JP2020007404A - アルコール系銀ナノワイヤインク - Google Patents

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Abstract

【課題】「導電性−ヘイズバランス」および「外観」に優れる銀ナノワイヤ導電膜を得るために好適な増粘成分を含有する銀ナノワイヤインクを提供する。【解決手段】炭素数1〜4の1価アルコールを主成分とし、メトキシ基とヒドロキシプロポキシ基の質量割合の合計が43質量%以上であるHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)が溶解している液状媒体中に、銀ナノワイヤが分散しており、回転型粘度計によるシェアレート600±5(1/s)における25℃の粘度が4.0〜20.0mPa・sである、アルコール系銀ナノワイヤインク。【選択図】なし

Description

本発明は、アルコール系の液状媒体に銀ナノワイヤが分散しており、塗工に好適な粘度調整成分を含有する銀ナノワイヤインクに関する。
本明細書では、太さが200nm程度以下の微細な金属ワイヤを「ナノワイヤ(nanowire(s)」と呼ぶ。なかでも銀ナノワイヤは、透明導電回路を形成するための導電材料として有望視されている。銀ナノワイヤが分散している液であって、特に基材上へ塗布することを考慮して増粘成分などが配合されている液を「銀ナノワイヤインク」と呼ぶ。銀ナノワイヤが分散している液に、増粘成分などを加えて所定の性状のインクとすることを「インク化」と言う。銀ナノワイヤインクの塗布によって形成された導電膜を「銀ナノワイヤ導電膜」と呼ぶ。
工業的に銀ナノワイヤを合成するために適した方法として、有機保護剤が溶解しているアルコール溶媒中で、そのアルコールの還元力を利用して銀をワイヤ状に還元析出させる「アルコール溶媒還元法」が知られている。その有機保護剤としてはPVP(ポリビニルピロリドン)が一般的によく使用される。PVPは細くて長い銀ナノワイヤを得る上で有用な有機保護剤であり、また、得られた銀ナノワイヤは、金属銀の表面が有機保護剤であるPVPに覆われていることから水系の液状媒体に対して良好な分散性を呈する。このようなことから、従来、銀ナノワイヤを用いた塗工液には、水系の液状媒体を用いた「水系銀ナノワイヤインク」を適用することが比較的多かった。
一方、銀ナノワイヤを用いた塗工液に有機系の液状媒体を適用したいというニーズも高まっている。有機系の液状媒体は水と比べ揮発性に優れ、塗膜形成後の乾燥工程を短縮化できるメリットがある。そのような塗工液として、アルコール系の液状媒体を用いた「アルコール系銀ナノワイヤインク」が有用である。有機保護剤にPVPを用いた銀ナノワイヤは、アルコール系の液状媒体中での分散性が水系の液状媒体の場合よりも低下するが、適切な分散剤を使用することで比較的長時間の分散性を維持するアルコール系のインクを構築することが可能である。また、ビニルピロリドンと他のモノマーのコポリマーを有機保護剤として用いた銀ナノワイヤでは、アルコール系の液状媒体中での分散性が改善され、分散剤を使用しなくても長時間の分散安定性に優れたアルコール系のインクを構築することが可能になる。
銀ナノワイヤインクをダイコーター法やバーコーター法などにより基材表面に塗布して均一性の高い塗膜を形成するためには、インクの粘度が適切に調整されていることが望まれる。水系の銀ナノワイヤインクでは、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)など、種々の分野で一般的に使用されている水溶性の増粘剤を適量添加することによって、導電性が高くヘイズの少ない銀ナノワイヤ導電膜を工業的に生産できることが確認されている。しかしながら、アルコール系銀ナノワイヤインクの場合には、水系インクで効果的であったHPMCはアルコール中に溶解しにくいことから、それを用いてインクの粘度調整を行うと析出したHPMC粒子が液中に懸濁し、導電性が高くヘイズの少ない銀ナノワイヤ導電膜を得ることが困難である。また、増粘成分が溶解しにくいためにインク(塗工液)の粘度を所定範囲に精度良くコントロールすること自体が難しい。析出したHPMC成分は凝集体であり、基材上の均一性の高い銀ナノワイヤ層の形成を阻害する。
アルコールとの相溶性が高い有機物質を増粘成分として利用し、アルコールとその有機物質との混合溶媒中に銀ナノワイヤを分散させることにより、アルコール系銀ナノワイヤインクの粘度調整を行うという手法も考えられる。しかし、そのような有機物質は一般に沸点が例えば230℃以上と高いので、塗膜形成後の乾燥工程でその有機物質を十分に揮発させることが難しく、残存した有機物質が銀ナノワイヤ同士の導通を妨げる要因となって導電性の高い銀ナノワイヤ導電膜を得ることが困難となる。
また、有機溶剤への増粘剤効果を持つ物質としてエチルセルロースが知られている。しかし、エチルセルロールの増粘剤効果はHPMCに比べて低い。アルコール系銀ナノワイヤインクの塗工に必要な粘度を得るためにエチルセルロースを使うと、多量のエチルセルロース添加が必要となるので、銀ナノワイヤ同士の導通を妨げる要因となって導電性の高い銀ナノワイヤ導電膜を得ることが困難となる。
特許文献1の段落0094には、市販の銀ナノワイヤをイソプロピルアルコールに分散させて銀ナノワイヤ分散液を製造したことが記載されている。特許文献2の段落0087には、市販の銀ナノワイヤIPA(イソプロピルアルコール)分散液を使用したことが記載されている。また、バインダーとしてポリウレタン等の有機物質を混合することが記載されている。特許文献3の実施例には有機保護剤にPVP用いた銀ナノワイヤを所定量のイソプロパノールに再分散させたことが記載されている。しかし、これらの文献には、水溶液の増粘剤として有効なHPMC等を、アルコール系銀ナノワイヤインクの増粘剤に用いることは記載されていない。
特許文献4には、アルコール系銀ナノワイヤインクのバインダー成分として使用可能なポリマーの1つとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースの記載がある(段落0038、0083、0089)。しかし、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて銀ナノワイヤインクを作製した例は示されていない。また、アルコール系銀ナノワイヤインクの粘度をコントロールする手法についても開示はない。
