JP2020190025A - 銀ナノワイヤの製造法 - Google Patents

銀ナノワイヤの製造法 Download PDF

Info

Publication number
JP2020190025A
JP2020190025A JP2019097479A JP2019097479A JP2020190025A JP 2020190025 A JP2020190025 A JP 2020190025A JP 2019097479 A JP2019097479 A JP 2019097479A JP 2019097479 A JP2019097479 A JP 2019097479A JP 2020190025 A JP2020190025 A JP 2020190025A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
silver
oxygen
silver nanowires
gas
solution
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2019097479A
Other languages
English (en)
Inventor
征司 中山
Seiji Nakayama
征司 中山
王高 佐藤
Kimitaka Sato
王高 佐藤
健介 柳田
Kensuke YANAGIDA
健介 柳田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dowa Electronics Materials Co Ltd
Original Assignee
Dowa Electronics Materials Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dowa Electronics Materials Co Ltd filed Critical Dowa Electronics Materials Co Ltd
Priority to JP2019097479A priority Critical patent/JP2020190025A/ja
Publication of JP2020190025A publication Critical patent/JP2020190025A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Manufacture Of Metal Powder And Suspensions Thereof (AREA)

Abstract

【課題】導電フィラーに有用な寸法形状の銀ナノワイヤの収率を向上させる効果が高く、工業的規模での実施が容易な銀ナノワイヤの合成技術を提供する。【解決手段】銀化合物、ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーが溶解している、アルコールを主成分とする溶液中で、銀をワイヤ状に還元析出させる銀ナノワイヤの製造法において、前記還元析出の反応温度を90℃以下とすること、酸素含有ガスを、前記溶液中に導入しながら銀を還元析出させる過程を含むこと、を特徴とする銀ナノワイヤの製造法。【選択図】図5

Description

本発明は、透明導電膜の導電素材(フィラー)として有用な銀ナノワイヤを有機溶媒中で効率良く合成するための銀ナノワイヤの製造方法に関する。
本明細書では、太さが200nm程度以下の微細な金属ワイヤを「ナノワイヤ(nanowire(s)」と呼ぶ。
銀ナノワイヤは、透明基材に導電性を付与するための導電素材として有望視されている。銀ナノワイヤを含有する塗工液(銀ナノワイヤインクと呼ばれる場合もある。)をガラス、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)などの透明基材に塗布したのち、液状成分を蒸発等により除去すると、銀ナノワイヤは当該基材上で互いに接触し合うことにより導電ネットワークを形成するので、透明導電膜を実現することができる。
電子機器のタッチパネル等に使用される透明導電膜には、導電性が良好であることに加え、ヘイズの少ないクリアな視認性が要求される。銀ナノワイヤを導電素材とする透明導電膜において導電性と視認性を高いレベルで両立させるためには、できるだけ細く、かつ長い銀ナノワイヤを適用することが有利となる。
従来、銀ナノワイヤの合成法として、例えば、エチレングリコール等の多価アルコール溶媒に銀化合物、有機保護剤であるポリマーを溶解させ、ハロゲン化合物の存在下において、溶媒である多価アルコールの還元力を利用して線状形状の金属銀を析出させる手法(以下、「アルコール溶媒還元法」と言う。)が知られている。最近では細い銀ナノワイヤの合成技術が進展し、アルコール溶媒還元法による銀ナノワイヤの生産は既に実用段階にある。ただし、銀ナノワイヤを用いた透明導電膜の本格的な普及を図るためには、導電フィラーとして有効な細くて長いワイヤの収率を、工業的規模での生産において十分に向上させることができる技術の確立が不可欠である。
非特許文献1には、20mL規模でのアルコール溶媒還元法において、エチレングリコール溶媒の沸点(198℃)付近の温度で銀ナノワイヤを合成させる際に、溶媒中に空気や窒素(N2)ガスを吹き込む効果を調べるラボ実験が記載されている。それによると、沸騰状態での合成時に空気を吹き込むとワイヤ状の銀の生成率が向上するが、沸点より低い180℃になると上記の向上効果は得られないという。この実験でのガスの吹き込み流量は150sccmである(34頁左欄下から4行目)。その吹き込み流量を溶液1kg当たりに換算すると7〜8NL/min程度となる。このような多量のガスを高温沸騰状態の液中に吹き込む銀ナノワイヤ合成技術は、工業的規模での大量生産において実用性に乏しい。
