JP2001040341A - 塩水和物用吸着型過冷却防止剤及びその探索方法 - Google Patents

塩水和物用吸着型過冷却防止剤及びその探索方法

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JP2001040341A JP21758199A JP21758199A JP2001040341A JP 2001040341 A JP2001040341 A JP 2001040341A JP 21758199 A JP21758199 A JP 21758199A JP 21758199 A JP21758199 A JP 21758199A JP 2001040341 A JP2001040341 A JP 2001040341A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】塩水和物用過冷却防止剤の探索において、多数
の実験をすることなく、結晶学的方法によって過冷却防
止剤を選択する方法および新規の過冷却防止剤を提供す
る。 【解決手段】(1)塩水和物とその過冷却防止剤候補と
の任意の結晶面内の陽イオン配列において、それぞれの
相隣る2個の陽イオンの一組を選定して配列パターンを
比較した場合、陽イオン間隔が1Å以内で一致し、かつ
その一組の配列パターンが2次元方向に150Å以内の
間隔で周期的にマッチングする候補結晶を選定すること
を特徴とする塩水和物用吸着型過冷却防止剤の探索方
法。 (2)塩水和物としてチオ硫酸ナトリウム5水塩または
酢酸ナトリウム3水塩を、過冷却防止剤として硫酸ナト
リウムを含有する蓄熱材組成物。 (3)上記(2)記載の組成物を用いた蓄熱材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は塩水和物用過冷却防
止剤に関する。さらに詳しくは、本発明は潜熱蓄熱材に
好適に用いられる塩水和物の過冷却を防止する過冷却防
止剤(発核剤とも言う)に関する。
【0002】
【従来の技術】固液相変化の性質を有する塩水和物を蓄
熱材料として利用しようとする提案が数多くなされてお
り、既に、床暖房等の分野において実用化されている。
代表的な塩水和物としては、硫酸ナトリウム10水塩、
塩化カルシウム6水塩、リン酸水素二ナトリウム12水
塩、チオ硫酸ナトリウム5水塩、酢酸ナトリウム3水塩
等がある。これらの塩水和物はいずれも、それ単独では
過冷却現象を呈し、それが蓄熱材としての利用の大きな
障壁となっていた。この障壁を克服するために過冷却防
止剤又は過冷却防止方法についての提案が多数なされて
きた。
【0003】硫酸ナトリウム10水塩に対する過冷却防
止剤として四ホウ酸ナトリウム10水塩が有効であるこ
とが1952年に判明した[「インダストリアル アン
ドエンジニアリング ケミストリー」第44巻1308
頁(1952年)]。この組合わせは同一晶系に属し、
結晶の格子定数も近いことから、ヘテロエピタキシャル
成長に基づく核形成であることが分かっている。
【0004】その後、ヘテロエピタキシャル成長に基づ
かない過冷却防止剤が見い出された。この過冷却防止剤
は、塩水和物融液中で一度固化させることによって過冷
却防止剤として有効となるもので、以下では吸着型過冷
却防止剤(発核剤)と称する。この例としては、酢酸ナ
トリウム3水塩(塩水和物)に対して、吸着型過冷却防
止剤としてリン酸水素二ナトリウム(特開昭57−14
7580号公報)ピロリン酸ナトリウム10水塩(特開
昭57−153079号公報)およびリン酸三ナトリウ
ム・1/2水塩(特開昭59−138290号公報、特開
昭64−75583号公報)が開示されている。更に、
本発明者らはリン酸水素二ナトリウム7水塩(塩水和
物)に対して、リン酸水素二ナトリウム2水塩が吸着型
過冷却防止剤として有効であることを開示した(特開平
10−298543号)。これらによって、特定の塩水
和物用の吸着型過冷却防止剤が個々に特定されるもので
