JP7125216B1 - 水溶性ポリマーの製造方法、および吸水性樹脂の製造方法 - Google Patents

水溶性ポリマーの製造方法、および吸水性樹脂の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】生産効率が高い水溶性ポリマーの製造方法、および吸水性能に優れた吸水性樹脂の製造方法を提供する。【解決手段】澱粉を低分子量化して澱粉の部分分解物を得る工程(a1)、および工程(a1)で得られた澱粉の部分分解物にイオン性官能基を導入する工程(a2)、を含む、水溶性ポリマーの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、水溶性ポリマーの製造方法、および吸水性樹脂の製造方法に関する。
吸水性樹脂は、衛生用品、食品、農林業、土木等、様々な分野で広く用いられている。かかる吸水性樹脂としては、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸の部分中和塩が広く用いられている他、澱粉等の多糖を原料とした吸水性樹脂が知られている。
特許文献1は、カルボキシアルキル化した澱粉を加熱乾燥することにより、澱粉同士を架橋させ吸水性樹脂を製造する方法を開示している。カルボキシアルキル化反応の際には、澱粉の分子量低減を抑制することが好ましいと記載している。
特許文献2は、カルボキシアルキル化した多糖粒子を塩化水素酸等の非架橋酸で表面処理した後、加熱乾燥や架橋剤を作用させて多糖同士を架橋させ、吸水性樹脂を製造する方法を開示している。
特許文献3は、押出機中で澱粉と多塩基酸の酸無水物とを反応させて吸水性材料を製造する方法を開示している。多塩基酸の酸無水物との反応時には、澱粉の分子量低減を抑制することが好ましいと記載している。
米国特許5079354号 特表2010-504414号 特開2007-222704号
多糖を原料とする従来の吸水性樹脂は、吸水性能が十分とはいえなかった。また、高分子量の多糖から製造されていたため、原料の粘度が高く製造時の操作性に問題があった。本発明は、生産効率が高い水溶性ポリマーの製造方法、および吸水性能に優れた吸水性樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、吸水性樹脂の原料として用いる澱粉の分子量に着目し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、澱粉を低分子量化して澱粉の部分分解物を得る工程(a1)、および工程(a1)で得られた澱粉の部分分解物にイオン性官能基を導入する工程(a2)、を含む、水溶性ポリマーの製造方法に関する。
前記工程(a1)において重量平均分子量(Mw)が500万以下、及び/又は分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が5以上の澱粉の部分分解物を得ることが好ましい。
また、本発明は、澱粉にイオン性官能基を導入する工程(b1)、および工程(b1)で得られたイオン性官能基を有する澱粉を低分子量化して、該イオン性官能基を有する澱粉の部分分解物を得る工程(b2)を含む、水溶性ポリマーの製造方法に関する。
前記工程(a1)または(b2)において澱粉の低分子量化を酵素処理により行うことが好ましい。
得られる水溶性ポリマーの、水系サイズ排除クロマトグラフィー分析によるプルラン換算の重量平均分子量(Mw)が50万~1,500万であることが好ましい。
また、本発明は、前記製造方法により水溶性ポリマーを製造する工程(c1)、水溶性ポリマーに導入されたイオン性官能基を中和する工程(c2)、および水溶性ポリマー同士を架橋させる工程(c3)を含む、吸水性樹脂の製造方法に関する。
前記イオン性官能基が酸性基であることが好ましい。
前記酸性基がカルボキシル基を有する酸性基であることが好ましい。
得られる吸水性樹脂が以下の特徴:(a)イオン交換水の無加圧下吸水倍率が100~400g/g、(b)イオン交換水の保水率が80~300g/g、(c)生理食塩水の無加圧下吸水倍率が20~70g/g、および/または、(d)生理食塩水の保水率が10~60g/gを有することが好ましい。
得られる吸水性樹脂の、イオン交換水の無加圧下吸水倍率(A)と生理食塩水の無加圧下吸収倍率(B)の比(A/B)が7以下であることが好ましい。
前記工程(c3)において架橋剤を使用しないことが好ましい。
また、本発明は、前記製造方法により得られる吸水性樹脂をアルカリ処理する工程を含む、吸水性樹脂の分解方法に関する。
また、本発明は、前記製造方法により得られる吸水性樹脂を含む物品に関する。
本発明の水溶性ポリマーの製造方法は、中間生成物の粘度を低下して生産効率を向上できる。また、本発明の吸水性樹脂の製造方法により、吸水性能に優れた吸水性樹脂を得ることができる。
<<水溶性ポリマーの製造方法1>>
本発明の水溶性ポリマーの製造方法は、澱粉を低分子量化して澱粉の部分分解物を得る工程(a1)、および工程(a1)で得られた澱粉の部分分解物にイオン性官能基を導入する工程(a2)を含むことを特徴とする。
<澱粉を低分子量化して澱粉の部分分解物を得る工程(a1)>
本工程では、澱粉を低分子量化させ、粘度を低下させる。原料の澱粉種は特に限定されず、ワキシーコーン澱粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ(ワキシーコーンスターチおよびハイアミローススターチを含む)、小麦澱粉、米澱粉、甘藷澱粉などが挙げられる。
澱粉を低分子量化する方法は特に限定されず、例えば、酵素処理、酸処理、物理的破砕等を行う方法が挙げられる。また、これらの手法を組み合わせてもよい。これらの手法により、澱粉を構成するα-グルコース分子のグルコシド結合の一部を加水分解することが好ましいが、分解の生じる位置や分解の態様には制限されない。反応装置としては反応釜や押出機等を用いることができる。
澱粉の低分子量化を酵素処理により行う場合、使用する酵素は特に限定されないが、効率よく低分子量化するためにエンド型酵素を使用することが好ましい。酵素の具体例としては、α-アミラーゼ、シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ、4-α-グルカノトランスフェラーゼ、4,6-α-グルカノトランスフェラーゼ、アミロマルターゼ、ネオプルラナーゼ、アミロプルラナーゼなどが挙げられる。これらの酵素を組み合わせて使用してもよい。酵素処理時のpHは特に限定されないが、pH5.0~7.0が好ましい。pHの調整は塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の添加により行うことができる。酵素処理は、澱粉を70~110℃で加熱混練して糊化しながら行うことが好ましい。酵素処理は、澱粉の糊化後に行ってもよいし、糊化と同時に行ってもよい。酵素処理を澱粉の糊化後に行う方法としては、まず、澱粉を水に懸濁し加熱することで糊化し、その後に酵素を添加して酵素反応を行う方法が挙げられる。また、酵素処理を澱粉の糊化と同時に行う方法としては、澱粉を水に懸濁し、さらに酵素を添加した混合液を、酵素が完全には失活しない温度の範囲で加熱する方法が挙げられる。
澱粉の低分子量化を酸処理により行う場合、使用する酸は特に限定されないが、具体例としては塩酸、硫酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。酸処理時の温度は150~160℃が好ましい。
澱粉の部分分解を物理的破砕により行う場合、具体的な手段としては、放射線照射、せん断、摩砕、高圧処理、超音波、熱分解、光分解、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
