JP2022091128A - インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2022091128A
JP2022091128A JP2021190000A JP2021190000A JP2022091128A JP 2022091128 A JP2022091128 A JP 2022091128A JP 2021190000 A JP2021190000 A JP 2021190000A JP 2021190000 A JP2021190000 A JP 2021190000A JP 2022091128 A JP2022091128 A JP 2022091128A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ink
pigment
inkjet recording
mass
recording method
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021190000A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2022091128A5 (ja
Inventor
有弘 齋藤
Arihiro Saito
洋子 平
Yoko Taira
知洋 山下
Tomohiro Yamashita
貴史 齋藤
Takashi Saito
槇 元村
Maki Motomura
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Publication of JP2022091128A publication Critical patent/JP2022091128A/ja
Publication of JP2022091128A5 publication Critical patent/JP2022091128A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Ink Jet Recording Methods And Recording Media Thereof (AREA)
  • Inks, Pencil-Leads, Or Crayons (AREA)
  • Ink Jet (AREA)

Abstract

Figure 2022091128000001
【課題】大容量のインク収容部を備えたインクジェット記録装置を使用し、顔料を含有する水性インクを用いて長期間にわたって記録した場合であっても、吐出よれが抑制されるとともに、光学濃度の高い画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】顔料を含有する水性インクを補充可能なインク収容部と、記録ヘッド20と、クリーニング手段とを備えるインクジェット記録装置を使用して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法である。水性インクが第1インク及び第2インクを含むとともに、複数の吐出口列が第1インクを吐出する第1吐出口列3及び第2インクを吐出する第2吐出口列4を含み、第2インクがスルホン酸型界面活性剤などの所定の界面活性剤を含有し、クリーニング手段が、吐出口列3,4の配列方向と交差する方向5に、第2吐出口列4及び第1吐出口列3の順に一度の動作でワイピングする手段である。
【選択図】図1

Description

本発明は、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録方法は、液体であるインクを利用して入力画像データを出力画像に変換する方法であり、記録ヘッドの微細な吐出口からインクを吐出して、記録媒体にインクを付与して画像を記録する方法である。この方法では、画像の記録に関与するインク以外の微小なインク滴(ミストなど)が雰囲気中に漂うことがある。そして、記録に関与しない微小なインク滴は、記録ヘッドの吐出口の周囲に付着することがある。このような不要なインクが吐出口の周囲に付着すると、吐出されるインク滴の吐出方向が曲がり、画像によれ(吐出よれ)が生ずることがある。このような問題を解決すべく、ゴムなどの弾性材料で形成された払拭部材(ワイパ)で記録ヘッドの吐出口面をワイピングして付着物を除去する、いわゆるクリーニング手段を採用したインクジェット記録装置が使用されている。
近年、記録媒体として普通紙などを用い、文字や図表などを含むビジネス文章などの記録にもインクジェット記録方法が利用されており、このような用途への使用頻度が高まっている。このような用途においては、高濃度で耐水性に優れた画像を記録可能であることが要求されるので、顔料インクが利用される場合が多い。さらに、記録可能枚数を多くして高い生産性を実現することが要求されている。これらの要求に対応すべく、記録ヘッドにインクを供給するためのインク収容部の容量が増大する傾向にある。さらに、インク収容部を交換せず、インク収容部の上部にあるインク供給口からインクを補充(注入)することができるインク収容部が用いられている。
大容量のインク収容部を備えたインクジェット記録装置を使用して長期間にわたって記録した場合であっても、ワイパによる記録ヘッドの吐出口面のワイピングが正常に実施され、吐出よれが発生しても、正常な吐出状態に回復することが要求される。このような要求に対応すべく、例えば、オレイン酸を含有するインクを用いて記録ヘッドの吐出口面のワイピング性を改善したインクジェット記録装置が提案されている(特許文献1)。また、トリメチルグリシンを含有するインクを収容した、インクを補充することができるインク収容部を備える、連続記録安定性を向上させたインクジェット記録装置が提案されている(特許文献2)。
特開2011-201220号公報 特開2018-109119号公報
本発明者らは、特許文献1で提案されたインクジェット記録装置に大容量のインク収容部を組み込み、長期間にわたって画像を記録して吐出口面のワイピング性を評価した。その結果、記録の繰り返しに伴い、吐出口面に付着したインクの拭き残りが増加し、インクの吐出方向が曲がって高品位な画像を記録することが困難になることがわかった。また、特許文献2で提案されたインクジェット記録装置を使用したところ、ワイピング性が向上する一方で、記録される画像の発色性が低下することがわかった。
したがって、本発明の目的は、大容量のインク収容部を備えたインクジェット記録装置を使用し、顔料を含有する水性インクを用いて長期間にわたって記録した場合に生ずる課題を解決することにある。すなわち、上記のインクジェット記録装置を使用した場合であっても、吐出よれが抑制されるとともに、光学濃度の高い画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することにある。
すなわち、本発明によれば、開閉可能なインク注入口が設けられた、顔料を含有する水性インクを補充可能なインク収容部と、前記水性インクを吐出する複数の吐出口が所定方向に配列した複数の吐出口列が形成された記録素子基板を有する記録ヘッドと、前記記録素子基板の前記吐出口列が形成された面をワイピングするクリーニング手段と、を備えるインクジェット記録装置を使用し、前記吐出口から吐出した前記水性インクを記録媒体に付与して画像を記録する工程を有するインクジェット記録方法であって、前記水性インクが、第1インク及び第2インクを含むとともに、前記複数の吐出口列が、前記第1インクを吐出する第1吐出口列及び前記第2インクを吐出する第2吐出口列を含み、前記第2インクが、スルホン酸型界面活性剤、カルボン酸型界面活性剤、リン酸型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、飽和多価アルコールのエチレンオキサイド付加物、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイドブロック共重合体、及びパーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含有し、前記クリーニング手段が、前記第1吐出口列及び前記第2吐出口列の配列方向と交差する方向に、前記第2吐出口列及び前記第1吐出口列の順に一度の動作で前記吐出口列が形成された面をワイピングする手段であることを特徴とするインクジェット記録方法が提供される。
本発明によれば、大容量のインク収容部を備えたインクジェット記録装置を使用し、顔料を含有する水性インクを用いて長期間にわたって記録した場合に生ずる課題を解決することができる。すなわち、本発明によれば、上記のインクジェット記録装置を使用した場合であっても、吐出よれが抑制されるとともに、光学濃度の高い画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供することができる。また、本発明によれば、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することができる。
記録ヘッド及びクリーニング手段の一例を示す模式図である。 本発明のインクジェット記録装置の一実施形態の外観を模式的に示す斜視図である。 本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す斜視図である。 インク供給系の一例を示す模式図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。
インク収容部がインクカートリッジの形態である場合と比較して、インク収容部の容量を増大するとインク収容部の交換の手間が省けるため、生産性を高めることができる。しかし、インク収容部を交換しなくて済むため、容量の大きいインク収容部内において、インク中の顔料が徐々に沈降し、インク収容部の下部に存在するインクの顔料濃度が上昇しやすい。さらに、開閉可能な注入口を持つ大容量のインク収容部では、インク収容部内のインクが空気に触れる期間が長くなりやすいため、容量の少ないインク収容部に比して、顔料が凝集しやすく、沈降する顔料の量も増加する傾向にある。一方、インクカートリッジの形態であるインク収容部の場合は、開閉可能な注入口も有さず、顔料の沈降といった問題は生じにくい。
