JP7096711B2 - 皮膚外用剤 - Google Patents

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Description

この発明は、皮膚外用剤に関し、詳しくは、所定のウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂からなる皮膚外用剤に関する。
ひび、あかぎれ、さかむけ、切り傷等の皮膚の損傷部を細菌の侵入や感染から予防する方法として、絆創膏で損傷部を保護する方法が一般的に知られている。絆創膏としては、粘着剤を積層させたテープ基材の中央部にガーゼや吸収パッドが取り付けられたテープ状の絆創膏と、使用前は液状であり、皮膚に塗布すると皮膜を形成する液状の絆創膏とに大別される。テープ状絆創膏では、粘着剤が皮膚を刺激したり、剥離時に皮膚に物理的刺激を与えたりするため、皮膚に発赤、かぶれ、痒み等を生じさせることがある。さらに、損傷部の大きさや形状は、損傷した部位や損傷の原因等によって種々異なるため、大きさや形状が予め決められているテープ状絆創膏では、皮膚損傷部位全体を保護することが困難になる場合が生じる。
一方、液体絆創膏は、粘着剤を使用しておらず、剥離時の物理的刺激も緩和されており、更に、損傷部位に選択的に塗布することにより損傷部位の大きさや形状に応じた皮膜を形成できるという特徴を有する。ただ、液体絆創膏によっては、水に濡れると白化したり、粘着性が弱まったり、皮膚への塗布時に刺激性があったり、得られる皮膜にベタつきが生じたり、指の屈曲時に皮膜が追随せず、引っ張り感が生じたりすることがある。
これに対し、所定のアクリルアミド系モノマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとの共重合体と脂肪族アルコール等から構成される非ヒドロゲル外用組成物(特許文献1)が知られている。この特許文献1に記載の非ヒドロゲル外用組成物は、水につけても白化が抑制されるという特徴を発揮する。
また、所定のアクリル酸アルキルエステル共重合体エマルジョン、一価アルコール及び多価アルコールからなる手指用外用剤(特許文献2)が知られている。この特許文献2に記載の手指用外用剤は、違和感のない皮膜が形成され、手指を水や汚れから守り、皮膜に違和感を感じず、ベタつき感がないという特徴を発揮する。
さらに、所定の一価アルコール及びベンジルアルコールから選ばれるアルコール、所定のモノカルボン酸と一価アルコールとのエステル、及びニトロセルロースからなる皮膜形成外用剤(特許文献3)が知られている。この特許文献3に記載の皮膜形成外用剤は、水と接触しても、形成される皮膜が白化したり、ゲル化するのを抑制でき、可塑剤を加えることで良好な柔軟性や皮膚付着性が付与されるという特徴を発揮する。
さらにまた、疎水性多糖類及び揮発性疎水性溶剤からなる組成物(特許文献4)が知られている。この特許文献4に記載の組成物は、好適な柔軟性を発揮する。
特開2007-119428号公報 特開2011-126796号公報 特開2013-079200号公報 特開2014-204832号公報
しかしながら、特許文献1に記載の非ヒドロゲル外用組成物は、白化防止を発揮し得るものの、水に濡れたときの粘着性低下の防止、ベタつき抑制、柔軟性(引っ張り感のなさ)等の効果については言及されていない。また、特許文献2に記載の手指用外用剤は、ベタつき抑制、柔軟性を発揮するものの、白化防止、密着性については言及されていない。
さらに、特許文献3に記載の皮膜形成外用剤は、白化防止を発揮し得るものの、柔軟性を確保するには可塑剤が必要となり、粘着性保持、ベタつき抑制については言及されていない。さらにまた、特許文献4に記載の組成物は、柔軟性を発揮し得るものの、白化防止、粘着性保持、ベタつき抑制について言及されていない。
また、特許文献1~4においては、炭素数の小さいアルコールや揮発性疎水性溶剤の使用が必須であり、皮膚に塗布する際、刺激性が抑えられるとしても、多少の皮膚に対する刺激性は残り、また、これらが有する刺激臭が問題となる可能性も考えられる。
そこで、この発明は、水に濡れた場合も白化や粘着性の低下を防止しつつ、ベタつきが抑制され、柔軟性(引っ張り感のなさ)を十分に有し、かつ、皮膚に対する刺激性や刺激臭のない皮膚外用剤を得ることを目的とする。
この発明の要旨は、下記の[1]~[8]に存する。
[1]カルボキシル基を有するウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂の水性分散液を含む皮膚外用剤であって、前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中のカルボキシル基の一部又は全部がアンモニア及び第1級~第3級のアミン系化合物から選ばれる少なくとも1種により中和されてなる皮膚外用剤。
[2]前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中のウレタン樹脂成分を構成するポリオール成分は、ポリエーテル系ポリオール及びポリエステル系ポリオールを含有し、このポリエーテル系ポリオールとポリエステル系ポリオールの含有割合(重量比)が、ポリエーテル系ポリオール/ポリエステル系ポリオール=30/70を超えて、100/0以下である[1]に記載の皮膚外用剤。
[3]前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中のウレタン樹脂成分を構成するポリオール成分中のポリエーテル系ポリオールの含有割合(重量比)が、ポリエーテル系ポリオール/ポリエステル系ポリオール=50/50を超えて、100/0以下である[1]又は[2]に記載の皮膚外用剤。
[4]前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中のカルボキシル基が、その当量に対して70%以上が中和されてなる[1]~[3]のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
[5]前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中の(メタ)アクリル樹脂成分が、炭素原子数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構成単位を主成分とする共重合体である[1]~[4]のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
[6]前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中の(メタ)アクリル樹脂成分のガラス転移温度(Tg)が-50℃以上25℃以下である[1]~[5]のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
[7]前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中のウレタン樹脂成分と(メタ)アクリル樹脂成分との重量比率が、ウレタン樹脂成分/(メタ)アクリル樹脂成分=10/90~70/30である[1]~[6]のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
[8]皮膚保護剤又は液体絆創膏として用いられる[1]~[7]のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
本発明のウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂に基づく皮膚外用剤は、特定のウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂を用いるので、これを皮膚に適用したときに、水に濡れても白化や粘着性低下を防止し、ベタつきが抑制され、柔軟性(引っ張り感のなさ)を十分に有する。また、刺激性や刺激臭のある成分を用いないので、皮膚に対する刺激性や刺激臭は生じない。