特許文献1には、アルコール溶媒還元法で銀ナノワイヤを合成する際、反応容器に窒素などの不活性ガスをパージすることや、反応混合物中に不活性ガスを吹き込むこと(スパージすること)が、合成される銀ナノワイヤの長さ分布をシャープにするうえで有効であることが教示されている(図11)。また、窒素ガスのパージやスパージによって、合成される銀ナノワイヤの直径が小さくなる傾向が見られ、40nm程度の太さの銀ナノワイヤが得られたデータが示されている(図12B)。
特表2013−503260号公報
Xinling Tang, et al., Colloids and Surfaces A: Physicochem. Eng. Aspects 338 (2009) 33-39
アルコール溶媒還元法によって銀ナノワイヤを合成する際には、導電フィラーとして有用な所定の長さを有するワイヤに混じって、粒子状あるいは長さの短いワイヤ状の金属銀も生成する。反応後の液から固形分を抽出した後、公知のクロスフローろ過技術などを適用することにより、導電フィラーに有用な寸法形状の銀ナノワイヤを回収することができる。合成時に粒子状あるいは長さの短いワイヤ状の金属銀が多く生成すると、後工程で回収される有用な寸法形状の銀ナノワイヤの歩留りが悪くなる。上述のように、銀ナノワイヤを用いた透明導電膜の普及を図るためには、導電フィラーとして有用な銀ナノワイヤの歩留り、すなわち「合成時の仕込み銀量」に対する「有用な銀ナノワイヤ」の収率を向上させることが重要である。特許文献1に開示される不活性ガスのパージあるいはスパージは、細い径の銀ナノワイヤを合成するうえでは有利となる。しかし、短いワイヤ状生成物の生成量が増える傾向があり、有用な銀ナノワイヤの収率を向上させることに関しては不十分であった。
本発明は、導電フィラーに有用な寸法形状の銀ナノワイヤの収率を向上させる効果が高く、工業的規模での実施が容易な銀ナノワイヤの合成技術を提供することを第1の課題とする。その上で更に、細いワイヤの合成にも有利な合成技術を提供することを第2の課題とする。
発明者らは研究の結果、上記第1の課題を達成するためには、アルコール溶媒還元法において、還元時の溶液中に空気などの酸素含有ガスを導入することが極めて有効であることを見いだした。また、上記第2の課題を達成するためには、前記の酸素含有ガスとして露点の低いもの、すなわち水蒸気含有量の少ないものを適用することが有効であることを見いだした。本発明はこのような知見に基づいて完成したものである。
本明細書では以下の発明を開示する。
[1]銀化合物、ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーが溶解している、アルコールを主成分とする溶液中で、銀をワイヤ状に還元析出させる銀ナノワイヤの製造法において、
前記還元析出の反応温度を90℃以下とすること、
酸素含有ガスを前記溶液中に導入しながら銀を還元析出させる過程を含むこと、
を特徴とする銀ナノワイヤの製造法。
[2]前記酸素含有ガスは酸素濃度が8体積%以上である上記[1]に記載の銀ナノワイヤの製造法。
[3]前記酸素含有ガスは、酸素8〜85体積%を含み、残部が不活性ガスを主成分とする気体成分である、上記[1]に記載の銀ナノワイヤの製造法。
[4]前記酸素含有ガスは、酸素8〜55体積%を含み、残部が不活性ガスを主成分とする気体成分であり、露点が−10℃以下である、上記[1]に記載の銀ナノワイヤの製造法。
[5]前記還元析出の反応時間を5時間以上とし、前記還元析出の反応開始時点から反応開始1時間経過時点までの前記酸素含有ガスの平均導入流量を、前記溶液の質量1kg当たりに対する換算で0.1〜2.5NL/minとする、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の銀ナノワイヤの製造法。
[6]前記アルコールとして、1分子中の炭素数が2〜4である多価アルコールの1種以上を使用する上記[1]〜[5]のいずれかに記載の銀ナノワイヤの製造法。
[7]前記ポリマーが、PVP(ポリビニルピロリドン)またはビニルピロリドンと他のモノマーとのコポリマーである上記[1]〜[6]のいずれかに記載の銀ナノワイヤの製造法。
[8]前記ポリマーが、ビニルピロリドンと、ジアリルジメチルアンモニウム塩、エチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、および2−ジエチルアミノエチルメタクリレートから選ばれる1種または2種以上のモノマーとの重合組成を有するものである上記[1]〜[6]のいずれかに記載の銀ナノワイヤの製造法。
[9]前記ポリマーは、重量平均分子量Mwが30,000〜300,000である上記[1]〜[8]のいずれかに記載の銀ナノワイヤの製造法。
上記のNL(ノルマルリットル)は、0℃、1013hPa(1atm)における気体の体積に換算した量である。「アルコールを主成分とする溶液」は、溶液を構成する物質(溶けている溶質を含む)の50質量%以上がアルコールである溶液を意味する。「ビニルピロリドン構造単位」は図1に示す構造式で表される。本明細書で「沸点」と言うときは、特に断らない限り外圧が1013hPa(1atm)であるときの値である。「露点」は、1013hPaにおける水の凝結温度である。
銀ナノワイヤの平均直径、平均長さ、平均アスペクト比は以下の定義に従う。
[平均直径DM
透過型電子顕微鏡(TEM)による明視野観察画像上で、ある1本の銀ナノワイヤにおける太さ方向両側の輪郭間距離を、そのワイヤの直径と定義する。各ワイヤは全長にわたってほぼ均等な太さを有しているとみなすことができる。従って、太さの計測は他のワイヤと重なっていない部分を選択して行うことができる。1つの視野を写した銀ナノワイヤについてのTEMによる明視野観察画像(以下「TEM画像」という。)において、その画像内に観察される銀ナノワイヤのうち、他のワイヤと完全に重なって直径の計測が困難であるワイヤを除く全てのワイヤの直径を測定する、という操作を無作為に選んだ複数の視野について行い、合計100本以上の異なる銀ナノワイヤの直径を求め、個々の銀ナノワイヤの直径の平均値を算出し、その値を平均直径DMと定義する。
