JP2006328346A - 生分解性吸水性材料とその製造方法および該生分解性吸水性材料からなる堆肥化助剤 - Google Patents

生分解性吸水性材料とその製造方法および該生分解性吸水性材料からなる堆肥化助剤 Download PDF

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Abstract

【課題】生分解性に優れ、安価で、吸水性能も良好であるとともに、膨潤状態での耐熱性が高く高温でも保水力を有し、堆肥化助剤としても好適に使用できる生分解性吸水性材料を提供することを課題とする。
【解決手段】乾燥質量換算で26〜90質量%の澱粉を含有する澱粉粕に親水基を導入するとともに、架橋したことを特徴とする生分解性吸水性材料。利用価値の低い澱粉粕を有効利用できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、澱粉粕を利用した生分解性吸水性材料とその製造方法、さらには、家畜ふん尿や下水汚泥などの堆肥原料を好気性発酵する際の堆肥化助剤に関する。
吸水性樹脂は、自重の数十倍から数千倍もの水を吸収できる材料として、生理用品、紙おむつなどの衛生資材、医療用資材、生活用資材、農・園芸用資材、運搬用資材、土木建築資材、電気機器関連資材、水処理剤などの幅広い分野で使用されている。
従来、このような吸水性樹脂としては、例えば、架橋ポリアクリル酸部分中和物、澱粉−アクリロニトリル共重合体の部分加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とアクリル酸の共重合架橋物、カチオン性モノマーの架橋重合体、架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の加水分解物などが知られている。
ところが、ビニルモノマーを主原料とするこれらの吸水性樹脂は、生分解性がほとんどなく、原料の一部に澱粉を使用しているものでも、澱粉以外のビニルポリマー部分の生分解性は非常に乏しい。このため、使用後の吸水性樹脂は、通常、埋め立て処理により廃棄されているが、埋められた吸水性樹脂は半永久的に土壌中に残存するため、埋め立て後の地盤が安定しないという問題がある。また、埋め立てに適した場所が減少していることも大きな問題となっている。
このような事情を背景として、近年では、生分解性を有する吸水性材料が注目されており、例えばポリエチレンオキシド架橋体、ポリビニルアルコール架橋体、ガラクトマンナン架橋体、アルギン酸架橋体、カルボキシメチルセルロース架橋体、ポリアミノ酸架橋体、変性澱粉架橋体などが公知である。これらの中では、特に変性澱粉架橋体が安価で生分解性に優れるものとして知られており、例えば、特許文献1にはカルボキシメチル澱粉架橋体が開示され、特許文献2にはコハク酸澱粉架橋体が開示されている。
一方、澱粉粕を利用した吸水性材料が特許文献3に提案されている。澱粉粕は、澱粉作物から澱粉を採取した残渣であって、元々利用価値が低い原料である。そのため、澱粉粕を利用することにより、生分解性を有し安価な吸水性材料が得られる。
また、従来、家畜ふん尿や下水汚泥など堆肥原料を好気性発酵し、堆肥化する際には、堆肥原料の水分を調整することなどを目的として、オガ屑や稲藁等の木質系材料が堆肥化助剤として添加されている。
ところが、これらの木質系材料は、最近では入手が困難になりつつある。また、これら木質系材料は、その吸水倍率が5倍以下と低いため、水分を調整するためには大量に使用する必要があり、その結果、処理コストが増大するという問題や、域内で消費できないほどの大量の堆肥を生成してしまうという問題が生じている。また、一般的に、オガ屑、稲藁等の木質系材料は比重が小さく、例えばオガ屑の比重は0.15〜0.40g/cm程度であるため、輸送や保管等にコストがかかるという欠点もある。さらに、これら木質系材料は生分解性が低く、十分な生分解が可能な程度に完熟するまでには時間がかかる。
また、家畜ふん尿を好気性発酵する際には、これを堆肥舎内に高く積み上げて静置する方法が一般的に採用されるが、家畜ふん尿は高含水で、流動性を有する泥状のものであるため、これを高く積み上げたり、効率的に運搬するためには、やはり大量の木質系材料が必要になるという問題があった。
このような事情から、特許文献4には、従来使用されている木質系材料の代わりに、カルボキシメチル化セルロース、カルボキシメチル化澱粉、カルボキシメチル化キチン、カルボキシメチル化キトサンなど変性多糖類の架橋物からなる生分解性の吸水性材料を堆肥化助剤として使用することが提案されている。