工程(a1)で得られる澱粉部分分解物の重量平均分子量が高いと粘度が高くなり、イオン性官能基の導入時の反応や精製工程での操作性が低下する傾向があることから、重量平均分子量は500万以下が好ましい。澱粉部分分解物の重量平均分子量の下限は特に限定されないが、5万以上が好ましく、20万以上がより好ましい。重量平均分子量が5万未満では吸水性樹脂の保水性が低下する傾向がある。なお、重量平均分子量の測定法は特に限定されないが、例えば、水系サイズ排除クロマトグラフィーにおいて、分子量が既知のプルランにより作成した分子量と溶出時間の較正曲線に基づいて求めることができる。
工程(a1)で得られる澱粉部分分解物の数平均分子量は特に限定されないが、粘度を考慮し、100万以下が好ましい。また、澱粉部分分解物の数平均分子量の下限は、1万以上が好ましく、5万以上がより好ましい。なお、数平均分子量の測定法は特に限定されないが、例えば、水系サイズ排除クロマトグラフィーにおいて、分子量が既知のプルランにより作成した分子量と溶出時間の較正曲線に基づいて求めることができる。
また、工程(a1)で得られる部分分解物の重量平均分子量、または数平均分子量は、2種以上の澱粉の部分分解物を混合することにより調整してもよい。この場合、混合物の重量平均分子量、または数平均分子量が、前述した数値範囲を満たすことが好ましい。
澱粉部分分解物の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は特に限定されないが、5以上が好ましく、7以上がより好ましい。前述した重量平均分子量の数値範囲を満たす限り、分散度の上限は特に限定されないが通常25以下である。
<澱粉の部分分解物にイオン性官能基を導入する工程(a2)>
本工程では、工程(a1)で得られた澱粉の部分分解物と、イオン性官能基含有化合物とを反応させる。イオン性官能基は、澱粉の部分分解物に架橋性を付与できれば特に限定されず、酸性基、塩基性基のいずれでもよい。酸性基の具体例としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホ基等を有する酸性基が挙げられる。塩基性基の具体例としては1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基等を有する塩基性基が挙げられる。これらの中でも、澱粉部分分解物への導入の簡便さの観点から酸性基が好ましく、カルボキシル基を有する酸性基がより好ましく、カルボキシアルキル基が好ましい。
これらのイオン性官能基を導入する方法として、酸性基を導入する場合、澱粉またはその部分分解物と、酸性基含有化合物またはその前駆体とを反応させる。酸性基含有化合物としては、酸性基を有するハロアルキル化合物や酸無水物が挙げられる。
カルボキシル基を有する酸性基を導入する場合の、酸性基含有化合物の具体例としては、モノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸カリウム、モノブロモ酢酸、モノブロモ酢酸ナトリウム、無水コハク酸、無水マレイン酸などが挙げられる。酸性基含有化合物の前駆体としては、アクリロニトリルなどが挙げられる。アクリロニトリルを用いる方法としては、例えば、まず、塩基性条件下でアクリロニトリルを澱粉またはその部分分解物と反応させ、シアノエチル基を導入し、該シアノエチル基をアミド基へ誘導後(Synthesis;1989(12):949-950)、得られたアミドをアルカリ加水分解する方法が挙げられる。
酸性基を導入する方法の具体例として、スルホ基については、塩基性条件下で、ビニルスルホン酸やビニルスルホン酸ナトリウムを反応させる方法が挙げられる。ホスホ基については、塩基性条件下でオキシ塩化リンを反応させる方法が挙げられる。塩基性基を導入する方法としては、グリシジルトリメチルアンモニウム・クロリドやエピクロロヒドリンとアミン類を使用する方法が挙げられる。
澱粉の部分分解物とイオン性官能基含有化合物との反応の条件は特に限定されないが、イオン性官能基含有化合物としてハロアルキル化合物を用いる場合、ハロアルキル化合物に対して、1~1.5当量のアルカリ剤を使用することが好ましい。アルカリ剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。
澱粉の部分分解物に導入されたイオン性官能基は、アルカリ剤に由来するナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニアなどと塩を形成することが好ましく、このために、アルカリ剤は、ハロアルキル化合物と澱粉の部分分解物との反応と、ハロアルキル化合物の酸性基の中和の両方に必要となる量を使用することが好ましい。例えば、イオン性官能基含有化合物としてクロロ酢酸を用いる場合は、アルカリ剤は、理論的には、クロロ酢酸に対して2当量以上使用することが好ましい。クロロ酢酸ナトリウムを用いる場合は、酸性基は予め中和されているため、アルカリ剤はクロロ酢酸ナトリウムに対して、1当量以上使用することが好ましい。
イオン性官能基含有化合物の使用量は、水溶性ポリマーについて目的の全酸価(エーテル化度)に応じて、任意に設定できる。通常は、澱粉の部分分解物の水酸基1モルに対して、0.5~5.0当量とすることが好ましく、0.5~2.0当量とすることがより好ましい。クロロ酢酸などのハロアルキル化合物を用いて、水溶液として反応させる場合は、酸性基の導入反応とハロアルキル化合物の加水分解反応が競合するため、ハロアルキル化合物は理論上よりも過剰に必要となる。水溶液反応におけるハロアルキル化合物の使用量は理論値に対して5当量以下で設定することが好ましい。
澱粉の部分分解物とイオン性官能基含有化合物との反応温度は特に限定されないが、0~120℃が好ましい。反応時間は特に限定されないが、1~24時間が好ましい。反応は水中で行ってもよいが、水とメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などとの混合溶媒中で行ってもよいし、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などの親水性溶媒中に乾燥させた澱粉部分分解物の粉末を分散して行うこともできる。混合溶媒を用いる場合、水以外の溶媒の占める割合は、混合溶媒中50体積%以下であることが好ましい。反応装置としては反応釜や押出機等を用いることができる。
酸性基含有化合物として、クロロ酢酸などのハロアルキル化合物またはその塩を用いる場合、澱粉の部分分解物との反応温度は特に限定されないが、0~100℃が好ましい。
特に、ハロアルキル化合物としてクロロ酢酸またはその塩を用いる場合は、反応溶液中の水による加水分解を防ぐために、25~90℃で行うことが好ましい。反応時間は、原料となるハロアルキル化合物が消費されるまでの時間が好ましく、ハロアルキル化合物の安定性やプロセスの効率化のために1~12時間がより好ましい。反応は水中で行ってもよいが、水と、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などとの混合溶媒中で行ってもよいし、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などの親水性溶媒中に乾燥させた澱粉部分分解物の粉末を分散して行うこともできる。混合溶媒を用いる場合、水以外の溶媒の占める割合は、混合溶媒中50体積%以下であることが好ましい。反応装置としては反応釜や押出機等を用いることができる。
<<水溶性ポリマーの製造方法2>>
本発明の水溶性ポリマーの製造方法は、澱粉にイオン性官能基を導入する工程(b1)、および
