JP7079149B2 - 潜熱蓄熱材組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う無機塩水和物と、この無機塩水和物と混合した化合物を含む潜熱蓄熱材組成物に関する。
潜熱蓄熱材(PCM:Phase Change Material)は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して蓄熱することができる物性を有しており、本来廃棄される排熱をこの潜熱蓄熱材に蓄熱し、蓄えた熱を必要に応じて取り出すことで、エネルギが無駄なく有効に活用できる。潜熱蓄熱材は、パラフィンを代表とする有機化合物系の蓄熱材と、例えば、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)、チオ硫酸ナトリウム五水和物(Na・5HO)等の無機塩水和物系の蓄熱材に大別され、何れの蓄熱材も良く知られている。
無機塩水和物系に属する蓄熱材で、20℃前後~50℃前後の融点を有する潜熱蓄熱材は、未だ開発途上にあることから、近年でも、パラフィンを主成分とした潜熱蓄熱材が、工業用途の主流になっている。一方、酢酸ナトリウム三水和物単体の物性は、融点58℃、潜熱の蓄熱量276kJ/kg(400kJ/L)程度と、無機塩水和物系の潜熱蓄熱材の中でも、より大きな蓄熱量の潜熱を保持することができる。この特性を活かし、酢酸ナトリウム三水和物を主成分とする潜熱蓄熱材が使用された民生用商品に、例えば、繰り返し使用できる携帯用カイロ等が、既に市場に流通している。
特許文献1には、酢酸ナトリウム三水和物を含む潜熱蓄熱材組成物が、開示されている。特許文献1は、相変化物質と結晶化調節剤とを含み、34~56℃に液固相転移温度を有した蓄熱組成物であり、この相変化物質が、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)とチオ硫酸ナトリウム五水和物(Na・5HO)との共融混合物、または酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)と尿素(CO(NH)との共融混合物である。結晶化調節剤は、ゼリー状に固まる特性、または可塑化特性を有するパラフィン、アラビアゴム、ゼラチン、ワックス等の有機生成物である。チオ硫酸ナトリウム五水和物を含む蓄熱組成物では、酢酸ナトリウム三水和物が28~50重量%、チオ硫酸ナトリウム五水和物が72~50重量%の混合比率である場合に、当該蓄熱組成物は、人の体温の温度帯域をほぼ網羅できる38~56℃で融解し、添加した結晶化調節剤により、その融点で、蓄えた潜熱をより長い時間放熱する。そのため、この蓄熱組成物は、医療用発熱パッドの熱源等の医療用途に使用できるとされている。
特表2003-507524号公報
しかしながら、潜熱蓄熱材がパラフィン系の場合、潜熱蓄熱材の蓄熱量は物質毎に異なるため、一概に比較はできないが、体積当たりの蓄熱量は、概ね220~240kJ/kg(約175~185kJ/L)であり、酢酸ナトリウム三水和物と比べて低い。しかも、パラフィンは可燃性で、安全対策を必要とする場合もあり、使い勝手は良くない。
ところで、産業界では近年、体積あたりの潜熱の蓄熱量が高く、かつ相転移の温度帯域を、特に20℃前後~50℃前後とした潜熱蓄熱材を用いて、この潜熱蓄熱材に蓄熱した熱エネルギを積極的に活用する技術開発に、多くの関心が寄せられている。例えば、融点を20℃台の温度帯とした潜熱蓄熱材の場合、このような潜熱蓄熱材を壁等に用いて省エネルギ化対策を施した住宅では、昼間、太陽光による熱を潜熱蓄熱材に蓄熱することで、室温の上昇が抑制できると共に、その潜熱を夜間、放熱することにより、室温の下降を抑制することが可能になるため、人にとって快適な温度である室温20℃台の居住空間が、潜熱蓄熱材によって提供できるようになる。このように、潜熱蓄熱材に対し、融点のバリエーションが拡大できると、潜熱蓄熱材は、様々な業界で活用し得ると期待されている。
特に、血液や医薬品等の医療用物品を輸送するにあたり、例えば、20℃前後~40℃前後の常温下で行う保温対策では、現在、パラフィン系の潜熱蓄熱材が用いられているが、使用時に、前述したように、体積当たりの蓄熱量が低いことに起因した制限等もあり、パラフィンよりも高い蓄熱量の潜熱蓄熱材の開発を望む声もある。他方、特許文献1の蓄熱組成物は、医療用物品の搬送に伴う保温対策で、これまで使用されているパラフィン系の潜熱蓄熱材に代わるものになり得るが、融点が34~56℃の温度帯域であるため、特許文献1の蓄熱組成物は、例示した省エネルギ化対策を施した住宅に対し、室温20℃台の快適な居住空間を提供する用途等のように、20℃台の融点を必要とした用途では、全く使用できない。従って、パラフィン系の潜熱蓄熱材に代えて、20℃前後~50℃前後の温度帯域とする無機塩水和物系の潜熱蓄熱材の開発が、強く望まれていた。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、相転移を20℃前後~50℃前後の温度帯域で行い、かつパラフィン系の潜熱蓄熱材よりも大きな蓄熱量を得ることができる潜熱蓄熱材組成物を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る潜熱蓄熱材組成物は、以下の構成を有する。
(1)相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う無機塩水和物として、第1の無機塩水和物と、該第1の無機塩水和物と混合した化合物を含む潜熱蓄熱材組成物において、前記第1の無機塩水和物は、酢酸塩であること、前記化合物は、前記第1の無機塩水和物と、少なくとも1つの構成成分を異にした別の前記無機塩水和物であり、前記第1の無機塩水和物のカチオンの元素と同族に属した元素のカチオンと、少なくとも硫酸イオン、ヒドロキシメタンスルフィン酸イオン、亜リン酸水素イオン、または酢酸イオンのいずれかのアニオンにより、イオン結晶をなす第2の無機塩水和物であること、前記第1の無機塩水和物と前記第2の無機塩水和物との配合割合は、
前記第1の無機塩水和物 20~80wt%
前記第2の無機塩水和物 80~20wt%
であること、当該潜熱蓄熱材組成物は、前記第1の無機塩水和物単体の融点、または前記第2の無機塩水和物単体の融点と、相対的に7~37℃低い融点に調整された物性であること、を特徴とする。
なお、本発明に係る潜熱蓄熱材組成物において、「第1の無機塩水和物のカチオン」とは、1価、2価等のカチオンの価数を問わず、第1の無機塩水和物をなす酢酸塩の酢酸イオンと、イオン結晶をなし得るカチオンを意味するものであり、1価のカチオンには、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンのような、周期表第一族のアルカリ金属等に属する元素のカチオンが挙げられる。
(2)(1)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記酢酸塩は、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記アニオンは、硫酸イオン(SO 2-)であり、前記第2の無機塩水和物は、硫酸塩であること、を特徴とする。
(4)(3)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記硫酸塩は、硫酸ナトリウム十水和物(NaSO・10HO)であること、を特徴とする。
(5)(4)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記酢酸塩は、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であり、前記酢酸ナトリウム三水和物と前記硫酸ナトリウム十水和物との配合割合は、
前記酢酸ナトリウム三水和物 20~60wt%
前記硫酸ナトリウム十水和物 80~40wt%
であること、を特徴とする。
(6)(1)または(2)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記アニオンは、ヒドロキシメタンスルフィン酸イオン(CH)であり、前記第2の無機塩水和物は、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩であること、を特徴とする。
(7)(6)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記ヒドロキシメタンスルフィン酸塩は、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(CHNaOS・2HO)であること、を特徴とする。
(8)(7)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記酢酸塩は、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であり、前記酢酸ナトリウム三水和物と前記ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物との配合割合は、
前記酢酸ナトリウム三水和物 30~70wt%
前記ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物 70~30wt%
であること、を特徴とする。
(9)(1)または(2)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記アニオンは、亜リン酸水素イオン(HPO 2-)であり、前記第2の無機塩水和物は、亜リン酸水素塩であること、を特徴とする。
(10)(9)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記亜リン酸水素塩は、亜リン酸水素二ナトリウム五水和物(NaHPO・5HO)であること、を特徴とする。
(11)(10)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記酢酸塩は、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であり、前記酢酸ナトリウム三水和物と前記亜リン酸水素二ナトリウム五水和物との配合割合は、
前記酢酸ナトリウム三水和物 30~70wt%
前記亜リン酸水素二ナトリウム五水和物 70~30wt%
であること、を特徴とする。
(12)(1)または(2)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記アニオンは、酢酸イオン(CHCOO)であり、前記第2の無機塩水和物は、酢酸塩であること、を特徴とする。
(13)(12)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記酢酸塩は、酢酸リチウム二水和物(CHCOOLi・2HO)であること、を特徴とする。
(14)(13)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記第1の無機塩水和物の前記酢酸塩は、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であり、前記酢酸ナトリウム三水和物と前記酢酸リチウム二水和物との配合割合は、
前記酢酸ナトリウム三水和物 30~50wt%
前記酢酸リチウム二水和物 70~50wt%
であること、を特徴とする。
上記構成を有する本発明の潜熱蓄熱材組成物の作用・効果について説明する。
