JP7096711B2 - 皮膚外用剤 - Google Patents
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Description
また、所定のアクリル酸アルキルエステル共重合体エマルジョン、一価アルコール及び多価アルコールからなる手指用外用剤(特許文献2)が知られている。この特許文献2に記載の手指用外用剤は、違和感のない皮膜が形成され、手指を水や汚れから守り、皮膜に違和感を感じず、ベタつき感がないという特徴を発揮する。
さらにまた、疎水性多糖類及び揮発性疎水性溶剤からなる組成物(特許文献4)が知られている。この特許文献4に記載の組成物は、好適な柔軟性を発揮する。
さらに、特許文献3に記載の皮膜形成外用剤は、白化防止を発揮し得るものの、柔軟性を確保するには可塑剤が必要となり、粘着性保持、ベタつき抑制については言及されていない。さらにまた、特許文献4に記載の組成物は、柔軟性を発揮し得るものの、白化防止、粘着性保持、ベタつき抑制について言及されていない。
[1]カルボキシル基を有するウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂の水性分散液を含む皮膚外用剤であって、前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中のカルボキシル基の一部又は全部がアンモニア及び第1級~第3級のアミン系化合物から選ばれる少なくとも1種により中和されてなる皮膚外用剤。
[3]前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中のウレタン樹脂成分を構成するポリオール成分中のポリエーテル系ポリオールの含有割合(重量比)が、ポリエーテル系ポリオール/ポリエステル系ポリオール=50/50を超えて、100/0以下である[1]又は[2]に記載の皮膚外用剤。
[4]前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中のカルボキシル基が、その当量に対して70%以上が中和されてなる[1]~[3]のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
[6]前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中の(メタ)アクリル樹脂成分のガラス転移温度(Tg)が-50℃以上25℃以下である[1]~[5]のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
[8]皮膚保護剤又は液体絆創膏として用いられる[1]~[7]のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
前記カルボキシル基を有するウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂水性分散液は、ウレタン樹脂成分と(メタ)アクリル樹脂成分との複合樹脂(以下、単に「複合樹脂」と称する場合がある。)の水性分散液であり、かつ、この複合樹脂中にカルボキシル基を有する水性分散液である。
前記ウレタン樹脂成分は、ポリオール成分と多価イソシアネート化合物とを反応させた、カルボキシル基を有する重合体をいう。
前記ポリオール成分とは、1分子中に2つ以上のヒドロキシル基を有する有機化合物からなる単位をいい、具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の比較的低分子量のポリオール類、又はこれらの少なくとも一種と、アジピン酸、セバシン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸類の少なくとも一種とを重縮合して得られるポリエステル系ポリオールや、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリアクリル酸エステルポリオール、ジアルキレングリコール、これらのポリオール類にプロピレンオキサイドを付加したポリエーテル系ポリオール等が挙げられる。
ポリオール成分として両成分を用い、かつ、前記のような量比の範囲内で両者を用いる場合、柔軟性に富み、かつ、適度な剛性を有する(いわゆる、“コシがある”)皮膜を得ることができる。
前記多価イソシアネート化合物とは、1分子中に少なくとも2つのイソシアネート基を有する有機化合物をいい、脂肪族、脂環式、芳香族等の多価イソシアネート化合物を用いることができる。
また、前記ウレタン樹脂成分は、カルボキシル基を有することが必要である。そして、このウレタン樹脂成分の酸価は15mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上がより好ましい。15mgKOH/g未満であると、後の工程における水への分散状態が悪くなって水性分散液が得られないことがある。一方で、その上限は60mgKOH/gが好ましく、50mgKOH/g以下がより好ましい。60mgKOH/gを超えると、弾性が不十分となったり、水溶性が高くなって、皮膚外用剤として用いた際の皮膚への保持性が低下する場合がある。
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、上記カルボキシル基以外のアニオン性基やカチオン性基等のイオン性基を併せて導入することもできる。
前記のポリオール成分と多価イソシアネート化合物とを混合し、反応させることにより、前記ウレタン樹脂成分を製造することができる。