特開2017−163085号公報 特開2016−60754号公報 米国特許第7922787号明細書 特表2015−518063号公報
銀ナノワイヤ導電膜は、通常、塗工液である銀ナノワイヤインクを基材上に塗布する工程を経て製造される。銀ナノワイヤインクを工業的に塗布するのに適した装置として、例えばスリットダイコーター装置が挙げられる。このような装置を用いて均一性の高い塗膜を得るためには、塗工液の粘度が適切に調整されていることが重要である。例えば、スリットダイコーター装置を使用して幅の広いアルコール系銀ナノワイヤの塗膜を形成させる場合、回転粘度計によるシェアレート600(1/s)での25℃の粘度が4.0〜20.0mPa・sに調整されていることが好ましい。粘度が低いと、塗布後の塗膜が走行中や乾燥時に受ける風によって表面ムラを生じやすく、また粘度が高すぎると、塗工方向にスジ状の塗膜欠陥が生じやすくなり、均一性の高い銀ナノワイヤ導電膜を得ることが難しいからである。しかしながら、増粘剤を添加することによって、そのような粘性の高いアルコール系銀ナノワイヤインクを得ることは容易でない。少量の添加で高い粘性向上効果が期待できる一般的なHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を例に挙げると、上記のような粘性の高いインクを得るべくHPMC水溶液をアルコール系の液状媒体中へ混合した場合、HPMC成分が析出して液が白濁し、塗工液として使用できない状態となってしまう。
一方、粘性の高いアルコール系の溶媒を用いてインクを調製すると、塗膜を乾燥させる際に溶媒成分が揮発しにくいので、銀ナノワイヤ同士の接点抵抗が大きくなり、導電性が高くかつヘイズの少ない銀ナノワイヤ導電膜を得る上で不利となる。また、銀ナノワイヤの分散性が悪くなって凝集異物の多い導電膜となりやすい。すなわち、塗工に適した所望の粘度に調整できたとしても、「導電性−ヘイズバランス」に優れ、かつ異物粒子の少ない「外観」に優れる銀ナノワイヤ導電膜を得ることが難しくなる。
本発明は、「導電性−ヘイズバランス」および「外観」に優れるアルコール系銀ナノワイヤ導電膜を得るために好適な増粘成分を含有する塗工性の良い銀ナノワイヤインクを提供しようというものである。
発明者らは研究の結果、置換度の非常に高い特異なHPMCを溶解させたアルコール系液状媒体を用いることによって、上記課題が達成できることを見いだした。本明細書では、以下の発明を開示する。
[1]炭素数1〜4の1価アルコールを主成分とし、メトキシ基とヒドロキシプロポキシ基の質量割合の合計が43質量%以上であるHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)が溶解している液状媒体中に、銀ナノワイヤが分散しており、回転型粘度計によるシェアレート600±5(1/s)における25℃の粘度が4.0〜20.0mPa・sである、アルコール系銀ナノワイヤインク。
[2]インクに占める前記HPMCの質量割合が0.01〜0.50質量%である、上記[1]に記載のアルコール系銀ナノワイヤインク。
[3]インクに占める銀の質量割合が0.01〜3.0質量%である、上記[1]または[2]に記載のアルコール系銀ナノワイヤインク。
[4]前記液状媒体は水を含有し、インクに占める水の含有量が1.0〜25.0質量%である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のアルコール系銀ナノワイヤインク。
[5]前記銀ナノワイヤは、ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーが表面に付着しているものである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のアルコール系銀ナノワイヤインク。
[6]前記ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーは、ビニルピロリドンと他のモノマーとのコポリマーである、上記[5]に記載のアルコール系銀ナノワイヤインク。
[7]前記ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーは、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウム(Diallyldimethylammonium)塩モノマーとのコポリマーである、上記[5]に記載のアルコール系銀ナノワイヤインク。
本発明によれば、アルコール系の液状媒体を用いた銀ナノワイヤインクにおいて、基材上への塗工性が良好な粘度に調整され、かつ、「導電性−ヘイズバランス」および「外観」に優れる銀ナノワイヤ導電膜を得るために好適なものを実現することができた。また、HPMCが溶解しているアルコール系液状媒体を用いると、インク中でのワイヤの分散性も改善される傾向にあり、ワイヤ同士が束状に凝集した異物粒子が形成しにくくなることもわかった。そのためダイコーターのノズル詰まりが抑制されて塗工性が向上するとともに、点状異物の少ない「外観」に優れる銀ナノワイヤ導電膜の形成にも寄与しうる。
ビニルピロリドン構造単位の構造式。 クロスフローろ過に用いる管路構成を模式的に示した図。
〔アルコール系の液状媒体〕
本発明では、銀ナノワイヤの分散媒として、炭素数1〜4の1価アルコールを主成分とする液状媒体を使用する。具体的には、メタノール、エタノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコールが対象となる。これらの1種または2種以上を液状媒体の主成分として使用すればよい。液状媒体は、銀ナノワイヤインクを構成する液体部分であり、溶媒のアルコール中に他の物質が溶解している場合には、その物質も液状媒体の構成成分となる。「炭素数1〜4の1価アルコールを主成分とする」とは、液状媒体を構成する物質のうち、50質量%以上の部分が炭素数1〜4の1価アルコールであることを意味する。炭素数が5以上の1価アルコールが主成分となると溶媒の疎水性が強くなりすぎ、ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーが付着した銀ナノワイヤの液状媒体中での分散安定性が低減する。本明細書では、炭素数1〜4の1価アルコールを主成分とする液状媒体を「アルコール系の液状媒体」と呼び、炭素数1〜4の1価アルコールを主成分とする液状媒体中に銀ナノワイヤが分散している銀ナノワイヤインクを「アルコール系銀ナノワイヤインク」と呼んでいる。なお、アルコールを主成分とする液状媒体としては、炭素数2〜4の1価アルコールを主成分とするものがより好ましい。炭素数が2〜4の1価アルコールは沸点が適度に高く、ダイコーターのスリットやギャップでの乾燥による凝集物の生成を抑制する上で有利となる。
