JP7091157B2 - インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
本発明のインクジェット記録装置は、インクを吐出する吐出口と、インクを吐出するためのエネルギーを発生する吐出素子と、吐出口と吐出素子の間で連通してその内部にインクが流通する第1流路及び第2流路と、を具備する記録ヘッドを備える。さらに、本発明のインクジェット記録装置は、吐出素子とは別の、第1流路内のインクを第2流路へと流動させる流動手段を備える。また、本発明のインクジェット記録方法は、例えば、上記のインクジェット記録装置を使用し、上記の記録ヘッドからインクを吐出して画像を記録する方法である。すなわち、本発明のインクジェット記録方法は、吐出口からインクを吐出する吐出工程と、吐出工程とは別の、第1流路内のインクを第2流路へと流動させる流動工程と、を有する。
本発明のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置で用いるインクは、自己分散顔料、及びノニオン性界面活性剤を含有するインクジェット用の水性インクである。以下、インクを構成する各成分やインクの物性について詳細に説明する。
インクに含有させる色材は、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団を介してアニオン性基が結合した自己分散顔料である。顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、イミダゾロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジンなどの有機顔料を挙げることができる。なかでも、カーボンブラックが好ましい。インク中の自己分散顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
インクは、ノニオン性界面活性剤を含有する。ノニオン性界面活性剤としては、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの炭化水素系の界面活性剤;パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物などのフッ素系の界面活性剤;ポリエーテル変性シロキサン化合物などのシリコーン系の界面活性剤などを挙げることができる。但し、シロキサン化合物などのシリコーン系の界面活性剤やポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンのブロック共重合体タイプの界面活性剤については、含有量をごく少量(含有量で0.05質量%以下程度)とするか、使用しないことが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法で用いるインクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性のインクである。インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。水性インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、水性インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。
インクには、上記成分以外にも必要に応じて、樹脂、消泡剤、その他の界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤など種々の添加剤を含有させてもよい。
(自己分散顔料の表面電荷量)
流動電位滴定ユニット(PCD-500)を搭載した電位差自動滴定装置を使用し、5mmol/Lのメチルグリコールキトサンを滴定試薬として用いた電位差滴定により、顔料分散液中の自己分散顔料の表面電荷量を測定した。電位差自動滴定装置としては、商品名「AT-510」(京都電子工業製)を使用した。
カーボンブラック(比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100g)をイオン交換水に予備分散させた後、表1に示す時間オゾン処理を行った。その後、水酸化カリウムを添加して混合物のpHを7程度に調整しながら、液-液衝突型の分散機を用いて混合物を3時間循環させた後、限外ろ過により精製した。次いで、水酸化カリウム水溶液でpHを10.0に調整し、カーボンブラックの粒子表面に-COOK基が結合した自己分散顔料を得た。適量の水を添加して顔料の含有量を調整し、顔料の含有量が15.0%である顔料分散液1~6、15を得た。
水5.5gに濃塩酸5.0gを溶かした溶液を5℃に冷却した状態とし、この状態で表2に示す使用量の4-アミノフタル酸を加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れ、撹拌して溶液の温度を10℃以下に保持しながら、5℃のイオン交換水9.0gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かして得た溶液を加えた。15分間撹拌後、カーボンブラック(比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100g)6.0gを撹拌下で加え、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過し、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させた。その後、イオン交換法によりナトリウムイオンをカリウムイオンに置換して、カーボンブラックの粒子表面に-C6H3-(COOK)2基が結合した自己分散顔料を得た。適量の水を添加して顔料の含有量を調整し、顔料の含有量が15.0%である顔料分散液7~12、16を得た。