[平均長さLM
電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)による観察画像上で、ある1本の銀ナノワイヤの一端から他端までのトレース長さを、そのワイヤの長さと定義する。顕微鏡画像上に存在する個々の銀ナノワイヤの長さを平均した値を、平均長さLMと定義する。平均長さを算出するためには、測定対象のワイヤの総数を100以上とする。
[平均アスペクト比]
上記の平均直径DMおよび平均長さLMを下記(2)式に代入することにより平均アスペクト比AMを算出する。ただし、(2)式に代入するDM、LMはいずれもnmの単位で表された値とする。
M=LM/DM …(2)
本発明に従えば、アルコール溶媒還元法において液中に酸素含有ガスを導入することにより、粒子状や長さの短いワイヤ状の金属銀の生成量が低減する。その結果、後工程においてクロスフローろ過により透明導電膜のフィラーとして有用な長いワイヤを回収したとき、回収される長いワイヤの収率を大幅に向上させることが可能となる。酸素含有ガスとして空気の適用が可能であり、還元反応温度も90℃以下と低く設定することが可能であることから、本発明は銀ナノワイヤの工業的な大量生産プロセスにおいて実施化が容易である。また、酸素含有ガスとして露点の低いガスを使用すると、平均直径の細いワイヤの合成に有利となる。本発明は、銀ナノワイヤを導電素材に用いた透明導電膜の普及に寄与しうる。
ビニルピロリドン構造単位の構造式。 クロスフローろ過に用いる管路構成を模式的に示した図。 液中導入ガスの酸素含有量とクロスフローろ過後における銀ナノワイヤの平均直径の関係を示すグラフ。 液中導入ガスの酸素含有量とクロスフローろ過後における銀ナノワイヤの平均長さの関係を示すグラフ。 液中導入ガスの酸素含有量とクロスフローろ過後における銀ナノワイヤの収率の関係を示すグラフ。
[有機保護剤]
本発明で対象とするアルコール溶媒還元法では、溶媒中に溶解させておく有機保護剤としてビニルピロリドン構造単位を持つポリマーを使用する。ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーとして、PVP(ポリビニルピロリドン)や、ビニルピロリドンと他のモノマーとのコポリマーが対象となる。後者のコポリマーとしては、例えば、ビニルピロリドンと、ジアリルジメチルアンモニウム塩、エチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミドおよびN−tert−ブチルマレイミドから選ばれる1種または2種以上のモノマーとの重合組成を有するコポリマーが挙げられる。コポリマーの重合組成は、ビニルピロリドン以外のモノマー0.1〜10質量%、残部ビニルピロリドンであることが好ましい。
有機保護剤に使用するポリマーの重量平均分子量Mwは30,000〜300,000の範囲にあることが好ましく、30,000〜150,000の範囲であることがより好ましい。MwはGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により求めることができる。
[溶媒]
アルコールを主体とする有機溶媒を使用して還元析出を進行させる。アルコールとしては、アルコール溶媒還元法において従来から使用されているアルコールが適用できる。例えば、1分子中の炭素数が2〜4である多価アルコールの1種以上を使用することが望ましい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリンの1種以上を使用すればよい。本発明の効果を阻害しない範囲でアルコール以外の有機溶媒成分を含有しても構わない。例えば、有機酸エステルやエーテルを含有させることができる。溶質を含めた溶液に占めるアルコール成分の含有量は50質量%以上とすることが好ましく、80質量%以上とすることがより好ましい。
[銀ナノワイヤの合成]
混合溶媒中に存在させる前記ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーの量と、還元析出に使用する銀の総量との質量割合「ポリマー/銀質量比」は0.5〜5.0の範囲とすることが好ましい。あまり多量のポリマーが存在する溶媒を使用すると、合成された銀ナノワイヤの表面に付着するポリマー量が過剰となる。ポリマー付着量が過剰である銀ナノワイヤを透明導電膜に適用するとワイヤ同士の接点抵抗が大きくなってしまい、導電性の高い透明導電膜を得る上では不利となる。
銀ナノワイヤの合成に使用する銀源としては、上述の混合溶媒に可溶な銀化合物を使用する。例えば、硝酸銀、酢酸銀、酸化銀、塩化銀などが挙げられるが、溶媒に対する溶解性やコストを考慮すると硝酸銀(AgNO3)が使いやすい。銀化合物、ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーの他に、塩化物、臭化物が溶解している溶媒中で還元析出を進行させることが好ましい。更にアルカリ金属水酸化物、アルミニウム塩が溶解している溶媒中で還元析出を進行させることがより好ましい。上記各物質のうち、例えば銀化合物、塩化物、臭化物、アルミニウム塩などは、溶液の状態で反応容器中に添加してもよい。その場合、各物質の溶液を作製するための溶媒としては、アルコール溶媒の中でも極性が高く、溶解性の高い溶媒を用いることが適している。例えば、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)が挙げられる。