(1)相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う無機塩水和物として、第1の無機塩水和物と、該第1の無機塩水和物と混合した化合物を含む潜熱蓄熱材組成物において、第1の無機塩水和物は、酢酸塩であること、化合物は、第1の無機塩水和物と、少なくとも1つの構成成分を異にした別の無機塩水和物であり、第1の無機塩水和物のカチオンの元素と同族に属した元素のカチオンと、少なくとも硫酸イオン、ヒドロキシメタンスルフィン酸イオン、亜リン酸水素イオン、または酢酸イオンのいずれかのアニオンにより、イオン結晶をなす第2の無機塩水和物であること、第1の無機塩水和物と第2の無機塩水和物との配合割合は、
第1の無機塩水和物 20~80wt%
第2の無機塩水和物 80~20wt%
であること、当該潜熱蓄熱材組成物は、第1の無機塩水和物単体の融点、または第2の無機塩水和物単体の融点と、相対的に7~37℃低い融点に調整された物性であること、を特徴とする。この特徴により、本発明の潜熱蓄熱材組成物は、例えば、20℃前後~55℃前後等の温度帯域で相転移を行う物性の蓄熱材になり得るため、融点を、20℃前後~50℃前後としたパラフィン系の潜熱蓄熱材に代えて、このような温度帯域の融点を必要とする工業用途や民生用途等、様々な幅広い分野で使用することができる。しかも、本発明の潜熱蓄熱材組成物は、体積当たりの潜熱の蓄熱量について、一般的なパラフィン系の潜熱蓄熱材の蓄熱量175~185kJ/Lを超え、例えば、200kJ/L超の熱量の潜熱を蓄えることができる。
従って、本発明に係る潜熱蓄熱材組成物によれば、20℃~55℃の温度帯域で、相転移を行うことができると共に、パラフィン系の潜熱蓄熱材よりも大きな蓄熱量を得ることができる、という優れた効果を奏する。
(2)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、酢酸塩は、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であること、を特徴とする。この特徴により、体積当たりの潜熱の蓄熱量について、酢酸ナトリウム三水和物単体での潜熱の蓄熱量は、400kJ/L近傍と、無機塩水和物系の潜熱蓄熱材の中でも、大きいことから、このような酢酸ナトリウム三水和物を含有した本発明の潜熱蓄熱材組成物は、蓄熱できる潜熱の蓄熱量について、300kJ/L超えも可能になる程、パラフィン系の潜熱蓄熱材の蓄熱量を大幅に上回った物性となり得る。しかも、第2の無機塩水和物の混合により、調整したい融点の温度帯域(20℃前後~50℃前後)の上限側温度は、酢酸ナトリウム三水和物単体の融点58℃に対し、僅か数℃の差異で近い。そのため、この温度帯域の下限側温度は、その融点58℃より最大37℃低い約20℃近傍にまで調整することができ、本発明の潜熱蓄熱材組成物は、潜熱蓄熱材に蓄えた熱エネルギを活用するにあたり、20℃前後~50℃前後で相転移を必要とした潜熱蓄熱材のニーズに、合致したものになり易い。
(3),(4)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、第2の無機塩水和物は、例えば、硫酸ナトリウム十水和物(NaSO・10HO)、硫酸亜鉛七水和物(ZnSO・7HO)等、アニオンを硫酸イオン(SO 2-)とした硫酸塩であること、を特徴とする。この特徴により、一例である硫酸ナトリウム十水和物単体は、潜熱の蓄熱量355kJ/L程度と、無機塩水和物系の潜熱蓄熱材の中でも、より大きな蓄熱量の熱を蓄えることができることから、酢酸ナトリウム三水和物等の硫酸塩を含有した本発明の潜熱蓄熱材組成物も、その融点を、例えば、20℃台等の温度帯域で、より高い熱量の熱を蓄えることが可能である。
(5)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、酢酸塩は、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であり、酢酸ナトリウム三水和物と硫酸ナトリウム十水和物との配合割合は、
酢酸ナトリウム三水和物 20~60wt%
硫酸ナトリウム十水和物 80~40wt%
であること、を特徴とする。この特徴により、本発明の潜熱蓄熱材組成物は、このような幅広い配合割合の下で、融点を、例えば、約23~25℃の温度帯域でほぼ一定に維持できると共に、300kJ/L等を超える高い熱量の潜熱を蓄えることができる。
(6),(7)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、第2の無機塩水和物は、例えば、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(CHNaOS・2HO)等、アニオンをヒドロキシメタンスルフィン酸イオン(CH)としたヒドロキシメタンスルフィン酸塩であること、を特徴とする。この特徴により、一例であるヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物単体は、潜熱の蓄熱量263kJ/L程度と、無機塩水和物系の潜熱蓄熱材の中でも、大きな蓄熱量を保持することができることから、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物等のヒドロキシメタンスルフィン酸塩を含有した本発明の潜熱蓄熱材組成物も、その融点を、例えば、40℃台等の温度帯域で、より高い熱量の熱を蓄えることが可能である。
(8)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、酢酸塩は、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であり、酢酸ナトリウム三水和物とヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物との配合割合は、
酢酸ナトリウム三水和物 30~70wt%
ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物 70~30wt%
であること、を特徴とする。この特徴により、本発明の潜熱蓄熱材組成物は、このような幅広い配合割合の下で、融点を、例えば、約46~47℃の温度帯域でほぼ一定に維持できると共に、300kJ/L等を超える高い熱量の潜熱を蓄えることができる。
(9),(10)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、第2の無機塩水和物は、例えば、亜リン酸水素二ナトリウム五水和物(NaHPO・5HO)、亜リン酸カルシウム一水和物(CaHPO・HO)等、アニオンを亜リン酸水素イオン(HPO 2-)とした亜リン酸水素塩であること、を特徴とする。この特徴により、一例である亜リン酸水素二ナトリウム五水和物単体は、潜熱の蓄熱量359kJ/L程度と、無機塩水和物系の潜熱蓄熱材の中でも、大きな蓄熱量を保持することができることから、亜リン酸水素二ナトリウム五水和物等の亜リン酸水素塩を含有した本発明の潜熱蓄熱材組成物も、その融点を、例えば、50℃近傍等の温度帯域で、より高い熱量の熱を蓄えることが可能である。
(11)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、酢酸塩は、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であり、酢酸ナトリウム三水和物と亜リン酸水素二ナトリウム五水和物との配合割合は、
酢酸ナトリウム三水和物 30~70wt%
亜リン酸水素二ナトリウム五水和物 70~30wt%
であること、を特徴とする。この特徴により、本発明の潜熱蓄熱材組成物は、このような幅広い配合割合の下で、融点を、例えば、約50~52℃の温度帯域でほぼ一定に維持できると共に、340kJ/L等を超える高い熱量の潜熱を、蓄えることが可能である。
(12),(13)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、第2の無機塩水和物は、例えば、酢酸リチウム二水和物(CHCOOLi・2HO)、酢酸亜鉛二水和物((CHCOO)Zn・2HO)等、アニオンを酢酸イオン(CHCOO)とした酢酸塩であること、を特徴とする。この特徴により、第2の無機塩水和物は、第1の無機塩水和物の酢酸塩とは異なる構成成分の酢酸塩とした上で、第2の無機塩水和物の一例である酢酸リチウム二水和物単体は、潜熱の蓄熱量300kJ/L程度と、無機塩水和物系の潜熱蓄熱材の中でも、大きな蓄熱量を保持することができる。そのため、酢酸リチウム二水和物等の酢酸塩を含有した本発明の潜熱蓄熱材組成物も、その融点を、例えば、30℃台等の温度帯域で、より高い熱量の熱を蓄えることが可能である。
(14)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、第1の無機塩水和物の酢酸塩は、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であり、酢酸ナトリウム三水和物と酢酸リチウム二水和物との配合割合は、
酢酸ナトリウム三水和物 30~50wt%
酢酸リチウム二水和物 70~50wt%
であること、を特徴とする。この特徴により、本発明の潜熱蓄熱材組成物は、このような幅広い配合割合の下で、融点を、例えば、約36~37℃の温度帯域でほぼ一定に維持できると共に、300kJ/L等を超える高い熱量の潜熱を蓄えることができる。
実施形態の実施例1~4に係る潜熱蓄熱材組成物の構成成分を模式的に示す図である。 実施例1に係る潜熱蓄熱材組成物に関し、実施例1及びその比較例1の実験条件と、DSCによる融点及び蓄熱量の測定結果をまとめて掲載した表である。 比較例1の実験1に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、硫酸ナトリウム十水和物(第2の潜熱蓄熱材)を加えず、主成分を酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材)だけとした場合の実験結果を示すグラフである。 比較例1の実験2に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材)を加えず、主成分を硫酸ナトリウム十水和物(第2の潜熱蓄熱材)だけとした場合の実験結果を示すグラフである。 比較例1の実験3に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを7対3の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。 実施例1の実験4に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを3対2の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。 実施例1の実験5に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを1対1の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。 実施例1の実験6に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを2対3の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。 実施例1の実験7に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを3対7の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。 実施例1の実験8に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを1対4の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。 実施例1の実験9に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを1対9の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。 