JP2022091125A - インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】その上部にインク注入口が設けられたインク収容部を備えるインクジェット記録装置を使用し、顔料を含有する複数の水性インクを記録媒体に付与して多次色の画像を記録した場合であっても、長期間にわたって安定して、耐擦過性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供する。【解決手段】顔料を含有する複数の水性インクと、その上部にインク注入口が設けられたインク収容部と、水性インクを吐出する吐出口が形成された記録ヘッドと、インク供給経路とを備えるインクジェット記録装置を使用して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法である。水性インクが、記録媒体に先に付与される第1インクと、記録媒体に後に付与される第2インクとを含み、第1インクの再分散性指数が、0.90以上である。【選択図】なし
Description
本発明は、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録方法は、液体であるインクを利用して入力画像データを出力画像に変換する方法であり、記録ヘッドの微細な吐出口からインクを吐出して、記録媒体にインクを付与して画像を記録する方法である。インクジェット記録方法によれば、写真や文書などの画像を様々な記録媒体に記録することが可能である。また、写真画質の画像を光沢紙などのコート層を有する記録媒体に記録するのに適したインクや、文書などを普通紙などのコート層を有しない記録媒体に記録するのに適したインクなど、種々のインクが検討されている。
近年、記録媒体として普通紙などを用い、文字や図表などを含むビジネス文章などの記録にもインクジェット記録方法が利用されており、このような用途への使用頻度が高まっている。このような用途においては、高濃度で耐水性に優れた画像を記録可能であることが要求されるので、顔料インクが利用される場合が多い。さらに、記録可能枚数を多くして高い生産性を実現することが要求されている。これらの要求に対応すべく、記録ヘッドにインクを供給するためのインク収容部の容量が増大する傾向にある。さらに、インク収容部を交換せず、インク収容部の上部にあるインク供給口からインクを補充(注入)することができるインク収容部が用いられている。
また、インクジェット記録装置には、設置場所の制約などから、小型化への強いニーズがある。このような状況のもと、大容量のインク収容部を搭載したインクジェット記録装置に、顔料を含有するインクを適用することが提案されている(特許文献1及び2)。
本発明者らは、生産性を高めながら耐水性が向上した画像を記録すべく、顔料を色材として含有する複数の水性インクをそれぞれ収容する大容量のメインタンクを備えたインクジェット記録装置について検討した。具体的には、特許文献1及び2で提案された構成を有する記録装置であって、その上部にインク注入口を設けた大容量のメインタンクを備えるインクジェット記録装置を使用して、様々な記録媒体に画像を記録した。その結果、上記の構成を有するインクジェット記録装置を使用することで、発色性や堅牢性に優れた画像を記録できることがわかった。
さらに、本発明者らは、上記の構成を有するインクジェット記録装置を長期間放置してから同様の評価を実施した。その結果、特に光沢紙などのコート層を有する記録媒体に記録した多次色(2次色)画像が、インクの付与から5~15分間程度経過しても記録媒体から剥がれやすく、耐擦過性が不足することが判明した。
したがって、本発明の目的は、その上部にインク注入口が設けられたインク収容部を備えるインクジェット記録装置を使用し、顔料を含有する複数の水性インクを記録媒体に付与して多次色の画像を記録した場合に生ずる課題を解決することにある。すなわち、上記のインクジェット記録装置を使用した場合であっても、長期間にわたって安定して、耐擦過性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することにある。
すなわち、本発明によれば、顔料を含有する複数の水性インクと、前記水性インクをそれぞれ収容する、その上部にインク注入口が設けられたインク収容部と、前記インク収容部から供給される前記水性インクを吐出する吐出口が形成された記録ヘッドと、前記インク収容部から前記記録ヘッドに前記水性インクを供給するインク供給経路と、を備えるインクジェット記録装置を使用し、前記吐出口から吐出した前記水性インクを記録媒体に付与して画像を記録する工程を有するインクジェット記録方法であって、前記水性インクが、前記記録媒体に先に付与される第1インクと、前記記録媒体における前記第1インクが付与された領域の少なくとも一部に重なるように、前記記録媒体に後に付与される第2インクと、を含み、下記式(1)で算出される前記第1インクの再分散性指数が、0.90以上であることを特徴とするインクジェット記録方法が提供される。
再分散性指数=B/A ・・・(1)
A:前記第1インク2.0gを30℃、相対湿度10%の環境下で16時間放置して得た第1残渣の質量(g)
B:前記第1残渣に前記第1インク1.2gを添加して30秒間撹拌及び60秒間静置した後、流動性を有する成分を除去して得た第2残渣の質量(g)
再分散性指数=B/A ・・・(1)
A:前記第1インク2.0gを30℃、相対湿度10%の環境下で16時間放置して得た第1残渣の質量(g)
B:前記第1残渣に前記第1インク1.2gを添加して30秒間撹拌及び60秒間静置した後、流動性を有する成分を除去して得た第2残渣の質量(g)
本発明によれば、その上部にインク注入口が設けられたインク収容部を備えるインクジェット記録装置を使用し、顔料を含有する複数の水性インクを記録媒体に付与して多次色の画像を記録した場合に生ずる課題を解決することができる。すなわち、本発明によれば、上記のインクジェット記録装置を使用した場合であっても、長期間にわたって安定して、耐擦過性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供することができる。また、本発明によれば、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することができる。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。インクジェット記録装置の本体内に設置された容量の相対的に多いインク収容部のことを「メインタンク」、容量の相対的に少ないインク収容部のことを「サブタンク」と記載することがある。
本発明者らは、まず、大容量のインク収容部であるメインタンクを備えたインクジェット記録装置を用意し、顔料を色材として含有する複数の水性インクをメインタンクにそれぞれ注入した。そして、このインクジェット記録装置を使用し、インクの注入直後と、インクの注入から長期間経過後に、同様の条件で2次色画像を記録して比較した。この際には、コート層を有する記録媒体である光沢紙を用いた。その結果、インクの注入から長期間経過後に記録した画像の発色性が向上する場合があることが判明した。長期間経過したことで顔料が沈降し、メインタンクの下部に存在するインクの顔料濃度が上昇したため、画像の発色性が向上したと考えられる。つまり、長期間経過後に記録した画像は、注入直後に記録した画像と比較して、画像を構成する顔料層が厚くなっており、耐擦過性が低下していると推測される。特に、インクの付与量が多くなる2次色画像の場合、指で触れた程度の擦過であっても顔料層が剥離すると考えられる。
次に、本発明者らは、インク収容部の構成について詳細に検討した。具体的には、従来の交換方式のタンクや容量の異なるメインタンクを用意するとともに、これらのタンクにインクを注入して長期間放置し、インク収容部の下部に存在するインクの顔料濃度を比較した。その結果、インク収容部の形状(アスペクト比、すなわち底面積と高さの比)によって若干の違いが生じるものの、放置する時間を揃えて比較した場合、インク収容部の下部に存在するインクの顔料濃度に大きな違いが生じないことがわかった。しかし、インク収容部の下部から抜き取ったインクの顔料濃度の推移を確認すると、インク収容部の容量が大きいほど、放置前の顔料濃度から上昇した部分を消費するまでに必要なインク量が多くなることがわかった。すなわち、従来の交換方式のタンクの場合、顔料は沈降するが、大容量のメインタンクと比較すると高顔料濃度となったインクの量が少ないため、排出や記録によって放置前の平均的な顔料濃度へと速やかに戻りやすい。そして、大容量のメインタンクの場合、放置前の平均的な顔料濃度へと戻るまでに消費するインク量が多いため、記録される画像の耐擦過性が低下すると考えられる。インク収容部内における顔料の沈降は、例えば、インク収容部内に撹拌機構を組み込むことで緩和することができる。しかし、撹拌機構を組み込むことで記録装置が大型化するといったデメリットが発生する。
そこで、本発明者らは、上部にインク注入口が設けられるような大容量のメインタンクと、顔料を含有する複数の水性インクとを組み合わせた場合であっても、長期間にわたって安定して、耐擦過性に優れた画像を記録すべく、さらに検討した。具体的には、顔料を含有する複数の水性インクをそれぞれ注入した大容量のインクタンクを備えるインクジェット記録装置を使用し、2次色画像を記録する際のインク滴の浸透挙動を観察した。記録媒体にインク滴を1滴付与すると、付与されたインク中の液体成分が記録媒体の内部へと速やかに浸透するとともに、顔料などの液体に不溶な成分によって記録媒体の表面上に顔料層が形成される。その後、インク滴を2滴目、3滴目、・・・と重ねて記録媒体に付与すると、液体成分の浸透に要する時間が徐々に長くなる。2次色などの多次色画像を記録する場合、単位面積当たりのインクの付与量が多くなるため、記録直後における記録媒体上の顔料層は湿潤状態であり、顔料間の結着力が弱く、耐擦過性が低い。そして、時間経過にしたがって、液体成分が記録媒体の内部に浸透するとともに、顔料層が乾燥するので、耐擦過性が徐々に高まると考えられる。
本発明者らは、インクの付与量が多い場合であっても、長期間にわたって安定して、耐擦過性に優れた画像を記録すべく、記録直後における記録媒体上の顔料層(画像)の湿潤状態を短くするための要件について検討した。その結果、再分散性指数が0.90以上のインクを記録媒体に先に付与することで、長期間にわたって安定して、耐擦過性に優れた多次色の画像を記録可能となることを見出した。前述の通り、記録直後における記録媒体上の顔料層は湿潤状態となっている。記録媒体に先に付与されたインク中の顔料は、液体成分の浸透及び乾燥にともなって記録媒体上で徐々に凝集する。しかし、後に付与されたインクの液体成分によって、凝集した顔料は再分散してしまう。すなわち、多次色の画像を記録する場合、顔料の凝集と再分散が生じていると考えられる。
インクの再分散性指数は、以下のように定義される。まず、インク2.0gを30℃、相対湿度10%の環境下で16時間放置して得たインク残渣(第1残渣)の質量A(g)を測定する。次に、得られたインク残渣(第1残渣)にインク1.2gを添加して30秒間撹拌及び60秒間静置する。その後、流動性を有する成分を除去して得たインク残渣(第2残渣)の質量B(g)を測定する。そして、第1残渣の質量A(g)に対する、第2残渣の質量B(g)の比(B/A)の値を、インクの再分散性指数と定義する。
