JP7271174B2 - インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
本発明のインクジェット記録方法は、記録ヘッドからインクを吐出して記録媒体に画像を記録する。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが好ましい。
記録ヘッドとしては、シリアル型の記録ヘッド(シリアルヘッド)や、ライン型の記録ヘッド(ラインヘッド)を用いることができる。なかでも記録ヘッドは、ラインヘッドであることが好ましい。ラインヘッドは、インクを吐出する吐出口が記録媒体の幅全域にわたって配置されているため、高速に画像を記録することが可能となる。
第1インクは、顔料を含有する。第2インクは、LogP値が-1.10以上である第1水溶性有機溶剤、及び界面活性剤を含有する。
インクは、顔料を含有する。顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、イミダゾロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジンなどの有機顔料を挙げることができる。
水溶性有機溶剤の極性を示す指標とするLogP(Log Pow)値について説明する。LogP値とは、水とオクタノール(1-オクタノール)の分配係数のことをいう。LogP値は対象物質の水へのなじみやすさに関連する物性値であり、この値が大きいほど極性は低くなる。LogP値は、LogP=Log10Co/Cw(Coはオクタノール相中の対象物質の濃度を表し、Cwは水相中の対象物質の濃度を表す)の関係式により算出される。LogP値は、JIS Z 7260-107に記載の方法で実験的に求めることもできる。また、商品名「ACD/PhysChem Suite」(ACD/Labs製)などの市販の計算ソフトを利用して求めることもできる。後述する実施例においては、商品名「ACD/PhysChem Suite Version 12.00」(ACD/Labs製)を使用して求めた値を採用した。
インクは、LogP値が-1.10以上である第1水溶性有機溶剤を含有する。第1水溶性有機溶剤のLogP値は、1.70以下であることが好ましく、0.60以下であることがさらに好ましい。
インクは、界面活性剤を含有する。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを用いることができる。なかでも、界面活性剤は、インクの信頼性の観点から、ノニオン性界面活性剤であることが好ましい。
インクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性のインクである。水性媒体はさらに、第1水溶性有機溶剤以外の水溶性有機溶剤を含有してもよい。水としては脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。水溶性有機溶剤としては特に限定されるものではなく、第1水溶性有機溶剤以外のアルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、及び含窒素化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。また、これらの水溶性有機溶剤の1種又は2種以上をインクに含有させることができる。
インクには、必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、及びキレート剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。なお、これらの添加剤は、一般的にインク中の含有量もかなり少なく、本発明の効果への影響も小さい。このため、本発明においては、これらの添加剤は「水溶性有機溶剤」に含めず、LogP値を算出する対象としない。
本発明においては、インクの温度25℃における粘度は、1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることが好ましく、1.0mPa・s以上3.5mPa・s以下であることがさらに好ましい。また、インクの温度25℃における静的表面張力は、28.0mN/m以上45.0mN/m以下であることが好ましい。さらに、インクのpHは、7.0以上9.0以下であることが好ましい。
(顔料分散液1)
水5.5gに濃塩酸5.0gを溶かした溶液に、温度5℃で、4-アミノ-1,2-ベンゼンジカルボン酸1.6gを加えた。温度10℃以下を維持するために、アイスバスで撹拌しながら、上記で得られた溶液に、水9.0gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かした溶液を加えた。15分撹拌後、比表面積が220m2/gであり、DBP吸油量が105mL/100gであるカーボンブラック6.0gを加え、混合した。さらに、15分撹拌後、得られたスラリーをろ紙(標準用ろ紙No.2、アドバンテック製)でろ過し、カーボンブラックを十分に水洗し、温度110℃のオーブンで乾燥させた。得られたカーボンブラックに水を添加して、カーボンブラックの含有量(固形分)が10.0%である顔料分散液1を得た。顔料分散液1には、粒子表面に-C6H3-(COONa)2基が結合している自己分散顔料が含まれていた。その後、イオン交換法を用いて、ナトリウムイオンをカリウムイオンに置換した。