以下、カルボキシル基を有するウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂の水性分散液を含む皮膚外用剤にかかる発明について、詳細に説明する。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」は、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
<カルボキシル基を有するウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂水性分散液>
前記カルボキシル基を有するウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂水性分散液は、ウレタン樹脂成分と(メタ)アクリル樹脂成分との複合樹脂(以下、単に「複合樹脂」と称する場合がある。)の水性分散液であり、かつ、この複合樹脂中にカルボキシル基を有する水性分散液である。
<1.ウレタン樹脂成分>
前記ウレタン樹脂成分は、ポリオール成分と多価イソシアネート化合物とを反応させた、カルボキシル基を有する重合体をいう。
<1-1.ポリオール成分>
前記ポリオール成分とは、1分子中に2つ以上のヒドロキシル基を有する有機化合物からなる単位をいい、具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の比較的低分子量のポリオール類、又はこれらの少なくとも一種と、アジピン酸、セバシン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸類の少なくとも一種とを重縮合して得られるポリエステル系ポリオールや、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリアクリル酸エステルポリオール、ジアルキレングリコール、これらのポリオール類にプロピレンオキサイドを付加したポリエーテル系ポリオール等が挙げられる。
前記複合樹脂中のウレタン樹脂成分を構成するポリオール成分は、ポリエーテル系ポリオール及びポリエステル系ポリオールのいずれか一方のみを構成単位としてもよいが、この両者を含有し、そのときのポリエーテル系ポリオールとポリエステル系ポリオールの含有割合(重量比)が、「ポリエーテル系ポリオール/ポリエステル系ポリオール」で、30/70よりポリエーテル系ポリオールが多いことが好ましく、40/60よりポリエーテル系ポリオールが多いことが好ましい。特に好ましいのは、50/50よりポリエーテル系ポリオールが多く含まれることである。なお、含有比率の上限は、特に限定されるものではなく、ポリエーテル系ポリオールのみの場合、すなわち、100/0であってもよい。両者を用いる場合の上限は、85/15程度が好ましい。
ポリオール成分として両成分を用い、かつ、前記のような量比の範囲内で両者を用いる場合、柔軟性に富み、かつ、適度な剛性を有する(いわゆる、“コシがある”)皮膜を得ることができる。
前記ポリオール成分としては、1種類のポリオール成分のみを用いてもよいが、化合物種の異なる複数種のポリオール成分や、数平均分子量の異なる複数種のポリオール成分(以下、まとめて「複数種のポリオール成分」と称する場合がある。)を用いて、多分散系としてもよい。このようなポリオール成分を用いることにより、柔軟な質感を維持しつつ、ポリマーの機械的強度(伸び、破断強度)を高くすることができる。
前記多分散系のポリオール成分のうち、数平均分子量の異なる複数種のポリオール成分を用いる場合、この複数種のポリオール成分の数平均分子量の平均は、300以上がよく、400以上が好ましく、500以上がより好ましく、600以上が特に好ましい。数平均分子量が小さすぎると、柔軟性が低下する傾向となる。一方、上限は、4000がよく、3000が好ましく、2500がより好ましい。数平均分子量が大きすぎると、自己乳化力が低下したり、ポリオール成分の種類によっては、過度に柔軟になる場合がある。
前記のとおり、数平均分子量の異なる複数種のポリオール成分を用いる場合、用いられる複数種のポリオール成分のうち、数平均分子量が最も小さいポリオール成分の数平均分子量は、400以上がよく、500以上が好ましい。数平均分子量が小さすぎると、得られる膜が硬くなり、柔軟性が不十分となる場合がある。一方、上限は、1200がよく、1500が好ましい。数平均分子量が大きすぎると、自己乳化力が低下したり、低分子量ジオールを用いることによる効果が不十分になる場合がある。
前記の数平均分子量が最も小さいポリオール成分の具体例としては、PTMG650(三菱化学(株)製)、クラレポリオールP-520、P-530、P-1011、P-1012、P-1030等((株)クラレ製、商品名)、ニッポラン141、164、981、4002、4009(東ソー(株)製、商品名)、ハイフレックスD1000(第一工業製薬(株)製)、サンニックスPP1000(三洋化成工業(株)製)、ポリエーテルP-1000((株)ADEKA製)、PEG1000(日油(株)製)等があげられる。
前記のとおり、数平均分子量の異なる複数種のポリオール成分を用いる場合、用いられる複数種のポリオール成分のうち、数平均分子量が最も小さいポリオール成分の数平均分子量と、数平均分子量が最も大きいポリオール成分の数平均分子量の差、すなわち、数平均分子量差は、100以上がよく、500以上が好ましい。数平均分子量差が小さすぎると、複数種のポリオール成分を用いることによる効果が不十分となる場合がある。一方、上限は、2000がよく、1000が好ましい。数平均分子量差が大きすぎると、ウレタン樹脂成分全体としてのバランスが崩れ、合成反応が不安定になる場合がある。
<1-2.多価イソシアネート化合物>
前記多価イソシアネート化合物とは、1分子中に少なくとも2つのイソシアネート基を有する有機化合物をいい、脂肪族、脂環式、芳香族等の多価イソシアネート化合物を用いることができる。
このような多価イソシアネート化合物の具体例としては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。これらの内で、脂肪族又は脂環式の多価イソシアネート化合物は黄変が少ない点で好適である。
<1-3.カルボキシル基>
また、前記ウレタン樹脂成分は、カルボキシル基を有することが必要である。そして、このウレタン樹脂成分の酸価は15mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上がより好ましい。15mgKOH/g未満であると、後の工程における水への分散状態が悪くなって水性分散液が得られないことがある。一方で、その上限は60mgKOH/gが好ましく、50mgKOH/g以下がより好ましい。60mgKOH/gを超えると、弾性が不十分となったり、水溶性が高くなって、皮膚外用剤として用いた際の皮膚への保持性が低下する場合がある。
なお、酸価は、水酸化カリウムを用いる電位差滴定法(JIS-K-0070)に従って測定できる。この時、試料の質量としては「ポリウレタン樹脂成分量」を用いることとする。
このウレタン樹脂成分にカルボキシル基を導入する方法としては、ポリオール成分の一部として、カルボキシル基含有多価ヒドロキシ化合物を使用する方法が挙げられる。このカルボキシル基含有多価ヒドロキシ化合物の例としては、下記化学式(1)に示されるようなジメチロールアルカン酸等が挙げられる。
Figure 0007096711000001
なお、前記式(1)において、Rは、例えば、炭素数1~10のアルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基を示す。
このジメチロールアルカン酸の具体例としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等を挙げることができる。前記カルボキシル基含有多価ヒドロキシ化合物の使用量は、重合により形成される前記ウレタン樹脂成分の酸価が前記した範囲となるように調整すればよい。