再分散性指数の値が大きいインクは、顔料が一旦凝集すると再分散しにくい。記録媒体に先に付与されるインク(第1インク)の再分散性指数が0.90以上であると、その後にインク(第2インク)が付与されても、記録媒体上で凝集した第1インク中の顔料は容易には再分散しない。このため、長期間放置して顔料濃度が高まったインクで多次色画像を記録した場合であっても、耐擦過性に優れた画像を記録できるものと考えられる。
<インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録方法は、顔料を含有する複数の水性インクと、インク収容部と、水性インクを吐出する吐出口が形成された記録ヘッドと、インク供給経路とを備えるインクジェット記録装置を使用して、記録媒体に画像を記録する工程を有する。インク収容部は、複数の水性インクをそれぞれ収容する、その上部にインク注入口が設けられた部材である。記録ヘッドには、インク収容部から供給される水性インクを吐出する吐出口が形成されている。インク供給経路は、インク収容部から記録ヘッドに水性インクを供給する、チューブなどの部材である。本発明のインクジェット記録方法は、記録ヘッドの吐出口から吐出した水性インクを記録媒体に付与して画像を記録する工程を有する。複数の水性インクは、記録媒体に先に付与される第1インクと、記録媒体における第1インクが付与された領域の少なくとも一部に重なるように、記録媒体に後に付与される第2インクとを含む。そして、下記式(1)で算出される第1インクの再分散性指数が、0.90以上である。
再分散性指数=B/A ・・・(1)
A:第1インク2.0gを30℃、相対湿度10%の環境下で16時間放置して得た第1残渣の質量(g)
B:第1残渣に第1インク1.2gを添加して30秒間撹拌及び60秒間静置した後、流動性を有する成分を除去して得た第2残渣の質量(g)
本発明のインクジェット記録方法は、顔料を含有する複数の水性インクと、インク収容部と、水性インクを吐出する吐出口が形成された記録ヘッドと、インク供給経路とを備えるインクジェット記録装置を使用して、記録媒体に画像を記録する工程を有する。インク収容部は、複数の水性インクをそれぞれ収容する、その上部にインク注入口が設けられた部材である。記録ヘッドには、インク収容部から供給される水性インクを吐出する吐出口が形成されている。インク供給経路は、インク収容部から記録ヘッドに水性インクを供給する、チューブなどの部材である。本発明のインクジェット記録方法は、記録ヘッドの吐出口から吐出した水性インクを記録媒体に付与して画像を記録する工程を有する。複数の水性インクは、記録媒体に先に付与される第1インクと、記録媒体における第1インクが付与された領域の少なくとも一部に重なるように、記録媒体に後に付与される第2インクとを含む。そして、下記式(1)で算出される第1インクの再分散性指数が、0.90以上である。
再分散性指数=B/A ・・・(1)
A:第1インク2.0gを30℃、相対湿度10%の環境下で16時間放置して得た第1残渣の質量(g)
B:第1残渣に第1インク1.2gを添加して30秒間撹拌及び60秒間静置した後、流動性を有する成分を除去して得た第2残渣の質量(g)
また、本発明のインクジェット記録装置は、顔料を含有する複数の水性インクと、インク収容部と、水性インクを吐出する吐出口が形成された記録ヘッドと、インク供給経路とを備える。インク収容部は、複数の水性インクをそれぞれ収容する、その上部にインク注入口が設けられた部材である。記録ヘッドには、インク収容部から供給される水性インクを吐出する吐出口が形成されている。インク供給経路は、インク収容部から記録ヘッドに水性インクを供給する、チューブなどの部材である。複数の水性インクは、記録媒体に先に付与される第1インクと、記録媒体における第1インクが付与された領域の少なくとも一部に重なるように、記録媒体に後に付与される第2インクとを含む。そして、前記式(1)で算出される第1インクの再分散性指数が、0.90以上である。
(インクジェット記録装置)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同じ機能を有するものには同じ符号をつけ、その説明を省略する場合がある。図1は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態の外観を模式的に示す斜視図である。図1に示す実施形態のインクジェット記録装置1は、筐体11と、筐体11の内部に配置される、大容量のインク収容容器12とを備える。インク収容容器12には、記録媒体に付与される液体であるインクが収容(充填)されている。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同じ機能を有するものには同じ符号をつけ、その説明を省略する場合がある。図1は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態の外観を模式的に示す斜視図である。図1に示す実施形態のインクジェット記録装置1は、筐体11と、筐体11の内部に配置される、大容量のインク収容容器12とを備える。インク収容容器12には、記録媒体に付与される液体であるインクが収容(充填)されている。
図2は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す斜視図である。本実施形態のインクジェット記録装置は、X方向(主走査方向)に記録ヘッドを往復走査させて記録動作を行う、いわゆるシリアル方式のインクジェット記録装置である。記録媒体101は、搬送ローラ107によってY方向(副走査方向)へと間欠的に搬送される。キャリッジ103に搭載された記録ユニット102は、記録媒体101の搬送方向であるY方向と直交する方向であるX方向(主走査方向)に往復走査される。記録媒体101のY方向への搬送と、記録ユニット102のX方向への往復走査と、により記録動作が行われる。記録ユニット102は、供給されるインクを複数の吐出口から吐出するインクジェット方式の記録ヘッド203(図3)と、第2インク収容部としてのサブタンク202(図3)とで構成され、キャリッジ103に搭載される。キャリッジ103は、X方向に沿って配置されたガイドレール105に沿って移動可能に支持されており、ガイドレール105と並行に移動する無端ベルト106に固定されている。無端ベルト106はモータの駆動力によって往復運動し、それによってキャリッジ103がX方向に往復走査される。
メインタンク収容部108の内部には、第1インク収容部としてのメインタンク201が収納される。メインタンク収容部108のメインタンク201と、記録ユニット102のサブタンク202とは、インク供給経路であるインク供給チューブ104によって接続される。インクは、メインタンク201からインク供給チューブ104を介してサブタンク202(図3)に供給された後、記録ヘッド203の吐出口から吐出される。メインタンク201、インク供給チューブ104、及びサブタンク202は、いずれもインクの種類に対応した数で設けることができる。
メインタンク201の上部には、インクジェット記録装置の外部からメインタンク201にインクを注入するためのインク注入口205が設けられている。インクジェット記録装置を初めて使用するときや、インク量が減少したときなどに、インクジェット記録装置の内部に載置された状態のメインタンクに、インクボトルからインクを注入する。つまり、メインタンクはインクジェット記録装置の内部に据え置かれ、それ自体が交換されることはない。
図3は、インク供給系の一例を概略的に示す模式図である。メインタンク201に収容されたインク(ハッチングで示す)は、インク供給チューブ104を介してサブタンク202に供給された後、記録ヘッド203へと供給される。メインタンク201には大気連通部としての気体導入チューブ204が接続される。記録が行われ、インクが消費されると、サブタンク202にメインタンク201からインクが供給され、メインタンク201内のインクが減少する。すると、その一端が大気に開放されている気体導入チューブ204からメインタンク201内に空気が導入されることによって、インク供給系において、インクを保持するための内部負圧が略一定に保たれる。
メインタンク201は、記録可能枚数を多くすることで高い生産性を実現するために、インク最大収容量V1(mL)を多くすることが好ましい。具体的には、メインタンク201のインク最大収容量V1(mL)は、60mL以上300mL以下であることが好ましく、100mL以上250mL以下であることがさらに好ましい。また、メインタンク201の初期のインク注入量は、インク最大収容量を基準として、95%程度までとすることが好ましい。
サブタンク202も、メインタンク201からのインク供給の頻度を低減したり、記録ヘッド203へのインク供給を安定に行ったりするためには、インク最大収容量V2(mL)を多くすることが好ましい。但し、例えば、図1に示すようなシリアル方式として、キャリッジ103にサブタンク202を搭載する形態を想定すると、サブタンク202のインク最大収容量V2(mL)は多くし過ぎないことが好ましい。すなわち、あまりに多くのインクがサブタンク202に収容された場合、記録ユニット102の大型化を招き、キャリッジ103の移動速度が低下したり、キャリッジ103を移動させる無端ベルト106やモータの強度を高めたりする必要が生じる。したがって、サブタンク202のインク最大収容量V2(mL)は、1mL以上20mL以下であることが好ましく、2mL以上10mL以下であることがさらに好ましい。
メインタンク201及びサブタンク202の筺体は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、及びこれらの混合物や改質物などの熱可塑性樹脂で形成されている。筺体の内部には、インクを保持するための負圧を発生しうるインク吸収体を配設してもよい。インク吸収体としては、ポリプロピレンやポリウレタンなどの繊維を圧縮したものが好ましい。また、インク吸収体を配設せず、筺体内部にインクを直接貯留する形態としてもよい。
記録ユニット102は、記録ヘッド203と、サブタンク202とで構成される。記録ヘッド203が組み込まれたヘッドカートリッジである記録ユニット102にサブタンク202を装着するとともに、サブタンク202を装着した記録ユニット102をキャリッジ103に装着する形態としてもよい。さらに、サブタンク202と記録ヘッド203とで一体的に構成された記録ユニット102を、キャリッジ103に装着する形態としてもよい。なかでも、図2及び3に示すように、サブタンク202と記録ヘッド203とが一体的に構成されたカートリッジ形態の記録ユニット102が、キャリッジ103に装着されていることが好ましい。さらに、サブタンクが熱可塑性樹脂で形成された筺体であるとともに、記録ヘッドを備えた記録素子基板が、放熱板などの他の部材を介在させることなくサブタンクに直接貼り合わされていることが好ましい。