記録ヘッドの吐出口面からインクを吸引することで、顔料の沈降によって顔料濃度が高くなったインクを除去する方法もある。しかし、大容量のインク収容部を用いた場合、顔料濃度が上昇した部分を排出しようとすると、インクを大量に消費することになるので、顔料濃度が高い状態のままで長期間にわたって記録することになる。顔料濃度が高い状態のままで長期間にわたって記録すると、ワイパによる記録ヘッドの吐出口面のワイピング性が低下してしまい、吐出よれが生じやすくなることが新たに判明した。
インク収容部内のインク中では、沈降した顔料の粒子同士が接近し、電気二重層の圧縮により静電反発力が消失して顔料が凝集しやすくなる。凝集した顔料を含むインクが記録ヘッドから吐出される際に、凝集した顔料を含むミストが吐出口面に付着するとともに、ワイピングによってミストがワイパに転写される。凝集した顔料は静電反発力が低下しているため、記録ヘッドの吐出口面やワイパに付着しやすくなる。さらに、ワイピングが繰り返されることでワイパに凝集した顔料が蓄積し、ワイパの柔軟性が低下する。柔軟性が低下したワイパは、記録ヘッドの吐出口面の形状に追従しにくくなり、ワイピング性が低下する。その結果、記録ヘッドの吐出口の周囲に拭き取り切れなくなった顔料が残存し、吐出よれが発生すると考えられる。
本発明者らは、大容量のインク収容部を備えるインクジェット記録装置を使用する場合に新たに生じた上記の課題を解決すべく、インクの組成及びワイピング条件について検討した。その結果、以下に示す構成とすることで、光学濃度の高い画像を記録することができるとともに、長期間にわたって吐出よれが抑制された高品位な画像を記録可能となることを見出した。
本発明のインクジェット記録方法では、顔料を色材として含有する2種のインク(第1インク及び第2インク)を含む水性インクを使用する。そして、一方のインク(第2インク)が、後述する界面活性剤群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含有する。
〔界面活性剤群を構成する界面活性剤〕
・スルホン酸型界面活性剤
・カルボン酸型界面活性剤
・リン酸型界面活性剤
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル
・飽和多価アルコールのエチレンオキサイド付加物
・エチレンオキサイド-プロピレンオキサイドブロック共重合体
・パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物
図1は、記録ヘッド及びクリーニング手段の一例を示す模式図である。本発明のインクジェット記録方法では、図1に示すような、記録ヘッド20と、クリーニング手段と、を備えたインクジェット記録装置を使用して記録媒体に画像を記録する。記録ヘッド20には、インクを吐出する複数の吐出口が所定方向に配した複数の吐出口列が形成された記録素子基板2が配置されている。クリーニング手段は、記録素子基板2の吐出口面をワイピングするワイパ10を含む。吐出口列は、第2インクを吐出する第2吐出口列4及び第1インクを吐出する第1吐出口列3を含む。ワイパ10は、吐出口列の配列方向と交差する方向5に、第2吐出口列4及び第1吐出口列3の順に一度の動作でワイピングする部材である。
ワイパ10によって、第2吐出口列4及び第1吐出口列3の順に矢印の方向にワイピングすると、第2吐出口列4の周囲に付着していた不要なインクがワイパ10によって最初に拭き取られる。第2インクは、上述の所定の界面活性剤を含有する。水性インク中の顔料は、樹脂分散剤の親水性基や顔料の粒子表面に結合させた親水性基の作用によって分散している。但し、顔料の粒子表面には、親水性基により覆われていない部位(疎水部)も存在する。顔料の粒子表面の疎水部には、疎水性相互作用によって、上述の所定の界面活性剤の疎水部が吸着しやすい。界面活性剤が吸着した顔料は、界面活性剤の親水性基の作用によって分散状態が安定に維持され、凝集しにくくなる。このため、インク収容部内でインク中の顔料が沈降したとしても、顔料の粒子同士の凝集が抑制されるので、吐出口付近やワイパに付着したインクはワイピングで容易に除去され、ワイピング性の低下が抑制される。さらに、第2吐出口列4の周囲に付着していた不要なインクはワイピングによって第1吐出口列3の方へと押し流され、第1吐出口列3の周囲に付着している不要なインクと混ざり合う。これにより、第2インク中の界面活性剤が第1インク中の顔料に吸着するので、第1吐出口列4の周囲に付着している不要なインク中の顔料が凝集しにくくなり、ワイピングによって拭き取りやすくなる。このため、ワイピング性が低下せず、吐出よれが生じにくくなるとともに、画像の品位を向上させることができる。
<インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録方法は、インク収容部と、記録ヘッドと、クリーニング手段とを備えるインクジェット記録装置を使用して記録媒体に画像を記録する工程を有する。インク収容部は、開閉可能なインク注入口が設けられた、顔料を含有する水性インクを補充可能な部材である。記録ヘッドは、水性インクを吐出する複数の吐出口が所定方向に配列した複数の吐出口列が形成された記録素子基板を有する。クリーニング手段は、記録素子基板の吐出口列が形成された面をワイピングする手段である。本発明のインクジェット記録方法は、記録ヘッドの吐出口から吐出した水性インクを記録媒体に付与して画像を記録する工程を有する。水性インクは、第1インク及び第2インクを含むとともに、複数の吐出口列が、第1インクを吐出する第1吐出口列及び第2インクを吐出する第2吐出口列を含む。第2インクは、後述する界面活性剤群より選択される少なくとも1種の界面活性剤(以下、便宜上、単に「所定の界面活性剤」とも記す)を含有する。そして、クリーニング手段は、第1吐出口列及び第2吐出口列の配列方向と交差する方向に、第2吐出口列及び第1吐出口列の順に一度の動作で吐出口列が形成された面をワイピングする手段である。
〔界面活性剤群を構成する界面活性剤〕
・スルホン酸型界面活性剤
・カルボン酸型界面活性剤
・リン酸型界面活性剤
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル
・飽和多価アルコールのエチレンオキサイド付加物
・エチレンオキサイド-プロピレンオキサイドブロック共重合体
・パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物
また、本発明のインクジェット記録装置は、インク収容部と、記録ヘッドと、クリーニング手段とを備える。インク収容部は、開閉可能なインク注入口が設けられた、顔料を含有する水性インクを補充可能な部材である。記録ヘッドは、水性インクを吐出する複数の吐出口が所定方向に配列した複数の吐出口列が形成された記録素子基板を有する。クリーニング手段は、記録素子基板の吐出口列が形成された面をワイピングする手段である。水性インクは、第1インク及び第2インクを含むとともに、複数の吐出口列が、第1インクを吐出する第1吐出口列及び第2インクを吐出する第2吐出口列を含む。第2インクは、前記界面活性剤群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含有する。そして、クリーニング手段は、第1吐出口列及び第2吐出口列の配列方向と交差する方向に、第2吐出口列及び第1吐出口列の順に一度の動作で吐出口列が形成された面をワイピングする手段である。
(インクジェット記録装置)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同じ機能を有するものには同じ符号をつけ、その説明を省略する場合がある。図2は、本発明のインク記録装置の一実施形態を模式的に示す斜視図である。図2に示す実施形態のインクジェット記録装置1は、筐体11と、筐体11の内部に配置される、大容量のインク収容部12とを備える。インク収容部12には、記録媒体に付与される液体であるインクが収容(充填)されている。
図3は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す斜視図である。本実施形態のインクジェット記録装置は、X方向(主走査方向)に記録ヘッドを往復走査させて記録動作を行う、いわゆるシリアル方式のインクジェット記録装置である。記録媒体101は、搬送ローラ107によってY方向(副走査方向)へと間欠的に搬送される。キャリッジ103に搭載された記録ユニット102は、記録媒体101の搬送方向であるY方向と直交する方向であるX方向(主走査方向)に往復走査される。記録媒体101のY方向への搬送と、記録ユニット102のX方向への往復走査と、により記録動作が行われる。記録ユニット102は、供給されるインクを吐出口から吐出するインクジェット方式の記録ヘッド203(図4)と、第2インク収容部としてのサブタンク202(図4)とで構成され、キャリッジ103に搭載される。キャリッジ103は、X方向に沿って配置されたガイドレール105に沿って移動可能に支持されており、ガイドレール105と並行に移動する無端ベルト106に固定されている。無端ベルト106はモータの駆動力によって往復運動し、それによってキャリッジ103がX方向に往復走査される。
メインタンク収容部108の内部には、第1インク収容部としてのメインタンク201が収納される。メインタンク収容部108のメインタンク201と、記録ユニット102のサブタンク202とは、インク供給経路であるインク供給チューブ104によって接続される。インクは、メインタンク201からインク供給チューブ104を介してサブタンク202(図4)に供給された後、記録ヘッド203の吐出口から吐出される。メインタンク201、インク供給チューブ104、及びサブタンク202は、いずれもインクの種類に対応した数で設けることができる。
メインタンク201の上部には、インクジェット記録装置の外部からメインタンク201にインクを注入するためのインク注入口205が設けられている。インクジェット記録装置を初めて使用するときや、インク量が減少したときなどに、インクジェット記録装置の内部に載置された状態のメインタンクに、インクボトルからインクを注入する。つまり、メインタンクはインクジェット記録装置の内部に据え置かれ、それ自体が交換されることはない。