特開昭53−17679号公報 特開平8−208703号公報 特開平9−31101号公報 特開2003−183090号公報
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示されているカルボキシメチル澱粉架橋体やコハク酸澱粉架橋体の主原料は、食用可能な精製澱粉であるため、比較的高価である。また、資源の有用利用という観点からは、利用価値の低いものを原料として使用することが望まれていて、食用可能な精製澱粉を原料に使用することは、その点で改善の余地がある。また、澱粉が主原料であるため、得られた吸水性材料は膨潤状態における耐熱性に劣り、高温では吸水性能が徐々に低下してしまい保水力が悪いという問題がある。
一方、特許文献3に開示の澱粉粕を原料とする吸水性材料は、澱粉粕中に含まれる澱粉を酸性水溶液中で除去処理する必要があり、手間がかかるうえ、除去された澱粉が大量の廃棄物となるという問題があった。さらに、この方法では、生分解性に優れる澱粉部分を除去し、生分解性に劣る繊維素を主原料としているため、得られる吸水性材料の生分解性は低かった。
また、堆肥化助剤として特許文献4に提案されている変性多糖類の架橋物を使用する方法に関しては、次のような問題があった。
例えば、カルボキシメチル化澱粉、すなわち、カルボキシメチル澱粉架橋体は、上述したように、主原料が食用可能な精製澱粉であるため、比較的高価であるとともに、資源の有用利用という観点からも改善の余地がある。また、カルボキシメチル澱粉架橋体は高温では吸水性能が低下するため、堆肥原料の好気性発酵により高温条件になると、堆肥化助剤としての水分保持力が低下し、結果として発酵に悪影響を及ぼす問題がある。
また、精製されたセルロース、キチン、キトサンを原料として使用する場合には、原料が比較的高価であるという問題がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、生分解性に優れ、安価で、吸水性能も良好であるとともに、膨潤状態での耐熱性に優れ高温でも保水力を有し、例えば堆肥化助剤としても好適に使用できる生分解性吸水性材料を提供することを課題とする。
本発明者らは吸水性材料の原料として、特定の澱粉含有量の澱粉粕を、その中に含まれる澱粉を除去することなく使用することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の生分解性吸水性材料は、乾燥質量換算で26〜90質量%の澱粉を含有する澱粉粕に親水基を導入するとともに、架橋したことを特徴とする。
本発明の生分解性吸水性材料の製造方法は、乾燥質量換算で26〜90質量%の澱粉を含有する澱粉粕に対して親水基を導入する工程と、架橋する工程とを有することを特徴とする。
本発明の堆肥化助剤は、前記生分解性吸水性材料からなることを特徴とする。
本発明によれば、生分解性に優れ、安価で、吸水性能も良好であるとともに、膨潤状態での耐熱性に優れ高温でも保水力を有し、例えば堆肥化助剤としても好適に使用できる生分解性吸水性材料を提供できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の生分解性吸水性材料(以下、単に吸水性材料という。)で用いられる澱粉粕は、各種澱粉作物から、各澱粉製造工程で採取可能な量の澱粉を採取した後の残渣であり、澱粉の他に、セルロース、ヘミセルロースなどの多糖類や、リグニン、タンパク質、脂肪などの成分を含有している。
澱粉作物としては、例えば、甘藷、馬鈴薯、キャッサバ、タロイモ、ヤムイモ、タシロイモなどのイモ類、トウモロコシ、小麦、大麦、米、緑豆、葛、サゴヤシ、トゲサゴ、クジャクヤシ、フェニックスヤシ、片栗、蕨、オオウバユリ、ヒガンバナ、カラスウリ、キカラスウリ、トチノキ、コナラ、ミズナラ、アロールート、ガジュツ、食用カンナ、ソテツ、アビシニアバショウなどが挙げられ、これらの澱粉製造工程で副生する澱粉粕が制限なく使用できる。トウモロコシから得られる澱粉粕は、コーンフィードとも呼ばれる。
本発明では、これらの澱粉作物から得られた澱粉粕を制限なく使用できるが、得られる吸水性材料の膨潤状態における耐熱性と吸水性能とのバランスが良好な点から、イモ類から得られる澱粉粕が好ましい。さらに好ましくは、安価で大量に入手しやすい点から、キャッサバから得られる澱粉粕である。
なお、吸水性材料の膨潤状態における耐熱性とは、高温でも保水力を備えていることを言う。
澱粉粕を副生する澱粉製造工程としては、特に制限はなく、例えば、「澱粉科学の辞典」(不破英次編、朝倉書店刊)に詳細に記載されているような公知の澱粉製造工程が挙げられる。