インク供給チューブ104は、キャリッジ103に搭載された記録ユニット102を構成するサブタンク202に接続している。このため、インク供給チューブ104は、キャリッジ103の往復走査に追従して装置内を引き回される。したがって、インク供給チューブ104を構成する材料としては、キャリッジ103の頻繁な往復走査に耐えうる柔軟性を有するものを選択して用いる必要がある。このため、インク供給チューブ104は、樹脂材料で形成されている。
インク供給チューブは、樹脂材料を管状に成形した部材である。チューブを構成する樹脂材料は、単一の樹脂材料であっても、2種以上の樹脂材料の組み合わせであってもよい。また、各種の添加剤を配合した樹脂材料であってもよい。チューブの構造は、単層構造であっても積層構造であってもよい。樹脂材料としては、成形性、ゴム弾性、及び柔軟性に優れることから熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系、ウレタン系、エステル系、スチレン系、塩化ビニル系などの樹脂を挙げることができる。なかでも、柔軟性及びゴム弾性に特に優れているため、スチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。樹脂材料に配合される添加剤としては、例えば、軟化剤、滑剤、界面活性剤、酸化防止剤、老化防止剤、接着付与剤、顔料などを挙げることができる。
チューブの内径や肉厚は、成形などの生産性、記録装置内で引き回される際の曲げ剛性、インク供給性、ガスバリア性などの観点から、適宜設定される。チューブの内径は、1mm以上5mm以下であることが好ましく、1mm以上3mm以下であることがさらに好ましい。また、チューブの肉厚は、0.5mm以上5mm以下であることが好ましく、0.5mm以上3mm以下であることがさらに好ましい。
メインタンク201に収容されたインクが減少した場合、第1バルブ206を作動させてインク供給チューブ104を閉塞した後、メインタンク201のインク注入口205を開放してメインタンク201にインクを注入する。第1バルブ206を作動させず、インク供給チューブ104を閉塞しない状態でインク注入口205を開けると、インクを保持するための負圧が損なわれ、記録ヘッド203の吐出口からインクが漏れてしまう。また、メインタンク201にインクを注入する際には、第2バルブ207を作動させて気体導入チューブ204を閉塞した後、インク注入口205を開けるようにすることができる。このような構成とすることによって、メインタンク201から気体導入チューブ204の方向へとインクが流れるのを堰き止めることができる。また、第1バルブ206及び第2バルブ207を連動して作動させることで、インクの漏れをより確実に抑制することができる。
インク注入口205はメインタンク201の上部に設けられている。メインタンク201の上部は、図2に示すようなメインタンク201の上面に限られず、メインタンク201のインク最大収容量の半分を超える領域であれば、側面などのいずれの位置であってもよい。メインタンク201の上部からインクを注入する形態はユーザビリティには優れる。但し、このような形態の場合、インクの注入時に生じる対流によっても沈降した顔料が含まれるインクを十分に混ぜることは困難であり、メインタンクの下部からインクを注入する場合と比較しても、顔料の濃度勾配を解消するのは困難である。
産業印刷用途などをはじめとした大型のインクジェット記録装置の場合、インクの沈降対策がなされている場合がある。沈降対策機構としては、インク収容部内のインクを流動させる撹拌機構;インク流路を経由する循環経路内でインクを流動させるインク流動機構;及びインク収容部の上部と下部からインクを供給する機構;などを挙げることができる。このような機構を備える記録装置では、本発明が解決しようとする課題が発生することはない。しかし、オフィスや家庭で使用する小型のインクジェット記録装置については、本体の小型化やコストに対する市場の要求が高い。これらの要求に対応するため、オフィスや家庭で使用する記録装置は、通常、沈降対策機構を備えておらず、本発明のインクジェット記録装置も、このような沈降対策機構を備えていない。
記録ヘッド203のインク吐出方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式を挙げることができる。なかでも、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが好ましい。
(記録工程)
本発明のインクジェット記録方法は、上記のインクジェット記録装置を使用して画像を記録する工程(記録工程)を有する。記録工程では、具体的には、記録ヘッドの吐出口から吐出したインクを記録媒体に付与して画像を記録する。画像を記録する対象の記録媒体としては、どのようなものを用いてもよい。なかでも、普通紙や非コート紙などのコート層を有しない記録媒体、及び、光沢紙やアート紙などのコート層を有する記録媒体のような、浸透性を有する紙を用いることが好ましい。コート層を有しない記録媒体では、顔料が沈みやすいため、記録媒体の表面上に形成される顔料層が薄くなりやすく、耐擦過性の課題が生じにくい傾向にある。一方、コート層を有する記録媒体では、顔料が沈みにくいため、顔料層も厚くなりやすく、耐擦過性の課題が顕著に生じやすいが、本発明の構成によれば、コート層を有する記録媒体においても耐擦過性の低下を有効に抑制することができる。
本発明のインクジェット記録方法は、上記のインクジェット記録装置を使用して画像を記録する工程(記録工程)を有する。記録工程では、具体的には、記録ヘッドの吐出口から吐出したインクを記録媒体に付与して画像を記録する。画像を記録する対象の記録媒体としては、どのようなものを用いてもよい。なかでも、普通紙や非コート紙などのコート層を有しない記録媒体、及び、光沢紙やアート紙などのコート層を有する記録媒体のような、浸透性を有する紙を用いることが好ましい。コート層を有しない記録媒体では、顔料が沈みやすいため、記録媒体の表面上に形成される顔料層が薄くなりやすく、耐擦過性の課題が生じにくい傾向にある。一方、コート層を有する記録媒体では、顔料が沈みにくいため、顔料層も厚くなりやすく、耐擦過性の課題が顕著に生じやすいが、本発明の構成によれば、コート層を有する記録媒体においても耐擦過性の低下を有効に抑制することができる。
記録方式としては、記録媒体の搬送方向(副走査方向)に直交する主走査方向に記録ヘッドを往復走査しながら画像を記録するシリアル方式を挙げることができる。また、記録媒体(用紙)幅相当の長尺の記録ヘッド(ラインヘッド)を用い、記録媒体を搬送しながら画像を記録するライン方式を挙げることができる。後述するスキャンディレイを実施するには、シリアル方式の記録ヘッドを用いることが好ましい。以下、シリアル方式の記録ヘッドを用いる場合を例に挙げて記録工程について説明する。
図4は、記録ヘッドにおける吐出口列の配置例を示す模式図である。図4では、インクジェット記録装置の本体に装着された記録ヘッドを記録媒体側から見た状態を示している。図4に示すように、4列の吐出口列21~24が設けられた記録素子基板1100が基材1000に接続されることで、記録ヘッドが形成される。図示する例では、吐出口列21~24にそれぞれ連通するインク供給経路に異なる種類のインクを注入することで、最大4種類のインクを吐出することができる。そして、1回の記録走査により、記録媒体上の単位領域に吐出口列の配列順にインクを重ねて付与することができる。単位領域としては、記録ヘッドの解像度に対応する「1画素」、1画素を任意の数に分割した領域、記録ヘッドの1回の主走査で記録可能な領域に対応する「1バンド」などの任意の領域として設定することができる。
図4に示す構成の記録ヘッドを用いる場合、主走査方向によって、記録媒体へのインクの付与順序が異なる。吐出口列が非対称に配列された記録ヘッドを利用する場合、本発明のインクジェット記録方法では、インクの付与順序が重要であることから、一方の主走査方向のみで記録すればよい。また、主走査方向によらずに同一の付与順序とするには、吐出口列の配列を対称に配列すればよい。このように、図4に示す構成の記録ヘッドを用いて、同一(1回の)記録走査により、記録媒体上の単位領域に複数のインクを付与する記録方法を「0スキャンディレイ記録」という。
本発明のインクジェット記録方法では、記録媒体の単位領域に1回の主走査で画像を記録する1パス記録であってもよく、複数回の主走査で画像を記録するマルチパス記録であってもよい。インクの浸透や乾燥などの観点から、マルチパス記録が好ましい。また、第1インクを付与してから、第2インクを付与するまでの間の時間が長いほど好ましい。そして、シリアル方式の記録ヘッドを用いる場合、単位領域に1回目の記録ヘッドの主走査で第1インクを付与した後、2回目の記録ヘッドの主走査で第2インクを付与して画像を記録する、いわゆる「1スキャンディレイ記録」を実施することが好ましい。つまり、単位領域への第1インク及び第2インクの付与を異なる記録走査により実施することが好ましい。第1インクを付与してから第2インクを付与するまでの間に、スキャンディレイを実施することで、第1インクの浸透や乾燥をより促進することができる。スキャンディレイの方法は上記に限られず、例えば、吐出口列を副走査方向の上流側と下流側などの2以上の領域に分割してインクを吐出することができる記録ヘッドを用いる場合、以下のようにスキャンディレイ記録を行うことができる。まず、1回目の記録ヘッドの主走査で上流側の領域から第1インクを付与した後、この領域に相当する長さ分として記録媒体を搬送し、次いで、2回目の記録ヘッドの主走査で下流側の領域から第2インクを付与する方法などを挙げることができる。スキャンディレイの走査数は特に限定されないが、多すぎると記録に長い時間を要するため、スキャンディレイは4以下であることが好ましく、2以下であることがさらに好ましい。
(水性インク)
本発明のインクジェット記録方法は、複数の水性インクを使用し、記録ヘッドの吐出口から吐出した水性インクを記録媒体に付与して画像を記録する工程を有する。複数の水性インクは、いずれも色材として顔料を含有する顔料インクであり、記録媒体に先に付与される第1インクと、記録媒体における第1インクが付与された領域の少なくとも一部に重なるように、記録媒体に後に付与される第2インクとを含む。そして、下記式(1)で算出される第1インクの再分散性指数が、0.90以上である。再分散性指数は、0.00以上3.20以下の範囲内の値を取る。
再分散性指数=B/A ・・・(1)
A:第1インク2.0gを30℃、相対湿度10%の環境下で16時間放置して得た第1残渣の質量(g)
B:第1残渣に第1インク1.2gを添加して30秒間撹拌及び60秒間静置した後、流動性を有する成分を除去して得た第2残渣の質量(g)
本発明のインクジェット記録方法は、複数の水性インクを使用し、記録ヘッドの吐出口から吐出した水性インクを記録媒体に付与して画像を記録する工程を有する。複数の水性インクは、いずれも色材として顔料を含有する顔料インクであり、記録媒体に先に付与される第1インクと、記録媒体における第1インクが付与された領域の少なくとも一部に重なるように、記録媒体に後に付与される第2インクとを含む。そして、下記式(1)で算出される第1インクの再分散性指数が、0.90以上である。再分散性指数は、0.00以上3.20以下の範囲内の値を取る。
再分散性指数=B/A ・・・(1)
A:第1インク2.0gを30℃、相対湿度10%の環境下で16時間放置して得た第1残渣の質量(g)