図4は、インク供給系の一例を概略的に示す模式図である。メインタンク201に収容されたインク(ハッチングで示す)は、インク供給チューブ104を介してサブタンク202に供給された後、記録ヘッド203へと供給される。メインタンク201には大気連通部としての気体導入チューブ204が接続される。記録が行われ、インクが消費されると、サブタンク202にメインタンク201からインクが供給され、メインタンク201内のインクが減少する。すると、その一端が大気に開放されている気体導入チューブ204からメインタンク201内に空気が導入されることによって、インク供給系において、インクを保持するための内部負圧が略一定に保たれる。
メインタンク201は、記録可能枚数を多くすることで高い生産性を実現するために、インク最大収容量V(mL)を多くすることが好ましい。具体的には、メインタンク201のインク最大収容量V(mL)は、100mL以上300mL以下であることが好ましく、100mL以上200mL以下であることがさらに好ましい。また、メインタンク201の初期のインク充填量は、インク最大収容量を基準として、95%程度までとすることが好ましい。
サブタンク202も、メインタンク201からのインク供給の頻度を低減したり、記録ヘッド203へのインク供給を安定に行ったりするためには、インク最大収容量V(mL)を多くすることが好ましい。但し、例えば、図3に示すようなシリアル方式として、キャリッジ103にサブタンク202を搭載する形態を想定すると、サブタンク202のインク最大収容量V(mL)は多くし過ぎないことが好ましい。すなわち、あまりに多くのインクがサブタンク202に収容された場合、記録ユニット102の大型化を招き、キャリッジ103の移動速度が低下したり、キャリッジ103を移動させる無端ベルト106やモータの強度を高めたりする必要が生じる。したがって、サブタンク202のインク最大収容量V(mL)は、1mL以上20mL以下であることが好ましく、2mL以上10mL以下であることがさらに好ましい。
メインタンク201及びサブタンク202の筺体は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、及びこれらの混合物や改質物などの熱可塑性樹脂で形成されている。筺体の内部には、インクを保持するための負圧を発生しうるインク吸収体を配設してもよい。インク吸収体としては、ポリプロピレンやポリウレタンなどの繊維を圧縮したものが好ましい。また、インク吸収体を配設せず、筺体内部にインクを直接貯留する形態としてもよい。
記録ユニット102は、記録ヘッド203と、サブタンク202とで構成される。記録ヘッド203が組み込まれたヘッドカートリッジである記録ユニット102にサブタンク202を装着するとともに、サブタンク202を装着した記録ユニット102をキャリッジ103に装着する形態としてもよい。さらに、サブタンク202と記録ヘッド203とで一体的に構成された記録ユニット102を、キャリッジ103に装着する形態としてもよい。なかでも、図3及び4に示すように、サブタンク202と記録ヘッド203とが一体的に構成されたカートリッジ形態の記録ユニット102が、キャリッジ103に装着されていることが好ましい。さらに、サブタンクが熱可塑性樹脂で形成された筺体であるとともに、記録ヘッドを備えた記録素子基板が、放熱板などの他の部材を介在させることなくサブタンクに直接貼り合わされていることが好ましい。
インク供給チューブ104は、キャリッジ103に搭載された記録ユニット102を構成するサブタンク202に接続している。このため、インク供給チューブ104は、キャリッジ103の往復走査に追従して装置内を引き回される。したがって、インク供給チューブ104を構成する材料としては、キャリッジ103の頻繁な往復走査に耐えうる柔軟性を有するものを選択して用いる必要がある。このため、インク供給チューブ104は、樹脂材料で形成されている。
インク供給チューブは、樹脂材料を管状に成形した部材である。チューブを構成する樹脂材料は、単一の樹脂材料であっても、2種以上の樹脂材料の組み合わせであってもよい。また、各種の添加剤を配合した樹脂材料であってもよい。チューブの構造は、単層構造であっても積層構造であってもよい。樹脂材料としては、成形性、ゴム弾性、及び柔軟性に優れることから熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系、ウレタン系、エステル系、スチレン系、塩化ビニル系などの樹脂を挙げることができる。なかでも、柔軟性及びゴム弾性に特に優れているため、スチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。樹脂材料に配合される添加剤としては、例えば、軟化剤、滑剤、界面活性剤、酸化防止剤、老化防止剤、接着付与剤、顔料などを挙げることができる。
チューブの内径や肉厚は、成形などの生産性、記録装置内で引き回される際の曲げ剛性、インク供給性、ガスバリア性などの観点から、適宜設定される。チューブの内径は、1mm以上5mm以下であることが好ましく、1mm以上3mm以下であることがさらに好ましい。また、チューブの肉厚は、0.5mm以上5mm以下であることが好ましく、0.5mm以上3mm以下であることがさらに好ましい。
メインタンク201に収容されたインクが減少した場合、第1バルブ206を作動させてインク供給チューブ104を閉塞した後、メインタンク201のインク注入口205を開放してメインタンク201にインクを注入する。第1バルブ206を作動させず、インク供給チューブ104を閉塞しない状態でインク注入口205を開けると、インクを保持するための負圧が損なわれ、記録ヘッド203の吐出口からインクが漏れてしまう。また、メインタンク201にインクを注入する際には、第2バルブ207を作動させて気体導入チューブ204を閉塞した後、インク注入口205を開けるようにすることができる。このような構成とすることによって、メインタンク201から気体導入チューブ204の方向へとインクが流れるのを堰き止めることができる。また、第1バルブ206及び第2バルブ207を連動して作動させることで、インクの漏れをより確実に抑制することができる。
インク注入口205は、メインタンク201の上部に設けることが好ましい。メインタンク201の上部は、図4に示すようなメインタンク201の上面に限られず、メインタンク201のインク最大収容量の半分を超える位置であれば、側面などであってもよい。メインタンク201の上部からインクを注入する形態はユーザビリティには優れる。但し、このような形態の場合、インクの注入時に生じる対流によっても沈降した顔料が含まれるインクを十分に混ぜることは困難であり、メインタンクの下部からインクを注入する場合と比較しても、顔料の濃度勾配を解消するのは困難である。
産業印刷用途などをはじめとする大型のインクジェット記録装置の場合、インクの沈降対策がなされている場合がある。沈降対策機構としては、インク収容部内のインクを流動させる撹拌機構;インク流路を経由する循環経路内でインクを流動させるインク流動機構;及びインク収容部の上部と下部からインクを供給する機構;などを挙げることができる。このような機構を備える記録装置では、本発明が解決しようとする課題が発生することはない。しかし、オフィスや家庭で使用する小型のインクジェット記録装置については、本体の小型化やコストに対する市場の要求が高い。これらの要求に対応するため、オフィスや家庭で使用する記録装置は、通常、沈降対策機構を備えておらず、本発明のインクジェット記録装置も、このような沈降対策機構を備えていない。
(ワイピング手段)
図1に示すように、ワイパ10は、吐出口列の配列方向と交差する方向5に、第2吐出口列4及び第1吐出口列3の順に一度の動作でワイピングする部材である。すなわち、所定の界面活性剤を含有する第2インクを吐出する第2吐出口列4が先行するようにワイピングを開始することを要する。第2吐出口列4が先行するようにワイピングを開始することで、顔料の分散状態が安定な第2インクによってワイパ10が覆われる。このため、凝集した顔料を含む第1インクを吐出する第1吐出口列をその後にワイピングしても、凝集した顔料がワイパ10に付着しにくく、ワイピング性を良好に維持することができる。これに対して、所定の界面活性剤を実質的に含有しない第1インクを吐出する第1吐出口列3が先行するようにワイピングを開始すると、凝集した顔料によってワイパ10が被覆されやすいため、良好なワイピング性を維持することが困難になる。また、吐出口列の配列方向と平行な方向にワイピングすると、第2インクが、第1吐出口列の周囲に付着した第1インクと接触しない。このため、第2インク中の所定の界面活性剤が第1インクと混合せず、凝集した顔料の拭き残しが生じやすくなる。
ワイパは、ブレード状のワイパであることが、吐出口面のワイピング性の観点から好ましい。また、ブレード状のワイパを吐出口面に摺接させてワイピングすることが好ましい。ワイパの材質としては、ゴム弾性を有するものが好ましい。ワイパの材質の具体例としては、ウレタン樹脂で形成されるゴム材料(ウレタンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム〔EPDM〕)などを挙げることができる。ワイパの厚さは0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましい。ワイピングの際のワイパの移動速度は、1mm/秒以上150mm/秒以下であることが好ましい。また、ワイパは、記録素子基板の吐出口列の長さを含む幅を有することが好ましく、記録素子基板を覆う幅を有することがさらに好ましい。
(記録ヘッド)
記録ヘッドは、インクを吐出する複数の吐出口が所定方向に配列した複数の吐出口列が形成された記録素子基板を有する。一の記録ヘッドに配置される記録素子基板の数は特に限定されない。記録ヘッドは、吐出口の配列幅を記録媒体の最大幅相当まで延ばした、いわゆるラインヘッドではなく、シリアル方式の記録ヘッド(シリアルヘッド)であることが好ましい。ラインヘッドは、シリアルヘッドに比して記録速度を速くすることができるが、インクジェット記録装置本体の小型化の観点やコスト面で不利になりやすい。また、ラインヘッドで画像を記録する場合、シリアルヘッドで画像を記録する場合に比して1ノズル当たりのインクの吐出数が少ないので、ワイピングの頻度も少なく、ワイピング性の低下といった課題が生じにくい。