実施例2に係る潜熱蓄熱材組成物に関し、実施例2及びその比較例2の実験条件と、DSCによる融点及び蓄熱量の測定結果をまとめて掲載した表である。 比較例2の実験10に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材)を加えず、主成分をヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(第2の潜熱蓄熱材)だけとした場合の実験結果を示すグラフである。 実施例2の実験11に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを7対3の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。 実施例2の実験12に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを1対1の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。 実施例2の実験13に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを3対7の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。 実施例3に係る潜熱蓄熱材組成物に関し、実施例3及びその比較例3の実験条件と、DSCによる融点及び蓄熱量の測定結果をまとめて掲載した表である。 比較例3の実験14に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材)を加えず、主成分を亜リン酸水素二ナトリウム五水和物(第2の潜熱蓄熱材)だけとした場合の実験結果を示すグラフである。 実施例3の実験15に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを7対3の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。 実施例3の実験16に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを1対1の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。 実施例3の実験17に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを3対7の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。 実施例4に係る潜熱蓄熱材組成物に関し、実施例4及びその比較例4の実験条件と、DSCによる融点及び蓄熱量の測定結果をまとめて掲載した表である。 比較例4の実験18に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材)を加えず、主成分を酢酸リチウム二水和物(第2の潜熱蓄熱材)だけとした場合の実験結果を示すグラフである。 実施例4の実験21に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを1対1の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。 実施例4の実験22に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを3対7の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。
(実施形態)
以下、本発明に係る潜熱蓄熱材組成物について、実施形態(実施例1~4)を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、実施形態に係る潜熱蓄熱材組成物の構成成分を模式的に示す図である。
本実施形態に係る潜熱蓄熱材組成物1は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う無機塩水和物として、酢酸塩からなる第1の潜熱蓄熱材10(第1の無機塩水和物)と、この第1の潜熱蓄熱材10と混合した化合物20を含む。化合物20は、無機塩水和物として、第1の潜熱蓄熱材10とは別の第2の潜熱蓄熱材20(第2の無機塩水和物)である。すなわち、潜熱蓄熱材組成物1は、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20による2種の潜熱蓄熱材を混合した共融混合物であり、液相と固相との相変化を、20℃近傍~55℃前後の温度帯域に調整された潜熱蓄熱材である。
第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20との配合割合では、第1の潜熱蓄熱材10が20~80wt%であり、第2の潜熱蓄熱材20が80~20wt%であり、潜熱蓄熱材組成物1は、第1の潜熱蓄熱材10単体の融点、または第2の潜熱蓄熱材20単体の融点と、相対的に7~37℃低く融点を調整した物性である。
潜熱蓄熱材組成物1の用途は、調整したい融点の温度帯によって異なる。例えば、融点が20℃台の温度帯域の場合、前述したように、潜熱蓄熱材組成物1は、省エネルギ化対策を施した住宅の壁や床等に配設され、昼間、太陽光による熱を潜熱蓄熱材組成物1に蓄熱することで、室温の上昇を抑制すると共に、その潜熱を夜間、放熱することにより、室温の下降を抑制することができる。これにより、人にとって快適な温度である室温20℃台の居住空間が、後述するような、実施例1に係る潜熱蓄熱材組成物1A(1)によって提供できるようになる。
また、融点が20℃台~40℃台の温度帯域の場合には、後述するような、実施例2,4に係る潜熱蓄熱材組成物1B,1D(1)は、特許文献1と同様に、医療用途の使用や、医療用物品の保温等に用いることもできる。また、融点が50℃前後の温度帯域の場合では、後述するような、実施例2,3に係る潜熱蓄熱材組成物1B,1C(1)は、日常の食生活上の用途として、蓄えた潜熱を放熱することにより、配膳するまでの間、給食や料理を保温する場合や、食事するまでの間、弁当や食材を保温する場合等、様々な目的で活用し得る。
このような潜熱蓄熱材組成物1は、蓄熱材充填容器(図示省略)に漏れのない態様で、液密かつ気密に充填され、潜熱蓄熱材組成物1を充填した蓄熱材充填容器は、熱エネルギの活用を図る所定の収容手段の空間内に収容される。潜熱蓄熱材組成物1は、充填された蓄熱材充填容器の内外で、液相と固相との相変化に伴った潜熱の出入りを利用して、蓄えた熱を必要に応じて取り出すことができ、蓄熱とその放熱のサイクルを複数回繰り返して使用される。
(実施例1)
はじめに、実施例1に係る潜熱蓄熱材組成物1A(1)の概要について、説明する。実施例1に係る潜熱蓄熱材組成物1は、第1の潜熱蓄熱材10を、酢酸塩の一種である酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)とし、第2の潜熱蓄熱材20を、硫酸塩の一種である硫酸ナトリウム十水和物(NaSO・10HO)(第2の潜熱蓄熱材20A)として、酢酸ナトリウム三水和物と硫酸ナトリウム十水和物とを混合させた潜熱蓄熱材組成物1Aである。
酢酸ナトリウム三水和物単体の物性は、水和数3、分子量[g/mol]136.08、融点約58℃、融点より低い温度では、水に易溶な固体の物質である。硫酸ナトリウム十水和物単体の物性は、水和数10、分子量[g/mol]322.21、融点32.38℃、融点より低い温度では、水に可溶な固体の物質である。酢酸ナトリウム三水和物と硫酸ナトリウム十水和物との配合割合は、酢酸ナトリウム三水和物20~60wt%、硫酸ナトリウム十水和物80~40wt%であり、潜熱蓄熱材組成物1Aの融点は、約23~25℃の温度帯域に調整されている。
次に、潜熱蓄熱材組成物1Aにおいて、潜熱蓄熱材同士を2種(第1の潜熱蓄熱材10,第2の潜熱蓄熱材20A)混ぜ合わせたことにより、融点と蓄熱の性能に与える影響を確認する目的で、実験1~9の検証実験を行った。実験1,2は、潜熱蓄熱材を1種だけの試料で行った比較例1に係る実験である。実験3は、潜熱蓄熱材を2種混ぜ合わせた試料で行った比較例1に係る実験である。実験4~9は、潜熱蓄熱材を2種混ぜ合わせた試料で行った実施例1に係る実験である。
<実験方法>
検証実験では、潜熱蓄熱材組成物1Aから試料約10mgを採取した上で、周知の示差走査熱量測定装置(DSC:Differential scanning calorimetry)により、その試料台に載せた試料約10mgに空気30ml/min.の雰囲気ガスを晒し、密閉した状態にある条件下で、試料の蓄熱量を測定した。具体的には、試料を、30℃から60.5℃になるまで2℃/min.の加熱速度で加熱し、その後、60.5℃の温度で20分間保持することにより、試料に蓄熱を行った。この間に、試料から出入りした熱量を測定し、蓄熱量を求めた。但し、実験1では、試料は、融点約58℃の第1の潜熱蓄熱材10(酢酸ナトリウム三水和物)単体であるため、酢酸ナトリウム三水和物を確実に融解した状態にするために、加熱して保持する温度を80.5℃とした。
<実験1~9の共通条件>
・第1の潜熱蓄熱材10;酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)
<実験2~9の共通条件>
・第2の潜熱蓄熱材20A;硫酸ナトリウム十水和物(NaSO・10HO)
<実験3~9の共通条件>
・潜熱蓄熱材組成物1A;酢酸ナトリウム三水和物と硫酸ナトリウム十水和物との混合物
<実験1の条件>
・第2の潜熱蓄熱材20A;配合せず
・第1の潜熱蓄熱材10の配合割合;100wt%
(第1の潜熱蓄熱材10:第2の潜熱蓄熱材20A=100:0)
<実験2の条件>
・第1の潜熱蓄熱材10;配合せず
・第2の潜熱蓄熱材20Aの配合割合;100wt%
(第1の潜熱蓄熱材10:第2の潜熱蓄熱材20A=0:100)
<実験3~9の条件>
・第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Aとの配合割合
70wt%:30wt%(実験3)、60wt%:40wt%(実験4)、50wt%:50wt%(実験5)、40wt%:60wt%(実験6)、30wt%:70wt%(実験7)、20wt%:80wt%(実験8)、10wt%:90wt%(実験9)
図2は、実施例1に係る潜熱蓄熱材組成物に関し、実施例1及びその比較例1の実験条件と、DSCによる融点及び蓄熱量の測定結果をまとめて掲載した表である。図3は、比較例1の実験1に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、硫酸ナトリウム十水和物(第2の潜熱蓄熱材)を加えず、主成分を酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材)だけとした場合の実験結果を示すグラフである。図4は、比較例1の実験2に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材)を加えず、主成分を硫酸ナトリウム十水和物(第2の潜熱蓄熱材)だけとした場合の実験結果を示すグラフである。図5は、比較例1の実験3に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを7対3の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。図6は、実施例1の実験4に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを3対2の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。図7は、実施例1の実験5に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを1対1の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。図8は、実施例1の実験6に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを2対3の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。図9は、実施例1の実験7に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを3対7の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。図10は、実施例1の実験8に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを1対4の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。図11は、実施例1の実験9に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを1対9の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。