B:第1残渣に第1インク1.2gを添加して30秒間撹拌及び60秒間静置した後、流動性を有する成分を除去して得た第2残渣の質量(g)
第1インク及び第2インクは互いに反応するものである必要はない。また、各インクと反応するような反応液を付与する工程、紫外線や電子線などの活性エネルギー線の照射を行う工程、インクが付与された記録媒体を加熱する工程を実施する必要はない。
[第1インク]
第1インクは、複数の水性インクのうち、記録媒体に先に付与されるインクである。第1インクの再分散性指数を測定及び算出するに際し、適当な容器に第1インクを入れて所定条件で放置する。第1インクを入れる容器としては、シャーレなどの開放系の容器を用いることが好ましい。第1残渣に第1インクを添加して行う撹拌は、記録媒体におけるインクの接触を模したものであるため、撹拌棒などを用いずに、シャーレを手で揺らすことで行う。また、第1残渣を再分散及び静置した後、流動性を有する成分を除去するには、シャーレなどの容器を傾けることが好ましい。容器の縁に付着した流動性を有する成分は、ペーパーなどで拭き取ってもよい。
第1インクは、複数の水性インクのうち、記録媒体に先に付与されるインクである。第1インクの再分散性指数を測定及び算出するに際し、適当な容器に第1インクを入れて所定条件で放置する。第1インクを入れる容器としては、シャーレなどの開放系の容器を用いることが好ましい。第1残渣に第1インクを添加して行う撹拌は、記録媒体におけるインクの接触を模したものであるため、撹拌棒などを用いずに、シャーレを手で揺らすことで行う。また、第1残渣を再分散及び静置した後、流動性を有する成分を除去するには、シャーレなどの容器を傾けることが好ましい。容器の縁に付着した流動性を有する成分は、ペーパーなどで拭き取ってもよい。
第1インクを放置する環境(30℃、相対湿度10%)は、25℃、相対湿度50%といった、いわゆる常温常湿の環境と比較して、液体成分の蒸発が進みやすい。このような環境で第1インクを16時間放置すると、液体成分の蒸発がかなり進み、特に水はほぼ全量が蒸発した状態となる。この第1残渣に、(未蒸発の)第1インクを添加すると、第1インクの液体成分(主には水)が第1残渣に浸透する。再分散しやすいインクは、浸透した水によって第1残渣の流動性が高まるため再分散性指数は小さくなる。一方、再分散しにくいインクは、第1残渣に水が浸透しても、膨潤させるのにとどまり、第1残渣の流動性が高まらず、低いままであるため再分散性指数は大きくなる。記録媒体において第1インクと接触するのは第2インクであるため、第1インクの再分散性指数は、第1残渣に第2インクを滴下して評価することもできる。但し、水性インクの再分散性は主成分である水の影響が支配的であるため、第1インクの再分散性指数は、第1残渣に第1インクを滴下して測定すればよく、この手法によって、耐擦過性に関わる性能を簡易かつ適切に評価することができる。このようにして測定及び算出される第1インクの再分散性指数が、記録媒体上において第1インクが第2インクによって再分散される挙動を反映していると、本発明者らは推測している。
第1インクの再分散性指数は0.90以上であり、好ましくは0.95以上である。第1インクの再分散性指数の上限は、記録ヘッドへの固着を抑制する観点から、1.30以下であることが好ましい。第1インクの再分散性指数は、顔料の種類、顔料の分散方式、水溶性有機溶剤の種類、水溶性有機溶剤の量、及び樹脂の有無や、その形態、物性、組成、量などによって調整することができる。再分散性指数は、一旦凝集した顔料が、同じインクによって凝集が解かれる程度を示す指標である。したがって、上記した手法などによって、顔料を凝集させにくくしたり、顔料が凝集したとしても容易に液体成分になじんで凝集が解かれやすくしたり、などによって再分散性指数を低下させることができる。上記した手法のなかでも、顔料の種類や水溶性有機溶剤の種類が再分散性指数に与える影響が大きい。
[第2インク]
第2インクは、複数の水性インクのうち、第1インクの後に記録媒体に付与されるインクである。第1インクの静的表面張力(γ1)と、第2インクの静的表面張力(γ2)とは、γ1>γ2の関係を満たすことが好ましい。静的表面張力が上記の関係を満たす第1インク及び第2インクを用いることで、後に付与されるインクである第2インクの浸透をより早め、画像の耐擦過性をより向上させることができる。インクの静的表面張力は、インクに含有させる界面活性剤や水溶性有機溶剤の種類及び量を調整することによって適宜制御することができる。界面活性剤と水溶性有機溶剤を併用してインクの静的表面張力を調整してもよい。インク中の界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下であることがさらに好ましい。また、第2インクの再分散性指数は、第1インクと同じように定義することができ、0.00以上3.20以下であり、0.10以上1.30以下であることが好ましい。また、再分散性指数は、第2インクよりも、第1インクのほうが大きいことが好ましい。
第2インクは、複数の水性インクのうち、第1インクの後に記録媒体に付与されるインクである。第1インクの静的表面張力(γ1)と、第2インクの静的表面張力(γ2)とは、γ1>γ2の関係を満たすことが好ましい。静的表面張力が上記の関係を満たす第1インク及び第2インクを用いることで、後に付与されるインクである第2インクの浸透をより早め、画像の耐擦過性をより向上させることができる。インクの静的表面張力は、インクに含有させる界面活性剤や水溶性有機溶剤の種類及び量を調整することによって適宜制御することができる。界面活性剤と水溶性有機溶剤を併用してインクの静的表面張力を調整してもよい。インク中の界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下であることがさらに好ましい。また、第2インクの再分散性指数は、第1インクと同じように定義することができ、0.00以上3.20以下であり、0.10以上1.30以下であることが好ましい。また、再分散性指数は、第2インクよりも、第1インクのほうが大きいことが好ましい。
[色材]
色材としては、顔料を用いる。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。顔料種としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、イミダゾロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジンなどの有機顔料;などを挙げることができる。調色などの目的のために染料を併用してもよい。
色材としては、顔料を用いる。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。顔料種としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、イミダゾロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジンなどの有機顔料;などを挙げることができる。調色などの目的のために染料を併用してもよい。
使用する顔料の種類によって、インクの再分散性指数は影響を受ける。インクジェット用の水性インクに用いられる汎用の顔料のなかでも、フタロシアニン、アゾ、カーボンブラックなどの顔料と比して、キナクリドン、キナクリドン固溶体、ジケトピロロピロール、及びジオキサジンなどの顔料は凝集しやすい性質を有する。このため、キナクリドン、キナクリドン固溶体、ジケトピロロピロール、及びジオキサジンなど顔料を用いたインクの再分散性指数は大きくなる傾向にある。また、これらの顔料は平面構造を有するため、引きつけ合う平面の面積が大きい。さらに、分子中にイミノ基やカルボニル基を有することから、分子間で強固に水素結合しやすい。したがって、これらの顔料は、分子同士で強くスタッキングしやすく、凝集力が高いため、再溶解性指数が大きくなると推測される。
インクの「色相」とは、ブラック及びカラーなどに分類される色相を意味し、カラーの色相には、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーン、及びブルーなどが含まれる。ブラックインクの場合、色材として自己分散顔料を用いることが好ましい。また、カラーインクの場合、色材として樹脂分散顔料を用いることが好ましい。
顔料の分散方式は特に限定されない。例えば、樹脂分散剤により分散させた樹脂分散顔料、界面活性剤により分散させた顔料、及び顔料の粒子表面の少なくとも一部を樹脂などで被覆したマイクロカプセル顔料などを用いることができる。また、顔料の粒子表面にアニオン性基などの親水性基を含む官能基を結合させた自己分散顔料や、顔料の粒子表面に高分子を含む有機基を化学的に結合させた顔料(樹脂結合型の自己分散顔料)などを用いることもできる。また、分散方式の異なる顔料を組み合わせて用いてもよい。
自己分散顔料としては、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団(-R-)を介してアニオン性基が結合したものを用いることができる。アニオン性基としては、-COOM、-SO3M、-PO3M2などを挙げることができる。Mとしては、それぞれ独立に、水素原子;アルカリ金属;アンモニウム(NH4);有機アンモニウム;を挙げることができる。他の原子団(-R-)としては、アルキレン基;アリーレン基;アミド基;スルホニル基;イミノ基;カルボニル基;エステル基;エーテル基;これらの基を組み合わせた基;などを挙げることができる。
自己分散顔料のイオン性基量は、0.04mmol/g以上1.00mmol/g以下であることが好ましい。自己分散顔料のイオン性基量は、自己分散顔料の単位質量当たりのイオン性基のモル数で表され、コロイド滴定により測定した表面電荷量から算出することができる。後述する実施例においては、流動電位滴定ユニット(PCD-500)を搭載した電位差自動滴定装置(商品名「AT-510」、京都電子工業製)を使用した。そして、電位差を利用したコロイド滴定によって顔料分散液中の自己分散顔料の表面電荷量を測定し、イオン性基量を算出した。より具体的には、顔料分散液を純水で約300倍(質量基準)に希釈した後、必要に応じて水酸化カリウムでpHを約10に調整し、5mmol/Lのメチルグリコールキトサンを滴定試薬として用いて電位差滴定を行った。インクから適切な方法により抽出した顔料を用いてイオン性基量を測定することも勿論可能である。自己分散顔料のイオン性基量によって、インクの再分散性指数は影響を受ける。イオン性基量が多い自己分散顔料を用いると、インクの再分散性指数は大きくなる傾向にある。
樹脂分散顔料に用いる樹脂分散剤は、通常、アニオン性基を有する親水性ユニットと、アニオン性基を有しない疎水性ユニットとを含む。親水性ユニットは、水性媒体への親和性を担保するためのユニットである。疎水性ユニットは、顔料の粒子表面に疎水性相互作用により吸着するためのユニットである。樹脂分散顔料としては、例えば、顔料の粒子表面に樹脂分散剤を物理的に吸着させて分散させるタイプのものや、顔料の粒子表面を樹脂分散剤で被覆したマイクロカプセル顔料などを挙げることができる。