記録ヘッドに配置される記録素子基板には、2種以上のインクをそれぞれ吐出する複数の吐出口列が平行に形成されている。記録素子基板には、第1吐出口列及び第2吐出口列と平行に配置される、第1吐出口列及び第2吐出口列以外の吐出口列(第3吐出口列、第4吐出口列、…、第n吐出口列)をさらに有していてもよい。クリーニング手段(ワイパ)は、吐出口列の配列方向と交差する方向に、第n吐出口列、…、第4吐出口列、第3吐出口列、第2吐出口列、第1吐出口列の順に一度の動作で吐出口列が形成された面をワイピングする手段であることが好ましい。第3吐出口列から吐出するインクが第3インク、第4吐出口列から吐出するインクが第4インク、…、第n吐出口列から吐出するインクが第nインクである場合を想定する。この場合、各インク(第1インクを除く)は、所定の界面活性剤を含有することが好ましい。これにより、多数の吐出口列が形成された記録素子基板を有する記録ヘッドを用いた場合であっても、吐出口面のワイピング性に優れ、高品位な画像を長期間にわたって記録することができる。
記録ヘッド203のインク吐出方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式を挙げることができる。いずれの方式でインクを吐出する記録ヘッドであってもよい。
(記録工程)
本発明のインクジェット記録方法は、上記のインクジェット記録装置を使用して画像を記録する工程(記録工程)を有する。記録工程では、具体的には、記録ヘッドの吐出口から吐出したインクを記録媒体に付与して画像を記録する。画像を記録する対象の記録媒体としては、どのようなものを用いてもよい。なかでも、普通紙や非コート紙などのコート層を有しない記録媒体、及び、光沢紙やアート紙などのコート層を有する記録媒体を用いることが好ましい。コート層を有する記録媒体の基材としては、紙や、その少なくとも一方の面に樹脂層を設けた紙などを挙げることができる。前述のインクジェット記録装置を用いること以外、記録工程は公知のものとすればよい。
(水性インク)
本発明のインクジェット記録方法で用いるインクは、色材を含有するインクジェット用の水性インクである。以下、インクに用いる各成分などについて詳細に説明する。第1インク及び第2インクを区別する必要がない場合、これらをまとめて、単に「インク」とも記す。第1インク及び第2インクは、互いに反応するものである必要はない。したがって、第1インク及び第2インクは、いわゆる「反応剤」を含有する必要はない。また、第1インク及び第2インクは、いずれも、活性エネルギー線の照射により硬化するものである必要はない。したがって、第1インク及び第2インクは、「重合開始剤」や活性エネルギー線の照射により硬化するような成分(重合性成分)を含有する必要はない。
[色材]
色材としては、顔料を用いる。インク中の顔料の合有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.50質量%以上15.00質量%以下であることが好ましく、1.00質量%以上10.00質量%以下であることがさらに好ましい。顔料種としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、イミダゾロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジン、ペリノンなどの有機顔料;などを挙げることができる。調色などの目的のために染料を併用してもよい。
第1インクの顔料は、カーボンブラックであることが好ましい。また、第2インクの顔料は、有機顔料であることが好ましい。すなわち、第1インクがブラックインクであり、第2インクがカラーインクであることが好ましい。カラーインクとしては、シアン、マゼンタ、及びイエローなどの、減法混色の基本色である各インクを挙げることができる。カーボンブラックは複数の1次粒子で構成されるストラクチャー構造を有するので、カラー顔料として用いられる有機顔料に比して比表面積が大きく、凝集しやすい。このため、カーボンブラックを含有するインクは、記録ヘッドの吐出口列の周囲やワイパに付着しやすい。したがって、凝集しにくい有機顔料を含有する第2インクを吐出する第2吐出口列、凝集しやすい高いカーボンブラックを含有する第1インクを吐出する第1吐出口列の順に吐出口列が形成された面をワイピングすることが好ましい。このような順序とすることで、ワイピング性をさらに向上させることができる。
顔料の分散方式は特に限定されない。例えば、樹脂分散剤により分散させた樹脂分散顔料、界面活性剤により分散させた顔料、及び顔料の粒子表面の少なくとも一部を樹脂などで被覆したマイクロカプセル顔料などを用いることができる。また、顔料の粒子表面にアニオン性基などの親水性基を含む官能基を結合させた自己分散顔料や、顔料の粒子表面に高分子を含む有機基を化学的に結合させた顔料(樹脂結合型の自己分散顔料)などを用いることもできる。また、分散方式の異なる顔料を組み合わせて用いてもよい。
自己分散顔料としては、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団(-R-)を介してアニオン性基が結合したものを用いることができる。アニオン性基としては、-COOM、-SOM、-POなどを挙げることができる。Mとしては、それぞれ独立に、水素原子;アルカリ金属;アンモニウム(NH);有機アンモニウム;を挙げることができる。他の原子団(-R-)としては、アルキレン基;アリーレン基;アミド基;スルホニル基;イミノ基;カルボニル基;エステル基;エーテル基;これらの基を組み合わせた基;などを挙げることができる。
第1インク中の顔料は、自己分散顔料であることが好ましい。樹脂分散顔料の場合、分散剤同士の相互作用により、所定の界面活性剤が顔料の粒子表面に配向するのに時間がかかることがある。このため、ワイピングによって第1インクと第2インクが混合する短時間では顔料が安定して分散しにくく、ワイピング性を効率よく向上しにくい場合がある。さらに、液体成分とともに顔料も記録媒体に沈み込みやすいため、光学濃度がやや低下することがある。第1インクの顔料は、その粒子表面に直接又は他の原子団を介してアニオン性基が結合したカーボンブラックであることが特に好ましい。
第1インク中の自己分散顔料のアニオン性基の量は、0.05mmol/g以上1.50mmol/g以下であることが好ましい。自己分散顔料のアニオン性基の量が0.05mmol/g未満であると、顔料の粒子の電荷反発が小さく、顔料の粒子表面が露出する割合が高くなりやすい。このため、顔料が凝集しやすくなったり、ワイパや吐出口列の周囲に顔料が付着しやすくなったりして、ワイピング性がやや低下する場合がある。一方、自己分散顔料のアニオン性基の量が1.50mmol/g超であると、顔料がより凝集しやすくなるので、液体成分の蒸発に伴う顔料の凝集が進みやすくなる。このため、ワイパや吐出口列の周囲に付着する顔料の量が増加しやすくなり、ワイピング性がやや低下する場合がある。自己分散顔料のアニオン性基の量(mmol/g)は、自己分散顔料の単位質量当たりのアニオン性基のモル数で表される。
自己分散顔料のアニオン性基の量は、コロイド滴定により測定した表面電荷量から算出することができる。後述する実施例においては、流動電位滴定ユニット(PCD-500)を搭載した電位差自動滴定装置(商品名「AT-510」、京都電子工業製)を使用し、電位差を利用したコロイド滴定によって顔料分散液中の自己分散顔料の表面電荷量を測定した。より具体的には、顔料分散液を純水で約300倍(質量基準)に希釈した後、必要に応じて水酸化カリウムでpHを約10に調整し、5mmol/Lのメチルグリコールキトサンを滴定試薬として用いて電位差滴定を行った。インクから適切な方法により抽出した顔料を用いて表面電荷量を測定することも勿論可能である。
樹脂分散顔料に用いる樹脂分散剤としては、後述するような樹脂、なかでも水溶性樹脂を挙げることができる。樹脂分散顔料を用いる場合、インク中の顔料の含有量(質量%)は、樹脂分散剤の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.3倍以上10.0倍以下であることが好ましい。第2インクの顔料は、樹脂分散剤により分散される有機顔料であることが特に好ましい。
[樹脂]
インクは、樹脂を含有することが好ましい。樹脂は、(i)顔料の分散状態を安定化させるため、すなわち、樹脂分散剤やその補助としてインクに添加することができる。また、(ii)記録される画像の各種特性を向上させるためにインクに添加することができる。インク中における樹脂の状態は、水性媒体に溶解した状態であってもよく、水性媒体中に樹脂粒子として分散した状態であってもよい。本明細書における「樹脂が水溶性である」とは、樹脂を酸価と当量のアルカリで中和した場合に、動的光散乱法などの測定方法により粒径を測定しうる粒子を形成しないことを意味する。インク中の樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上20.00質量%以下であることが好ましく、0.50質量%以上15.00質量%以下であることがさらに好ましい。
樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂、多糖類、ポリペプチド類などを挙げることができる。なかでも、記録ヘッドの吐出口からの吐出特性の観点から、アクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂としては、アニオン性基を有するユニット及びアニオン性基を有しないユニットを構成ユニットとして有するものが好ましい。アクリル系樹脂の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの組み合わせなどを挙げることができる。
重合によりアクリル系樹脂を構成するユニットとなるモノマーとしては、アニオン性基を有するモノマー及びアニオン性基を有しないモノマーを挙げることができる。通常、アニオン性基を有するモノマーは重合により親水性ユニットとなり、アニオン性基を有しないモノマーは重合により疎水性ユニットとなる。