液状媒体を構成する物質としては、主成分である炭素数1〜4の1価アルコールの他、後述するHPMC、水が含まれる。必要に応じてバインダーとして機能する有機物質を含めることができる。液状媒体に占める炭素数1〜4の1価アルコールの含有量は70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
〔HPMC〕
本発明では、増粘成分として置換度の非常に高いHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を用いる。HPMCは、セルロースが有するOH基の一部をメトキシ基(−OCH3)およびヒドロキシプロポキシ基(−OCH2CHOHCH3)で置換した水溶性セルロースエーテルである。通常、この種の水溶性セルロースエーテルはアルコールに対する溶解性が悪く、アルコール系液状媒体の増粘剤として利用することは極めて難しい。しかしながら発明者らの研究によれば、HPMCに占めるメトキシ基とヒドロキシプロポキシ基の合計質量の割合が43質量%以上である置換度の非常に高いHPMCは、それが溶解している水溶液を炭素数1〜4の1価アルコールを主成分とするアルコール系液状媒体に混合したとき、析出をほとんど生じることなく、アルコール系液状媒体中に溶解した状態でとどまることが確認された。その理由として、疎水性の強いメトキシ基およびヒドロキシプロポキシ基の存在量が増加することによってHPMCの親水性−疎水性バランスが、より疎水性側にシフトすることが考えられる。HPMCに占めるメトキシ基とヒドロキシプロポキシ基の合計質量の割合が45質量%以上であるHPMCを使用することがより好ましい。
工業的に製造可能なHPMCとして、メトキシ基の質量割合は16〜30質量%程度、ヒドロキシプロポキシ基の質量割合は4〜32質量%程度の範囲で調整可能であると考えられる。本発明では、メトキシ基とヒドロキシプロポキシ基の質量割合の合計が43〜62質量%の範囲で調整された、置換度の非常に高いHPMCを適用すればよい。また、HPMCの重量平均分子量は500,000〜2,000,000であることが好ましい。
HPMCに占めるメトキシ基、ヒドロキシプロポキシ基の質量割合は、第17改正日本薬局方に記載のヒドロキシプロピルメチルセルロースの定量法に準拠したガスクロマトグラフィー試験で測定することができる。
〔銀ナノワイヤ〕
本明細書において、銀ナノワイヤの平均長さ、平均直径、平均アスペクト比は、以下の定義に従う。
(平均長さLM
電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)による観察画像上で、ある1本の銀ナノワイヤの一端から他端までのトレース長さを、そのワイヤの長さと定義する。顕微鏡画像上に存在する個々の銀ナノワイヤの長さを平均した値を、平均長さLMと定義する。平均長さを算出するためには、測定対象のワイヤの総数を100以上とする。
(平均直径DM
透過型電子顕微鏡(TEM)による明視野観察画像上で、ある1本の銀ナノワイヤにおける太さ方向両側の輪郭間距離を、そのワイヤの直径と定義する。各ワイヤは全長にわたってほぼ均等な太さを有しているとみなすことができる。したがって、太さの計測は他のワイヤと重なっていない部分を選択して行うことができる。1つの視野を写したTEM画像において、その画像内に観察される銀ナノワイヤのうち、他のワイヤと完全に重なって直径の計測が困難であるワイヤを除く全てのワイヤの直径を測定する、という操作を無作為に選んだ複数の視野について行い、合計100本以上の異なる銀ナノワイヤの直径を求め、個々の銀ナノワイヤの直径の平均値を算出し、その値を平均直径DMと定義する。
(平均アスペクト比)
上記の平均直径DMおよび平均長さLMを下記(1)式に代入することにより平均アスペクト比AMを算出する。ただし、(1)式に代入するDM、LMはいずれもnmの単位で表された値とする。
M=LM/DM …(1)
銀ナノワイヤは、導電性と視認性に優れた透明導電膜を形成する観点から、できるだけ細くて長い形状であるものが好ましい。具体的には、平均直径50nm以下、平均アスペクト比は300以上であることが望まれる。平均直径に関しては40nm未満、あるいはさらに30nm未満であることがより好ましい。平均アスペクト比に関しては400以上であることがより好ましい。平均長さは10μm以上であることが好ましい。また、長さが5.0μm以下の銀ナノワイヤが多量に含まれると、透明導電膜において同じシート抵抗で比べた場合のヘイズを増大させる要因となる。長さ5.0μm以下の銀ナノワイヤの個数割合が18%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、12%以下であることがさらに好ましい。長さ5.0μm以下の銀ナノワイヤの個数割合は、上掲の「平均長さLM」の定義に記載した測定を行う際に算出することができる。なお、アスペクト比が2未満であるような粒状物は長さ5.0μm以下の銀ナノワイヤの個数割合の算出対象から除外する。銀ナノワイヤの長さ分布は、例えば銀ナノワイヤの合成後に水系銀ナノワイヤ分散液を作製し、これにクロスフローろ過を施す手法によって調整することができる。長さ分布が調整された銀ナノワイヤは水系の液状媒体から固形分として回収される。その固形分をアルコール系の液状媒体に混合し、HPMC等の増粘物質や、必要に応じてバインダー成分などを混合することによって、塗工に適した性状のアルコール系銀ナノワイヤインクが得られる。
〔有機保護剤〕
アルコール溶媒還元法で銀ナノワイヤを合成する際には、有機保護剤の存在下において還元反応を進行させる。溶媒中に存在する有機保護剤は析出した銀の表面をすばやく覆い、金属銀の析出体が粗大成長することを抑止する作用を発揮する。その作用によりナノワイヤとしての析出形状を得ることが可能となる。一方、合成された銀ナノワイヤの表面に付着している有機保護剤は、ワイヤの液中分散性を確保したり、銀の酸化を防止したりする機能を有する。長くて細い銀ナノワイヤを合成するのに適した有機保護剤として、PVP(ポリビニルピロリドン)や、ビニルピロリドンと他のモノマーとのコポリマーが知られている。PVPは親水性が高いので、アルコール系液状媒体に対する銀ナノワイヤの分散性を重視する場合には、ビニルピロリドンと他のモノマーとのコポリマーが表面に付着した銀ナノワイヤを適用することが有利である。この種のコポリマーは親水性の高いビニルピロリドン構造単位(図1)を有するので適度な親水性を呈し、かつPVPよりは疎水性の傾向を呈する。そのことによって炭素数1〜4の1価アルコールに対する優れた分散安定性が発揮されるものと推察される。なお、合成後に、銀ナノワイヤ表面の有機保護剤を別の種類の有機保護剤に付け替える処理を施すことも可能である。有機保護剤として使用するポリマーの重量平均分子量は30,000〜3,000,000であることが好ましい。
