以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
図1は、本発明の実施の形態に係る搬送装置を備えるインクジェット印刷装置の概略構成図である。図2は、図1に示すインクジェット印刷装置の印刷部の要部およびガイド部の拡大図である。図3は、図1に示すインクジェット印刷装置の制御ブロック図である。以下の説明において、図1の紙面に直交する方向を前後方向とする。また、図1における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
図1において太線で示す経路が、印刷媒体である用紙が搬送される搬送経路である。搬送経路のうち、実線で示す経路が印刷経路RP、長破線で示す経路が上面搬送経路RC、短破線で示す経路が排紙経路RDである。また、搬送経路のうち、一点鎖線で示す経路が反転経路RR、二点鎖線で示す経路が給紙経路RSである。以下の説明における上流、下流は、搬送経路における上流、下流を意味する。
図1、図3に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、給紙部2と、印刷部3と、ガイド部4と、上昇搬送部5(請求項の下流側搬送部に相当)と、水平搬送部6と、排紙部7と、反転部8と、制御部9と、各部を収納または保持する筐体10とを備える。なお、請求項の搬送装置は、印刷部3の一部(後述のヘッド下搬送部23)と、ガイド部4と、上昇搬送部5と、制御部9とを有する。
給紙部2は、用紙Pを印刷部3に給紙する。給紙部2は、搬送経路の最も上流側に配置されている。給紙部2は、外部給紙台11と、外部給紙ローラ12と、複数の内部給紙台13と、複数の内部給紙ローラ14と、複数対の縦搬送ローラ15と、外部給紙モータ16と、内部給紙モータ17とを備える。
外部給紙台11は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。外部給紙台11は、一部が筐体10の外部に露出して設置されている。
外部給紙ローラ12は、外部給紙台11から用紙Pを1枚ずつ取り出し、給紙経路RSに沿って後述のレジストローラ21へ向けて搬送する。
内部給紙台13は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。内部給紙台13は、筐体10の内部に配置されている。
内部給紙ローラ14は、内部給紙台13から用紙Pを1枚ずつ取り出して給紙経路RSへと送り出す。
縦搬送ローラ15は、内部給紙台13から取り出された用紙Pをレジストローラ21へ向けて搬送する。縦搬送ローラ15は、給紙経路RSに沿って配置されている。
外部給紙モータ16は、外部給紙ローラ12および最下流の縦搬送ローラ15を回転駆動させる。外部給紙モータ16は、外部給紙ローラ12および最下流の縦搬送ローラ15にそれぞれ図示しないワンウェイクラッチを介して接続されている。これにより、外部給紙モータ16の正転駆動により外部給紙ローラ12が駆動し、外部給紙モータ16の逆転駆動により最下流の縦搬送ローラ15が駆動するようになっている。
内部給紙モータ17は、内部給紙ローラ14、および最下流の縦搬送ローラ15以外の縦搬送ローラ15を回転駆動させる。内部給紙モータ17は、図示しないクラッチを介して内部給紙ローラ14および最下流の縦搬送ローラ15以外の縦搬送ローラ15に接続/解除可能になっている。このクラッチにより、駆動される内部給紙ローラ14および縦搬送ローラ15が切り替えられる。
印刷部3は、用紙Pを搬送しつつ、用紙Pに画像を印刷する。印刷部3は、給紙部2の下流側に配置されている。印刷部3は、レジストローラ21と、レジストモータ22と、ヘッド下搬送部23と、ガイドローラ24と、4つのインクジェットヘッド25と、用紙センサ26とを備える。
レジストローラ21は、給紙部2または反転部から搬送されてきた用紙Pを一旦止めて斜行補正した後、ヘッド下搬送部23へ搬送する。レジストローラ21は、印刷部3の上流部の印刷経路RP上に配置されている。