このポリオール成分と多価イソシアネート化合物との使用割合は、当量比で、ポリオール成分:多価イソシアネート化合物=1:1.2~2がよく、1:1.5~1.9が好ましい。多価イソシアネート化合物を当量以上使用するので、ポリオール成分をほぼ100%反応させることができる。なお、多価イソシアネート化合物の使用量が多すぎると、残留したイソシアネート基による皮膚刺激や皮膜としたときの耐水性が低下する等の問題点が生じる場合がある。
前記ウレタン樹脂成分を製造するためのウレタン生成反応は、無溶媒下でも行うことができるが、反応を均一に行うために、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド類、その他のイソシアネート基に対して不活性で水との親和性の大きい有機溶媒を使用してもよい。
また、イソシアネート基に対して反応性のない、すなわち、(メタ)アクリル樹脂成分を構成する(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体のうち、活性水素基を含まない(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体がウレタン樹脂成分の製造の際に存在していてもよい。この場合、(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体によって反応系が希釈されて反応をより均一に行うことができる。
このウレタン樹脂成分の生成反応は、50~100℃程度で、0.5~20時間程度行えばよい。これにより、カルボキシル基及び末端にイソシアネート基を有するウレタン樹脂成分を得ることができる。
前記ウレタン樹脂成分の製造に使用される触媒としては、一般にウレタン化反応に使用される触媒が使用できる。具体例としては、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
前記のウレタン樹脂成分の重量平均分子量は1000以上が好ましく、2000以上がより好ましい。重量平均分子量が小さすぎると、得られる皮膜が硬くなり、皮膚外用剤を屈曲部(関節等)に適用した場合の追従性が不足することがある等の問題点が生じる場合がある。一方、重量平均分子量の上限は、50000がよく、20000が好ましく、15000がより好ましい。重量平均分子量が大きすぎると、ウレタン樹脂成分そのものの粘度が高くなり、ゲル化したり、安定なエマルジョンが得られなくなったりする場合がある。
なお、得られたウレタン樹脂成分は、後記するように鎖伸長反応を行うことがある。この場合、鎖伸長反応で得られるウレタン樹脂成分と区別するため、鎖伸長反応を行う前のウレタン樹脂成分をウレタンプレポリマー成分と称することがある。
前記ウレタン樹脂成分のガラス転移温度(Tg)は、-60℃以上、250℃以下であることが好ましい。また、ウレタン樹脂成分のソフトセグメント(ポリオール成分由来)のガラス転移温度と、ハードセグメント(イソシアネート単位由来)とのガラス転移温度とで複数のガラス転移温度が発現する場合がある。このときの低温側(ソフトセグメント側)ガラス転移温度は、-60℃以上であることが好ましく、-50℃以上がより好ましい。-60℃より低いと、得られる皮膜が過度に柔軟になる場合がある。一方で、低温側ガラス転移温度は0℃以下であるのが好ましく、-5℃以下であるのがより好ましい。0℃を超えると、皮膜の柔軟性が不足する傾向となる。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121の方法で測定することができる。
前記ウレタン樹脂成分が含有するカルボキシル基は、その一部又は全部が、アンモニア及び第1級~第3級のアミン系化合物から選ばれる少なくとも1種により中和されていることが好ましい。これにより、ウレタン樹脂成分の水性媒体中での分散性を向上させることができ、また、得られる皮膜が水に濡れても白化や粘着性低下を防止でき、耐水性を向上させることができる。この中和反応は、ウレタン樹脂成分を製造した後、水性媒体中に分散する前であれば、任意の時期に行うことができる。その中でも、後述する第1中和工程、及び必要に応じて、後述する第2中和工程で行われるのが好ましい。
前記ウレタン樹脂成分を分散させる水性媒体としては、水や、水とエタノール等の水と相溶可能な有機溶媒との混合溶液等が挙げられる。この中でも、環境的な側面から、水がより好ましい。
前記のウレタン樹脂成分は、必要に応じて鎖伸長反応を行って、前記の重量平均分子量の範囲内に調整することができる。このとき使用される鎖伸長剤としては、イソシアネート基と反応可能な活性水素を複数個有する化合物や水(前記水性媒体としての水を含む。)等が挙げられる。
[(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体]
前記(メタ)アクリル樹脂成分は、(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(以下、単に「(メタ)アクリル系重合性単量体」と称することがある。)の単独重合体又は共重合体である。この(メタ)アクリル系重合性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸s-ペンチル、(メタ)アクリル酸1-エチルプロピル、(メタ)アクリル酸2-メチルブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸t-ペンチル、(メタ)アクリル酸3-メチルブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-メチルペンチル、(メタ)アクリル酸4-メチルペンチル、(メタ)アクリル酸2-エチルブチル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-ヘプチル、(メタ)アクリル酸3-ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸3,3,5-トリメチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル、(メタ)アクリル酸テトラコシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル等が例示される。これらの中でも、アルキル基の炭素数が1~24の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、特にアルキル基の炭素数が1~6の(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
