JP7103962B2 - 土留め構造及び土留め方法 - Google Patents
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自立式土留めの場合、掘削の深さや地盤条件に応じて、土留め仕様(土留め壁仕様)が決定し、必要な鋼矢板やH鋼仕様が決定する。切梁やグラウンドアンカーなどの支保形式でも、その支保工仕様と土留め壁仕様のバランスで、全体の土留め仕様が決定する。
例えば、特許文献1には、地中連続壁を二重に設け、これらを内側締切り壁及び外側締切り壁とすること、そして、これらの頭部(天端部)をタイロッドで緊結すること、が開示されている。
地盤に開削側と地山側とを仕切るように打ち込まれた第1の壁体と、
前記第1の壁体より地山側の地盤に、前記第1の壁体に対し間隔をあけて打ち込まれた第2の壁体と、
前記第1の壁体の頭部と前記第2の壁体の頭部とを連結する頭部連結材と、
を含んで構成され、
前記第1及び第2の壁体と前記頭部連結材とは、剛接合して、ラーメン構造をなすことを特徴とする。
地盤に、開削側と地山側とを仕切るように、第1及び第2の壁体を互いに間隔をあけて打ち込む工程と、
前記第1及び第2の壁体の打ち込み後、前記第1の壁体の頭部と前記第2の壁体の頭部とを頭部連結材により連結する工程と、
を含み、
前記連結工程では、前記第1及び第2の壁体と前記頭部連結材とを、ラーメン構造をなして、前記第1及び第2の壁体間の地盤を拘束するように、剛接合することを特徴とする。
図1は本発明の一実施形態として二重土留め壁を用いた開削工事の施工例を示す図、図2は鋼矢板を用いた二重土留め壁の平面図である。
鋼矢板は、図2に示されるように、断面が台形形状に屈曲し、表裏の一方の面が凸面、他方の面が凹面をなし、両端に継ぎ手を有している。従って、鋼矢板を表と裏を逆にして互い違いに列設し、隣り合う鋼矢板を継ぎ手同士でつなげることで、鋼矢板の列により土留め壁(壁体)を構築できる。
第2の壁体12は、第1の壁体11より地山側の地盤に、第1の壁体11に対し例えば1m程度の間隔をあけて平行に打ち込まれる。
尚、第1の壁体11の打ち込み工程と、第2の壁体12の打ち込み工程とは、いずれが先でもよいし、同時に並行して行うようにしてもよい。
言い換えれば、第1及び第2の壁体11、12の打ち込み工程の後に、第1の壁体11の頭部と第2の壁体12の頭部とを頭部連結材13により連結する工程を実施する。
しかし、必ずしもこれに限らない。第1の壁体11の長さと第2の壁体12の長さとが同じになる場合もあるし、第1の壁体11の長さの方が第2の壁体12の長さよりも短くなる場合もある。
各接合部32、33は、後述のように、少なくとも上下方向の複数箇所で、第1及び第2の壁体11、12の頭部に締め付け固定される。
他方の接合部33は、梁部31と別体の部材で、梁部31に対しその長手方向に位置調整可能に取付けられる。第1及び第2の壁体11、12の間隔のバラツキに対応可能とするためである。
すなわち、挟持板32aに螺合したボルト41、42の先端を壁体12に押付けることで、挟持板32bとボルト41、42との間に壁体12の頭部を挟持している。
すなわち、挟持板33aに螺合したボルト51、52の先端を壁体11の一方の面に押付けると共に、挟持板33bに螺合したボルト53、54の先端を壁体11の他方の面に押付けることで、挟持板33a側のボルト51、52と挟持板33b側のボルト53、54との間に壁体11の頭部を挟持している。
具体的には、図5に示すように、第1及び第2の壁体11、12の打ち込み後、第1及び第2の壁体11、12間の地盤に固化材(薬液)60を注入することで、当該地盤を補強する。固化材60の注入は、第1及び第2の壁体11、12間の地盤の複数箇所にボーリングを行って、実施する。
すなわち、第1及び第2の壁体11、12間の地盤にウェルポイントと称する集水管61を設置し、地上側のポンプ62により、地盤に負圧をかけて地下水を吸引することにより、地下水位を低下させる。
図2では、鋼矢板からなる第1及び第2の壁体11、12は、凸形状が同じ方向となる同位相に配置している。これに対し、図7では、凸形状が反対方向となる逆位相に配置している。地山側の敷地に制約がない場合は、図7のように配置することにより、より大きな剪断抵抗を確保することができ、より大きな剛性アップ効果が得られる。
また、図7では、頭部連結材13により、鋼矢板の中央部同士を最長距離の位置で連結している。これにより、地盤の拘束効果を高めることができる。
