JP7059001B2 - 単層カーボンナノチューブ用分散剤、及びそれを用いた単層カーボンナノチューブ分散液 - Google Patents
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のカーボンナノチューブからなる太いバンドル(束)や強固な凝集を解し、カーボンナノチューブを高分散させて、少ないカーボンナノチューブの本数で効率良く導電パスを形成することが求められている。このような導電性フィルムを得る手段としては、例えばカーボンナノチューブを水性媒体中に高分散させた分散液を基材に塗布する方法などが知られている。カーボンナノチューブを水性媒体中に高分散させるためには、分散剤を用いて分散させる手法がある。中でも、カーボンナノチューブをより高度に分散させるためには、水性媒体中、水に親和性のある親水性基およびカーボンナノチューブと親和性の高い疎水性基の両方を有する分散剤を用いて分散させる方法が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
特許文献3に記載の技術においては、高分子量の分散剤を用いているため、泡立ちは抑制されている。しかし、PETフィルムに塗工しても、表面の濡れ性が悪く、はじいてうまく塗工できないという課題があった。そのような場合、塗工前にPETフィルムの表面を処理する方法もあるが、工程的な面やコスト的に不利となる。
成分A:アクリル酸由来の構成単位と疎水性モノマー由来の構成単位とを含み、全構成単位中の疎水性モノマー由来の構成単位の含有量が0.5mol%以上2.3mol%以下であり、数平均分子量が3,000以上15,000以下である共重合体。
成分B:0.5mol%以上2.3mol%以下の疎水性末端基を有し、数平均分子量が3,000以上15,000以下であるポリアクリル酸。
本開示の分散剤として用いられる成分A及び成分Bは、強固に凝集しているカーボンナノチューブとの親和性が高いポリエチレン構造を有するとともに、水との親和性が高いカルボキシル基を有することから、カーボンナノチューブの分散性が高いと考えられる。更に疎水性であるPETフィルムとの親和性が高い疎水性基(疎水性モノマー由来の構成単位、又は疎水性末端基)を有することから、カーボンナノチューブの分散性とPETフィルムに対する塗工性とを両立できると考えられる。
ただし、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
成分A:アクリル酸由来の構成単位と疎水性モノマー由来の構成単位とを含み、全構成単位中の疎水性モノマー由来の構成単位の含有量が0.5mol%以上2.3mol%以下であり、数平均分子量が3,000以上15,000以下である共重合体。
成分B:0.5mol%以上2.3mol%以下の疎水性末端基を有し、数平均分子量が3,000以上15,000以下であるポリアクリル酸。
本開示の分散剤に含まれうる成分Aは、アクリル酸(以下、「モノマーa1」ともいう)由来の構成単位(以下、「構成単位a1」ともいう)と疎水性モノマー(以下、「疎水性モノマーa2」ともいう)由来の構成単位(以下、「構成単位a2」ともいう)とを含む共重合体である。成分Aは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。成分Aの共重合体は、例えば、アクリル酸と疎水性モノマーとを重合反応させることにより製造できる。
本開示の分散剤に含まれうる成分Bは、疎水性末端基を有するポリアクリル酸である。本開示において、疎水性末端基は、25℃の水への溶解性が10質量%未満である疎水性重合開始剤及び/又は疎水性連鎖移動剤に由来する基を示す。溶解とは、透明な状態を示す。本開示において、「25℃の水への溶解性」は、25℃の水に徐々に添加していった場合に白濁し始めるときの、疎水性重合開始剤及び/又は疎水性連鎖移動剤の質量割合をいう。疎水性末端基を有するポリアクリル酸は、例えば、アクリル酸(モノマーb)を、疎水性重合開始剤及び/又は疎水性連鎖移動剤を用いて重合させることにより得ることができる。
本開示は、一態様において、本開示の分散剤、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ともいう)、及び水性媒体を含む、カーボンナノチューブ分散液(以下、「本開示のCNT分散液」ともいう)に関する。本開示によれば、分散性及びPETフィルムに対する濡れ性に優れたカーボンナノチューブ分散液を提供できる。
本開示において、カーボンナノチューブ(CNT)とは、複数のカーボンナノチューブを含む総体を意味する。カーボンナノチューブの形態は、特に限定されなくてもよく、例えば、複数のカーボンナノチューブがそれぞれ独立していてもよいし、複数のカーボンナノチューブが束状あるいは絡まり合うなどの形態でもよいし、これらの形態が混合した形態でもよい。カーボンナノチューブは、種々の層数または直径のカーボンナノチューブであってもよい。CNTは、カーボンナノチューブの製造におけるプロセス由来の不純物(例えば、触媒やアモルファスカーボン)を含み得る。