図3~図11に示すグラフでは、縦軸左側の目盛りが、単位時間に試料で蓄熱または放熱した熱量を示しており、この目盛りの「負」の領域は、試料に吸熱される熱量を示し、「正」の領域は、試料から放熱される熱量を示す。また、試料は、時間経過と共に推移する熱量の線図の中で、熱量の絶対値が一時的に大きくなり、最大値(ピークトップ)に達した時刻tに対応する試料の温度T(融点と定義)となったとき、最大の蓄熱量を呈する条件となる。試料の融解潜熱は、熱量の線図の中で、蓄熱量のピーク(融解ピーク)の開始時間と終了時間との間で、熱量を積算して得られるピーク面積S(図3等の図中、斜線の部分)の大きさで示されている。また、試料の熱量の単位は〔mW〕で、試料の質量の単位は〔mg〕であるが、単位換算を行った上で、蓄熱量の単位は、〔kJ/L〕としている。実施例2以降の各グラフについても同様である。
<実験結果>
比較例1の実験1に係る第1の潜熱蓄熱材10単体では、図3に示すように、融解ピークの時刻taに対応する温度Taは60.3℃で、蓄熱量Saは400kJ/Lであった。比較例1の実験2に係る第2の潜熱蓄熱材20A単体では、図4に示すように、融解ピークの時刻tbに対応する温度Tbは35.0℃で、蓄熱量Sbは355kJ/Lであった。比較例1の実験3に係る潜熱蓄熱材組成物1Aでは、図5に示すように、20~60℃の幅広い範囲にわたり、比較的小さな融解ピークが分散して発現し、吸熱の挙動も融解ピーク毎に生じたが、融解ピークの最大値は明確に現れず、融点として定義できなかった。なお、発現した融解ピーク全体の蓄熱量Scは342kJ/Lであった。
実施例1の実験4に係る潜熱蓄熱材組成物1Aでは、図6に示すように、融解ピークの時刻tdに対応する温度Tdは24.0℃で、蓄熱量Sdは301kJ/Lであった。実施例1の実験5に係る潜熱蓄熱材組成物1Aでは、図7に示すように、融解ピークの時刻teに対応する温度Teは23.8℃で、蓄熱量Seは230kJ/Lであった。実施例1の実験6に係る潜熱蓄熱材組成物1Aでは、図8に示すように、融解ピークの時刻tfに対応する温度Tfは24.8℃で、蓄熱量Sfは281kJ/Lであった。実施例1の実験7に係る潜熱蓄熱材組成物1Aでは、図9に示すように、融解ピークの時刻tgに対応する温度Tgは23.1℃で、蓄熱量Sgは312kJ/Lであった。実施例1の実験8に係る潜熱蓄熱材組成物1Aでは、図10に示すように、融解ピークの時刻thに対応する温度Thは25.4℃で、蓄熱量Shは321kJ/Lであった。実施例1の実験8に係る潜熱蓄熱材組成物1Aでは、図11に示すように、第1の融解ピークの時刻tj1に対応する温度Tj1は23.4℃、第2の融解ピークの時刻tj2に対応する温度Tj2は31.7℃で、蓄熱量Sjは321kJ/Lであった。
<考察>
比較例1に係る実験1の結果は、一般的に知られている酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材10)の融点58℃(実験1の測定値は60.3℃)と概ね一致し、実験2の結果は、一般的に知られている硫酸ナトリウム十水和物(第2の潜熱蓄熱材20A)の融点約33℃(実験2の測定値は35.0℃)と概ね一致している。比較例1に係る実験3では、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Aとが7:3の配合割合になると、比較的小さな融解ピークが分散する結果となった。その理由については、実施例1の実験9に係る考察内容と同じであると考えられるため、ここでの説明を省いて、後述する実施例1の考察欄でまとめて説明する。
これに対し、実施例1に係る実験4~9では、潜熱蓄熱材組成物1Aは、酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材10)と、硫酸ナトリウム十水和物(第2の潜熱蓄熱材20A)とを混合した共融混合物である。そのため、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Aとが共晶反応を呈し、潜熱蓄熱材組成物1Aが固相状態になると、潜熱蓄熱材組成物1Aの結晶構造が、第1の潜熱蓄熱材10による結晶と、第2の潜熱蓄熱材20Aによる結晶とに基づく共晶組織をなすものと推察される。この共晶組織の発現により、共晶反応特有の事象として、物性の一つである潜熱蓄熱材組成物1Aの融点が、第1の潜熱蓄熱材10単体の融点や、第2の潜熱蓄熱材20A単体の融点と比べて低くなったものと考えられる。また、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Aは何れも、元々350kJ/Lを超える蓄熱量の熱を蓄えることができている上に、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Aとの共晶反応により、潜熱蓄熱材組成物1A全体の蓄熱量を低下させる阻害要因が生じていないものと推察される。それ故に、このような第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Aを配合した潜熱蓄熱材組成物1Aでも、より高い蓄熱量を維持することができているものと考えられる。
なお、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Aとの配合割合が、1:1の場合である実験5と、2:3の場合である実験6で、蓄熱量Se,Sfが、それ以外の蓄熱量Sd~蓄熱量Sjに比べ、約10~30%減になったが、その理由については、現段階で解明できていない。加えて、実験9では、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Aとが1:9の配合割合になると、融解ピークが複数に分かれてしまう現象が生じた。また、比較例1に係る実験3では、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Aとが7:3の配合割合になると、比較的小さな融解ピークが分散する結果となった。
このような結果となった理由として、潜熱蓄熱材組成物1Aは、液相状態にある第1の潜熱蓄熱材10の構成成分(酢酸ナトリウム)と、液相状態にある第2の潜熱蓄熱材20Aの構成成分(硫酸ナトリウム)とを混ぜ合わせ、共晶反応により生成された共融混合物である。共融混合物は、共融温度で温度を一定に保ちながら、液相から固相、または固相から液相に相変化する。他方、共融混合物である潜熱蓄熱材組成物1Aにおいて、固溶体の生成にあたり、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Aとの配合割合で、第1の潜熱蓄熱材10の配合割合に対し、混合する第2の潜熱蓄熱材20Aの配合割合に制限が存在すると共に、第2の潜熱蓄熱材20Aの配合割合に対し、混合する潜熱蓄熱材10の配合割合に制限が存在する。
そのため、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Aとが、このような制限を回避する割合で配合されていないと、第1の潜熱蓄熱材10または第2の潜熱蓄熱材20Aのいずれかの潜熱蓄熱材で、この制限を超えて配合された分の過剰な構成成分において、共晶組織が生成できず、その構成成分は、初晶として、固相状態のまま残ってしまう。このような初晶は、共融温度と異なる温度で、液相化しようとする。すなわち、潜熱蓄熱材組成物1Aでは、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Aとの共晶反応により共晶組織をなす混合物の共融温度で、一つの融解ピークが発現すると共に、この共晶反応で過剰分となり、固相状態で残ってしまっている初晶の融解に起因して、別の融解ピークが発現したものと考えられる。
それ故に、比較例1に係る実験3では、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Aとが7:3の配合割合になっているため、潜熱蓄熱材組成物1Aには、第1の潜熱蓄熱材10の構成成分が、第2の潜熱蓄熱材20Aに対し過剰な割合になっているものと考えられ、比較的小さな融解ピークが分散したものと推察される。実施例1に係る実験9では、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Aとが1:9の配合割合になっているため、潜熱蓄熱材組成物1Aには、第2の潜熱蓄熱材20Aの構成成分が、第1の潜熱蓄熱材10に対し過剰な割合になっているものと考えられ、融解ピークが2つに分かれたものと推察される。従って、潜熱蓄熱材組成物1Aは、酢酸ナトリウム三水和物と硫酸ナトリウム十水和物を、酢酸ナトリウム三水和物20~60wt%、硫酸ナトリウム十水和物80~40wt%の配合割合で混合したものであることが好ましい。
(実施例2)
次に、実施例2に係る潜熱蓄熱材組成物1B(1)の概要について、説明する。実施例2に係る潜熱蓄熱材組成物1は、第1の潜熱蓄熱材10を、酢酸塩の一種である酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)とし、第2の潜熱蓄熱材20を、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩の一種であるヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(CHNaOS・2HO)(第2の潜熱蓄熱材20B)として、酢酸ナトリウム三水和物とヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物とを混合させた潜熱蓄熱材組成物1Bである。
酢酸ナトリウム三水和物単体の物性は、水和数3、分子量[g/mol]136.08、融点約58℃、融点より低い温度では、水に易溶な固体の物質である。ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物の物性は、水和数2、分子量[g/mol]154.12、融点約65℃、融点より低い温度では、水に易溶な固体の物質である。酢酸ナトリウム三水和物とヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物との配合割合は、酢酸ナトリウム三水和物30~70wt%、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物70~30wt%であり、潜熱蓄熱材組成物1Bの融点は、約46~48℃の温度帯域に調整されている。