レジストモータ22は、レジストローラ21を回転駆動させる。
ヘッド下搬送部23は、レジストローラ21により搬送されてきた用紙Pを、エア吸引により吸着保持しつつ、所定の印刷搬送速度で搬送する。ヘッド下搬送部23は、レジストローラ21の下流側に配置されている。図2、図3に示すように、ヘッド下搬送部23は、搬送ベルト31と、駆動ローラ32と、従動ローラ33~35と、ベルトモータ36と、ファン37とを備える。
搬送ベルト31は、用紙Pを吸着保持して搬送する。搬送ベルト31は、駆動ローラ32および従動ローラ33~35に掛け渡された環状のベルトである。搬送ベルト31には、多数のベルト穴(図示せず)が形成されている。搬送ベルト31は、ファン37の駆動によりベルト穴に発生する吸着力により、搬送面31a上に用紙Pを吸着保持する。搬送面31aは、インクジェットヘッド25の下方の搬送ベルト31の上面である。搬送面31aは、印刷経路RPの一部を構成する。印刷時において、搬送ベルト31は、図2における時計回り方向に回転することで、搬送面31a上に載置された用紙Pを右方向に搬送する。
駆動ローラ32は、搬送ベルト31を回転させる。
従動ローラ33~35は、駆動ローラ32とともに搬送ベルト31を支持する。従動ローラ33~35は、回転する搬送ベルト31に従動回転する。従動ローラ33は、駆動ローラ32と同じ高さで、駆動ローラ32の左方に配置されている。従動ローラ34,35は、駆動ローラ32および従動ローラ33の下方において、互いに左右方向に離間して、同じ高さに配置されている。
ベルトモータ36は、駆動ローラ32を回転駆動させる。
ファン37は、下方向の気流を発生させる。これにより、ファン37は、搬送ベルト31のベルト穴を介して空気を吸引してベルト穴に負圧を発生させ、用紙Pを搬送ベルト31の搬送面31a上に吸着させる。ファン37は、環状の搬送ベルト31に囲まれた領域に配置されている。
ガイドローラ24は、搬送ベルト31により搬送される用紙Pを上から押さえるものである。ガイドローラ24は、搬送ベルト31を挟んで駆動ローラ32の上方に配置されている。ガイドローラ24は、搬送ベルト31に接しており、回転する搬送ベルト31に従動回転する。
インクジェットヘッド25は、ヘッド下搬送部23により搬送される用紙Pにインクを吐出する。4つのインクジェットヘッド25は、ヘッド下搬送部23の上方において、用紙Pの搬送方向(左右方向)に並列して配置されている。インクジェットヘッド25は、インク吐出面24aを有する。インク吐出面24aは、搬送ベルト31の搬送面31aに対向するインクジェットヘッド25の下面である。インク吐出面24aには、前後方向に沿って配置された複数のノズル(図示せず)が開口している。インクジェットヘッド25は、ノズルからインクを吐出する。
用紙センサ26は、ヘッド下搬送部23により搬送される用紙Pを検出する。用紙センサ26は、最上流のインクジェットヘッド25の上流側に配置されている。
ガイド部4は、ヘッド下搬送部23から上昇搬送部5へ用紙Pをガイドする。ガイド部4は、ヘッド下搬送部23の下流側近傍に配置されている。ガイド部4は、その上側の面であるガイド面4aで用紙Pをガイドする。ガイド部4は、ソレノイド等のアクチュエータ(図示せず)により、下流端部(右端部)に設けられた前後方向に平行な回動軸4bを中心に回動可能に構成されている。
ガイド部4は、回動軸4bを中心に回動することで、図2において実線で示す先端誘導状態と、破線で示す退避状態との間で状態変更可能になっている。
ガイド部4の先端誘導状態は、用紙Pの先端をヘッド下搬送部23から上昇搬送部5へ導くための状態であり、ガイド面4aが比較的緩やかな所定の傾斜角度で、下流側ほど高くなるように傾斜した状態である。先端誘導状態のガイド部4におけるガイド面4aの傾斜角度は、コシの弱い用紙種類の用紙Pでもガイド部4への用紙Pの先端の衝突による用紙ジャムや用紙Pの折れが生じないような角度に設定されている。
