JP6596549B1 - 潜熱蓄熱材組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ミョウバン水和物を主成分とする潜熱蓄熱材に対し、過冷却現象の発現を、より確実に抑制して、蓄えていた潜熱を放熱することができる潜熱蓄熱材組成物を提供する。【解決手段】潜熱蓄熱材組成物1は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う潜熱蓄熱材10(第1潜熱蓄熱材11)を主成分に、該第1潜熱蓄熱材11の物性を調整する添加剤20を配合してなる潜熱蓄熱材組成物において、第1潜熱蓄熱材11は、アンモニウムミョウバン十二水和物であり、添加剤20は、第1の添加剤として、融液状態にあるアンモニウムミョウバン十二水和物に対し、結晶化の誘起を促す過冷却防止剤21であり、過冷却防止剤21は、硫酸カルシウム(CaSO4)である。【選択図】図1

Description

本発明は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う潜熱蓄熱材に、この潜熱蓄熱材の過冷却現象を抑える添加剤を配合した潜熱蓄熱材組成物に関する。
潜熱蓄熱材(PCM:Phase Change Material)は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う物性を有しており、本来廃棄される排熱を蓄熱し、蓄えた熱を必要に応じて取り出すことで、エネルギが無駄なく有効に活用できる。潜熱蓄熱材となる物質は、数多く存在するが、その中でも、例えば、アンモニウムミョウバン十二水和物(AlNH(SO・12HO)(以下、「アンモニウムミョウバン」と称す。)等のミョウバン系の潜熱蓄熱材は、蓄熱性能に優れていることから、広く使用されている。アンモニウムミョウバンの物性は、融点93.5℃で、常温では白色の固体であり、融点以上の温度になると、無色透明の液体になる。
他方、潜熱蓄熱材には、融液状態から凝固点以下に冷却しても結晶化しない過冷却現象が生じてしまうことがある。過冷却現象が発現すると、一度融解したアンモニウムミョウバンは、融液状態のまま凝固せず、潜熱を放熱できなくなり、融液に衝撃を与える等の過冷却防止機構を設けない限り、アンモニウムミョウバンに蓄えた潜熱の時間差利用が不可能になってしまう。このような過冷却現象を防ぐため、一般的には、特許文献1に例示されているように、過冷却防止剤が、潜熱蓄熱材と共に配合される。過冷却防止剤は、融液状態にある潜熱蓄熱材の結晶化の誘起を促す添加剤である。
特許文献1は、主成分とするアンモニウムミョウバン(融点94〜95℃)に、その過冷却防止剤として、弗化カルシウム(CaF)結晶と硫黄(S)結晶との混合物を加えた蓄熱材である。特許文献1は、弗化カルシウム結晶と硫黄結晶との混合物を、かごの中に収容して、アンモニウムミョウバン溶液の中に吊り下げる手段や、または弗化カルシウム結晶と硫黄結晶を、直にアンモニウムミョウバンの溶液中に投入する手段を採っている。特許文献1では、何れの手段でも、アンモニウムミョウバンの溶液の過冷却現象を解除するにあたり、アンモニウムミョウバンの溶液中で、弗化カルシウム結晶と硫黄結晶とを、互いに接触または近接させておくことが、核生成を行う上で必要になっている。
特公昭57−349号公報
しかしながら、特許文献1では、過冷却防止剤は、弗化カルシウム結晶と硫黄結晶との混合物であるため、各々の結晶を混ぜ合わせる調整が適切な状態で行われていないと、過冷却現象を解除するのに必要な核が、アンモニウムミョウバンの融液中で生成し難くなってしまう虞がある。加えて、過冷却防止剤は、弗化カルシウム結晶と硫黄結晶との混合物であり、互いに接触または近接させておくことが、核生成を行う上で必要になっているため、特許文献1の蓄熱材を、例えば、自動車への車載、給食や弁当等の保温輸送等の用途で使用する場合、移動時に、弗化カルシウム結晶と硫黄結晶とが、大きく互いに離間してしまい、過冷却防止剤として機能しなくなる虞もある。それ故に、弗化カルシウム結晶と硫黄結晶との混合物を過冷却防止剤とした特許文献1の蓄熱材は、使い勝手の良くない技術である。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、ミョウバン水和物を主成分とする潜熱蓄熱材に対し、過冷却現象の発現を、より確実に抑制して、蓄えていた潜熱を放熱することができる潜熱蓄熱材組成物を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る潜熱蓄熱材組成物は、以下の構成を有する。
(1)相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う潜熱蓄熱材を主成分に、該潜熱蓄熱材の物性を調整する添加剤を配合してなる潜熱蓄熱材組成物において、前記潜熱蓄熱材は、ミョウバン水和物であり、前記添加剤は、第1の添加剤として、融液状態にある前記ミョウバン水和物に対し、結晶化の誘起を促す過冷却防止剤であること、前記過冷却防止剤は、硫酸カルシウム(CaSO)であること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、当該潜熱蓄熱材組成物全体の重量に占める前記硫酸カルシウムの配合比率は、0wt%より大きく、10wt%以下の範囲内であること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記添加剤として、前記第1の添加剤とは別の第2の添加剤が配合されており、前記第2の添加剤は、前記ミョウバン水和物の融点を、必要に応じて任意の温度に調整する融点調整剤であること、を特徴とする。