アニオン性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸基を有するモノマー;これらのモノマーの無水物や塩などを挙げることができる。アニオン性基を有するモノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、アンモニウムカチオン、及び有機アンモニウムカチオンなどを挙げることができる。
アニオン性基を有しないモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、1-ビニルイミダゾールなどの芳香族基を有するモノマー;エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(n-、iso-、t-)ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。
なかでも、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、芳香環を有するモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの少なくとも一方に由来する疎水性ユニットを有するアクリル系樹脂が好ましい。特に、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、スチレン及びα-メチルスチレンの少なくとも一方のモノマーに由来する疎水性ユニットとを有するアクリル系樹脂が好ましい。これらのアクリル系樹脂は、顔料との相互作用が生じやすいため、顔料を分散させるための樹脂分散剤として好適に利用することができる。
ウレタン系樹脂は、例えば、酸基を有しないポリイソシアネートに由来するユニット、酸基を有しないポリオールに由来するユニット、及び酸基を有するポリオールに由来するユニットを含む。ウレタン系樹脂は、酸基を有しないポリイソシアネートと、酸基を有しないポリオールと、酸基を有するポリオールとを反応させて得ることができる。また、ウレタン系樹脂は、ポリアミン、架橋剤、鎖延長剤などをさらに反応させたものであってもよい。
[水性媒体]
インクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性のインクである。インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.00質量%以上50.00質量%以下であることが好ましい。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.00質量%以上95.00質量%以下であることが好ましい。
[界面活性剤]
第2インクは、後述する界面活性剤群より選択される少なくとも1種の界面活性剤(所定の界面活性剤)を含有する。後述する界面活性剤群に含まれる界面活性剤は、いずれも、コンパクトな分子形状を持つ。これらの界面活性剤は、インクジェット用の水性インクに汎用のアセチレングリコール系のような界面活性剤に比して立体障害が少なく、顔料の粒子表面に速やかに配向しやすい。このため、後述する界面活性剤群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含有する第2インクを用いることで、顔料の凝集を抑制し、優れたワイピング性を維持することができる。さらに、長期間にわたって記録した場合であっても、高濃度で品位の高い画像を得ることができる。一方、後述する界面活性剤群に含まれない界面活性剤を用いた場合、立体障害によって顔料の粒子表面への配向が妨げられるので、ワイピング性を向上させる効果が実効的に得られない。
〔界面活性剤群を構成する界面活性剤〕
・スルホン酸型界面活性剤
・カルボン酸型界面活性剤
・リン酸型界面活性剤
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル
・飽和多価アルコールのエチレンオキサイド付加物
・エチレンオキサイド-プロピレンオキサイドブロック共重合体
・パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物
前述の界面活性剤群のなかでも、所定の界面活性剤としては、スルホン酸型界面活性剤、カルボン酸型界面活性剤、及びリン酸型界面活性剤の少なくともいずれかを用いることが好ましい。これらはアニオン性基を有する界面活性剤である。アニオン性基を有する界面活性剤は、その疎水性基と顔料の粒子表面との疎水性相互作用により、顔料の粒子表面に吸着する。これらの界面活性剤のアニオン性基によって、顔料の電気二重層の厚さが拡大し、電荷の反発により顔料の分散状態を安定に維持しやすくなるため、長期間にわたって記録した場合の吐出よれをさらに抑制することができる。なかでも、スルホン酸型界面活性剤がさらに好ましい。スルホン基は酸性度が高く、解離しやすい。このため、スルホン酸型界面活性剤の疎水性基が顔料の粒子表面に吸着すると、スルホン基によって顔料の電気二重層の厚さがさらに拡大し、電荷の反発により顔料の分散状態をより安定に維持することができる。
スルホン酸型界面活性剤としては、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
-R-SOM ・・・(1)
(前記一般式(1)中、Rはアルキル基を表す。Rは、単結合、エーテル基、又は-O-(CHCHO)-R-を表し、aは1以上の数を表し、Rはアルキレン基を表す。Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す)
一般式(1)中、Rはアルキル基を表す。アルキル基は直鎖であることが好ましく、その炭素数は1乃至18であることが好ましい。Rは、単結合、エーテル基、又は-O-(CHCHO)-R-を表す。Rが単結合である場合、Rと硫黄原子が直接結合していることを意味する。Rで表される-O-(CHCHO)-R-におけるaは1以上の数を表し、1乃至50であることが好ましい。Rは、アルキレン基を表す。アルキレン基は直鎖であることが好ましく、その炭素数は1乃至22であることが好ましく、12乃至18であることがさらに好ましい。Rが-O-(CHCHO)-R-であると、水溶解性が高くなり、水性インクに好適に適用することができる。このとき、aが50以下であると、インクの粘度を過度に高めることなく、インクの吐出性を安定に維持することができる。Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す。なかでも、Mは、水素原子、又はリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属であることが好ましい。
カルボン酸型界面活性剤としては、下記一般式(2)で表される化合物を挙げることができる。
-R-COOM ・・・(2)
(前記一般式(2)中、Rはアルキル基を表す。Rは、単結合、エーテル基、又は-O-(CHCHO)-R-を表し、bは1以上の数を表し、Rはアルキレン基を表す。Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す)
一般式(2)中、Rはアルキル基を表す。アルキル基は直鎖であることが好ましく、その炭素数は1乃至18であることが好ましい。Rは、単結合、エーテル基、又は-O-(CHCHO)-R-を表す。Rが単結合である場合、Rと炭素原子が直接結合していることを意味する。Rで表される-O-(CHCHO)-R-におけるbは1以上の数を表し、1乃至10であることが好ましい。Rは、アルキレン基を表す。アルキレン基は直鎖であることが好ましく、その炭素数は1乃至22であることが好ましく、12乃至18であることがさらに好ましい。Rが-O-(CHCHO)-R-であると、水溶解性が高くなり、水性インクに好適に適用することができる。このとき、bが10以下であると、インクの粘度を過度に高めることなく、インクの吐出性を安定に維持することができる。Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す。なかでも、Mは、水素原子、又はリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属であることが好ましい。
リン酸型界面活性剤としては、下記一般式(3)で表される化合物を挙げることができる。
-R-PO(OM) ・・・(3)
(前記一般式(3)中、Rはアルキル基を表す。Rは、単結合、エーテル基、又は-O-(CHCHO)-R-を表し、cは1以上の数を表し、Rはアルキレン基を表す。Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す)
一般式(3)中、Rはアルキル基を表す。アルキル基は直鎖であることが好ましく、その炭素数は1乃至18であることが好ましい。Rは、単結合、エーテル基、又は-O-(CHCHO)-R-を表す。Rが単結合である場合、Rとリン原子が直接結合していることを意味する。Rで表される-O-(CHCHO)-R-におけるcは1以上の数を表し、1乃至10であることが好ましい。Rは、アルキレン基を表す。アルキレン基は直鎖であることが好ましく、その炭素数は1乃至22であることが好ましく、12乃至18であることがさらに好ましい。Rが-O-(CHCHO)-R-であると、水溶解性が高くなり、水性インクに好適に適用することができる。このとき、cが10以下であると、インクの粘度を過度に高めることなく、インクの吐出性を安定に維持することができる。Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す。なかでも、Mは、水素原子、又はリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属であることが好ましい。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、下記一般式(4)で表される化合物である。
10-O-(CHCHO)-H ・・・(4)
(前記一般式(4)中、R10は炭化水素基を表す。dは5以上の数を表す)
一般式(4)中、R10は炭化水素基を表す。炭化水素基としては、アルキル基及びアルケニル基を挙げることができ、直鎖であることが好ましく、その炭素数は1乃至22であることが好ましい。dは5以上の数を表し、5乃至50であることが好ましい。dが5以上であると、水溶解性が高くなり、水性インクに好適に適用することができる。また、dが50以下であると、インクの粘度を過度に高めることなく、インクの吐出性を安定に維持することができる。