ガイド部4の退避状態は、ヘッド下搬送部23とガイド部4との間で用紙Pのたるみを受け入れる空間が先端誘導状態の場合よりも広くなる状態である。具体的には、ガイド部4の退避状態は、先端誘導状態の場合よりもガイド部4の上流端(左端)が下方に下がり、ガイド面4aの傾斜角度が大きくなった状態である。
ここで、後述するように、上昇搬送部5における用紙Pの搬送速度が、ヘッド下搬送部23における用紙Pの搬送速度よりも遅いことで、ヘッド下搬送部23と上昇搬送部5との間で用紙Pにたるみが生じる。ガイド部4の退避状態は、この用紙Pのたるみを受け入れる空間を確保するための状態である。
ガイド部4は、後述する切替処理を行う用紙条件の場合、用紙Pの先端がガイド部4に到達する際は先端誘導状態に設定され、用紙Pの先端がガイド部4を通過した後、用紙Pをガイドしつつ、退避状態へ移行する。
上昇搬送部5は、印刷部3で印刷された用紙Pを、上方の水平搬送部6へ搬送する。上昇搬送部5は、ヘッド下搬送部23の下流側に隣接して配置されている。上昇搬送部5は、2対の上昇搬送ローラ41と、上昇搬送モータ42とを備える。
上昇搬送ローラ41は、ヘッド下搬送部23から用紙Pを受け取り、上面搬送経路RCの上流部に沿って用紙Pを搬送する。上昇搬送ローラ41が配置された上面搬送経路RCの上流部は、ヘッド下搬送部23の搬送面31aより上方へ向かう経路である。この部分が、請求項の下流側搬送経路に相当する。
上昇搬送ローラ41は、ヘッド下搬送部23による用紙Pの搬送速度である印刷搬送速度より遅い所定速度で用紙Pを搬送する。これにより、ヘッド下搬送部23と上昇搬送部5との間で用紙Pにたるみを生じさせることで、上昇搬送ローラ41による用紙Pの搬送速度の影響でヘッド下搬送部23における搬送速度が変化することが抑えられる。この結果、インクジェットヘッド25による印刷画質が低下することが抑えられる。
上昇搬送モータ42は、2対の上昇搬送ローラ41を回転駆動させる。
水平搬送部6は、上昇搬送部5により搬送されてきた用紙Pを排紙部7または反転部8へ搬送する。水平搬送部6は、4対の水平搬送ローラ43と、水平搬送モータ44とを備える。
水平搬送ローラ43は、上昇搬送ローラ41から用紙Pを受け取り、上面搬送経路RCの下流部および反転経路RRの上流部に沿って用紙Pを搬送する。最下流の水平搬送ローラ43は、反転経路RRの上流部に配置されている。他の水平搬送ローラ43は、上面搬送経路RCの下流部の水平部分に配置されている。
水平搬送モータ44は、4対の水平搬送ローラ43を回転駆動させる。
排紙部7は、印刷済みの用紙Pを排紙する。排紙部7は、切替部46と、排紙ローラ47と、排紙モータ48と、排紙台49とを備える。
切替部46は、用紙Pの搬送経路を排紙経路RDと反転経路RRとの間で切り替える。切替部46は、ソレノイド等のアクチュエータ(図示せず)により駆動される。
排紙ローラ47は、切替部46によって排紙経路RDへと導かれた用紙Pを搬送して排紙台49へ排紙する。排紙ローラ47は、排紙経路RDに沿って、切替部46と排紙台49との間に配置されている。
排紙モータ48は、排紙ローラ47を回転駆動させる。
排紙台49は、排紙ローラ47により排紙された用紙Pが積載されるものである。排紙台49は、排紙経路RDの下流端に配置されている。
反転部8は、両面印刷の際に、片面印刷済みの用紙Pを反転させて印刷部3へ再給紙する。反転部8は、反転ローラ51と、反転モータ52と、スイッチバック部53と、再給紙ローラ54と、再給紙モータ55と、切替ゲート56とを備える。
反転ローラ51は、水平搬送ローラ43により搬送されてきた用紙Pをスイッチバックして再給紙ローラ54へ搬送する。反転ローラ51は、反転経路RRに沿って、最下流の水平搬送ローラ43の下流側に配置されている。
反転モータ52は、反転ローラ51を回転駆動させる。