(4)(3)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記融点調整剤は、糖アルコール類に属する物質を少なくとも含んでいること、を特徴とする。
(5)(4)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記糖アルコール類に属する物質は、エリスリトール(C10)、キシリトール(C12)、またはマンニトール(C14)のうち、少なくともいずれか一つを含むものであること、を特徴とする。
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記ミョウバン水和物は、アンモニウムミョウバン十二水和物(AlNH(SO・12HO)、または、カリウムミョウバン十二水和物(AlK(SO・12HO)の少なくともいずれか一方を含むものであること、を特徴とする。
上記構成を有する本発明の潜熱蓄熱材組成物の作用・効果について説明する。
(1)相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う潜熱蓄熱材を主成分に、該潜熱蓄熱材の物性を調整する添加剤を配合してなる潜熱蓄熱材組成物において、潜熱蓄熱材は、ミョウバン水和物であり、添加剤は、第1の添加剤として、融液状態にあるミョウバン水和物に対し、結晶化の誘起を促す過冷却防止剤であること、過冷却防止剤は、硫酸カルシウム(CaSO)であること、を特徴とする。この特徴により、固体状の硫酸カルシウム(過冷却防止剤)を配合した本発明の潜熱蓄熱材組成物を、固体状態からその融点より高い温度に加熱した場合でも、過冷却防止剤は固体状のまま、本発明の潜熱蓄熱材組成物の融液に存在することから、この融液を、融点以下の温度に冷却する過程において、固体状の過冷却防止剤表面に、ミョウバン水和物の構成成分を吸着させることができる。これにより、ミョウバン水和物の過冷却現象を解除するのに必要な核として、ミョウバン水和物(潜熱蓄熱材)の結晶核が生成されるようになる。そのため、潜熱蓄熱材の結晶化が、過冷却防止剤に基づくミョウバン水和物の結晶核の生成によって誘起され、本発明の潜熱蓄熱材組成物は、融液状態からの冷却過程において、潜熱蓄熱材の融点と凝固点の乖離を抑制しつつ、蓄えていた潜熱を放熱することができる。
従って、本発明に係る潜熱蓄熱材組成物によれば、ミョウバン水和物を主成分とする潜熱蓄熱材に対し、過冷却現象の発現をより確実に抑制して、蓄熱していた潜熱を放熱することができている、という優れた効果を奏する。
(2)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、当該潜熱蓄熱材組成物全体の重量に占める硫酸カルシウムの配合比率は、0wt%より大きく、10wt%以下の範囲内であること、を特徴とする。この特徴により、本発明の潜熱蓄熱材組成物を、融液状態から冷却する過程において、潜熱蓄熱材の融点と凝固点の乖離を抑制して、蓄えていた潜熱を放熱することができると共に、体積当たりの潜熱の蓄熱量に対し、本発明の潜熱蓄熱材組成物の蓄熱量が、潜熱蓄熱材単体での蓄熱量に比べ、大幅に低下することがない。
(3)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、添加剤として、第1の添加剤とは別の第2の添加剤が配合されており、第2の添加剤は、ミョウバン水和物の融点を、必要に応じて任意の温度に調整する融点調整剤であること、を特徴とする。この特徴により、本発明の潜熱蓄熱材組成物に潜熱を蓄える温度や、蓄熱されたその潜熱を放つ温度についてのバリエーションが、融点調整剤によって拡大できる。
(4),(5)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、融点調整剤は、例えば、エリスリトール(C10)、キシリトール(C12)、またはマンニトール(C14)のうち、少なくともいずれか一つを含む物質等、糖アルコール類に属する物質を少なくとも含んでいること、を特徴とする。この特徴により、本発明に係る潜熱蓄熱材組成物の融解温度を調整できると共に、本発明に係る潜熱蓄熱材組成物の粘度が増大し、潜熱蓄熱材と過冷却防止剤との密度差に起因した潜熱蓄熱材と過冷却防止剤との分離や、潜熱蓄熱材自体の構成成分同士の分離等、本発明に係る潜熱蓄熱材組成物の構成成分同士の分離を防止することができる。そのため、本発明に係る潜熱蓄熱材組成物の構成成分間の不均一化が発生しないため、本発明の潜熱蓄熱材組成物は、化学的に安定した蓄熱材となり得る。しかも、融点調整剤が潜熱蓄熱材に加わることで、潜熱蓄熱材の融点を大幅に調整できると共に、融点調整剤自体も蓄熱性能を具備しているため、融点調整剤が配合されても、本発明の潜熱蓄熱材組成物は、例えば、約350kJ/Lという、大きな蓄熱量を有した物性となる。