飽和多価アルコールのエチレンオキサイド付加物は、下記一般式(5)で表される化合物である。
11-[O-(CHCHO)-H ・・・(5)
(前記一般式(5)中、R11は、ヒドロキシ基以外の飽和多価アルコールの残基を表す。eは1以上の数を表す)
一般式(5)中、R11はヒドロキシ基以外の飽和多価アルコールの残基を表す。飽和多価アルコールの価数はfと等しく、3乃至10であることが好ましい。eは1以上の数を表し、1乃至20であることが好ましい。飽和多価アルコールのエチレンオキサイド付加物におけるeの合計は3乃至60であることが好ましく、3乃至30であることがさらに好ましい。
エチレンオキサイド-プロピレンオキサイドブロック共重合体としては、下記一般式(6)で表される化合物を挙げることができる。
HO-(CHCHO)-(CHCH(CH)O)-(CHCHO)-H
・・・(6)
(前記一般式(6)中、g、h、及びiはそれぞれ独立に、1以上の数を表す)
一般式(6)中、g、h、及びiはそれぞれ独立に、1以上の数を表し、1乃至20であることが好ましい。g+iと、hとのバランスにより、一般式(6)で表される化合物の親疎水性を調整することができる。
パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物としては、下記一般式(7)で表される化合物を挙げることができる。
F-(CF-(CHCHO)-H ・・・(7)
(前記一般式(7)中、j及びkはそれぞれ独立に、1以上の数を表す)
一般式(7)中、j及びkはそれぞれ独立に、1以上の数を表す。jは2乃至12であることが好ましく、2乃至6であることがさらに好ましい。また、kは2乃至13であることが好ましい。
第2インク中、所定の界面活性剤の含有量(質量%)は、第2インク全質量を基準として、5.00質量%以下であることが好ましく、0.10質量%以上2.00質量%であることがさらに好ましい。第2インク中の、所定の界面活性剤の含有量(質量%)は、顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.02倍以上であることが好ましい。上記の質量比率を0.02倍以上とすることで、凝集した顔料の隙間に所定の界面活性剤が入り込みやすく、凝集した顔料をより容易に再分散させることができる。さらに、ワイピング性がより向上させることが可能となり、長期間にわたって記録した場合であっても、吐出よれが生ずるのをさらに抑制することができる。第2インク中の、所定の界面活性剤の含有量(質量%)は、顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.30倍以下であることが好ましい。
第1インクは、前述の界面活性剤群から選択される所定の界面活性剤を実質的に含有しないことが好ましい。第1インク中に所定の界面活性剤が存在すると、第1インク中の顔料の凝集が抑制されるので、記録される画像の発色性がやや低下することがある。具体的には、第1インク中の所定の界面活性剤の含有量(質量%)は、第1インク全質量を基準として、0.01質量%以下であることが好ましく、0.00質量%であることがさらに好ましい。
第2インクには、所定の界面活性剤以外の界面活性剤(その他の界面活性剤)をさらに含有させることができる。その他の界面活性剤としては、その他のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及びその他のノニオン性界面活性剤などを挙げることができる。第2インクは、所定の界面活性剤に加えて、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物を含有することが好ましい。また、第1インクにも、その他の界面活性剤を含有させることができる。特に、第1インクが、第2インクに含有させる所定の界面活性剤とは異なる、その他の界面活性剤を含有することが好ましい。特に、第1インクが、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物を含有することが好ましい。インク中のその他の界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上5.00質量%以下であることが好ましく、0.10質量%以上2.00質量%以下であることがさらに好ましい。
[その他の成分]
インクには、さらに、尿素やその誘導体、トリメチロールプロパン、及びトリメチロールエタンなどの25℃で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。インク中の水溶性有機化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上10.00質量%以下であることが好ましい。また、インクには、上記成分以外にも必要に応じて、消泡剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
[インクの物性]
25℃におけるインクのpHは、7以上10以下であることが好ましい。第2インクのpHは、第1インクのpHよりも高いことが好ましい。一般的に、インクのpHが高いほどアニオン性基の解離度が高くなり、顔料の分散状態が安定に維持されやすい。このため、ワイピングにより押し流された第2吐出口列の周囲に付着していた不要なインクが、第1吐出口列の周囲に付着している不要なインクと混ざり合うと、第1吐出口列の周囲に付着している不要なインクのpHが上昇する。これにより、凝集した顔料が再分散しやすくなるので、ワイピング性がさらに向上し、長期間にわたって記録した場合であっても吐出よれが生ずるのをより抑制ことができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<顔料分散液の調製>
(自己分散顔料のアニオン性基の量)
流動電位滴定ユニット(PCD-500)を搭載した電位差自動滴定装置を使用し、5mmol/Lのメチルグリコールキトサンを滴定試薬として用いた電位差滴定により、顔料分散液中の自己分散顔料のアニオン性基の量を測定した。電位差自動滴定装置としては、商品名「AT-510」(京都電子工業製)を使用した。
(顔料分散液1~5)
水5.5gに濃塩酸5.0gを溶かした溶液を5℃に冷却した状態とし、この状態で表1に示す使用量の4-アミノフタル酸を加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れ、撹拌して溶液の温度を10℃以下に保持しながら、5℃のイオン交換水9.0gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かして得た溶液を加えた。15分間撹拌後、カーボンブラック(比表面積220m/g、DBP吸油量105mL/100g)6.0gを撹拌下で加え、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過し、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させた。その後、イオン交換法によりナトリウムイオンをカリウムイオンに置換して、カーボンブラックの粒子表面に-C-(COOK)基が結合した自己分散顔料を得た。適量の水を添加して顔料の含有量を調整し、顔料の含有量が15.0%である顔料分散液1~5を得た。得られた顔料分散液1~5中の自己分散顔料のアニオン性基の量を表1に示す。
Figure 2022091128000002
(顔料分散液6)
カーボンブラック(比表面積220m/g、DBP吸油量105mL/100g)をイオン交換水に予備分散させた後、8時間オゾン処理を行った。その後、水酸化カリウムを添加して混合物のpHを7程度に調整しながら、液-液衝突型の分散機を用いて混合物を3時間循環させた後、限外ろ過により精製した。次いで、水酸化カリウム水溶液でpHを10.0に調整し、カーボンブラックの粒子表面に-COOK基が結合した自己分散顔料を得た。適量の水を添加して顔料の含有量を調整し、顔料の含有量が15.0%である顔料分散液6を得た。得られた顔料分散液6中の自己分散顔料のアニオン性基の量は、0.40mmol/gであった。
(顔料分散液7)
酸価160mgKOH/g、重量平均分子量10,000のスチレン-アクリル酸共重合体を10%水酸化カリウム水溶液で中和した。カーボンブラック(比表面積220m/g、DBP吸油量105mL/100g)10.0部、中和したスチレン-アクリル酸共重合体(固形分)3.0部、及びイオン交換水85.0部を混合して混合物を得た。サンドグラインダーを使用して得られた混合物を1時間分散した後、遠心分離処理して粗大粒子を除去した。さらに、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)で加圧ろ過して、カーボンブラックが樹脂によって水中に分散された状態の顔料分散液7を得た。顔料分散液7中の顔料の含有量は15.0%、樹脂分散剤の含有量は4.5%であった。
(顔料分散液8)
顔料をC.I.ピグメントブルー15:3に変更したこと以外は、前述の顔料分散液7と同様の手順で顔料分散液8を得た。顔料分散液8中の顔料の含有量は15.0%、樹脂分散剤の含有量は4.5%であった。
(顔料分散液9)
顔料をC.I.ピグメントレッド122に変更したこと以外は、前述の顔料分散液7と同様の手順で顔料分散液9を得た。顔料分散液9中の顔料の含有量は15.0%、樹脂分散剤の含有量は4.5%であった。
(顔料分散液10)
顔料をC.I.ピグメントイエロー74に変更したこと以外は、前述の顔料分散液7と同様の手順で顔料分散液10を得た。顔料分散液10中の顔料の含有量は15.0%、樹脂分散剤の含有量は4.5%であった。
<染料水溶液の調製>
染料1(C.I.ダイレクトブラック195)及び染料2(C.I.ダイレクトイエロー132)をそれぞれ含有する染料水溶液1及び2を得た。得られた染料水溶液1及び2中の染料の含有量は、それぞれ10.0%であった。
<アクリル樹脂の調製>