工程(b1)で得られたイオン性官能基を有する澱粉を低分子量化して、該イオン性官能基を有する澱粉の部分分解物を得る工程(b2)を含むことを特徴とする。
<澱粉にイオン性官能基を付加する工程(b1)>
本工程では、澱粉と、イオン性官能基含有化合物とを反応させる。使用する澱粉、イオン性官能基、イオン性官能基含有化合物は、澱粉の部分分解物にイオン性官能基を導入する工程(a2)に関して前述した通りである。
澱粉とイオン性官能基含有化合物との反応の条件は特に限定されないが、イオン性官能基含有化合物としてハロアルキル化合物を用いる場合、ハロアルキル化合物に対して、1~1.5当量のアルカリ剤を使用することが好ましい。澱粉を安定化させるために、pH10.5~12.5が好ましく、pH11~12がより好ましい。pH調整に用いるアルカリ剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。
澱粉に導入されたイオン性官能基は、アルカリ剤に由来するナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニアなどと塩を形成することが好ましく、このために、アルカリ剤は、ハロアルキル化合物と澱粉との反応と、ハロアルキル化合物の酸性基の中和の両方に必要となる量を使用することが好ましい。例えば、イオン性官能基含有化合物としてクロロ酢酸を用いる場合は、アルカリ剤は、理論的には、クロロ酢酸に対して2当量以上使用することが好ましい。クロロ酢酸ナトリウムを用いる場合は、酸性基は予め中和されているため、アルカリ剤はクロロ酢酸ナトリウムに対して、1当量以上使用することが好ましい。
イオン性官能基含有化合物の使用量は、水溶性ポリマーについて目的の全酸価(エーテル化度)に応じて、任意に設定できる。通常は、澱粉の水酸基1モルに対して、0.5~5.0当量とすることが好ましく、0.5~2.0当量とすることがより好ましい。クロロ酢酸などのハロアルキル化合物を用いて、水溶液として反応させる場合は、酸性基の導入反応とハロアルキル化合物の加水分解反応が競合するため、ハロアルキル化合物は理論上よりも過剰に必要となる。水溶液反応におけるハロアルキル化合物の使用量は理論値に対して5当量以下で設定することが好ましい。
澱粉とイオン性官能基含有化合物との反応温度は特に限定されないが、0~120℃が好ましい。反応時間は特に限定されないが、1~24時間が好ましい。反応は水中で行ってもよいが、水とメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルテール等のアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などとの混合溶媒中で行ってもよい。混合溶媒を用いる場合、水以外の溶媒の占める割合は、混合溶媒中50体積%以下であることが好ましい。反応装置としては反応釜や押出機等を用いることができる。
酸性基含有化合物として、クロロ酢酸などのハロアルキル化合物を用いる場合、澱粉との反応温度は特に限定されないが、0~100℃が好ましい。
特に、ハロアルキル化合部としてクロロ酢酸またはその塩を用いる場合は、反応溶液中の水による加水分解を防ぐために、25~60℃で行うことが好ましい。反応時間は、原料となるハロアルキル化合物が消費されるまでの時間が好ましく、ハロアルキル化合物の安定性やプロセスの効率化のために1~6時間がより好ましい。反応は水中で行ってもよいが、水と、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などとの混合溶媒中で行ってもよいし、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などの親水性溶媒中に乾燥させた澱粉部分分解物の粉末を分散して行うこともできる。混合溶媒を用いる場合、水以外の溶媒の占める割合は、混合溶媒中50体積%以下であることが好ましい。反応装置としては反応釜や押出機等を用いることができる。
<イオン性官能基を有する澱粉を低分子量化して、該イオン性官能基を有する澱粉の部分分解物を得る工程(b2)>
本工程では、工程(b1)で得られたイオン性官能基を有する澱粉を低分子量化させ、粘度を低下させる。低分子量化する方法は特に限定されず、例えば、澱粉に酵素処理、酸処理、物理的破砕等を行う方法が挙げられる。これらの方法については、澱粉を低分子量化して澱粉の部分分解物を得る工程(a1)に関して前述した通りである。
<<水溶性ポリマーの物性>>
本発明で製造される水溶性ポリマーの分子量は特に限定されないが、水系サイズ排除クロマトグラフィー分析によるプルラン換算の重量平均分子量が50万~1,500万であることが好ましく、70万~1,300万であることがより好ましい。前記重量平均分子量が50万未満では吸水性樹脂の保水性が低下する傾向があり、1,500万を超えると吸水性樹脂の吸水性能が低下する傾向がある。なお、水系サイズ排除クロマトグラフィー分析によるプルラン換算の重量平均分子量は、水系サイズ排除クロマトグラフィーにおいて分子量が既知のプルランにより作成した分子量と溶出時間の較正曲線に基づいて求めることができる。
イオン性官能基が酸性基である場合、水溶性ポリマーの全酸価は50~350mgKOH/gであることが好ましく、70~300mgKOH/gであることがより好ましい。全酸価は、中和された酸性基を、中和されていない状態に戻して測定した酸価を意味し、水溶性ポリマーへの全ての酸性基の導入量を示す。全酸価が50mgKOH/g未満、または、350mgKOH/gを超えると、水溶性ポリマーを架橋した後の吸水性樹脂において、生理食塩水などの電解質を含む水溶液の吸水性能が低下する傾向がある。
水溶性ポリマー上の酸性基を、酸性基を有するハロアルキル化合物と、澱粉またはその部分分解物の水酸基とを反応させて導入した場合、酸性基の導入量はエーテル化度によって表すこともできる。水溶性ポリマーのエーテル化度は、0.1~2.0であることが好ましく、0.2~1.5であることがより好ましい。エーテル化度は、灰化滴定法などにより求めることができる。また、全酸価は酸性基の導入により検出されるものであり、原料となる澱粉または澱粉部分分解物に酸性基が含まれていない場合には、全酸価の測定により検出された酸性基は、エーテル化反応により導入されたものと等しいと考えられる。このため、原料の澱粉または澱粉部分分解物に酸性基が存在しない場合には、簡易的に上記全酸価の数値から計算により算出してもよい。例えば、酸性基がカルボキシメチル基であり、そのすべてがナトリウム塩として中和されている場合、エーテル化度=(162×全酸価)÷(56100-80×全酸価)で算出できる。なお、この時の全酸価の単位は、mgKOH/gである。
水溶性ポリマーのフリー酸価は5~30mgKOH/gであることが好ましく、7~25mgKOH/gであることがより好ましい。フリー酸価は、中和されていない酸性基について測定した酸価を意味する。フリー酸価が5mgKOH/g未満では吸水性樹脂の強度が不十分となる傾向があり、 30mgKOH/gを超えると吸水性能が低下する傾向がある。
水溶性ポリマーの分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は特に限定されないが、5~50が好ましく、7~45がより好ましい。7未満または、45を超えると吸水性樹脂の吸水性能が低下する傾向がある。水溶性ポリマーの数平均分子量は水系サイズ排除クロマトグラフィー分析により求められる。
<<吸水性樹脂の製造方法>>
本発明の吸水性樹脂の製造方法は、前記製造方法により水溶性ポリマーを製造する工程(c1)、水溶性ポリマーに導入されたイオン性官能基を中和する工程(c2)、および、水溶性ポリマー同士を架橋させる工程(c3)を含むことを特徴とする。