水性媒体としては、水、あるいは、水と水溶性有機溶剤との混合媒体が挙げられる。水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、超純水等が挙げられる。水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール、アセトン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチルセロソルブから選ばれる少なくとも1種が挙げられ、分散性向上の点から、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、プロピレングリコール、及びブチルセロソルブから選ばれる少なくとも1種が好ましい。水性媒体として混合媒体を用いる場合、水溶性有機溶剤は、水とは別に添加(配合)されてもよいし、水と同時に添加(配合)されてもよい。水性媒体中の水の含有量は、分散性向上の観点から、90質量%以上であることが好ましい。
本開示のCNT分散液は、例えば、本開示の分散剤、CNT及び水性媒体を公知の方法で配合することにより製造できる。したがって、本開示は、一態様において、本開示の分散剤、CNT、及び水性媒体を混合し、CNTを水性媒体中で分散させる分散工程を含む、CNT分散液の製造方法(以下、「本開示のCNT分散液製造方法」ともいう)に関する。本開示のCNT分散液製造方法によれば、分散性及びPETに対する濡れ性に優れるCNT分散液を製造しうる。本開示の分散液製造方法に用いられるCNT及び水性媒体としては、上述した本開示のCNT分散液と同様のものを用いることができる。
ゲル浸透クロマトグラフィー(以下「GPC」ともいう)法を用いて成分A及び成分Bの数平均分子量を測定した。
すなわち、試料をN,N-ジメチルホルムアミドで希釈し、試料の固形分濃度0.3質量%の溶液を調製して試料溶液とし、その100μLを測定に供した。N,N-ジメチルホルムアミドに、リン酸とリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、GPC〔装置:東ソー株式会社製「HLC-8120GPC」、検出器:示差屈折計(装置付属)、カラム:東ソー株式会社製「TSK-GEL α-M」×2本、カラム温度:40℃、溶離液流速:1mL/min〕により、測定した。
標準物質としては、ポリスチレン(東ソー株式会社製:分子量 5.26×102、1.02×105、8.42×106;西尾工業株式会社製:分子量 4.0×103、3.0×104、9.0×105)を用いた。
表1に示す分散剤1~13の調製には、下記成分を使用した。
<疎水性モノマー>
MPG2A:メトキシジプロピレングリコールアクリレート(共栄化学社製「ライトアクリレートDPM-A」、25℃の水への溶解性:2質量%)
PhEG2A:フェノキシジエチレングリコールアクリレート(共栄化学社製「ライトアクリレートP2H-A、25℃の水への溶解性:1質量%未満」
MA:アクリル酸メチル(和光純薬社製試薬、25℃の水への溶解性:5質量%)
<重合開始剤>
V-65B:2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V-65B」、疎水性、25℃の水への溶解性:1質量%未満)
VA-057:2,2-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]4水和物(和光純薬工業社製「VA-057」)
<連鎖移動剤>
MPA:3-メルカプトプロピオン酸(和光純薬社製試薬、親水性)
OcSH:1-オクタンチオール(和光純薬社製試薬、疎水性、25℃の水への溶解性:1質量%未満)
1L4つ口セパラブルフラスコに予め蒸留水を15.0g仕込んでおき、滴下ロート二つ、還流冷却管、温度計、撹拌装置を取り付けた。窒素置換した後、150rpmで撹拌しながら、80℃まで昇温し、温度を保ったまま80質量%アクリル酸水溶液(モノマーa1):60.6gとPhEGH2A(疎水性モノマーa2):1.5gの混合溶液と、VA-057(重合開始剤):1.41gとMPA(連鎖移動剤):1.66gと蒸留水:47.8gの混合溶液を別々に60分かけて滴下した。滴下終了後、80℃で60分温度を保ち、その後冷却した。得られた分散剤1水溶液の固形分濃度は44.5質量%であり、GPCによるポリスチレン換算数平均分子量は7100であった。
疎水性モノマーの種類、共重合体の組成比、重合開始剤の種類及び添加量、並びに、連鎖移動剤の種類及び添加量を表1に示すよう変更したこと以外は、分散剤1水溶液の合成と同じ方法で合成し、分散剤2~7、9、11~13の水溶液を調製した。得られた分散剤水溶液の固形分濃度及び数平均分子量を表1に示した。