細いワイヤを安定して合成するためには反応温度を低めに設定することが有利となりやすい。例えば、平均直径が30nm以下の銀ナノワイヤを合成する場合は反応温度を90℃以下とすることが望ましい。ただし、反応温度が常温付近より低いと還元反応時間の低減効果が不十分となりやすい。反応温度は45℃以上の範囲で設定することが好ましく、50℃以上とすることがより好ましい。90℃以下の反応温度にて銀ナノワイヤを十分に成長させるには、5時間以上の還元析出反応時間を確保することが望ましい。
溶媒の総使用量に対する銀の総使用量は、混合溶媒1L当たり銀0.01〜0.1モルの範囲とすることが好ましい。溶媒の総使用量に対する塩化物の総使用量は、溶媒1L当たりCl量として0.00001(1×10-5)〜0.01モルの範囲とすることが好ましく、0.00005(5×10-5)〜0.01モルの範囲とすることがより好ましい。溶媒の総使用量に対する臭化物の総使用量は、溶媒1L当たりBr量として0.000001(1×10-6)〜0.001(1×10-3)モルの範囲とすることが好ましく、0.000005(5×10-6)〜0.001(1×10-3)モルの範囲とすることがより好ましい。溶媒の総使用量に対するアルカリ金属水酸化物の総使用量は、溶媒1L当たり水酸化物量として0.0001(1×10-4)〜0.01(1×10-2)モルの範囲とすることが好ましい。溶媒の総使用量に対するアルミニウム塩の総使用量は、溶媒1L当たりAl量として0.00001(1×10-5)〜0.001(1×10-3)モルの範囲とすることが好ましい。
[酸素含有ガスの導入]
本発明では、このようなアルコール溶媒還元法において、還元析出が進行している溶液中に酸素含有ガスを導入する。種々検討の結果、酸素含有ガスを導入することによって、後工程でクロスフローろ過を行って回収される銀ナノワイヤの、合成に使用した仕込み銀量に対する収率を大幅に向上させる効果が生じることがわかった。その理由については現時点で不明であるが、酸素の存在によって、新たな銀の結晶核を生成させるために必要なアルコールの還元力が緩和され、溶液中に存在する銀イオンは新たな析出サイトを形成するよりも既に成長しつつあるワイヤの成長面へ析出しやすくなる傾向が、酸素を導入しない場合と比べ相対的に大きくなり、結果的に粒子状あるいは長さの短いワイヤ状の生成物の個数が大幅に減少するのではないかと推測される。以下において、単に「収率」と言うときは、「クロスフローろ過を行って回収されるワイヤ」についての「合成に使用した仕込み銀量」に対する収率を意味する。ここで、酸素含有ガスは、気体成分の酸素を含有するガスである。気体成分の酸素としてはO2、O3(オゾン)が挙げられる。
溶液中への酸素含有ガスの導入は、幅広い酸素含有量範囲で収率の向上効果を奏する。気体成分の酸素としてはO2を使用する場合、O2濃度が8体積%以上の酸素含有ガスを使用することがより効果的である。純酸素(100体積%O2)を使用した場合でも収率の向上は認められる。酸素含有ガスを構成する酸素以外のガス成分としては、「不活性ガスを主成分とする気体成分」を適用することができる。酸素含有ガスを成分組成で示すと、O2:1〜100体積%、不活性ガス成分:0〜99体積%、他のガス成分:0〜5体積%である酸素含有ガスを挙げることができる。O2:8〜100体積%、不活性ガス成分:0〜92体積%、他のガス成分:0〜5体積%である酸素含有ガスを採用することがより好ましい。ここで「不活性ガス成分」は、希ガス(He、Ne、Ar、Krなど)、窒素(N2)、二酸化炭素(CO2)をいう。「他のガス成分」は、本発明の効果を阻害しない限り特にこだわらないが、例えば大気(自然界の空気)を構成する気体成分のうちO2と不活性ガス成分を除いた気体成分とすることができる。水蒸気(H2Oガス)は「他のガス成分」に属する。
また特に、O2:1〜100体積%、N2:0〜99体積%、他のガス成分:0〜5体積%である成分組成の酸素含有ガスを適用してもよい。O2:8〜100体積%、N2:0〜92体積%、他のガス成分:0〜5体積%である成分組成の酸素含有ガスを適用することがより好ましい。この場合、希ガスおよび二酸化炭素は「他のガス成分」に属する。酸素含有ガスの全部または一部を構成するガスとして、空気を使用することができる。空気を使用して酸素含有量を調整する場合は、空気と、窒素ガスあるいは酸素ガスとを混合すればよい。
酸素含有ガスとして純酸素を用いた場合、同じ条件でクロスフローろ過を行った際に回収される銀ナノワイヤの寸法形状を比べると、平均長さが短くなる傾向が見られた。回収されるワイヤの平均長さを重視する場合には、導入する酸素含有ガスの酸素含有量は8〜85体積%の範囲とすることがより好ましい。この場合の成分組成を例示すると、O2:8〜85体積%、不活性ガス成分:15〜92体積%、他のガス成分:0〜5体積%である酸素含有ガスを挙げることができる。また特に、O2:8〜85体積%、N2:15〜92体積%、他のガス成分:0〜5体積%である成分組成の酸素含有ガスを適用してもよい。ここで、「不活性ガス成分」、「他のガス成分」の意味は上述の通りである。
透明導電膜において同じ導電性を確保する場合、使用する銀ナノワイヤの平均直径が細いほどヘイズの低減には有利となる。例えばワイヤの平均直径が10%程度減少するだけでも、ヘイズの低減効果は大きい。発明者らは、合成される銀ナノワイヤの直径を小さくするためには、酸素含有ガスの露点を低くすることが有効であることを見いだした。具体的には、酸素含有量が8〜55体積%であり、かつ露点が−10℃以下である酸素含有ガスを使用することが、細い銀ナノワイヤの合成に極めて有効である。この場合の酸素含有ガスを成分組成によって例示すると、O2:8〜55体積%、不活性ガス成分:45〜92体積%、他のガス成分:0〜5体積%であり、露点が−10℃以下である酸素含有ガスを挙げることができる。また特に、O2:8〜55体積%、N2:45〜92体積%、他のガス成分:0〜5体積%であり、露点が−10℃以下である酸素含有ガスを適用してもよい。ここで、「不活性ガス成分」、「他のガス成分」の意味は上述の通りである。露点が−45℃以下であるものを使用することがより好ましい。