スイッチバック部53は、反転ローラ51が用紙Pを一時的に搬入するための空間である。スイッチバック部53は、排紙台49の下部に形成されている。スイッチバック部53は、反転ローラ51の近傍が用紙Pを搬入するために開口されている。
再給紙ローラ54は、反転ローラ51によりスイッチバックされて表裏反転された用紙Pをレジストローラ21へ搬送する。再給紙ローラ54は、反転ローラ51とレジストローラ21との間の反転経路RR上に配置されている。
再給紙モータ55は、再給紙ローラ54を回転駆動させる。
切替ゲート56は、水平搬送ローラ43により搬送されてきた用紙Pを反転ローラ51へとガイドする。また、切替ゲート56は、反転ローラ51によりスイッチバックされた用紙Pを再給紙ローラ54へとガイドする。切替ゲート56は、最下流の水平搬送ローラ43、反転ローラ51、および再給紙ローラ54の3個所の重心近傍に配置されている。
制御部9は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部9は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
次に、インクジェット印刷装置1の印刷動作について説明する。
印刷動作が開始されると、給紙部2において外部給紙台11または内部給紙台13から用紙Pが取り出され、印刷部3に給紙される。給紙された用紙Pは、印刷部3において、レジストローラ21によりベルト下搬送部23へ搬送される。次いで、用紙Pは、ベルト下搬送部23により搬送されつつ、インクジェットヘッド25から吐出されるインクにより印刷される。そして、用紙Pは、ガイド部4によりガイドされつつ、ヘッド下搬送部23から上昇搬送部5へ搬送される。上昇搬送部5では、用紙Pは、上昇搬送ローラ41により上方へ搬送される。その後、用紙Pは、水平搬送部6の水平搬送ローラ43により左方向へ搬送される。
ここで、片面印刷の場合、用紙Pは、排紙部7の切替部46により上面搬送経路RCから排紙経路RDへ導かれる。そして、用紙Pは、排紙ローラ47により排紙台49へ排紙される。
一方、両面印刷の場合、用紙Pは、切替部46により上面搬送経路RCから反転経路RRへ導かれる。反転経路RRへ導かれた用紙Pは、反転部8において、切替ゲート56により反転ローラ51へ導かれ、反転ローラ51によりスイッチバックされる。スイッチバックされた用紙Pは、切替ゲート56により再給紙ローラ54へ導かれる。そして、用紙Pは、再給紙ローラ54によりレジストローラ21へ搬送され、レジストローラ21によりヘッド下搬送部23へ搬送される。
この際、用紙Pは、反転部8により表裏反転されたことで、未印刷面が上向きになっている。用紙Pは、ヘッド下搬送部23により搬送されつつ、インクジェットヘッド25から吐出されるインクにより未印刷面が印刷される。そして、両面印刷された用紙Pは、上昇搬送部5および水平搬送部6により排紙部7へ搬送され、排紙部7において排紙台49へ排紙される。
次に、ガイド部4の切替処理について説明する。
ガイド部4の切替処理は、上述した印刷動作中において、ガイド部4を先端誘導状態と退避状態との間で切り替える処理である。
ここで、制御部9は、搬送される用紙Pの用紙種類(厚紙、薄紙、普通紙等)および用紙長さ(搬送方向における用紙Pの長さ)からなる用紙条件に応じて、ガイド部4の切替処理を行うか否かを決定する。ガイド部4の切替処理を行わない用紙条件の場合、制御部9は、印刷動作中において、ガイド部4の切替処理を行わず、ガイド部4を先端誘導状態で維持させる。ガイド部4の切替処理を行う用紙条件の場合に、制御部9は、ガイド部4の切替処理を実行する。ガイド部4の切替処理を行うか否かを決定するための用紙条件の内容については後述する。
図4は、ガイド部4の切替処理のフローチャートである。図4のフローチャートの処理は、ガイド部4の切替処理を行う用紙条件の場合における印刷動作の開始により、開始となる。
