JP7128129B2 - ポリ塩化ビニル系樹脂積層フィルム - Google Patents

ポリ塩化ビニル系樹脂積層フィルム Download PDF

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Description

本発明は、工業用の粘着フィルム(テープ)、看板、自動車等へ意匠性を付与するために貼り付けされるステッカー、ラベル及びマーキングフィルム等の装飾用粘着フィルム(テープ)、化粧シート等に好適に用いられるポリ塩化ビニル系樹脂積層フィルムに関する。
従来、工業用の粘着フィルム(テープ)、看板、自動車等へ意匠性を付与するために貼り付けされるステッカー、ラベル及びマーキングフィルム等の装飾用粘着フィルム(テープ)、化粧シート等には、着色性、加工性、耐傷付き性、耐候性等が優れるポリ塩化ビニル樹脂製のフィルム(以下、「PVC系フィルム」ともいう。)が基材として多用されている。
上記PVC系フィルムは、それ自体剛性を有しているが、粘着フィルムとして機能し得るよう、柔軟性付与の目的で可塑剤が添加される。この可塑剤としては、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)などのフタル酸系可塑剤、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、リン酸トリクレジル(TCP)、トリメリット酸トリオクチル(TOTM)などの非フタル酸系可塑剤、高分子量タイプのポリエステル系可塑剤が知られている。
フタル酸系可塑剤は、PVC系フィルム及び粘着剤、特にアクリル系粘着剤との相性がよく、粘着テープの可塑剤として使用した場合、表面へのブリードが少なく、粘着特性を安定させる。また、低温(-10℃)から高温(50℃)までの温度変化においてもテープ機械物性の変化を最小限にとどめ、安定させることができる。
しかし、近年の環境への配慮の高まりにより、フタル酸系可塑剤の使用を見直す動きが、欧州のREACH規制をもとに高まっている。
一方、非フタル酸系可塑剤は、アクリル系粘着剤との相溶性が悪く、粘着フィルムとした場合に安定性が悪く、可塑剤のブリードアウトが著しくなるという問題がある。そのため、粘着フィルムにおいて粘着力が不安定となり、フタル酸系可塑剤の代替使用は困難である。
また、PVC系フィルムの可塑剤としてポリエステル系可塑剤を使用したポリ塩化ビニル系組成物やシートも知られている(特許文献1~3を参照)。ポリエステル系可塑剤には低分子量タイプのものと、高分子量タイプのものが知られている。
一般に、低分子量タイプのポリエステル系可塑剤を使用した場合、PVC系フィルムの耐寒性が得られるものの、フィルム表面への析出(ブリードアウト)がしやすくなるという課題がある。他方、高分子量タイプのポリエステル系可塑剤を使用した場合、フィルム中での可塑剤の移動が阻害されるため、フィルム表面へのブリードアウトは抑制傾向にあるものの、耐寒性が低下してしまうという課題がある。すなわち、ポリエステル系可塑剤を使用する場合、ブリードアウトと耐寒性とはトレードオフの関係にあり、耐寒性とブリードアウト抑制の両立は困難であった。
PVC系フィルムにおいて、ブリードアウト抑制のため、所定の分子量を有するポリエステル系可塑剤を使用したものが知られている(特許文献4)。しかし、かかるPVC系フィルムは、確かにブリードアウトを抑制し得るが、フィルムの耐寒性については満足のいくものは得られていない。
特開平2-84455号公報 特開平4-57874号公報 特開2001-302866号公報 特開2012-184369号公報
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、優れた耐寒性を有し、かつ、フィルム表面への可塑剤の析出が少ない、工業用粘着フィルムとして利用可能なPVC系フィルム、及び該フィルムを用いた粘着フィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリエステル系可塑剤の中で特定の範囲の重量平均分子量を有する少なくとも1種のポリエステル系可塑剤を用いた場合に、優れた耐寒性とブリードアウト抑制の効果を兼ね備えたPVC系フィルムを提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム(PVC系フィルム)の少なくとも片面上に、ポリウレタン系樹脂層(A層)及びアクリル系樹脂層(B層)をこの順序(PVC系フィルム/A層/B層)で備える積層フィルムであって、前記ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムが、重量平均分子量(Mw)が500以上2100以下のポリエステル系可塑剤を少なくとも1種類含み、前記積層フィルムの23℃における引張弾性率に対する10℃における引張弾性率の変化率が175%以下であることを特徴とする積層フィルム。
[2]前記ポリエステル系可塑剤が、アジピン酸ポリエステル系可塑剤である、[1]に記載の積層フィルム。
[3]前記ポリエステル系可塑剤が、重量平均分子量(Mw)が500以上1250以下のポリエステル系可塑剤(a)と、重量平均分子量(Mw)が1250超2100以下のポリエステル系可塑剤(b)とを含む、[1]又は[2]に記載の積層フィルム。
[4]前記ポリエステル系可塑剤の添加量が、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムを構成するポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、20~40質量部である、[1]~[3]のいずれかに記載の積層フィルム。
[5]前記ポリウレタン系樹脂層(A層)は、少なくともポリエステル骨格又はポリカーボネート骨格のいずれかを有するポリオールと、多官能の脂肪族イソシアネートとの反応硬化物からなる、[1]~[3]のいずれかに記載の積層フィルム。
[6]前記アクリル系樹脂層(B層)がアクリルポリオールとカプロラクトンポリオールとイソシアネート系架橋剤を含む組成物の硬化物からなる、[1]~[5]のいずれかに記載の積層フィルム。
[7]前記アクリルポリオールの水酸基価が50mgKOH/OH以上である、[6]に記載の積層フィルム。
[8]前記カプロラクトンポリオールの重量平均分子量(Mw)が500未満である、[6]又は[7]に記載の積層フィルム。
[9]前記アクリル系樹脂層(B層)上にポリエステル系樹脂を基材とする離型フィルムを有する、[1]~[8]のいずれかに記載の積層フィルム。
[10]自動車の装飾用フィルムとして用いる、[1]~[9]のいずれかに記載の積層フィルム。
本発明の積層フィルムであれば、フィルム表面への可塑剤のブリードアウトが少なく、かつ耐寒性を有するため、低温においても十分な機械特性を維持することができる。そのため、本発明の積層フィルムを用いた粘着フィルムであれば、例えば冬場のような低温環境下においても常温と同様の特性(加工時の作業特性)を維持できるほか、ブリードアウトが少ないため、被着体と良好な密着性を得ることができる。
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
本発明の積層フィルムは、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム(PVC系フィルム)の少なくとも片面上に、ポリウレタン系樹脂層(A層)及びアクリル系樹脂層(B層)がこの順(PVC系フィルム/A層/B層)に形成されてなる積層フィルムであって、前記ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムが、重量平均分子量(Mw)が500以上2100以下のポリエステル系可塑剤を少なくとも1種類含み、前記積層フィルムの23℃における引張弾性率に対する10℃における引張弾性率の変化率が175%以下であることを特徴とする。
<ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム(PVC系フィルム)>
本発明の積層フィルムにおけるPVC系フィルムは、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物で構成される。
PVC系フィルムで使用されるポリ塩化ビニル系樹脂は、任意の平均重合度のポリ塩化ビニル系樹脂を用いることができる。好ましくは、ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、600~3,000である。平均重合度が600以上であれば、十分な機械強度を得ることができる。一方、平均重合度が3,000を超えると、加工性(流動性)の低下が著しくなる割には機械的物性の向上がなく実用的でない。
よって、このような観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、前述の範囲の中でも特に700以上が好ましく、2,900以下であることがより好ましく、その中でも800以上、2,800以下であることがさらに好ましい。
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニルの単独重合体(「ポリ塩化ビニル系単独重合体」と称する)のほか、ポリ塩化ビニルと共重合可能な単量体との共重合体(以下、「ポリ塩化ビニル系共重合体」とする)、このポリ塩化ビニル系共重合体以外の重合体に塩化ビニルをグラフト共重合させたグラフト共重合体(以下、ポリ塩化ビニル系グラフト共重合体)などを挙げることができる。
ポリ塩化ビニル系共重合体は、共重合体中の塩化ビニル単量体以外の構成単位の含有量が多くなると機械的特性が低下するため、ポリ塩化ビニル系共重合体中に占める塩化ビニル単量体の割合が60~99質量%であることが好ましい。
なお、ポリ塩化ビニル系単独重合体、および、ポリ塩化ビニル系共重合体は、任意の方法、例えば乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで重合することができる。
ここで、ポリ塩化ビニルと共重合可能な単量体としては、分子中に反応性二重結合を有するものであればよい。例えば、プロピレン、ブチレンなどのα-オレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸フェニルなどのアクリル酸またはメタクリル酸のエステル類、スチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル類、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなどのN-置換マレイミド類などを挙げることができ、これらは単独、または、2種以上の組み合わせで用いることができる。
ポリ塩化ビニル系共重合体以外の重合体としては、塩化ビニルをグラフト共重合できるものであればよい。例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・一酸化炭素共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート・一酸化炭素共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどを挙げることができ、これらを単独、または、2種以上の組み合わせで用いることができる。
<可塑剤>
本発明の積層フィルムは、重量平均分子量(Mw)が500以上2100以下のポリエステル系可塑剤を少なくとも1種類含む。本発明の積層フィルムがかかる可塑剤を含有することにより、耐寒性とブリードアウト抑制を両立したフィルムを得ることができる。
本発明で使用されるポリエステル系可塑剤は、重量平均分子量(Mw)が500以上、好ましくは700以上、さらに好ましくは800以上であり、かつ重量平均分子量(Mw)が2100以下、好ましくは2000以下、更に好ましくは1900以下である。重量平均分子量(Mw)が500以上であれば、フィルム表面への可塑剤のブリードアウトを抑えることができる。一方、重量平均分子量(Mw)が2100以下であれば、カレンダー成形性を大幅に低下させることもなく、積層フィルムの耐寒性を向上させることができる。
上記ポリエステル系可塑剤は、少なくとも1種類を含めばよく、2種類以上を混合して使用することもできる。ポリエステル系可塑剤を2種類以上使用する場合、重量平均分子量Mwが500以上1250以下のポリエステル系可塑剤(a)と、重量平均分子量Mwが1250超2100以下のポリエステル系可塑剤(b)とを混合して使用することが好ましい。このように2種類のポリエステル系可塑剤を混合して使用することにより、フィルムに耐寒性を付与すると共に、フィルム表面への可塑剤のブリードアウトを抑えることができる。
ポリエステル系可塑剤(a)は、重量平均分子量(Mw)が500以上、好ましくは700以上、更に好ましくは800以上であり、上限は1250以下、好ましくは1100以下、更に好ましくは1000以下である。ポリエステル系可塑剤(a)としては、例えば、(株)ジェイ・プラス製:「D620」、DIC(株)製:「ポリサイザーW-230-H」などのアジピン酸ポリエステル可塑剤が挙げられる。
ポリエステル系可塑剤(b)は、重量平均分子量(Mw)が1250超、好ましくは1500以上、更に好ましくは1600以上であり、上限は2100以下、好ましくは2000以下、更に好ましくは1900以下である。ポリエステル系可塑剤(b)としては、例えば、(株)ジェイ・プラス製:「D643」、(株)ADEKA製:「アデカサイザー HPN-3130」などのアジピン酸ポリエステル可塑剤などが挙げられる。
ポリエステル系可塑剤(a)とポリエステル系可塑剤(b)との配合比は、本発明の効果を奏する範囲で任意に決めることができ、ブリード及び耐寒性の観点から好ましくはポリエステル系可塑剤(a):ポリエステル系可塑剤(b)=16~34:84~66の範囲である。
上記ポリエステル系可塑剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1.2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1.5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコールと、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の二塩基酸を用い、必要により一価のアルコール又はモノカルボン酸をストッパーとして使用したポリエステル系可塑剤を使用することができる。なかでも耐寒性付与の理由からアジピン酸を使用したアジピン酸ポリエステル系可塑剤を好ましく使用することができる。
本発明におけるアジピン酸ポリエステル系可塑剤とは、炭素数4~10の脂肪族二塩基酸、二価アルコールをエステル化させて得られる粘度1000~5000mPa・s(25℃)、二価アルコール1.2-ブタンジオール、1.4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1.5-ペンタンジオールが挙げられる。この重量平均分子量(Mw)は1000~2100のものが効果的に使用されるが、これが1000未満ではn-ヘプタン抽出性が大きい。一方、重量平均分子量(Mw)が2100を越えるとカレンダー成形性が大幅に低下するとともに積層フィルムの耐寒性が低下してしまう。物性の向上、カレンダー成形性の点において、平均分子量2000前後のものが好適に使用される。