酸価160mgKOH/g、重量平均分子量10,000のスチレン-アクリル酸共重合体を10%水酸化カリウム水溶液で中和した。カーボンブラック(比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100g)10.0部、中和したスチレン-アクリル酸共重合体(固形分)5.0部、及びイオン交換水85.0部を混合して混合物を得た。サンドグラインダーを使用して得られた混合物を1時間分散した後、遠心分離処理して粗大粒子を除去した。さらに、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)で加圧ろ過して、カーボンブラックが樹脂によって水中に分散された状態の顔料分散液13を得た。顔料分散液13中の顔料の含有量は15.0%、樹脂分散剤の含有量は7.5%であった。
カーボンブラック(比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100g)15.0部、アニオン性界面活性剤(商品名「パイオニンA-51-B」、有効濃度70%、竹本油脂製)2.0部、及びイオン交換水83.0部を混合して混合物を得た。サンドグラインダーを使用して得られた混合物を1時間分散した後、遠心分離処理して粗大粒子を除去した。さらに、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)で加圧ろ過して、カーボンブラックがアニオン性界面活性剤によって水中に分散された状態の顔料分散液14を得た。顔料分散液14中の顔料の含有量は15.0%、アニオン性界面活性剤の含有量は1.4%であった。
(ウレタン樹脂1)
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、及び還流管を備えた4つ口フラスコを用意した。このフラスコに、イソホロンジイソシアネート32.0部、ヘキサメチレンジイソシアネート24.2部、数平均分子量2,000のポリプロピレングリコール111.2部、ジメチロールプロピオン酸28.7部、及びメチルエチルケトン300.0部を入れた。窒素ガス雰囲気下、80℃で6時間反応させた後、トリメチロールプロパン(架橋剤)3.8部を添加して、イソシアネート基の存在が確認されなくなるまで80℃で反応させた。イソシアネート基の存在は、フーリエ変換型赤外分光光度計(FT-IR)を使用して分析することで確認した。40℃まで冷却した後、イオン交換水を添加して、ホモミキサーで高速撹拌しながら水酸化カリウム水溶液を添加した。加熱減圧下でメチルエチルケトンを留去し、樹脂の含有量が20.00%であるウレタン樹脂1を含む液体を調製した。ウレタン樹脂1の酸価は60mgKOH/g、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量は35,000であった。
スチレン81.0部、及びアクリル酸19.0部を常法により共重合させて、アクリル樹脂1を合成した。アクリル樹脂1の酸価と等モル量の水酸化カリウムでカルボン酸基を中和し、適量の純水を添加して、樹脂の含有量が20.00%であるアクリル樹脂1を含む液体を調製した。アクリル樹脂1の酸価は148mgKOH/g、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量は10,000であった。
界面活性剤の特性を表3に示す。表3中、「アセチレノールE100」、「アセチレノールE00」、「アセチレノールE40」、及び「アセチレノールE60」は、いずれも川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤の商品名である。表3中、「NIKKOL BS-4」、「NIKKOL BC-20」、「NIKKOL BL-25」、及び「NIKKOL BO-50」は、いずれも日光ケミカルズ製のノニオン性界面活性剤の商品名である。
表4-1~4-3の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過して、各インクを調製した。表4-1~4-3の下段には、界面活性剤の含有量S(%)、顔料の含有量P(%)、及びS/Pの値(倍)を示した。
図5に示す主要部を有するインクジェット記録装置のインク収容部(不図示)に各インクを充填し、温度25℃、相対湿度50%の環境で、以下に示す各評価を行った。記録ヘッドとしては、図6に示す構成を有するライン型の記録ヘッドを使用した。この記録ヘッドは、1つのノズルにつき、吐出口と吐出素子の間で連通する第1流路及び第2流路を具備し、ポンプを利用して第1流路内のインクを第2流路へと流動させるものである。ノズル列1列当たりのノズル数は1024個、ノズル密度は600dpi、1ノズル当たりのインク吐出量は5ngである。以下の評価では、ノズル列を2列分使用し、1/600インチ×1/600インチの単位領域にインク滴を3滴付与する条件で、15インチ/秒の速度で記録媒体を搬送して画像を記録した。また、記録ヘッド内のインクの温度が40℃となるように加温した。本発明においては、下記の各項目の評価基準で、「AA」、「A」、及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表5に示す。なお、参考例1についてはインクを流動させない条件で評価しようとしたが、インクを正常に吐出させることができなかった。
上記のインクジェット記録装置を使用し、流速1.0mm/sでインクを連続的に流動させながら、3cm×2cmのベタ画像を記録媒体(普通紙)に記録した。記録媒体としては、商品名「PB Paper」、「Canon Extra」(以上、キヤノン製);商品名「Bright white」(ヒューレッドパッカード製)を使用した。記録後、温度25℃、相対湿度50%の環境に1日載置して乾燥させた後、反射濃度計(商品名「マクベスRD-918」、グレタグマクベス製)を使用して画像の光学濃度を測定した。3種の記録媒体に記録した画像の光学濃度の平均値を算出し、以下に示す評価基準にしたがって光学濃度を評価した。
AA:光学濃度の平均値が1.40以上であった。
A:光学濃度の平均値が1.35以上1.40未満であった。
B:光学濃度の平均値が1.30以上1.35未満であった。
C:光学濃度の平均値が1.30未満であった。