前記「他のモノマー」として例えば、ジアリルジメチルアンモニウム(Diallyldimethylammonium)塩(塩の具体例としては、硝酸塩が挙げられる)などのカチオン性モノマー、酢酸ビニル等のビニルエステル、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アクリル酸、エチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等の(メタ)アクリル化合物、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド等のマレイミド化合物、N−ビニル−ε−カプロラクタム等のビニルラクタム化合物、ビニルイミダゾール等のビニルアゾール化合物などが挙げられる。優れた前記分散安定性を得る上で特に有利なコポリマーとして、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウム(Diallyldimethylammonium)塩モノマーとのコポリマーを挙げることができる。
〔インクの組成〕
本発明で対象とする銀ナノワイヤインクは、アルコール系液状媒体中に銀ナノワイヤが分散しているものである。そのアルコール系液状媒体は、主成分である炭素数1〜4の1価アルコール、メトキシ基とヒドロキシプロポキシ基の質量割合の合計が43質量%以上であるHPMC、および水を構成要素に持つ。その他、バインダー成分など、インクの性状を調整するために必要な物質が溶解していても構わない。
インク中における銀ナノワイヤの含有量は、インク総質量に占める金属銀の質量割合において0.1〜3.0質量%の範囲で調整することが好ましい。
インク中における前記HPMCの含有量は0.01〜0.50質量%の範囲とすることが好ましく、0.02〜0.25質量%の範囲に管理してもよい。インク中に存在する銀との量比としては、銀1.0質量部に対し、前記HPMCの配合割合が0.01〜10.0質量部となるように調整することができ、0.05〜1.5質量部の範囲に管理してもよい。
水は、HPMCをアルコール系液状媒体中に溶解させる際に、HPMC水溶液をアルコール系液状媒体と混合することに起因して、液状媒体中に導入される。インク中における水の含有量は、1.0〜25.0質量%であることが好ましく、1.5〜18.0質量%であることがより好ましい。
必要に応じてバインダー成分(例えばウレタン樹脂系)などを含有させてもよい。
炭素数1〜4の1価アルコール、HPMC、水、銀ナノワイヤ以外の成分のインク中含有量は5質量%以下とすることが好ましく、1質量%以下に制限してもよい。なお、銀ナノワイヤの表面に付着している有機保護剤のポリマー量は、通常、銀1.0質量部に対し0.05〜0.20質量部程度と少量であるため、インク組成としては、銀に付着している有機保護剤ポリマー量は無視して構わない。
〔インクの粘度〕
塗工液をダイコーター法やバーコーター法で基材表面に塗布する場合、塗工液の粘度が適切に調整されていることが、均一性の高い塗膜を得る上で重要となる。発明者らの検討によれば、アルコール系銀ナノワイヤインクを用いた塗工液の場合、回転型粘度計によるシェアレート(ずり速度)600±5(1/s)における25℃の粘度が4.0〜20.0mPa・sの範囲に調整されていることが好ましい。「シェアレート600±5(1/s)における粘度」とは、シェアレートが595〜605(1/s)の範囲にある回転速度に設定して測定される粘度を意味する。シェアレートが595〜605(1/s)の範囲にある回転速度に到達した後、20秒後の粘度を、シェアレート600±5(1/s)における粘度値として採用することができる。
なお、シェアレート300±5(1/s)における25℃の粘度は、4.5〜25.0mPa・sの範囲であることが好ましい。
〔アルコール系銀ナノワイヤインクの製造方法〕
上記アルコール系銀ナノワイヤインクの製造方法を例示する。
(銀ナノワイヤの合成)
銀ナノワイヤの合成は、公知のアルコール溶媒還元法(例えば特開2015−180772号公報に開示の手法)によって行うことができる。その際、有機保護剤として、上述のポリマーを適用し、平均直径が50nm以下の銀ナノワイヤを得ておく。そのポリマーとして、例えばビニルピロリドンと、ジアリルジメチルアンモニウム(Diallyldimethylammonium)塩モノマー等のカチオン性モノマーとのコポリマーを適用すると、銀ナノワイヤに水系およびアルコール系の液状媒体中での優れた分散安定性を付与する上で特に有利となる。合成後の反応液(スラリー)をデカンテーションなどの方法で固液分離したのち、十分に洗浄し、以下の工程に適用するための銀ナノワイヤを用意する。工業製品として流通している銀ナノワイヤあるいはその分散液を入手して、使用してもよい。
(クロスフローろ過)
クロスフローろ過フィルタを途中に有する循環流路に、有機保護剤が付着している銀ナノワイヤを液状媒体の流れに乗せて循環させる。その際、循環流路内に液状媒体を連続的または間欠的に補給しながら前記フィルタによりクロスフローろ過を行う。これにより、ワイヤ長さ分布の適正化(精製)が行われる。クロスフローろ過フィルタとしては多孔質セラミック管を用いることが好ましい。多孔質セラミック管を用いたクロスフローろ過の手法自体は、特開2016−55283号公報に詳しく開示されており、その手法を利用することができる。
クロスフローろ過を終了する前に、液状媒体の補給を止めるか、あるいはクロスフローろ過フィルタから排出されるろ液の排出量よりも補給する液量を少なくした状態でしばらく循環させることにより、液中の銀ナノワイヤ濃度を高めることができる。
(水系からアルコール系への液状媒体の交換)
上記のようにして得られた「水系銀ナノワイヤ分散液」から、銀ナノワイヤを固形分として回収し、その回収物を炭素数1〜4の1価アルコールを主成分とする液状媒体中に分散させて、「アルコール系銀ナノワイヤ分散液」を得る。