なく、一般に数多く存在しうるものであることが分か
る。
【0005】しかるに、上記の吸着型過冷却防止剤を塩
水和物について、結晶学的相関について何らの知見も報
告されてなく、従って、吸着型発核剤を探索するに当た
っては、多数の化合物について実験により適否を確かめ
るしかなかった。この事情については、木村「日本結晶
成長学会誌」、第7巻、215〜223頁(1980
年)、渡辺「分離技術」、第26巻、79〜83頁(1
996年)にも記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、塩水
和物用過冷却防止剤の探索において、多数の実験をする
ことなく、結晶学的方法によって過冷却防止剤を選択す
る方法および新規の過冷却防止剤を提供することにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる状
況下に鋭意検討を重ねた結果、塩水和物と吸着型過冷却
防止剤との組み合わせの考察を行った結果、吸着型過冷
却防止剤探索の新たな作業仮説を見い出し、本発明を完
成させるに至った。
【0008】すなわち、本発明は、以下の(1)〜
(5)に関する。 (1)塩水和物とその過冷却防止剤との任意の結晶面内
の陽イオン配列において、それぞれの相隣る2個の陽イ
オンの一組を選定して配列パターンを比較した場合、陽
イオン間隔が1Å以内で一致し、かつその一組の配列パ
ターンが2次元方向に150Å以内の間隔で周期的にマ
ッチングすることを特徴とする塩水和物用吸着型過冷却
防止剤。 (2)塩水和物とその過冷却防止剤候補との任意の結晶
面内の陽イオン配列において、それぞれの相隣る2個の
陽イオンの一組を選定して配列パターンを比較した場
合、陽イオン間隔が1Å以内で一致し、かつその一組の
配列パターンが2次元方向に150Å以内の間隔で周期
的にマッチングする候補結晶を選定することを特徴とす
る塩水和物用吸着型過冷却防止剤の探索方法。 (3)塩水和物としてチオ硫酸ナトリウム5水塩を、過
冷却防止剤として硫酸ナトリウムを含有することを特徴
とする蓄熱材組成物。 (4)塩水和物として酢酸ナトリウム3水塩を、過冷却
防止剤として硫酸ナトリウムを含有することを特徴とす
る蓄熱材組成物。 (5)上記(3)または(4)記載の組成物を用いた蓄
熱材。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳しく説明
する本発明の塩水和物は、固液相変化の性質を有する塩
水和物であって、例えば蓄熱材として利用されるもので
ある。代表的な塩水和物としては、硫酸ナトリウム10
水塩、塩化カルシウム6水塩、リン酸水素二ナトリウム
12水塩、リン酸水素二ナトリウム7水塩、硝酸カルシ
ウム4水塩、酢酸ナトリウム3水塩、チオ硫酸ナトリウ
ム5水塩、塩化ストロンチウム6水塩などがある。
【0010】塩水和物結晶は、単位格子内で陽イオン、
陰イオンおよび水が特定の配列をとっている。陽イオン
と陰イオンとが電気的中性を保つ比率で同一面上に配列
し、それが層状に重なっている。一例として酢酸ナトリ
ウム3水塩の場合、単位格子内で(100)、(01
0)、(001)、(201)面と平行に陰陽両イオン
が2個ずつ存在して電気的中性を保っている。この場
合、完全に同一平面上でなくても、近傍で平行して存在
すれば同一平面を形成しているものとみなす。(10
0)面内の2個のNaイオンに着目し、b軸方向に3単
位格子、c軸方向に3単位格子の2次元のNaイオン配
列を第1図に示す。
【0011】本発明における相隣る2個の陽イオンの組
とは、同一の平面上の隣接する陽イオン2個を任意に選
択するものであって、同一単位格子内の2個であっても
よいし、1個が隣接する単位格子のものでもよい。第1
図の例では同一単位格子内の2個であって、イオン間隔
は5.410Åである。相隣る2個の陽イオンの組の周
期的な配列とは、同一面の単位格子を複数個連結して置
いたとき形成される陽イオンの周期的な配列をいう。
