JP2019147983A - 銀ナノワイヤ合成用有機保護剤並びに銀ナノワイヤおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルコールを添加した水系溶媒中や、アルコール系溶媒中において、従来のPVP被覆銀ナノワイヤよりも優れた分散性を発揮する銀ナノワイヤを合成するための、新たな技術を提供する。【解決手段】銀化合物と有機保護剤が溶解しているアルコール溶媒中で銀をワイヤ状に還元析出させる銀ナノワイヤの製造方法において、前記有機保護剤として、N−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーを使用する。前記コポリマーの共重合組成は、N−ビニル−ε−カプロラクタム:0.5〜15.0モル%、ビニルピロリドン:85.0〜99.5モル%の範囲で調整すればよい。【選択図】図2
Description
本発明は、アルコール溶媒還元法による銀ナノワイヤの合成に有用な有機保護剤に関する。また、それを用いて合成される銀ナノワイヤ、およびその製造方法に関する。
本明細書では、太さが200nm程度以下の微細な金属ワイヤを「ナノワイヤ(nanowire(s)」と呼ぶ。なかでも銀ナノワイヤは、透明基材に導電性を付与するための導電材料として有用である。銀ナノワイヤを含有する塗工液(銀ナノワイヤインク)をガラス、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)などの透明基材にコーティングしたのち、液状成分を除去させると、銀ナノワイヤは当該基材上で互いに接触し合うことにより導電ネットワークを形成し、透明導電体が得られる。
銀ナノワイヤの一般的な合成方法として、アルコール溶媒に銀化合物を溶解させ、ハロゲン化合物と有機保護剤の存在下において、溶媒のアルコールの還元力を利用して線状形状の金属銀を析出させる手法が知られている。この合成手法を本明細書では「アルコール溶媒還元法」と呼んでいる。アルコール溶媒還元法によると、通常、合成時に使用した有機保護剤に被覆された銀ナノワイヤが得られる。アルコール溶媒還元法で銀ナノワイヤを収率良く合成するために有用な有機保護剤としてPVP(ポリビニルピロリドン)が知られている(特許文献1、2、非特許文献1)。PVPに被覆された銀ナノワイヤは水中での分散性が良好であるため、アルコール溶媒還元法ではPVPが多用されている。
J.of Solid State Chem.1992,100,272−280
銀ナノワイヤを用いて透明導電体を製造するためには、「銀ナノワイヤインク」を透明基材上に塗布する工程が不可欠である。PVPで被覆された従来の銀ナノワイヤは、水に対して良好な分散性を示すため、通常、水系の液状媒体を用いた銀ナノワイヤインクとして提供される。ただし、透明基材に多用されているPET(ポリエチレンテレフタレート)との濡れ性を改善する必要があるため、銀ナノワイヤインクの水系溶媒中にはエタノール、2−プロパノール、エチレングリコールなどのアルコールが添加されることが一般的である。アルコールの添加量が多くなるほどPET基材との濡れ性は向上する。しかし、このアルコールの添加はPVP被覆された銀ナノワイヤの液中分散性を低下させるという問題がある。すなわち、水系溶媒中へのアルコールの添加量が多くなるとPVP被覆された銀ナノワイヤは液中で凝集しやすくなり、良好な分散性を有する銀ナノワイヤインクとして提供することが難しくなる。また、用途によってはアルコール系溶媒(例えばアルコール100%の溶媒)を用いた銀ナノワイヤ分散液を使用したいというニーズもある。PVPで被覆された従来の銀ナノワイヤでは、アルコール系溶媒での良好な分散安定性は望めない。
本発明は、アルコールを添加した水系溶媒中や、アルコール系溶媒中において、従来のPVP被覆銀ナノワイヤよりも優れた分散性を発揮する銀ナノワイヤを合成するための、新たな技術を提供しようというものである。
発明者らは研究の結果、アルコール溶媒中において有機保護剤の存在下で銀をワイヤ状に還元析出させる際に、有機保護剤として、PVPではなく、N−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーを使用することにより、アルコールを添加した水系溶媒中や、アルコール系溶媒中での分散性に優れる銀ナノワイヤが合成できることを発見した。この知見に基づき、本明細書では以下の発明を開示する。
[1]N−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーからなる、銀ナノワイヤ合成用有機保護剤。
[2]前記コポリマーは、N−ビニル−ε−カプロラクタム:0.5〜15.0モル%と、ビニルピロリドン:85.0〜99.5モル%の共重合組成を有するものである、上記[1]に記載の銀ナノワイヤ合成用有機保護剤。
[3]N−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーに被覆された、平均直径200nm以下、平均長さ5.0μm以上の銀ナノワイヤ。
[4]前記コポリマーは、N−ビニル−ε−カプロラクタム:0.5〜15.0モル%と、ビニルピロリドン:85.0〜99.5モル%の共重合組成を有するものである、上記[3]に記載の銀ナノワイヤ。
[5]銀化合物と有機保護剤が溶解しているアルコール溶媒中で銀をワイヤ状に還元析出させる銀ナノワイヤの製造方法において、前記有機保護剤として、N−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーを使用する銀ナノワイヤの製造方法。
[6]前記コポリマーは、N−ビニル−ε−カプロラクタム:0.5〜15.0モル%と、ビニルピロリドン:85.0〜99.5モル%の共重合組成を有するものである、上記[5]に記載の銀ナノワイヤの製造方法。