酸素含有ガスの導入は、還元析出の反応開始時点より前に開始することができる。還元析出の反応開始時点から反応開始1時間経過時点までの前記酸素含有ガスの平均導入流量が、前記溶液の質量1kg当たりに対する換算で0.1〜2.5NL/minとなるように行うことが望ましい。0.2〜1.5NL/minの範囲としてもよい。すなわち、還元反応の比較的初期の段階で十分な量の酸素含有ガスを液中に供給することがワイヤの収率を向上させる上でより効果的である。この場合、還元反応の開始時点、あるいはそれより前にガス導入を開始することが好ましいが、還元析出の反応開始時点より後にガスの導入を開始することも可能である。液中へのガスの導入は、連続的または間欠的に継続させることができる。還元析出の反応開始時点より後にガスの導入を開始することも可能である。また、ガス導入の終了時期は反応開始1時間経過時点以降とすることが好ましい。還元反応を終了させるまでガスの導入を継続させてもよい。
液中にガスを導入するための導入孔は、ガスを供給する管の単純な開口端としてもよいし、ノズルとしてもよいし、細かい気泡を生成させるフィルタとしてもよい。
[比較例1]
(銀ナノワイヤ合成)
常温にて、プロピレングリコール(和光純薬工業社製、特級)8116.1g中に、塩化リチウム(アルドリッチ社製)含有量が10質量%であるプロピレングリコール溶液3.986g、臭化カリウム(和光純薬工業社製)0.0476g、水酸化リチウム(アルドリッチ社製)0.711g、硝酸アルミニウム九水和物(キシダ化成社製)含有量が20質量%であるプロピレングリコール溶液4.994g、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト(diallyldimethylammonium nitrate)のコポリマー(ビニルピロリドン99質量%、ジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト1質量%の重合組成、重量平均分子量75,000)の粉体83.875gを添加して溶解させ、溶液Aとした。
これとは別の容器を用いて、常温にて、プロピレングリコール95.70gと純水8.00gの混合溶液中に、硝酸銀67.96gを添加して、27℃で撹拌して溶解させ、溶液Bとした。
本例では、硝酸銀に含まれる銀量に対する塩化リチウム量のモル比LiCl/Agは0.0235、硝酸銀に含まれる銀量に対する臭化カリウム量のモル比KBr/Agは0.0010、硝酸銀に含まれる銀量に対する水酸化リチウム量のモル比LiOH/Agは0.0750、硝酸銀に含まれる銀量に対する硝酸アルミニウム9水和物に含まれるアルミニウム量のモル比Al/Agは0.0067となる。
上記の溶液Aを反応容器に入れた。反応容器内には液中にガスを供給するためのガラス管が設置されている。ここではガラス管の単純な開口端を液中に配置し、その開口端をガス導入孔として、露点が−50℃以下である窒素(N2)ガスを液中に導入した。以下、この種のガス導入孔の形態を「ガラス単管」と呼ぶ。ガスの導入は1.82NL/minの一定流量にて連続して行った。この場合、液中に溶けている溶質を含めた溶液の質量1kg当たりの換算流量は0.22NL/minとなる。ガス導入開始後、撹拌機の回転数を175rpmに維持して撹拌しながら常温から85℃まで3時間かけて昇温させた。次に、溶液Aの中に、溶液Bの全量を1分かけて添加した。溶液Bの添加開始時点を「還元析出の反応開始」の時点とすることができる。溶液Bの添加終了後、さらにガスの導入と撹拌を継続して85℃で24.5時間保持した。その後、反応液を常温まで冷却することで、銀ナノワイヤを合成した。
上記24.5時間保持後の反応液から採取したサンプル液0.3gと純水39.7gを混合した試料についてUV−Vis(紫外可視分光法)により吸収スペクトルを測定した結果、銀ナノワイヤの成長はほぼ終了していることが確認された(以下の各例において同様)。
(洗浄)
40℃以下まで冷却された上記反応液にアセトンを20倍量添加し15分撹拌した。その後24時間静置した。静置後、濃縮物と上澄みが観察されたため、上澄み部分を除去し、濃縮物を回収した。その濃縮物に1280gの純水を添加し、12時間撹拌後に、アセトンを、濃縮物および1280gの純水の合計質量に対し20倍量添加し、10分撹拌後に24時間静置を行った。静置後、濃縮物と上澄みが観察されたため、上澄み部分を除去し、濃縮物を回収した。上記純水分散、アセトン添加、静置、上澄み除去の操作を更に2回実施し、濃縮物を得た。この濃縮物を「洗浄後の濃縮物」と呼ぶ。
(前処理)
クロスフローろ過を行うための前処理として、重量平均分子量55,000のPVP(ポリビニルピロリドン)を純水中に溶解させた水溶媒を用いて、再分散処理を施した。すなわち、上記PVP濃度が0.5質量%である水溶媒を用意し、この水溶媒と上記洗浄後の濃縮物を混合し、金属銀濃度が0.8質量%となる銀ナノワイヤ分散液を調製した。得られた銀ナノワイヤ分散液を、銀濃度が0.08質量%となるように純水で希釈して、約52kgの銀ナノワイヤ分散液を得た。この分散液を「クロスフロー元液」と呼ぶ。
(クロスフローろ過)
上記の前処理を受けたクロスフロー元液を、図2に示す管路構成を有する装置のタンクに収容したのち、連続的に管路を循環させる方法でクロスフローろ過に供した。ただし、本例では図2の符号3で表示される箇所に9本の管状フィルタを並列に配置し、それぞれの管状フィルタに液を分岐させて処理した。クロスフローろ過フィルタとして使用した管状フィルタは、多孔質セラミックで管壁が形成されており、寸法は長さ500mm、外径12mm、内径9mmである。セラミックの材質はSiC(炭化ケイ素)であり、Micromeritics社製、水銀ポロシメーターを用いて測定した水銀圧入法による平均細孔直径は5.9μmであった。
水銀圧入法による細孔分布測定の詳細条件は以下の通りである。
・測定装置:オートポアIV9510型