(6)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、ミョウバン水和物は、アンモニウムミョウバン十二水和物(AlNH(SO・12HO)、または、カリウムミョウバン十二水和物(AlK(SO・12HO)の少なくともいずれか一方を含むものであること、を特徴とする。この特徴により、アンモニウムミョウバン十二水和物やカリウムミョウバン十二水和物は、市場で幅広く流通して入手し易く、安価である。
実施形態の実施例1に係る潜熱蓄熱材組成物の構成成分を模式的に示す図である。 実施形態の実施例2に係る潜熱蓄熱材組成物の構成成分を模式的に示す図である。 実施形態の実施例3に係る潜熱蓄熱材組成物の構成成分を模式的に示す図である。 実施例1,2に係る潜熱蓄熱材組成物の放熱試験結果を示すグラフである。 実施例3に係る潜熱蓄熱材組成物の放熱試験結果を示すグラフである。 比較例に係る潜熱蓄熱材の放熱試験結果を示すグラフである。
(実施形態)
以下、本発明に係る潜熱蓄熱材組成物について、実施形態(実施例1〜3)を図面に基づいて詳細に説明する。潜熱蓄熱材組成物は、熱供給源から提供された熱を潜熱蓄熱材に一時的に蓄えた後、熱需要先で、潜熱蓄熱材に蓄えた潜熱の熱エネルギを、その時間差をもって活用する目的で用いられる。このような潜熱蓄熱材組成物は、所定の収容手段の空間内に収容された充填容器(図示省略)に、漏れのない態様で、液密かつ気密に充填され、充填された充填容器の内外で、潜熱の出入りを利用して、蓄えた熱を必要に応じて取り出すことができ、蓄熱とその放熱のサイクルを複数回繰り返して使用される。
潜熱蓄熱材組成物は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う潜熱蓄熱材を主成分に、この潜熱蓄熱材の物性を調整する1種以上の添加剤を配合してなる。潜熱蓄熱材は、ミョウバン水和物である。添加剤は、第1の添加剤として、融液状態にあるミョウバン水和物に対し、結晶化の誘起を促す過冷却防止剤であり、この過冷却防止剤は、硫酸カルシウム(CaSO)である。硫酸カルシウムは、分子量[g/mol]136.14、融点1460℃、融点より低い温度では、結晶または粉末による無色の固体で、水に僅かに溶解する物性である。潜熱蓄熱材組成物全体の重量に占める硫酸カルシウムの配合比率は、0wt%より大きく、10wt%以下の範囲内である。
潜熱蓄熱材組成物の構成について、実施例1〜3を挙げて、具体的に説明する。
(実施例1)
図1は、実施形態の実施例1に係る潜熱蓄熱材組成物の構成成分を模式的に示す図である。図1に示すように、実施例1に係る潜熱蓄熱材組成物1は、潜熱蓄熱材10を1種と、添加剤20を1種配合した蓄熱材である。潜熱蓄熱材10は、本実施例1では、アンモニウムミョウバン十二水和物(硫酸アンモニウムアルミニウム・12水:AlNH(SO・12HO)(以下、「アンモニウムミョウバン」と称する場合もある。)の単種(第1潜熱蓄熱材11)である。アンモニウムミョウバンは、水和数12、分子量[g/mol]453.34、融点93.5℃、常温では固体で、水に可溶な物性を有する。そのため、アンモニウムミョウバンが単体で、融点未満の温度で加熱されたとしても、ほとんど溶融することなく、潜熱を蓄えることもできない。添加剤20は、前述した硫酸カルシウムとする過冷却防止剤21である。
(実施例2)
次に、実施例2に係る潜熱蓄熱材組成物の構成について、図2を用いて説明する。図2は、実施形態の実施例2に係る潜熱蓄熱材組成物の構成成分を模式的に示す図である。図2に示すように、実施例2に係る潜熱蓄熱材組成物2は、潜熱蓄熱材10を2種と、添加剤20を1種配合した蓄熱材である。添加剤20は、前述した硫酸カルシウムとする過冷却防止剤21である。
潜熱蓄熱材10は、本実施例2では、第1潜熱蓄熱材11と第2潜熱蓄熱材12とを混合した蓄熱材である。第1潜熱蓄熱材11は、アンモニウムミョウバン十二水和物(AlNH(SO・12HO)であり、第2潜熱蓄熱材12は、カリウムミョウバン十二水和物(硫酸カリウムアルミニウム・12水:AlK(SO・12HO)(以下、「カリミョウバン」と称する場合もある。)である。カリミョウバンは、水和数12、分子量[g/mol]474.388、融点92.5℃、常温では固体で、水に可溶な物性を有する。そのため、カリミョウバンが単体で、融点未満の温度で加熱されたとしても、ほとんど溶融することなく、潜熱を蓄えることもできない。
なお、潜熱蓄熱材10の構成成分は、アンモニウムミョウバンやカリミョウバン以外にも、例えば、クロムミョウバン(CrK(SO・12HO)、鉄ミョウバン(FeNH(SO・12HO)等、1価の陽イオンの硫酸塩M (SO)と、3価の陽イオンの硫酸塩MIII (SOとの複硫酸塩である「ミョウバン」に、水和物を有した「ミョウバン水和物」であっても良い。また、この「ミョウバン」に含まれる3価の金属イオンは、アルミニウムイオン、クロムイオン、鉄イオン以外に、例えば、コバルトイオン、マンガンイオン等の金属イオンでも良い。さらに、潜熱蓄熱材10は、このような「ミョウバン水和物」に属する物質を、少なくとも二種以上含む混合物、または混晶を主成分とした蓄熱材であっても良い。
(実施例3)