本発明では、澱粉粕のうち、乾燥質量換算で26〜90質量%の澱粉を含有する澱粉粕を使用する。澱粉含有量が26質量%未満であると、得られる吸水性材料の生分解性が低下する。一方、澱粉含有量が90質量%を超えると、得られる吸水性材料の膨潤状態における耐熱性が低下する。澱粉含有量のさらに好ましい範囲は、30〜85質量%であり、特に好ましくは35〜80質量%である。このような澱粉含有量の澱粉粕を原料とすることにより、生分解性と膨潤状態における耐熱性とが良好な吸水性材料が得られる。
ここで澱粉粕の澱粉含有量とは、酵素法によって測定された値である。酵素法とは財団法人日本食品分析センターで採用されている方法であり、詳細には試料のうち50%エタノールに不溶なものをグルコアミラーゼ処理(pH4.8、40℃、3時間)した後、これに含まれるブドウ糖の量を測定して0.9を乗じた値を指す。
また、澱粉粕としては、該澱粉粕を90℃の熱水中で5時間加熱した後の液状物を、JIS P 3801に規定される5種Aのろ紙を用いて吸引ろ過処理した際に、ろ紙上の残渣中に澱粉が含まれるものが好ましい。残渣中に含まれる澱粉の含有量は、該処理操作前の澱粉粕全体の質量を100質量%とした場合に、乾燥質量換算で10質量%以上であるものが好ましく、より好ましくは15質量%以上である。また、澱粉の含有量の測定は、上述の酵素法により求められる。
なお、澱粉粕を90℃の熱水中で5時間加熱する前には、澱粉粕を80メッシュ以下に粉砕しておくことが好ましい。
このように液状物を吸引ろ過処理すると、ろ紙上の残渣には、澱粉粕に含まれる繊維成分等の水不溶解成分や、これと複雑に絡みあった澱粉分子が含まれる。一方、ろ液には、主に澱粉粕中の水不溶解成分とは絡み合み構造を持たない澱粉分子が溶解している。
よって、上述のように熱水中で処理した後であっても、ろ紙上の残渣中に澱粉が含まれるような澱粉粕においては、含まれる澱粉分子の少なくとも一部分が、セルロース、ヘミセルロース、リグニンなどの繊維成分やタンパク質成分、脂肪成分などの他成分と複雑に絡み合った構造を形成していて、この構造のさらに少なくとも一部は熱水中などの高温下でも安定に維持されると考えられる。よって、このような澱粉粕から得られた吸水性材料は、含有する澱粉分子の高分子鎖が切断されにくく、膨潤状態であっても非常に高い耐熱性を発現するものと推察できる。
次に、このような澱粉粕を原料として、吸水性材料を製造する具体的方法について説明する。
まず、澱粉粕に親水基を導入する工程を行う。
導入される親水基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アンモニウム基などが挙げられ、これらのうち2種以上を併せて有している基でもよい。なお、これら親水基は新たに導入されるものであって、澱粉粕が元々有するヒドロキシル基などの親水基とは異なるものである。リン酸基、スルホキシル基は、対イオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどの金属イオンを有していてもよいし、アンモニウム塩、有機アミン塩の形態であってもよい。アンモニウム基は、対イオンとして、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンを有していることが好ましい。
導入される親水基はこれらのいずれでもよいが、得られる吸水性材料の吸水性能の点から、リン酸基以外の親水基が好ましく、特に好ましくはカルボキシル基である。カルボキシル基は、対イオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオンを有していることが、吸水性材料の吸水性能の点から好ましい。
親水基を澱粉粕に導入する具体的方法としては、澱粉、セルロース、その他多糖類への親水基導入に用いられる公知の方法を、特に制限なく採用できる。
例えば、澱粉粕が有するヒドロキシル基に対して、カルボキシメチル化、カルボキシエチル化、カルボキシプロピル化、ヒドロキシエチル化、ヒドロキシメチル化、ヒドロキシプロピル化などに代表されるエーテル化反応を行うことで、親水基を導入できる。これらの中では、反応の容易さや、親水化剤の入手し易さからカルボキシメチル化が好ましい。
また、澱粉粕が有するヒドロキシル基に、エステル化反応を行うことで、親水基を導入してもよい。すなわち、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、クエン酸、リンゴ酸、クエン酸などの多塩基酸や、これらの酸無水物である無水コハク酸、無水マレイン酸などと、澱粉粕とを反応させる。これらの中では、親水化剤の入手のし易さから、コハク酸、マレイン酸、無水コハク酸および無水マレイン酸を使用することが好ましい。
