようにして測定した。上記の銀ナノワイヤ分散液をTEM用の観察台にとり、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製;JEM-1011)により、加速電圧100kV、倍率40,000倍で明視野像の観察を行って観察画像を採取し、正確に直径を測定するために採取された元画像を2倍のサイズに拡大した上で、ソフトウェア(Motic Image Plus2.1S)を用いて、上述の定義に従って平均直径DMを求めた。
上記の平均長さLMおよび平均直径DMに基づいて、上述の(2)式により平均アスペクト比AMを求めた。
なお、ここでは撹拌保持を24時間行って得られた反応液中の銀ナノワイヤについての寸法形状を測定したが、その寸法形状は、上記のように定義される「ワイヤ成長終了時間」で還元反応を止めて得られた反応液中の銀ナノワイヤの寸法形状と概ね同等であることが別途追試験により確認されている(以下の各例において同じ)。
以上の結果を、以下の各例とともに表1に示す。
なお、ここでは撹拌保持を24時間行って得られた反応液中の銀ナノワイヤについての寸法形状を測定したが、その寸法形状は、上記のように定義される「ワイヤ成長終了時間」で還元反応を止めて得られた反応液中の銀ナノワイヤの寸法形状と概ね同等であることが別途追試験により確認されている(以下の各例において同じ)。
以上の結果を、以下の各例とともに表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、溶液Aを作製する際のプロピレングリコール量771.8gを816.7gに変更し、酢酸エチルを混合しなかったことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。すなわち本例では、アルコールと有機酸エステルの混合溶媒ではなく、アルコール単独の溶媒を用いて銀ナノワイヤの合成を行った。本例で使用した溶媒は、δALL値が21.50(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が0質量%である。図3に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
実施例1において、溶液Aを作製する際のプロピレングリコール量771.8gを816.7gに変更し、酢酸エチルを混合しなかったことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。すなわち本例では、アルコールと有機酸エステルの混合溶媒ではなく、アルコール単独の溶媒を用いて銀ナノワイヤの合成を行った。本例で使用した溶媒は、δALL値が21.50(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が0質量%である。図3に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
[比較例2]
実施例1において、溶液Aを作製する際のプロピレングリコール量771.8gを796.8gに、酢酸エチル量45.75gを20.80gにそれぞれ変更したことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が21.09(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が2.5質量%である。図4に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
実施例1において、溶液Aを作製する際のプロピレングリコール量771.8gを796.8gに、酢酸エチル量45.75gを20.80gにそれぞれ変更したことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が21.09(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が2.5質量%である。図4に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
[実施例2]
実施例1において、溶液Aを作製する際のプロピレングリコール量771.8gを746.9gに、酢酸エチル量45.75gを70.70gにそれぞれ変更したことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が20.12(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が8.5質量%である。図5に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
実施例1において、溶液Aを作製する際のプロピレングリコール量771.8gを746.9gに、酢酸エチル量45.75gを70.70gにそれぞれ変更したことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が20.12(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が8.5質量%である。図5に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
[実施例3]
実施例1において、溶液Aを作製する際のプロピレングリコール量771.8gを734.4gに、酢酸エチル量45.75gを83.20gにそれぞれ変更したことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が19.88(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が10質量%である。図6に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
実施例1において、溶液Aを作製する際のプロピレングリコール量771.8gを734.4gに、酢酸エチル量45.75gを83.20gにそれぞれ変更したことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が19.88(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が10質量%である。図6に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
[実施例4]
実施例1において、溶液Aを作製する際のプロピレングリコール量771.8gを692.8gに、酢酸エチル量45.75gを124.8gにそれぞれ変更したことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が19.09(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が15質量%である。図7に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
実施例1において、溶液Aを作製する際のプロピレングリコール量771.8gを692.8gに、酢酸エチル量45.75gを124.8gにそれぞれ変更したことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が19.09(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が15質量%である。図7に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
[実施例5]