スチレン81.0部、及びアクリル酸19.0部を常法により共重合させて、アクリル樹脂1を合成した。アクリル樹脂1の酸価と等モル量の水酸化カリウムでカルボン酸基を中和し、適量の純水を添加して、樹脂の含有量が20.00%であるアクリル樹脂1を含む液体を得た。アクリル樹脂1の酸価は148mgKOH/g、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量は10,000であった。
<界面活性剤の準備>
表2に示す界面活性剤を準備した。
Figure 2022091128000003
<インクの調製>
表3-1~3-4の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した。その後、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いてpHを調整した。ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過して、各インクを調製した。表3-1~3-4中、「Betafin BP20」は、デュポン製のトリメチルグリシンの商品名である。表3-1~3-4の下段に25℃におけるインクのpHを示す。インクのpHは、pHメーター(堀場製作所製)を使用して測定した。
Figure 2022091128000004
Figure 2022091128000005
Figure 2022091128000006
Figure 2022091128000007
<記録ヘッドの構成>
熱エネルギーを付与してインクを吐出させる方式の記録ヘッドを用意した。記録ヘッドを構成する記録素子基板には、512個の吐出口が600dpiの密度で配列された吐出口列が配置されている。1つの吐出口から吐出されるインク滴の質量は約5.5ngである。記録ヘッドは、図1に示すように、記録素子基板2が配置されたシリアル方式の記録ヘッド20である。この記録素子基板2には、2種のインクをそれぞれ吐出する第1吐出口列3及び第2吐出口列4が形成されている。
<インクジェット記録装置>
表4に示すインクジェット記録装置(記録装置1~4)を使用した。記録装置1~3のインク収容部に設けられたインク注入口は、いずれも開閉可能な注入口であり、記録装置4のインク収容部は脱着可能なカートリッジの形態であり、開閉可能なインク注入口は設けられていない。また、すべての記録装置のインク収容部には、外気と連通可能な連通口が設けられている。吐出口面のクリーニングには、ウレタン樹脂で形成された、厚さ0.5mmのブレード状のワイパを用いた。このワイパは、記録素子基板の第1吐出口列及び第2吐出口列の長さを含む幅を有する。ワイピングの際のワイパの移動速度は100mm/秒とした。記録装置1及び4のワイパは、吐出口列の配列方向と交差する方向に、第2吐出口列、第1吐出口列の順に一度の動作でワイピングする。記録装置2のワイパは、吐出口列の配列方向と平行な方向に、一度の動作でワイピングする。記録装置3のワイパは、吐出口列の配列方向と交差する方向に、第1吐出口列、第2吐出口列の順に一度の動作でワイピングする。これらのインクジェット記録装置では、1/600インチ×1/600インチの単位領域にインク滴を2滴付与する条件で記録した画像の記録デューティを100%と定義する。
Figure 2022091128000008
<評価>
上記のインクジェット記録装置を使用して以下の評価を行った。本発明では、以下に示す評価基準で、「AA」、「A」、及び「B」を許容できるレベル、「C」を許与できないレベルとした。評価結果を表5に示す。
(ワイピング性)
表5に示す種類の記録装置のインク収容部に、表5に示す種類のインクをそれぞれ収容量分充填した。インクの充填後、温度40℃、湿度15%の条件で2か月間放置し、インク収容部内のインクの顔料を沈降させた。温度15℃、相対湿度10%の条件で、ポンプを使用して記録ヘッドの吐出口から各インク10gを吸引した後、記録デューティ100%のベタ画像(18cm×2cm)を記録した。画像を1枚記録するごとに1回クリーニングする条件で、1,500枚の画像を記録するとともに、1,500回クリーニングした。その後、各吐出口からの吐出状態を確認するために、1つの吐出口から20滴のインクを直線状に吐出させて罫線を記録した。記録媒体としては、光沢紙(商品名「光沢ゴールド GL-101」、キヤノン製)を用いた。1,500枚の画像を記録(1,500回クリーニング)した後に記録した罫線における曲がりや途切れの状態を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがってワイピング性を評価した。吐出よれが生ずると、罫線が曲がったり、途切れたりすることから、連続したまっすぐな罫線が記録されている場合は、ワイピング性が良好であると言える。
AAA:すべての吐出口から正常にインクが吐出されていた。
AA:0%を超えて5%未満の吐出口でよれが生じていた。
A:5%以上10%未満の吐出口でよれが生じていた。
B:10%以上15%未満の吐出口でよれが生じていた。
C:15%以上の吐出口でよれが生じていた。
(発色性)
上記のインクジェット記録装置を使用し、2種の記録媒体(普通紙)に、3cm×2cmのベタ画像を記録した。1/600インチ×1/600インチの単位領域にブラックインクは約22ng、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクは約11ngをそれぞれ付与する条件で記録した。記録媒体としては、商品名「CS-680」(キヤノン製)、及び商品名「ブライトホワイト」(ヒューレッドパッカード製)を用いた。記録条件は、温度25℃、相対湿度50%とした。記録したベタ画像を温度25℃、相対湿度50%の環境下で1日放置した後、蛍光分光濃度計(商品名「FD-7」、コニカミノルタ製)を使用して画像の光学濃度を測定した。測定した光学濃度の平均値を算出し、以下に示す評価基準にしたがって発色性を評価した。光学濃度の基準値は、ブラックインクが「1.37」であり、カラーインク(シアン、マゼンタ、イエロー)が「1.08」である。
A:光学濃度の平均値が、基準値よりも0.02以上高かった。
B:光学濃度の平均値が、基準値の±0.01以内であった。
C:光学濃度の平均値が、基準値よりも0.02以上低かった。
Figure 2022091128000009
参考例1~4は、開閉可能なインク注入口を設けていない、カートリッジの形態のインク収容部を用いた例である。参考例1~4で用いた装置は、その他の実施例及び比較例で用いた装置と比較して、インク収容部のインク収容量が少なかったため、インク中の顔料の沈降による問題が生じなかった。このため、ワイピング性は低下しなかったが、他の実施例と同様の枚数の画像を記録するのにインク収容部(インクカートリッジ)を複数回交換する必要があり、生産性が劣っていた。参考例5では、色材として染料を含有するインクを用いたため、色材が沈降せず、ワイピング性が低下しなかった。
(実施例27)
4種のインクをそれぞれ吐出する第1吐出口列、第2吐出口列、第3吐出口列、及び第4吐出口列が形成された記録ヘッドを準備した。ワイパによるワイピングの順序は、上流側から第4吐出口列、第3吐出口列、第2吐出口列、第1吐出口列とした。第1吐出口列からインク1、第2吐出口列からインク14、第3吐出口列からインク15、第4吐出口列からインク16をそれぞれ吐出する条件で、前述のワイピング性の評価を行った。その結果、実施例1と同様に「AAA」ランクの評価であった。

Claims (20)

  1. 開閉可能なインク注入口が設けられた、顔料を含有する水性インクを補充可能なインク収容部と、前記水性インクを吐出する複数の吐出口が所定方向に配列した複数の吐出口列が形成された記録素子基板を有する記録ヘッドと、前記記録素子基板の前記吐出口列が形成された面をワイピングするクリーニング手段と、を備えるインクジェット記録装置を使用し、前記吐出口から吐出した前記水性インクを記録媒体に付与して画像を記録する工程を有するインクジェット記録方法であって、
    前記水性インクが、第1インク及び第2インクを含むとともに、前記複数の吐出口列が、前記第1インクを吐出する第1吐出口列及び前記第2インクを吐出する第2吐出口列を含み、
    前記第2インクが、スルホン酸型界面活性剤、カルボン酸型界面活性剤、リン酸型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、飽和多価アルコールのエチレンオキサイド付加物、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイドブロック共重合体、及びパーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含有し、
    前記クリーニング手段が、前記第1吐出口列及び前記第2吐出口列の配列方向と交差する方向に、前記第2吐出口列及び前記第1吐出口列の順に一度の動作で前記吐出口列が形成された面をワイピングする手段であることを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 前記第2インク中の、前記界面活性剤の含有量(質量%)が、前記顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.02倍以上である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記第2インク中の、前記界面活性剤の含有量(質量%)が、前記顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.30倍以下である請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記界面活性剤が、スルホン酸型界面活性剤、カルボン酸型界面活性剤、及びリン酸型界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記界面活性剤が、スルホン酸型界面活性剤である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記第2インク中の前記界面活性剤の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.10質量%以上2.00質量%である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記第1インクが、前記界面活性剤を含有しない請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  8. 前記第1インクがブラックインクであり、前記第2インクがカラーインクである請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  9. 前記第1インク中の前記顔料が、その粒子表面に直接又は他の原子団を介してアニオン性基が結合した自己分散顔料である請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  10. 前記第1インク中の前記自己分散顔料のアニオン性基の量が、0.05mmol/g以上1.50mmol/g以下である請求項9に記載のインクジェット記録方法。