「水系銀ナノワイヤ分散液」から、銀ナノワイヤを固形分として回収する手法としては、例えば、銀ナノワイヤ分散液に水よりも極性の小さいアセトンなどの溶媒を混合して銀ナノワイヤを凝集沈降させたのち上澄みを抜き取るという操作を繰り返す方法が適用できる。遠心分離等によるろ過手法では銀ナノワイヤに折れや破断が生じやすいが、上記の凝集沈降法によればダメージの少ない銀ナノワイヤを最終的に固形分として回収することができる。この凝集沈降を利用した固形分回収技術について、本出願人は特願2018−119529に詳しく開示した。
(インク化)
上記のようにして得られた「アルコール系銀ナノワイヤ分散液」に、メトキシ基とヒドロキシプロポキシ基の質量割合の合計が上述のように非常に高いHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を溶解させることによって、本発明の銀ナノワイヤインクを得ることができる。HPMCの粉体を直接アルコール系液状媒体に混合することによって、HPMCをアルコール系液状媒体中に溶解させることは困難である。そこで、まずHPMCの粉体を水に溶解させてHPMC水溶液を作製する。次に、アルコール系銀ナノワイヤ分散液にHPMC水溶液を混合する。メトキシ基とヒドロキシプロポキシ基の質量割合の合計が上述のように非常に高いHPMCであれば、インクに占める前記HPMCの質量割合が例えば0.5質量%程度まではアルコール系液状媒体の中での析出および液の白濁が観察されず、液中に溶解したままの状態を維持させることができ、アルコール系銀ナノワイヤインクの粘度を上述の所定範囲にコントロールすることが可能となる。インク化に際しては、必要に応じてバインダー成分(例えばウレタン樹脂系)などを混合してもよい。
インク化に供するための「アルコール系銀ナノワイヤ分散液」を以下のようにして作製した。
(銀ナノワイヤ合成)
アルコール溶媒としてプロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、銀化合物として硝酸銀、塩化物として塩化リチウム、臭化物として臭化カリウム、アルミニウム塩として硝酸アルミニウム九水和物、アルカリ金属水酸化物として水酸化リチウム、有機保護剤としてビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト(diallyldimethylammonium nitrate)のコポリマー(ビニルピロリドン99質量%、ジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト1質量%でコポリマー作成、重量平均分子量75,000)を用意した。
常温にて、プロピレングリコール(和光純薬工業社製、特級)8016g中に、塩化リチウム(アルドリッチ社製)含有量が10質量%であるプロピレングリコール溶液4.84g、臭化カリウム(和光純薬工業社製)0.10g、水酸化リチウム(アルドリッチ社製)0.52g、硝酸アルミニウム九水和物(キシダ化成社製)含有量が20質量%であるプロピレングリコール溶液5.40g、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイトのコポリマー83.87gを添加して溶解させ、溶液Aとした。
プロピレングリコール95.7gのアルコール溶媒中に、純水8g、硝酸銀67.96gを添加して、35℃で撹拌して溶解させ、銀含有液(溶液B)を得た。
上記の溶液Aを反応容器に入れ、常温から85℃まで撹拌しながら昇温したのち、溶液Aの中に、溶液Bの全量を1分かけて添加した。溶液Bの添加終了後、さらに撹拌状態を維持して85℃で24時間保持した。その後、反応液を常温まで冷却することで、銀ナノワイヤを合成した。
(洗浄)
常温まで冷却された上記反応液にアセトンを20倍量添加し15分撹拌した。その後24時間静置した。静置後、濃縮物と上澄みが観察されたため、上澄み部分を除去し、濃縮物を回収した。その濃縮物に1280gの純水を添加し、12時間撹拌後に、アセトンを、濃縮物および1280gの純水の合計質量に対し20倍量添加し、10分撹拌後に24時間静置を行った。静置後、濃縮物と上澄みが観察されたため、上澄み部分を除去し、濃縮物を回収した。上記純水分散、アセトン添加、静置、上澄み除去の操作を10回実施し、濃縮物を得た。この濃縮物を「洗浄後の濃縮物」と呼ぶ。
(前処理)
クロスフローろ過を行うための前処理として、重量平均分子量55,000のPVP(ポリビニルピロリドン)を純水中に溶解させた水溶媒を用いて、再分散処理を施した。すなわち、上記PVP濃度が0.5質量%である水溶媒を用意し、この水溶媒と上記洗浄後の濃縮物を混合し、金属濃度(銀ナノワイヤと不純物の銀ナノ粒子を含む液中銀濃度)が0.8質量%となる銀ナノワイヤ分散液を調製した。得られた銀ナノワイヤ分散液を、銀濃度が0.08質量%となるように純水で希釈して、約52kgの銀ナノワイヤ分散液を得た。この分散液を「クロスフロー元液」と呼ぶ。
(クロスフローろ過)
上記の前処理を受けたクロスフロー元液を、図2に示す管路構成を有する装置のタンクに収容したのち、連続的に管路を循環させる方法でクロスフローろ過に供した。ただし、本例では図2の符号3で表示される箇所に9本の管状フィルタを並列に配置し、それぞれの管状フィルタに液を分岐させて処理した。クロスフローろ過フィルタとして使用した管状フィルタは、多孔質セラミックで管壁が形成されており、寸法は長さ500mm、外径12mm、内径9mmである。セラミックの材質はSiC(炭化ケイ素)であり、Micromeritics社製、水銀ポロシメーターを用いて測定した水銀圧入法による平均細孔直径は5.9μmであった。
循環させる液状媒体の初期PVP濃度(クロスフロー元液を構成する水溶媒中におけるPVPの質量割合)は250ppmである。タンクに新たな液状媒体を補給しながら循環を行った。上記の管状フィルタ9本を循環流路内に並列に設置した。この管状フィルタ1本あたりに導入される液の流量を13L/minとして循環させた。管状フィルタに導入される液の流速は3495mm/sであった。また、管状フィルタの入り側の管路における圧力(図2の上流側圧力計4で計測される圧力)は0.025MPaであった。補給する液状媒体はPVP濃度(水溶媒中におけるPVPの質量割合)50ppmのPVP水溶液とした。タンクは、ジャケット付タンクであり、ジャケットに冷却水を流すことにより、循環中の液温の上昇を抑制した。また、補給する純水は冷却して10〜15℃の温度の冷却純水を使用した。その結果、循環中の液温は20〜30℃の範囲であった。このようにして5時間のクロスフローろ過を行った。循環中に補給した液状媒体の総量は214Lであった。管状フィルタ1本当たりの平均ろ液量は79mL/minであった。