次に、潜熱蓄熱材組成物1Bにおいて、潜熱蓄熱材同士を2種(第1の潜熱蓄熱材10,第2の潜熱蓄熱材20B)混ぜ合わせたことにより、融点と蓄熱の性能に与える影響を確認する目的で、前述した実験1と、実験10~13の検証実験を行った。実験1,10は、潜熱蓄熱材を1種だけの試料で行った比較例2に係る実験である。実験11~13は、潜熱蓄熱材を2種混ぜ合わせた試料で行った実施例2に係る実験である。
<実験方法>
検証実験では、潜熱蓄熱材組成物1Bから試料約10mgを採取した上で、示差走査熱量測定装置により、その試料台に載せた試料約10mgに空気30ml/min.の雰囲気ガスを晒し、密閉した状態にある条件下で、試料の蓄熱量を測定した。具体的には、試料を、30℃から80.5℃になるまで2℃/min.の加熱速度で加熱し、その後、80.5℃の温度で20分間保持することにより、試料に蓄熱を行った。この間に、試料から出入りした熱量を測定し、蓄熱量を求めた。但し、実験10では、試料は、融点約65℃の第2の潜熱蓄熱材20B(ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物)単体であるため、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物を確実に融解した状態にするために、加熱して保持する温度を90.5℃とした。
<実験1と実験11~13の共通条件>
・第1の潜熱蓄熱材10;酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)
<実験10~13の共通条件>
・第2の潜熱蓄熱材20B;ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(CHNaOS・2HO)
<実験10~13の共通条件>
・潜熱蓄熱材組成物1B;酢酸ナトリウム三水和物とヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物との混合物
<実験1の条件>
・第2の潜熱蓄熱材20B;配合せず
・第1の潜熱蓄熱材10の配合割合;100wt%
(第1の潜熱蓄熱材10:第2の潜熱蓄熱材20B=100:0)
<実験10の条件>
・第1の潜熱蓄熱材10;配合せず
・第2の潜熱蓄熱材20Bの配合割合;100wt%
(第1の潜熱蓄熱材10:第2の潜熱蓄熱材20B=0:100)
<実験11~13の条件>
・第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Bとの配合割合
70wt%:30wt%(実験11)、50wt%:50wt%(実験12)、30wt%:70wt%(実験13)
図12は、実施例2に係る潜熱蓄熱材組成物に関し、実施例2及びその比較例2の実験条件と、DSCによる融点及び蓄熱量の測定結果をまとめて掲載した表である。図13は、比較例2の実験10に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材)を加えず、主成分をヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(第2の潜熱蓄熱材)だけとした場合の実験結果を示すグラフである。図14は、実施例2の実験11に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを7対3の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。図15は、実施例2の実験12に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを1対1の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。図16は、実施例2の実験13に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを3対7の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。
<実験結果>
実施例1でも前述した通り、比較例2の実験1に係る第1の潜熱蓄熱材10単体では、図3に示すように、融解ピークの時刻taに対応する温度Taは60.3℃で、蓄熱量Saは400kJ/Lであった。比較例2の実験10に係る第2の潜熱蓄熱材20B単体では、図13に示すように、融解ピークの時刻tkに対応する温度Tkは66.3℃で、蓄熱量Skは263kJ/Lであった。
実施例2の実験11に係る潜熱蓄熱材組成物1Bでは、図14に示すように、融解ピークの時刻tmに対応する温度Tmは47.6℃で、蓄熱量Smは355kJ/Lであった。実施例2の実験12に係る潜熱蓄熱材組成物1Bでは、図15に示すように、融解ピークの時刻tnに対応する温度Tnは46.7℃で、蓄熱量Snは341kJ/Lであった。実施例2の実験13に係る潜熱蓄熱材組成物1Bでは、図16に示すように、融解ピークの時刻tpに対応する温度Tpは47.4℃で、蓄熱量Spは305kJ/Lであった。
<考察>
比較例2に係る実験1の結果は、一般的に知られている酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材10)の融点58℃(実験1の測定値は60.3℃)と概ね一致し、実験10の結果は、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(第2の潜熱蓄熱材20B)の融点65℃(実験10の測定値は66.3℃)と概ね一致している。
これに対し、実施例2に係る実験11,12,13では、潜熱蓄熱材組成物1Bは、酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材10)と、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(第2の潜熱蓄熱材20B)とを混合した共融混合物である。そのため、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Bとが共晶反応を呈し、潜熱蓄熱材組成物1Bが固相状態になると、潜熱蓄熱材組成物1Bの結晶構造が、第1の潜熱蓄熱材10による結晶と、第2の潜熱蓄熱材20Bによる結晶とに基づく共晶組織をなすものと推察される。この共晶組織の発現により、共晶反応特有の事象として、物性の一つである潜熱蓄熱材組成物1Bの融点が、第1の潜熱蓄熱材10単体の融点や、第2の潜熱蓄熱材20B単体の融点と比べて低くなったものと考えられる。また、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Bは何れも、元々250kJ/Lを超える蓄熱量の熱を蓄えることができている上に、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Bとの共晶反応により、潜熱蓄熱材組成物1B全体の蓄熱量を低下させる阻害要因が生じていないものと推察される。それ故に、このような第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Bを配合した潜熱蓄熱材組成物1Bでも、より高い蓄熱量を維持することができているものと考えられる。
(実施例3)
次に、実施例3に係る潜熱蓄熱材組成物1C(1)の概要について、説明する。実施例3に係る潜熱蓄熱材組成物1は、第1の潜熱蓄熱材10を、酢酸塩の一種である酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)とし、第2の潜熱蓄熱材20を、亜リン酸水素塩の一種である亜リン酸水素二ナトリウム五水和物(NaHPO・5HO)(第2の潜熱蓄熱材20C)として、酢酸ナトリウム三水和物と亜リン酸水素二ナトリウム五水和物とを混合させた潜熱蓄熱材組成物1Cである。
酢酸ナトリウム三水和物単体の物性は、水和数3、分子量[g/mol]136.08、融点約58℃、融点より低い温度では、水に易溶な固体の物質である。亜リン酸水素二ナトリウム五水和物の物性は、水和数5、分子量[g/mol]216.04、融点53~58℃、融点より低い温度では、水に易溶な固体の物質である。酢酸ナトリウム三水和物と亜リン酸水素二ナトリウム五水和物との配合割合は、酢酸ナトリウム三水和物30~70wt%、亜リン酸水素二ナトリウム五水和物70~30wt%であり、潜熱蓄熱材組成物1Cの融点は、約50~52℃の温度帯域に調整されている。
次に、潜熱蓄熱材組成物1Cにおいて、潜熱蓄熱材同士を2種(第1の潜熱蓄熱材10,第2の潜熱蓄熱材20C)混ぜ合わせたことにより、融点と蓄熱の性能に与える影響を確認する目的で、前述した実験1と、実験14~17の検証実験を行った。実験1,14は、潜熱蓄熱材を1種だけの試料で行った比較例3に係る実験である。実験15~17は、潜熱蓄熱材を2種混ぜ合わせた試料で行った実施例3に係る実験である。
<実験方法>
検証実験では、潜熱蓄熱材組成物1Cから試料約10mgを採取した上で、示差走査熱量測定装置により、その試料台に載せた試料約10mgに空気30ml/min.の雰囲気ガスを晒し、密閉した状態にある条件下で、試料の蓄熱量を測定した。具体的には、試料を、30℃から80.5℃になるまで2℃/min.の加熱速度で加熱し、その後、80.5℃の温度で20分間保持することにより、試料に蓄熱を行った。この間に、試料から出入りした熱量を測定し、蓄熱量を求めた。但し、実験14では、試料は、融点53~58℃の第2の潜熱蓄熱材20C(亜リン酸水素二ナトリウム五水和物)単体であるため、亜リン酸水素二ナトリウム五水和物を確実に融解した状態にするために、加熱して保持する温度を90.5℃とした。
<実験1と実験15~17の共通条件>
・第1の潜熱蓄熱材10;酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)
<実験14~17の共通条件>
・第2の潜熱蓄熱材20C;亜リン酸水素二ナトリウム五水和物(NaHPO・5HO)
<実験15~17の共通条件>
・潜熱蓄熱材組成物1C;酢酸ナトリウム三水和物と亜リン酸水素二ナトリウム五水和物との混合物
<実験1の条件>
・第2の潜熱蓄熱材20C;配合せず
・第1の潜熱蓄熱材10の配合割合;100wt%
(第1の潜熱蓄熱材10:第2の潜熱蓄熱材20C=100:0)
<実験14の条件>
・第1の潜熱蓄熱材10;配合せず
・第2の潜熱蓄熱材20Cの配合割合;100wt%
(第1の潜熱蓄熱材10:第2の潜熱蓄熱材20C=0:100)
<実験15~17の条件>
・第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Cとの配合割合
70wt%:30wt%(実験15)、50wt%:50wt%(実験16)、30wt%:70wt%(実験17)
図17は、実施例3に係る潜熱蓄熱材組成物に関し、実施例3及びその比較例3の実験条件と、DSCによる融点及び蓄熱量の測定結果をまとめて掲載した表である。図18は、比較例3の実験14に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材)を加えず、主成分を亜リン酸水素二ナトリウム五水和物(第2の潜熱蓄熱材)だけとした場合の実験結果を示すグラフである。図19は、実施例3の実験15に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを7対3の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。図20は、実施例3の実験16に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを1対1の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。図21は、実施例3の実験17に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを3対7の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。