本発明におけるポリエステル系可塑剤の添加量は、PVC系フィルムを構成するポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、20質量部以上、好ましくは25質量部以上、更に好ましくは28質量部以上である。上限は40質量部以下、好ましくは38質量部以下、更に好ましくは35質量部以下である。ポリエステル系可塑剤の添加量が20質量部未満では柔軟性付与効果が得られず、成形加工も困難となる。また40質量部を越えると300μm以下の厚みで成形したフィルムの腰(剛性)がなく、包装の仕上がりが悪化するだけでなく、不経済である。
本発明で使用されるポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、必要に応じて、成形用の合成樹脂に通常配合される公知の樹脂添加剤、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、耐候助剤、熱安定剤、安定化助剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、防菌防黴剤及び着色剤等の各種添加剤を配合することができる。
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤としては、例えばサリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系及びトリアジン系等の紫外線吸収剤が挙げられる。
具体的には、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤としては、サリチル酸フェニル、4-t-ブチル-フェニル-サリシレート等が挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン等の2,2’-ジヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンゾイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-クロルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホンベンゾフェノン等の2-ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス-(2-メトキシ-4-ヒドロキシ-5-ベンゾイルフェニル)メタン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-[2’-ヒドロキシ-3’-(3”,4”,5”,6”-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(分子量388)、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール(分子量448),2,2-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール)(分子量659)等が挙げられる。
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、2-エチル-ヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、オクチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシフェニル)1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-((ヘキシル)オキシ)-フェノール、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(オクチロキシ)フェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(オクチロキシ)フェノール、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシロシキ)フェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-((メチル)オキシ)フェノールが挙げられる。
紫外線吸収剤の配合量は、特に制限されるものではなく基材フィルムから吹き出さない範囲であればよく、PVC系フィルム中のポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して通常0.01~10質量部含有し、0.2~9質量部含有することが好ましく、0.4~8質量部含有することが特に好ましい。紫外線吸収剤を0.1質量部以上含有することにより、本発明のフィルムの紫外線による劣化を防止することができ、また上限値を10質量部以下とすることにより、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムから紫外線吸収剤がブリードアウトすることなく、十分な紫外線による劣化を防止することができる。
<ヒンダートアミン系光安定剤>
上記ポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、光安定剤としてヒンダートアミン系光安定剤を含むことができる。ヒンダードアミン系光安定剤として、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ビス(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ビス(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-tert-オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル]-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,5,8,12-テトラキス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル]-1,5,8,12-テトラアザドデカン、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6テトラメチル-1-ピペリジルエタノールの重合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、N,N’,N’’,N’’’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4、7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、1,6,11-トリス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ-s-トリアジン-6-イルアミノ]ウンデカン、1,6,11-トリス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ-s-トリアジン-6-イルアミ
ノ]ウンデカン等が挙げられる。