  11. 前記第1インク中の前記顔料が、カーボンブラックである請求項9又は10に記載のインクジェット記録方法。
  12. 前記第1インク中の前記顔料の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.50質量%以上15.00質量%以下である請求項1乃至11のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  13. 前記第2インク中の前記顔料が、樹脂分散剤により分散された顔料である請求項1乃至12のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  14. 前記第2インク中の前記顔料が、有機顔料である請求項1乃至13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  15. 前記第2インク中の前記顔料の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.50質量%以上15.00質量%以下である請求項1乃至14のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  16. 前記第1インクのpHが、7以上10以下である請求項1乃至15のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  17. 前記第2インクのpHが、7以上10以下である請求項1乃至16のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  18. 前記第2インクのpHが、前記第1インクのpHよりも高い請求項1乃至17のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  19. 前記記録ヘッドが、シリアル方式の記録ヘッドである請求項1乃至18のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  20. 開閉可能なインク注入口が設けられた、顔料を含有する水性インクを補充可能なインク収容部と、前記水性インクを吐出する複数の吐出口が所定方向に配列した複数の吐出口列が形成された記録素子基板を有する記録ヘッドと、前記記録素子基板の前記吐出口列が形成された面をワイピングするクリーニング手段と、を備えるインクジェット記録装置であって、
    前記水性インクが、第1インク及び第2インクを含むとともに、前記複数の吐出口列が、前記第1インクを吐出する第1吐出口列及び前記第2インクを吐出する第2吐出口列を含み、
    前記第2インクが、スルホン酸型界面活性剤、カルボン酸型界面活性剤、リン酸型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、飽和多価アルコールのエチレンオキサイド付加物、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイドブロック共重合体、及びパーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含有し、
    前記クリーニング手段が、前記第1吐出口列及び前記第2吐出口列の配列方向と交差する方向に、前記第2吐出口列及び前記第1吐出口列の順に一度の動作で前記吐出口列が形成された面をワイピングする手段であることを特徴とするインクジェット記録装置。

JP2021190000A 2020-12-08 2021-11-24 インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置 Pending JP2022091128A (ja)

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020203434 2020-12-08
JP2020203434 2020-12-08
JP2020203433 2020-12-08
JP2020203433 2020-12-08

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2022091128A true JP2022091128A (ja) 2022-06-20
JP2022091128A5 JP2022091128A5 (ja) 2024-11-25

Family

ID=82060674

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021190000A Pending JP2022091128A (ja) 2020-12-08 2021-11-24 インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2022091128A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2017001392A (ja) インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置
JP2004339284A (ja) インクジェット記録用水性インクセット
JP2018069652A (ja) インクジェット記録方法
US10563076B2 (en) Ink jet recording method and ink jet recording apparatus
JP7379037B2 (ja) インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置
JP2020059268A (ja) インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置
EP1607454A1 (en) Ink set for ink-jet recording, method for producing the same, and ink-jet printer
JP2022091128A (ja) インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置
JP7391592B2 (ja) インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置
US10301495B2 (en) Ink jet recording method and ink jet recording apparatus
CN116766779A (zh) 记录方法及记录装置
JP7091157B2 (ja) インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置
US10828897B2 (en) Ink jet recording method and ink jet recording apparatus
JP7023615B2 (ja) インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置
JP6887873B2 (ja) インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置
US11654693B2 (en) Ink jet recording method and ink jet recording apparatus
JP2017213798A (ja) インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置
JP2022091125A (ja) インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置
JP2020059275A (ja) インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置
US20250051596A1 (en) Ink jet recording method and ink jet recording apparatus
US10501650B2 (en) Ink jet recording method and ink jet recording apparatus
JP7030593B2 (ja) インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置
JP2024178123A (ja) インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、及び水性インク
EP3257675B1 (en) Ink jet recording method, recording head, and ink jet recording apparatus
JP2024174809A (ja) インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20241114

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20241114