図4のステップS1において、制御部9は、用紙Pの先端がガイド部4を通過したか否かを判断する。制御部9は、用紙Pの先端が用紙センサ26で検出されてからの経過時間に基づき、当該用紙Pの先端がガイド部4を通過したか否かを判断する。用紙Pの先端がガイド部4を通過していないと判断した場合(ステップS1:NO)、制御部9は、ステップS1を繰り返す。
ここで、用紙Pの先端がガイド部4に到達する際は、ガイド部4は先端誘導状態に設定されている。このため、図5に示すように、用紙Pの先端がガイド部4に到達すると、用紙Pは、先端誘導状態のガイド部4のガイド面4aにより先端が上方に向かうようにガイドされつつ搬送され、先端がガイド部4を通過する。
図4に戻り、用紙Pの先端がガイド部4を通過したと判断した場合(ステップS1:YES)、ステップS2において、制御部9は、ガイド部4を先端誘導状態から退避状態に切り替える。
ここで、先端がガイド部4を通過した用紙Pは、上面搬送経路RCに沿って上昇搬送ローラ41へ導かれ、先端部から上昇搬送ローラ41にニップされる。この後、用紙Pの後端がヘッド下搬送部23を抜けるまでは、用紙Pの先端側は上昇搬送ローラ41による搬送速度で搬送され、用紙Pの後端側の搬送面31a上にある部分はヘッド下搬送部23による搬送速度である印刷搬送速度で搬送される。
前述のように、上昇搬送ローラ41による搬送速度は、ヘッド下搬送部23による印刷搬送速度より遅い。このため、用紙Pの先端が上昇搬送ローラ41に到達してから用紙Pの後端がヘッド下搬送部23を抜けるまでの間において、ヘッド下搬送部23と上昇搬送部5との間で用紙Pにたるみが生じる。この用紙Pのたるみは、図6に示すように、退避状態のガイド部4とヘッド下搬送部23との間の空間に形成される。
図4に戻り、ステップS3において、制御部9は、ガイド部4を退避状態に切り替えてから、用紙Pの後端がヘッド下搬送部23を抜けたか否かを判断する。ここで、制御部9は、用紙Pの後端が用紙センサ26で検出されてからの経過時間に基づき、当該用紙Pの後端がヘッド下搬送部23を抜けたか否かを判断する。用紙Pの後端がヘッド下搬送部23を抜けていないと判断した場合(ステップS3:NO)、制御部9は、ステップS3を繰り返す。
用紙Pの後端がヘッド下搬送部23を抜けたと判断した場合(ステップS3:YES)、ステップS4において、制御部9は、ガイド部4を退避状態から先端誘導状態に戻す。
次いで、ステップS5において、制御部9は、ヘッド下搬送部23から上昇搬送部5へ搬送される次の用紙Pがあるか否かを判断する。
次の用紙Pがあると判断した場合(ステップS5:YES)、制御部9は、ステップS1に戻る。次の用紙Pがないと判断した場合(ステップS5:NO)、制御部9は、ガイド部4の切替処理を終了する。
ここで、ガイド部4の切替処理を行わない場合、用紙Pの後端がガイド部4を抜けるまで、ガイド部4が先端誘導状態のまま用紙Pをガイドする。この場合、ベルト搬送部23とガイド部4との間に用紙Pのたるみを受け入れる空間が小さい状態のまま、ヘッド下搬送部23と上昇搬送部5との速度差により用紙Pがたるもうとする。
このため、図7に示すように、たるもうとする用紙Pがガイドローラ24を持ち上げ、用紙Pの搬送面31aからの浮きが生じることがある。ここで、ガイドローラ24は、印刷された用紙Pからのインクの転写を抑えるため、搬送ベルト31に対する押圧力が比較的小さい。このため、ガイドローラ24は、たるもうとする用紙Pに持ち上げられることがある。
用紙Pの搬送面31aからの浮きが生じると、用紙Pがヘッド下搬送部23による印刷搬送速度で搬送されなくなることで、搬送面31a上における用紙Pの搬送遅れが生じる。その結果、インクジェットヘッド25から吐出されたインクの着弾ズレによる印刷画質の低下を招く。