樹脂分散剤としては、アニオン性基を有する親水性ユニットと、アニオン性基を有しない疎水性ユニットとを含む(メタ)アクリル系樹脂を用いることが好ましい。親水性ユニットは、例えば、アニオン性基を有する単量体を重合することで形成することができる。アニオン性基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシ基を有する単量体;これらのモノマーの無水物や塩などを挙げることができる。アニオン性基を有する単量体の塩を構成するカチオンとしては、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、アンモニウムカチオン、及び有機アンモニウムカチオンなどを挙げることができる。
疎水性ユニットは、例えば、アニオン性基を有しない単量体を重合することで形成することができる。アニオン性基を有しない単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、1-ビニルイミダゾールなどの芳香族基を有する単量体;エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(n-、iso-、t-)ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの脂肪族基を有する単量体;などを挙げることができる。
インク中の顔料の体積平均粒子径は、10nm以上300nm以下であることが好ましく、20nm以上200nm以下であることがさらに好ましい。顔料の体積平均粒子径は、例えば、動的光散乱方式の粒径測定装置を使用して測定することができる。
[樹脂]
インクは、樹脂を含有することが好ましい。樹脂は、(i)顔料の分散状態を安定化させるため、すなわち、樹脂分散剤やその補助としてインクに添加することができる。また、(ii)記録される画像の各種特性を向上させるためにインクに添加することができる。インク中における樹脂の状態は、水性媒体に溶解した状態であってもよく、水性媒体中に樹脂粒子として分散した状態であってもよい。本明細書における「樹脂が水溶性である」とは、樹脂を酸価と当量のアルカリで中和した場合に、動的光散乱法などの測定方法により粒径を測定しうる粒子を形成しないことを意味する。インク中の樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましい。
インクは、樹脂を含有することが好ましい。樹脂は、(i)顔料の分散状態を安定化させるため、すなわち、樹脂分散剤やその補助としてインクに添加することができる。また、(ii)記録される画像の各種特性を向上させるためにインクに添加することができる。インク中における樹脂の状態は、水性媒体に溶解した状態であってもよく、水性媒体中に樹脂粒子として分散した状態であってもよい。本明細書における「樹脂が水溶性である」とは、樹脂を酸価と当量のアルカリで中和した場合に、動的光散乱法などの測定方法により粒径を測定しうる粒子を形成しないことを意味する。インク中の樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましい。
樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂、多糖類、ポリペプチド類などを挙げることができる。なかでも、記録ヘッドの吐出口からの吐出特性の観点から、アクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂としては、アニオン性基を有するユニット及びアニオン性基を有しないユニットを構成ユニットとして有するものが好ましい。アクリル系樹脂の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの組み合わせなどを挙げることができる。
重合によりアクリル系樹脂を構成するユニットとなるモノマーとしては、アニオン性基を有するモノマー及びアニオン性基を有しないモノマーを挙げることができる。通常、アニオン性基を有するモノマーは重合により親水性ユニットとなり、アニオン性基を有しないモノマーは重合により疎水性ユニットとなる。
アニオン性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸基を有するモノマー;これらのモノマーの無水物や塩などを挙げることができる。アニオン性基を有するモノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、アンモニウムカチオン、及び有機アンモニウムカチオンなどを挙げることができる。
アニオン性基を有しないモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、1-ビニルイミダゾールなどの芳香族基を有するモノマー;エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(n-、iso-、t-)ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。
樹脂の酸価は、40mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましい。なかでも、100mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが特に好ましい。また、樹脂の重量平均分子量は、3,000以上50,000以下であることが好ましく、5,000以上15,000以下であることがさらに好ましい。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算の値である。
樹脂の形態(水溶性樹脂、水不溶性樹脂〔樹脂粒子〕)、酸価、及び重量平均分子量によって、インクの再分散性指数は変動する。例えば、顔料の分散状態を安定化させる樹脂を添加すると、インクの再分散性指数が小さくなる傾向にある。なかでも、ブロック共重合体は、顔料の分散状態を安定化させるのに有効であるが、ブロック共重合体を添加すると、インクの再分散性指数が特に小さくなりやすい。一方、ブロック共重合体に限らず、樹脂のアニオン性基のカウンターイオンなどに由来してインク中にカチオンが多く含まれることとなり、顔料の分散状態が不安定化する場合には、インクの再分散性指数が大きくなる傾向にある。
[水性媒体]
インクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性のインクである。インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
インクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性のインクである。インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤の種類や添加量によって、インクの再分散性指数を調整することもできる。例えば、顔料の分散状態を安定化させる水溶性有機溶剤を添加すると、インクの再分散性指数が小さくなる傾向にある。一方、顔料の分散状態を不安定化させる水溶性有機溶剤を添加すると、インクの再分散性指数が大きくなる傾向にある。インクの再分散性指数を増大させるには、比誘電率が27.0以下の水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。比誘電率が27.0以下の水溶性有機溶剤としては、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(23.9)、1,5-ペンタンジオール(27.0)、トリエチレングリコール(22.7)、1,2-ヘキサンジオール(14.8)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(9.8)、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル(9.4)、1,6-ヘキサンジオール(7.1)、数平均分子量200のポリエチレングリコール(18.9)、数平均分子量600のポリエチレングリコール(11.4)、及び数平均分子量1,000のポリエチレングリコール(4.6)などを挙げることができる。上記の水溶性有機溶剤に付したカッコ内の数値は、それぞれの水溶性有機溶剤の25℃における比誘電率である。なかでも、ポリエチレングリコールは、少量添加するだけでインクの再分散性指数を効率よく増大させることができる。インクの再分散性指数は、数平均分子量600以上のポリエチレングリコールを用いると特に増大しやすい。なかでも、吐出性との兼ね合いから、数平均分子量1,000のポリエチレングリコールを好適に用いることができる。
水溶性有機溶剤の比誘電率は、誘電率計(例えば、商品名「BI-870」、BROOKHAVEN INSTRUMENTS CORPORATION製など)を使用し、周波数10kHzの条件で測定することができる。25℃で固体の水溶性有機溶剤の比誘電率は、50質量%水溶液の比誘電率を測定し、下記式(1)から算出した値とする。通常「水溶性有機溶剤」とは液体を指すものであるが、本発明においては、25℃(常温)で固体であるものも水溶性有機溶剤に含めることとする。
εsol=2ε50%-εwater ・・・(1)
εsol:25℃で固体の水溶性有機溶剤の比誘電率
ε50%:25℃で固体の水溶性有機溶剤の50質量%水溶液の比誘電率
εwater:水の比誘電率
εsol=2ε50%-εwater ・・・(1)
εsol:25℃で固体の水溶性有機溶剤の比誘電率
ε50%:25℃で固体の水溶性有機溶剤の50質量%水溶液の比誘電率
εwater:水の比誘電率
水性インクに汎用であり、25℃で固体である水溶性有機溶剤としては、例えば、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、エチレン尿素、尿素、数平均分子量1,000のポリエチレングリコールなどを挙げることができる。ここで、25℃で固体の水溶性有機溶剤の比誘電率を、50質量%水溶液の比誘電率から求める理由は次の通りである。25℃で固体の水溶性有機溶剤のうち、水性インクの構成成分となり得るもののなかには、50質量%を超えるような高濃度の水溶液を調製することが困難なものがある。一方、10質量%以下であるような低濃度の水溶液では、水の比誘電率が支配的となり、当該水溶性有機溶剤の確からしい(実効的な)比誘電率の値を得ることができない。そこで、本発明者らが検討を行った結果、25℃で固体の水溶性有機溶剤のうち、インクに用いることが可能なほとんどのもので測定対象の水溶液を調製することができ、かつ、求められる比誘電率も本発明の効果と整合することが判明した。このような理由から、50質量%水溶液を利用することとした。25℃で固体の水溶性有機溶剤であって、水への溶解度が低いために50質量%水溶液を調製できないものについては、飽和濃度の水溶液を利用し、上記εsolを求める場合に準じて算出した比誘電率の値を便宜的に用いることとする。
[界面活性剤]