・測定範囲:φ440〜0.003μm、
・水銀接触角:130°
・水銀表面張力:485dynes/cm、
・前処理:300℃×1h(大気中)
・測定試料質量:3.5g
測定精度を十分に確保するため、1〜100μmの測定範囲では80点の測定データを採取した。ここでいう平均細孔直径はメディアン径である。
循環させる液状媒体の初期PVP濃度(クロスフロー元液を構成する水溶媒中におけるPVPの質量割合)は250ppmである。タンクに新たな液状媒体を補給しながら循環を行った。上記の管状フィルタ9本を循環流路内に並列に設置した。この管状フィルタ1本あたりに導入される液の流量を13L/minとして循環させた。管状フィルタに導入される液の流速は3495mm/sであった。また、管状フィルタの入り側の管路における圧力(図2の上流側圧力計4で計測される圧力)は0.025MPaであった。補給する液状媒体はPVP濃度(水溶媒中におけるPVPの質量割合)50ppmのPVP水溶液とした。タンクは、ジャケット付タンクであり、ジャケットに冷却水を流すことにより、循環中の液温の上昇を抑制した。また、補給する純水は冷却して10〜15℃の温度とした。その結果、循環中の液温は17〜30℃の範囲であった。このようにして5時間のクロスフローろ過を行った。
上記5時間のクロスフローろ過に引き続き、液状媒体の補給を止めた状態でクロスフローろ過による循環を行い、ろ液の排出により液量が減少していくことを利用して銀ナノワイヤ分散液の濃縮を行った。約5時間の循環を行って、銀ナノワイヤ分散液を得た。以上の条件でクロスフローろ過を行って回収された銀ナノワイヤについて、平均直径および平均長さを測定した。
(銀ナノワイヤの寸法形状)
平均直径を以下のようにして測定した。銀ナノワイヤを含有する液をTEM用の観察台にとり、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製;JEM-1011)により、加速電圧100kV、倍率40,000倍で明視野像の観察を行って観察画像を採取し、正確に直径を測定するために採取された元画像を2倍のサイズに拡大した上で、ソフトウェア(Motic Image Plus2.1S)を用いて、上述の定義に従って平均直径DMを求めた。
平均長さを以下のようにして測定した。銀ナノワイヤを含有する液をSEM用の観察台にとり、観察台上で水を揮発させたのち、電界放出形走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製;S−4700)により、加速電圧3kV、倍率1,500倍で観察を行った。無作為に選んだ3以上の視野について、視野内で全長が確認できるすべてのワイヤを測定対象として、ソフトウェア(ドクターカンバス)を用いて、上述の定義に従って平均長さLMを求めた。
その結果、銀ナノワイヤの平均直径は22.2nm、平均長さは10.7μmであった。
(ワイヤ収率)
上記のクロスフローろ過によって得られた銀ナノワイヤ分散液中の銀濃度をICP発光分光分析法(装置:アジレント・テクノロジー株式会社製 ICP発光分光分析装置720−ES)によって測定した。その銀濃度の値と、当該銀ナノワイヤ分散液の総量から、回収された銀ナノワイヤの総質量を求めた。この銀ナノワイヤ総質量を、合成時に使用した銀含有物質(硝酸銀)中の銀の総質量で除することにより、クロスフローろ過後におけるワイヤの収率を求めた。その結果、本例で得られた銀ナノワイヤ分散液中の銀濃度は0.083質量%、収率は30.1%であった。結果を表1に示す(以下の各例において同じ)。
[比較例2]
銀ナノワイヤ合成において、液中へガスを導入するための「ガス導入孔」をガラス単管に代えてケラミフィルタ(アズワン社製、円筒ガス噴射管25×30mm、A型)としたことを除き、比較例1と同条件で実験を行った。ケラミフィルタを用いると、ガスは細かい気泡となって液中に導入される。
クロスフローろ過後に回収された銀ナノワイヤの平均長さは22.0nm、平均長さは10.1μmであり、得られた銀ナノワイヤ分散液中の銀濃度は0.088質量%、ワイヤの収率は31.1%であった。
[実施例1]
銀ナノワイヤ合成において、液中に導入するガスを実験室内の空気(露点8.9℃)としたことを除き、比較例2と同様の条件で実験を行った。
クロスフローろ過後に回収された銀ナノワイヤの平均長さは24.4nm、平均長さは10.5μmであり、得られた銀ナノワイヤ分散液中の銀濃度は0.200質量%、ワイヤの収率は69.7%であった。
[実施例2]
銀ナノワイヤ合成において、液中に導入するガスを乾燥空気(露点−50℃以下)としたことを除き、比較例1と同様の条件で実験を行った。
クロスフローろ過後に回収された銀ナノワイヤの平均長さは22.1nm、平均長さは10.3μmであり、得られた銀ナノワイヤ分散液中の銀濃度は0.146質量%、ワイヤの収率は51.8%であった。
[実施例3]
銀ナノワイヤ合成において、液中に導入するガスを乾燥空気(露点−50℃以下)としたことを除き、比較例2と同様の条件で実験を行った。
クロスフローろ過後に回収された銀ナノワイヤの平均長さは22.3nm、平均長さは11.0μmであり、得られた銀ナノワイヤ分散液中の銀濃度は0.161質量%、ワイヤの収率は58.1%であった。
[実施例4]
銀ナノワイヤ合成において、液中に導入するガスを乾燥空気と実験室内の空気との混合空気(露点−20.8℃以下)としたことを除き、比較例2と同様の条件で実験を行った。
クロスフローろ過後に回収された銀ナノワイヤの平均長さは21.7nm、平均長さは10.2μmであり、得られた銀ナノワイヤ分散液中の銀濃度は0.182質量%、ワイヤの収率は65.3%であった。
[実施例5]
銀ナノワイヤ合成において、反応温度を75℃としたこと、液中に導入するガスを乾燥空気(露点−50℃以下)としたこと、ガスの導入を3.64NL/minの一定流量にて連続して行ったこと、および液中へのガスの導入を還元析出の反応開始から6時間で終了したことを除き、比較例1と同様の条件で実験を行った。この場合、液中に溶けている溶質を含めた溶液の質量1kg当たりのガス導入換算流量は0.43NL/minとなる。