このジメチロールアルカン酸を用いることにより、良好な共重合性を得ることができ、また得られるポリウレタンにカルボキシル基を導入できて、水分散体として用いる場合に分散安定性が向上すると共に、ポリウレタンに反応性を付与したり、特に皮膚外用剤として使用した場合、極性成分との混和性を改良したり、皮膚への密着性を高くすることができる。
前記のウレタン樹脂成分を重縮合により製造するにあたって、前記カルボキシル基含有多価ヒドロキシ化合物の好ましい使用割合としては、ポリオール成分とカルボキシル基含有多価ヒドロキシ化合物との合計中の30モル%以上とするのがよく、50モル%以上とするのがより好ましい。一方で、90モル%以下がよく、80モル%以下がより好ましい。この範囲内とすることで、前記の酸価の範囲を満たすことができる。
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、上記カルボキシル基以外のアニオン性基やカチオン性基等のイオン性基を併せて導入することもできる。
<1-4.ウレタン生成反応>
前記のポリオール成分と多価イソシアネート化合物とを混合し、反応させることにより、前記ウレタン樹脂成分を製造することができる。
[ポリオール成分と多価イソシアネート化合物との使用割合]
このポリオール成分と多価イソシアネート化合物との使用割合は、当量比で、ポリオール成分:多価イソシアネート化合物=1:1.2~2がよく、1:1.5~1.9が好ましい。多価イソシアネート化合物を当量以上使用するので、ポリオール成分をほぼ100%反応させることができる。なお、多価イソシアネート化合物の使用量が多すぎると、残留したイソシアネート基による皮膚刺激や皮膜としたときの耐水性が低下する等の問題点が生じる場合がある。
[溶媒]
前記ウレタン樹脂成分を製造するためのウレタン生成反応は、無溶媒下でも行うことができるが、反応を均一に行うために、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド類、その他のイソシアネート基に対して不活性で水との親和性の大きい有機溶媒を使用してもよい。
[(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体の存在]
また、イソシアネート基に対して反応性のない、すなわち、(メタ)アクリル樹脂成分を構成する(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体のうち、活性水素基を含まない(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体がウレタン樹脂成分の製造の際に存在していてもよい。この場合、(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体によって反応系が希釈されて反応をより均一に行うことができる。
[反応条件]
このウレタン樹脂成分の生成反応は、50~100℃程度で、0.5~20時間程度行えばよい。これにより、カルボキシル基及び末端にイソシアネート基を有するウレタン樹脂成分を得ることができる。
[反応触媒]
前記ウレタン樹脂成分の製造に使用される触媒としては、一般にウレタン化反応に使用される触媒が使用できる。具体例としては、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
[重量平均分子量]
前記のウレタン樹脂成分の重量平均分子量は1000以上が好ましく、2000以上がより好ましい。重量平均分子量が小さすぎると、得られる皮膜が硬くなり、皮膚外用剤を屈曲部(関節等)に適用した場合の追従性が不足することがある等の問題点が生じる場合がある。一方、重量平均分子量の上限は、50000がよく、20000が好ましく、15000がより好ましい。重量平均分子量が大きすぎると、ウレタン樹脂成分そのものの粘度が高くなり、ゲル化したり、安定なエマルジョンが得られなくなったりする場合がある。
なお、得られたウレタン樹脂成分は、後記するように鎖伸長反応を行うことがある。この場合、鎖伸長反応で得られるウレタン樹脂成分と区別するため、鎖伸長反応を行う前のウレタン樹脂成分をウレタンプレポリマー成分と称することがある。
[ガラス転移温度(Tg)]
前記ウレタン樹脂成分のガラス転移温度(Tg)は、-60℃以上、250℃以下であることが好ましい。また、ウレタン樹脂成分のソフトセグメント(ポリオール成分由来)のガラス転移温度と、ハードセグメント(イソシアネート単位由来)とのガラス転移温度とで複数のガラス転移温度が発現する場合がある。このときの低温側(ソフトセグメント側)ガラス転移温度は、-60℃以上であることが好ましく、-50℃以上がより好ましい。-60℃より低いと、得られる皮膜が過度に柔軟になる場合がある。一方で、低温側ガラス転移温度は0℃以下であるのが好ましく、-5℃以下であるのがより好ましい。0℃を超えると、皮膜の柔軟性が不足する傾向となる。
また、高温側(ハードセグメント側)ガラス転移温度は、低温側ほど皮膜物性への影響は大きくないものの、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。30℃未満では、皮膜の強靱性が劣ることがある。一方で上限は、250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。250℃を超えると、皮膜が硬くなって質感に劣ることがある。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121の方法で測定することができる。
[中和]
前記ウレタン樹脂成分が含有するカルボキシル基は、その一部又は全部が、アンモニア及び第1級~第3級のアミン系化合物から選ばれる少なくとも1種により中和されていることが好ましい。これにより、ウレタン樹脂成分の水性媒体中での分散性を向上させることができ、また、得られる皮膜が水に濡れても白化や粘着性低下を防止でき、耐水性を向上させることができる。この中和反応は、ウレタン樹脂成分を製造した後、水性媒体中に分散する前であれば、任意の時期に行うことができる。その中でも、後述する第1中和工程、及び必要に応じて、後述する第2中和工程で行われるのが好ましい。
前記の第1級アミン系化合物としては、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン等の第1級アミン化合物、アミノメチルプロパノール、アミノエチルプロパノール、アミノプロピルプロパノール、アミノメチルブタノール、アミノメチルペンタノール、アミノエチルブタノール等の第1級アミノアルカノール化合物等があげられる。また、前記第2級アミン系化合物としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン等の第2級アミン化合物等があげられる。さらに、第3級アミン系化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン等の第3級アミン化合物等があげられる。これらの中でも第3級アミン系化合物が好ましく用いられる。
これらのアミン系化合物の総使用量は、後述する第1中和工程及び第2中和工程の合計使用量として、ウレタン樹脂成分が有するカルボキシル基の量に対して、0.7当量以上であると好ましく、0.8当量以上であるとより好ましく、1当量以上であるとさらに好ましい。すなわち、前記ウレタン樹脂成分中のカルボキシル基が、アミン系化合物により70%以上中和されていることが好ましく、90%以上中和されていることがより好ましく、100%以上中和されていることがさらに好ましい。0.7当量未満では、得られるウレタン樹脂成分の分散安定性が不十分になりやすい傾向がある。一方その上限は、2.0当量が好ましく、1.8当量がより好ましい。2.0当量を超えるとアミン系化合物がエマルジョン中に多量に残るため、皮膚外用剤として用いる際に刺激性や臭気等の問題を生じるおそれがある。
[水性媒体]