<水溶性ポリマーに導入されたイオン性官能基を中和する工程(c2)>
本工程では、澱粉部分分解物に付加されるイオン性官能基の塩を中和する。中和により、塩を形成していたイオン性官能基の一部が遊離のイオン性官能基に変換される。中和はイオン性官能基の塩の一部に対して行うことが好ましい。例えば、上述したイオン性官能基含有化合物としてモノクロロ酢酸を用い、アルカリ剤として水酸化ナトリウムを用いた場合、澱粉部分分解物にカルボキシル基のナトリウム塩が付加される。これに酸を添加することにより、一部のカルボキシル基が遊離のカルボン酸に変換される。
イオン性官能基が酸性基である場合、中和には酸を使用する。酸は酸性基と同等以下のpKaを持つ酸であれば特に限定されないが、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、ギ酸、トリクロロ酢酸などが挙げられる。中和は、反応釜、押出機等の公知の装置を用いて行うことができる。酸の添加後は、中和反応のために0~50℃で0.2~1時間、攪拌することが好ましい。中和反応はpH6.8~7.2の条件で行うことが好ましい。
イオン性官能基が塩基性基である場合、中和にはアルカリ剤を使用する。アルカリ剤は塩基性基と同等以上のpKaを持つものであれば特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、などが挙げられる。中和は、反応釜、押出機等の公知の装置を用いて行うことができる。アルカリ剤の添加後は、中和反応のために0~50℃で0.2~1時間、攪拌することが好ましい。中和反応はpH6.8~7.2の条件で行うことが好ましい。
中和反応では、イオン性官能基含有化合物に由来するハロゲンと、アルカリ剤に由来する金属やアンモニアとの間で塩が形成されることがある。脱塩方法としては、水溶性ポリマーを水に溶解させ水溶液としたものをメタノール、エタノール、イソプロパノール等の親水性溶媒中へ滴下し、水溶性ポリマーを再沈殿させ、ろ過して回収し、その後、ろ過回収した水溶性ポリマーを含水メタノール(含水率70~90%程度)中に再度分散させ、攪拌後、水溶性ポリマーの粒子をろ過回収するプロセスにより洗浄する方法が挙げられる。また、脱塩方法として、親水性ポリマーの水溶液を限外ろ過膜を有する濾過器で処理する方法が挙げられる。脱塩時の洗浄液としては、水や、水とメタノール、エタノール、プロパノール等の親水性有機溶媒との混合液を使用できる。脱塩は、水溶性ポリマー中の塩濃度が、1%以下となるまで実施することが好ましい。
<水溶性ポリマー同士を架橋させる工程(c3)>
本工程では、水溶性ポリマー同士を架橋させる。ここで形成される架橋は、吸水性樹脂の内部架橋に該当する。架橋は、架橋剤を用いることなく、例えば水溶性ポリマーを含水条件で加熱乾燥する方法により形成できる。加熱乾燥を開始する時点での水溶性ポリマーは、水溶液であっても良いし、水分が1重量%以上である含水溶媒を含んだウェット粉末であっても良い。含水溶媒を含んだウェット粉末を乾燥させる場合、その乾燥開始時のウェット粉末のウェット率は、1~85重量%が好ましく、20~80重量%がより好ましく、55~75重量%がさらに好ましい。なお、ここでいうウェット率とは、水と親水性溶媒との合計量の、ウェット粉末中の割合のことである。加熱時の温度は50~150℃が好ましく、60~130℃がより好ましい。乾燥方法は特に限定されず、ドラムドライヤー、スプレードライヤー、ナウターミキサー等を用いて行うことができる。
架橋は、工程(c1)で水溶性ポリマーに導入されたイオン性官能基を介して形成されることが好ましい。架橋構造として、例えばイオン性官能基同士でのイオン結合、金属イオンを介した配位結合が挙げられ、イオン性官能基がカルボキシル基を有する酸性基である場合は、カルボキシル基の二量体化などの水素結合などが挙げられる。得られる吸水性樹脂の分解を容易にするため、架橋は共有結合によるものではないことが好ましい。共有結合による架橋として、エステル結合、エーテル結合、炭素-炭素単結合(C-C結合)、炭素-炭素二重結合(C=C結合)などが挙げられる。
架橋させる際には、水に加えて、水以外の溶媒を併用してもよい。水以外の溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコールおよびイソプロピルアルコールなどの低級脂肪族アルコール類;アセトンなどのケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフランおよびメトキシ(ポリ)エチレングリコールなどのエーテル類;ε-カプロラクタムおよびN,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド類が挙げられる。全溶媒中、水以外の溶媒の占める割合は溶媒の沸点により調整することが好ましく、溶媒の沸点が100℃以下の場合は70体積%以上、100℃より高い場合は30体積%以下であることが好ましい。
架橋構造は、前述したように架橋剤を用いずに形成できるが、架橋剤を用いてもよい。架橋剤としては、エポキシ化合物、多価アルコール化合物、多価アミン化合物、ポリイソシアネート化合物、アルキレンカーボネート化合物、ハロエポキシ化合物、ハロヒドリン化合物、多価オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、シランカップリング剤、多価金属化合物等を挙げることができる。
上記エポキシ化合物としては、例えば、コハク酸グリシジルエステル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等が挙げられる。
上記多価アルコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2-ブテン-1,4-ジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン-オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等を挙げることができる。
上記多価アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、これら多価アミン化合物の無機塩又は有機塩(アジチニウム塩等)、キチン等のアミノ基を有する多糖類等を挙げることができる。
上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等を、上記多価オキサゾリン化合物としては、例えば、1,2-エチレンビスオキサゾリン等を挙げることができる。
上記アルキレンカーボネート化合物としては、例えば、1,3-ジオキソラン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン、4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン等を挙げることができる。
上記ハロエポキシ化合物としては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、α-メチルエピクロロヒドリンやその多価アミン付加物(例、ハーキュレス社製カイメン(登録商標))等を挙げることができる。
また、その他公知の架橋剤として、水系のカルボジイミド化合物(例、日清紡ケミカル株式会社製カルボジライト)、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤や、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、ジルコニウム等の水酸化物や塩化物等の多価金属化合物等も用いることができる。