顔料20.0g、処理剤8.0mmol、硝酸8.0mmol、及び水200.0mLを混合した。顔料としてはC.I.ピグメントイエロー74(Hansa yellow 5GXB、クラリアント製)、処理剤としてはp-アミノフタル酸を用いた。シルヴァーソン混合機を用い、温度25℃、6,000rpm、30分の条件で混合した。得られた混合物に、少量の水に亜硝酸カリウム8.0mmolを溶解させた水溶液をゆっくり添加した。水溶液の添加により、混合物の温度は60℃に達した。温度60℃で、混合物を1時間反応させた。その後、1.0mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて、混合物のpHを10に調製した。そして30分後、混合物に水20.0mLを加え、スペクトラムメンブランを用いて低分子物の除去、及び脱塩を行った。さらに、混合物を水で希釈し、自己分散顔料が含まれる顔料分散液2(顔料の含有量が10.0%)を得た。顔料分散液2には、粒子表面に-C6H3-(COOK)2基が結合している自己分散顔料が含まれていた。
顔料分散液2の調製において、処理剤の量を4.0mmol、顔料の種類をC.I.ピグメントレッド122(Ink Jet Magenta E 02、BASF製)に変更した。それ以外は、顔料分散液2の調製と同様の手順で、顔料分散液3(顔料の含有量が10.0%)を得た。顔料分散液3には、粒子表面に-C6H3-(COOK)2基が結合している自己分散顔料が含まれていた。
顔料分散液2の調製において、処理剤の量を1.6mmol、顔料の種類をC.I.ピグメントブルー15:3(Hostaperm Blue B2G、クラリアント製)に変更した。それ以外は、顔料分散液2の調製と同様の手順で、顔料分散液4(顔料の含有量が10.0%)を得た。顔料分散液4には、粒子表面に-C6H3-(COOK)2基が結合している自己分散顔料が含まれていた。
顔料10.0部、樹脂を含む液体15.0部、及びイオン交換水75.0部を混合した。顔料としてはカーボンブラックを用いた。樹脂を含む液体としては、スチレン-アクリル酸エチル-アクリル酸共重合体を、共重合体の酸価に対して等モル量の水酸化カリウム水溶液で中和し、樹脂の含有量が20.0%である液体を用いた。スチレン-アクリル酸エチル-アクリル酸共重合体は、酸価が150mgKOH/gであり、重量平均分子量が8,000である。この混合物を、粒径0.3mmのジルコニアビーズ200.0部を充填したバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)を用いて、水で冷やしながら5時間分散した。その後、この分散液を遠心分離処理して粗大粒子を除去し、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルタ(アドバンテック製)にて加圧ろ過を行った。前記の方法により、顔料が樹脂によって水中に分散された状態の顔料分散液5(顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が3.0%)を得た。
表2~4に記載の各成分を混合した。その際、表1に記載のノニオン性界面活性剤を用いた。十分撹拌した後、ポアサイズ1.2μmのフィルタにて加圧ろ過を行い、インクを得た。表2~4において、括弧内に示す数値は、LogP値である。また、調製後のインク1~31は、濃縮されていないインク(第2インク)であり、それぞれ第2インク1~31とする。
図1に示す主要部を有するインクジェット記録装置のメインタンク1に各インクを充填した。メインタンクの容量は、200gであり、メインタンク以外の容量は、145gであった。図1に示す循環ポンプ4を用いて、5mL/分の速度(流量)でインクを循環させることにより、インクを一定期間濃縮した。濃縮されたインクをそれぞれ第1インク1~31とする。参考例3及び4は、循環ポンプ4を用いなかったため、第1インク30、及び第1インク1は、濃縮されていなかった。
記録ヘッドとしては、ノズル数1024個、ノズル列1列当たりのノズル密度600dpi、1ノズル当たりのインク吐出量5ngの記録素子基板を千鳥状に配置した、ラインヘッドを使用した。第1インク及び第2インクの水の含有量の差が表5に記載の値となるまで、インクを循環させた後、メインタンクに濃縮されていない第2インクを充填した。その後、1/600インチ×1/600インチの単位領域にインク滴を3滴付与する条件で、A4サイズの記録媒体の全面にベタ画像を1枚記録した。記録媒体としては、普通紙(高品位専用紙HR-101S、キヤノン製)を使用した。ベタ画像を目視又はルーペで確認し、以下の評価基準にしたがって、画像の濃度ムラを評価した。
A:目視でもルーペで10倍に拡大しても、画像の濃度ムラが確認されなかった
B:目視では、画像の濃度ムラが確認されなかったものの、ルーペで10倍に拡大すると、画像の濃度ムラが確認された