前記ウレタン樹脂成分を分散させる水性媒体としては、水や、水とエタノール等の水と相溶可能な有機溶媒との混合溶液等が挙げられる。この中でも、環境的な側面から、水がより好ましい。
<1-5.鎖伸長反応>
前記のウレタン樹脂成分は、必要に応じて鎖伸長反応を行って、前記の重量平均分子量の範囲内に調整することができる。このとき使用される鎖伸長剤としては、イソシアネート基と反応可能な活性水素を複数個有する化合物や水(前記水性媒体としての水を含む。)等が挙げられる。
前記イソシアネート基と反応可能な活性水素を複数個有する化合物としては、炭素数1~8のポリオール、ポリアミン化合物等が挙げられる。前記ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられる。また、ポリアミン化合物の例としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン類を挙げることができる。
前記の鎖伸長反応は、前記のウレタン樹脂成分と(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体とを含む混合液を前記水性媒体中に乳化分散させて第1乳化液を得る際に、水性媒体として水を用いると、この水によって、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体成分の重合工程中に、前記ウレタン樹脂成分の鎖伸長反応が一部生じることがある。また、積極的に鎖伸長反応を行う場合、この第1乳化液を得る乳化分散後に、前記鎖伸長剤を加えて鎖伸長反応を行うことができる。なお、該鎖伸長反応は、第1乳化液に含まれるウレタン樹脂成分の少なくとも一部について生起すればよい。また、前記第1乳化液、又はこの第1乳化液中のウレタン樹脂成分の少なくとも一部を鎖伸長反応させて得られる第2乳化液に含まれる前記(B)成分を重合させた後、乳化液中のウレタン樹脂成分の少なくとも一部を、積極的に鎖伸長させてもよい。
<2.(メタ)アクリル樹脂成分>
[(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体]
前記(メタ)アクリル樹脂成分は、(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(以下、単に「(メタ)アクリル系重合性単量体」と称することがある。)の単独重合体又は共重合体である。この(メタ)アクリル系重合性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸s-ペンチル、(メタ)アクリル酸1-エチルプロピル、(メタ)アクリル酸2-メチルブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸t-ペンチル、(メタ)アクリル酸3-メチルブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-メチルペンチル、(メタ)アクリル酸4-メチルペンチル、(メタ)アクリル酸2-エチルブチル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-ヘプチル、(メタ)アクリル酸3-ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸3,3,5-トリメチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル、(メタ)アクリル酸テトラコシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル等が例示される。これらの中でも、アルキル基の炭素数が1~24の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、特にアルキル基の炭素数が1~6の(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
これらの(メタ)アクリル系重合性単量体は、一種類のみを用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。特に、この発明においては、アルキル基の炭素数が1~6の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマーの共重合体、すなわち、このアルキル基の炭素数が1~6の(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を主成分とする共重合体を用いることが、本願発明の効果を得る上で好ましい。
[(メタ)アクリル系重合性単量体以外の単量体]
さらに、本発明の目的・効果を阻害しない範囲で、前記(メタ)アクリル系重合性単量体以外の重合性単量体を用いることができる。
このような重合性単量体としては、エステル基含有ビニル単量体、スチレン誘導体、ビニルエーテル系単量体等が挙げられ、またこれらの二種以上を併用してもよい。前記エステル基含有ビニル単量体の例としては、酢酸ビニル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等の疎水性ビニルモノマー、ラジカル重合性不飽和基含有シリコンマクロモノマー等の不飽和基含有マクロモノマー等が例示される。
また、前記スチレン誘導体としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。さらに、前記ビニルエーテル系単量体の具体例としては、ビニルメチルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル等が例示される。
なお、本発明においては、(メタ)アクリル系重合性単量体と、それ以外の重合性単量体をまとめて、「重合性単量体」と記すことがある。
[ガラス転移温度(Tg)]
前記重合性単量体からなる単独重合体又は共重合体のガラス転移温度(Tg)、すなわち、一種類からなる場合はその単独重合体の、複数種類からなる場合は、その組成比における共重合体のガラス転移温度は、-50℃以上であることが好ましく、-35℃以上であることがより好ましく、-15℃以上がさらに好ましく、0℃以上が特に好ましい。-50℃よりもTgが低くなるとベタつきがでやすくなるという問題が生じることがある。一方、ガラス転移温度は25℃以下であるのが好ましく、20℃以下がより好ましく、15℃以下がさらに好ましい。25℃を超えると、ツッパリ感が出やすくなるという問題点を生じることがある。
このガラス転移温度(Tg)は、前記ポリウレタン樹脂成分の項で説明した方法で測定することもでき、また、下記式(1)(FOX式)により算出することもできる。
1/Tg=(Wa/Tga)+(Wb/Tgb)+(Wc/Tgc)+… (1)
但し、Tgは(共)重合体のガラス転移温度(K)、Tga、Tgb、Tgc等は各構成単量体a、b、c等の単独重合体のガラス転移温度(K)であり、Wa、Wb、Wc等は各構成単量体a、b、cの、共重合体中の重量分率を示す。
前記重合性単量体として複数の重合性単量体の混合物を用いる場合、単独重合体のTgが高い第1単量体と、単独重合体のTgが低い第2単量体とを含有する混合物であることが好ましい。重合性単量体として、単独重合体のTgが異なる単量体を用いることにより、好適な皮膜の柔軟性に調整することができる。
前記第1単量体の単独重合体のTgは、-15℃以上がよく、-5℃以上が好ましい。-15℃より低いと、皮膜柔軟性の調整範囲が小さくなる。Tgの上限は、通常15℃程度である。
また、前記第2単量体の単独重合体のTgは、10℃以下がよく、-25℃以下が好ましい。10℃より高いと、柔軟性が不足したり、皮膜柔軟性の調整範囲が小さくなったりする。一方、Tgの下限は、-60℃がよく、-30℃が好ましい。-60℃より低いと、皮膜のベタつきが発生する場合がある。
<3.複合樹脂の製造>