【0012】本発明において一組の陽イオン間隔の一致
は、相隣る2個の陽イオンの組のイオン間距離が1A以
内、好ましくはイオン半径の0.70倍(等大球の重な
りにおいて重なり部分の体積分率が50%となる球間距
離)以内で一致することをいう。
【0013】本発明において、一組の配列パターンのマ
ッチングは2次元方向において150Å以内、好ましく
は100Å以内の間隔で周期的にマッチングするものと
する。150Åを超えた周期でマッチングしても発核剤
として有効でないので除かれる。
【0014】吸着型過冷却防止剤候補の結晶としては、
塩または塩水和物の中から選択される。好ましくは陽イ
オンの価数が塩水和物の陽イオンの価数と同一である。
更に好ましくは陽イオン種が塩水和物の陽イオン種と同
一である。
【0015】下記の実施例からも明らかなように、塩水
和物としてチオ硫酸ナトリウム5水塩を用いた場合、吸
着型過冷却防止剤として硫酸ナトリウムが有効であり、
また、塩水和物として酢酸ナトリウム3水塩を用いた場
合、吸着型過冷却防止剤として硫酸ナトリウムが有効で
あることから、特開昭57−147580号公報、特開
昭59−138290号公報等に記載の通常の蓄熱材組
成物の調製方法にて、蓄熱材組成物を取得できる。ま
た、この組成物を用いて、特開平10−299236等
に記載の通常の方法にて、各種の蓄熱材を作成できる。
【0016】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明する
が、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例
1(塩水和物としてチオ硫酸ナトリウム5水塩を用いる
場合、吸着型過冷却防止剤として硫酸ナトリウムが有効
であることの例)。
【0017】(発核実験)100mlビーカーにチオ硫
酸ナトリウム5水塩(試薬特級)34.74g、水1.
26gを入れ、52℃水浴中で加熱して溶解した。これ
に硫酸ナトリウム(無水)(試薬特級)4.00gを入
れて十分攪拌したあと、ラミネート袋に充填した。これ
を室温に30分静置後に、チオ硫酸ナトリウム5水塩の
種晶を数粒添加し、シール後に、室温に一夜静置すると
固化していた。ラミネート袋の外側に熱電対を貼付し、
その上を厚さ10mmの発泡スチロールボードで断熱し
た。これを低温恒温器に入れ、52℃、5時間加熱と2
0℃、3時間冷却とを1サイクルとするヒートサイクル
試験に供した。熱電対は温度記録計に接続して、試料の
温度変化を記録した。試料は1サイクル目の加熱時に4
8℃の融解プラトーを示したあと52℃に達し、冷却時
に44℃で凝固による発熱を示したあと20℃まで冷却
された。すなわち吸着型過冷却防止剤として有効に作用
した。このあとヒートサイクルを1日3回ずつ継続し、
300サイクル経過後も1サイクル目と同じ融解・凝固
の曲線を与えた。
【0018】(結晶構造のマッチング)チオ硫酸ナトリ
ウム5水塩は単斜晶系に属し、1単位格子に8個のNa
イオンが存在する。Naイオンは(100)面に平行な
2層構造をとり、1層の中に4個のNaイオンが存在す
る。4個のうち最も近接する2個の間隔は5.447Å
であり、これを一組とする。硫酸ナトリウムは斜方晶系
に属し、1単位格子に16個のNaイオン存在する。N
aイオンは(001)面に平行な4層構造、(100)
面に平行な4層構造、(010)面に平行な8層構造を
とる。(010)面では1層に2個のNaイオンが存在
し、間隔は6.816Åである。一方、単位格子のa軸
は5.861Åであるから、こちらの方がより短距離で
あり、これを一組とする。チオ硫酸ナトリウム5水塩の
一組の配列パターンを第2図黒丸で、硫酸ナトリウムの
一組の配列パターンを第2図白丸で示した。両結晶の配
列パターンを重ね合わせたとき、第2図の丸印の箇所で
マッチングがある。2次元方向のマッチングの周期は下
記の通りである。