前記ヒンダードアミン系光安定剤の添加量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.01~2質量部が好ましい。0.01質量部未満では紫外線等による影響でフィルム、シートが変色や劣化するのを防止することができず、耐候性が不十分である。さらに、添加している紫外線吸収剤の劣化を防ぐことができず、フィルムの紫外線による変色、劣化等から意匠層を保護することができない。また、2質量部より多く添加すると、ヒンダードアミン系光安定剤がブリードアウトするために外観を損ない、粘着剤層等との密着不良などを起こすために好ましくない。また、成形加工時に金属ロールへの粘着が見られ成形加工性が低下する。
<熱安定剤>
本発明で使用し得る熱安定剤としては、バリウム亜鉛系熱安定剤、カルシウム亜鉛系安定剤、マグネシウム亜鉛系熱安定剤などの亜鉛系熱安定剤が挙げられる。亜鉛系熱安定剤は特に限定されるものではないが、酸化亜鉛や、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、2エチルヘキソイン酸亜鉛などの脂肪酸亜鉛等を使用することができる。
PVC系フィルムには、その他必要に応じて、着色剤、充填剤、スリップ剤(滑剤)、アンチブロッキング剤等をその目的・性能を損なわない範囲内で添加することができる。
着色剤としては、一般的な有機及び無機顔料が挙げられ、その目的に応じて適宜選択可能であり、例えば、(ポリ)アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系、キナクリドン系、ジオキサジン系などの各種有機顔料、酸化チタンなどの酸化物系、クロム酸モリブデン酸系、硫化物・セレン化物系、フェロシアン化物系、炭酸カルシウム、カーボンブラックなどの各種無機顔料が挙げられる。配合量はPVC系フィルム中のポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して通常0.01~30質量部程度である。
充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー、マイカ、硫酸バリウム、ウィスカー、水酸化マグネシウム等の無機充填材が一般に用いられるが、中でもタルクを用いることが好ましい。無機系充填材の平均粒子径は特に制限がないが、0.1~10μmが好ましい。無機系充填材の含有量は通常PVC系フィルム中のポリ塩化ビニル系樹脂100質量部当たり0.01~100質量部である。
滑剤としては、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミドが挙げられる。中でもエルカ酸アミドが好ましい。滑剤の添加量は通常PVC系フィルム中のポリ塩化ビニル系樹脂100重量部当たり0.01~10質量部である。
アンチブロッキング剤としては、ウレタン樹脂ビーズ、ポリアクリル樹脂ビーズ、ポリカーボネート樹脂ビーズ等の有機系粉末や、カーボンブラック等の顔料、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、シリカアルミナ、クレー、タルク、酸化チタン等の無機系粉末が挙げられる。
アンチブロッキング剤の添加量は通常PVC系フィルム中のポリ塩化ビニル系樹脂100質量部当たり0.01~100質量部である。
PVC系フィルムを成形する方法としては、例えば、Tダイ成形法等の押出し成形法、インフレーション成形法及びカレンダー成形法等一般に公知のフィルム成形法が挙げられる。
PVC系フィルムの厚さは、樹脂組成、隠蔽性及び曲面の追随性を考慮して適宜選択されるが、通常30~500μm、好ましくは50~300μmである。
本発明のPVC系フィルムは、ウレタン系樹脂層(A層)等の塗膜層や粘着剤層、プライマー層等との密着性を高めるために、フィルムの表面に易接着処理を施すことができる。
易接着処理としては、公知のコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、火炎処理等の方法が挙げられる。
[ポリウレタン系樹脂層(A層)]
本発明の積層フィルムは、PVC系フィルムの少なくとも片面側に、ウレタン系樹脂層(A層)を有する。
ウレタン系樹脂層(A層)は、有機ジイソシアネート、高分子量ポリオール、及び鎖延長剤を反応させて得られるウレタン系樹脂を主成分とし、その他、光安定剤や紫外線吸収剤を含有する組成物の硬化物からなる塗布層である。
上記有機ジイソシアネート、高分子量ポリオール、鎖延長剤を反応させて得られるウレタン系樹脂の製造において用いられる有機ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、ω,ω’-ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等及びこれら2種類以上の混合物が挙げられる。
これらの中でも、塗膜層の機械強度を重視する場合には、多官能の芳香族ジイソシアネート、耐候性を重視する場合には多官能の脂肪族ジイソシアネート、特にイソホロンジイソシアネートが好ましい。
高分子量ポリオールとしては、ポリカーボネート骨格を有するポリカーボネートグリコール(ジオール)、ポリエーテルグリコール、ポリエーテルエステルグリコール、ポリエステルグリコール等のポリエステル骨格を有するポリオール、ポリオレフィングリコール等のポリオレフィンポリオール、シリコンポリオール等が挙げられ、中でもポリカーボネートグリコールが好ましい。ポリカーボネートグリコールとしては低分子量ジオールとアルキレンカーボネートまたはジアルキルカーボネートとから脱グリコールまたは脱アルコールによって得られるポリブチレンカーボネートグリコール、ポリヘキサメチレンカーボネートグリコール、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)カーボネートグリコール等が挙げられる。ポリエーテルグリコールとしては環状エーテルを開環重合して得られるもの、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。ポリエーテルエステルグリコールとしてはポリエステルグリコールに環状エーテルを開環重合したもの、ポリエーテルグリコールとジカルボン酸とを重縮合したもの、例えばポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート等が挙げられる。ポリエステルグリコールとしてはジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸等)またはその無水物と低分子量ジオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等)との重縮合によって得られるもの、例えばポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリブチレンセバケート等、低分子量ジオールへのラクトンの開環重合によって得られるもの、例えばポリカプロラクトン、ポリメチルバレロラクトン等が挙げられる。ポリオレフィンポリオールとしてはポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。シリコンポリオールとしてはポリジメチルシロキサンポリオール等が挙げられる。高分子量ポリオールは上記したものを2種類以上混合して用いてもよい。
高分子量ポリオールの重量平均分子量は通常200~10000、好ましくは500~6000、より好ましくは1000~3000である。分子量が小さすぎると塗膜層の柔軟性が乏しく、分子量が大きすぎると密着性が低下する傾向にある。
有機ジイソシアネートと高分子量ポリオールの反応仕込み量はNCO/OH(モル比)で1.0~10、好ましくは1.5~5である。この比が小さすぎるとハードセグメント量が少なくなり塗膜層の耐傷付き性が低下する傾向となる。一方、大きすぎると溶解性が乏しく、粘度も高くなりすぎる傾向にあるので好ましくない。