次に、この発明にかかる複合樹脂水性分散液の製造方法について説明する。この発明にかかる複合樹脂水性分散液は、前記の通り、ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)と、重合性単量体とを混合した混合液を調製し、次いで、これを水性媒体中で乳化分散させ、その乳化液中の重合性単量体を重合させることによって、ウレタン-(メタ)アクリル複合樹脂の水性分散液が得られる。また、その過程において、必要に応じて、前記ウレタン樹脂成分(ウレタンプレポリマー成分)の鎖伸長反応が行われる。
[混合液の調製]
前記ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)と重合性単量体とを含む混合液を得る方法は、カルボキシル基の少なくとも一部を中和して水分散性にしたウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)と重合性単量体とが、水性媒体中に均一に分散できる方法であればよく、重合性単量体の添加時期は特に限定されるものではない。
例えば、ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する前に重合性単量体を添加する方法や、中和した後に添加する方法が挙げられる。さらに、前記ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)の原料であるポリオール単位や多価イソシアネート化合物等に、重合性単量体の一部又は全部を混合し、この重合性単量体の存在下で、ポリオール単位、多価イソシアネート化合物、カルボキシル基含有多価ヒドロキシ化合物等を反応させて、ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)を製造してもよい。このとき、ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)の製造後に重合性単量体の残量を添加する場合も、その添加時期は、ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)中のカルボキシル基を中和する前、同時又は後の任意の時期で構わない。
中でも、前記重合性単量体の存在下で、前記ポリオール単位、カルボキシル基含有多価ヒドロキシ化合物及び多価イソシアネート化合物を反応させて、前記ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)を得る方法が、ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)と重合性単量体とをより均一に混合することができるので好ましい(以下、この工程を「プレポリマー化工程」と称する)。
前記のポリオール単位、カルボキシル基含有多価ヒドロキシ化合物及び多価イソシアネート化合物の反応方法としては、ジブチル錫ジラウレート等のウレタン重合触媒の存在下で重合する方法が挙げられる。また、必要に応じて、予め混合された重合性単量体を重合した後、さらに重合性単量体を追加して添加し、複数回の重合を行ってもよい。
[混合比]
前記の混合液中のウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)と重合性単量体との混合割合は、純分重量比でウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)/重合性単量体=10/90以上がよく、20/80以上が好ましい。10/90未満の場合は、合成時に乳化不足となり、水分散時にゲル化を起こしたり、不均一な水分散体となったりすることがある。一方、混合割合の上限は、70/30がよく、60/40が好ましい。70/30を超えると、耐水性が不足することがある。
[混合液濃度]
前記のウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)と重合性単量体との混合液の濃度は、特に限定されるものではないが、最終的に得られる水性分散液組成物中の不揮発成分量が20重量%以上となるようにすることが好ましく、30重量%以上となるようにするのがより好ましい。20重量%未満では、乾燥に時間を要する場合がある。一方で、その上限は70重量%以下となる量とすることが好ましく、60重量%以下がより好ましい。70重量%を超えると、水分散性の調製が難しくなったり、分散安定性が低くなったりすることがある。
[第1中和工程]
ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)中のカルボキシル基が全く中和されていない場合、前記ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)及び重合性単量体の混合液に、前記アミン系化合物を加えて、前記ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)が含有するカルボキシル基の少なくとも一部を中和し、ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)の中和物を得るのが好ましい(以下、この工程を「第1中和工程」と称する)。
前記第1中和工程により中和されるカルボキシル基の量は、前記ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)中の全カルボキシル基に対して、0.5当量以上がよく、0.55当量以上が好ましい。
前記第1中和工程により中和されるカルボキシル基の量が0.7当量又はそれ以上の場合は、後述する第2中和工程は行わなくてもよい。一方、0.7当量未満の場合は、後述する第2中和工程が必要に応じて行われる。
[乳化工程]
次いで、前記ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)の中和物と重合性単量体との混合液を前記水性媒体中に乳化分散させる(以下、この工程を「乳化工程」と称する)。前記ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)の中和物と重合性単量体との混合液に水性媒体を加える方法としては、前記混合液に水性媒体を滴下して分散させる方法、前記混合液を前記水性媒体中に滴下して分散させる方法等、特に限定されない。
乳化分散時の温度は、0℃以上がよく、10℃以上が好ましい。一方で80℃以下がよく、60℃以下が好ましい。温度が高過ぎるとウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)が変性するおそれがある。
[重合工程]
前記のようにして得られた乳化分散液において、重合性単量体を重合させて、複合樹脂の水性分散液を得る(以下、この工程を「重合工程」と称する)。この重合性単量体の重合反応は、用いる重合性単量体に応じた一般的な重合方法で行うことができ、例えば、前記混合液にラジカル重合開始剤を添加して行うことができる。
このラジカル重合開始剤としては、慣用のラジカル重合開始剤を用いることができ、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ系開始剤、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩系開始剤、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物系開始剤を用いることができる。また、有機過酸化物系開始剤や過硫酸塩系開始剤と、アスコルビン酸、ロンガリット又は亜硫酸金属塩等の還元剤を組み合わせたレドックス系重合開始剤も好ましく用いられる。前記ラジカル重合開始剤の使用量は、重合性単量体に対して、0.1~5重量%程度、好ましくは0.5~2重量%程度とすればよい。
前記重合性単量体の重合は、重合温度10~80℃で行うのがよく、30~60℃で行うことがより好ましい。また、発熱終了後、40~90℃程度に30分~3時間程度維持することによって、重合がほぼ完了する。これにより、ウレタン-(メタ)アクリル複合樹脂の水性分散液が得られる。
[脱臭工程]