架橋により得られた吸水性樹脂の、水及び/又は親水性溶媒の含有率は、吸水性樹脂に加熱や乾燥等の処理を行うことにより調整できる。吸水性樹脂中の、水及び/又は親水性溶媒の含有率は0.1~20%であることが好ましく、1~19%であることがより好ましい。0.1%未満では吸水速度が低下する傾向があり、20%を超えると吸水時に吸水性樹脂粒子が凝集しやすい(ダマになりやすい)傾向がある。親水性溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
吸水性樹脂の製造時には、工程(c3)の架橋に加えて、表面架橋を行ってもよい。表面架橋により、吸水性樹脂の強度を向上できる。表面架橋に用いる架橋剤は、工程(c3)の架橋について前述した架橋剤と同じものが使用可能である。これらの中でも、エポキシ化合物が好ましく、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、コハク酸グリシジルエステルがより好ましい。
表面架橋は、表面架橋剤を吸水性樹脂に噴霧した後、円筒型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、双腕型混合機、粉砕型ニーダー等を用いて公知の方法で混合した後、架橋させることにより形成できる。噴霧、混合時には、必要に応じて界面活性剤を添加することができる。
製造された吸水性樹脂は、不純物や副生成物を除去するために、脱塩や洗浄などの処理を行ってもよい。脱塩は、逆浸透膜を有する濾過器などを用いて行うことができる。洗浄液としては、水や、水とメタノール、エタノール、プロパノール等の親水性有機溶媒との混合液を使用できる。
<<吸水性樹脂>>
上述した方法により製造される吸水性樹脂の無加圧下の吸水倍率は、吸水性樹脂に荷重をかけないときの生理食塩水またはイオン交換水の吸収性を、実施例に記載の方法で測定して求められる。吸水性樹脂は、固形物の状態で、イオン交換水の無加圧下吸水倍率が100~400g/gであることが好ましく、120~350g/gであることがより好ましい。また、生理食塩水の無加圧下吸水倍率が20~70g/gであることが好ましく、30~65g/gであることがより好ましい。
吸水性樹脂の、イオン交換水の無加圧下吸水倍率(A)と生理食塩水の無加圧下吸収倍率(B)の比(A/B)は、7以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。
吸水性樹脂の保水率は、吸水性樹脂に150Gの荷重をかけたときの生理食塩水またはイオン交換水の吸収性を、実施例に記載の方法で測定して求められる。吸水性樹脂は、固形物の状態で、イオン交換水の保水率が80~300g/gであることが好ましく、100~300g/gであることがより好ましい。また、生理食塩水の保水率が10~60g/gであることが好ましく、20~60g/gであることがより好ましい。
吸水性樹脂は、任意で、前述した水溶性ポリマー以外の構成単位を含んでいてもよい。水溶性ポリマー以外の構成単位としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋物、自己架橋型ポリアクリル酸部分中和物、でんぷん―アクリル酸グラフト重合体などのポリアクリル酸(塩)が挙げられる。アクリル酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。水溶性ポリマー以外の構成単位としては、この他に、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸などのアニオン性不飽和単量体およびその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、N-アクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジンなどのノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、およびこれらの四級塩のようなカチオン性不飽和単量体、直鎖状セルロース、ポリ(γ-グルタミン酸)などが挙げられる。
吸水性樹脂が水溶性ポリマー以外の構成単位を含む場合、その含有量は、主成分として用いる水溶性ポリマーとの合計量に対して90重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましく、20重量%以下がさらに好ましい。
吸水性樹脂は、種々の機能を付与する目的で、消毒剤、消臭剤、抗菌剤、香料、各種の無機粉末、発泡剤、顔料、染料、親水性短繊維、肥料、酸化剤、還元剤、水、及び塩類等の他の添加剤を含有していても良い。これらの添加量は当業者により適切に選択される。
<<吸水性樹脂の分解方法>>
本発明の吸水性樹脂の分解方法は、前記製造方法により得られる吸水性樹脂をアルカリ処理する工程を含むことを特徴とする。アルカリ処理する工程では、吸水性樹脂を、好ましくはpH9以上、より好ましくはpH10以上の条件に置く。アルカリ処理により、吸水性樹脂の架橋構造やグルコシド結合が開裂して水溶性ポリマーに分解され、廃棄時の環境負荷を低減できる。
アルカリ処理に用いるアルカリ剤は特に限定されないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。アルカリ処理時の温度は特に限定されないが、例えば5~50℃の条件で行うことができる。
<<吸水性樹脂を含む物品>>
前述した吸水性樹脂により、様々な物品を製造することができる。物品としては、紙おむつ、生理用品、失禁用パッド、携帯用トイレ、汚物処理袋、動物用屎尿処理剤、医療用手当材、手術用シート、歯科用廃液処理剤、医療廃血液凝固剤、創傷被覆材、保湿剤などの衛生用品や医療用品、土壌保水剤、育苗シート、種子コーティング、肥料の徐放剤、農薬・肥料の崩壊助剤、砂漠緑化資材、農業用フィルム、鮮度保持剤などの農業・園芸用品、土壌改質剤、汚泥固化剤、止水材などの土木用材料のほか、保冷剤、増粘剤、消臭剤、食品用ドリップ吸収剤、ペットシート、使い捨てカイロ、電池用ゲル化剤、結露防止シート、パッキング剤、人工雪などの物品が挙げられる。衛生用品の例として、バックシート、吸収体、及びトップシートがこの順に積層された積層体が挙げられる。前記吸収体は本発明の吸水性樹脂を含み、必要に応じて、さらに吸水紙やパルプを含んでいてもよい。物品の具体的な製造方法は特に限定されず、各物品について周知の方法により製造できる。
これらの物品は、前述した吸水性樹脂を含むため、分解しやすいという特徴を持つ。吸水性樹脂は、前述したアルカリ処理条件により分解することができ、廃棄時の環境負荷を低減できる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
(1)使用材料
(1-1)澱粉原料
コーンスターチ
タピオカ
ワキシーコーン
馬鈴薯
(1-2)加水分解酵素
α-アミラーゼ(ナガセケムテックス(株)製):スピターゼHK/R、12,200単位/g
ブランチングエンザイム(Novozyme製):Branchzyme(登録商標)、25,000単位/g
アミロマルターゼ:Thermus thermophilusを好気的に培養し、回収した菌体の破砕抽出液を遠心分離し、その上清を粗酵素液として用いた。粗酵素液を常法通りカラムクロマトグラフィーに供して、電気泳動的に単一にまで精製した標品を精製酵素液として用いた。