図3は、実施形態の実施例3に係る潜熱蓄熱材組成物の構成成分を模式的に示す図である。図3に示すように、実施例3に係る潜熱蓄熱材組成物3は、潜熱蓄熱材10を1種と、添加剤20を2種配合した蓄熱材である。潜熱蓄熱材10は、本実施例3では、アンモニウムミョウバン十二水和物(AlNH(SO・12HO)の単種(第1潜熱蓄熱材11)である。
添加剤20について、説明する。2種の添加剤20のうち、第1の添加剤である過冷却防止剤21は、前述した硫酸カルシウムである。また、潜熱蓄熱材組成物3には、過冷却防止剤21とは別に、添加剤20として、第2の添加剤が配合されており、第2の添加剤は、アンモニウムミョウバンの融点を、必要に応じて任意の温度に調整する融点調整剤22である。
融点調整剤22は、本実施例3では、主として食品添加物に用いられている糖アルコール類に属する物質を少なくとも含み、ミョウバン水和物(潜熱蓄熱材)との溶解により、負の溶解熱を発生する物性を有する物質である。糖アルコール類は、アルドースやケトースのカルボニル基を還元して生成する糖の一種であり、水と溶解する。融点調整剤22は、このような糖アルコール類に属するエリスリトール(C10)、キシリトール(C12)、またはマンニトール(C14)のうち、少なくともいずれか一つを含むものである。具体的には、融点調整剤22は、本実施例3では、マンニトールである。マンニトールは、水和数12、分子量[g/mol]182.17、融点166〜168℃、水に可溶な物性を有する。
マンニトールは、当該潜熱蓄熱材組成物3の融解温度を調整できると共に、当該潜熱蓄熱材組成物3の粘度をより高める増粘性を有しているため、潜熱蓄熱材10と過冷却防止剤21との密度差に起因した潜熱蓄熱材10と過冷却防止剤21との分離や、主成分である潜熱蓄熱材10の構成成分同士の分離を、防止することができる。そのため、潜熱蓄熱材組成物3の構成成分間の不均一化が発生しないため、潜熱蓄熱材組成物3は、化学的に安定した蓄熱材となり得る。しかも、融点調整剤22が潜熱蓄熱材10に加わることで、潜熱蓄熱材10の融点を大幅に調整できると共に、融点調整剤22自体も蓄熱性能を具備しているため、融点調整剤22が配合されても、潜熱蓄熱材組成物3は、蓄熱量約350kJ/Lという、大容量の潜熱を蓄えることができる。
潜熱蓄熱材組成物3全体の重量に占めるマンニトールの配合比率は、20wt%以下の範囲内である。マンニトールが、このような範囲内で潜熱蓄熱材組成物3に含有されていると、潜熱蓄熱材組成物3の融点が、マンニトールにより、弊害なく約90℃に調整することができる。なお、マンニトールの配合量が、この範囲を超えて潜熱蓄熱材組成物3に添加されていると、潜熱蓄熱材組成物3に混合したマンニトールの融点が、マンニトール単体の融点を上限に、高温側へシフトしてしまい、ミョウバン水和物とマンニトールの相変化が同時に起こらなくなってしまい、加熱操作の上限を90〜100℃とした場合では、潜熱蓄熱材組成物3の蓄熱量は、蓄熱量約350kJ/Lより低下してしまう。
ここで、前述した「負の溶解熱を発生する物性を有する物質」の定義について、説明する。前述したように、潜熱蓄熱材組成物3は、アンモニウムミョウバン(潜熱蓄熱材10)を主成分に、過冷却防止剤21と融点調整剤22とを配合してなる。融点調整剤22が潜熱蓄熱材10に溶解するとき、この融点調整剤22において、外部から熱を吸収して吸熱反応が生じるものを、本実施形態に係る潜熱蓄熱材組成物3では、「負の溶解熱を発生する物性を有する物質」と定義している。
「負の溶解熱を発生する物性を有する物質」には、先に例示したエリスリトールやキシリトール、マンニトールのほかに、例えば、ソルビトール(C14)、ラクチトール(C122411)等の「糖アルコール類に属する物質」がある。また、「糖アルコール類に属する物質」以外にも、塩化カルシウム六水和物(CaCl・6HO)、塩化マグネシウム六水和物(MgCl・6HO)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)等の「塩化物に属する物質」がある。加えて、硫酸アンモニウム((NHSO)等の「硫酸塩に属する物質」がある。また、上述の「糖アルコール類に属する物質」に該当する物質のうち、少なくとも一種以上を含む場合のほか、上述の「塩化物に属する物質」に該当する物質のうち、少なくとも一種以上含む場合や、上述の「硫酸塩に属する物質」に該当する物質のうち、少なくとも一種以上含む場合も該当する。
加えて、上述の「糖アルコール類に属する物質」に該当する物質のいずれかと、上述の「塩化物に属する物質」に該当する物質のいずれかとの混合物もある。また、上述の「糖アルコール類に属する物質」に該当する物質のいずれかと、上述の「硫酸塩に属する物質」に該当する物質のいずれかとの混合物もある。さらに、上述の「糖アルコール類に属する物質」に該当する物質のいずれかと、上述の「塩化物に属する物質」に該当する物質のいずれかと、上述の「硫酸塩に属する物質」に該当する物質のいずれかとの混合物(塩化物と硫酸塩との混晶をなす場合も含む)もある。
その他、取扱いに注意が必要となり、本実施形態において、潜熱蓄熱材組成物としての使用は好ましくないが、例えば、硝酸アンモニウムや塩素酸カリウム等についても、水に溶解した際に吸熱反応を呈するため、「負の溶解熱を発生する物性を有する物質」には該当する。
<検証実験の実施>