さらに、本発明の目的・効果を阻害しない範囲で、前記(メタ)アクリル系重合性単量体以外の重合性単量体を用いることができる。
このような重合性単量体としては、エステル基含有ビニル単量体、スチレン誘導体、ビニルエーテル系単量体等が挙げられ、またこれらの二種以上を併用してもよい。前記エステル基含有ビニル単量体の例としては、酢酸ビニル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等の疎水性ビニルモノマー、ラジカル重合性不飽和基含有シリコンマクロモノマー等の不飽和基含有マクロモノマー等が例示される。
なお、本発明においては、(メタ)アクリル系重合性単量体と、それ以外の重合性単量体をまとめて、「重合性単量体」と記すことがある。
前記重合性単量体からなる単独重合体又は共重合体のガラス転移温度(Tg)、すなわち、一種類からなる場合はその単独重合体の、複数種類からなる場合は、その組成比における共重合体のガラス転移温度は、-50℃以上であることが好ましく、-35℃以上であることがより好ましく、-15℃以上がさらに好ましく、0℃以上が特に好ましい。-50℃よりもTgが低くなるとベタつきがでやすくなるという問題が生じることがある。一方、ガラス転移温度は25℃以下であるのが好ましく、20℃以下がより好ましく、15℃以下がさらに好ましい。25℃を超えると、ツッパリ感が出やすくなるという問題点を生じることがある。
1/Tg=(Wa/Tga)+(Wb/Tgb)+(Wc/Tgc)+… (1)
但し、Tgは(共)重合体のガラス転移温度(K)、Tga、Tgb、Tgc等は各構成単量体a、b、c等の単独重合体のガラス転移温度(K)であり、Wa、Wb、Wc等は各構成単量体a、b、cの、共重合体中の重量分率を示す。
次に、この発明にかかる複合樹脂水性分散液の製造方法について説明する。この発明にかかる複合樹脂水性分散液は、前記の通り、ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)と、重合性単量体とを混合した混合液を調製し、次いで、これを水性媒体中で乳化分散させ、その乳化液中の重合性単量体を重合させることによって、ウレタン-(メタ)アクリル複合樹脂の水性分散液が得られる。また、その過程において、必要に応じて、前記ウレタン樹脂成分(ウレタンプレポリマー成分)の鎖伸長反応が行われる。
前記ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)と重合性単量体とを含む混合液を得る方法は、カルボキシル基の少なくとも一部を中和して水分散性にしたウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)と重合性単量体とが、水性媒体中に均一に分散できる方法であればよく、重合性単量体の添加時期は特に限定されるものではない。
前記の混合液中のウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)と重合性単量体との混合割合は、純分重量比でウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)/重合性単量体=10/90以上がよく、20/80以上が好ましい。10/90未満の場合は、合成時に乳化不足となり、水分散時にゲル化を起こしたり、不均一な水分散体となったりすることがある。一方、混合割合の上限は、70/30がよく、60/40が好ましい。70/30を超えると、耐水性が不足することがある。
前記のウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)と重合性単量体との混合液の濃度は、特に限定されるものではないが、最終的に得られる水性分散液組成物中の不揮発成分量が20重量%以上となるようにすることが好ましく、30重量%以上となるようにするのがより好ましい。20重量%未満では、乾燥に時間を要する場合がある。一方で、その上限は70重量%以下となる量とすることが好ましく、60重量%以下がより好ましい。70重量%を超えると、水分散性の調製が難しくなったり、分散安定性が低くなったりすることがある。
ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)中のカルボキシル基が全く中和されていない場合、前記ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)及び重合性単量体の混合液に、前記アミン系化合物を加えて、前記ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)が含有するカルボキシル基の少なくとも一部を中和し、ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)の中和物を得るのが好ましい(以下、この工程を「第1中和工程」と称する)。