これに対し、上述したガイド部4の切替処理を行うと、ガイド部4が先端誘導状態から退避状態に切り替わることで、図6のように、ヘッド下搬送部23とガイド部4との間に用紙Pのたるみを受け入れる空間が確保される。このため、用紙Pのたるもうとする力による搬送面31aからの用紙Pの浮きが抑えられる。
ところで、搬送される用紙Pがコシの強い用紙種類のものであるほど、たるもうとする力が大きい。また、搬送される用紙Pの用紙長さが大きいほど、ヘッド下搬送部23と上昇搬送部5とに跨って搬送される時間が長くなるため、たるみ量が大きくなる。
したがって、コシの強い用紙種類ほど、上述のような用紙Pのたるもうとする力による搬送面31aからの浮きが生じやすい。また、用紙長さが大きいほど、ヘッド下搬送部23とガイド部4との間にたるみが形成される空間を確保する必要性が大きい。逆に言えば、コシの弱い用紙種類ほど、上述のような用紙Pのたるもうとする力による搬送面31aからの浮きは生じにくい。また、用紙長さが小さいほど、ヘッド下搬送部23とガイド部4との間にたるみが形成される空間を確保する必要性が小さい。
このため、用紙種類と用紙長さとの組み合わせによっては、ガイド部4の先端誘導状態から退避状態への移行を行わなくても、用紙Pの搬送面31aからの浮きは生じない。そこで、インクジェット印刷装置1では、前述のように、搬送される用紙Pの用紙種類および用紙長さからなる用紙条件に応じて、ガイド部4の切替処理を行うか否かを決定する。
具体的には、インクジェット印刷装置1では、印刷に使用されることがある用紙種類と用紙長さとの組み合わせごとに、ガイド部4の切替処理を行うか否かが設定されている。印刷動作を行う際、制御部9は、印刷に使用される用紙種類と用紙長さとの組み合わせに基づき、ガイド部4の切替処理を行うか否を決定する。
ここで、ガイド部4の退避状態の先端誘導状態からの回動角度は、最もコシの強い用紙種類で用紙長さが最大の用紙Pが搬送される場合でも、用紙Pの搬送面31aからの浮きが生じない角度に設定されている。また、用紙種類と用紙長さとの各組み合わせにおいて、ガイド部4の切替処理を行うか否かは、予め実験結果等に基づき設定されている。
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、制御部9は、ガイド部4の切替処理を行う用紙条件の場合において、印刷動作時にガイド部4の切替処理を実行する。具体的には、制御部9は、ガイド部4の切替処理を行う用紙条件の場合において、用紙Pの先端がガイド部4に到達する際は先端誘導状態であり、用紙Pの先端がガイド部4を通過した後、用紙Pをガイドしつつ退避状態へ移行するようガイド部4を制御する。
これにより、ヘッド下搬送部23とガイド部4との間に用紙Pのたるみを受け入れる空間が確保される。このため、用紙Pのたるみを受け入れる空間が小さいために用紙Pのたるもうとする力により用紙Pの後端側が押し上げられることが抑えられるので、搬送面31aからの用紙Pの浮きが抑制される。
また、インクジェット印刷装置1では、上昇搬送部5における用紙Pの搬送速度が、ヘッド下搬送部23における用紙Pの搬送速度よりも遅い。これにより、ヘッド下搬送部23と上昇搬送部5との間で用紙Pにたるみを生じさせることで、上昇搬送ローラ41による用紙Pの搬送速度の影響でヘッド下搬送部23における搬送速度が変化することが抑えられる。この結果、インクジェットヘッド25による印刷画質が低下することが抑えられる。
また、制御部9は、用紙条件に応じて、ガイド部4の切替処理を実行するか否かを決定する。すなわち、制御部9は、用紙条件に応じて、用紙Pがヘッド下搬送部23から上昇搬送部5へ搬送される際のガイド部4の先端誘導状態から退避状態への移行を行うか否かを決定する。これにより、ガイド部4の不要な切替処理を省略し、制御を簡略化できる。
なお、上述した実施の形態では、ガイド部4がアクチュエータにより回動して先端誘導状態と退避状態との間の切替可能な構成を示したが、ガイド部4がたるむ用紙Pに押されて回動することで、先端誘導状態から退避状態に徐々に移行する構成でもよい。