1L4つ口セパラブルフラスコに予めアセトンを15.0g仕込んでおき、滴下ロート二つ、還流冷却管、温度計、撹拌装置を取り付けた。窒素置換した後、150rpmで撹拌しながら、60℃まで昇温し、温度を保ったまま80質量%アクリル酸水溶液(モノマーb):62.5gと、V-65B(疎水性重合開始剤):0.69gとOcSH(疎水性連鎖移動剤):1.02gとアセトン:47.5gの混合溶液を別々に60分かけて滴下した。滴下終了後、60℃で60分温度を保ち、その後冷却した。得られた分散剤8水溶液の固形分濃度は51.0質量%であり、GPCによるポリスチレン換算数平均分子量は12800であった。
1L4つ口セパラブルフラスコに予めエタノールを15.0g仕込んでおき、滴下ロート二つ、還流冷却管、温度計、撹拌装置を取り付けた。窒素置換した後、150rpmで撹拌しながら、80℃まで昇温し、温度を保ったまま80質量%アクリル酸水溶液(モノマーa1):56.3gとPhEGH2A(疎水性モノマーa2):5.0gの混合溶液と、V-65B(疎水性重合開始剤):2.41gとMPA(連鎖移動剤):4.12gとエタノール:48.8gの混合溶液を別々に60分かけて滴下した。滴下終了後、80℃で60分温度を保ち、その後冷却した。得られた分散剤10水溶液の固形分濃度は43.1質量%であり、GPCによるポリスチレン換算数平均分子量は1500であった。
調製した分散剤1~13、CNT、及び水性媒体(蒸留水)を混合し、実施例1~8及び比較例1~5のCNT分散液を調製した。
具体的には、60mLスクリュー管に分散剤水溶液と蒸留水を30gとなるように測りとり、次いでCNT組成物0.08gを測りとった。そして、長さ2cmスターラーチップで300rpm、1時間撹拌した後、氷冷しながら超音波ホモジナイザー(300μA)で5分間分散させた。超音波ホモジナイザーは日本精機製作所社製US-300を用いた。
CNT分散液中の分散剤の配合量は0.3質量%、CNTの配合量は0.2質量%とした。蒸留水の含有量は、分散剤及びCNT(不純物を含む)を除いた残余である。CNTの配合量は、CNT中の不純物を除いた量である。
CNTには、OCSiAl社製の「TUBALL」[純度75%の単層カーボンナノチューブ、1~2層、長さ5μm以上]を使用した。
[CNT分散性(外観)]
分散状態の評価は目視と粘度により判断した。
(目視)
スクリュー管の壁面にカーボンナノチューブの凝集物が観察されるかどうかを確認した。結果を表1に示した。
<評価基準>
A:凝集物がほとんど見られない
B:ところどころ凝集物が見られる
C:凝集物が多くみられる
D:全く分散できていない
ブルックフィールド粘度計コーンプレート型(コーン半径12mm、コーン角度3°)、せん断速度10s-1で60秒間回転させた後の粘度を読み取った。測定温度は25℃とした。結果を表1に示した。
市販PETフィルムとしては、東洋紡社製コスモシャインA4100(縦20cm×
横10cm)を用いた。易接着処理面に対し、調製したCNT分散液をスパイラルバーコーターNo.3を用いて塗工し、100℃の送風乾燥機にて1分間乾燥してから塗工面を観察した。下記に評価基準を示す。評価結果を表1に示した。表1において、評価基準がA及びBの場合、PETフィルムへの濡れ性が良好と判断する。
<評価基準>
A:ハジキが見られない
B:ハジキが1~2個見られる
C:ハジキが3~10個見られる
D:ハジキが多く(11個以上)見られる
Claims (4)
- 下記成分A及び成分Bの少なくとも一方を含む、単層カーボンナノチューブ用分散剤。
成分A:アクリル酸由来の構成単位と疎水性モノマー由来の構成単位とを含み、前記疎水性モノマーが、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、またはメチルアクリレートであり、全構成単位中の疎水性モノマー由来の構成単位の含有量が1.0mol%以上1.8mol%以下であり、数平均分子量が3,000以上15,000以下である共重合体。
成分B:1.0mol%以上1.8mol%以下の疎水性末端基を有し、数平均分子量が3,000以上15,000以下であるポリアクリル酸であり、前記疎水性末端基が、重合開始剤及び疎水性連鎖移動剤のうちの少なくとも一方に由来する基であり、前記重合開始剤は、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)であり、前記疎水性連鎖移動剤は、1-オクタンチオールである。 - 成分A及び成分Bの中和度が25mol%以下である、請求項1に記載の単層カーボンナノチューブ用分散剤。
- 請求項1または2に記載の分散剤、単層カーボンナノチューブ、及び水性媒体を含む、単層カーボンナノチューブ分散液。
- 前記水性媒体中の水の含有量は、90質量%以上である、請求項3に記載の単層カーボンナノチューブ分散液。
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