次いで、前記ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)の中和物と重合性単量体との混合液を前記水性媒体中に乳化分散させる(以下、この工程を「乳化工程」と称する)。前記ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)の中和物と重合性単量体との混合液に水性媒体を加える方法としては、前記混合液に水性媒体を滴下して分散させる方法、前記混合液を前記水性媒体中に滴下して分散させる方法等、特に限定されない。
前記のようにして得られた乳化分散液において、重合性単量体を重合させて、複合樹脂の水性分散液を得る(以下、この工程を「重合工程」と称する)。この重合性単量体の重合反応は、用いる重合性単量体に応じた一般的な重合方法で行うことができ、例えば、前記混合液にラジカル重合開始剤を添加して行うことができる。
前記重合工程で得られたウレタン-(メタ)アクリル複合樹脂の水性分散液中には、通常未反応の(メタ)アクリル系重合性単量体が残存するが、これに由来する臭気を抑えるためには、例えばその濃度を100ppm以下、好ましくは70ppm以下とするのがよく、濃度は0に近いほど好ましい。
ところで、前記の乳化工程と重合工程との間、及び前記重合工程と脱臭工程との間のいずれか1箇所で、必要に応じて、ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)(ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)の中和物を含む。以下、同様)の少なくとも一部を鎖伸長させてもよい。また、前記の乳化工程と重合工程との間で、前記ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)の一部を鎖伸長させ、かつ、前記の重合工程と脱臭工程との間で、前記の鎖伸長工程によって鎖伸長されずに残存したウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)の少なくとも一部を鎖伸長させてもよい。
また、前記の乳化工程と重合工程との間、前記重合工程と脱臭工程との間、及び前記脱臭工程の後から選ばれる少なくとも1箇所に、ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)中のカルボキシル基の少なくとも一部を、前記アミン系化合物を用いて、さらに中和してもよい(以下、この工程を「第2中和工程」と称する)。中和度を所定の範囲まで進めることで、得られる水性分散液の保存安定性を改良したり、造膜性を改良する等の効果を得ることができる。
[重量平均分子量及び分子量分布]
前記複合樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10万以上がよく、20万以上が好ましい。10万より小さいと、皮膜強度が低く、実用物性が不足する場合がある。一方、重量平均分子量の上限は、200万がよく、120万が好ましく、100万がより好ましい。200万より大きいと、皮膜が過度に硬くなるため、屈曲によって剥落する場合がある。
また、前記複合樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、10以上が好ましく、20以上がより好ましい。Mw/Mnが小さすぎると、柔軟性が不十分となることがある。一方、Mw/Mnの上限は、70が好ましく、60がより好ましい。Mw/Mnが大きすぎると、低分子量側及び高分子量側の一方又は両方の重合体により、膜の風合いが損なわれるおそれがある。
分子量分布をこの範囲とすることで、得られる製品の、低分子量成分によるベタつきや高分子量成分によるゴワつきを低減することができ、特に皮膚外用品として用いた時の使用感を改良することができる。
なお、前記の重量平均分子量(Mw)や分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、後記の実施例の欄に記載するようなゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)を用いて測定することができる。
前記複合樹脂は、THF(テトラヒドロフラン)に溶解しない成分(ゲル分)を含有してもよい。好ましいゲル分率は50重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下である。このようなゲル分率であると、得られる皮膜のベタつきを少なくしつつ、塗布時の延展性や皮膜の柔軟性を保持することができるという特徴を発揮することができる。なお、ゲル分率の下限は特に限定されず、0重量%であってもよい。
前記重合工程で得られるウレタン-(メタ)アクリル複合樹脂の最低造膜温度は25℃以下がよく、20℃以下であるのが好ましい。25℃を超えると、皮膜の柔軟性が不足することがある。一方、最低造膜温度は-20℃以上がよく、-10℃以上が好ましい。
(2)ウレタン樹脂成分(又はウレタンプレポリマー成分)を製造する際のポリオール単位と多価イソシアネート化合物との当量比を1:1に近づける。
(3)重合性単量体として、ガラス転移温度(Tg)の低いものを用いる。
本発明のカルボキシル基を有する複合樹脂は、水や、水とエタノール等の有機溶剤との混合溶液を用いて、水性分散液として用いることが好ましい。このような水性分散液は、皮膚外用剤として好適に用いることができる。この皮膚外用剤の具体例としては、皮膚保護剤や液体絆創膏等があげられる。
このとき、乾燥性を重視する場合は、水/エタノール系の混合溶液とすることがよく、その際のエタノール濃度は、通常60重量%以下、好ましくは40重量%以下である。エタノール濃度が60重量%を超えると、皮膚への刺激性が問題となることがある。
[ポリオール成分]