[2]前記コポリマーは、N−ビニル−ε−カプロラクタム:0.5〜15.0モル%と、ビニルピロリドン:85.0〜99.5モル%の共重合組成を有するものである、上記[1]に記載の銀ナノワイヤ合成用有機保護剤。
[3]N−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーに被覆された、平均直径200nm以下、平均長さ5.0μm以上の銀ナノワイヤ。
[4]前記コポリマーは、N−ビニル−ε−カプロラクタム:0.5〜15.0モル%と、ビニルピロリドン:85.0〜99.5モル%の共重合組成を有するものである、上記[3]に記載の銀ナノワイヤ。
[5]銀化合物と有機保護剤が溶解しているアルコール溶媒中で銀をワイヤ状に還元析出させる銀ナノワイヤの製造方法において、前記有機保護剤として、N−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーを使用する銀ナノワイヤの製造方法。
[6]前記コポリマーは、N−ビニル−ε−カプロラクタム:0.5〜15.0モル%と、ビニルピロリドン:85.0〜99.5モル%の共重合組成を有するものである、上記[5]に記載の銀ナノワイヤの製造方法。
本明細書において、平均直径、平均長さ、平均アスペクト比は以下の定義に従う。
〔平均長さ〕
顕微鏡画像(例えばFE−SEM画像)上で、ある1本の銀ナノワイヤの一端から他端までのトレース長さを、そのワイヤの長さと定義する。顕微鏡画像上に存在する個々の銀ナノワイヤの長さを平均した値を、平均長さと定義する。平均長さを算出するためには、測定対象のワイヤの総数を100以上とする。ただし、最も長い部分の長さ(「長径」という)と、長径に対して直角方向の最も長い部分の長さ(「短径」という)の比(「軸比」という)が5.0未満である析出生成物は、粒状生成物とみなして、平均長さの測定対象から外す。
顕微鏡画像(例えばFE−SEM画像)上で、ある1本の銀ナノワイヤの一端から他端までのトレース長さを、そのワイヤの長さと定義する。顕微鏡画像上に存在する個々の銀ナノワイヤの長さを平均した値を、平均長さと定義する。平均長さを算出するためには、測定対象のワイヤの総数を100以上とする。ただし、最も長い部分の長さ(「長径」という)と、長径に対して直角方向の最も長い部分の長さ(「短径」という)の比(「軸比」という)が5.0未満である析出生成物は、粒状生成物とみなして、平均長さの測定対象から外す。
〔平均直径〕
顕微鏡画像(例えばFE−SEM画像)上で、ある1本の銀ナノワイヤにおける太さ方向両側の輪郭間の平均幅を、そのワイヤの直径と定義する。顕微鏡画像上に存在する個々の銀ナノワイヤの直径を平均した値を、平均直径と定義する。平均直径を算出するためには、測定対象のワイヤの総数を100以上とする。ただし、上述の軸比が5.0未満である析出生成物は、粒状生成物とみなして、長さ平均直径の測定対象から外す。
顕微鏡画像(例えばFE−SEM画像)上で、ある1本の銀ナノワイヤにおける太さ方向両側の輪郭間の平均幅を、そのワイヤの直径と定義する。顕微鏡画像上に存在する個々の銀ナノワイヤの直径を平均した値を、平均直径と定義する。平均直径を算出するためには、測定対象のワイヤの総数を100以上とする。ただし、上述の軸比が5.0未満である析出生成物は、粒状生成物とみなして、長さ平均直径の測定対象から外す。
〔平均アスペクト比〕
上記の平均直径および平均長さを下記(1)式に代入することにより平均アスペクト比を算出する。
[平均アスペクト比]=[平均長さ(nm)]/[平均直径(nm)] …(1)
上記の平均直径および平均長さを下記(1)式に代入することにより平均アスペクト比を算出する。
[平均アスペクト比]=[平均長さ(nm)]/[平均直径(nm)] …(1)
本発明では、N−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーからなる、銀ナノワイヤ合成用の有機保護剤を開示した。この新たなタイプの有機保護剤は、PVPに比べ、アルコールを添加した水系溶媒中およびアルコール溶媒中での分散性が改善できる点で、PVPとは異質の効果を呈する。コポリマーの共重合組成を調整することにより有機保護剤の親水性、疎水性の程度を変化させると、液状媒体の種類に応じて銀ナノワイヤの分散性を適正化することが可能になると考えられる。なお、この有機保護剤を用いた銀ナノワイヤの合成においては、より好適な合成条件を探求することにより、さらに細くて長い銀ナノワイヤの合成が可能になるものと期待される。
《有機保護剤》
アルコール溶媒還元法による銀ナノワイヤの合成に用いる有機保護剤は、還元反応で析出した銀ナノワイヤの表面を覆い、粗大成長を抑止する作用を呈する。また、得られた銀ナノワイヤの表面に存在する有機保護剤は液状媒体への分散性を確保する作用を呈する。
アルコール溶媒還元法による銀ナノワイヤの合成に用いる有機保護剤は、還元反応で析出した銀ナノワイヤの表面を覆い、粗大成長を抑止する作用を呈する。また、得られた銀ナノワイヤの表面に存在する有機保護剤は液状媒体への分散性を確保する作用を呈する。
上述のように、従来から有機保護剤に多用されているPVP(ポリビニルピロリドン)は親水性が高いために、PVPを用いて合成された銀ナノワイヤは、アルコールを添加して基材との濡れ性を改善した水系の液状媒体中や、アルコール系の液状媒体中での分散性が低下する。そのため、保存安定性(ワイヤの分散状態が長時間維持され沈降が生じにくい性質)に優れる銀ナノワイヤインクを製造するためには、親水性を多少低下させた有機保護剤の適用が望ましい。なお、本明細書では、液体を構成する物質のうち、水の質量割合が50%以上である液体を「水系」、アルコールの質量割合が50%を超える液体を「アルコール系」と呼んでいる。