鎖延長剤としては、ポリエステルポリオールの原料として用いられる通常分子量500未満の低分子ジオール化合物、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチルテレフタレート、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール、N-メチルジエタノールアミン等のジアルカノールアミン等が挙げられる。更に、2,4-もしくは2,6-トリレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4'-ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、1,2-プロピレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2,2,4-もしくは2,4,4-トリメチルヘキサンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、イソホロンジアミン等の脂肪族ジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン(水添MDA)、イソプロピリデンシクロヘキシル-4,4’-ジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、トリシクロデカンジアミン等の脂環式ジアミン等の低分子ジアミン化合物が挙げられる。これら鎖延長剤は2種類以上の混合物として用いることも可能である。また、トリメチロールプロパン、グリセリン等のポリオール類も一部併用することができる。
また、ウレタン系樹脂の製造においては必要により末端停止剤を使用してもよい。該末端停止剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のモノアルコール、モノエチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン等のモノアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。
PVC系フィルムへのA層の形成方法は、上記各成分を公知の有機溶剤に溶解し、更に必要に応じ希釈剤等を用いて適当な濃度に調製し、バーコート、ナイフコート、ロールコート、ダイコートまたはグラビアロールコート等の公知の方法で塗工し、次いで熱風乾燥機等を用いて、通常50~200℃で数秒間~数分加熱して乾燥及び硬化させることにより行うことができる。硬化速度が遅い場合、塗工乾燥後、例えば40~50℃の室温下にて数日間硬化反応を促進させることが好ましい。
このようにして形成されたA層の厚さは、0.2~10μm、好ましくは0.5μm~5μmであるのが好ましい。厚さが薄すぎると十分な密着性が得られなくなるため好ましくない。また、厚すぎても積層フィルムのカール発生や、塗膜層のクラックの発生を生じるため好ましくない。
[アクリル系樹脂層(B層)]
本発明の積層フィルムは、PVC系フィルム上に、ポリウレタン系樹脂層(A層)、次いでアクリル系樹脂層(B層)をこの順序に積層したフィルムである。アクリル系樹脂層(B層)は、アクリルポリオールとカプロラクトンポリオールとイソシアネート系架橋剤を含む組成物の硬化物からなる。
アクリルポリオールは、(メタ)アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物、又は(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとその他のモノマーとを共重合させて得られる高分子化合物などのうち、末端にヒドロキシル基を有するもので、イソシアネート系化合物のイソシアネート基と反応するものである。
末端にヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプチル(メタ)アクリレートなどがある。
末端にヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーと共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレートなどの末端にアルキル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマー、(メタ)アクリル酸などの末端にカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマー、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレートなどの末端に芳香環や環状構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーがある。(メタ)アクリル酸誘導体モノマー以外では、スチレンモノマー、シクロへキシルマレイミドモノマー、フェニルマレイミドモノマーなどがある。上記のその他のモノマーは、それ自身が末端にヒドロキシル基を有していてもよい。
尚、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸の両方を指し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方を指す。
アクリルポリオールのヒドロキシ基は、イソシアネート系化合物のイソシアネートと反応し、より分子量の大きい硬化膜を形成することで、高い層間密着力と、水蒸気バリア性又は酸素バリア性とを発現する。アクリルポリオールの水酸基価は50mgKOH/g以上であることが好ましく、60mgKOH/g以上がより好ましく、80mgKOH/g以上が更に好ましい。またアクリルポリオールの水酸基価の上限は300mgKOH/g以下であり、270mgKOH/g以下がより好ましく、250mgKOH/g以下が更に好ましい。水酸基価が50mgKOH/gよりも小さいと、イソシアネート系化合物との反応量が少なく、PVC系フィルムへの密着力が十分発現しない。一方、水酸基価が300mgKOH/gよりも大きいと、イソシアネート系化合物との反応量が多くなり過ぎてアクリル系樹脂層(B層)の膜収縮が大きくなりポリウレタン系樹脂層(A層)がきれいに積層されず、十分なバリア性を示さない。尚、水酸基価(mgKOH/g)とは、アクリルポリオール中の水酸基量の指標であり、アクリルポリオール1g中の水酸基をアセチル化するために必要な水酸化カリウムのmg数を示す。
アクリルポリオールの分子量は特に規定しないが、具体的には、3000以上200000以下、好ましくは5000以上100000以下がよい。
カプロラクトンポリオールとしては、下記一般式(1)のような2官能ポリカプロラクトンジオール類や、下記一般式(2)のような3官能ポリカプロラクトントリオール類、その他4官能ポリカプロラクトンポリオール等を使用することができる。
Figure 0007128129000001
Figure 0007128129000002
本発明におけるポリカプロラクトンポリオールは、多官能であり、かつ重量平均分子量Mwが500未満、好ましくは470以下、更に好ましくは450以下のものを好適に用いることができる。また、ポリカプロラクトンポリオールの水酸基価は500mgKOH/g以下、好ましくは、450mgKOH/g以下、更に好ましくは400mgKOH/g以下である。カプロラクトンポリオールが多官能であり、かつ、上記のような重量平均分子量と水酸基価を有することにより、架橋密度が高く、かつ硬化物の硬度や強靭性が高くなるという効果が得られる。