また、上述した実施の形態では、ガイド部4が固定の回動軸4bを中心に先端誘導状態から回動した状態を退避状態とする構成を示した。しかし、ガイド部の退避状態はこれに限らない。
例えば、図8に示すガイド部4Aのように、実線で示す先端誘導状態に対して上面搬送経路RCに沿って下流側に所定距離だけ移動した破線で示す状態を、退避状態としてもよい。ここで、図8のガイド部4Aは、上述した実施の形態のガイド部4の回動軸4bを省略し、上面搬送経路RCに沿って移動可能に構成されたものである。また、図8におけるガイド部4Aの先端誘導状態は、上述した実施の形態におけるガイド部4の先端誘導状態と同様の状態である。
また、ガイド部4Aを水平移動可能な構成とし、ガイド部4Aが先端誘導状態から、ヘッド下搬送部23から離れるように右方向に所定距離だけ水平移動した状態を、退避状態としてもよい。
また、上述した実施の形態では、用紙条件として用紙種類および用紙長さを用いたが、これらのいずれか一方のみを用紙条件として用いて、ガイド部4の切替処理を行うか否かを決定してもよい。また、用紙条件にかかわらず、ガイド部4の切替処理を行うようにしてもよい。
また、上述した実施の形態では、ガイドローラ24が設けられた構成を示したが、ガイドローラ24が省略された構成でもよい。
また、上述した実施の形態では、ヘッド下搬送部23の下流側に隣接した下流側搬送経路が、搬送面31aより上方へ向かう上面搬送経路RCの上流部である場合について説明した。しかし、下流側搬送経路が、搬送面31aより下方へ向かう経路であってもよい。この場合において、例えば、上述した実施の形態と同様の回動可能なガイド部4を使用する場合、ガイド部4の退避状態は、上述した実施の形態の場合とは逆方向に先端誘導状態から回動させた状態となる。このような退避状態により、用紙Pのたるみを受け入れる空間を確保し、用紙Pの搬送面31aからの浮きを抑制することが可能である。
上述した実施の形態では、ヘッド下搬送部23がエア吸引方式で用紙Pを搬送ベルト31に吸着保持しつつ搬送する構成について説明した。しかし、ヘッド下搬送部は、静電吸着方式により用紙を搬送ベルトに吸着保持しつつ搬送する構成であってもよい。
上述した実施の形態では、上昇搬送部5の方がヘッド下搬送部23よりも用紙Pの搬送速度が遅いことにより、ヘッド下搬送部23と上昇搬送部5との間で用紙Pにたるみが生じる場合について説明した。しかし、上昇搬送部5の方がヘッド下搬送部23よりも用紙P搬送速度が遅いことに限らず、他の要因によりヘッド下搬送部23と上昇搬送部5との間で用紙Pにたるみが生じるものであっても、本発明は有効である。
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
(付記1)
インクジェットヘッドの下方の搬送面上に用紙を吸着保持しつつ搬送するヘッド下搬送部と、
用紙の搬送方向における前記ヘッド下搬送部の下流側に配置され、前記搬送面より上方または下方に向かう下流側搬送経路に沿って用紙を搬送する下流側搬送部と、
前記ヘッド下搬送部から前記下流側搬送部へ用紙をガイドするガイド部とを備え、
前記ガイド部は、
用紙の先端が前記ガイド部に到達する際は、用紙の先端を前記ヘッド下搬送部から前記下流側搬送部へ導くための先端誘導状態に設定され、
用紙の先端が前記ガイド部を通過した後、用紙をガイドしつつ、前記ヘッド下搬送部と前記ガイド部との間で用紙のたるみを受け入れる空間が前記先端誘導状態の場合よりも広くなる退避状態へ移行することを特徴とする搬送装置。
(付記2)
前記下流側搬送部は、前記ヘッド下搬送部よりも遅い搬送速度で用紙を搬送することを特徴とする付記1に記載の搬送装置。
(付記3)
用紙種類および前記搬送方向における用紙の長さの少なくともいずれか一方に応じて、前記ガイド部の前記先端誘導状態から前記退避状態への移行を行うか否かを決定する制御部をさらに備えることを特徴とする付記1または2に記載の搬送装置。