クロスフローろ過後に回収された銀ナノワイヤの平均長さは20.0nm、平均長さは10.6μmであり、得られた銀ナノワイヤ分散液中の銀濃度は0.117質量%、ワイヤの収率は50.8%であった。
[実施例6]
銀ナノワイヤ合成において、液中に導入するガスを乾燥空気と窒素(N2)の混合ガス(露点−50℃以下)とし、その酸素含有量を10体積%に調整したことを除き、比較例2と同様の条件で実験を行った。
クロスフローろ過後に回収された銀ナノワイヤの平均長さは21.6nm、平均長さは10.7μmであり、得られた銀ナノワイヤ分散液中の銀濃度は0.176質量%、ワイヤの収率は67.3%であった。
[実施例7]
銀ナノワイヤ合成において、液中に導入するガスを乾燥空気と酸素(O2)の混合ガス(露点−50℃以下)とし、その酸素含有量を50体積%に調整したことを除き、比較例2と同様の条件で実験を行った。
クロスフローろ過後に回収された銀ナノワイヤの平均長さは21.1nm、平均長さは10.5μmであり、得られた銀ナノワイヤ分散液中の銀濃度は0.187質量%、ワイヤの収率は66.8%であった。
[実施例8]
銀ナノワイヤ合成において、液中に導入するガスを乾燥空気と酸素(O2)の混合ガス(露点−50℃以下)とし、その酸素含有量を80体積%に調整したことを除き、比較例2と同様の条件で実験を行った。
クロスフローろ過後に回収された銀ナノワイヤの平均長さは23.8nm、平均長さは12.1μmであり、得られた銀ナノワイヤ分散液中の銀濃度は0.178質量%、ワイヤの収率は63.5%であった。
[実施例9]
銀ナノワイヤ合成において、液中に導入するガスを酸素(O2)(露点−50℃以下)とし、その酸素含有量を100体積%に調整したことを除き、比較例2と同様の条件で実験を行った。
クロスフローろ過後に回収された銀ナノワイヤの平均長さは24.5nm、平均長さは8.8μmであり、得られた銀ナノワイヤ分散液中の銀濃度は0.180質量%、ワイヤの収率は64.3%であった。
[比較例3]
本例は、銀ナノワイヤ合成において、液中にガスを導入しなかった例である。合成時に使用する各物質の物量を上記各例と同じに揃えると、細いワイヤを合成することが困難である。そこで、ここでは比較的細いワイヤの合成が可能な条件として、塩化リチウムと臭化カリウムの仕込み量を上記各例よりも高めに設定した。ガスを導入しなかったこと以外は、比較例1などと同様の実験条件とした。
本例では、硝酸銀に含まれる銀量に対する塩化リチウム量のモル比LiCl/Agは0.0285、硝酸銀に含まれる銀量に対する臭化カリウム量のモル比KBr/Agは0.0022、硝酸銀に含まれる銀量に対する水酸化リチウム量のモル比LiOH/Agは0.0750、硝酸銀に含まれる銀量に対する硝酸アルミニウム9水和物に含まれるアルミニウム量のモル比Al/Agは0.0067となる。
クロスフローろ過後に回収された銀ナノワイヤの平均長さは21.8nm、平均長さは15.3μmであり、得られた銀ナノワイヤ分散液中の銀濃度は0.030質量%、ワイヤの収率は13.0%であった。
Figure 2020190025
表1からわかるように、酸素含有ガスを導入することにより、窒素ガスを導入した比較例1、2に比べ、クロスフロー後のワイヤの収率が大幅に向上する。特に、酸素含有量が高すぎず、かつ露点が十分に低い酸素含有ガスを使用すると、細いワイヤの合成に有利となる(実施例2〜7)。ガスの導入を行わずに細いワイヤの合成を試みた比較例3では、ワイヤの収率が低かった。
ガスを導入しなかった比較例4を除く上記各例について、以下のグラフを示す。
図3:液中導入ガスの酸素含有量とクロスフローろ過後における銀ナノワイヤの平均直径の関係。
図4:液中導入ガスの酸素含有量とクロスフローろ過後における銀ナノワイヤの平均長さの関係。
図5:液中導入ガスの酸素含有量とクロスフローろ過後における銀ナノワイヤの収率の関係。
それぞれのグラフにおいて、◆プロットは実施例、×プロットは比較例である。
1 タンク
2 ポンプ
3 クロスフローろ過フィルタ
4 上流側圧力計
5 下流側圧力計
6 クロスフローろ過前の銀ナノワイヤ分散液
7 補給する液状媒体
10 循環流路
30 ろ液

Claims (9)

  1. 銀化合物、ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーが溶解している、アルコールを主成分とする溶液中で、銀をワイヤ状に還元析出させる銀ナノワイヤの製造法において、
    前記還元析出の反応温度を90℃以下とすること、
    酸素含有ガスを前記溶液中に導入しながら銀を還元析出させる過程を含むこと、
    を特徴とする銀ナノワイヤの製造法。
  2. 前記酸素含有ガスは酸素濃度が8体積%以上である請求項1に記載の銀ナノワイヤの製造法。
  3. 前記酸素含有ガスは、酸素8〜85体積%を含み、残部が不活性ガスを主成分とする気体成分である、請求項1に記載の銀ナノワイヤの製造法。
  4. 前記酸素含有ガスは、酸素8〜55体積%を含み、残部が不活性ガスを主成分とする気体成分であり、露点が−10℃以下である、請求項1に記載の銀ナノワイヤの製造法。
  5. 前記還元析出の反応時間を5時間以上とし、前記還元析出の反応開始時点から反応開始1時間経過時点までの前記酸素含有ガスの平均導入流量を、前記溶液の質量1kg当たりに対する換算で0.1〜2.5NL/minとする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の銀ナノワイヤの製造法。
  6. 前記アルコールとして、1分子中の炭素数が2〜4である多価アルコールの1種以上を使用する請求項1〜5のいずれか1項に記載の銀ナノワイヤの製造法。