本発明におけるB層において、アクリルポリオールとポリカプロラクトンポリオールに更にイソシアネート系架橋剤を加えて反応させることにより、B層の耐傷付き性等を更に向上することができる。イソシアネート系架橋剤としては、A層で記載したものが挙げられる。例えば、モノマー系イソシアネートとして、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などの芳香族系イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビスイソシアネートメチルシクロヘキサン(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)などの脂肪族系イソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの芳香脂肪族系イソシアネートなどがある。また、これらのモノマー系イソシアネートの重合体あるいは誘導体も使用可能である。例えば、3量体のヌレート型、1,1,1-トリメチロールプロパンなどと反応させたアダクト型、ビウレットと反応させたビウレット型などがある。
イソシアネート系化合物は、上記のイソシアネート系化合物あるいはその重合体、誘導体から任意に選択してよく、1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
B層を構成する樹脂組成物において、アクリルポリオールとポリカプロラクトンポリオールの質量比は95/5~50/50、好ましくは90/10~70/30、更に好ましくは85/15~75/25である。ポリカプロラクトンポリオールの量が少ないと、B層の耐傷付き性が低下し、またポリカプロラクトンポリオールの量が多いと耐汚染性が低下する傾向となり、実用上好ましくない。
イソシアネート系架橋剤の量はアクリル系共重合体及びポリカプロラクトンポリオールの水酸基価により異なるが、通常OH基とイソシアネート系架橋剤中のNCO基の比(NCO/OH)がモル比で1.01~10、更に1.5~5であることが好ましい。
更に、B層には、耐汚染性などの性能を付与する目的で、ポリシロキサンを混合することもできる。ポリシロキサンとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するシラン化合物の部分加水分解物、有機溶媒中に無水ケイ酸の微粒子を安定に分散させたオルガノシリカゾル及び該オルガノシリカゾルにラジカル重合性を有する上記シラン化合物を付加させたもの等から選ばれる少なくとも1種以上を使用することができる。
本発明の積層フィルムのA層上にB層を形成する場合、PVC系フィルム上にA層を形成するのと同様に、上記B層を構成する組成物を公知の有機溶剤に溶解し、更に必要に応じ希釈剤等を用いて適当な濃度に調製し、バーコート、ナイフコート、ロールコート、ダイコートまたはグラビアロールコート等の公知の方法で塗工し、次いで熱風乾燥機等を用いて、通常50~200℃で数秒間~数分加熱して乾燥及び硬化させることにより行う。硬化速度が遅い場合は、離型性を付与したフィルム、例えばメラミン処理を施した離型フィルム上にB層を形成し、予めA層を形成したPVC系フィルムのA層の面とラミネートすることでB層をA層上に形成することもできる。塗工乾燥等した後、更に例えば40~50℃の室温下にて数日間硬化反応を促進させることが好ましい。
このようにして形成されたB層の厚さは、0.2~50μmであるのが好ましい。
また本発明は、その性能を損なわない範囲で、2次加工性等を考慮してA層及びB層の少なくとも一方の層中に帯電防止剤を添加、或いは、PVC系フィルムとA層の間、もしくはA層とB層の間に帯電防止層を設けてもよい。
帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン系帯電防止剤;アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルサルフェート、アルキルホスフェート等のアニオン系帯電防止剤;第4級アンモニウムクロライド、第4級アンモニウムサルフェート、第4級アンモニウムナイトレート等のカチオン系帯電防止剤;アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型、アルキルアラニン型等の両性系帯電防止剤およびポリビニルベンジル型カチオン、ポリアクリル酸型カチオン等の導電性樹脂が用いられる。
また、帯電防止層としては、酸化錫系、酸化インジウム系、酸化亜鉛系等の導電性フィラーを有機化合物からなるバインダーに分散させたものや、電荷移動型ボロンポリマー系樹脂等からなる層が挙げられる。
また、A層及びB層の少なくとも一方には、屋外での長期及び過酷な条件下での耐候性を付与する目的で紫外線吸収剤及び/またはヒンダードアミン系光安定剤等を配合するのが好ましい。紫外線吸収剤及び光安定剤としては、前述の基材フィルムの説明において挙げられたものに加え、下記のものを使用することができる。
紫外線吸収剤としては、2-(2’-ヒドロキシ-3’ラウリル-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル-3-[3-t-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート-ポリエチレングリコールの縮合物、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体等が挙げられ、ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物等が挙げられる。
紫外線吸収剤またはヒンダードアミン系光安定剤の配合量は、各々単独または併用した場合でも、A層又はB層中の樹脂成分100質量部に対し1~70質量部添加することができ、層中1~30質量%であるのが好ましい。紫外線吸収剤と光安定剤を併用した場合、その添加割合は特に限定するものではないが、通常、紫外線吸収剤/ヒンダードアミン系光安定剤=1/3~3/1(重量比)程度である。
紫外線吸収剤及び/またはヒンダードアミン系光安定剤の配合量が少ないと、耐候性が劣る恐れがある。一方、配合量が多すぎると耐溶剤性、耐傷付き性能が低下するので好ましくない。
更にA層及びB層の少なくとも一方の層には、架橋反応を促進することを目的として、硬化触媒を加えることもできる。該硬化触媒としては、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、モノブチル錫トリオクテート、2-エチルヘキサン酸鉛、オクチル酸亜鉛などの有機金属化合物及びこれらの混合物を挙げることできる。硬化触媒の使用量は、特に制限されるものではないが、通常、層中の固形分中の、0.005~5質量%、特に0.01~3質量%であるのが適している。
その他、A層及びB層の少なくとも一方の層にはその性能を損なわない範囲で酸化防止剤、有機系及び無機系粉末の少なくともいずれかを添加してもよい。
本発明の積層フィルムは、PVC系フィルムのA層及びB層を形成させていない面に粘着剤層を形成させることにより、種々の粘着フィルムとすることができる。