また、第1及び第2の壁体11、12の連続方向において隣り合う頭部連結材13の間隔は、図示の例に限らず、より小さくして、より多数の頭部連結材13により連結する構造としてもよい。
図1では、第1及び第2の壁体11、12は地盤に垂直に打ち込んで、互いに平行に配置している。これに対し、図9では、第1の壁体11は地盤に垂直に打ち込むが、第2の壁体12は下側ほど第1の壁体11との間隔が拡がるように斜めに打ち込んでいる。
すなわち、図9に示しているように、第1の壁体11には受働土圧が図示のように作用し、第2の壁体12にはより大きな主働土圧が図示のように作用する。しかし、第2の壁体12は斜めに配置されているため、荷重の分力が第2の壁体12に対し軸力(壁体12に沿う方向の力)として作用するため、第2の壁体12に対し曲げモーメントとして作用する力が小さくなる。そして、軸力増加により応力的にも有利となる。よって、その分、壁体の仕様をダウンでき、経済的となる。
締結部材303としては、総ネジのPC鋼棒(あるいは鉄筋)とナットとを用いる。
ここにおいて、プレキャストコンクリートブロックとPC鋼棒で剛結部に生じる曲げモーメントに抵抗し、鋼矢板とプレキャストコンクリートブロックとの摩擦力で剪断力に抵抗することができる。
同様に、互いに対向する一対の鋼矢板404の高さをそれぞれが継ぎ手同士でつながる両隣の鋼矢板403、405の高さより低くすることにより、鋼矢板の列中に一対の凹部414を形成する。
尚、鋼矢板402、404、・・・の高さを低くする方法としては、凹部の深さ分短い鋼矢板を用いる方法と、同じ長さの鋼矢板を用いて打ち込み量を大きくする方法とが考えられる。
また、別の頭部連結材13の一対の短い鋼矢板424を、前記凹部414に挿入し、短い鋼矢板424の両端の継ぎ手を両隣の鋼矢板403、405の継ぎ手とつなげる。
尚、鋼矢板402の上端部と鋼矢板422の下端部、及び、鋼矢板404の上端部と鋼矢板424の下端部は、必要により溶接して一体化してもよい。
図17(A)は頭部連結部の正面図、図17(B)は平面図、図17(C)は図17(A)のC-C矢視図である。
第3鋼板513、523と添接鋼板503とはボルトにより固定する。このボルトの挿通孔は長孔とすることで、第1及び第2の壁体11、12の設置誤差を吸収することができる。また、添接鋼板503側のボルト挿通孔を例えば横方向の長孔とし、第3鋼板513、523側のボルト挿通孔を例えば縦方向の長孔とすることで、縦横いずれの方向の設置誤差も吸収可能となる。
また、このように現場でボルトで組み立てる方式とすることで、容易に撤去可能で、かつ再利用も可能となる。
図18(A)は頭部連結部の正面図、図18(B)は平面図である。
第2縦鋼材602は、第2の壁体12の頭部に溶接固定されて縦方向に配置される。
第1及び第2縦鋼材601、602のいずれも、アングル材の一辺に予めボルト挿通孔を形成しておき、他の辺を第1及び第2の壁体11、12の互いに対向する面に接しさせた状態で周囲を溶接する。
第2クロス鋼材604は、その両端部が、第1縦鋼材601の下部と第2縦鋼材602の上部とにそれぞれボルト固定されて、斜め方向に配置される。
従って、第1クロス鋼材603と第2クロス鋼材604とは、X字状にクロスする。
また、第1及び第2縦鋼材601、602と第1及び第2クロス鋼材603、604との各ボルト固定部は、複数箇所でボルト固定する構成とするのが望ましいが、1箇所でボルト固定する構成となる場合は、第1及び第2クロス鋼材603、604の交差部605をボルト固定することで、剛結合を確保することができる。
このとき、第1の壁体11用のガイド鋼材701、702のうち、第2の壁体12側のガイド鋼材702は撤去せず、そのまま残し、反対側のガイド鋼材701のみを撤去する。撤去したガイド鋼材701は、ガイド鋼材703又は704として転用可能である。
そして、一対のガイド鋼材703、704によりガイドさせて、第2の壁体12を構成する鋼矢板を1枚ずつ打ち込む。
これにより、第1及び第2の壁体11、12の頭部間に、ガイド鋼材702、703が残されることになる。
従って、本実施形態の土留め構造体10は、第1の壁体11と、第2の壁体12と、第3の壁体14との三重構造(三重土留め壁)である。
第2の壁体12は、第1の壁体11より地山側の地盤に、第1の壁体11に対し例えば0.5~1m程度の間隔をあけて平行に打ち込まれる。