なお、アミロマルターゼの活性は、以下の方法で行った。10w/v%マルトトリオース、50 mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)、および酵素を含む反応液1を、60℃で20分間インキュベートした。その後、100℃で10分間加熱して反応を停止した。グルコースオキシダーゼ法により反応液中のグルコース量を測定した。アミロマルターゼの単位量は、1分間に1μmolのグルコースを生成するアミロマルターゼ活性を1単位とした。
(2)澱粉部分分解物の製造(製造例1~14)
以下の方法で、澱粉部分分解物を製造した。なお、得られた澱粉部分分解物の重量平均分子量は、水系サイズ排除クロマトグラフィーにおいて、分子量が既知のプルランにより作成した分子量と溶出時間の較正曲線に基づいて求めた。
製造例1:コーンスターチ由来の澱粉部分分解物
コーンスターチを濃度15%(w/w)となるように20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に懸濁して澱粉乳を調製した。この澱粉乳に、アミロマルターゼ粗酵素液を澱粉固形物1グラム当たり0.8単位、およびブランチングエンザイムを澱粉固形物1グラム当たり20単位になるように添加し、室温で30分間攪拌した後、攪拌下80℃で6時間保持して反応させ、液化澱粉を調製した。得られた澱粉部分分解物の重量平均分子量は81.0万であった。
製造例2:コーンスターチ由来の澱粉部分分解物
コーンスターチを濃度15%(w/w)となるように20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に懸濁して澱粉乳を調製した。この澱粉乳に、アミロマルターゼ粗酵素液を澱粉固形物1グラム当たり1.6単位になるように添加し、室温で30分間攪拌した後、攪拌下90℃で3時間、さらに80℃で17時間保持して反応させ、液化澱粉を調製した。得られた澱粉部分分解物の重量平均分子量は66.3万であった。
製造例3: コーンスターチ由来の澱粉部分分解物
コーンスターチを濃度15%(w/w)となるように20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に懸濁して澱粉乳を調製した。この澱粉乳に、アミロマルターゼ精製酵素液を澱粉固形物1グラム当たり1.6単位になるように添加し、室温で30分間攪拌した後、攪拌下80℃で8時間保持して反応させ、液化澱粉を調製した。得られた澱粉部分分解物の重量平均分子量は72.0万であった。
製造例4:コーンスターチ由来の澱粉部分分解物
コーンスターチを濃度15%(w/w)となるように20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に懸濁して澱粉乳を調製した。この澱粉乳に、アミロマルターゼ精製酵素液を澱粉固形物1グラム当たり0.6単位、およびスピターゼHK/Rを澱粉固形物1グラム当たり0.03単位になるように添加し、室温で30分間攪拌した後、攪拌下90℃で4.5時間、さらに100℃で1.5時間保持して反応させ、液化澱粉を調製した。得られた澱粉部分分解物の重量平均分子量は146万であった。
製造例5:タピオカ澱粉由来の澱粉部分分解物
タピオカ澱粉を濃度15%(w/w)となるように20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に懸濁して澱粉乳を調製した。この澱粉乳に、アミロマルターゼ粗酵素液を澱粉固形物1グラム当たり1.6単位になるように添加し、室温で30分間攪拌した後、攪拌下80℃で20時間保持して反応させ、液化澱粉を調製した。得られた澱粉部分分解物の重量平均分子量は20万であった。
製造例6:タピオカ澱粉由来の澱粉部分分解物
タピオカ澱粉を濃度15%(w/w)となるように20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に懸濁して澱粉乳を調製した。この澱粉乳に、アミロマルターゼ粗酵素液を澱粉固形物1グラム当たり0.4単位になるように添加し、室温で30分間攪拌した後、攪拌下80℃で9時間保持して反応させ、液化澱粉を調製した。得られた澱粉部分分解物の重量平均分子量は118万であった。
製造例7:タピオカ澱粉由来の澱粉部分分解物
タピオカ澱粉を濃度15%(w/w)となるように20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に懸濁して澱粉乳を調製した。この澱粉乳に、アミロマルターゼ精製酵素液を澱粉固形物1グラム当たり0.4単位になるように添加し、室温で30分間攪拌した後、攪拌下80℃で3時間保持して反応させ、液化澱粉を調製した。得られた澱粉部分分解物の重量平均分子量は196万であった。
製造例8:ワキシーコーンスターチ由来の澱粉部分分解物
ワキシーコーンスターチを水道水に懸濁し、これに最終濃度1mMとなるように塩化カルシウムを加え、pH6.0に調整して濃度約15質量%の澱粉乳を調製した。この澱粉乳にスピターゼHK/Rを澱粉固形物1グラム当たり0.78単位になるように添加し、30分間攪拌した後、連続液化装置に流速1L/分で通液した。澱粉乳を連続液化装置にて100℃で25分間、次いで、140℃で5分間加熱して液化澱粉を調製した。得られた澱粉部分分解物の重量平均分子量は61万であった。
製造例9:ワキシーコーンスターチ由来の澱粉部分分解物
製造例8と同じ方法で酵素添加量を0.36Uに変更して調製した。得られた澱粉部分分解物の重量平均分子量は133万であった。
製造例10:馬鈴薯澱粉由来の澱粉部分分解物
馬鈴薯澱粉を濃度15%(w/w)となるように20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に懸濁して澱粉乳を調製した。この澱粉乳に、アミロマルターゼ精製酵素液を澱粉固形物1グラム当たり0.8単位になるように添加し、室温で30分間攪拌した後、攪拌下80℃ で4時間保持して反応させ、液化澱粉を調製した。得られた澱粉部分分解物の重量平均分子量は153万であった。
製造例11:コーンスターチ由来の澱粉部分分解物
コーンスターチを濃度15%(w/w)となるように20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に懸濁して澱粉乳を調製した。この澱粉乳に、アミロマルターゼ精製酵素液を澱粉固形物1グラム当たり0.6単位、およびスピターゼHK/Rを澱粉固形物1グラム当たり0.03単位になるように添加し、室温で30分間攪拌した後、攪拌下90℃で4.5時間、さらに100℃で1.5時間保持して反応させ、液化澱粉を調製した。得られた澱粉部分分解物の重量平均分子量は146万であった。
製造例12: コーンスターチ由来の澱粉部分分解物
コーンスターチを濃度15%(w/w)となるように20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に懸濁して澱粉乳を調製した。この澱粉乳に、アミロマルターゼ精製酵素液を澱粉固形物1グラム当たり0.6単位およびスピターゼHK/Rを澱粉固形物1グラム当たり0.03単位になるように添加し、室温で30分間攪拌した後、攪拌下80℃ で6時間保持して反応させ、液化澱粉を調製した。得られた澱粉部分分解物の重量平均分子量は104万であった。
製造例13:タピオカ澱粉由来の澱粉部分分解物
タピオカ澱粉を濃度15%(w/w)となるように20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に懸濁して澱粉乳を調製した。この澱粉乳に、アミロマルターゼ精製酵素液を澱粉固形物1グラム当たり1.6単位になるように添加し、室温で30分間攪拌した後、攪拌下80℃で20時間保持して反応させ、液化澱粉を調製した。得られた澱粉部分分解物の重量平均分子量は19万であった。