・PP-2000…三洋化成工業(株)製:商品名 サンニックスPP-2000、ポリオキシプロピレングリコール、数平均分子量(Mn)=2000
・PP-1000…三洋化成工業(株)製:商品名 サンニックスPP-2000、ポリオキシプロピレングリコール、数平均分子量(Mn)=1000
・N4073…日本ポリウレタン工業(株)製:商品名 ニッポラン4073、1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸とのポリエステル系ポリオール(1,6HD-AA)、数平均分子量(Mn)=2000
・IPDI…デグサ・ジャパン(株)製:商品名 VESTANAT IPDI(イソホロンジイソシアネート)
<カルボキシル基含有多価ヒドロキシ化合物>
・Bis-MPA…パーストープ(株)製:ジメチロールプロピオン酸(カルボン酸含有ジオール)
・MMA…三菱ケミカル(株)製、メチルメタクリレート
・BA…三菱ケミカル(株)製、n-ブチルアクリレート
・tBPO…化薬アクゾ(株)製:ジ-tert-ブチルパーオキサイド
<還元剤>
・AsA…和光純薬工業(株)製:L-アスコルビン酸(試薬特級)
<アミン系化合物>
・AMP…東京化成工業(株)製:2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(試薬)
・KOH…水酸化カリウム、和光純薬工業(株)製(試薬)
<重合禁止剤>
・MEHQ…和光純薬工業(株)製:2-メトキシヒドロキノン
[理論Tg]
下記式(1)(FOX式)に従い、使用する(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体の各々の単独重合体のTg及び重量分率からウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中の(メタ)アクリル樹脂成分のTgを算出した。
1/Tg=(Wa/Tga)+(Wb/Tgb)+(Wc/Tgc)+… (1)
但し、Tgは(共)重合体のガラス転移温度(K)、Tga、Tgb、Tgc等は各構成単量体a、b、c等の単独重合体のガラス転移温度(K)であり、Wa、Wb、Wc等は各構成単量体a、b、cの、共重合体中の重量分率を示す。
なお、前述の通り、Tgを「℃」で表記したい場合は、前記式で得られたTgの数値から「273」を減じればよい。
下記の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)を用いて重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。
・測定装置:LC-20AD((株)島津製作所製)
・検出器:RI(屈折率)
・カラム:PLgel Mixed B(アジレント・テクノロジー(株)製)
・展開溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
・展開溶媒流量:1ml/min
・測定試料注入量:100μL
・測定試料:得られたウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂水性分散液から下記の乾燥条件で乾燥試料を作成し、THFを用いて0.2重量%溶液を作成する。この溶液を下記のフィルターでろ過して、得られたろ液を測定試料とした。
・乾燥条件:40℃×12時間乾燥後、室温×6時間真空乾燥
・測定試料作製用フィルター:GLクロマトディスク(ポアサイズ0.45μm)(ジーエルサイエンス(株)製)
・検量線:PMMA(ポリメチルメタクリレート)換算
前記で得られた乾燥試料40mgをTHF20mLに溶解し、ゲル分用フィルター(ADVANTEC社製、PF-100:ポアサイズ100μm)にてろ過する。
ろ過後のゲル分用フィルターを105℃×3時間乾燥し、同様にして乾燥した未使用フィルターの重量とから、残留固形分を求め、下記式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率(%)=(乾燥後のフィルター重量(mg)-使用前のフィルター重量(mg))/40(mg)×100
被験者の手(手の甲)に0.05gの試料を滴下し、刷毛を用いて約0.01mmの膜厚になるように伸ばした。室温で乾燥後、20℃の水に10分間浸漬して、得られた皮膜を目視し、皮膜の白化を下記の基準で評価した。
○:乾燥後の皮膜と同程度の透明性である。
×:乾燥後の皮膜と比べ、白くなっている。
前記[白化]の評価方法において、併せて耐水密着性を下記の基準で評価した。
○:皮膜の剥離や溶解がない。
△:皮膜に少し剥離・浮き(水泡)がある。
×:皮膜が手から剥離した、又は溶解した。
ガラス板に試料を、アプリケーターを用いて厚さ0.3mmとなるように塗布し、室温で乾燥した。乾燥後、皮膜の上にコットン製ガーゼを1枚のせ、さらにこの上に2.5g/cm2の荷重をかけ、30秒静置した。
30秒経過して荷重を解放した後、前記ガーゼを除去し、皮膜へのガーゼの繊維の付着状態を以下の判定基準に従って評価した。
○:ガーゼ由来のコットン繊維の付着なし。
△:ガーゼ由来のコットン繊維が少し付着。
×:ガーゼ由来のコットン繊維が大量に付着。
試料を手指の関節部に0.01mmの厚さになるよう塗布して乾燥し、皮膜を形成した。その後、指を伸縮し、塗布部のツッパリ感を以下の判定基準に従って評価した。
○:ツッパリ感を殆ど感じず、指を伸縮させても違和感がない。
△:ツッパリ感を若干感じるが、指を伸縮させても殆ど違和感がない。
×:ツッパリ感を感じ、指を伸縮させると違和感がある。
下記の条件を満たす5名の被験者に対して、手のひび割れ症状を保護するように試料を塗布して乾燥し、塗布時の刺激性について、以下の評価基準に基づいて評価した。
・被験者の選択:
(a)年齢20~60歳の男女、