本発明では、PVPよりも親水性を多少低下させた、別の新しいコポリマーとして、N−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーを開示する。図1に、N−ビニル−ε−カプロラクタム(C8H13NO)の構造式を示す。図2に、N−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーの構造式を示す。なお、図2中の小文字のアルファベット記号a〜lは、後述の図11に示すNMR(核磁気共鳴分光法)によるスペクトルのピーク位置との対応関係を表すものである。
発明者らの研究によれば、N−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーは、アルコール溶媒還元法により銀ナノワイヤを合成させるための有機保護剤として有用であることがわかった。その共重合組成は、例えばN−ビニル−ε−カプロラクタム:0.5〜15.0モル%と、ビニルピロリドン:85.0〜99.5モル%からなる組成とすることができる。細くて長いワイヤの比率を高めるためには、N−ビニル−ε−カプロラクタム:0.5〜3.0モル%と、ビニルピロリドン:97.0〜99.5モル%からなる組成とすることがより好ましい。
《銀ナノワイヤの合成》
上記のN−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーからなる有機保護剤を使用して、アルコール溶媒還元法により銀ナノワイヤを合成する手法について例示する。
上記のN−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーからなる有機保護剤を使用して、アルコール溶媒還元法により銀ナノワイヤを合成する手法について例示する。
〔アルコール溶媒〕
適用するアルコールの種類としては、銀に対して適度な還元力を有し、金属銀をワイヤ状に析出させることができるものが選択される。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、ベンジルアルコールなどが挙げられる。これらのアルコールは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
適用するアルコールの種類としては、銀に対して適度な還元力を有し、金属銀をワイヤ状に析出させることができるものが選択される。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、ベンジルアルコールなどが挙げられる。これらのアルコールは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
〔銀化合物〕
銀ナノワイヤを還元析出させるための銀源として、溶媒に可溶な銀化合物を使用する。例えば、硝酸銀、酢酸銀、酸化銀、塩化銀などが挙げられるが、溶媒に対する溶解性やコストを考慮すると硝酸銀(AgNO3)が使いやすい。使用するアルコール溶媒の総量に対するAg添加量は、溶媒1L当たりAg0.001〜0.1モルの範囲で調整することが好ましい。
銀ナノワイヤを還元析出させるための銀源として、溶媒に可溶な銀化合物を使用する。例えば、硝酸銀、酢酸銀、酸化銀、塩化銀などが挙げられるが、溶媒に対する溶解性やコストを考慮すると硝酸銀(AgNO3)が使いやすい。使用するアルコール溶媒の総量に対するAg添加量は、溶媒1L当たりAg0.001〜0.1モルの範囲で調整することが好ましい。
〔塩化物〕
アルコール溶媒中で金属銀をワイヤ状に還元析出させるためには、析出の成長方向に異方性を持たせる作用を有する塩化物イオンを存在させることが効果的である。塩化物イオンは、核生成した金属銀の特定の結晶面を速やかにエッチングして多重双晶の生成を促し、それによってワイヤとなる核晶の存在比率を高める効果を有すると考えられる。塩化物イオン源としては、溶媒であるアルコールに溶解する塩化物であれば種々のものが適用対象となる。有機塩素化合物であるTBAC(テトラブチルアンモニウムクロライド;(CH3CH2CH2CH2)4NCl)なども対象となる。工業上入手しやすく、価格の安い塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化水素(HCl)、塩化リチウム(LiCl)などが好適な対象となる。また、アルコール溶媒に可溶な塩化銅(II)(CuCl2)を使用してもよい。使用するアルコール溶媒の総量に対する塩化物の添加量は、溶媒1L当たりのCl量として0.00001(1×10-5)〜0.01モルの範囲で調整することが好ましい。
アルコール溶媒中で金属銀をワイヤ状に還元析出させるためには、析出の成長方向に異方性を持たせる作用を有する塩化物イオンを存在させることが効果的である。塩化物イオンは、核生成した金属銀の特定の結晶面を速やかにエッチングして多重双晶の生成を促し、それによってワイヤとなる核晶の存在比率を高める効果を有すると考えられる。塩化物イオン源としては、溶媒であるアルコールに溶解する塩化物であれば種々のものが適用対象となる。有機塩素化合物であるTBAC(テトラブチルアンモニウムクロライド;(CH3CH2CH2CH2)4NCl)なども対象となる。工業上入手しやすく、価格の安い塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化水素(HCl)、塩化リチウム(LiCl)などが好適な対象となる。また、アルコール溶媒に可溶な塩化銅(II)(CuCl2)を使用してもよい。使用するアルコール溶媒の総量に対する塩化物の添加量は、溶媒1L当たりのCl量として0.00001(1×10-5)〜0.01モルの範囲で調整することが好ましい。
〔銀ナノワイヤ合成手順の例示〕