界面活性剤の種類や添加量によって、インクの再分散性指数を調整することもできる。例えば、顔料の分散状態を安定化させる界面活性剤を添加すると、インクの再分散性指数が小さくなる傾向にある。一方、顔料の分散状態を不安定化させる界面活性剤を添加すると、インクの再分散性指数が大きくなる傾向にある。例えば、色材が樹脂分散顔料である場合、界面活性剤をインクに多量に添加すると、樹脂分散剤を顔料の粒子表面から剥離してしまうことがあり、インクの再分散性指数が大きくなる傾向にある。一方、親水性部分と疎水性部分が明確に分かれている構造である界面活性剤は、顔料に配向しやすく、その分散を補助するため、インクの再分散性指数が小さくなりやすい。このような界面活性剤としては、親水性であるエチレンオキサイド基と、疎水性であるアルキル基と、を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルを挙げることができる。
界面活性剤の種類や添加量によって、インクの再分散性指数を調整することもできる。例えば、顔料の分散状態を安定化させる界面活性剤を添加すると、インクの再分散性指数が小さくなる傾向にある。一方、顔料の分散状態を不安定化させる界面活性剤を添加すると、インクの再分散性指数が大きくなる傾向にある。例えば、色材が樹脂分散顔料である場合、界面活性剤をインクに多量に添加すると、樹脂分散剤を顔料の粒子表面から剥離してしまうことがあり、インクの再分散性指数が大きくなる傾向にある。一方、親水性部分と疎水性部分が明確に分かれている構造である界面活性剤は、顔料に配向しやすく、その分散を補助するため、インクの再分散性指数が小さくなりやすい。このような界面活性剤としては、親水性であるエチレンオキサイド基と、疎水性であるアルキル基と、を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルを挙げることができる。
[その他の成分]
インクには、上記成分以外にも必要に応じて、消泡剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。なお、上述の「その他の成分」は、インク中の含有量も少なく、再分散性指数に及ぼす影響は軽微である。
インクには、上記成分以外にも必要に応じて、消泡剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。なお、上述の「その他の成分」は、インク中の含有量も少なく、再分散性指数に及ぼす影響は軽微である。
[インクの物性]
25℃におけるインクのpH、静的表面張力、及び粘度は、それぞれ以下の範囲内であることが好ましい。インクのpHは、5.0以上10.0以下であることが好ましく、7.0以上9.5以下であることがさらに好ましい。インクの静的表面張力は、30mN/m以上50mN/m以下であることが好ましい。インクの粘度は、2.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましい。
25℃におけるインクのpH、静的表面張力、及び粘度は、それぞれ以下の範囲内であることが好ましい。インクのpHは、5.0以上10.0以下であることが好ましく、7.0以上9.5以下であることがさらに好ましい。インクの静的表面張力は、30mN/m以上50mN/m以下であることが好ましい。インクの粘度は、2.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。樹脂の酸価は、水酸化カリウム-メタノール滴定液を用いた電位差滴定により測定した。また、樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算の値である。
<顔料分散液の調製>
(自己分散顔料のイオン性基量)
流動電位滴定ユニット(PCD-500)を搭載した電位差自動滴定装置を使用し、5mmol/Lのメチルグリコールキトサンを滴定試薬として用いた電位差滴定により、顔料分散液中の自己分散顔料の表面電荷量を測定し、イオン性基量を求めた。電位差自動滴定装置としては、(商品名「AT-510」(京都電子工業製)を使用した。
(自己分散顔料のイオン性基量)
流動電位滴定ユニット(PCD-500)を搭載した電位差自動滴定装置を使用し、5mmol/Lのメチルグリコールキトサンを滴定試薬として用いた電位差滴定により、顔料分散液中の自己分散顔料の表面電荷量を測定し、イオン性基量を求めた。電位差自動滴定装置としては、(商品名「AT-510」(京都電子工業製)を使用した。
(顔料分散液1)
酸価120mgKOH/g、重量平均分子量8,000のスチレン-アクリル酸共重合体(水溶性樹脂)を用意した。用意した樹脂を、その酸価と等モルの水酸化カリウムで中和するとともに、イオン交換水に溶解させ、樹脂(固形分)の含有量が20.0%である樹脂分散剤の水溶液を調製した。顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)15.0部、樹脂分散剤の水溶液30.0部、及び水55.0部の混合物をサンドグラインダーに入れて1時間分散した後、遠心分離処理して粗大粒子を除去した。ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過した後、適量のイオン交換水を加えて顔料分散液1を得た。得られた顔料分散液1の顔料の含有量は10.0%、樹脂分散剤の含有量は4.0%であった。
酸価120mgKOH/g、重量平均分子量8,000のスチレン-アクリル酸共重合体(水溶性樹脂)を用意した。用意した樹脂を、その酸価と等モルの水酸化カリウムで中和するとともに、イオン交換水に溶解させ、樹脂(固形分)の含有量が20.0%である樹脂分散剤の水溶液を調製した。顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)15.0部、樹脂分散剤の水溶液30.0部、及び水55.0部の混合物をサンドグラインダーに入れて1時間分散した後、遠心分離処理して粗大粒子を除去した。ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過した後、適量のイオン交換水を加えて顔料分散液1を得た。得られた顔料分散液1の顔料の含有量は10.0%、樹脂分散剤の含有量は4.0%であった。
(顔料分散液2)
顔料の種類をC.I.ピグメントレッド122に変更したこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤の含有量が4.0%の顔料分散液2を得た。
顔料の種類をC.I.ピグメントレッド122に変更したこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤の含有量が4.0%の顔料分散液2を得た。
(顔料分散液3)
顔料の種類をC.I.ピグメントレッド150に変更したこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤の含有量が4.0%の顔料分散液3を得た。
顔料の種類をC.I.ピグメントレッド150に変更したこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤の含有量が4.0%の顔料分散液3を得た。
(顔料分散液4)
顔料の種類をC.I.ピグメントイエロー74に変更したこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤の含有量が4.0%の顔料分散液4を得た。
顔料の種類をC.I.ピグメントイエロー74に変更したこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤の含有量が4.0%の顔料分散液4を得た。
(顔料分散液5)
水5.5gに濃塩酸5.0gを溶かした溶液を5℃に冷却した状態とし、この状態で1.83gの4-アミノフタル酸を加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れ、撹拌して溶液の温度を10℃以下に保持しながら、5℃のイオン交換水9.0gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かして得た溶液を加えた。15分間撹拌後、カーボンブラック(比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100g)6.0gを撹拌下で加え、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過し、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させた。その後、イオン交換法によりナトリウムイオンをカリウムイオンに置換して、カーボンブラックの粒子表面に-C6H3-(COOK)2基が結合した自己分散顔料を得た。適量の水を添加して顔料の含有量を調整し、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液5を得た。得られた顔料分散液5中の自己分散顔料のアニオン性基の量は0.50mmol/gであった。
水5.5gに濃塩酸5.0gを溶かした溶液を5℃に冷却した状態とし、この状態で1.83gの4-アミノフタル酸を加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れ、撹拌して溶液の温度を10℃以下に保持しながら、5℃のイオン交換水9.0gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かして得た溶液を加えた。15分間撹拌後、カーボンブラック(比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100g)6.0gを撹拌下で加え、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過し、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させた。その後、イオン交換法によりナトリウムイオンをカリウムイオンに置換して、カーボンブラックの粒子表面に-C6H3-(COOK)2基が結合した自己分散顔料を得た。適量の水を添加して顔料の含有量を調整し、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液5を得た。得られた顔料分散液5中の自己分散顔料のアニオン性基の量は0.50mmol/gであった。
(顔料分散液6)
特開2013-253230号公報の記載を参考にして、顔料(C.I.ピグメントブルー15:4)に、((4-アミノベンゾイルアミノ)-メタン-1,1-ジイル)ビスホスホン酸由来の「ホスホン酸基」を0.10mmol/g導入した。さらに、p-アミノベンゼンスルホン酸由来の「スルホン酸基」を0.15mmol/g導入して、自己分散顔料を調製した。その後、水酸化カリウム水溶液と水を加え、顔料の含有量が10.0%、pHが10である顔料分散液6を得た。
特開2013-253230号公報の記載を参考にして、顔料(C.I.ピグメントブルー15:4)に、((4-アミノベンゾイルアミノ)-メタン-1,1-ジイル)ビスホスホン酸由来の「ホスホン酸基」を0.10mmol/g導入した。さらに、p-アミノベンゼンスルホン酸由来の「スルホン酸基」を0.15mmol/g導入して、自己分散顔料を調製した。その後、水酸化カリウム水溶液と水を加え、顔料の含有量が10.0%、pHが10である顔料分散液6を得た。
(顔料分散液7)