次に、潜熱蓄熱材10における過冷却現象の解除にあたり、過冷却防止剤21の効果を検証する目的で、実験1〜4を行った。実験1は、前述した実施例1に係る潜熱蓄熱材組成物1を100g、アルミラミネート袋に封入したサンプル1で行った実験である。実験2は、前述した実施例2に係る潜熱蓄熱材組成物2を100g、アルミラミネート袋に封入したサンプル2で行った実験である。実験3は、前述した実施例3に係る潜熱蓄熱材組成物3を100g、アルミラミネート袋に封入したサンプル3で行った実験である。実験4は、実施例1〜3の比較例として行った実験で、過冷却防止剤21を含有しない潜熱蓄熱材10(第1潜熱蓄熱材11)だけを100g、アルミラミネート袋に封入したサンプル4で行った実験である。
<実験方法>
実験1〜4では、実験毎に、恒温槽内で、はじめにサンプル内の潜熱蓄熱材組成物1〜3(または潜熱蓄熱材10)を、恒温槽内のヒータで95℃以上に加熱して、潜熱蓄熱材組成物1等が完全に融解した融液状態になったことを事前に確認した後、ヒータの作動をオフにした。そして、恒温槽の扉を閉めたまま、槽内で8時間以上に亘り、潜熱蓄熱材組成物1等の状態温度を測定しながら、融液状態にある潜熱蓄熱材組成物1等を、空冷により完全な固体状態になるまで冷却した。全実験とも、ヒータの作動をオフに切り替えると同時に、潜熱蓄熱材組成物1等の状態温度の測定を開始し、潜熱蓄熱材組成物1等に温度変化がほとんどなくなるまで、そのまま継続的に温度測定を行った。併せて、恒温槽内の雰囲気温度の測定も行った。
<実験1〜3の共通条件>
・過冷却防止剤21;硫酸カルシウム(CaSO
<実験4の条件>
・過冷却防止剤21;配合せず
<実験1の条件>
・サンプル1;潜熱蓄熱材組成物1(潜熱蓄熱材10を1種、添加剤20を1種配合した蓄熱材)を使用、下記第1水準〜第3水準に分けて各々作製
・潜熱蓄熱材10;アンモニウムミョウバン十二水和物(AlNH(SO・12HO)(第1潜熱蓄熱材11)
・添加剤20;過冷却防止剤21のみ
・第1潜熱蓄熱材11と過冷却防止剤21との配合割合(wt%)
99:1(第1水準)、95:5(第2水準)、90:10(第3水準)
・実験繰り返し数
第1水準〜第3水準とも各1回
<実験2の条件>
・サンプル2;潜熱蓄熱材組成物2(潜熱蓄熱材10を2種と、添加剤20を1種配合した蓄熱材)、下記第1水準〜第3水準に分けて各々作製
・潜熱蓄熱材10;アンモニウムミョウバン十二水和物(AlNH(SO・12HO)(第1潜熱蓄熱材11)とカリウムミョウバン十二水和物(硫酸カリウムアルミニウム・12水:AlK(SO・12HO)(第2潜熱蓄熱材12)との混合物
・添加剤20;過冷却防止剤21のみ
・第1潜熱蓄熱材11と第2潜熱蓄熱材12と過冷却防止剤21との配合割合(wt%)
49.5:49.5:1.0(第1水準)、47.5:47.5:5.0(第2水準)、45:45:10(第3水準)
・実験繰り返し数
第1水準〜第3水準とも各1回
<実験3の条件>
・サンプル3;潜熱蓄熱材組成物3(潜熱蓄熱材10を1種と、添加剤20を2種配合した蓄熱材)、下記第1水準〜第3水準に分けて各々作製
・潜熱蓄熱材10;アンモニウムミョウバン十二水和物(AlNH(SO・12HO)(第1潜熱蓄熱材11)
・添加剤20;マンニトール(C14)(融点調整剤22)と硫酸カルシウム(CaSO)(過冷却防止剤21)
・第1潜熱蓄熱材11と融点調整剤22と過冷却防止剤21との配合割合(wt%)
91.08:7.92:1.00(第1水準)、87.4:7.6:5.0(第2水準)、82.8:7.2:10.0(第3水準)
・実験繰り返し数
第1水準と第2水準は各1回、第3水準は2回
<実験4の条件>
・サンプル4;潜熱蓄熱材10、第1水準のみ作製
・潜熱蓄熱材10;アンモニウムミョウバン十二水和物(AlNH(SO・12HO)(第1潜熱蓄熱材11)
・添加剤20;配合せず
・第1潜熱蓄熱材11と過冷却防止剤21との配合割合(wt%)
100:0(第1水準)
図3は、実施例3に係る潜熱蓄熱材組成物の構成成分を模式的に示す図である。図4は、実施例1,2に係る潜熱蓄熱材組成物の放熱試験結果を示すグラフである。図5は、実施例3に係る潜熱蓄熱材組成物の放熱試験結果を示すグラフである。図6は、比較例に係る潜熱蓄熱材の放熱試験結果を示すグラフである。なお、図4〜図6に記載された注釈欄で、英文字と記号からなる表記は、潜熱蓄熱材組成物の構成成分の内容と、潜熱蓄熱材の構成成分の内容を示すものであり、その詳細は、次の通りである。
<図4>
・「Al*Alum」;アンモニウムミョウバン(第1潜熱蓄熱材11)
・「K*Alum」;カリミョウバン(第2潜熱蓄熱材12)
・「Ca」;硫酸カルシウム(過冷却防止剤21)
<図5>
・「Al*Alum」;アンモニウムミョウバン(第1潜熱蓄熱材11)
・「Ma」;マンニトール(C14)(融点調整剤22)
・「Ca」;硫酸カルシウム(過冷却防止剤21)
<図6>
・「Al*Alum」;アンモニウムミョウバン(第1潜熱蓄熱材11)
<実験結果>