【0019】 マッチング1 マッチング2 チオ硫酸ナトリウム5水塩(100)<015>43.369Å <014>37.031Å 硫酸ナトリウム(010) <701>42.893Å <103>37.383Å
【0020】実施例2(塩水和物として酢酸ナトリウム
3水塩を用いる場合、吸着型過冷却防止剤として硫酸ナ
トリウムが有効であることの例)
【0021】(発核実験)62℃の水浴中の100ml
ビーカーで水13.44gを加熱し、これに酢酸ナトリ
ウム(無水)(試薬特級)18.56gを入れて溶解し
た。これに硫酸ナトリウム(無水)(試薬特級)8.0
0gを入れて十分攪拌したあと、ラミネート袋に充填し
た。これを室温に30分静置後に、酢酸ナトリウム3水
塩の種晶を数粒添加し、シール後に室温に一夜静置する
と固化していた。ラミネート袋の外側に熱電対を貼付
し、その上を厚さ10mmの発泡スチロールボードで断
熱した。これを低温恒温器に入れ、62℃、5時間加熱
と20℃、3時間冷却とを1サイクルとするヒートサイ
クル試験に供した。熱電対は温度記録計に接続して試料
の温度変化を記録した。試料は1サイクル目の加熱時に
58℃の融解プラトーを示したあと62℃に達し、冷却
時に55℃で凝固による発熱を示したあと20℃まで冷
却された。すなわち吸着型過冷却防止剤として有効に作
用した。このあとヒートサイクルを1日3回ずつ継続
し、300サイクル経過後も1サイクル目と同じ融解・
凝固の曲線を与えた。
【0022】(結晶構造のマッチング)酢酸ナトリウム
3水塩は単斜晶系に属し、1単位格子に8個のNaイオ
ンが存在する。(100)面に平行な2層構造、(01
0)面に平行な2層構造をとる。(100)面では1層
に2個のNaイオンが存在し、間隔は5.410Åであ
りこれを一組とする。硫酸ナトリウムの(010)面は
実施例1において記述した通り、間隔5.861ÅのN
aイオンが存在し、これを一組とする。酢酸ナトリウム
3水塩の一組の配列パターンを第3図黒丸で、硫酸ナト
リウムの一組の配列パターンを第3図白丸で示した。両
結晶の配列パターンを重ね合わせたとき、第3図の丸印
の箇所にマッチングがある。(少しずつずれた3個のマ
ッチング)2次元方向の周期は下記の通りである。
【0023】 マッチング1 マッチング2 酢酸ナトリウム3水塩(100) 〈010>52.330Å <016>63.278Å 硫酸ナトリウム(010) 〈304>52.274Å <401>63.615Å
【0024】実施例3(塩水和物として酢酸ナトリウム
3水塩を用いる場合、吸着型過冷却防止剤としてリン酸
水素二ナトリウムが有効であることの例)
【0025】(発核実験)62℃の水浴中の100mlビ
ーカーに水14.70gを加熱し、これを酢酸ナトリウ
ム(無水)(試薬特級)20.30gを入れて溶解し
た。これにリン酸水素二ナトリウム(無水)(試薬特
級)5.00gを入れて十分攪拌したあとラミネート袋
に充填した。これを室温に30分静置後に酢酸ナトリウ
ム3水塩の種晶を数粒添加し、シール後に室温に一夜静
置すると固化していた。以下、実施例2と同様にヒート
サイクル試験に供した結果、300サイクル経過後も融
解時に58℃、凝固時に55℃のプラトーを示し、過冷
却防止剤として有効に作用した。
【0026】(結晶構造マッチング)酢酸ナトリウム3
水塩の(100)面では、実施例2に記述した通りイオ
ン間隔5.410Åの一組を選ぶ。リン酸水素二ナトリ
ウムは単斜晶系に属し、1単位格子に14個のNaイオ
ンが存在する(陵、隈を含む)。(010)面では1層
に4個のNaイオンが存在し、間隔は5.451Åと
5.473Åの2種であるが、前者を一組として選ぶ。
酢酸ナトリウム3水塩の一組の配列パターンを第4図黒
丸でリン酸水素二ナトリウムの一組の配列パターンを第
4図白丸で示した。両結晶の配列パターンを重ね合わせ
たとき、第4図の丸印の箇所にマッチングがある。2次
元方向のマッチング周期は下記の通りである。