製造例14: コーンスターチ由来の澱粉部分分解物
コーンスターチを濃度15%(w/w)となるように20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に懸濁して澱粉乳を調製した。この澱粉乳に、アミロマルターゼ精製酵素液を澱粉固形物1グラム当たり8.0単位になるように添加し、室温で30分間攪拌した後、攪拌下90℃で3.0時間、さらに80℃で21時間保持して反応させ、液化澱粉を調製した。得られた澱粉部分分解物の重量平均分子量は27万であった。
(3)水溶性ポリマーの製造(製造例15~28)
(3-1)製造例15
製造例1で製造した澱粉部分分解物の15重量%水溶液125g(澱粉部分分解物の水酸基0.35mol)を撹拌機、温度計、冷却管を備えた500mlのセパラブルフラスコに仕込んだ。次に、48.8%の水酸化ナトリウム水溶液42.7g(0.52mol、澱粉部分分解物の水酸基に対して1.5当量)を仕込み、60℃以下で溶液が完全に均一となるまで攪拌した。溶液が均一となったことを確認後、モノクロロ酢酸ナトリウム60.7g(0.52mol、澱粉部分分解物の水酸基に対して1.5当量)をイオン交換水78.4gに溶解した水溶液を50~60℃で30分かけて滴下仕込みした。モノクロロ酢酸ナトリウム水溶液を仕込み後、温度を80~85℃に調節し、1時間攪拌した。反応の終点は、反応液をサンプリングし、0.01N硝酸銀溶液を用いて、反応液中の塩素イオン含量を、電位差滴定にて測定し、すべてのモノクロロ酢酸ナトリウムが反応した際の塩素イオン含量の計算値6.0%の98%以上に到達していることを条件とした。本製造例では塩素含有量は6.2%であった。
反応終了後、反応液をイオン交換水28gで希釈した。希釈した反応液を室温まで冷却し、1Lのメタノール中に約30分かけて添加し、水溶性ポリマーを析出、再沈殿させた。すべての反応液を添加した後、30分攪拌を行い、メタノール中に分散している水溶性ポリマーを減圧濾過にて固液分離した。
続いて、水溶性ポリマー中に含まれる塩化ナトリウムを除去するために、回収した水溶性ポリマーをメタノール/水が80/20(体積比)の含水メタノール0.7L中に再分散させ、室温で30分攪拌、洗浄後、減圧濾過で固液分離し、水溶性ポリマーを再度回収した。回収した水溶性ポリマーの塩素含有量を0.01N硝酸銀溶液を用いた電位差滴定で測定し、塩素含有量が1%未満となるまで、洗浄のプロセスを繰り返した。得られた水溶性ポリマーの全酸価は182mgKOH/g、全酸価から算出したエーテル化度は0.71であった。
(3-2)製造例16~28
表1に記載した原料と仕込み量に変更した以外は、製造例15と同様に反応を行い、水溶性ポリマーを得た。
Figure 0007125216000001
(4)吸水性樹脂の製造(製造例29~44)
製造例15で得られた水溶性ポリマー(含水メタノールのウェット品、ウェット率65%)35gを300mlのビーカーに投入し、更にメタノール/水=80/20(体積比)の含水メタノール100mlを加え、水溶性ポリマーを分散させた。これに、マグネティックスターラーで攪拌しながら、1N塩酸3.7mlをメスピペットで徐々に添加した。塩酸を添加した後、15分間攪拌し、減圧吸引ろ過を行い、部分的にフリー酸に中和された水溶性ポリマーを回収した。回収した水溶性ポリマーは、含水アルコールを含んだウェット結晶であった。当該ウェット結晶をシャーレに移し、70℃に設定した送風乾燥機に投入し、12時間乾燥して、架橋処理を行った。乾燥中、初期にメタノールが揮発し、一旦水溶性ポリマーは水に溶けて水飴状となるため、乾燥終了後はスポンジ状の一塊の固体になる。当該スポンジ状固体を乳鉢で粉砕し、目開き150μmと850μmの篩を使用して篩掛けを行い、粒径150~850μmの粒子を回収した。
製造例30~44の吸水性樹脂は、表2に記載した原料と仕込み量に変更した以外は、製造例25と同等の操作を行い、吸水性樹脂を得た。
Figure 0007125216000002
(5)吸水性樹脂の製造(比較製造例1~2)
特許文献1(米国特許5079354号)のEXAMPLE2に開示された手順に従って、低分子化していないコーンスターチをカルボキシメチル化し、アルカリ条件下で加熱乾燥することにより、比較製造例1の吸水性樹脂を製造した。
特許文献2(特表2010-504414号)の実施例1(段落[0146]~[0147])に開示された手順に従って、低分子化していないジャガイモ澱粉をエピクロロヒドリンで架橋後、カルボキシメチル化して比較製造例2の吸水性樹脂(塩酸処理されたもの)を製造した。
(6)澱粉部分分解物の粘度評価法
澱粉部分分解物についてNaOH水溶液との混合の操作を行ったときの粘度を下記の基準により評価した。混合の操作は、製造例15~28に記載の仕込み比率にて、500mlのセパラブルフラスコに、機械攪拌(新東科学株式会社製スリーワンモーターBL600)にガラス製アンカー型攪拌翼(羽径60mm)をセットした装置で実施した。評価結果を表3に示す。
〇:液は低粘度であり、均一に混合できた。
△:液が高粘度であるか、又は混合中に高粘度化したため、均一には混合できなかった。
×:液が高粘度であるか、又は混合中に高粘度化したため、混合できなかった。
(7)水溶性ポリマーの評価法
(7-1)水溶性ポリマーの全酸価
ここでは、酸性基としてカルボキシメチル基を有する水溶性ポリマーの全酸価測定方法を説明する。100mlビーカーに、水溶性ポリマー約0.3gを精秤し、40mlのイオン交換水で溶解させた。この水溶液を、ガラス電極(京都電子工業株式会社製C-171)を備えた電位差滴定装置(京都電子工業株式会社製AT-610)にセットした。試料が全てナトリウム塩の場合は、この段階で、電位は概ね30mV以下を示すので、電位が320mV以上となるまで、1N塩酸を添加し、水溶性ポリマー中のカルボン酸基を全てフリー酸の状態とする(塩酸過剰の状態となる)。電位が320mV以上になっていることを確認し、0.1N NaOH水溶液で中和滴定を行った。本滴定では、変曲点が2つ検出され、第一の変曲点が220mV付近に、第二の変曲点が0~-30mV付近に検出される。前者は試料中の過剰の塩酸の中和点であり、後者は水溶性ポリマー中のカルボン酸の中和点である。従って、全酸価は下記式1により算出される。
全酸価(mgKOH/g)= [{(Vb-Va)× 0.1×fa×56.11}÷Sa]/(1-wr) (式1)
ここで、Vaは第一変曲点までに消費された0.1N NaOHの容量(ml)、Vbは第二変曲点までに消費された0.1N NaOHの容量(ml)、faは、0.1N NaOHの力価、Saは試料採取量である。wrは、後述する方法で測定した水溶性ポリマーのウェット率である。
(7-2)水溶性ポリマーのエーテル化度
上記全酸価の値を用いて、下記式2で算出する。
エーテル化度=(162×TAV)÷(56100-80×TAV)(式2)
ここで、TAVは水溶性ポリマーの全酸価(単位 mgKOH/g)である。
(7-3)水溶性ポリマーのフリー酸価
フリー酸価は、水溶性ポリマーの架橋を酸処理によって行った場合に定義する酸価である。実施例では酸処理後に引き続いて架橋ポリマーを製造しているため、滴定による直接的な定量は困難であるため、次の計算で算出される値をフリー酸価として定義する。酸処理では、水溶性ポリマーのカルボン酸よりも低いpKaを有する酸で処理するため、実質的には、酸処理時に添加した酸の量がフリー酸価に等しい。このため、フリー酸価を下記式3で算出する。
フリー酸価(mgKOH/g)= (Vc×N×fb×56.11)÷ Sb (式3)