実施例1において、溶液Aを作製する際のプロピレングリコール量771.8gを651.2gに、酢酸エチル量45.75gを166.4gにそれぞれ変更したことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が18.32(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が20質量%である。図8に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
実施例1において、溶液Aを作製する際のプロピレングリコール量771.8gを651.2gに、酢酸エチル量45.75gを166.4gにそれぞれ変更したことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が18.32(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が20質量%である。図8に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
[実施例6]
実施例2において、溶液Aを作製する際の有機酸エステルを酢酸エチルに代えてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(東京化成工業株式会社製)としたことを除き、実施例2と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が20.43(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が8.5質量%である。図9に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
実施例2において、溶液Aを作製する際の有機酸エステルを酢酸エチルに代えてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(東京化成工業株式会社製)としたことを除き、実施例2と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が20.43(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が8.5質量%である。図9に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
[実施例7]
実施例2において、溶液Aを作製する際の有機酸エステルを酢酸エチルに代えてジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(東京化成工業株式会社製)としたことを除き、実施例2と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が20.32(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が8.5質量%である。図10に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
実施例2において、溶液Aを作製する際の有機酸エステルを酢酸エチルに代えてジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(東京化成工業株式会社製)としたことを除き、実施例2と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が20.32(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が8.5質量%である。図10に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
[実施例8]
実施例2において、溶液Aを作製する際の有機酸エステルを酢酸エチルに代えてエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(東京化成工業株式会社製)としたことを除き、実施例2と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が20.14(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が8.5質量%である。図11に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
実施例2において、溶液Aを作製する際の有機酸エステルを酢酸エチルに代えてエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(東京化成工業株式会社製)としたことを除き、実施例2と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が20.14(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が8.5質量%である。図11に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
[実施例9]
実施例2において、溶液Aを作製する際の水酸化リチウム添加量0.0521gを0.0806gに変更したことを除き、実施例2と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が20.12(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が8.5質量%である。また、混合溶媒中の水酸化リチウムと銀のモル比(LiOH/Agモル比)は0.085である。図12に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
実施例2において、溶液Aを作製する際の水酸化リチウム添加量0.0521gを0.0806gに変更したことを除き、実施例2と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が20.12(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が8.5質量%である。また、混合溶媒中の水酸化リチウムと銀のモル比(LiOH/Agモル比)は0.085である。図12に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
[実施例10]
実施例1において、溶液Aを作製する際のプロピレングリコール量771.8gを484.8gに、酢酸エチル量45.75gを332.8gにそれぞれ変更し、水酸化リチウム添加量0.0521gを0.0806gに変更したことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が15.32(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が40質量%である。図13に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
実施例1において、溶液Aを作製する際のプロピレングリコール量771.8gを484.8gに、酢酸エチル量45.75gを332.8gにそれぞれ変更し、水酸化リチウム添加量0.0521gを0.0806gに変更したことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が15.32(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が40質量%である。図13に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
[実施例11]