【0027】 マッチング1 マッチング2 酢酸ナトリウム3水塩(100) <001>20.802Å <031>33.076Å リン酸水素二ナトリウム(010) <403>20.672Å <001>32.831Å
【0028】比較例1(イオン間隔が一致していない
例) 塩水和物としてリン酸水素二ナトリウム12水塩を用い
た場合、吸着型過冷却防止剤としてリン酸水素二ナトリ
ウム7水塩が有効でない例。 (発核実験)40℃水浴中の100mlビーカーにリン
酸水素二ナトリウム12水塩(試薬特級)30.00g
を入れて3時間加熱すると、リン酸水素二ナトリウム1
2水塩が非調和融解し、リン酸水素二ナトリウム7水塩
と飽和溶液とに変化した。(リン酸水素二ナトリウム1
2水塩が36℃で非調和融解することは周知の事実であ
る。)これを25℃水浴中に2時間保持しても結晶析出
は見られなかった。これにリン酸水素二ナトリウム12
水塩の種晶を数粒添加すると直ちに該結晶が析出し、液
全体が固化状態になった。これを室温で一夜静置したの
ち、40℃水浴中で3時間加熱するとリン酸水素二ナト
リウム12水塩が非調和融解し、リン酸水素二ナトリウ
ム7水塩が不溶分として残った。これを25℃水浴中に
2時間保持しても結晶析出が見られなかった。
【0029】(結晶構造のマッチング)リン酸水素二ナ
トリウム12水塩は単斜晶系に属し、1単位格子に8個
のNaイオンが存在する。Naイオンは(001)面に
平行な2層構造をとり1層の中に4個のNaイオンが存
在する。隣接する2個のNaイオンの間隔5.281Å
であり、これを一組とする。リン酸水素二ナトリウム7
水塩は単斜晶系に属し、1単位格子に8個のNaイオン
が存在する。Naイオンは(01)面に平行な2層構造
をとり、1層の中に4個のNaイオンが存在する。隣接
する2個のNaイオンの間隔3.197Åであり、これ
を一組とする。
【0030】リン酸水素二ナトリウム12水塩の一組の
配列パターンを第5図黒丸で、リン酸水素二ナトリウム
7水塩の一組の配列パターンを第5図白丸で示した。両
結晶は一組のイオン間隔が異なるため両結晶の一組のう
ちの一個のイオンが重なるようにして両結晶を重ね合わ
せたとき、一組のうちの一個のイオンの重なりは20〜
50A間隔で一致するが周期性はなく、また他の一個は
重ならない。(第5図丸印)
【0031】比較例2(マッチング間隔が過大である
例) 塩水和物として硫酸ナトリウム10水塩を用いた場合、
吸着型過冷却防止剤発核剤として硫酸ナトリウムが有効
でない例。
【0032】(発核実験)100mlビーカーに硫酸ナ
トリウム10水塩(試薬特級)32.70gと水7.0
0gを入れて、38℃水浴中で3時間加熱した結果、硫
酸ナトリウム10水塩が非調和融解し、硫酸ナトリウム
(無水)と飽和溶液とに変化した。(硫酸ナトリウム1
0水塩が32℃で非調和融解することは周知の事実であ
る。)これを20℃水浴中で1時間静置しても硫酸ナト
リウム10水塩の結晶析出は見られない。これに硫酸ナ
トリウム10水塩の種晶を数粒添加すると直ちに硫酸ナ
トリウム10水塩の結晶が析出し、液全体が固化状態と
なった。これを室温で一夜静置した後、38℃水浴中で
3時間加熱すると、硫酸ナトリウム10水塩が非調和融
解し、硫酸ナトリウム(無水)と飽和溶液とに変化し
た。これを20℃水浴中で4時間更に室温で一夜静置し
たが硫酸ナトリウム10水塩の結晶析出は見られなかっ
た。
【0033】(結晶構造のマッチング)硫酸ナトリウム
10水塩は単斜晶系に属し、1単位格子に8個のNaイ
オンが存在する。Naイオンは(100)面に平行な2
層構造をとり、1層の中に4個のNaイオンが存在す
る。隣接する2個のNaイオンの間隔は3.508Åで
ありこれを一組とする。硫酸ナトリウムは実施例1にお
いて記述した通り、(001)面に平行な4層構造をと
り、1層に4個のNaイオンが存在する。4個のうち間
隔3.208Åの隣接する2個のNaイオンが存在する
しこれを一組とする。硫酸ナトリウム10水塩の一組の
配列パターンを第6図黒丸で、硫酸ナトリウムの一組の