上記のインクジェット記録装置を使用し、流速1.0mm/sでインクを連続的に流動させながら、ラインヘッドを構成する全てのノズルを用いてA4サイズの記録媒体(普通紙)10枚の全面にベタ画像を連続して記録した。記録媒体としては、商品名「高品位専用紙HR-101S」(キヤノン製)を使用した。画像を記録した後、引き続きインクを流動させながら、記録ヘッドの吐出口面をキャップして1時間記録を休止した。その後、上記と同様の条件で10枚分のベタ画像を記録した。このサイクルを500回繰り返した後、吸引回復操作を行った。各ノズルからのインクの吐出状態を確認し、以下に示す評価基準にしたがって吐出安定性を評価した。
AA:吸引回復操作を1回行うことによって、全ての吐出口から正常にインクが吐出される状態となった。
A:吸引回復操作を1回行った時点では不吐出や吐出よれが生ずる吐出口があったが、吸引回復操作をさらに1回行うことによって、全ての吐出口から正常にインクが吐出される状態となった。
B:吸引回復操作を2回行った時点では不吐出や吐出よれが生ずる吐出口があったが、吸引回復操作をさらに1回行うことによって、全ての吐出口から正常にインクが吐出される状態となった。
C:吸引回復操作を3回行っても、不吐出や吐出よれが生ずる吐出口があった。
Claims (19)
- インクを吐出する吐出口と、前記インクを吐出するためのエネルギーを発生する吐出素子と、前記吐出口と前記吐出素子の間で連通してその内部に前記インクが流通する第1流路及び第2流路と、を具備する記録ヘッドから前記インクを吐出して画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記吐出口から前記インクを吐出する吐出工程と、
前記吐出工程とは別の、前記第1流路内の前記インクを前記第2流路へと流動させる流動工程と、を有し、
前記インクが、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団を介してアニオン性基が結合した自己分散顔料、及びノニオン性界面活性剤を含有する水性インクであり、
前記自己分散顔料の表面電荷量が、0.40mmol/g以下であることを特徴とするインクジェット記録方法。 - 前記自己分散顔料の表面電荷量が、0.18mmol/g以上0.30mmol/g以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
- 前記ノニオン性界面活性剤のグリフィン法により求められるHLB値が、10.0以上である請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
- 前記インク中の前記ノニオン性界面活性剤の含有量(質量%)が、前記自己分散顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.01倍以上0.50倍以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記自己分散顔料が、顔料の粒子表面にアニオン性基が直接結合したものである請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記記録ヘッドが、複数の前記吐出口のそれぞれに対応する、複数の前記第1流路が1つの流入路に連通しているとともに、複数の前記第2流路が1つの流出路に連通している請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記流動工程において、前記吐出口から前記インクを排出することなく、前記インクを流動させる請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- さらに、前記流動工程における前記インクの流動を停止して前記記録ヘッドの回復動作を行う回復工程を有する請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記流動工程において、前記インクの吐出方向と交差する方向に前記インクを流動させる請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記流動工程において、前記吐出素子とは別の流動手段によって前記インクを流動させる請求項1乃至10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記流動工程において、前記第1流路に連通する流入口と前記第2流路に連通する流出口との間の圧力差で前記インクを流動させる請求項1乃至11のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記圧力差で流動させる前記インクの流速が、0.1mm/s以上10.0mm/s以下である請求項12に記載のインクジェット記録方法。
- 前記流動工程において、前記インクを間欠的に流動させる請求項1乃至11のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 間欠的に流動させる前記インクの流速が、1.0m/s以上10.0m/s以下である請求項14に記載のインクジェット記録方法。
- 前記記録ヘッドが、ラインヘッドである請求項1乃至15のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記ラインヘッドには、複数の前記吐出口が配列した吐出口列が配置された吐出素子基板が直線状に配列されている請求項16に記載のインクジェット記録方法。
- 前記記録ヘッドのインク吐出方式が、サーマル方式である請求項1乃至17のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- インクを吐出する吐出口と、前記インクを吐出するためのエネルギーを発生する吐出素子と、前記吐出口と前記吐出素子の間で連通してその内部に前記インクが流通する第1流路及び第2流路と、を具備する記録ヘッドを備えるインクジェット記録装置であって、
さらに、前記吐出素子とは別の、前記第1流路内の前記インクを前記第2流路へと流動させる流動手段を備え、
前記インクが、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団を介してアニオン性基が結合した自己分散顔料、及びノニオン性界面活性剤を含有する水性インクであり、
前記自己分散顔料の表面電荷量が、0.40mmol/g以下であることを特徴とするインクジェット記録装置。
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