<実験結果>
実施例1でも前述した通り、比較例3の実験1に係る第1の潜熱蓄熱材10単体では、図3に示すように、融解ピークの時刻taに対応する温度Taは60.3℃で、蓄熱量Saは400kJ/Lであった。比較例3の実験14に係る第2の潜熱蓄熱材20C単体では、図18に示すように、融解ピークの時刻tqに対応する温度Tqは59.3℃で、蓄熱量Sqは359kJ/Lであった。
実施例3の実験15に係る潜熱蓄熱材組成物1Cでは、図19に示すように、融解ピークの時刻trに対応する温度Trは51.3℃で、蓄熱量Smは373kJ/Lであった。実施例3の実験16に係る潜熱蓄熱材組成物1Cでは、図20に示すように、融解ピークの時刻tsに対応する温度Tsは50.9℃で、蓄熱量Ssは341kJ/Lであった。実施例3の実験17に係る潜熱蓄熱材組成物1Cでは、図21に示すように、融解ピークの時刻ttに対応する温度Ttは51.8℃で、蓄熱量Stは384kJ/Lであった。
<考察>
比較例3に係る実験1の結果は、一般的に知られている酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材10)の融点(約58℃)と概ね一致し、実験14の結果は、亜リン酸水素二ナトリウム五水和物(第2の潜熱蓄熱材20C)の融点53~58℃(実験14の測定値は59.3℃)と概ね一致している。
これに対し、実施例3に係る実験15,16,17では、潜熱蓄熱材組成物1Cは、酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材10)と、亜リン酸水素二ナトリウム五水和物(第2の潜熱蓄熱材20C)とを混合した共融混合物である。そのため、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Cとが共晶反応を呈し、潜熱蓄熱材組成物1Cが固相状態になると、潜熱蓄熱材組成物1Cの結晶構造が、第1の潜熱蓄熱材10による結晶と、第2の潜熱蓄熱材20Cによる結晶とに基づく共晶組織をなすものと推察される。この共晶組織の発現により、共晶反応特有の事象として、物性の一つである潜熱蓄熱材組成物1Cの融点が、第1の潜熱蓄熱材10単体の融点や、第2の潜熱蓄熱材20C単体の融点と比べて低くなったものと考えられる。また、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Cは何れも、元々350kJ/Lを超える蓄熱量の熱を蓄えることができている上に、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Cとの共晶反応により、潜熱蓄熱材組成物1C全体の蓄熱量を低下させる阻害要因が生じていないものと推察される。それ故に、このような第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Cを配合した潜熱蓄熱材組成物1Cでも、より高い蓄熱量を維持することができているものと考えられる。
(実施例4)
次に、実施例4に係る潜熱蓄熱材組成物1D(1)の概要について、説明する。実施例4では、第1の潜熱蓄熱材10は、酢酸塩の一種である酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であり、第2の潜熱蓄熱材20は、第1の潜熱蓄熱材10と同じ酢酸塩でも、第1の潜熱蓄熱材10の構成成分と異なる酢酸リチウム二水和物(CHCOOLi・2HO)(第2の潜熱蓄熱材20D)である。すなわち、実施例4に係る潜熱蓄熱材組成物1は、酢酸ナトリウム三水和物と酢酸リチウム二水和物とを混合させた潜熱蓄熱材組成物1Dである。
酢酸ナトリウム三水和物単体の物性は、水和数3、分子量[g/mol]136.08、融点約58℃、融点より低い温度では、水に易溶な固体の物質である。酢酸リチウム二水和物の物性は、水和数2、分子量[g/mol]102.02、融点53~56℃、融点より低い温度では、水に易溶な固体の物質である。酢酸ナトリウム三水和物と酢酸リチウム二水和物との配合割合は、酢酸ナトリウム三水和物20~80wt%、酢酸リチウム二水和物80~20wt%であり、より好ましくは、酢酸ナトリウム三水和物30~50wt%、酢酸リチウム二水和物70~50wt%である。潜熱蓄熱材組成物1Dの融点は、約36~37℃の温度帯域に調整されている。
次に、潜熱蓄熱材組成物1Dにおいて、潜熱蓄熱材同士を2種(第1の潜熱蓄熱材10,第2の潜熱蓄熱材20D)混ぜ合わせたことにより、融点と蓄熱の性能に与える影響を確認する目的で、前述した実験1と、実験18~23の検証実験を行った。実験1,18は、潜熱蓄熱材を1種だけの試料で行った比較例4に係る実験である。実験19~23は、潜熱蓄熱材を2種混ぜ合わせた試料で行った実施例4に係る実験である。
<実験方法>
検証実験では、潜熱蓄熱材組成物1Dから試料約10mgを採取した上で、示差走査熱量測定装置により、その試料台に載せた試料約10mgに空気30ml/min.の雰囲気ガスを晒し、密閉した状態にある条件下で、試料の蓄熱量を測定した。具体的には、試料を、30℃から70.5℃になるまで2℃/min.の加熱速度で加熱し、その後、70.5℃の温度で20分間保持することにより、試料に蓄熱を行った。この間に、試料から出入りした熱量を測定し、蓄熱量を求めた。
<実験1と実験19~23の共通条件>
・第1の潜熱蓄熱材10;酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)
<実験18~23の共通条件>
・第2の潜熱蓄熱材20D;酢酸リチウム二水和物(CHCOOLi・2HO)
<実験19~23の共通条件>
・潜熱蓄熱材組成物1D;酢酸ナトリウム三水和物と酢酸リチウム二水和物との混合物
<実験1の条件>
・第2の潜熱蓄熱材20D;配合せず
・第1の潜熱蓄熱材10の配合割合;100wt%
(第1の潜熱蓄熱材10:第2の潜熱蓄熱材20D=100:0)
<実験18の条件>
・第1の潜熱蓄熱材10;配合せず
・第2の潜熱蓄熱材20Dの配合割合;100wt%
(第1の潜熱蓄熱材10:第2の潜熱蓄熱材20D=0:100)
<実験19~23の条件>
・第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Dとの配合割合
80wt%:20wt%(実験19)、70wt%:30wt%(実験20)、50wt%:50wt%(実験21)、30wt%:70wt%(実験22)、20wt%:80wt%(実験23)
図22は、実施例4に係る潜熱蓄熱材組成物に関し、実施例4及びその比較例4の実験条件と、DSCによる融点及び蓄熱量の測定結果をまとめて掲載した表である。図23は、比較例4の実験18に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材)を加えず、主成分を酢酸リチウム二水和物(第2の潜熱蓄熱材)だけとした場合の実験結果を示すグラフである。図24は、実施例4の実験21に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを1対1の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。図25は、実施例4の実験22に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフであり、第1の潜熱蓄熱材と第2の潜熱蓄熱材とを3対7の割合で配合した場合の実験結果を示すグラフである。
<実験結果>
実施例1でも前述した通り、比較例4の実験1に係る第1の潜熱蓄熱材10単体では、図3に示すように、融解ピークの時刻taに対応する温度Taは60.3℃で、蓄熱量Saは400kJ/Lであった。比較例4の実験18に係る第2の潜熱蓄熱材20D単体では、図23に示すように、融解ピークの時刻tuに対応する温度Tuは56.1℃で、蓄熱量Suは304kJ/Lであった。
実施例4の実験19に係る潜熱蓄熱材組成物1Dでは、第1の融解ピークの時刻tv1に対応する温度Tv1は36.8℃、第2の融解ピークの時刻tv2に対応する温度Tv2は48.9℃で、蓄熱量Svは350kJ/Lであった。実施例4の実験20に係る潜熱蓄熱材組成物1Dでは、第1の融解ピークの時刻tw1に対応する温度Tw1は37.2℃、第2の融解ピークの時刻tw2に対応する温度Tw2は45.3℃で、蓄熱量Swは363kJ/Lであった。実施例4の実験21に係る潜熱蓄熱材組成物1Dでは、図24に示すように、融解ピークの時刻txに対応する温度Txは36.4℃で、蓄熱量Sxは303kJ/Lであった。実施例4の実験22に係る潜熱蓄熱材組成物1Dでは、図25に示すように、融解ピークの時刻tyに対応する温度Tyは37.7℃で、蓄熱量Syは334kJ/Lであった。実施例4の実験23に係る潜熱蓄熱材組成物1Dでは、第1の融解ピークの時刻tz1に対応する温度Tw1は37.8℃、第2の融解ピークの時刻tz2に対応する温度Tz2は47.4℃で、蓄熱量Swは308kJ/Lであった。なお、実験19,20,23の実験結果に係るグラフの掲載は省略した。
<考察>
比較例4に係る実験1の結果は、一般的に知られている酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材10)の融点(約58℃)と概ね一致し、実験18の結果は、酢酸リチウム二水和物(第2の潜熱蓄熱材20D)の融点53~56℃(実験18の測定値は56.1℃)と一致している。
これに対し、実施例4に係る実験19~23では、潜熱蓄熱材組成物1Dは、酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材10)と、酢酸リチウム二水和物(第2の潜熱蓄熱材20D)とを混合した共融混合物である。そのため、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Dとが共晶反応を呈し、潜熱蓄熱材組成物1Dが固相状態になると、潜熱蓄熱材組成物1Dの結晶構造が、第1の潜熱蓄熱材10による結晶と、第2の潜熱蓄熱材20Dによる結晶とに基づく共晶組織をなすものと推察される。この共晶組織の発現により、共晶反応特有の事象として、物性の一つである潜熱蓄熱材組成物1Dの融点が、第1の潜熱蓄熱材10単体の融点や、第2の潜熱蓄熱材20D単体の融点と比べて低くなったものと考えられる。また、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Dは何れも、元々300kJ/Lを超える蓄熱量の熱を蓄えることができている上に、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Dとの共晶反応により、潜熱蓄熱材組成物1D全体の蓄熱量を低下させる阻害要因が生じていないものと推察される。それ故に、このような第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Dを配合した潜熱蓄熱材組成物1Dでも、より高い蓄熱量を維持することができているものと考えられる。
なお、酢酸ナトリウム三水和物と酢酸リチウム二水和物との配合割合について、実験19において、酢酸ナトリウム三水和物と酢酸リチウム二水和物との配合割合を4:1とした場合と、実験20において、酢酸ナトリウム三水和物と酢酸リチウム二水和物との配合割合を7:3とした場合と、実験23において、酢酸ナトリウム三水和物と酢酸リチウム二水和物との配合割合を1:4とした場合で、融解ピークが2つに分かれてしまう現象が生じた。その理由として、潜熱蓄熱材組成物1Dでは、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Dとの共晶反応により共晶組織をなす混合物の共融温度で、一つの融解ピークが発現すると共に、第1の潜熱蓄熱材10または第2の潜熱蓄熱材20Dのいずれかで、この共晶反応で過剰分となり、固相状態で残ってしまっている初晶の融解に起因して、別の融解ピークが発現したものと考えられる。