これらエーテル化反応およびエステル化反応により、澱粉が有するヒドロキシル基だけでなく、澱粉粕中に含まれるセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどのヒドロキシル基にも親水基が導入される。
また、親水基を澱粉粕に導入する他の方法としては、酸化剤を用いたカルボン酸化反応により、澱粉粕に対してカルボキシル基を導入する方法も挙げられる。
酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素水などを用いることができ、反応制御のために、金属塩やニトロキシラジカル類のような各種触媒を併用してもよい。
親水基を導入する反応は、水/アルコール混合溶媒を用いた固/液不均一反応系や、水、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどを用いた均一反応系など公知の方法で行える。また、反応溶媒を用いない乾式反応や粉砕機によるメカノケミカル反応、さらには、押出機内で混練と同時に反応させる反応押し出し法などの固相反応でもよい。
このように親水基を導入する度合いとしては、澱粉粕中の多糖類成分における構成単糖残基当りの親水基の導入数(以下、DSともいう。)が、0.1〜2.0が好ましく、より好ましくは0.2〜1.5である。このような範囲で親水基を導入すると、吸水性能が良好であるとともに、ゲル強度にも優れた吸水性材料が得られる。すなわち、DSが0.1以上であると、吸水性材料が十分に高い吸水性能を発現する。一方、DSが2.0以下であると、親水基を導入する反応時における澱粉粕の分子量低下が抑制され、高い吸水性能とゲル強度を備えた吸水性材料が得られやすい。
DSは、文献(Journal of Applied Polymer Science,Vol.86, 743-752(2002))に記載されているように、試料を重水素化硫酸の25(v/v%)重水溶液中で90℃において5時間加熱し充分に酸加水分解した後に、HNMRのピーク面積比から、親水基の構成単糖残基当りの平均導入数を算出することで求められる。
なお、親水基を導入する工程の前には、前処理として澱粉粕の粉砕処理を行ってもよい。粉砕には、自動乳鉢、ハンマーミル、ボールミル、ホモジナイザー、リファイナーなどを使用できる。このように粉砕し、澱粉粕の粒子径を制御することにより、親水基を導入する際の反応速度、反応の均一性や、得られる吸水性材料の吸水性、ゲル強度などを目的に応じて調整できる。
また、親水基を導入する工程の前後や工程中に、次亜塩素酸ナトリウムなどの脱色剤を用いて、澱粉粕の脱色処理を行ってもよい。
ついで、このように親水基が導入された澱粉粕を架橋する工程を行うことにより、吸水性材料が得られる。
架橋の方法としては特に制限はなく、架橋剤を反応させる方法、放射線を照射する方法、加熱により架橋させる方法(熱架橋)など公知の方法が採用できる。
架橋剤を反応させる方法の場合、架橋剤としては、塩化アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム12水和物(カリウムみょうばん)、酢酸アルミニウムなどのアルミニウム金属塩の他、塩化マグネシウムなどのマグネシウム金属塩、塩化カルシウムなどのカルシウム金属塩、鉄塩、第二銅塩、バリウム塩、マンガン塩、カドミウム塩、クロム酸塩、チタン酸塩、アンチモン酸塩などの水溶性多価金属塩;ホルムアルデヒド、グリオキザールなどのアルデヒド類;ジメチロールウレア、ジメチロールエチレンウレアおよびジメチロールイミダゾリドンなどのN−メチロール化合物類;1,4−ジアミノブタン等の多価アミン類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、エタンジチオール、チオエタノールアミン、チオエタノール、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルアルコール、ペンダエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、グルコース、マンニット、マンニタン等の多価アルコール類、多価チオール類;蓚酸、マレイン酸、コハク酸およびポリアクリル酸などの多価カルボン酸類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびジエポキシブタンなどの多価エポキシ化合物類;ジビニルスルホン、メチレンビスアクリルアミドなどのジビニル化合物類;ジクロロアセトン、ジクロロプロパノール、およびジクロロ酢酸などの多価ハロゲン化合物類;エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリンなどのハロヒドリン化合物類;並びに多価アジリジン化合物類などが1種以上使用できる。