特開2013-253230号公報の記載を参考にして、顔料(C.I.ピグメントレッド122)に、((4-アミノベンゾイルアミノ)-メタン-1,1-ジイル)ビスホスホン酸由来の「ホスホン酸基」を0.10mmol/g導入した。これにより、自己分散顔料を調製した。その後、水酸化カリウム水溶液と水を加え、顔料の含有量が10.0%、pHが10である顔料分散液7を得た。
特開2013-253230号公報の記載を参考にして、顔料(C.I.ピグメントレッド122)に、((4-アミノベンゾイルアミノ)-メタン-1,1-ジイル)ビスホスホン酸由来の「ホスホン酸基」を0.10mmol/g導入した。これにより、自己分散顔料を調製した。その後、水酸化カリウム水溶液と水を加え、顔料の含有量が10.0%、pHが10である顔料分散液7を得た。
(顔料分散液8)
特開2013-253230号公報の記載を参考にして、顔料(C.I.ピグメントレッド150)に、((4-アミノベンゾイルアミノ)-メタン-1,1-ジイル)ビスホスホン酸由来の「ホスホン酸基」を0.10mmol/g導入した。これにより、自己分散顔料を調製した。その後、水酸化カリウム水溶液と水を加え、顔料の含有量が10.0%、pHが10である顔料分散液8を得た。
特開2013-253230号公報の記載を参考にして、顔料(C.I.ピグメントレッド150)に、((4-アミノベンゾイルアミノ)-メタン-1,1-ジイル)ビスホスホン酸由来の「ホスホン酸基」を0.10mmol/g導入した。これにより、自己分散顔料を調製した。その後、水酸化カリウム水溶液と水を加え、顔料の含有量が10.0%、pHが10である顔料分散液8を得た。
(顔料分散液9)
特開2013-253230号公報の記載を参考にして、顔料(C.I.ピグメントイエロー74)に、p-アミノベンゼンスルホン酸由来の「スルホン酸基」を0.10mmol/g導入した自己分散顔料を調製した。その後、水酸化カリウム水溶液と水を加え、顔料の含有量が10.0%、pHが10である顔料分散液9を得た。
特開2013-253230号公報の記載を参考にして、顔料(C.I.ピグメントイエロー74)に、p-アミノベンゼンスルホン酸由来の「スルホン酸基」を0.10mmol/g導入した自己分散顔料を調製した。その後、水酸化カリウム水溶液と水を加え、顔料の含有量が10.0%、pHが10である顔料分散液9を得た。
<染料水溶液の調製>
(染料水溶液1)
染料(C.I.ダイレクトブルー199)をイオン交換水に溶解させた後、酸を添加して染料を析出させた。析出した染料をろ過して分取し、遊離酸型の染料のウェットケーキを得た。得られたウェットケーキをイオン交換水に加え、染料のアニオン性基と当量の水酸化ナトリウムの水溶液を添加し、アニオン性基を全て中和して染料を溶解させた。さらに適量のイオン交換水を加えて、染料の含有量が10.0%である染料水溶液1を得た。
(染料水溶液1)
染料(C.I.ダイレクトブルー199)をイオン交換水に溶解させた後、酸を添加して染料を析出させた。析出した染料をろ過して分取し、遊離酸型の染料のウェットケーキを得た。得られたウェットケーキをイオン交換水に加え、染料のアニオン性基と当量の水酸化ナトリウムの水溶液を添加し、アニオン性基を全て中和して染料を溶解させた。さらに適量のイオン交換水を加えて、染料の含有量が10.0%である染料水溶液1を得た。
(染料水溶液2)
染料をC.I.アシッドレッド249に代えたこと以外は、前述の染料水溶液1と同様の手順で、染料の含有量が10.0%である染料水溶液2を得た。
染料をC.I.アシッドレッド249に代えたこと以外は、前述の染料水溶液1と同様の手順で、染料の含有量が10.0%である染料水溶液2を得た。
(染料水溶液3)
染料をC.I.ダイレクトイエロー132に代えたこと以外は、前述の染料水溶液1と同様の手順で、染料の含有量が10.0%である染料水溶液3を得た。
染料をC.I.ダイレクトイエロー132に代えたこと以外は、前述の染料水溶液1と同様の手順で、染料の含有量が10.0%である染料水溶液3を得た。
<樹脂水溶液の調製>
(樹脂水溶液1)
スチレン/アクリル酸共重合体(酸価120mgKOH/g、重量平均分子量8,000)を酸価と等モルの水酸化カリウムを含む水溶液で中和してイオン交換水に溶解させ、樹脂の含有量が10.0%である樹脂水溶液1を調製した。
(樹脂水溶液1)
スチレン/アクリル酸共重合体(酸価120mgKOH/g、重量平均分子量8,000)を酸価と等モルの水酸化カリウムを含む水溶液で中和してイオン交換水に溶解させ、樹脂の含有量が10.0%である樹脂水溶液1を調製した。
(樹脂水溶液2)
特開2018-150518号公報の実施例の記載を参考にして、ベンジルメタクリレートに由来するユニット65.1%、n-ブチルアクリレートに由来するユニット18.9%、及びアクリル酸に由来する16.0%を有するブロック共重合体を合成した。合成したブロック共重合体の酸価は124mgKOH/gであり、重量平均分子量は12,000であった。得られたブロック共重合体を酸価と等モルの水酸化カリウムを含む水溶液で中和してイオン交換水に溶解させ、樹脂の含有量が10.0%である樹脂水溶液2を調製した。
特開2018-150518号公報の実施例の記載を参考にして、ベンジルメタクリレートに由来するユニット65.1%、n-ブチルアクリレートに由来するユニット18.9%、及びアクリル酸に由来する16.0%を有するブロック共重合体を合成した。合成したブロック共重合体の酸価は124mgKOH/gであり、重量平均分子量は12,000であった。得られたブロック共重合体を酸価と等モルの水酸化カリウムを含む水溶液で中和してイオン交換水に溶解させ、樹脂の含有量が10.0%である樹脂水溶液2を調製した。
(樹脂水溶液3)
特開2018-83414号公報の実施例の記載を参考にして、ポリプロピレングリコール(数平均分子量2,000)31.6部、イソホロンジイソシアネート46.9部、及びジメチロールプロピオン酸21.5部を用いてプレポリマー溶液を調製した。酸基を水酸化カリウムで中和した後、エチレンジアミン2.1部を添加して鎖延長反応を行い、酸価90mgKOH/g、重量平均分子量30,000であるウレタン樹脂を含有する樹脂水溶液3を調製した。調製した樹脂水溶液3の樹脂の含有量は、20.0%であった。
特開2018-83414号公報の実施例の記載を参考にして、ポリプロピレングリコール(数平均分子量2,000)31.6部、イソホロンジイソシアネート46.9部、及びジメチロールプロピオン酸21.5部を用いてプレポリマー溶液を調製した。酸基を水酸化カリウムで中和した後、エチレンジアミン2.1部を添加して鎖延長反応を行い、酸価90mgKOH/g、重量平均分子量30,000であるウレタン樹脂を含有する樹脂水溶液3を調製した。調製した樹脂水溶液3の樹脂の含有量は、20.0%であった。
<インクの調製>
表1-1及び1-2の上段に示す各成分(単位:%)を混合して十分に撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。表1-1及び1-2中の「アセチレノールE100」は、川研ファインケミカル製の界面活性剤(アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物)の商品名である。インクの調製に当たっては、得られるインクの静的表面張力が表1-1及び1-2の下段に示す値となるように「アセチレノールE100」の含有量を調整した。インクの静的表面張力は、自動表面張力計(商品名「DY-300」、協和界面科学製)を使用して測定した。イオン交換水の量は、成分の合計量が100.0%となる残量とした。ポリエチレングリコールに付した数値は、ポリエチレングリコールの数平均分子量を表す。
表1-1及び1-2の上段に示す各成分(単位:%)を混合して十分に撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。表1-1及び1-2中の「アセチレノールE100」は、川研ファインケミカル製の界面活性剤(アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物)の商品名である。インクの調製に当たっては、得られるインクの静的表面張力が表1-1及び1-2の下段に示す値となるように「アセチレノールE100」の含有量を調整した。インクの静的表面張力は、自動表面張力計(商品名「DY-300」、協和界面科学製)を使用して測定した。イオン交換水の量は、成分の合計量が100.0%となる残量とした。ポリエチレングリコールに付した数値は、ポリエチレングリコールの数平均分子量を表す。
<インクの再分散性指数の測定方法>
シャーレ(内径35mm)にインク2.0gを入れ、30℃、相対湿度10%の環境下で16時間放置して、第1残渣を得た。このシャーレに同じインク1.2gを添加し、シャーレを手で揺らすことで30秒間撹拌して第1残渣を再分散させた。60秒間静置した後、シャーレを傾けて流動性を有する成分を除去するとともに、シャーレの縁に付着した流動性を有する成分を吸水性のペーパーで拭き取り、第2残渣を得た。得られた第1残渣の質量A(g)及び第2残渣の質量B(g)をそれぞれ測定し、下記式(1)よりインクの再分散性指数を算出した。算出した各インクの再分散性指数を表1-1及び1-2の下段に示す。
再分散性指数=B/A ・・・(1)
シャーレ(内径35mm)にインク2.0gを入れ、30℃、相対湿度10%の環境下で16時間放置して、第1残渣を得た。このシャーレに同じインク1.2gを添加し、シャーレを手で揺らすことで30秒間撹拌して第1残渣を再分散させた。60秒間静置した後、シャーレを傾けて流動性を有する成分を除去するとともに、シャーレの縁に付着した流動性を有する成分を吸水性のペーパーで拭き取り、第2残渣を得た。得られた第1残渣の質量A(g)及び第2残渣の質量B(g)をそれぞれ測定し、下記式(1)よりインクの再分散性指数を算出した。算出した各インクの再分散性指数を表1-1及び1-2の下段に示す。
再分散性指数=B/A ・・・(1)
<評価>
表2に示す種類のインクを使用し、以下に示す項目について評価した。後述する耐擦過性の評価において、「記録5分後」の点数と「記録15分後」の点数の合計(合計点数)が「6点」、「5点」、「4点」、「3点」、及び「2点」であった場合を許容できるレベル、「1点」であった場合を許容できないレベルとした。評価結果を表3に示す。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴当たりの質量が5ngであるインク滴を2滴付与する条件で記録したベタ画像の記録デューティを100%と定義した。
表2に示す種類のインクを使用し、以下に示す項目について評価した。後述する耐擦過性の評価において、「記録5分後」の点数と「記録15分後」の点数の合計(合計点数)が「6点」、「5点」、「4点」、「3点」、及び「2点」であった場合を許容できるレベル、「1点」であった場合を許容できないレベルとした。評価結果を表3に示す。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴当たりの質量が5ngであるインク滴を2滴付与する条件で記録したベタ画像の記録デューティを100%と定義した。
(耐擦過性)