銀の還元析出反応を進行させる温度は60℃以上、溶媒の沸点以下の範囲で設定することができる。沸点は、反応容器内の溶媒液面が接する気相空間の圧力における沸点である。複数種類のアルコールを混合して溶媒とする場合、最も沸点が低いアルコールの沸点以下の温度とすればよい。ただし、穏やかに反応を進行させる観点から、沸騰を避け、沸点より低い温度に管理することが好ましい。反応時間は例えば10分〜100時間の範囲で設定すればよい。
銀の還元析出反応を進行させる温度は60℃以上、溶媒の沸点以下の範囲で設定することができる。沸点は、反応容器内の溶媒液面が接する気相空間の圧力における沸点である。複数種類のアルコールを混合して溶媒とする場合、最も沸点が低いアルコールの沸点以下の温度とすればよい。ただし、穏やかに反応を進行させる観点から、沸騰を避け、沸点より低い温度に管理することが好ましい。反応時間は例えば10分〜100時間の範囲で設定すればよい。
手順としては、アルコール溶媒中に銀化合物以外の各物質を溶解させておき、その溶媒(以下「溶液A」という。)の温度が所定の反応温度に到達したのちに、銀化合物を溶液A中に添加することが望ましい。銀化合物は、予め別の容器で前記溶媒と同種のアルコール溶媒に溶解させておき、その銀含有液(「溶液B」という。)を溶液A中に混合する方法で添加することができる。溶液Aに混合する前の溶液Bは、常温付近の温度(例えば15〜40℃)とすればよい。溶液Bの温度が低すぎると銀化合物の溶解に時間がかかり、高すぎると溶液B中のアルコール溶媒の還元力によって溶液Aに混合する前の段階で銀の還元反応が起こりやすくなる。硝酸銀など、アルコール溶媒に溶けやすい銀化合物は、固体のまま前記溶液A中に添加してもよい。銀化合物の添加は、全量を一度に添加する方法や、一定時間内に断続的または継続的に添加する方法が採用できる。反応進行中は液の撹拌を継続する。また、反応進行中に溶液Aの液面が接する気相の雰囲気は大気または窒素とすることができる。
銀の析出反応が終了したのち、銀ナノワイヤを含有するスラリーを遠心分離やデカンテーションなどの手段を用いて固液分離して固形分を回収する。デカンテーションは、静置したまま1日〜2週間程度かけ濃縮を行ってもよいし、スラリーに、アセトン、トルエン、ヘキサン、ケロシンなどの極性の小さい溶媒を少なくとも1種類以上添加し、沈降速度を速めて濃縮してもよい。遠心分離の場合は、反応後のスラリーをそのまま遠心分離機にかけて、銀ナノワイヤを濃縮すればよい。
濃縮後、上澄みを除去する。その後、水やアルコールなど極性の大きい溶媒を添加し、銀ナノワイヤを再分散させ、さらに遠心分離やデカンテーションなどの手段を用いて固液分離して固形分を回収する。この再分散と濃縮の工程(洗浄)を繰り返して行うことが好ましい。
このようにして、平均直径200nm以下、平均長さ5.0μm以上の銀ナノワイヤを得ることができる。このような寸法形状の銀ナノワイヤは、導電塗膜を形成するための導電フィラーとして有用である。特に、透明導電膜の導電フィラーとして使用する場合は、例えば平均直径100nm以下、平均長さ5.0μm以上の細くて長いワイヤであることが、導電性と視認性(低ヘイズ特性)を両立させる上で有利となる。
その後、必要に応じて、遠心分離、デカンテーション、フィルタリングなどの操作によって、所定の長さ分布を有する銀ナノワイヤを回収する(精製)。精製された銀ナノワイヤの分散液に、粘度調整剤やバインダー成分を添加して所定の性状に調整することにより、銀ナノワイヤインクを得ることができる。本発明に従うコポリマーからなる有機保護剤に被覆された銀ナノワイヤでは、従来一般的なPVPに被覆された銀ナノワイヤに比べ親水性が低くなるようにコントロールできるので、分散安定性の高いインクを構築するための液状媒体の選択自由度を広げることができる。
〔比較例1〕
有機保護剤としてPVPを用いた実験例を示す。
<PVPの作製>
蓋で密閉できる100mLのガラス容器に、溶媒である1,4−ジオキサン45gと、1−ビニル2ピロリドン11.114gおよび重合開始剤である2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.576gを入れ、マグネチックスターラーを用いて撹拌し、溶媒中に各物質を溶解させた。溶解後の溶液を撹拌しながらに、窒素ガスを10分間吹き込んだ後、蓋で容器を密閉し、窒素雰囲気を維持できるようにした。この溶液をマグネチックスターラーにより800rpmで撹拌しながら60℃で24時間保持した。24時間後、反応を止めるために、氷水の中に容器をつけ急速冷却した。
有機保護剤としてPVPを用いた実験例を示す。
<PVPの作製>
蓋で密閉できる100mLのガラス容器に、溶媒である1,4−ジオキサン45gと、1−ビニル2ピロリドン11.114gおよび重合開始剤である2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.576gを入れ、マグネチックスターラーを用いて撹拌し、溶媒中に各物質を溶解させた。溶解後の溶液を撹拌しながらに、窒素ガスを10分間吹き込んだ後、蓋で容器を密閉し、窒素雰囲気を維持できるようにした。この溶液をマグネチックスターラーにより800rpmで撹拌しながら60℃で24時間保持した。24時間後、反応を止めるために、氷水の中に容器をつけ急速冷却した。
未反応のモノマーや重合開始剤などを除去する目的で以下の洗浄操作を行った。
前記の24時間保持した溶液を、撹拌状態にある500mLのエチルエーテル(和光純薬工業製、特級)中にビュレットを使い滴下した。滴下することにより、PVPが析出する。析出したPVPをメンブレンフィルターでろ過して回収し、PVPの固形物を得た(1回目の洗浄工程終了)。
前記の24時間保持した溶液を、撹拌状態にある500mLのエチルエーテル(和光純薬工業製、特級)中にビュレットを使い滴下した。滴下することにより、PVPが析出する。析出したPVPをメンブレンフィルターでろ過して回収し、PVPの固形物を得た(1回目の洗浄工程終了)。