粘着剤層に用いられる粘着剤としてはアクリル系、ゴム系の粘着剤いずれでもよいが、屋外での使用する場合は耐候性の高いアクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤を構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーが挙げられ、該(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては炭素原子数2~12のアルキル基を有するアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、好ましくは炭素原子数4~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが用いられ、具体的には、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることができる。これらは、単独、または組み合わせて用いることができる。粘着性と凝集性のバランス等から、通常ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が-50℃以下である(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、(メタ)アクリル酸エチル等の低級アルコールの(メタ)アクリル酸エステルを併用するのが好ましい。
また、これらのビニルモノマー以外にこれらと共重合可能なモノマーが共重合されても構わない。このような共重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマーまたはその無水物や、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー等が挙げられる。
粘着剤は、溶媒中で重合した溶剤型アクリル系粘着剤であっても、水中で重合したエマルジョン系粘着剤であっても、また、モノマー混合物に紫外線照射した塊状重合型粘着剤であってもよい。
粘着剤層の厚さは、粘着剤の組成により異なり、特に限定されるものではないが、通常20~50μmである。
本発明の積層フィルムへの粘着剤層の形成方法は、上記の粘着剤等を公知の有機溶剤に溶解し、更に必要に応じ希釈剤等を用いて適当な濃度に調製し、セパレータ(例えばシリコン塗布を施した剥離紙等の剥離材)にバーコート、ナイフコート、ロールコート、ダイコートまたはグラビアロールコート等の公知の方法で塗工し、 次いで熱風乾燥機等を用いて乾燥させた後、 積層フィルムの基材フィルム側に粘着剤層を積層することにより行うことができる。
また、 本発明の積層フィルム及び粘着フィルムは、基材フィルムと粘着剤層の間に、密着性を向上させるためにアクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するプライマー層を設けてもよい。
[離型フィルム]
本発明の積層フィルムは、アクリル系樹脂層(B層)上にポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムを有することができる。
離型フィルムの基材としてはポリエステルフィルムを用いる。ポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分とからなるポリエステルであり、好ましくは結晶性の線状飽和ポリエステルである。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレートを挙げることができる。ポリエステルとしては、構成する成分が他の成分に置換された共重合体であってもよく、他のポリマーが混合された混合物であってもよく、例えばポリアルキレングリコールとの混合物であってもよい。
ポリエステルフィルムには、フィルムの滑り性、加工性を良好なものとするために滑剤を含有させることができる。滑剤として、例えば炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、酸化チタンといった無機微粒子を例示することができる。また、他の添加剤、例えば安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤を含有させてもよい。
なお、ポリ塩化ビニル系樹脂積層フィルムに高光沢外観が要求される用途には、透明性の良好なポリエステルフィルムを用いる。他方、艶消し外観が要求される用途には、マット調のポリエステルフィルムを用い、好ましくは無機顔料を配合したポリエステルフィルムを用い、無機顔料として酸化チタン、シリカの如き顔料を例示することができる。
いずれの場合も、ポリエステルフィルムは、二軸延伸されたフィルムであることが好ましい。二軸延伸は公知の方法で行うことができる。例えば、ポリエステルを乾燥後溶融し、ダイ(例えばT-ダイ、I-ダイ)から冷却ドラム上に押出し、急冷して未延伸フィルムを得る。続いて未延伸フィルムを縦方向に2~5倍の範囲で延伸し、次いで横方向に2~5倍の範囲で延伸を行ない、更に160~260℃で熱固定する。このようにして二軸延伸されたフィルムを製造することができる。ポリエステルフィルムは厚み5~200μmであることが好ましい。
[離型層]
本発明では、上記ポリエステルフィルム上に離型層を設けることが好ましい。離型層とはポリエステルフィルムと転写箔であるB層との間に存在し、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム上のA層に、B層を転写した後にポリエステルフィルムを容易に剥離することを目的とした層である。離型性を付与する材料としてはメラミン樹脂が好ましい。メラミン樹脂としてはメラミンホルムアルデヒド樹脂やメチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、ブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、エーテル化メラミンホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。離型層上へのB層形成時の塗液のハジキや、ポリエステルフィルム剥離時のブロッキングの点からメチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂が好ましい。離型層はポリエステルフィルム上に塗布後、加熱乾燥させることで脱溶剤および硬化反応により形成される。離型層が主剤と硬化剤とからなる2液硬化型メラミン樹脂からなる場合、主剤と硬化剤との混合比は重量比で90:10~50:50の範囲にあることが好ましい。硬化剤の混合割合が10質量%未満もしくは50質量%以上のいずれの場合においても、ポリエステルフィルムの剥離時にB層がブロッキングすることがある。
[積層フィルムの引張弾性率]
本発明の積層フィルムの弾性率は、23℃と10℃との変化率で表される。本発明の積層フィルムの23℃における引張弾性率に対する10℃における引張弾性率の変化率は175%以下であり、好ましくは170%以下、更に好ましくは165%以下であることが望ましい。23℃と10℃との変化率が175%以下であれば、低温時においても柔軟性を維持することができ、特に冬場の作業性を向上させることができる。23℃と10℃との変化率は、好ましくは170%以下、更に好ましくは165%以下である。
本発明の積層フィルムの引張弾性率は、JIS K 7127に準拠し、1号ダンベル試験片を採取し、23℃、10℃の雰囲気下、オートグラフ(島津製作所製AGS-X)を用いて、引張速度50mm/分にて測定することができる。
[本発明の用途]
本発明の積層フィルムは、様々な装飾用フィルムとして用いることができる。例えば、工業用の粘着フィルム(テープ)、看板、自動車等へ意匠性を付与するために貼り付けされるステッカー、ラベル及びマーキングフィルム等の装飾用粘着フィルム(テープ)、化粧シートに好適に用いることができる。
以下に、本発明の実施形態について実施例を用いて詳述するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例及び比較例で使用した原料>
1.ポリ塩化ビニル系樹脂
(A-1):ポリ塩化ビニル系樹脂(大洋塩ビ(株)製:「TH-1000」)、平均重合度:1000)
2.ポリエステル系可塑剤
(B-1):ポリエステル系可塑剤((株)ジェイ・プラス製:「D620」、Mw:800)