(b)本試験に不適当と考えられる皮膚疾患等の既往歴のない者、
(c)本試験に不適当と考えられる薬物等に対するアレルギー症等がない者、
(d)試験検体及び本試験の目的・内容について十分な説明を受け、よく理解のうえ自発的に志願した者で、書面で本テスト参加の同意をした者。
(e)濃度30%のエタノール水溶液を保護のない手のひび割れ箇所につけたときに、「しみた」と評価した者。
・評価基準
○:しみなかった。
×:しみた。
試料を手指の関節部に塗布し、7分間放置後に指触してもベタつきを感じなかったものを、皮膜形成速度が速い(「○」)と評価し、それ以外のものは、皮膜形成速度が遅い(「×」)と評価した。
温度計、攪拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、表1のウレタン原料、アクリル原料((メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体)及び重合禁止剤の欄に記載の成分を所定量ずつ加え、内温50℃として混合した後、90℃に昇温し、この温度で5時間反応させてイソシアネート基及びカルボキシル基を含有するカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂成分を得た。
発熱終了後、更に70℃に昇温して3時間維持して、ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂の水性分散液を得た。
得られた水性分散液について上記の各評価を行った。その結果を表1に示す。
下記の各試料について、上記の各評価を行った。その結果を表2に示す。
・比較例2…市販の溶剤系液体絆創膏(「市販品A」と称する。)。使用されている溶剤は、酢酸ブチル/エタノールである。
・比較例3…市販の溶剤系液体絆創膏(「市販品B」と称する。)。使用されている溶剤は、ベンジルアルコール/イソプロパノールである。
・比較例4…市販の水/エタノール系液体絆創膏(「市販品C」と称する。)(水/エタノール=約50/50)。
・比較例5…市販のアクリルディスパージョン、(メタ)アクリル樹脂のTg:約-10℃(以下、「ディスパージョンA1」と称する。)。
・比較例6…市販のアクリルディスパージョン、MMA/BA共重合体系樹脂(以下、「ディスパージョンA2」と称する。)。
・比較例7…市販のウレタンディスパージョン(Tg:-60℃)(以下、「ディスパージョンU1」と称する。)。
・比較例8…市販のウレタンディスパージョン(Tg:21℃)(以下、「ディスパージョンU2」と称する。)。
Claims (8)
- カルボキシル基を有するウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂の水性分散液を含む皮膚外用剤であって、
前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中のカルボキシル基の一部又は全部がアンモニア及び第1級~第3級のアミン系化合物から選ばれる少なくとも1種により中和されてなる皮膚外用剤。 - 前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中のウレタン樹脂成分を構成するポリオール成分は、ポリエーテル系ポリオール及びポリエステル系ポリオールを含有し、このポリエーテル系ポリオールとポリエステル系ポリオールの含有割合(重量比)が、ポリエーテル系ポリオール/ポリエステル系ポリオール=30/70を超えて、100/0以下である請求項1に記載の皮膚外用剤。
- 前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中のウレタン樹脂成分を構成するポリオール成分中のポリエーテル系ポリオールの含有割合(重量比)が、ポリエーテル系ポリオール/ポリエステル系ポリオール=50/50を超えて、100/0以下である請求項2に記載の皮膚外用剤。
- 前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中のカルボキシル基が、その当量に対して70%以上が中和されてなる請求項1~3のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
- 前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中の(メタ)アクリル樹脂成分が、炭素原子数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構成単位を主成分とする共重合体である請求項1~4のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
- 前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中の(メタ)アクリル樹脂成分のガラス転移温度(Tg)が-50℃以上25℃以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
- 前記ウレタン/(メタ)アクリル複合樹脂中のウレタン樹脂成分と(メタ)アクリル樹脂成分との重量比率が、ウレタン樹脂成分/(メタ)アクリル樹脂成分=10/90~70/30である請求項1~6のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
- 皮膚保護剤又は液体絆創膏として用いられる請求項1~7のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
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