前記重合工程で得られたウレタン-(メタ)アクリル複合樹脂の水性分散液中には、通常未反応の(メタ)アクリル系重合性単量体が残存するが、これに由来する臭気を抑えるためには、例えばその濃度を100ppm以下、好ましくは70ppm以下とするのがよく、濃度は0に近いほど好ましい。
重合性単量体の濃度を低減させる方法としては、例えば、水性分散液を加熱して残存する(メタ)アクリル系重合性単量体を揮発させる方法や、水性分散液の気相部に空気等の気体を流通させる方法、水性分散液に水蒸気を吹き込む方法、(メタ)アクリル系重合性単量体を減圧留去する方法等が挙げられ、これらを必要に応じて組み合わせて行ってもよい(以下、この工程を「脱臭工程」と称する。)。
前記脱臭工程において、水性分散液を加熱する場合、水性分散液の液温は40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。一方で、その液温は、水性媒体の沸点以下とするのがよく、100℃以下が好ましい。また、気体を吹き込んだり流通させたりする場合は、その気体温度は20℃以上、100℃以下が好ましく、60℃以上、95℃以下がより好ましい。なお、水蒸気を吹き込む場合も、水性分散液の液温は前記の条件を満たすことが好ましい。
気体を流通させる場合の流通量(気体の使用条件における体積/時間)は特に限定されないが、容器の気相部体積の2~100容量倍/分がよく、5~80容量倍/分が好ましい。2容量倍/分未満では、重合性単量体の除去が不十分となりやすい。一方、100容量倍/分より多いと、水性分散液の飛散や、液表面の膜張りにより、容器壁に付着物が生成することがあり、あまり好ましくない。
前記の加熱により蒸発した水分は、(メタ)アクリル系重合性単量体の除去後に、必要に応じて補充することができる。なお、(メタ)アクリル系重合性単量体を含む排気を大気中に放出することは好ましくないので、排気を冷却して得られる凝縮液をタンク等に回収し、廃水処理を行うことが好ましい。
前記のようにして、(メタ)アクリル系重合性単量体の残留量を100ppm以下としたウレタン-(メタ)アクリル複合樹脂の水性分散液は、皮膚外用剤用として臭気がほとんど無い原材料として用いることができる。この発明にかかるウレタン-(メタ)アクリル複合樹脂水性分散液を用いた場合、残留単量体が少ないため、傷口に対する刺激性が低下するのでさらに好ましい。
[鎖伸長反応]
ところで、前記の乳化工程と重合工程との間、及び前記重合工程と脱臭工程との間のいずれか1箇所で、必要に応じて、ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)(ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)の中和物を含む。以下、同様)の少なくとも一部を鎖伸長させてもよい。また、前記の乳化工程と重合工程との間で、前記ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)の一部を鎖伸長させ、かつ、前記の重合工程と脱臭工程との間で、前記の鎖伸長工程によって鎖伸長されずに残存したウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)の少なくとも一部を鎖伸長させてもよい。
ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)の鎖伸長反応は、乳化液中でも、分散媒である水によっても徐々に生起するので、重合工程中も鎖伸長反応が一部起こることがある。しかし、水による鎖伸長は、通常反応速度が遅いので、より効果的かつ確実に鎖伸長を行うためには、前記した水以外の鎖伸長剤を用いて積極的に鎖伸長反応を行うのがよい。これにより、より速やかに鎖伸長されたウレタン樹脂成分が得られ、柔軟でかつ弾力のある皮膜を得ることができる。
[第2中和工程]
また、前記の乳化工程と重合工程との間、前記重合工程と脱臭工程との間、及び前記脱臭工程の後から選ばれる少なくとも1箇所に、ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)中のカルボキシル基の少なくとも一部を、前記アミン系化合物を用いて、さらに中和してもよい(以下、この工程を「第2中和工程」と称する)。中和度を所定の範囲まで進めることで、得られる水性分散液の保存安定性を改良したり、造膜性を改良する等の効果を得ることができる。
前記第2中和工程において用いるアミン系化合物の量は、前記ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)中のカルボキシル基に対して、前記第1中和工程において使用した量と合算した量として、0.7当量以上が好ましい。なお、第1中和工程で既に0.7当量以上のアミン系化合物が使用されている場合は、この第2中和工程を省略してもよい。
前記第1中和工程及び第2中和工程で使用されるアミン系化合物は、添加・混合を容易にするために、水溶液又は水性分散液として用いるのがよい。中和されたウレタン-(メタ)アクリル複合樹脂は、水単独、極性有機溶媒と水との混合溶媒、又は有機溶媒に溶解又は分散される。この有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、又はその他の有機溶媒が挙げられる。アルコール類としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等の1~8個の炭素原子を含むアルコールや、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール等の二価以上のアルコール等が挙げられる。また、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。その他の有機溶媒としては、ペンタン等の低沸点炭化水素、ジエチルエーテル、ジメトキシメタン等のエーテル類、モノ-、ジ-、又はトリ-エチレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸メチル等のエステル等が挙げられる。
<複合樹脂の特徴>
[重量平均分子量及び分子量分布]
前記複合樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10万以上がよく、20万以上が好ましい。10万より小さいと、皮膜強度が低く、実用物性が不足する場合がある。一方、重量平均分子量の上限は、200万がよく、120万が好ましく、100万がより好ましい。200万より大きいと、皮膜が過度に硬くなるため、屈曲によって剥落する場合がある。
また、前記複合樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、10以上が好ましく、20以上がより好ましい。Mw/Mnが小さすぎると、柔軟性が不十分となることがある。一方、Mw/Mnの上限は、70が好ましく、60がより好ましい。Mw/Mnが大きすぎると、低分子量側及び高分子量側の一方又は両方の重合体により、膜の風合いが損なわれるおそれがある。
分子量分布をこの範囲とすることで、得られる製品の、低分子量成分によるベタつきや高分子量成分によるゴワつきを低減することができ、特に皮膚外用品として用いた時の使用感を改良することができる。
なお、前記の重量平均分子量(Mw)や分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、後記の実施例の欄に記載するようなゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)を用いて測定することができる。
[ゲル分率]
前記複合樹脂は、THF(テトラヒドロフラン)に溶解しない成分(ゲル分)を含有してもよい。好ましいゲル分率は50重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下である。このようなゲル分率であると、得られる皮膜のベタつきを少なくしつつ、塗布時の延展性や皮膜の柔軟性を保持することができるという特徴を発揮することができる。なお、ゲル分率の下限は特に限定されず、0重量%であってもよい。