これらの架橋剤のなかでは、得られる吸水性材料の吸水性、ゲル強度、生分解性、環境安全性の面から、多価カルボン酸類、多価アルコール類、エチレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどの多価エポキシ化合物類が好ましく、特に好ましくは架橋反応の容易さから、エチレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリエチレングリコールジグリシジルエーテルである。
架橋剤の使用量は、架橋剤としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを使用する場合、その使用割合は、架橋前の澱粉粕(乾燥質量)に対して通常、0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜8質量%である。架橋剤の使用割合が0.05質量%以上であると、得られる吸水性材料のゲル強度が十分に向上し、10質量%以下であると得られる吸水性材料の吸水性に悪影響を与えることもない。
放射線を照射する方法で架橋化する場合には、親水基を導入した澱粉粕の水溶液をガラス製容器などの容器に入れ、これに対して放射線を照射することで架橋化できる。放射線の種類には特に制限はなく、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線などが挙げられるが、工業的生産のためには、コバルト60からのγ線と加速器による電子線が好ましい。
放射線を照射する際の澱粉粕の水溶液濃度は、5〜50質量%が好ましく、より好ましくは10〜40質量%である。水溶液濃度が5質量%以上であると、澱粉粕の分子量低下が抑制され、50質量%以下であると、水溶液の粘度が適切であり取扱性も良好である。
上記方法によって架橋した後には、必要に応じて未架橋成分を除去してもよい。その結果、得られる吸水性材料の吸水性、ゲル強度をより向上させることができる。未架橋成分とは、吸水性材料の内部で架橋していない成分であり、水に溶解する成分を指す。具体的な除去方法としては、架橋後の吸水性材料を適当量の純水中に浸漬し、充分に未架橋部分を溶解した後に、ろ過して得られたゲル状部分を乾燥する方法などが使用できる。
このように乾燥質量換算で26〜90質量%の澱粉を含有する澱粉粕に対して親水基を導入するとともに架橋することにより、生分解性に優れ、安価で、吸水性能が良好で、しかも膨潤状態での耐熱性が優れ高温でも保水力を備えた吸水性材料が効率よく得られる。また、このような吸水性材料は、利用価値の低い澱粉粕を原料としているため、資源の有用利用という観点からも好ましいものである。
なお、以上の説明では、乾燥質量換算で26〜90質量%の澱粉を含有する澱粉粕に対して親水基を導入する工程の後に架橋する工程を行う場合について例示したが、これらの工程の順序は逆でもよい。その際、架橋する工程で架橋剤を使用する場合には、好適な架橋剤の使用量は、親水基が導入された澱粉粕(乾燥質量)に対して通常、0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜8質量%である。
このようにして得られた吸水性材料は、生理用品、紙おむつなどの衛生資材、生活用資材、農・園芸用資材、運搬用資材、土木建築資材、電気機器関連資材、緑化資材などに使用でき、その他にも、家畜ふん尿や下水汚泥など含水有機廃棄物の好気性発酵時における水分調整などのための堆肥化助剤などにも使用でき、その用途に制限はない。
なお、吸水性材料を使用するにあたっては、造粒するなどして使用に適した形状に加工してもよい。造粒する場合の方法には特に制限はなく、使用目的に応じ、例えば破砕造粒法、押出し造粒法などの造粒法や、含水ゲル状態としてから破砕する方法など、従来公知の方法の中から適宜選択できる。
上述の用途のなかでも、本発明の吸水性材料は、堆肥化助剤としての使用に好適である。堆肥化助剤とは、堆肥原料へ添加することで、堆肥原料の物性を改質し、好気性発酵に適した状態に調整する材料であって、一般に、次のような物質改質効果が期待されるものである。第1には、堆肥原料の粘度を上昇させ、流動性を低下させることによって、堆肥原料の取扱い性を向上させ、堆肥舎内で高く積み上げることを可能にする効果が期待される。第2には、堆肥化助剤が堆肥原料中の水分を吸水し保持することによって、堆肥原料の水分量を減少させ、その通気性を向上させ、好気性発酵に適した状態にする効果が挙げられる。