C:目視で、画像の濃度ムラが確認された。
Claims (19)
- 第1インクが循環するインク循環路、前記インク循環路に第2インクを供給するインク供給路、及び前記インク循環路に連通する記録ヘッドを具備するインクジェット記録装置を使用して、前記記録ヘッドから前記第1インク及び前記第2インクを含む水性インクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記第1インク中の水の含有量(質量%)、及び前記第2インク中の水の含有量(質量%)の差が、2.00質量%以上であり、
前記第1インクが、顔料を含有し、かつ、前記第2インクよりも水の含有量が小さい濃縮インクであり、
前記第2インクが、LogP値が-1.10以上である第1水溶性有機溶剤、及び界面活性剤を含有することを特徴とするインクジェット記録方法。 - 前記第1インク中の前記顔料の含有量(質量%)が、0.10質量%以上15.00質量%以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
- 前記第1インク中の前記顔料が、樹脂によって分散されてなる請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
- 前記第2インク中の前記第1水溶性有機溶剤の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.50質量%以上15.00質量%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記第1水溶性有機溶剤が、アルカンジオール、及びグリコールエーテルからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記アルカンジオールの炭素数が、8以下である請求項5に記載のインクジェット記録方法。
- 前記グリコールエーテルが、R3-(OR4)n-OH(式中、R3は炭素数が2以上4以下のアルキル基であり、R4は炭素数が2又は3のアルキレン基であり、nは1以上3以下である)で表される化合物である請求項5又は6に記載のインクジェット記録方法。
- 前記第2インク中の前記界面活性剤の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.10質量%以上1.00質量%以下である請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記界面活性剤が、アセチレングリコール系のノニオン性界面活性剤である請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記第2インク中の前記界面活性剤の含有量(質量%)が、前記第2インク中の前記第1水溶性有機溶剤の含有量(質量%)に対する質量比率(倍)で、0.03倍以上である請求項1乃至10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記第2インク中の前記界面活性剤の含有量(質量%)が、前記第2インク中の前記第1水溶性有機溶剤の含有量(質量%)に対する質量比率(倍)で、1.50倍以下である請求項1乃至11のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記第2インクがさらに、顔料を含有する請求項1乃至12のいずれか1項にインクジェット記録方法。
- 前記第2インク中の前記顔料の含有量(質量%)が、0.10質量%以上15.00質量%以下である請求項13に記載のインクジェット記録方法。
- 前記記録ヘッドが、ラインヘッドである請求項1乃至14のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記インク循環路における前記第1インクの流速が、1~50mL/分である請求項1乃至15のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記インク循環路における前記第1インクの流速が、1~10mL/分である請求項16に記載のインクジェット記録方法。
- 前記インク供給路は、インク収容部から前記インク循環路に前記第2インクを供給する請求項1乃至17のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 第1インクが循環するインク循環路、前記インク循環路に第2インクを供給するインク供給路、前記インク循環路に連通する記録ヘッド、並びに前記第1インク及び前記第2インクを含む水性インクを具備するインクジェット記録装置であって、
前記第1インク中の水の含有量(質量%)、及び前記第2インク中の水の含有量(質量%)の差が、2.00質量%以上であり、
前記第1インクが、顔料を含有し、かつ、前記第2インクよりも水の含有量が小さい濃縮インクであり、
前記第2インクが、LogP値が-1.10以上である第1水溶性有機溶剤、及び界面活性剤を含有することを特徴とするインクジェット記録装置。
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