実験1,2の結果では、図4に示すように、温度測定開始後、恒温槽内の雰囲気温度は、時間の経過と共に下がり続けた。他方で、恒温槽内の雰囲気温度が76℃付近(=T1a)となった時刻t1aになるまで、実施例1に係るサンプル1の潜熱蓄熱材組成物1の温度と、実施例2に係るサンプル2の潜熱蓄熱材組成物2の温度は、サンプルの水準に関係なく、時間の経過と共に下がり続けた。しかしながら、時刻t1a以降には、サンプル1の潜熱蓄熱材組成物1の温度と、サンプル2の潜熱蓄熱材組成物2の温度は、サンプルの水準に関係なく、一旦上昇した後、緩やかな温度変化を遂げながら、ゆっくりとした降温速度で再び下がりはじめた。そして、時刻t1bに到達すると、サンプル1の潜熱蓄熱材組成物1の温度と、サンプル2の潜熱蓄熱材組成物2の温度は、恒温槽内の雰囲気温度が34℃付近(=T1b)で、ほぼ一致するようになった。時刻t1aから時刻t1bまでの間、実施例1に係るサンプル1の潜熱蓄熱材組成物1と、実施例2に係るサンプル2の潜熱蓄熱材組成物2において、潜熱蓄熱材組成物1,2に蓄えていた潜熱放熱の挙動が確認された。
実験3の結果では、図5に示すように、温度測定開始後、恒温槽内の雰囲気温度は、時間の経過と共に下がり続けた。他方で、恒温槽内の雰囲気温度が67℃付近(=T2a)となった時刻t2aになるまで、実施例3に係るサンプル3の潜熱蓄熱材組成物3の温度は、サンプルの水準に関係なく、時間の経過と共に下がり続けた。しかしながら、時刻t2a以降には、サンプル3の潜熱蓄熱材組成物3の温度は、サンプルの水準に関係なく、一旦上昇した後、緩やかな温度変化を遂げながら、ゆっくりとした降温速度で再び下がりはじめた。そして、時刻t2bに到達すると、サンプル3の潜熱蓄熱材組成物3の温度は、恒温槽内の雰囲気温度が26℃付近(=T2b)になったところで、ほぼ一致するようになった。時刻t2aから時刻t2bまでの間、実施例3に係るサンプル3の潜熱蓄熱材組成物3において、潜熱蓄熱材組成物3に蓄えていた潜熱放熱の挙動が確認された。
実験4の結果では、図6に示すように、温度測定開始後、恒温槽内の雰囲気温度は、時間の経過と共に下がり続けたが、雰囲気温度と同じように、比較例に係るサンプル4の潜熱蓄熱材10の温度も、時間の経過と共に下がり続けた。すなわち、実験1〜3の結果のように、冷却過程下の潜熱蓄熱材組成物1〜3で、その状態温度が、一旦上昇した後、緩やかな温度変化を遂げながら、ゆっくりとした降温速度で再び下がりという現象は、実験4では観察されなかった。比較例に係るサンプル4の潜熱蓄熱材10において、時刻20000秒を過ぎたところで、温度低下が僅かに鈍くなる現象が確認された以外、融液状態から固体状態への相変化による潜熱放熱の挙動は、確認されなかった。
<考察>
潜熱蓄熱材は、その融点以上の加熱により、固体状態から融液状態への相変化時に、潜熱を蓄えて蓄熱を行い、融点以下の温度で冷却する過程において、融液状態から固体状態への相変化時に、蓄えている潜熱を外部に放熱する。比較例では、サンプル4の潜熱蓄熱材10は、アンモニウムミョウバン(第1潜熱蓄熱材11)の単種だけである。そのため、サンプル4において、第1潜熱蓄熱材11の融液の温度が、融点93.5℃より低い温度まで冷却されていると、理論上、元々95℃以上の融液状態にあったアンモニウムミョウバンは本来、固体状態への相変化により、蓄えている潜熱を外部に放熱し、この放熱に伴って、第1潜熱蓄熱材11の状態温度は、一時的に上昇するはずである。
しかしながら、実験4の結果より、第1潜熱蓄熱材11からの潜熱放熱の挙動が存在しないことから、第1潜熱蓄熱材11で、融点93.5℃より低い温度になっても、固体状態への相変化を起こさない過冷却現象が発現していることが判る。比較例のサンプル4では、このような過冷却現象を解除するのに必要な核が、アンモニウムミョウバン(第1潜熱蓄熱材11)の融液に存在せず、サンプル4にも、過冷却防止剤が配合されていないことから、第1潜熱蓄熱材11に過冷却現象が発現したものと考えられる。
これに対し、実施例1〜3に係るサンプル1〜3では、何れも、空冷で潜熱蓄熱材組成物1〜3を冷却し続ける中で、潜熱蓄熱材組成物1〜3の状態温度が、その融点を下回りながらも、融点と比較的近い温度になった時点で、一時的に上昇し、それまでほぼ同じような温度傾向にあった雰囲気温度に対し、最も大きい場合で20℃近くの温度差で、高温状態を維持できている。このような挙動は、潜熱蓄熱材10で、過冷却現象の発現を回避した上で、融液状態から固体状態への相変化に伴う潜熱放熱により、潜熱蓄熱材組成物1〜3自体が加熱されたためだと考えられる。
換言すれば、潜熱蓄熱材組成物1〜3では、何れも共通して、潜熱蓄熱材10以外に、硫酸カルシウムからなる過冷却防止剤21が配合されており、この過冷却防止剤21により、過冷却現象を解除するのに必要な核が、アンモニウムミョウバン等の潜熱蓄熱材10の融液に存在している。そのため、アンモニウムミョウバン等の潜熱蓄熱材10で、過冷却現象の発現が解消されているものと考えられる。
次に、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1〜3の作用・効果について説明する。本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1〜3は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う潜熱蓄熱材10を主成分に、該潜熱蓄熱材10の物性を調整する添加剤20を配合してなる潜熱蓄熱材組成物において、潜熱蓄熱材10は、ミョウバン水和物であり、添加剤20は、第1の添加剤として、融液状態にあるミョウバン水和物に対し、結晶化の誘起を促す過冷却防止剤21であること、過冷却防止剤21は、硫酸カルシウム(CaSO)であること、を特徴とする。