ところが、オガ屑、稲藁等の木質系材料からなる従来の堆肥化助剤のみを乳用牛のふん尿などの堆肥原料に添加し、上述の2つの効果を得ようとした場合には、通常、堆肥原料に対して体積比で同量以上の木質系材料が必要であった。しかしながら、本発明の吸水性材料を堆肥化助剤として木質系材料と併用すると、最近では入手自体が困難になりつつある木質系材料の使用量を軽減できるとともに、木質系材料を大量に使用することに伴う種々の問題(処理、輸送、保管などにコストがかかるという問題、十分な生分解性が得られにくいという問題等)を解決しつつ、上述の2つの効果を得ることができる。
さらに、本発明の吸水性材料は、堆肥化中あるいは、農地への施用時に生分解を受けるため、農地の土壌に長期間残留して環境を汚染することもない。
なお、堆肥原料を好気性発酵に適した状態とするためには、上述したように、堆肥原料に堆肥化助剤を添加し、これらに堆肥原料中の水分を吸水、保持させ、堆肥原料の通気性を向上させることが必要となるが、その通気性は、比重を指標として評価することができる。すなわち、堆肥原料と堆肥化助剤の混合物としての比重が小さいほど、混合物は空隙を多く備え、堆肥化に適した状態にあると言える。好適な比重の具体的な数値は、季節など様々な条件によって左右されるものではあるが、例えば、乳用牛ふん尿を通気条件で堆積発酵させるためには、0.7(g/cm)以下の比重であることが必要とされている。
本発明の堆肥化助剤は、牛、豚、鶏、馬、羊などの家畜や人のふん尿などの堆肥原料にに好適に使用することができる。また、下水汚泥などの各種汚泥、ヘドロ、生ゴミ(残飯、食品残渣、飲料残渣、野菜クズなど)などの堆肥原料にも好適に使用できる。
堆肥化助剤の使用方法としては、堆肥原料に堆肥化助剤を添加し、必要応じて混合・撹拌すればよく、このような方法により、堆肥原料を好気性発酵に適した状態に調整できる。また、この際の堆肥化助剤の使用量としては、堆肥原料を100質量%とした場合、通常0.01〜25質量%、好ましくは0.1〜20質量%の範囲である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお、「部」は「質量部」を示す。
また、各例中における各種測定方法および評価方法を以下に示す。
(1)構成単糖残基当りの親水基導入数(DS)
親水基を導入した澱粉粕(カルボキシメチル化物)について、文献(Journal of Applied Polymer Science,Vol.86, 743-752(2002))の方法に従って実施した。
すなわち、試料を重水素化硫酸の25(v/v)%重水溶液中で90℃において5時間加熱し充分に酸加水分解した後に、HNMRのピーク面積比から、親水基の構成単糖残基当りの平均導入数を算出した。
(2)飽和吸水倍率
ティーバッグ法により、各吸水性材料の飽和吸水倍率を測定した。
すなわち、吸水性材料約0.05gを、250メッシュのナイロンメッシュで作製したティーバッグに入れ、室温で過剰量の蒸留水中に浸漬して、該吸水性材料を24時間膨潤させた。その後、ティーバッグを引き上げて1分間水切りを行ない、膨潤した材料を含むティーバッグの質量を測定した。一方、同様の操作をティーバッグのみで行った場合のティーバッグの質量をブランクとして測定しておいた。そして、膨潤した吸水性材料を含むティーバッグの質量からブランクの質量と吸水性材料の質量を減じた値を、吸水性材料の質量で除して、この値を飽和吸水倍率(g/吸水性材料1g)とした。
(3)高温での保水力
各吸水性材料の膨潤状態における耐熱性を調べるために、次に示すようにして高温での保水力を測定した。
すなわち、250メッシュのナイロンメッシュで作製したティーバッグに吸水性材料0.1gを入れ、生理食塩水中に80℃で12時間浸漬した。その後、ティーバッグを1分間吊るして水切りしてから、遠心脱水機に入れて150Gで90秒間遠心脱水を行った。こうして余剰水を除去した後、膨潤した吸水性材料を含むティーバッグの質量を測定した。一方、同様の操作をティーバッグのみで行った場合のティーバッグの質量をブランクとして測定しておいた。そして、膨潤した吸水性材料を含むティーバッグの質量からブランクの質量と吸水性材料の質量を減じた値を、吸水性材料の質量で除して、この値を高温での保水力(g/吸水性材料1g)とした。なお、生理食塩水は、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液である。