図1及び2に示す主要部の構成を有するとともに、図3に示す構成のインク供給系を組み込んだインクジェット記録装置を用意した。サブタンク202は、熱可塑性樹脂で形成された筺体に、熱エネルギーを付与してインクを吐出する記録ヘッド203を備えた記録素子基板を貼り合わせた形態とした。記録ヘッド203は、図4に示す吐出口列を有する記録ヘッドである。メインタンク201とサブタンク202を接続するチューブ(インク供給チューブ104)の長さは700mmとした。第1バルブ206及び第2バルブ207を連動して作動させて、インク供給チューブ104及び気体導入チューブ204を閉塞した後、各インクをメインタンク201へ注入し、インク供給系にインクを満たした。インクの注入量は表2に示すメインタンクの容量(g)の95%とした。参考例1及び2では、キャリッジ上にインク注入口を有しないカートリッジ状のインク収容部を設け、メインタンクを省いた記録装置を用いた。参考例3では、下部側面にインク注入口を設けたメインタンクを用いた。その後、温度40℃、湿度15%の条件でインクジェット記録装置を2か月間放置した。この間に、メインタンク201内のインク中の顔料の一部が沈降した。
図1及び2に示す主要部の構成を有するとともに、図3に示す構成のインク供給系を組み込んだインクジェット記録装置を用意した。サブタンク202は、熱可塑性樹脂で形成された筺体に、熱エネルギーを付与してインクを吐出する記録ヘッド203を備えた記録素子基板を貼り合わせた形態とした。記録ヘッド203は、図4に示す吐出口列を有する記録ヘッドである。メインタンク201とサブタンク202を接続するチューブ(インク供給チューブ104)の長さは700mmとした。第1バルブ206及び第2バルブ207を連動して作動させて、インク供給チューブ104及び気体導入チューブ204を閉塞した後、各インクをメインタンク201へ注入し、インク供給系にインクを満たした。インクの注入量は表2に示すメインタンクの容量(g)の95%とした。参考例1及び2では、キャリッジ上にインク注入口を有しないカートリッジ状のインク収容部を設け、メインタンクを省いた記録装置を用いた。参考例3では、下部側面にインク注入口を設けたメインタンクを用いた。その後、温度40℃、湿度15%の条件でインクジェット記録装置を2か月間放置した。この間に、メインタンク201内のインク中の顔料の一部が沈降した。
その後、ポンプを使用して記録ヘッドの吐出口から各インクを10g吸引した。参考例3では10gのインクを吸引する前に、メインタンクの下部側面のインク注入口から7.5gのインクを注入した。表2に示す第1インク及び第2インクの組み合わせ、並びに記録方法により、各インクの記録デューティが100%、合計200%となるように記録媒体に各インクを重ねて付与して、2cm×2cmサイズの2次色画像を2ヵ所に記録した。
表2中、「記録するインク」のうち、第2インクが「-」のものは、第1インクのみで記録デューティ100%の画像を記録したことを意味する。また、表2中の「インクの種類」における「吐出口列21~24」は、図4における「吐出口列21~24」に対応する。記録媒体としては、光沢紙(商品名「キヤノン写真用紙・光沢スタンダード SD-201」、キヤノン製)を用いた。表2中、「記録方法」における「1パス・0スキャンディレイ」及び「1パス・1スキャンディレイ」は、以下に示す条件で記録したことを意味する。
・「1パス・0スキャンディレイ」:1回の主走査により、記録媒体の単位領域に対し、第1インク、第2インクの順でインクを付与する。
・「1パス・1スキャンディレイ」:1回目の主走査により記録媒体の単位領域に第1インクを付与し、その走査の次の走査で、第1インクを付与した単位領域に第2インクを付与する。
・「1パス・0スキャンディレイ」:1回の主走査により、記録媒体の単位領域に対し、第1インク、第2インクの順でインクを付与する。
・「1パス・1スキャンディレイ」:1回目の主走査により記録媒体の単位領域に第1インクを付与し、その走査の次の走査で、第1インクを付与した単位領域に第2インクを付与する。
2次色画像の記録5分後と記録15分後に、面圧40g/cm2の分銅を載せたシルボン紙が2次色画像上を同一方向に通過するように、2次色画像とシルボン紙を3回擦り合わせた。その後、2次色画像部が剥がれて記録媒体が露出していないか、及びシルボン紙を擦り合わせた下流側の記録媒体の色材による汚れの状態を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって画像の耐擦過性を評価した。
3点:2次色画像部の記録媒体は露出しておらず、シルボン紙を擦り合わせた下流側にも汚れが見られなかった。
2点:2次色画像部の記録媒体は露出していなかったが、シルボン紙を擦り合わせた下流側に汚れが見られた。
1点:2次色画像部の20%未満の領域で記録媒体が露出していた。
0点:2次色画像部の20%以上の領域で記録媒体が露出していた。
3点:2次色画像部の記録媒体は露出しておらず、シルボン紙を擦り合わせた下流側にも汚れが見られなかった。
2点:2次色画像部の記録媒体は露出していなかったが、シルボン紙を擦り合わせた下流側に汚れが見られた。
1点:2次色画像部の20%未満の領域で記録媒体が露出していた。
0点:2次色画像部の20%以上の領域で記録媒体が露出していた。
参考例1及び2は、開閉可能なインク注入口を有しない、カートリッジ式のインク収容部を用いたものであり、参考例1はインク収容部の容量が小さく、インク充填量が少ない例であり、参考例2はインク収容部の容量が大きく、インク充填量が多い例である。参考例1では少量の吸引動作により高顔料濃度のインクが除去されたため、画像の耐擦過性が低下する現象は生じなかった。この例では、大量に記録を行う場合、他の実施例と同様の枚数の画像を記録するのにインク収容部を複数回交換する必要があり、生産性が劣っていた。また、参考例2はカートリッジが大型となるうえ、その装着機構を設ける必要があり、装置が大型化した。参考例3では、2か月間放置した後にメインタンクの下部からインクを注入したことで、メインタンクの下部に存在する顔料濃度が上昇したインクが希釈されるとともに撹拌された。このため、参考例3では、対照例である比較例2との対比からわかるように、画像の耐擦過性は低下しなかった。参考例4及び5は、染料を色材として含有するインクを用いた例である。参考例4及び5では染料が記録媒体に浸透したため、画像の耐擦過性は他の実施例及び比較例よりも良好であった。参考例6は、記録デューティ100%の1次色画像を記録した例である。参考例6で記録した1次色画像のインク付与量は、2次色画像のインク付与量よりも少なかったため、耐擦過性が低下しにくかったと考えられる。
Claims (5)
- 顔料を含有する複数の水性インクと、前記水性インクをそれぞれ収容する、その上部にインク注入口が設けられたインク収容部と、前記インク収容部から供給される前記水性インクを吐出する吐出口が形成された記録ヘッドと、前記インク収容部から前記記録ヘッドに前記水性インクを供給するインク供給経路と、を備えるインクジェット記録装置を使用し、前記吐出口から吐出した前記水性インクを記録媒体に付与して画像を記録する工程を有するインクジェット記録方法であって、
前記水性インクが、前記記録媒体に先に付与される第1インクと、前記記録媒体における前記第1インクが付与された領域の少なくとも一部に重なるように、前記記録媒体に後に付与される第2インクと、を含み、
下記式(1)で算出される前記第1インクの再分散性指数が、0.90以上であることを特徴とするインクジェット記録方法。
再分散性指数=B/A ・・・(1)
A:前記第1インク2.0gを30℃、相対湿度10%の環境下で16時間放置して得た第1残渣の質量(g)
B:前記第1残渣に前記第1インク1.2gを添加して30秒間撹拌及び60秒間静置した後、流動性を有する成分を除去して得た第2残渣の質量(g) - 前記第1インクの再分散性指数が、0.95以上である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
- 前記第1インクの静的表面張力(γ1)と、前記第2インクの静的表面張力(γ2)とが、γ1>γ2の関係を満たす請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
- 前記記録ヘッドがシリアル方式の記録ヘッドであり、
前記第1インクを付与してから前記第2インクを付与するまでの間に、スキャンディレイを実施する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。 - 顔料を含有する複数の水性インクと、前記水性インクをそれぞれ収容する、その上部にインク注入口が設けられたインク収容部と、前記インク収容部から供給される前記水性インクを吐出する吐出口が形成された記録ヘッドと、前記インク収容部から前記記録ヘッドに前記水性インクを供給するインク供給経路と、を備えるインクジェット記録装置であって、
前記水性インクが、記録媒体に先に付与される第1インクと、前記記録媒体における前記第1インクが付与された領域の少なくとも一部に重なるように、前記記録媒体に後に付与される第2インクと、を含み、
下記式(1)で算出される前記第1インクの再分散性指数が、0.90以上であることを特徴とするインクジェット記録装置。
再分散性指数=B/A ・・・(1)
A:前記第1インク2.0gを30℃、相対湿度10%の環境下で16時間放置して得た第1残渣の質量(g)
B:前記第1残渣に前記第1インク1.2gを添加して30秒間撹拌及び60秒間静置した後、流動性を有する成分を除去して得た第2残渣の質量(g)
Priority Applications (1)
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US17/541,507 US11654693B2 (en) | 2020-12-08 | 2021-12-03 | Ink jet recording method and ink jet recording apparatus |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2020203432 | 2020-12-08 | ||
JP2020203432 | 2020-12-08 |
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Family Applications (1)
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JP2021185394A Pending JP2022091125A (ja) | 2020-12-08 | 2021-11-15 | インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置 |
Country Status (1)
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2021
- 2021-11-15 JP JP2021185394A patent/JP2022091125A/ja active Pending
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