1回目の洗浄工程を終了したPVPの固形物を30mLのクロロホルムに溶解させた。この溶液を、撹拌状態にある500mLのエチルエーテル中にビュレットを使い滴下した。滴下することにより、PVPが析出する。析出したPVPをメンブレンフィルターでろ過して回収し、PVPの固形物を得た(2回目の洗浄工程終了)。
2回目の洗浄工程を終了したPVPの固形物を再度30mLのクロロホルムに溶解させた。この溶液を、撹拌状態にある500mLのエチルエーテル中にビュレットを使い滴下した。滴下することにより、PVPコポリマーが析出する。析出したPVPをメンブレンフィルターでろ過して回収し、これを60℃真空乾燥により24時間乾燥させ、PVPの乾燥物を得た(3回目の洗浄工程終了)。以上の洗浄操作を経て、ビニルピロリドンが重合した構造を有するPVPの乾燥物が作製された。
<銀ナノワイヤの合成>
常温にて、300mLの四ツ口フラスコに、ベンジルアルコール(和光純薬工業製、特級)100mLを入れ、その中に、PVP0.40g、塩酸(和光純薬工業製、特級)含有量が2.5質量%であるベンジルアルコール溶液1.00gをそれぞれ添加して混合し、溶液Aとした。これとは別の容器中で硝酸銀(東洋化学工業製、特級)0.425gをベンジルアルコール49.575g中に溶解させ、溶液Bとした。
常温にて、300mLの四ツ口フラスコに、ベンジルアルコール(和光純薬工業製、特級)100mLを入れ、その中に、PVP0.40g、塩酸(和光純薬工業製、特級)含有量が2.5質量%であるベンジルアルコール溶液1.00gをそれぞれ添加して混合し、溶液Aとした。これとは別の容器中で硝酸銀(東洋化学工業製、特級)0.425gをベンジルアルコール49.575g中に溶解させ、溶液Bとした。
大気開放下において前記溶液Aの全量を常温から190℃まで320rpmで撹拌しながら昇温した。190℃に到達後、撹拌状態を維持している溶液A中に、前記溶液Bの全量をチューブポンプで360分かけて添加し、銀の析出反応が終了した反応液を得た。その後、反応液を常温まで冷却した。
冷却後の反応液にメタノール(和光純薬工業製、一級)を120mL添加し、2500rpmで20分間遠心分離した。遠心分離後、上澄みの液をデカンテーションで除去し、沈殿物を回収した。その後、回収された沈殿物に2−プロパノールを240mL添加し、30秒撹拌して沈殿物を分散させた後、さらに1500rpmで10分間遠心分離を行うという洗浄操作を数回繰り返して、十分に洗浄された沈殿物(以下、これを「洗浄後の沈殿物」という。)を得た。
洗浄後の沈殿物のサンプルをFE−SEM(電界放出形走査電子顕微鏡)にて観察した。当該沈殿物は銀ナノワイヤを主体とするものであった。この銀ナノワイヤは、上掲の定義に従う平均長さが14.7μm、平均直径が95nm、平均アスペクト比が14700/95≒155であった。図3に、この銀ナノワイヤのSEM写真を例示する。倍率を変えて撮影した2枚の写真を表示してある(以下の各例において同じ)。左図は、写真の画面内に表示されるスケール目盛り11点の左端から右端までの距離が1.00μmに相当する。なお、直径測定は、高分解能FE−SEM(電界放出形走査電子顕微鏡、日立製作所製、S−4700)を用いてウルトラハイレゾリューションモード、焦点距離15mm、加速電圧15kV、倍率30,000倍で撮影したSEM画像、長さ測定は、ノーマルモード、焦点距離15mm、加速電圧15kV、倍率2,000倍で撮影したSEM画像をそれぞれ用いて行った(以下の各例において同じ)。
〔実施例1〕
有機保護剤としてN−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーを用いた実験例を示す。以下において、「VP−VCLコポリマー」の記載は、N−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーを意味する。
有機保護剤としてN−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーを用いた実験例を示す。以下において、「VP−VCLコポリマー」の記載は、N−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーを意味する。
<VP−VCLコポリマーの作製>
蓋で密閉できる100mLのガラス容器に、溶媒である1,4−ジオキサン45gと、1−ビニル2ピロリドン11.003g、N−ビニル−ε−カプロラクタム(分子量139.20、東京化成工業製、一級)0.139g、および重合開始剤である2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.576gを入れ、マグネチックスターラーを用いて撹拌し、溶媒中に各物質を溶解させた。溶解後の溶液を撹拌しながらに、窒素ガスを10分間吹き込んだ後、蓋で容器を密閉し、窒素雰囲気が維持されるようにした。この溶液をマグネチックスターラーにより800rpmで撹拌しながら60℃で24時間保持した。24時間後、反応を止めるために、氷水の中に容器をつけ急速冷却した。
蓋で密閉できる100mLのガラス容器に、溶媒である1,4−ジオキサン45gと、1−ビニル2ピロリドン11.003g、N−ビニル−ε−カプロラクタム(分子量139.20、東京化成工業製、一級)0.139g、および重合開始剤である2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.576gを入れ、マグネチックスターラーを用いて撹拌し、溶媒中に各物質を溶解させた。溶解後の溶液を撹拌しながらに、窒素ガスを10分間吹き込んだ後、蓋で容器を密閉し、窒素雰囲気が維持されるようにした。この溶液をマグネチックスターラーにより800rpmで撹拌しながら60℃で24時間保持した。24時間後、反応を止めるために、氷水の中に容器をつけ急速冷却した。