第3の壁体14は、第2の壁体12より地山側の地盤に、第2の壁体12に対し例えば0.5~1m程度の間隔をあけて平行に(あるいは図9の実施形態の第2の壁体12と同様に斜めに)打ち込まれる。
11 第1の壁体
12 第2の壁体
13、13’ 頭部連結材
14 第3の壁体
31 梁部
32 接合部
32a、32b 挟持板
32c 嵌合溝
33 接合部
33a、33b 挟持板
33c 嵌合溝
34、35 ロックナット
41、42、51~54 締め付け固定部(押付けボルト)
60 固化材
61 集水管
62 ポンプ
70 頭部連結材(コンクリート)
101 突起部材
102 場所打ちコンクリート
103 補強鉄筋
201 ボーリング孔
202 高圧噴射ロッド
203 プール(凹部)
204 突起部材
205 地盤改良塊
206、207 ソイルセメント
301 プレキャストコンクリートブロック
302 フック
303 締結部材(PC鋼棒)
401~405 鋼矢板
412、414 凹部
422、424 頭部連結材を構成する短い鋼矢板
432、434 鋼材(2枚の鋼板)
501 第1の接合鋼材
502 第2の接合鋼材
503 添接鋼板
511、521 第1鋼板
512、522 第2鋼板
513、523 第3鋼板
601 第1縦鋼材
602 第2縦鋼材
603 第1クロス鋼材
604 第2クロス鋼材
605 交差部
701~704 ガイド鋼材
705 補助鋼材
Claims (21)
- 地盤に開削側と地山側とを仕切るように打ち込まれた第1の壁体と、
前記第1の壁体より地山側の地盤に、前記第1の壁体に対し間隔をあけて打ち込まれた第2の壁体と、
前記第1の壁体の頭部と前記第2の壁体の頭部とを連結する頭部連結材と、
を含んで構成され、
前記第1及び第2の壁体と前記頭部連結材とは、剛接合して、ラーメン構造をなすことを特徴とする、土留め構造。 - 前記第1及び第2の壁体は、それぞれ、鋼矢板の列により形成されることを特徴とする、請求項1記載の土留め構造。
- 前記頭部連結材は、前記第1及び第2の壁体と交差する方向に延びる梁部と、この梁部の両端から屈曲して下方に延びる接合部とを有し、
前記各接合部は上下方向の複数箇所で前記第1及び第2の壁体の頭部に締め付け固定されることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の土留め構造。 - 前記各接合部は、二股に分岐していて、前記第1及び第2の壁体のそれぞれを挟持するように嵌合することを特徴とする、請求項3記載の土留め構造。
- 前記頭部連結材は、コンクリートであることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の土留め構造。
- 前記第1及び第2の壁体は地盤に垂直に打ち込まれ、互いに平行であることを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の土留め構造。
- 前記第1の壁体は地盤に垂直に打ち込まれ、前記第2の壁体は下側ほど前記第1の壁体との間隔が拡がるように地盤に斜めに打ち込まれることを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の土留め構造。
- 前記第1及び第2の壁体間の地盤に注入された固化材を更に含んで構成されることを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれか1つに記載の土留め構造。
- 前記第1及び第2の壁体間の地盤から集水して地下水位を低下させる集水設備を更に含んで構成されることを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれか1つに記載の土留め構造。
- 前記頭部連結材は、
前記第1及び第2の壁体の頭部にそれぞれ固定され、互いに対向する方向に突出する突起部材と、
前記突起部材を包み込んで前記第1及び第2の壁体の頭部間で固化されるコンクリート又はソイルセメントと、
を含んで構成されることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の土留め構造。 - 前記頭部連結材は、
前記第1及び第2の壁体の頭部間に配置されるプレキャストコンクリートブロックと、
前記第1及び第2の壁体の頭部と前記プレキャストコンクリートブロックとを締め付け固定する締結部材と、