この特徴により、固体状の硫酸カルシウム(過冷却防止剤21)を配合した潜熱蓄熱材組成物1〜3を、固体状態からその融点より高い温度に加熱した場合でも、過冷却防止剤21は固体状のまま、潜熱蓄熱材組成物1〜3の融液に存在することから、この融液を、融点以下の温度に冷却する過程において、固体状の過冷却防止剤21表面に、ミョウバン水和物の構成成分を吸着させることができる。これにより、ミョウバン水和物の過冷却現象を解除するのに必要な核として、ミョウバン水和物(潜熱蓄熱材10)の結晶核が生成されるようになる。そのため、潜熱蓄熱材10の結晶化が、過冷却防止剤21に基づくミョウバン水和物の結晶核の生成によって、誘起され、潜熱蓄熱材組成物1〜3は、融液状態からの冷却過程において、潜熱蓄熱材10の融点と凝固点の乖離を抑制しつつ、蓄えていた潜熱を放熱することができる。
ここで、硫酸カルシウム(過冷却防止剤21)をミョウバン水和物の構成成分に吸着できる理由について、説明する。ミョウバン水和物は、1分子あたり、水和水を12含んでいるため、加熱により融解したミョウバン水和物の融液は、水溶液である。他方、硫酸カルシウムは、水に対する溶解度が極めて小さい物質で、融点1460℃の物性である。このような硫酸カルシウムをミョウバン水和物に添加した潜熱蓄熱材組成物では、ミョウバン水和物が加熱されて融解しても、硫酸カルシウムは、それ自体融解することなく、かつミョウバン水和物の水和水に対してもほとんど溶解しないため、ミョウバン水和物の融液に、固体のまま残存する。そのため、過冷却防止剤21は固体状で、潜熱蓄熱材組成物1〜3の融液に存在することから、固体状の過冷却防止剤21表面に、ミョウバン水和物の構成成分を吸着させることができるものと考えられる。
従って、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1〜3によれば、ミョウバン水和物を主成分とする潜熱蓄熱材10に対し、過冷却現象の発現をより確実に抑制して、蓄熱していた潜熱を放熱することができている、という優れた効果を奏する。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1〜3では、当該潜熱蓄熱材組成物1〜3全体の重量に占める硫酸カルシウムの配合比率は、0wt%より大きく、10wt%以下の範囲内であること、を特徴とする。この特徴により、潜熱蓄熱材組成物1〜3を、融液状態から冷却する過程において、潜熱蓄熱材10の融点と凝固点の乖離を抑制すると共に、体積当たりの潜熱の蓄熱量について、潜熱蓄熱材単体での蓄熱量に比べ、大幅に低下することがなく、実用上、十分な熱量の潜熱を放熱することができる。その理由として、硫酸カルシウム自体、使用する潜熱蓄熱材組成物1〜3の温度帯域(例えば、約100℃以下の帯域)で、蓄熱性能を具備していない。そのため、このような配合比率を超えて過冷却防止剤21が配合されていると、体積当たりの潜熱の蓄熱量について、潜熱蓄熱材組成物1〜3の蓄熱量が、潜熱蓄熱材10単体での蓄熱量に比べ、大幅に低下してしまうが、硫酸カルシウムの配合割合が、上述の範囲内であれば、潜熱蓄熱材組成物1〜3の蓄熱量は、大幅に低下することもない。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1〜3では、添加剤20として、第1の添加剤(過冷却防止剤21)とは別の第2の添加剤が配合されており、第2の添加剤は、ミョウバン水和物(潜熱蓄熱材10)の融点を、必要に応じて任意の温度に調整する融点調整剤22であること、を特徴とする。この特徴により、潜熱蓄熱材組成物1〜3に潜熱を蓄える温度や、その蓄熱された潜熱を放つ温度についてのバリエーションが、融点調整剤22によって拡大できる。そのため、潜熱蓄熱材組成物1〜3の潜熱放熱が、例えば、80〜90℃の温度帯域の熱を必要とする給湯設備や、冷暖房を行う空気調和設備等の熱提供先の設備に向けて、供給できるようになる。その他にも、潜熱蓄熱材組成物1〜3の潜熱放熱は、自動車技術への用途として、車両で生じた排熱の熱エネルギを、車両内の活用先で使用する蓄熱システムへの応用、血液や細胞等の生体物や、医薬品等の医療用物品を、一定温度に保温して輸送する用途、日常の食生活において、食時するまでの間、給食や弁当、料理、食材を保温する用途等、様々な分野で幅広い用途に利用できる。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物3では、融点調整剤22は、例えば、エリスリトール(C10)、キシリトール(C12)、またはマンニトール(C14)のうち、少なくともいずれか一つを含む物質等、糖アルコール類に属する物質を少なくとも含んでいること、を特徴とする。この特徴により、潜熱蓄熱材組成物3の融解温度を調整できると共に、潜熱蓄熱材組成物3の粘度が増大し、潜熱蓄熱材10と過冷却防止剤21との密度差に起因した潜熱蓄熱材10と過冷却防止剤21との分離や、潜熱蓄熱材10自体の構成成分同士の分離等、潜熱蓄熱材組成物3の構成成分同士の分離を防止することができる。そのため、潜熱蓄熱材組成物3の構成成分間の不均一化が発生しないため、潜熱蓄熱材組成物3は、化学的に安定した蓄熱材となり得る。