上記5時間のクロスフローろ過に引き続き、液状媒体の補給を止めた状態でクロスフローろ過による循環を行い、ろ液の排出により液量が減少していくことを利用して銀ナノワイヤ分散液の濃縮を行った。約5時間の循環を行って、金属銀濃度換算で0.4質量%の銀ナノワイヤが水溶媒中に分散している水系銀ナノワイヤ分散液を得た。
(水系からアルコール系への液状媒体変換処理)
水系銀ナノワイヤ分散液を18kg分取し、この液に、質量割合で2倍量のアセトンを添加し15分撹拌した。その後24時間静置した。静置後、銀ナノワイヤの凝集物と上澄みが観察されたため、上澄み部分を除去し、凝集物が濃縮した「銀ナノワイヤ凝集物含有液」を得た。この銀ナノワイヤ凝集物含有液に、質量割合で0.5倍量のアセトンを添加した。静置後、銀ナノワイヤの凝集物と上澄みが観察されたため、上澄み部分を除去し、凝集物が更に濃縮した「銀ナノワイヤ凝集物含有液」を得た。この液の質量は13.76kgであった。
上記の銀ナノワイヤ凝集物含有液にポリマーを混合した。本例では混合するポリマーとして上記のVP−DADMAN(ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイトのコポリマー)を採用した。このポリマーが0.75質量%の濃度で溶解しているポリマー水溶液を添加することにより、銀ナノワイヤ凝集物含有液中の銀100質量部に対して56質量部のポリマーを混合した。その後、12時間撹拌して、「ポリマー混合銀ナノワイヤ含有液」を得た。
上記のポリマー混合銀ナノワイヤ含有液に対して、質量割合で1.1倍量アセトンを添加し15分撹拌した。その後3時間静置した。静置後、銀ナノワイヤの凝集物と上澄みが観察されたため、上澄み部分を除去し、凝集物が濃縮した「銀ナノワイヤ凝集物含有液」を得た。この銀ナノワイヤ凝集物含有液に、質量割合で0.5倍量のアセトンを添加した。静置後、銀ナノワイヤの凝集物と上澄みが観察されたため、上澄み部分を除去し、凝集物が更に濃縮した「銀ナノワイヤ凝集物含有液」を得た。この銀ナノワイヤ凝集物含有液に対して、更に上澄みを抜き取る操作を施した。すると、ある時点で、液中に浮遊していた銀ナノワイヤの凝集物同士が一体化するという現象が起きた。この一体化した凝集物を固形分として回収した。ここで得られた固形分を「銀ナノワイヤ凝集物の固形分」と呼ぶ。
上記の銀ナノワイヤ凝集物の固形分が収容された容器に、2−プロパノール4.7kgを混合し、自動分散器(まぜまぜマン、SKH−40)を用いて2日間の分散処理を施すことによって、「アルコール系銀ナノワイヤ分散液」を得た。インク化しやすいよう前記アルコール系銀ナノワイヤ分散液を2−プロパノールで希釈した。この分散液を「インク元液A」と呼ぶ。インク元液Aの銀濃度は、0.89質量%であった。
(銀ナノワイヤの寸法形状)
平均長さLMを以下のようにして測定した。インク元液AをSEM用の観察台にとり、観察台上で水を揮発させたのち、電界放出形走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製;S−4700)により、加速電圧3kV、倍率1,500倍で観察を行った。無作為に選んだ3以上の視野について、視野内で全長が確認できるすべてのワイヤを測定対象として、ソフトウェア(ドクターカンバス)を用いて、上述の定義に従って平均長さLMを求めた。
平均直径DMを以下のようにして測定した。インク元液AをTEM用の観察台にとり、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製;JEM-1011)により、加速電圧100kV、倍率40,000倍で明視野像の観察を行って観察画像を採取し、正確に直径を測定するために採取された元画像を2倍のサイズに拡大した上で、ソフトウェア(Motic Image Plus2.1S)を用いて、上述の定義に従って平均直径DMを求めた。
平均アスペクト比AMを上述の(1)式に従って求めた。
その結果、インク元液Aに含有される銀ナノワイヤは、平均長さLMが17.5μm、平均直径DMが26.4nm、平均アスペクト比AMが663であった。長さ5.0μm以下のワイヤの個数割合が3.6%であった。
(HPMC水溶液の作製)
(1)メトキシ基19.6質量%、ヒドロキシプロポキシ基8.4質量%に調整されたHPMC(化学メーカーの製造による市販品、重量平均分子量:750,000)150gを95℃の純水9850gに添加し、撹拌しながら40℃まで放冷した。その後、反応槽のジャケットにチラーにより冷却した冷却水を流すことにより冷却し、12時間撹拌した。撹拌終了時の温度は10℃であった。得られたHPMC水溶液をフィルタ(L1P030、濾過精度3.0μm、ロキテクノ社製)でろ過し、不溶性成分の除去を行った。このHPMC水溶液を「増粘剤元液A」と呼ぶ。増粘剤元液AのHPMC濃度は1.33質量%であった。このHPMCのメトキシ基とヒドロキシプロポキシ基の質量割合の合計は28.0質量%である。
(2)メトキシ基21.5質量%、ヒドロキシプロポキシ基30.0質量%に調整されたHPMC(化学メーカーの製造によるもの、重量平均分子量:840,000)150gを95℃の純水9850gに添加し、撹拌しながら40℃まで放冷した。その後、反応槽のジャケットにチラーにより冷却した冷却水を流すことにより冷却し、12時間撹拌した。撹拌終了時の温度は9℃であった。得られたHPMC水溶液をフィルタ(L1P030、濾過精度3.0μm、ロキテクノ社製)でろ過し、不溶性成分の除去を行った。このHPMC水溶液を「増粘剤元液B」と呼ぶ。増粘剤元液Bの濃度は1.34質量%であった。このHPMCのメトキシ基とヒドロキシプロポキシ基の質量割合の合計は51.5質量%である。
《比較例1》
上記のインク元液A6.74gに、2−プロパノールを23.26g添加して、銀ナノワイヤ含有量が金属銀濃度換算で0.2質量%である銀ナノワイヤインクとした。すなわち、本例ではHPMCを含有しない銀ナノワイヤインクを試料インクとして用意し、以下の試験に供した。
(沈殿物評価)
試料インクをサンプル瓶に取り、目視にて液の沈殿物の有無を調べた。本例の試料インクには沈殿物は認められなかった。