(B-2):ポリエステル系可塑剤((株)ジェイ・プラス製:「D643」、Mw:1800)
(B-3):ポリエステル系可塑剤((株)ADEKA製:「アデカサイザー HPN-3130」、Mw:1800)
(B-4):ポリエステル系可塑剤((株)ジェイ・プラス製:「D645」、Mw:2200)
(B-5):フタル酸系可塑剤((株)ジェイ・プラス製:「DINP」、Mw:419)
(B-6):アジピン酸系可塑剤((株)ジェイ・プラス製:「DINA」、Mw:399)
3.熱安定剤
(C-1):マグネシウム亜鉛系熱安定剤((株)ADEKA製:「アデカズタブ SP―2005」)
4.紫外線吸収剤
(D-1):ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(BASF社製:「Chimassorb81」)
5.着色剤
(E-1):カーボンブラック(大日精化工業(株)社製:「DA MKV 994 ブラック」)
<(1)ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムの製膜>
表1に示す配合割合となるように調整した原料を、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、次いで170℃で3分間、バンバリーミキサーで混練りした。得られた混練物を180℃で7分間、カレンダー成形にて混練し、2本ロールを用い、厚さ0.09mmのポリ塩化ビニル系樹脂フィルムを作製した。
<(2)ポリウレタン系樹脂層(A層)の形成>
(1)で得られたポリ塩化樹脂系ビニルフィルム上に、ポリカーボネート系ウレタン樹脂(三菱ケミカル(株)製、「マイテックAE870」)をリバースコート法により、乾燥後の塗工量が1μmとなるように塗工した。
<(3)離形フィルムの形成>
ポリエステルフィルムの基材上にメチル化メラミン樹脂(佐々木塗料(株)製、「RP-30」)およびその硬化剤(佐々木塗料(株)製、「CP触媒」)をリバースコート法により、乾燥後の塗工量が0.3μmとなるように離型層を塗工した。
<(4)アクリル系樹脂層(B層)の形成と積層フィルムの形成>
(実施例1)
(3)で得られた離型層を有する離形フィルムの離型層上にアクリルポリオール系樹脂(日立化成(株)製、「ヒタロイドD1002」)およびカプロラクトンポリオール((株)ダイセル製、「プラクセルFM1D」)およびHDI(旭化成(株)製、「デュラネートTPA100」)の混合物をリバースコート法により、乾燥後の塗工量が15μmとなるようにアクリル系樹脂層(B層)を塗工した。それに(2)で得られたA層を貼りあわせ、架橋反応を促進させるため40℃の恒温庫に5日間保管した。恒温庫から取り出した後、離型層を剥離しポリ塩化ビニル系樹脂積層フィルム(ポリ塩化ビニル系樹脂/A層/B層)を得た。
[引張弾性率の測定]
(4)で得られたポリ塩化ビニル系樹脂積層フィルムより1号ダンベル試験片を採取し、JIS K 7127に準拠し、23℃及び10℃の雰囲気下、オートグラフ(島津製作所製AGS-X)を用いて、引張速度50mm/分にて引張弾性率を測定した
その測定結果を表1に示す。
[噴出し性評価]
(4)で得られたポリ塩化ビニル系樹脂積層フィルムを10cm×10cmに切り取り、80℃の恒温庫で24時間保管した後、常温で1時間静置し評価前後の外観の変化を目視で確認した。その測定結果を表1に示す。
◎、○を合格、×を不合格とした。
◎:塗膜表面に変化が見られない。
○:塗膜表面にブリードアウトが殆ど確認できない。
×:塗膜表面にブリードがはっきりと確認できる。
(実施例2~6)
実施例1のポリエステル系可塑剤を表1の配合に変更した以外は実施例1と同様の方法によりポリ塩化ビニル系樹脂積層フィルムを作成し、引張弾性率の変化率と噴出し性評価を行った。その測定結果を表1に示す。
(比較例1~3)
実施例1のポリエステル系可塑剤の配合量又はポリエステル系可塑剤を表1に示す非ポリエステル系可塑剤に変更した以外は実施例1と同様の方法によりポリ塩化ビニル系樹脂積層フィルムを作成し、引張弾性率の変化率と噴出し性評価を行った。その測定結果を表1に示す。
Figure 0007128129000003
表1より、本発明の積層フィルムであれば、塗膜表面への可塑剤の噴出しがなく、かつ、引張弾性率の変化率が小さいフィルムであり、耐寒性と可塑剤のブリードアウトがない積層フィルムを得ることができる(実施例1~6を参照)。
一方、所定のポリエステル系可塑剤を使用しない場合には、塗膜表面への可塑剤の噴出しがあり、ブリードアウトが多い積層フィルムであることがわかる。
本発明の積層フィルムは、可塑剤のブリードアウトがなく、かつ、耐寒性を兼ね備えた外観の優れたPVC系樹脂積層フィルムであるため、例えば、工業用の粘着フィルム(テープ)、看板、自動車等へ意匠性を付与するために貼り付けされるステッカー、ラベル及びマーキングフィルム等の装飾用粘着フィルム(テープ)、化粧シートに好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム(PVC系フィルム)の少なくとも片面上に、ポリウレタン系樹脂層(A層)及びアクリル系樹脂層(B層)をこの順序(PVC系フィルム/A層/B層)で備える積層フィルムであって、
    前記ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムが、重量平均分子量(Mw)が500以上2100以下のポリエステル系可塑剤を少なくとも1種類含み
    前記ポリエステル系可塑剤が、重量平均分子量(Mw)が500以上1250以下のポリエステル系可塑剤(a)と、重量平均分子量(Mw)が1250超2100以下のポリエステル系可塑剤(b)とを含み、
    23℃における引張弾性率に対する10℃における引張弾性率の変化率が175%以下であることを特徴とする積層フィルム。
  2. 前記ポリエステル系可塑剤が、アジピン酸ポリエステル系可塑剤である、請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記ポリエステル系可塑剤の添加量が、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムを構成するポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、20~40質量部である、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  4. 前記ポリウレタン系樹脂層(A層)は、少なくともポリエステル骨格又はポリカーボネート骨格のいずれかを有するポリオールと、多官能の脂肪族イソシアネートとの反応硬化物からなる、請求項1~のいずれかに記載の積層フィルム。
  5. 前記アクリル系樹脂層(B層)がアクリルポリオールとカプロラクトンポリオールとイソシアネート系架橋剤を含む組成物の硬化物からなる、請求項1~のいずれかに記載の積層フィルム。
  6. 前記アクリルポリオールの水酸基価が50mgKOH/g以上である、請求項に記載の積層フィルム。
  7. 前記カプロラクトンポリオールの重量平均分子量(Mw)が500未満である、請求項又はに記載の積層フィルム。
  8. 前記アクリル系樹脂層(B層)上にポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムを有する、請求項1~のいずれかに記載の積層フィルム。
  9. 自動車の装飾用フィルムとして用いる、請求項1~のいずれかに記載の積層フィルム。
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