しかも、融点調整剤22が潜熱蓄熱材10に加わることで、潜熱蓄熱材10の融点を大幅に調整できると共に、融点調整剤22自体も蓄熱性能を具備しているため、融点調整剤22が配合されても、潜熱蓄熱材組成物3は、例えば、約350kJ/Lという、大きな蓄熱量を有した物性になる。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1〜3では、ミョウバン水和物は、アンモニウムミョウバン十二水和物(AlNH(SO・12HO)、または、カリウムミョウバン十二水和物(AlK(SO・12HO)の少なくともいずれか一方を含むものであること、を特徴とする。この特徴により、アンモニウムミョウバン十二水和物やカリウムミョウバン十二水和物は、市場で幅広く流通して入手し易く、安価である。
以上において、本発明を実施形態の実施例1〜3に即して説明したが、本発明は上記実施形態の実施例1〜3に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
例えば、実施形態では、潜熱蓄熱材組成物1〜3の構成成分の割合について、実験1では、第1潜熱蓄熱材11と過冷却防止剤21との配合割合(wt%)を、99:1(第1水準)、95:5(第2水準)、90:10(第3水準)とする潜熱蓄熱材組成物1を例示した。また、実験2では、第1潜熱蓄熱材11と第2潜熱蓄熱材12と過冷却防止剤21との配合割合(wt%)を、49.5:49.5:1.0(第1水準)、47.5:47.5:5.0(第2水準)、45:45:10(第3水準)とする潜熱蓄熱材組成物2を例示した。また、実験3では、第1潜熱蓄熱材11と融点調整剤22と過冷却防止剤21との配合割合(wt%)を、91.08:7.92:1.00(第1水準)、87.4:7.6:5.0(第2水準)、82.8:7.2:10.0(第3水準)とする潜熱蓄熱材組成物3を例示した。
しかしながら、潜熱蓄熱材組成物において、潜熱蓄熱材と添加剤との配合割合は、あくまでも例示に過ぎず、実施形態に限定されるものではなく、潜熱蓄熱材組成物の使用上、支障が生じなければ、潜熱蓄熱材組成物に対し、潜熱蓄熱材と添加剤との配合比率は、適宜変更可能である。
また、実施形態では、潜熱蓄熱材10を、アンモニウムミョウバン十二水和物(第1潜熱蓄熱材11)単体、またはアンモニウムミョウバン十二水和物(第1潜熱蓄熱材11)とカリウムミョウバン十二水和物(第2潜熱蓄熱材12)との混合物としたが、潜熱蓄熱材は、本実施形態に限定されるものではなく、ミョウバン水和物であれば何でも良い。
1,2 潜熱蓄熱材組成物
10 潜熱蓄熱材
11 第1潜熱蓄熱材(潜熱蓄熱材)
12 第2潜熱蓄熱材(潜熱蓄熱材)
20 添加剤
21 過冷却防止剤(添加剤、第1の添加剤)
22 融点調整剤(第2の添加剤)

Claims (5)

  1. 相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う潜熱蓄熱材を主成分に、該潜熱蓄熱材の物性を調整する添加剤を配合してなる潜熱蓄熱材組成物において、
    前記潜熱蓄熱材は、ミョウバン水和物であり、前記添加剤は、第1の添加剤として、融液状態にある前記ミョウバン水和物に対し、結晶化の誘起を促す過冷却防止剤であること、
    前記過冷却防止剤は、硫酸カルシウム(CaSO)であること、
    当該潜熱蓄熱材組成物全体の重量に占める前記硫酸カルシウムの配合比率は、0wt%より大きく、10wt%以下の範囲内であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  2. 請求項1に記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記添加剤として、前記第1の添加剤とは別の第2の添加剤が配合されており、前記第2の添加剤は、前記ミョウバン水和物の融点を、必要に応じて任意の温度に調整する融点調整剤であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  3. 請求項2に記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記融点調整剤は、糖アルコール類に属する物質を少なくとも含んでいること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  4. 請求項3に記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記糖アルコール類に属する物質は、エリスリトール(C10)、キシリトール(C12)、またはマンニトール(C14)のうち、少なくともいずれか一つを含むものであること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記ミョウバン水和物は、アンモニウムミョウバン十二水和物(AlNH(SO・12HO)、または、カリウムミョウバン十二水和物(AlK(SO・12HO)の少なくともいずれか一方を含むものであること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
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