未反応のモノマーや重合開始剤などを除去する目的で以下の洗浄操作を行った。
前記の24時間保持した溶液を、撹拌状態にある500mLのエチルエーテル(和光純薬工業製、特級)中にビュレットを使い滴下した。滴下することにより、VP−VCLコポリマーが析出する。析出したVP−VCLコポリマーをメンブレンフィルターでろ過して回収し、VP−VCLコポリマーの固形物を得た(1回目の洗浄工程終了)。
前記の24時間保持した溶液を、撹拌状態にある500mLのエチルエーテル(和光純薬工業製、特級)中にビュレットを使い滴下した。滴下することにより、VP−VCLコポリマーが析出する。析出したVP−VCLコポリマーをメンブレンフィルターでろ過して回収し、VP−VCLコポリマーの固形物を得た(1回目の洗浄工程終了)。
1回目の洗浄工程を終了したVP−VCLコポリマーの固形物を30mLのクロロホルムに溶解させた。この溶液を、撹拌状態にある500mLのエチルエーテル中にビュレットを使い滴下した。滴下することにより、VP−VCLコポリマーが析出する。析出したVP−VCLコポリマーをメンブレンフィルターでろ過して回収し、VP−VCLコポリマーの固形物を得た(2回目の洗浄工程終了)。
2回目の洗浄工程を終了したVP−VCLコポリマーの固形物を再度30mLのクロロホルムに溶解させた。この溶液を、撹拌状態にある500mLのエチルエーテル中にビュレットを使い滴下した。滴下することにより、VP−VCLコポリマーが析出する。析出したVP−VCLコポリマーをメンブレンフィルターでろ過して回収し、これを60℃真空乾燥により24時間乾燥させ、VP−VCLコポリマーの乾燥物を得た(3回目の洗浄工程終了)。
以上の洗浄操作を経て、1.2質量部のN−ビニル−ε−カプロラクタムと98.8質量部のビニルピロリドンが重合した構造を有するVP−VCLコポリマーの乾燥物が作製された。各モノマーの仕込み量をモル%に換算すると、このコポリマーの共重合組成は、N−ビニル−ε−カプロラクタム1.0モル%、ビニルピロリドン99.0モル%となる。
得られたVP−VCLコポリマーについて、NMR(核磁気共鳴法)スペクトルを測定した。図11にそのNMRスペクトルを示す。横軸は化学シフトである。測定されたNMRスペクトルには、図2に記入したアルファベット記号の位置に対応すると考えられるピークが観測された。すなわち、上記の手法で作製したVP−VCLコポリマーは、N−ビニル−ε−カプロラクタムに由来する構造部分を有していることが確認できた。なお、図11中、「TMS」は標準物質として重クロロホルムに含まれているテトラメチルシラン(0ppm)を表す。また、溶媒であるCHCl3および溶媒中に微量含まれているH2Oのピークも示してある。
得られたVP−VCLコポリマーについて、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定により重量平均分子量を求めた。まず、前処理として、コポリマーを溶離液であるN,N−ジメチルホルムアミド(30mM臭化リチウム添加)に溶解させ、この溶液を孔径0.45μmメンブレンフィルターでろ過した。フィルターを通過したろ液を測定用の試料溶液とした。その他の測定条件を以下に示す。
・カラム:TSKgel α−M×2+α−2500
・溶離液:30mM臭化リチウムを添加したN,N−ジメチルホルムアミド
・流量:1.0mL/min
・検出器:RI検出器、光散乱検出器(MALS)
・カラム温度:40℃
・注入量:200μL
測定の結果、重量平均分子量は67,016と求まった。
・カラム:TSKgel α−M×2+α−2500
・溶離液:30mM臭化リチウムを添加したN,N−ジメチルホルムアミド
・流量:1.0mL/min
・検出器:RI検出器、光散乱検出器(MALS)
・カラム温度:40℃
・注入量:200μL
測定の結果、重量平均分子量は67,016と求まった。
<銀ナノワイヤの合成>
有機保護剤として上記VP−VCLコポリマーを適用したことを除き、基本的に比較例1と同様の条件で銀ナノワイヤの合成を行った。具体的には以下の通りである。
常温にて、300mLの四ツ口フラスコに、ベンジルアルコール100mLを入れ、その中に、VP−VCLコポリマー0.40g、塩酸含有量が2.5質量%であるベンジルアルコール溶液1.00gをそれぞれ添加して混合し、溶液Aとした。これとは別の容器中で硝酸銀0.425gをベンジルアルコール49.575g中に溶解させ、溶液Bとした。
有機保護剤として上記VP−VCLコポリマーを適用したことを除き、基本的に比較例1と同様の条件で銀ナノワイヤの合成を行った。具体的には以下の通りである。
常温にて、300mLの四ツ口フラスコに、ベンジルアルコール100mLを入れ、その中に、VP−VCLコポリマー0.40g、塩酸含有量が2.5質量%であるベンジルアルコール溶液1.00gをそれぞれ添加して混合し、溶液Aとした。これとは別の容器中で硝酸銀0.425gをベンジルアルコール49.575g中に溶解させ、溶液Bとした。
大気開放下において前記溶液Aの全量を常温から190℃まで320rpmで撹拌しながら昇温した。190℃到達後、撹拌状態を維持している溶液A中に、前記溶液Bの全量をチューブポンプで360分かけて添加し、銀の析出反応が終了した反応液を得た。その後、反応液を常温まで冷却した。
冷却後の反応液に比較例1と同様の洗浄操作を施し、洗浄後の沈殿物を得た。FE−SEMにて観察したところ、当該沈殿物は銀ナノワイヤを主体とするものであった。この銀ナノワイヤは、上掲の定義に従う平均長さが8.0μm、平均直径が52nm、平均アスペクト比が8000/52≒154であった。図4に、この銀ナノワイヤのSEM写真を例示する。写真の画面内に表示されるスケール目盛り11点の左端から右端までの距離が、左図では1.00μm、右図では10.0μmに相当する(以下の各例において同じ)。