それ故に、実施例4に係る実験19では、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Dとが4:1の配合割合になっているため、潜熱蓄熱材組成物1Dには、第1の潜熱蓄熱材10の構成成分が、第2の潜熱蓄熱材20Dに対し過剰な割合になっているものと考えられ、融解ピークが2つに分かれたものと推察される。同様に、実施例4に係る実験20では、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Dとが7:3の配合割合になっているため、潜熱蓄熱材組成物1Dには、第1の潜熱蓄熱材10の構成成分が、第2の潜熱蓄熱材20Dに対し過剰な割合になっているものと考えられ、融解ピークが2つに分かれたものと推察される。その反対に、実施例1に係る実験23では、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20Dとが1:4の配合割合になっているため、潜熱蓄熱材組成物1Dには、第2の潜熱蓄熱材20Dの構成成分が、第1の潜熱蓄熱材10に対し過剰な割合になっているものと考えられ、融解ピークが2つに分かれたものと推察される。
他方、実験19,20,23において、これらの2つの融解ピークのうち、第1の融解ピークの時刻tv1,tw1,tz1に対応した温度Tv1,Tw1,Tz1は、36.8~37.8℃であり、実験21,22の融解ピークに対応した温度Tx1,Ty1の36.4~37.7℃と、概ね同じである。しかしながら、蓄熱量Sv,Sw,Szは、300kJ/Lを超えているものの、時刻tv2,tw2,tz2で第2の融解ピークが生じている分、温度Tv1,Tw1,Tz1における蓄熱量は、蓄熱量Sv,Sw,Szのうちの一部となり、実験21,22の蓄熱量Sx,Syより小さくなる。従って、潜熱蓄熱材組成物1Dは、酢酸ナトリウム三水和物と酢酸リチウム二水和物を、酢酸ナトリウム三水和物30~50wt%、酢酸リチウム二水和物70~50wt%の配合割合で混合したものであることが、より好ましい。
次に、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1の作用・効果について説明する。本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う無機塩水和物として、第1の潜熱蓄熱材10と、この第1の潜熱蓄熱材10と混合した化合物20を含む潜熱蓄熱材組成物において、第1の潜熱蓄熱材10は、酢酸塩の一種である酢酸ナトリウム三水和物であること、化合物20は、第1の潜熱蓄熱材10と、少なくとも1つの構成成分を異にした別の無機塩水和物であり、第1の潜熱蓄熱材10のカチオン(ナトリウムイオン)の元素「Na」と同族に属した元素のカチオンと、少なくとも硫酸イオン、ヒドロキシメタンスルフィン酸イオン、亜リン酸水素イオン、または酢酸イオンのいずれかのアニオンにより、イオン結晶をなす第2の潜熱蓄熱材であること、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20との配合割合では、第1の潜熱蓄熱材10が20~80wt%、第2の潜熱蓄熱材20が80~20wt%であること、当該潜熱蓄熱材組成物1は、第1の潜熱蓄熱材10単体の融点、または第2の潜熱蓄熱材20単体の融点と、相対的に7~37℃低い融点に調整された物性であること、を特徴とする。
この特徴により、潜熱蓄熱材組成物1は、例えば、20℃前後~55℃前後等の温度帯域で相転移を行う蓄熱材になり得るため、融点を、20℃前後~50℃前後としたパラフィン系の潜熱蓄熱材に代えて、このような温度帯域の融点を必要とする工業用途や民生用途等、様々な幅広い分野で使用することができる。
潜熱蓄熱材組成物1の融点が20℃前後~55℃前後等に調整される理由として、潜熱蓄熱材組成物1は、酢酸塩水和物とする第1の潜熱蓄熱材10と、無機塩水和物である第2の潜熱蓄熱材20とを混合した共融混合物である。そのため、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20とが共晶反応を呈し、潜熱蓄熱材組成物1が固相状態になると、潜熱蓄熱材組成物1の結晶構造は、第1の潜熱蓄熱材10による結晶と、第2の潜熱蓄熱材20による結晶とに基づく共晶組織をなす。このような共晶組織が形成されると、潜熱蓄熱材組成物1は、第1の潜熱蓄熱材10の物性や第2の潜熱蓄熱材20の物性とは異なる新たな物性を呈し、共晶反応特有の事象として、その物性の一つである潜熱蓄熱材組成物1の融点が、第1の潜熱蓄熱材10単体の融点や、第2の潜熱蓄熱材20単体の融点と比べて低くなるからである。
特に、第1の潜熱蓄熱材10が20~80wt%、第2の潜熱蓄熱材20が80~20wt%の割合で配合されていると、潜熱蓄熱材組成物1の融点は、第1の潜熱蓄熱材10単体の融点や第2の潜熱蓄熱材20単体の融点より、7~37℃低く調整することができる。そのため、第1の潜熱蓄熱材10が、融点58℃の酢酸ナトリウム三水和物である場合、実施例1~4に挙げた通り、融点を、約23~52℃の温度帯域内に調整した潜熱蓄熱材組成物1を得ることができる。しかも、体積当たりの潜熱の蓄熱量について、この潜熱蓄熱材組成物1は、一般的なパラフィン系の潜熱蓄熱材の蓄熱量175~185kJ/Lを超え、200kJ/L超の熱量の熱を蓄えることができる。
従って、本実施形態に係る潜熱蓄熱材組成物1によれば、相転移を20℃前後~55℃前後の温度帯域で行い、かつパラフィン系の潜熱蓄熱材よりも大きな蓄熱量を得ることができる、という優れた効果を奏する。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1では、酢酸塩は、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であること、を特徴とする。この特徴により、体積当たりの潜熱の蓄熱量について、酢酸ナトリウム三水和物単体での潜熱の蓄熱量は、400kJ/L近傍と、無機塩水和物系の潜熱蓄熱材の中でも、大きいことから、このような酢酸ナトリウム三水和物を含有した潜熱蓄熱材組成物1は、蓄熱できる潜熱の蓄熱量について、300kJ/L超えも可能になる程、パラフィン系の潜熱蓄熱材の蓄熱量を大幅に上回った物性となり得る。しかも、第2の潜熱蓄熱材20の混合により、調整したい融点の温度帯域(20℃前後~50℃前後)の上限側温度は、酢酸ナトリウム三水和物単体の融点58℃に対し、僅か数℃の差異で近い。そのため、この温度帯域の下限側温度は、その融点58℃より最大37℃低い約20℃近傍にまで調整することができ、潜熱蓄熱材組成物1は、潜熱蓄熱材に蓄えた熱エネルギを活用するにあたり、20℃前後~50℃前後で相転移を必要とした潜熱蓄熱材のニーズに、合致したものになり易い。加えて、酢酸ナトリウム三水和物は、不燃性で、かつ無毒で非危険物であるため、取扱いが容易である上に、市場で幅広く流通して入手し易く、安価である。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1(1A)では、アニオンは、硫酸イオンであり、第2の潜熱蓄熱材20は、硫酸塩の一種である硫酸ナトリウム十水和物(NaSO・10HO)(第2の潜熱蓄熱材20A)であること、を特徴とする。この特徴により、硫酸ナトリウム十水和物単体は、潜熱の蓄熱量355kJ/L程度と、無機塩水和物系の潜熱蓄熱材の中でも、より大きな蓄熱量の熱を蓄えることができることから、酢酸ナトリウム三水和物を含有した潜熱蓄熱材組成物1Aも、より高い熱量の熱を蓄えることができている。しかも、酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材10)に硫酸ナトリウム十水和物(第2の潜熱蓄熱材20A)を混合させることで、潜熱蓄熱材組成物1Aは、その融点を、第1の潜熱蓄熱材10単体の融点58℃に比べ、約32~35℃も低く、第2の潜熱蓄熱材20A単体の融点約33℃に比べても、約10℃低く調整できた物性になる。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1Aでは、酢酸塩は、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であり、酢酸ナトリウム三水和物と硫酸ナトリウム十水和物との配合割合では、酢酸ナトリウム三水和物が20~60wt%、硫酸ナトリウム十水和物が80~40wt%であること、を特徴とする。この特徴により、潜熱蓄熱材組成物1Aは、このような幅広い配合割合の下で、融点を、約23~25℃にほぼ一定に維持できると共に、300kJ/Lを超える高い熱量の潜熱を、蓄えることができる。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1(1B)では、アニオンは、ヒドロキシメタンスルフィン酸イオンであり、第2の潜熱蓄熱材20は、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩の一種であるヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(CHNaOS・2HO)(第2の潜熱蓄熱材20B)であること、を特徴とする。この特徴により、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物単体は、潜熱の蓄熱量263kJ/L程度と、無機塩水和物系の潜熱蓄熱材の中でも、より大きな蓄熱量の熱を蓄えることができることから、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物を含有した潜熱蓄熱材組成物1Bも、より高い熱量の熱を蓄えることができている。しかも、酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材10)にヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(第2の潜熱蓄熱材20B)を混合させることで、潜熱蓄熱材組成物1Bは、その融点を、第1の潜熱蓄熱材10単体の融点58℃に比べ、約11℃も低く、第2の潜熱蓄熱材20B単体の融点約65℃に比べても、約17~18℃低く調整できた物性になる。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1Bでは、酢酸塩は、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であり、酢酸ナトリウム三水和物とヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物との配合割合では、酢酸ナトリウム三水和物が30~70wt%、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物が70~30wt%であること、を特徴とする。この特徴により、潜熱蓄熱材組成物1Bは、このような幅広い配合割合の下で、融点を、約46~47℃にほぼ一定に維持できると共に、300kJ/Lを超える高い熱量の潜熱を、蓄えることができる。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1(1C)では、アニオンは、亜リン酸水素イオンであり、第2の潜熱蓄熱材20は、亜リン酸水素塩の一種である亜リン酸水素二ナトリウム五水和物(NaHPO・5HO)(第2の潜熱蓄熱材20C)であること、を特徴とする。