を含んで構成されることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の土留め構造。 - 前記頭部連結材は、
前記第1及び第2の壁体を形成する鋼矢板の列において、互いに対向する一対の鋼矢板の高さをそれぞれが継ぎ手同士でつながる両隣の鋼矢板の高さより低くすることにより、鋼矢板の列中に形成された一対の凹部と、
前記一対の凹部に嵌合可能で両隣の鋼矢板と継ぎ手同士でつながることができる一対の短い鋼矢板と、
前記一対の短い鋼矢板を連結する鋼材と、
を含んで構成されることを特徴とする、請求項2記載の土留め構造。 - 前記頭部連結材は、前記第1の壁体の頭部に固定される第1の接合鋼材と、前記第2の壁体の頭部に固定される第2の接合鋼材と、前記第1及び第2の接合鋼材を連結する添接鋼板とを含んで構成され、
前記第1及び前記第2の接合鋼材は、それぞれ、一方の壁体の頭部を上方から挟み込む2枚の第1鋼板と、前記第1鋼板の上端部に固着されて他方の壁体側に水平方向に庇状に突出する第2鋼板と、前記第1及び第2鋼板に固着されてこれらと直交する面内に配置される第3鋼板と、を含み、
前記添接鋼板は、前記第1及び第2の接合鋼材の両第3鋼板にあてがわれてこれらを連結することを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の土留め構造。 - 前記頭部連結材は、
前記第1の壁体の頭部に固定されて縦方向に配置される第1縦鋼材と、
前記第2の壁体の頭部に固定されて縦方向に配置される第2縦鋼材と、
前記第1縦鋼材の上部と前記第2縦鋼材の下部とに両端部が固定されて斜め方向に配置される第1クロス鋼材と、
前記第1縦鋼材の下部と前記第2縦鋼材の上部とに両端部が固定されて斜め方向に配置され、前記第1クロス鋼材とクロスする第2クロス鋼材と、
を含んで構成されることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の土留め構造。 - 地盤に開削側と地山側とを仕切るように打ち込まれた第1の壁体と、
前記第1の壁体より地山側の地盤に、前記第1の壁体に対し間隔をあけて打ち込まれた第2の壁体と、
前記第2の壁体より地山側の地盤に、前記第2の壁体に対し間隔をあけて打ち込まれた第3の壁体と、
前記第1の壁体の頭部と前記第2の壁体の頭部、及び、前記第2の壁体の頭部と前記第3の壁体の頭部をそれぞれ連結する頭部連結材と、
を含んで構成され、
前記第1、第2及び第3の壁体と前記頭部連結材とは、剛接合して、ラーメン構造をなすことを特徴とする、土留め構造。 - 地盤に、開削側と地山側とを仕切るように、第1及び第2の壁体を互いに間隔をあけて打ち込む工程と、
前記第1及び第2の壁体の打ち込み後、前記第1の壁体の頭部と前記第2の壁体の頭部とを頭部連結材により連結する工程と、
を含み、
前記連結工程では、前記第1及び第2の壁体と前記頭部連結材とを、ラーメン構造をなして、前記第1及び第2の壁体間の地盤を拘束するように、剛接合することを特徴とする、土留め方法。 - 前記第1及び第2の壁体間の地盤に固化材を注入する工程を更に含むことを特徴とする、請求項16記載の土留め方法。
- 前記第1及び第2の壁体間の地盤から集水して地下水位を低下させる工程を更に含むことを特徴とする、請求項16記載の土留め方法。
- 前記第1及び第2の壁体間の地盤に高圧噴射撹拌工法によりセメント系の固化材を混合する工程を更に含むことを特徴とする、請求項16記載の土留め方法。
- 前記高圧噴射撹拌工法の実施時に排泥されるソイルセメントを前記第1及び第2の壁体の頭部間のプール内に貯留して固化させることにより、当該ソイルセメントを前記頭部連結材として用いて、前記第1の壁体の頭部と前記第2の壁体の頭部とを連結することを特徴とする、請求項19記載の土留め方法。
- 地盤に、開削側と地山側とを仕切るように、第1、第2及び第3の壁体を互いに間隔をあけて打ち込む工程と、
前記第1、第2及び第3の壁体の打ち込み後、前記第1の壁体の頭部と前記第2の壁体の頭部、及び、前記第2の壁体の頭部と前記第3の壁体の頭部をそれぞれを頭部連結材により連結する工程と、
を含み、
前記連結工程では、前記第1、第2及び第3の壁体と前記頭部連結材とを、ラーメン構造をなして、前記第1、第2及び第3の壁体間の地盤を拘束するように、剛接合することを特徴とする、土留め方法。
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