(粘度測定)
Thermo scientific社製回転型粘度計、HAAKE RheoStress 600により、φ60mm、角度1°のコーンを用いて試料インクの粘性を測定した。測定時のギャップ0.052mm、温度25℃の条件で、シェアレートを1.511、3.021、6.042、15.11、30.21、60.42、120.8、302.1、604.2(1/s)と変化させながら各シェアレートにおいて20秒後の粘度値を測定した。シェアレートが604.2(1/s)のときの値をこのインクのシェアレート600±5(1/s)における25℃の粘度として採用した。
本例の試料インクのシェアレート600±5(1/s)における25℃の粘度は3.0mPa・sであった。
表1に、アルコール系銀ナノワイヤインク(試料インク)の組成および上記試験結果を示してある(以下の各例において同じ)。参考のため、表1中にはシェアレート302.1(1/s)における25℃の粘度も示した。
《比較例2》
(インク化)
上記のインク元液A6.74gに、2−プロパノールを21.01g添加し、その後、上記の増粘剤元液Aを2.25g添加し、自動分散器(まぜまぜマン、SKH−40)を用いて30℃で15時間の分散処理を施すことによって、銀含有量0.2質量%、HPMC含有量0.10質量%、水含有量7.4質量%、残部が2−プロパノールである銀ナノワイヤインク(試料インク)を得た。
この試料インクについて、比較例1と同様の沈殿物評価を行ったところ、沈殿物の生成が認められた。この沈殿物がHPMCの析出に起因するものであることを確認するために、増粘剤元液Aを25℃の2−プロパノールで希釈してHPMC濃度が0.10質量%になるよう調整した液(銀ナノワイヤを含まない液)を作製してみた。その結果、目視にて白い析出物の浮遊が認められた。したがって、上記試料インクに見られた沈殿物はHPMCの析出に起因するものであると判定された。この試料インクは銀ナノワイヤ導電膜を形成するための塗工液として使用できる品質を有していない。粘度の測定は実施しなかった。
《実施例1》
(インク化)
上記のインク元液A6.74gに、2−プロパノールを22.70g添加し、その後、上記の増粘剤元液Bを0.56g添加し、自動分散器(まぜまぜマン、SKH−40)を用いて30℃で15時間の分散処理を施すことによって、銀含有量0.2質量%、HPMC含有量0.025質量%、水含有量1.8質量%、残部が2−プロパノールである銀ナノワイヤインク(試料インク)を作製した。
この試料インクについて、比較例1と同様の試験を行った。その結果、沈殿物の生成は認められなかった。確認のため、増粘剤元液Bを26℃の2−プロパノールで希釈してHPMC濃度が0.025質量%になるよう調整した液(銀ナノワイヤを含まない液)を作製してみたところ、液は完全に透明な状態を維持しており、HPMCの析出に起因する白濁は認められなかった。シェアレート600±5(1/s)における25℃の粘度は4.0mPa・sであり、比較例1(HPMC無添加)と比べ粘度の高いアルコール系銀ナノワイヤインクが得られた。
《実施例2》
実施例1において、上記のインク元液A6.74gに、2−プロパノールを22.14g添加し、その後、上記の増粘剤元液Bを1.12g添加し、自動分散器(まぜまぜマン、SKH−40)を用いて31℃で15時間の分散処理を施すことによって、銀含有量0.2質量%、HPMC含有量0.050質量%、水含有量3.7質量%、残部が2−プロパノールである銀ナノワイヤインク(試料インク)を作製したことを除き、実施例1と同様の実験を行った。その結果、沈殿物の生成は認められなかった。確認のため、増粘剤元液Bを25℃の2−プロパノールで希釈してHPMC濃度が0.050質量%になるよう調整した液(銀ナノワイヤを含まない液)を作製してみたところ、液は完全に透明な状態を維持しており、HPMCの析出に起因する白濁は認められなかった。シェアレート600±5(1/s)における25℃の粘度は4.9mPa・sであり、実施例1よりもさらに粘度の高いアルコール系銀ナノワイヤインクが得られた。
《実施例3》
実施例1において、上記のインク元液A6.74gに、2−プロパノールを21.01g添加し、その後、上記の増粘剤元液Bを2.25g添加し、自動分散器(まぜまぜマン、SKH−40)を用いて31℃で15時間の分散処理を施すことによって、銀含有量0.2質量%、HPMC含有量0.10質量%、水含有量7.4質量%、残部が2−プロパノールである銀ナノワイヤインク(試料インク)を作製したことを除き、実施例1と同様の実験を行った。その結果、沈殿物の生成は認められなかった。確認のため、増粘剤元液Bを25℃の2−プロパノールで希釈してHPMC濃度が0.10質量%になるよう調整した液(銀ナノワイヤを含まない液)を作製してみたところ、液は完全に透明な状態を維持しており、HPMCの析出に起因する白濁は認められなかった。シェアレート600±5(1/s)における25℃の粘度は7.0mPa・sであり、実施例2よりもさらに粘度の高いアルコール系銀ナノワイヤインクが得られた。
《実施例4》
実施例1において、上記のインク元液A6.74gに、2−プロパノールを18.77g添加し、その後、上記の増粘剤元液Bを4.49g添加し、自動分散器(まぜまぜマン、SKH−40)を用いて30℃で15時間の分散処理を施すことによって、銀含有量0.2質量%、HPMC含有量0.20質量%、水含有量14.8質量%、残部が2−プロパノールである銀ナノワイヤインク(試料インク)を作製したことを除き、実施例1と同様の実験を行った。その結果、沈殿物の生成は認められなかった。確認のため、増粘剤元液Bを26℃の2−プロパノールで希釈してHPMC濃度が0.20質量%になるよう調整した液(銀ナノワイヤを含まない液)を作製してみたところ、液は完全に透明な状態を維持しており、HPMCの析出に起因する白濁は認められなかった。シェアレート600±5(1/s)における25℃の粘度は14.1mPa・sであり、実施例3よりもさらに粘度の高いアルコール系銀ナノワイヤインクが得られた。
《比較例3》
比較例1において、インク元液A10.11gに、2−プロパノールを19.89g添加することによって、銀ナノワイヤ含有量が金属銀濃度換算で0.3質量%である銀ナノワイヤインクを得たことを除き、比較例1と同様の実験を行った。すなわち、本例ではHPMCを含有しない銀ナノワイヤインクとして、銀含有量が0.3質量%である試料インクを用いた。試験の結果、本例の試料インクには沈殿物は認められなかった。シェアレート600±5(1/s)における25℃の粘度は3.4mPa・sであった。