[最低造膜温度]
前記重合工程で得られるウレタン-(メタ)アクリル複合樹脂の最低造膜温度は25℃以下がよく、20℃以下であるのが好ましい。25℃を超えると、皮膜の柔軟性が不足することがある。一方、最低造膜温度は-20℃以上がよく、-10℃以上が好ましい。
本発明において、ウレタン-(メタ)アクリル複合樹脂の最低造膜温度を、前記の好適範囲とするためには、種々の方法が用いられるが、例えば最低造膜温度を低くする方法としては、以下の(1)~(3)の方法が挙げられる。なお、最低造膜温度を高くするためには、一般に、この方法と逆の手法を用いればよい。
(1)前記ポリオール単位として、分子量が例えば1000を超えるような、比較的高分子量のジオール類の使用量を増す。
(2)ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)を製造する際のポリオール単位と多価イソシアネート化合物との当量比を1:1に近づける。
(3)重合性単量体として、ガラス転移温度(Tg)の低いものを用いる。
前記(1)の比較的高分子量のジオール類としては、低分子量ジオール類とジカルボン酸とを縮重合して得られるポリエステルジオール類やポリアルキレングリコール類等の(重量平均)分子量が1000以上のジオール類を例示できる。
前記低分子量ジオール類の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等の分子量が500未満のジオール類が挙げられる。また、前記ポリアルキレングリコール類の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、(水添)ポリブタジエンジオール等が挙げられる。この他に、ポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリアクリル酸エステルジオール等も用いることができる。
前記ポリエステルポリオール類の具体例としては、クラレポリオールP-2011、P-2012、P-2020、P-2030等((株)クラレ製、商品名)、ODX-2560(DIC(株)製、商品名)、HS2F-136P(豊田製油(株)製、商品名)、ニッポラン4040、4010、4073、1004、4042、5018等(東ソー(株)製、商品名)があげられる。
<用途>
本発明のカルボキシル基を有する複合樹脂は、水や、水とエタノール等の有機溶剤との混合溶液を用いて、水性分散液として用いることが好ましい。このような水性分散液は、皮膚外用剤として好適に用いることができる。この皮膚外用剤の具体例としては、皮膚保護剤や液体絆創膏等があげられる。
このとき、乾燥性を重視する場合は、水/エタノール系の混合溶液とすることがよく、その際のエタノール濃度は、通常60重量%以下、好ましくは40重量%以下である。エタノール濃度が60重量%を超えると、皮膚への刺激性が問題となることがある。
以下、実施例を用いて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
<原材料>
[ポリオール成分]
・PP-2000…三洋化成工業(株)製:商品名 サンニックスPP-2000、ポリオキシプロピレングリコール、数平均分子量(Mn)=2000
・PP-1000…三洋化成工業(株)製:商品名 サンニックスPP-2000、ポリオキシプロピレングリコール、数平均分子量(Mn)=1000
・N4073…日本ポリウレタン工業(株)製:商品名 ニッポラン4073、1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸とのポリエステル系ポリオール(1,6HD-AA)、数平均分子量(Mn)=2000
<多価イソシアネート化合物>
・IPDI…デグサ・ジャパン(株)製:商品名 VESTANAT IPDI(イソホロンジイソシアネート)
<カルボキシル基含有多価ヒドロキシ化合物>
・Bis-MPA…パーストープ(株)製:ジメチロールプロピオン酸(カルボン酸含有ジオール)
<重合性単量体>
・MMA…三菱ケミカル(株)製、メチルメタクリレート
・BA…三菱ケミカル(株)製、n-ブチルアクリレート
<ラジカル重合開始剤>
・tBPO…化薬アクゾ(株)製:ジ-tert-ブチルパーオキサイド
<還元剤>
・AsA…和光純薬工業(株)製:L-アスコルビン酸(試薬特級)
<アミン系化合物>
・AMP…東京化成工業(株)製:2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(試薬)
・KOH…水酸化カリウム、和光純薬工業(株)製(試薬)
<重合禁止剤>
・MEHQ…和光純薬工業(株)製:2-メトキシヒドロキノン
<評価方法>
[理論Tg]
下記式(1)(FOX式)に従い、使用する(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体の各々の単独重合体のTg及び重量分率からウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中の(メタ)アクリル樹脂成分のTgを算出した。
1/Tg=(Wa/Tga)+(Wb/Tgb)+(Wc/Tgc)+… (1)
但し、Tgは(共)重合体のガラス転移温度(K)、Tga、Tgb、Tgc等は各構成単量体a、b、c等の単独重合体のガラス転移温度(K)であり、Wa、Wb、Wc等は各構成単量体a、b、cの、共重合体中の重量分率を示す。
なお、前述の通り、Tgを「℃」で表記したい場合は、前記式で得られたTgの数値から「273」を減じればよい。
[重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定]
下記の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)を用いて重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。
・測定装置:LC-20AD((株)島津製作所製)
・検出器:RI(屈折率)
・カラム:PLgel Mixed B(アジレント・テクノロジー(株)製)
・展開溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
・展開溶媒流量:1ml/min
・測定試料注入量:100μL
・測定試料:得られたウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂水性分散液から下記の乾燥条件で乾燥試料を作成し、THFを用いて0.2重量%溶液を作成する。この溶液を下記のフィルターでろ過して、得られたろ液を測定試料とした。
・乾燥条件:40℃×12時間乾燥後、室温×6時間真空乾燥
・測定試料作製用フィルター:GLクロマトディスク(ポアサイズ0.45μm)(ジーエルサイエンス(株)製)
・検量線:PMMA(ポリメチルメタクリレート)換算
<ゲル分率>
前記で得られた乾燥試料40mgをTHF20mLに溶解し、ゲル分用フィルター(ADVANTEC社製、PF-100:ポアサイズ100μm)にてろ過する。
ろ過後のゲル分用フィルターを105℃×3時間乾燥し、同様にして乾燥した未使用フィルターの重量とから、残留固形分を求め、下記式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率(%)=(乾燥後のフィルター重量(mg)-使用前のフィルター重量(mg))/40(mg)×100
[白化]
被験者の手(手の甲)に0.05gの試料を滴下し、刷毛を用いて約0.01mmの膜厚になるように伸ばした。室温で乾燥後、20℃の水に10分間浸漬して、得られた皮膜を目視し、皮膜の白化を下記の基準で評価した。
○:乾燥後の皮膜と同程度の透明性である。
×:乾燥後の皮膜と比べ、白くなっている。
[耐水密着性(手)]
前記[白化]の評価方法において、併せて耐水密着性を下記の基準で評価した。