配列パターンを第6図白丸で示した。両結晶の配列パタ
ーンを重ね合わせたとき、第6図の丸印の箇所にマッチ
ングがある。2次元方向のマッチングの周期は下記の通
りであり、周期が約186Åで大きすぎる。
【0034】 マッチング1 マッチング2 硫酸ナトリウム10水塩(100) <001>64.235Å <010>186.660Å 硫酸ナトリウム(001) <100>64.471Å <010>186.485Å
【0035】
【発明の効果】本発明によれば、潜熱蓄熱材に好適に用
いられる塩水和物を発核させて過冷却を防止する効果を
有する過冷却防止剤(発核剤)を簡便に探索できる。本
発明方法により見出された硫酸ナトリウムは、チオ硫酸
ナトリウム5水塩または酢酸ナトリウム3水塩物を塩水
和物として用いた場合に、新規な吸着型過冷却防止剤と
して有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】酢酸ナトリウム3水塩の場合の3単位格子の2
次元のNaイオン配列。
【図2】チオ硫酸ナトリウム5水塩の一組の配列パター
ン(黒丸)と、硫酸ナトリウムの一組の配列パターン
(白丸)。
【図3】酢酸ナトリウム3水塩の一組の配列パターン
(黒丸)と、硫酸ナトリウムの一組の配列パターン(白
丸)。
【図4】酢酸ナトリウム3水塩の一組の配列パターン
(黒丸)と、リン酸水素二ナトリウムの一組の配列パタ
ーン(白丸)。
【図5】リン酸水素二ナトリウム12水塩の一組の配列
パターン(黒丸)と、リン酸水素二ナトリウム7水塩の
一組の配列パターン(白丸)。
【図6】硫酸ナトリウム10水塩の一組の配列パターン
(黒丸)と、硫酸ナトリウムの一組の配列パターン(白
丸)。
【符号の説明】
図1 b及びc;(100)面内のb軸及びc軸.

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】塩水和物とその過冷却防止剤との任意の結
    晶面内の陽イオン配列において、それぞれの相隣る2個
    の陽イオンの一組を選定して配列パターンを比較した場
    合、陽イオン間隔が1Å以内で一致し、かつその一組の
    配列パターンが2次元方向に150Å以内の間隔で周期
    的にマッチングすることを特徴とする塩水和物用吸着型
    過冷却防止剤。
  2. 【請求項2】陽イオンの価数が塩水和物の陽イオンの価
    数と同一である請求項1記載の塩水和物用吸着型過冷却
    防止剤。
  3. 【請求項3】陽イオン種が塩水和物の陽イオン種と同一
    である請求項1記載の塩水和物用吸着型過冷却防止剤。
  4. 【請求項4】塩水和物がチオ硫酸ナトリウム5水塩、過
    冷却防止剤が硫酸ナトリウムである請求項1記載の塩水
    和物用吸着型過冷却防止剤。
  5. 【請求項5】塩水和物が酢酸ナトリウム3水塩、過冷却
    防止剤が硫酸ナトリウムである請求項1記載の塩水和物
    用吸着型過冷却防止剤。
  6. 【請求項6】塩水和物とその過冷却防止剤候補との任意
    の結晶面内の陽イオン配列において、それぞれの相隣る
    2個の陽イオンの一組を選定して配列パターンを比較し
    た場合、陽イオン間隔が1Å以内で一致し、かつその一
    組の配列パターンが2次元方向に150Å以内の間隔で
    周期的にマッチングする候補結晶を選定することを特徴
    とする塩水和物用吸着型過冷却防止剤の探索方法。
  7. 【請求項7】塩水和物としてチオ硫酸ナトリウム5水塩
    を、過冷却防止剤として硫酸ナトリウムを含有すること
    を特徴とする蓄熱材組成物。
  8. 【請求項8】塩水和物として酢酸ナトリウム3水塩を、
    過冷却防止剤として硫酸ナトリウムを含有することを特
    徴とする蓄熱材組成物。
  9. 【請求項9】請求項7または8記載の組成物を用いた蓄
    熱材。
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