《比較例4》
比較例2において、上記のインク元液A10.11gに、2−プロパノールを17.64g添加し、その後、上記の増粘剤元液Aを2.25g添加し、自動分散器(まぜまぜマン、SKH−40)を用いて29℃で15時間の分散処理を施すことによって、銀含有量0.3質量%、HPMC含有量0.10質量%、水含有量7.4質量%、残部が2−プロパノールである銀ナノワイヤインク(試料インク)を作製したことを除き、比較例2と同様の実験を行った。その結果、比較例2と同様、HPMCの析出に起因する沈殿物の生成が認められた。この試料インクは銀ナノワイヤ導電膜を形成するための塗工液として使用できる品質を有していない。粘度の測定は実施しなかった。
《実施例5》
実施例1において、上記のインク元液A10.11gに、2−プロパノールを19.33g添加し、その後、上記の増粘剤元液Bを0.56g添加し、自動分散器(まぜまぜマン、SKH−40)を用いて30℃で15時間の分散処理を施すことによって、銀含有量0.3質量%、HPMC含有量0.025質量%、水含有量1.8質量%、残部が2−プロパノールである銀ナノワイヤインク(試料インク)を作製したことを除き、実施例1と同様の実験を行った。その結果、HPMCの析出に起因する沈殿物の生成は認められなかった。シェアレート600±5(1/s)における25℃の粘度は4.7mPa・sであり、比較例3(HPMC無添加)と比べ粘度の高いアルコール系銀ナノワイヤインクが得られた。
《実施例6》
実施例5において、上記のインク元液A10.11gに、2−プロパノールを18.77g添加し、その後、上記の増粘剤元液Bを1.12g添加し、自動分散器(まぜまぜマン、SKH−40)を用いて31℃で15時間の分散処理を施すことによって、銀含有量0.3質量%、HPMC含有量0.050質量%、水含有量3.7質量%、残部が2−プロパノールである銀ナノワイヤインク(試料インク)を作製したことを除き、実施例5と同様の実験を行った。その結果、HPMCの析出に起因する沈殿物の生成は認められなかった。シェアレート600±5(1/s)における25℃の粘度は5.5mPa・sであり、実施例5よりもさらに粘度の高いアルコール系銀ナノワイヤインクが得られた。
《実施例7》
実施例5において、上記のインク元液A10.11gに、2−プロパノールを17.64g添加し、その後、上記の増粘剤元液Bを2.25g添加し、自動分散器(まぜまぜマン、SKH−40)を用いて30℃で15時間の分散処理を施すことによって、銀含有量0.3質量%、HPMC含有量0.10質量%、水含有量7.4質量%、残部が2−プロパノールである銀ナノワイヤインク(試料インク)を作製したことを除き、実施例5と同様の実験を行った。その結果、HPMCの析出に起因する沈殿物の生成は認められなかった。シェアレート600±5(1/s)における25℃の粘度は7.5mPa・sであり、実施例6よりもさらに粘度の高いアルコール系銀ナノワイヤインクが得られた。
《実施例8》
実施例5において、上記のインク元液A10.11gに、2−プロパノールを15.40g添加し、その後、上記の増粘剤元液Bを4.49g添加し、自動分散器(まぜまぜマン、SKH−40)を用いて30℃で15時間の分散処理を施すことによって、銀含有量0.3質量%、HPMC含有量0.20質量%、水含有量14.8質量%、残部が2−プロパノールである銀ナノワイヤインク(試料インク)を作製したことを除き、実施例5と同様の実験を行った。その結果、HPMCの析出に起因する沈殿物の生成は認められなかった。シェアレート600±5(1/s)における25℃の粘度は13.8mPa・sであり、実施例7よりもさらに粘度の高いアルコール系銀ナノワイヤインクが得られた。
Figure 2020007404
各実施例の銀ナノワイヤインクは、HPMCの析出に起因する沈殿物の生成が認められず、適度な粘性を有しており、かつ、沸点が例えば230℃以上と高いアルコール系増粘成分を含有していないことから、「導電性−ヘイズバランス」および「外観」に優れる銀ナノワイヤ導電膜を量産する際の塗工液として有用である。
1 タンク
2 ポンプ
3 クロスフローろ過フィルタ
4 上流側圧力計
5 下流側圧力計
6 クロスフロー循環洗浄前の銀ナノワイヤ分散液
7 補給する液状媒体
10 循環流路
30 ろ液

Claims (7)

  1. 炭素数1〜4の1価アルコールを主成分とし、メトキシ基とヒドロキシプロポキシ基の質量割合の合計が43質量%以上であるHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)が溶解している液状媒体中に、銀ナノワイヤが分散しており、回転型粘度計によるシェアレート600±5(1/s)における25℃の粘度が4.0〜20.0mPa・sである、アルコール系銀ナノワイヤインク。
  2. インクに占める前記HPMCの質量割合が0.01〜0.50質量%である、請求項1に記載のアルコール系銀ナノワイヤインク。
  3. インクに占める銀の質量割合が0.01〜3.0質量%である、請求項1または2に記載のアルコール系銀ナノワイヤインク。
  4. 前記液状媒体は水を含有し、インクに占める水の含有量が1.0〜25.0質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルコール系銀ナノワイヤインク。
  5. 前記銀ナノワイヤは、ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーが表面に付着しているものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルコール系銀ナノワイヤインク。
  6. 前記ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーは、ビニルピロリドンと他のモノマーとのコポリマーである、請求項5に記載のアルコール系銀ナノワイヤインク。
  7. 前記ビニルピロリドン構造単位を持つポリマーは、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウム(Diallyldimethylammonium)塩モノマーとのコポリマーである、請求項5に記載のアルコール系銀ナノワイヤインク。
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