○:皮膜の剥離や溶解がない。
△:皮膜に少し剥離・浮き(水泡)がある。
×:皮膜が手から剥離した、又は溶解した。
[タック]
ガラス板に試料を、アプリケーターを用いて厚さ0.3mmとなるように塗布し、室温で乾燥した。乾燥後、皮膜の上にコットン製ガーゼを1枚のせ、さらにこの上に2.5g/cmの荷重をかけ、30秒静置した。
30秒経過して荷重を解放した後、前記ガーゼを除去し、皮膜へのガーゼの繊維の付着状態を以下の判定基準に従って評価した。
○:ガーゼ由来のコットン繊維の付着なし。
△:ガーゼ由来のコットン繊維が少し付着。
×:ガーゼ由来のコットン繊維が大量に付着。
[ツッパリ感]
試料を手指の関節部に0.01mmの厚さになるよう塗布して乾燥し、皮膜を形成した。その後、指を伸縮し、塗布部のツッパリ感を以下の判定基準に従って評価した。
○:ツッパリ感を殆ど感じず、指を伸縮させても違和感がない。
△:ツッパリ感を若干感じるが、指を伸縮させても殆ど違和感がない。
×:ツッパリ感を感じ、指を伸縮させると違和感がある。
[刺激性]
下記の条件を満たす5名の被験者に対して、手のひび割れ症状を保護するように試料を塗布して乾燥し、塗布時の刺激性について、以下の評価基準に基づいて評価した。
・被験者の選択:
(a)年齢20~60歳の男女、
(b)本試験に不適当と考えられる皮膚疾患等の既往歴のない者、
(c)本試験に不適当と考えられる薬物等に対するアレルギー症等がない者、
(d)試験検体及び本試験の目的・内容について十分な説明を受け、よく理解のうえ自発的に志願した者で、書面で本テスト参加の同意をした者。
(e)濃度30%のエタノール水溶液を保護のない手のひび割れ箇所につけたときに、「しみた」と評価した者。
・評価基準
○:しみなかった。
×:しみた。
[乾燥性]
試料を手指の関節部に塗布し、7分間放置後に指触してもベタつきを感じなかったものを、皮膜形成速度が速い(「○」)と評価し、それ以外のものは、皮膜形成速度が遅い(「×」)と評価した。
(実施例1~5、比較例1:ウレタンの製造)
温度計、攪拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、表1のウレタン原料、アクリル原料((メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体)及び重合禁止剤の欄に記載の成分を所定量ずつ加え、内温50℃として混合した後、90℃に昇温し、この温度で5時間反応させてイソシアネート基及びカルボキシル基を含有するカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂成分を得た。
次いで、液温を50℃に保ちながら、表1に記載の中和剤を、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂成分のカルボキシル基の当量に対して、1当量%となる量を加え、中和した。次いで、この溶液に表1に記載の転相水(イオン交換水)を50℃で15分間かけて滴下して、乳白色で透明性のある分散液を得た。
得られた分散液を50℃に保温し、この温度で、重合開始剤(tBPO)及び還元剤(AsA)を添加して、(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体の重合を開始した。
発熱終了後、更に70℃に昇温して3時間維持して、ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂の水性分散液を得た。
得られた水性分散液について上記の各評価を行った。その結果を表1に示す。
(比較例2~8)
下記の各試料について、上記の各評価を行った。その結果を表2に示す。
・比較例2…市販の溶剤系液体絆創膏(「市販品A」と称する。)。使用されている溶剤は、酢酸ブチル/エタノールである。
・比較例3…市販の溶剤系液体絆創膏(「市販品B」と称する。)。使用されている溶剤は、ベンジルアルコール/イソプロパノールである。
・比較例4…市販の水/エタノール系液体絆創膏(「市販品C」と称する。)(水/エタノール=約50/50)。
・比較例5…市販のアクリルディスパージョン、(メタ)アクリル樹脂のTg:約-10℃(以下、「ディスパージョンA1」と称する。)。
・比較例6…市販のアクリルディスパージョン、MMA/BA共重合体系樹脂(以下、「ディスパージョンA2」と称する。)。
・比較例7…市販のウレタンディスパージョン(Tg:-60℃)(以下、「ディスパージョンU1」と称する。)。
・比較例8…市販のウレタンディスパージョン(Tg:21℃)(以下、「ディスパージョンU2」と称する。)。
Figure 0007096711000002
Figure 0007096711000003

Claims (8)

  1. カルボキシル基を有するウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂の水性分散液を含む皮膚外用剤であって、
    前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中のカルボキシル基の一部又は全部がアンモニア及び第1級~第3級のアミン系化合物から選ばれる少なくとも1種により中和されてなる皮膚外用剤。
  2. 前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中のウレタン樹脂成分を構成するポリオール成分は、ポリエーテル系ポリオール及びポリエステル系ポリオールを含有し、このポリエーテル系ポリオールとポリエステル系ポリオールの含有割合(重量比)が、ポリエーテル系ポリオール/ポリエステル系ポリオール=30/70を超えて、100/0以下である請求項1に記載の皮膚外用剤。
  3. 前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中のウレタン樹脂成分を構成するポリオール成分中のポリエーテル系ポリオールの含有割合(重量比)が、ポリエーテル系ポリオール/ポリエステル系ポリオール=50/50を超えて、100/0以下である請求項2に記載の皮膚外用剤。
  4. 前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中のカルボキシル基が、その当量に対して70%以上が中和されてなる請求項1~3のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
  5. 前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中の(メタ)アクリル樹脂成分が、炭素原子数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構成単位を主成分とする共重合体である請求項1~4のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
  6. 前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中の(メタ)アクリル樹脂成分のガラス転移温度(Tg)が-50℃以上25℃以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
  7. 前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中のウレタン樹脂成分と(メタ)アクリル樹脂成分との重量比率が、ウレタン樹脂成分/(メタ)アクリル樹脂成分=10/90~70/30である請求項1~6のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
  8. 皮膚保護剤又は液体絆創膏として用いられる請求項1~7のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
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