(4)生分解性
微生物酸化分解評価装置(MODA)を使用し、ISO14855に従い。37℃での各吸水性材料の生分解性速度を測定し、下記のように生分解性を評価した。
◎:測定開始10日での生分解性比率が10質量%以上であるもの。
○:測定開始10日での生分解性比率が5質量%以上10質量%未満であるもの。
△:測定開始10日での生分解性比率が1質量%以上5質量%未満であるもの。
×:測定開始10日で生分解性比率が1質量%未満であるもの。
[合成例1]
(澱粉粕のカルボキシメチル化)
キャッサバの澱粉製造工程で得られたキャッサバ澱粉粕(別称キャッサバパルプ、乾燥質量換算で澱粉68質量%含有)を粉砕機で粉砕し、澱粉粕の粉末(80メッシュ以下)を得た。
この澱粉粕粉末を純水中において90℃で5時間加熱溶解し、ろ紙(JIS P 3801に規定される5種A)を用いて吸引ろ過し、ついで、ろ紙上の澱粉粕の残渣を乾燥し、酵素法により澱粉含有量を測定したところ、溶解前の澱粉粕全体の質量を100質量%として、乾燥質量換算で24質量%の澱粉を含有していた。このことにより加熱溶解処理によっても、澱粉粕中の澱粉分子の一部は溶解せず、繊維成分などの水不溶成分と複雑な絡み合い構造を保持していることが示唆された。また、比較のために精製澱粉(和光純薬(株)製、バレイショ由来)に対して同様の操作を行ったところ、99質量%以上の精製澱粉がろ紙を通過し、ろ紙上に残渣は残らなかった。このことにより、精製澱粉中には澱粉粕のような複雑な絡み合い構造が存在しないことを確認した。
ついで、この澱粉粕の粉末87部(乾燥質量80部)とIPA変性エタノール(和光純薬株式会社製、エタノール86質量%、イソプロパノール13質量%、メタノール1質量%の混合物)432部を反応容器に入れ、撹拌しながら、純水104部に水酸化ナトリウム59部を溶解した水溶液163部を30分間かけて滴下し、さらに40℃で90分撹拌した。
次いで、変性エタノール53部にモノクロロ酢酸70部を溶解した溶液123部を30分かけて滴下し、40℃で6時間加熱した。
反応生成物を金巾(東洋紡績株式会社製 品名6570)によってろ過処理し、金巾上に得られた物質を76質量%メタノール水溶液に再分散させ、酢酸で中和した。
これを再び金巾によってろ過処理し、金巾上に得られた物質を76質量%メタノール水溶液と100質量%メタノールで交互に3回ずつ洗浄し、55℃の蒸気乾燥機中で乾燥して、カルボキシメチル化澱粉粕155部を得た。生成物のDSは1.3であった。表1に原料、水酸化ナトリウム、モノクロロ酢酸の仕込み比などを示す。
[実施例1]
(カルボキシメチル化澱粉粕のエポキシ架橋)
撹拌機を備えた反応容器に444部の純水を入れ、50℃にしたところに、合成例1で得られたカルボキメチル化澱粉粕56部(乾燥質量50部)を加え、均一に溶解するまで撹拌した。
次にポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂株式会社製、エピオールE−400)2.5部を加え、90℃まで反応温度を上げて2時間反応した後冷却した。反応液をトレー上に薄く延ばした後に、蒸気乾燥機で乾燥し、さらに得られた固体をクラッシャーで粉砕し、架橋されたカルボキシメチル化澱粉粕の粒子を得た。
さらにこの粒子中の未架橋成分を除去するために、質量比で300倍の純水に2日間浸漬した後にナイロンメッシュ(80メッシュ)によってろ過し、次いでナイロンメッシュ上に得られた物質を乾燥し、澱粉粕を原料とする吸水性材料26部を得た。
この吸水性材料の飽和吸水倍率は137(g/g)であった。また、加熱後の保水力は26(g/g)であった。表2に架橋剤(ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル)の使用量などを示す。
[合成例2]
合成例1における水酸化ナトリウム、およびモノクロロ酢酸の量を表1のように変更した以外は、同様にしてカルボキシメチル化澱粉粕118部を得た。生成物のDSは0.9であった。表1に原料、水酸化ナトリウム、モノクロロ酢酸の仕込み比などを示す。
[実施例2]
合成例2で合成したカルボキシメチル化澱粉粕を用いるとともに、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルの量を表2のように変更した以外は、実施例1と同様にして吸水性材料31部を得た。
この吸水性材料の飽和吸水倍率は純水に対して209(g/g)であった。また、加熱後の保水力は23(g/g)であった。表2に架橋剤(ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル)の使用量などを示す。