〔実施例2〕
実施例1における銀ナノワイヤの合成において、VP−VCLコポリマーの添加量を0.4gから0.2gに低減させたことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。FE−SEMにて観察したところ、洗浄後の沈殿物は銀ナノワイヤを主体とするものであった。この銀ナノワイヤは、上掲の定義に従う平均長さが15.6μm、平均直径が111nm、平均アスペクト比が15600/111≒141であった。図5に、この銀ナノワイヤのSEM写真を例示する。
実施例1における銀ナノワイヤの合成において、VP−VCLコポリマーの添加量を0.4gから0.2gに低減させたことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。FE−SEMにて観察したところ、洗浄後の沈殿物は銀ナノワイヤを主体とするものであった。この銀ナノワイヤは、上掲の定義に従う平均長さが15.6μm、平均直径が111nm、平均アスペクト比が15600/111≒141であった。図5に、この銀ナノワイヤのSEM写真を例示する。
〔実施例3〕
実施例1における銀ナノワイヤの合成において、VP−VCLコポリマーの添加量を0.4gから0.6gに増加させたことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。FE−SEMにて観察したところ、洗浄後の沈殿物は銀ナノワイヤを主体とするものであった。この銀ナノワイヤは、上掲の定義に従う平均長さが11.6μm、平均直径が90nm、平均アスペクト比が11600/90≒129であった。図6に、この銀ナノワイヤのSEM写真を例示する。
実施例1における銀ナノワイヤの合成において、VP−VCLコポリマーの添加量を0.4gから0.6gに増加させたことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。FE−SEMにて観察したところ、洗浄後の沈殿物は銀ナノワイヤを主体とするものであった。この銀ナノワイヤは、上掲の定義に従う平均長さが11.6μm、平均直径が90nm、平均アスペクト比が11600/90≒129であった。図6に、この銀ナノワイヤのSEM写真を例示する。
〔実施例4〕
実施例1におけるVP−VCLコポリマーの作製において、N−ビニル−ε−カプロラクタムの添加量を0.139gから0.281gに増加させたことを除き、実施例1と同じ条件でコポリマーを作製した。得られたコポリマーは、2.5質量部のN−ビニル−ε−カプロラクタムと97.5質量部のビニルピロリドンが重合した構造を有するVP−VCLコポリマーである。各モノマーの仕込み量をモル%に換算すると、このコポリマーの共重合組成は、N−ビニル−ε−カプロラクタム2.0モル%、ビニルピロリドン98.0モル%となる。
実施例1におけるVP−VCLコポリマーの作製において、N−ビニル−ε−カプロラクタムの添加量を0.139gから0.281gに増加させたことを除き、実施例1と同じ条件でコポリマーを作製した。得られたコポリマーは、2.5質量部のN−ビニル−ε−カプロラクタムと97.5質量部のビニルピロリドンが重合した構造を有するVP−VCLコポリマーである。各モノマーの仕込み量をモル%に換算すると、このコポリマーの共重合組成は、N−ビニル−ε−カプロラクタム2.0モル%、ビニルピロリドン98.0モル%となる。
上記で得られたVP−VCLコポリマーを用いて実施例1と同様に銀ナノワイヤの合成を行った。FE−SEMにて観察したところ、洗浄後の沈殿物は銀ナノワイヤを主体とするものであった。この銀ナノワイヤは、上掲の定義に従う平均長さが13.9μm、平均直径が100nm、平均アスペクト比が13900/100=139であった。図7に、この銀ナノワイヤのSEM写真を例示する。
〔実施例5〕
実施例1におけるVP−VCLコポリマーの作製において、N−ビニル−ε−カプロラクタムの添加量を0.139gから1.531gに増加させたことを除き、実施例1と同じ条件でコポリマーを作製した。得られたコポリマーは、12質量部のN−ビニル−ε−カプロラクタムと88質量部のビニルピロリドンが重合した構造を有するVP−VCLコポリマーである。各モノマーの仕込み量をモル%に換算すると、このコポリマーの共重合組成は、N−ビニル−ε−カプロラクタム10.0モル%、ビニルピロリドン90.0モル%となる。
実施例1におけるVP−VCLコポリマーの作製において、N−ビニル−ε−カプロラクタムの添加量を0.139gから1.531gに増加させたことを除き、実施例1と同じ条件でコポリマーを作製した。得られたコポリマーは、12質量部のN−ビニル−ε−カプロラクタムと88質量部のビニルピロリドンが重合した構造を有するVP−VCLコポリマーである。各モノマーの仕込み量をモル%に換算すると、このコポリマーの共重合組成は、N−ビニル−ε−カプロラクタム10.0モル%、ビニルピロリドン90.0モル%となる。
上記で得られたVP−VCLコポリマーを用いて実施例1と同様に銀ナノワイヤの合成を行った。FE−SEMにて観察したところ、洗浄後の沈殿物は銀ナノワイヤを主体とするものであった。この銀ナノワイヤは、上掲の定義に従う平均長さが11.7μm、平均直径が119nm、平均アスペクト比が11700/119≒98であった。図8に、この銀ナノワイヤのSEM写真を例示する。
〔実施例6〕
実施例1における銀ナノワイヤの合成において、溶液Aを作製するために使用した塩酸含有量が2.5質量%であるベンジルアルコール溶液の添加量を1.00gから0.50gに変更したことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。FE−SEMにて観察したところ、洗浄後の沈殿物は銀ナノワイヤを主体とするものであった。この銀ナノワイヤは、上掲の定義に従う平均長さが10.4μm、平均直径が75nm、平均アスペクト比が10400/75≒139であった。図9に、この銀ナノワイヤのSEM写真を例示する。