この特徴により、亜リン酸水素二ナトリウム五水和物単体は、潜熱の蓄熱量359kJ/L程度と、無機塩水和物系の潜熱蓄熱材の中でも、より大きな蓄熱量の熱を蓄えることができることから、亜リン酸水素二ナトリウム五水和物を含有した潜熱蓄熱材組成物1Cも、より高い熱量の熱を蓄えることができている。しかも、酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材10)に亜リン酸水素二ナトリウム五水和物(第2の潜熱蓄熱材20C)を混合させることで、潜熱蓄熱材組成物1Cは、その融点を、第1の潜熱蓄熱材10単体の融点58℃に比べ、約6~7℃低く、第2の潜熱蓄熱材20C単体の融点約53~58℃に比べても、約2~7℃低く調整できた物性になる。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1Cでは、酢酸塩は、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であり、酢酸ナトリウム三水和物と亜リン酸水素二ナトリウム五水和物との配合割合では、酢酸ナトリウム三水和物が30~70wt%、亜リン酸水素二ナトリウム五水和物が70~30wt%であること、を特徴とする。この特徴により、潜熱蓄熱材組成物1Cは、このような幅広い配合割合の下で、融点を、約50~52℃にほぼ一定に維持できると共に、340kJ/Lを超える高い熱量の潜熱を、蓄えることができる。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1(1D)では、アニオンは、酢酸イオンであり、第2の潜熱蓄熱材20は、酢酸酸塩の一種である酢酸リチウム二水和物(CHCOOLi・2HO)(第2の潜熱蓄熱材20D)であること、を特徴とする。この特徴により、酢酸リチウム二水和物単体は、潜熱の蓄熱量304kJ/L程度と、無機塩水和物系の潜熱蓄熱材の中でも、より大きな蓄熱量の熱を蓄えることができることから、酢酸リチウム二水和物を含有した潜熱蓄熱材組成物1Dも、より高い熱量の熱を蓄えることができている。しかも、酢酸ナトリウム三水和物(第1の潜熱蓄熱材10)に酢酸リチウム二水和物(第2の潜熱蓄熱材20D)を混合させることで、潜熱蓄熱材組成物1Dは、その融点を、第1の潜熱蓄熱材10単体の融点58℃に比べ、約20~21℃も低く、第2の潜熱蓄熱材20D単体の融点約53~56℃に比べても、約18~20℃低く調整できた物性になる。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1Dでは、酢酸塩は、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であり、酢酸ナトリウム三水和物と酢酸リチウム二水和物との配合割合では、酢酸ナトリウム三水和物が30~50wt%、酢酸リチウム二水和物が70~50wt%であること、を特徴とする。この特徴により、潜熱蓄熱材組成物1Dは、このような幅広い配合割合の下で、融点を、約36~37℃にほぼ一定に維持できると共に、300kJ/Lを超える高い熱量の潜熱を、蓄えることができる。
以上において、本発明を実施形態の実施例1~4、及び比較例1~4に即して説明したが、本発明は上記実施形態の実施例1~4、及び比較例1~4に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
(1)例えば、実施形態の実施例1~4では、第1の潜熱蓄熱材10に第2の潜熱蓄熱材20(第2の潜熱蓄熱材20A、第2の潜熱蓄熱材20B、第2の潜熱蓄熱材20C、第2の潜熱蓄熱材20D)を、図2,12,17,22に示す配合割合でそれぞれ添加したが、第2の潜熱蓄熱材20の配合割合はあくまでも例示に過ぎず、潜熱蓄熱材組成物の使用上、支障が生じなければ、潜熱蓄熱材組成物において、第1の無機塩水和物と第2の無機塩水和物との配合割合は、適宜変更可能である。
(2)また、実施形態では、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20との混合により、潜熱蓄熱材組成物1の融点を、実施例1の場合で約23~25℃の温度帯域とし、実施例2の場合で約46~47℃の温度帯域とし、実施例3の場合で約50~52℃の温度帯域とし、実施例4の場合で約36~37℃の温度帯域として、それぞれ所望の温度帯域に調整したが、第1の無機塩水和物と第2の無機塩水和物との混合により調整される潜熱蓄熱材組成物の融点は、これらの温度帯域に限定されるものではなく、潜熱蓄熱材組成物から放熱される熱を利用する熱供給先で、必要とする熱源の温度に対応した温度に調整されたものであれば良い。
(3)また、実施形態では、第1の潜熱蓄熱材10と第2の潜熱蓄熱材20だけを混合した潜熱蓄熱材組成物1を挙げたが、潜熱蓄熱材組成物は、第1の無機塩水和物と第2の無機塩水和物との混合物以外に、必要に応じて、例えば、融点調整剤、増粘剤、過冷却防止剤、着色剤等の添加剤を加えた組成物であっても良い。
1,1A,1B,1C,1D 潜熱蓄熱材組成物
10 第1の潜熱蓄熱材(第1の無機塩水和物)
20,20A,20B,20C,20D 第2の潜熱蓄熱材(化合物、第2の無機塩水和物)

Claims (6)

  1. 相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う無機塩水和物として、第1の無機塩水和物と、該第1の無機塩水和物と混合した化合物を含む潜熱蓄熱材組成物において、
    前記第1の無機塩水和物は、酢酸塩であること、
    前記化合物は、前記第1の無機塩水和物と、少なくとも1つの構成成分を異にした別の前記無機塩水和物であり、前記第1の無機塩水和物のカチオンの元素と同族に属した元素のカチオンと、少なくとも硫酸イオン、ヒドロキシメタンスルフィン酸イオン、亜リン酸水素イオン、または酢酸イオンのいずれかのアニオンにより、イオン結晶をなす第2の無機塩水和物であること、
    前記第1の無機塩水和物と前記第2の無機塩水和物との配合割合は、
    前記第1の無機塩水和物 20~80wt%
    前記第2の無機塩水和物 80~20wt%
    であること、
    当該潜熱蓄熱材組成物は、前記第1の無機塩水和物単体の融点、または前記第2の無機塩水和物単体の融点と、相対的に7~37℃低い融点に調整された物性であること、
    前記アニオンは、ヒドロキシメタンスルフィン酸イオン(CH)であり、
    前記第2の無機塩水和物は、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  2. 請求項1に記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記酢酸塩は、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  3. 請求項1または請求項2に記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記ヒドロキシメタンスルフィン酸塩は、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(CHNaOS・2HO)であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  4. 請求項に記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記酢酸塩は、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であり、
    前記酢酸ナトリウム三水和物と前記ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物との配合割合は、
    前記酢酸ナトリウム三水和物 30~70wt%
    前記ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物 70~30wt%
    であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  5. 相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う無機塩水和物として、第1の無機塩水和物と、該第1の無機塩水和物と混合した化合物を含む潜熱蓄熱材組成物において、
    前記第1の無機塩水和物は、酢酸塩であること、
    前記化合物は、前記第1の無機塩水和物と、少なくとも1つの構成成分を異にした別の前記無機塩水和物であり、前記第1の無機塩水和物のカチオンの元素と同族に属した元素のカチオンと、少なくとも硫酸イオン、ヒドロキシメタンスルフィン酸イオン、亜リン酸水素イオン、または酢酸イオンのいずれかのアニオンにより、イオン結晶をなす第2の無機塩水和物であること、
    前記第1の無機塩水和物と前記第2の無機塩水和物との配合割合は、
    前記第1の無機塩水和物 20~80wt%
    前記第2の無機塩水和物 80~20wt%
    であること、
    当該潜熱蓄熱材組成物は、前記第1の無機塩水和物単体の融点、または前記第2の無機塩水和物単体の融点と、相対的に7~37℃低い融点に調整された物性であること、
    前記アニオンは、亜リン酸水素イオン(HPO 2- )であり、
    前記第2の無機塩水和物は、亜リン酸水素塩であること、
    前記亜リン酸水素塩は、亜リン酸水素二ナトリウム五水和物(Na HPO ・5H O)であること、
    前記酢酸塩は、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であり、
    前記酢酸ナトリウム三水和物と前記亜リン酸水素二ナトリウム五水和物との配合割合は、
    前記酢酸ナトリウム三水和物 30~70wt%
    前記亜リン酸水素二ナトリウム五水和物 70~30wt%
    であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  6. 相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う無機塩水和物として、第1の無機塩水和物と、該第1の無機塩水和物と混合した化合物を含む潜熱蓄熱材組成物において、
    前記第1の無機塩水和物は、酢酸塩であること、
    前記化合物は、前記第1の無機塩水和物と、少なくとも1つの構成成分を異にした別の前記無機塩水和物であり、前記第1の無機塩水和物のカチオンの元素と同族に属した元素のカチオンと、少なくとも硫酸イオン、ヒドロキシメタンスルフィン酸イオン、亜リン酸水素イオン、または酢酸イオンのいずれかのアニオンにより、イオン結晶をなす第2の無機塩水和物であること、
    前記第1の無機塩水和物と前記第2の無機塩水和物との配合割合は、
    前記第1の無機塩水和物 20~80wt%
    前記第2の無機塩水和物 80~20wt%
    であること、
    当該潜熱蓄熱材組成物は、前記第1の無機塩水和物単体の融点、または前記第2の無機塩水和物単体の融点と、相対的に7~37℃低い融点に調整された物性であること、
    前記アニオンは、酢酸イオン(CH COO )であり、
    前記第2の無機塩水和物は、酢酸塩であること、
    前記第2の無機塩水和物の前記酢酸塩は、酢酸リチウム二水和物(CH COOLi・2H O)であること、
    前記第1の無機塩水和物の前記酢酸塩は、酢酸ナトリウム三水和物(CHCOONa・3HO)であり、
    前記酢酸ナトリウム三水和物と前記酢酸リチウム二水和物との配合割合は、
    前記酢酸ナトリウム三水和物 30~50wt%
    前記酢酸リチウム二水和物 70~50wt%
    であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
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