[合成例3]
(精製澱粉のカルボキシメチル化)
原料として、澱粉粕の代わりに精製澱粉(和光純薬(株)製、バレイショ由来、乾燥質量換算での澱粉含有量100質量%)を93部(乾燥質量80部)使用し、反応系に含まれる水分量が合成例1と同量になるように、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を調整して合成例1と同様の反応を行った。ただし、モノクロロ酢酸を添加した後に、澱粉同士が凝集し沈殿したため、残りの反応時間は撹拌を行わなかった。
反応生成物は塊状で洗浄が非常に困難であったが、一部を粉砕して回収した。生成物のDSは1.1であった。表1に原料、水酸化ナトリウム、モノクロロ酢酸の仕込み比などを示す。
[比較例1]
合成例3で得られたカルボキシメチル化澱粉を実施例1と同様の方法で架橋し、精製澱粉粕を原料とする吸水性材料49部を得た。
この吸水性材料の飽和吸水倍率は87(g/g)であり、また加熱後の保水力は15(g/g)であった。表2に架橋剤(ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル)の使用量などを示す。
Figure 2006328346
Figure 2006328346
澱粉粕を原料とする各実施例の吸水性材料は、飽和吸水倍率が高く吸水性能に優れ、高温での保水力を備え膨潤状態での耐熱性を有しているうえ、生分解性も高かった。一方、精製澱粉を原料とする比較例の吸水性材料は、飽和吸水倍率、高温での保水力がいずれも劣っていた。
[実施例3]
実施例1と同様にして、架橋されたカルボキシメチル化澱粉粕の粒子を得て、これを吸水性材料とした。すなわち、この吸水性材料は、未架橋成分の除去は実施されていないものである。また、その飽和吸水倍率は89(g/g)であった。
そして、この吸水性材料を堆肥化助剤として使用して、次のようにして乳用牛ふんの水分調整を実施した。
まず、バケツに乳用牛ふん1kg(1080cm、含水率=85質量%)を採取し、これに、上記吸水性材料100g(ふんに対して10質量%、107cm)を添加し混合、撹拌した。1時間静置した後に、さらに270cmのオガ屑をよく混合して高く積み上げ、20時間静置した。この際、混合物の粘度が上昇したため、混合物を高く積み上げることができた。また、上記撹拌時にも、ふんの手や容器等への付着がなく、取り扱い性が優れていた。
こうして得られた混合物のうち、500gを2Lのメスシリンダーに採取し、混合物が外部に漏れないように円形の樹脂板で内蓋をした。ついで、この混合物がメスシリンダー中にくまなく行き渡るように、メスシリンダーを手でよく振動させた。その後、メスシリンダーを静置して、混合物の体積を測定した。
この測定を繰り返し2回行ったところ、表3に示すように平均値は980cmであり、混合物の比重は0.51(g/cm)であった。
[比較例2]
乳用牛ふんに何も添加せず、実施例3と同様に比重測定を行った。その結果、表3に示すように、比重は0.93(g/cm)であった。
[比較例3]
乳用牛ふんに、吸水性材料を添加せず、その代わり、オガ屑の添加量を2倍(540cm)に増量した以外は、実施例3と同様にして比重測定を行った。その結果、表4に示すように、比重は0.59(g/cm)であった。
Figure 2006328346
吸水性材料やオガ屑が添加されていない比較例2の未添加のふんは、比重が高く、通気性がないため、そのままでは堆肥化できない状態であった。また、粘度が低く、泥状で流動性があるため、堆積発酵のために高く積み上げることが困難であった。さらに、撹拌時には、ふんが手や容器に付着やすく、また、除去しにくかった。
また、オガ屑のみを乳牛用ふんに添加した比較例3によれば、比重を低くすることができたが、その際には非常に大量のオガ屑を必要とした。
これに対して、実施例3では、吸水性材料をオガ屑と併用しているため、少ないオガ屑の使用量で混合物の比重を小さくでき、通気性が高く、好気性発酵に適した状態の混合物を得ることができた。

Claims (3)

  1. 乾燥質量換算で26〜90質量%の澱粉を含有する澱粉粕に親水基を導入するとともに、架橋したことを特徴とする生分解性吸水性材料。
  2. 乾燥質量換算で26〜90質量%の澱粉を含有する澱粉粕に親水基を導入する工程と、架橋する工程とを有することを特徴とする生分解性吸水性材料の製造方法。
  3. 請求項1に記載の生分解性吸水性材料からなることを特徴とする堆肥化助剤。
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