実施例1における銀ナノワイヤの合成において、溶液Aを作製するために使用した塩酸含有量が2.5質量%であるベンジルアルコール溶液の添加量を1.00gから0.50gに変更したことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。FE−SEMにて観察したところ、洗浄後の沈殿物は銀ナノワイヤを主体とするものであった。この銀ナノワイヤは、上掲の定義に従う平均長さが10.4μm、平均直径が75nm、平均アスペクト比が10400/75≒139であった。図9に、この銀ナノワイヤのSEM写真を例示する。
〔実施例7〕
実施例1における銀ナノワイヤの合成において、溶液Aを作製するために使用した塩酸含有量が2.5質量%であるベンジルアルコール溶液の添加量を1.00gから1.50gに変更したことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。FE−SEMにて観察したところ、洗浄後の沈殿物は銀ナノワイヤを主体とするものであった。この銀ナノワイヤは、上掲の定義に従う平均長さが10.5μm、平均直径が76nm、平均アスペクト比が10500/76≒138であった。図10に、この銀ナノワイヤのSEM写真を例示する。
実施例1における銀ナノワイヤの合成において、溶液Aを作製するために使用した塩酸含有量が2.5質量%であるベンジルアルコール溶液の添加量を1.00gから1.50gに変更したことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。FE−SEMにて観察したところ、洗浄後の沈殿物は銀ナノワイヤを主体とするものであった。この銀ナノワイヤは、上掲の定義に従う平均長さが10.5μm、平均直径が76nm、平均アスペクト比が10500/76≒138であった。図10に、この銀ナノワイヤのSEM写真を例示する。
〔液中分散性の定性評価〕
50mLバイアル瓶に上記の各例で得られた銀ナノワイヤ(洗浄後の沈殿物から分取した試料)および2−プロパノールをそれぞれ入れ、蓋を閉めた後、これらのバイアル瓶を上下に10〜20cmのストロークで毎分100回のシェイキング速度にて300回シェイキングする手法により撹拌混合して分散状態としたのち、常温下で静置し、銀ナノワイヤの分散性を比べた。各バイアル瓶中の銀ナノワイヤと2−プロパノールの合計質量は35gとし、液中の銀ナノワイヤ濃度は約0.1質量%とした。
静置開始から72時間後に観察した結果、有機保護剤にPVPを使用した比較例1のものは、完全に瓶の底まで沈殿していた。これに対し、有機保護剤にVP−VCLコポリマーを使用した各実施例のものはいずれも、有機保護剤にPVPを使用した比較例1のものと比べ、銀ナノワイヤの凝集沈降速度が遅く、アルコールに対する分散性が顕著に改善されていた。この分散性改善効果は、銀ナノワイヤの表面を覆うVP−VCLコポリマーが、PVPよりも疎水性寄りの性質を有していることによるものと考えられる。
50mLバイアル瓶に上記の各例で得られた銀ナノワイヤ(洗浄後の沈殿物から分取した試料)および2−プロパノールをそれぞれ入れ、蓋を閉めた後、これらのバイアル瓶を上下に10〜20cmのストロークで毎分100回のシェイキング速度にて300回シェイキングする手法により撹拌混合して分散状態としたのち、常温下で静置し、銀ナノワイヤの分散性を比べた。各バイアル瓶中の銀ナノワイヤと2−プロパノールの合計質量は35gとし、液中の銀ナノワイヤ濃度は約0.1質量%とした。
静置開始から72時間後に観察した結果、有機保護剤にPVPを使用した比較例1のものは、完全に瓶の底まで沈殿していた。これに対し、有機保護剤にVP−VCLコポリマーを使用した各実施例のものはいずれも、有機保護剤にPVPを使用した比較例1のものと比べ、銀ナノワイヤの凝集沈降速度が遅く、アルコールに対する分散性が顕著に改善されていた。この分散性改善効果は、銀ナノワイヤの表面を覆うVP−VCLコポリマーが、PVPよりも疎水性寄りの性質を有していることによるものと考えられる。
Claims (6)
- N−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーからなる、銀ナノワイヤ合成用有機保護剤。
- 前記コポリマーは、N−ビニル−ε−カプロラクタム:0.5〜15.0モル%と、ビニルピロリドン:85.0〜99.5モル%の共重合組成を有するものである、請求項1に記載の銀ナノワイヤ合成用有機保護剤。
- N−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーに被覆された、平均直径200nm以下、平均長さ5.0μm以上の銀ナノワイヤ。
- 前記コポリマーは、N−ビニル−ε−カプロラクタム:0.5〜15.0モル%と、ビニルピロリドン:85.0〜99.5モル%の共重合組成を有するものである、請求項3に記載の銀ナノワイヤ。
- 銀化合物と有機保護剤が溶解しているアルコール溶媒中で銀をワイヤ状に還元析出させる銀ナノワイヤの製造方法において、前記有機保護剤として、N−ビニル−ε−カプロラクタムと、ビニルピロリドンとのコポリマーを使用する銀ナノワイヤの製造方法。
- 前記コポリマーは、N−ビニル−ε−カプロラクタム:0.5〜15.0モル%と、ビニルピロリドン:85.0〜99.5モル%の共重合組成を有するものである、請求項5に記載の銀ナノワイヤの製造方法。
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-
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