ここで、Vcは酸処理に使用した酸水溶液の容量(ml)、Nは酸水溶液の規定度、fbは酸水溶液の力価、Sbは、酸処理に仕込んだ水溶性ポリマーの重量(純分)である。
(7-4)水溶性ポリマーのウェット率
ウェット率とは、ハロゲン水分計を用いて、乾燥温度130℃で試料を乾燥させた時の試料初期重量に対する、重量減少の割合(%)のことを言う。本実施例においては、水溶性ポリマー0.5~1.0gをメトラー・トレド株式会社製ハロゲン水分計 HC103にセットし、乾燥温度130℃、スイッチオフ基準 1mg/50秒、%MCモード(MC値=(試料初期重量‐乾燥重量)÷試料初期重量×100が表示されるモード)にて測定した。表示されたMC値をウェット率とした。
(8)吸水性樹脂の評価法
(8-1)無加圧下吸水倍率(生理食塩水)
目開き63μm(JIS Z8801-1:2006)のナイロン網で作製したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に測定試料1.0gを入れ、生理食塩水(食塩濃度0.9重量%)1,000ml中に無撹拌下で、3時間浸漬した後、10分間吊るして水切りした。ティーバッグを含めた重量(h1)を測定し次式から保水量を求めた。なお、使用した生理食塩水、及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃であった。
FSC(g/g)=(h1)-(h2)
なお、(h2)は、測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測したティーバッグの重量である。ここで、FSCとは、Free Swell Capacityの略称であり、自由膨潤倍率を意味するもので、無加圧下吸水倍率を指す。
(8-2)無加圧下吸水倍率(イオン交換水)
ティーバッグに測定試料0.2gを入れ、生理食塩水に代えてイオン交換水を用いた以外は、無加圧下吸水倍率(生理食塩水)と同様にして浸漬後のティーバッグを含めた重量(h1´)を測定し次式から保水量を求めた。なお、(h2´)は、測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測したティーバッグの重量である。
FSC(g/g)={(h1´)-(h2´)}/0.2
(8-3)保水率(生理食塩水)
上述した無加圧下吸水倍率の測定後、ティーバッグごと、遠心分離器に設置し、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の液体成分を取り除き、ティーバックを含めた重量(h3)を測定し次式から保水量を求めた。
CRC(g/g)=(h3)-(h4)
なお、(h4)は、測定試料のない場合について上記と同様の操作により計測したティーバッグの重量である。ここでCRCとは、Centrifuge Retention Capacityの略称であり、遠心分離保持容量を意味し、保水率を指す。
(8-4)保水率(イオン交換水)
上述した無加圧下吸水倍率の測定後、ティーバッグごと、遠心分離器に設置し、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の液体成分を取り除き、ティーバックを含めた重量(h3´)を測定し次式から保水量を求めた。
CRC(g/g)={(h3´)-(h4´)}/0.2
なお、(h4´)は、測定試料のない場合について上記と同様の操作により計測したティーバッグの重量である。
(8-5)アルカリ分解性
200mlビーカーに生理食塩水での保水率試験を実施した後の吸水ゲル 約5gを投入し、その上から48.8%NaOH水溶液を数滴添加する。その後、ステンレス製の薬さじで攪拌し、混合物をビーカーの底に薄く広げ、溶解の状態を目視で確認した。ゲル状態が失われ、不溶物が無く透明な溶液となった場合を「溶解」、ゲル状態を保持しているか部分的にでも不溶物が残存した場合を「不溶」として評価した。
(9)吸水性樹脂の評価(実施例1~16、比較例1~2)
製造例29~44、比較製造例1~2で得られた各吸水性樹脂について、吸水性能、アルカリ分解性を測定した。その結果を表3に示す。
Figure 0007125216000003
表3に示すように、実施例1~16の吸水性樹脂は、比較例1~2と比較して吸水性能に優れていた。
また、実施例1~16の原料となる水溶性ポリマーは、比較例1~2よりも低粘度で、吸水性樹脂の製造時の操作性に優れていた。粘度が高いものほど均一に混合することが困難となり、製造設備の選択肢が限定的となったり、品質にばらつきを生じさせる原因となったりするおそれがあり、また、均一に混合するために大希釈が必要となり、製造効率が低下するおそれがある。

Claims (10)

  1. 澱粉を低分子量化して、重量平均分子量が5万~500万である、澱粉の部分分解物を得る工程(a1)、および工程(a1)で得られた澱粉の部分分解物にカルボキシメチル基を導入する工程(a2)により、水溶性ポリマーを製造する工程(c1)、
    水溶性ポリマーに導入されたカルボキシメチル基を中和する工程(c2)、および
    水溶性ポリマー同士を架橋させる工程(c3)を含み、
    前記工程(a2)において、
    澱粉の部分分解物にモノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸カリウム、モノブロモ酢酸、およびモノブロモ酢酸ナトリウムからなる群から選択される酸性基含有化合物を反応させてカルボキシメチル基を導入する、
    吸水性樹脂の製造方法。
  2. 水溶性ポリマーの全酸価が50~350mgKOH/gである、請求項に記載の吸水性樹脂の製造方法。
  3. 前記工程(a1)において分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が5以上の澱粉の部分分解物を得る、請求項1または2に記載の吸水性樹脂の製造方法。
  4. 前記工程(a1)において澱粉の低分子量化を酵素処理により行う、請求項1~のいずれか1項に記載の吸水性樹脂の製造方法。
  5. 前記工程(c1)で得られる水溶性ポリマーの、水系サイズ排除クロマトグラフィー分析によるプルラン換算の重量平均分子量(Mw)が50万~1,500万である請求項1~のいずれか1項に記載の吸水性樹脂の製造方法。
  6. 得られる吸水性樹脂が以下の特徴を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の吸水性樹脂の製造方法:
    (a)イオン交換水の無加圧下吸水倍率が100~400g/g
    (b)イオン交換水の保水率が80~300g/g
    (c)生理食塩水の無加圧下吸水倍率が20~70g/g、および/または
    (d)生理食塩水の保水率が10~60g/g。
  7. 得られる吸水性樹脂の、イオン交換水の無加圧下吸水倍率(A)と生理食塩水の無加圧下吸収倍率(B)の比(A/B)が7以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の吸水性樹脂の製造方法。
  8. 前記工程(c3)において架橋剤を使用しない、
    請求項1~のいずれか1項に記載の吸水性樹脂の製造方法。
  9. 請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法により得られる吸水性樹脂をアルカリ処理する工程を含む、吸水性樹脂の分解方法。
  10. 請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法により得られる吸水性樹脂を含む物品の製造方法。
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