実施例1において、溶液Aを作製する際のプロピレングリコール量771.8gを318.5gに、酢酸エチル量45.75gを499.1gにそれぞれ変更し、水酸化リチウム添加量0.0521gを0.0806gに変更したことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が12.50(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が60質量%である。図14に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
実施例1において、溶液Aを作製する際のプロピレングリコール量771.8gを318.5gに、酢酸エチル量45.75gを499.1gにそれぞれ変更し、水酸化リチウム添加量0.0521gを0.0806gに変更したことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。本例で使用した混合溶媒は、δALL値が12.50(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が60質量%である。図14に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
[比較例3]
比較例1において、反応温度を85℃から95℃に変更したことを除き、比較例1と同様の条件で実験を行った。本例で使用した溶媒は、δALL値が21.50(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が0質量%である。図15に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
比較例1において、反応温度を85℃から95℃に変更したことを除き、比較例1と同様の条件で実験を行った。本例で使用した溶媒は、δALL値が21.50(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が0質量%である。図15に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
[比較例4]
比較例1において、溶液Aを作製する際の水酸化リチウム添加量0.0521gを0.0806gに変更したことを除き、比較例1と同様の条件で実験を行った。本例で使用した溶媒は、δALL値が21.50(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が0質量%である。図16に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
比較例1において、溶液Aを作製する際の水酸化リチウム添加量0.0521gを0.0806gに変更したことを除き、比較例1と同様の条件で実験を行った。本例で使用した溶媒は、δALL値が21.50(J/cm3)1/2、「アルコールと有機酸エステルの総量に対する有機酸エステルの総量」が0質量%である。図16に本例についてのUV−Visスペクトルの経時変化を例示する。
表1からわかるように、反応温度を85℃と共通にした例において、アルコールと本発明で規定する量の有機酸エステルとの混合溶媒を用いた各実施例では、有機酸エステルを混合していないアルコール単独の溶媒を用いた比較例1および比較例4に対して、「ワイヤ成長開始時間」および「ワイヤ成長終了時間」が短縮している。特にδALL値が20.00以下である混合溶媒を用いた例では銀ナノワイヤ合成時間の短縮効果が大きい。実施例10、11は有機酸エステルの混合量を大幅に増加させた例であるが、これらにおいても銀ナノワイヤ合成時間の短縮効果が認められた。比較例2は有機酸エステルの混合量が不十分であったので銀ナノワイヤ合成時間の短縮効果は認められなかった。比較例3は反応温度を他の例より高い95℃とした例である。反応温度を高めると反応速度が速くなるので、「ワイヤ成長開始時間」および「ワイヤ成長終了時間」も短くなる。しかし、平均直径30nm以下の細いワイヤを合成することができなかった。
Claims (7)
- 銀化合物、有機保護剤が溶解している有機溶媒中で、銀をワイヤ状に還元析出させる工程を有する銀ナノワイヤの製造法において、
前記有機保護剤としてビニルピロリドン構造単位を持つポリマーを使用すること、
前記有機溶媒として1種以上のアルコールと1種以上の有機酸エステルとの混合溶媒を使用すること、
前記混合溶媒を構成する各化合物についてのハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δHに基づいて下記(1)式により算出されるδALL値が12.50〜20.70(J/cm3)1/2である組成の当該混合溶媒中で前記還元析出を進行させること、
を特徴とする銀ナノワイヤの製造法。
δALL=δH1×V1+δH2×V2+・・・+δHn×Vn …(1)
ここで、nは混合溶媒を構成する化合物の数、δHi(iは1からnまでの番号。以下同様。)は化合物iについてのハンセンの溶解度パラメータの水素結合項δH((J/cm3)1/2)、Viは化合物iの体積比(ただし、V1+V2+・・・+Vn=1)である。 - 請求項1に記載の製造法において、δALL値が16.50〜20.70(J/cm3)1/2である混合溶媒を使用し、平均直径30nm以下、かつ下記(2)式で定義される平均アスペクト比AMが300以上である銀ナノワイヤを還元析出させる銀ナノワイヤの製造法。
AM=LM/DM …(2)
ここで、LMは上記平均長さをnmの単位で表した値、DMは上記平均直径をnmの単位で表した値である。 - 前記アルコールとして、1分子中の炭素数が2〜4である多価アルコールの1種以上を使用する請求項1または2に記載の銀ナノワイヤの製造法。
- 前記有機酸エステルとして、酢酸エチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルの1種以上を使用する請求項1〜3のいずれか1項に記載の銀ナノワイヤの製造法。
- 前記ポリマーが、PVP(ポリビニルピロリドン)またはビニルピロリドンと他のモノマーとのコポリマーである請求項1〜4のいずれか1項に記載の銀ナノワイヤの製造法。
- 前記ポリマーが、ビニルピロリドンと、ジアリルジメチルアンモニウム塩、エチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、および2−ジエチルアミノエチルメタクリレートから選ばれる1種または2種以上のモノマーとの重合組成を有するものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の銀ナノワイヤの製造法。
- 前記ポリマーは、重量平均分子量Mwが30,000〜300,000である請求項1〜6のいずれか1項に記載の銀ナノワイヤの製造法。
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CN113053585A (zh) * | 2021-03-12 | 2021-06-29 | 昆明理工大学 | 一种高导电率柔性透明导电薄膜的制备方法 |
DE112021004413T5 (de) | 2020-09-23 | 2023-06-15 | Rohm Co. Ltd. | Halbleitervorrichtung, Halbleitermodul, Motoransteuerungsvorrichtung und Fahrzeug |
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2019
- 2019-03-27 JP JP2019061978A patent/JP2020158857A/ja active Pending
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