  7. 前記ポリマーが、PVP(ポリビニルピロリドン)またはビニルピロリドンと他のモノマーとのコポリマーである請求項1〜6のいずれか1項に記載の銀ナノワイヤの製造法。
  8. 前記ポリマーが、ビニルピロリドンと、ジアリルジメチルアンモニウム塩、エチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、および2−ジエチルアミノエチルメタクリレートから選ばれる1種または2種以上のモノマーとの重合組成を有するものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の銀ナノワイヤの製造法。
  9. 前記ポリマーは、重量平均分子量Mwが30,000〜300,000である請求項1〜8のいずれか1項に記載の銀ナノワイヤの製造法。
JP2019097479A 2019-05-24 2019-05-24 銀ナノワイヤの製造法 Pending JP2020190025A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019097479A JP2020190025A (ja) 2019-05-24 2019-05-24 銀ナノワイヤの製造法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019097479A JP2020190025A (ja) 2019-05-24 2019-05-24 銀ナノワイヤの製造法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2020190025A true JP2020190025A (ja) 2020-11-26

Family

ID=73453447

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019097479A Pending JP2020190025A (ja) 2019-05-24 2019-05-24 銀ナノワイヤの製造法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2020190025A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022209613A1 (ja) * 2021-03-31 2022-10-06 昭和電工株式会社 銀ナノワイヤーの製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022209613A1 (ja) * 2021-03-31 2022-10-06 昭和電工株式会社 銀ナノワイヤーの製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP3115135B1 (en) Method for producing silver nanowires, silver nanowires and ink using same
JP6067573B2 (ja) 単結晶ナノ銀粒子の安定な分散系
JP6703802B2 (ja) 銀ナノワイヤおよびその製造方法並びにインク
TWI682406B (zh) 銀奈米線之製造方法、以該方法得到之銀奈米線及含有該銀奈米線之油墨
JP2018071000A (ja) 銀ナノワイヤの製造方法
JP2017078207A (ja) 銀ナノワイヤおよびその製造方法並びに分散液およびインク
JP2010162443A (ja) 白金ブラック粉末及び白金ブラックのコロイド並びにそれらの製造方法
WO2018105642A1 (ja) 銀ナノワイヤおよびその製造方法並びに銀ナノワイヤインク
JP2020190025A (ja) 銀ナノワイヤの製造法
JP2020158857A (ja) 銀ナノワイヤの製造法
JP2020158858A (ja) 銀ナノワイヤの製造法
Luo et al. Fabrication and characterization of copper nanoparticles in PVA/PAAm IPNs and swelling of the resulting nanocomposites
TWI709536B (zh) 醇系銀奈米線分散液及其製造方法
TWI686484B (zh) 銀奈米線的製造方法
EP3741727A1 (en) Ito particles, dispersion, production method of ito particles, production method of dispersion, and production method of ito film
JP6192639B2 (ja) 繊維状銅微粒子の製造方法
TWI696669B (zh) 銀奈米線的製造法和銀奈米線、銀奈米線印墨及透明導電膜
JP2020070452A (ja) 銀ナノワイヤの集合体、銀ナノワイヤインク、透明導電膜、及びそれらの製造方法
JP2006239618A (ja) カーボンナノチューブ成長用触媒およびその製造方法
Zhou et al. Surface-enhanced Raman scattering of 4-aminothiophenol adsorbed on silver nanosheets deposited onto cubic boron nitride films
JP2020132990A (ja) 銀ナノワイヤおよびその製造法並びに銀ナノワイヤ含有反応液および銀ナノワイヤ分散液
JP2020143341A (ja) アルコール系銀ナノワイヤ分散液
TWI697526B (zh) 銀奈米線的製造法和銀奈米線、銀奈米線印墨及透明導電膜
JP2020007404A (ja) アルコール系銀ナノワイヤインク
JP2017036505A (ja) 単結晶ナノ銀粒子の安定な分散系